前半から続く)


   パワー・シフトとダヴォス

FT January 13, 2017

World leaders reckon with a global rebalancing

Klaus Schwab

FT January 15, 2017

Political upheaval casts cloud over Davos

Gideon Rachman

FT January 16, 2017

Xi Jinping’s chance to woo the world’s elite in Davos

NYT JAN. 16, 2017

What to Make of the ‘Davos Class’ in the Trump Era

Andrew Ross Sorkin

FT January 17, 2017

Does Trump’s rise mark the end of Davos Man’s influence?

Martin Wolf

ダヴォス・マンとは、サミュエル・ハンチントンが使った言葉だ。彼らは「国家への忠誠心を持たない。国境を、なくなった方が良い障害物とみなす。各国政府は過去の遺物であり、エリートがグローバルな活動をやりやすくするためだけに有益な存在と考える。」

トランプの就任式は、グローバリゼーションの逆転を象徴した。TPPを破棄し、2国間の貿易紛争を刺激し、WTOを軽蔑する。パクス・アメリカーナは終わり、各地のポピュリスト集団が権力を奪うかもしれない。

ダヴォスに集まる人々はグローバル・システム内の国家の地位を損ない、ポピュリストたちを育てた。何よりも、グローバリゼーションから得た利益を、敗者と社会的に分かち合うことを無視した。いくつかの自由化プロジェクトは無謀であった。特に、金融の自由化、ユーロ圏の拡大、大規模な移民は、市民権を軽視するダヴォス・マンにとって正しくとも、多くの市民たちにとっては重要であった。

政策は、もっと普通の市民たちに及ぼす効果を重視しなければならない。他方、ポピュリストたちのもたらす政治は、ダヴォス・マンの高慢さより、はるかにひどいものになる。

FT January 19, 2017

Emerging powers can be saviours of the global liberal order

Amitav Acharya


   権力によるメディア攻撃

FT January 13, 2017

Donald Trump, Vladimir Putin and the murky history of ‘kompromat’

John Thornhill

NYT JAN. 13, 2017

Donald Trump’s Dangerous Attacks on the Press

By LEONARD DOWNIE JR.

FT January 17, 2017

A lesson in fake news from the info-wars of ancient Rome

Izabella Kaminska

ずっと昔に,遠くの共和国が,内戦からフェイクニュースによる危機になった.シーザーがBC44年に永世独裁者になり,伝統的な共和派がそれに反発したからだ.指導者であったブルータスは自分たちを「解放者」と呼んだ.彼は上院でシーザーを23回も突き刺し,殺害した.

しかし,その後,共和制が再建されることはなく,シーザーの支持者Mark Antony将軍と,シーザーの養子Octavianとの間で,激しい権力闘争が始まった.それは史上空前の情報操作戦争であった.Octavianは鋭敏なプロパガンディストであり,古代のTweetとの言える,短いスローガンで敵を攻撃した.


   医療保険制度と市場

NYT JAN. 13, 2017

Do Markets Work in Health Care?

David Brooks

医療サービスに市場は機能するのか?

オバマケアを廃止して、共和党が求める医療保険制度は、より市場メカニズムを取り入れたものになる、という。しかし、1963年にKenneth Arrowが書いた論文は、医療サービスが「正常な市場」ではないことを示した。

医療を利用することは予測できない。医師と患者との関係は特別である。高度の信頼、情感、配慮を要する。専門的な情報について極端な非対称性がある。患者は手術代の上で選択肢を考える余地はなく、支払いは事後に行われる。

しかし、この論文の論点は今も正しいが、時代は大きく変わっている。医療サービスにも市場の機能が取り込まれて、さまざまな成功例が報告されている。利潤を目的にした組織が、命にかかわる様々なサービスを提供している。医療組織も、競争、効率的な経営、患者の選択によって結果を改善し、コストを削減できる。

人々も知的に洗練された医療サービスの消費者になれるだろう。医療機関の競争は、ある期間が生産性を改善すれば、近隣の機関も改善する傾向を示している。市場の誘因は医療サービスでも機能するのだ。医療保険が適用されない、かつて2200ドルもした眼のレーザー手術が、今や250ドルの価格で広告が出ている。

医療サービスで市場が機能するかどうかは、むしろ政治的な問題になる。われわれは、非常に忙しい、信頼を持てない、リスクの多い社会に住んでいる。人々は、医療サービスのために追加の時間を割き、自分や他人の決定を信頼し、追加のリスクを負うだろうか? 政治家がそれを説得することはむつかしいだろう。

NYT JAN. 13, 2017

Donald Trump’s Medical Delusions

Paul Krugman


   南シナ海

FP JANUARY 13, 2017

Is Tillerson Willing to Go to War Over the South China Sea?

BY BILL HAYTON

FT January 16, 2017

Pacific conflict looms between America and China

Gideon Rachman

トランプがロシアとの関係を改善することが幻惑と刺激を放っている。しかし、もっと重要でもっと危険な問題がある。それは、トランプ政権が中国との衝突に向かうことだ。それは軍事衝突に至る危険さえあるだろう。

上院の公聴会で、国務長官候補のRex Tillersonは、北京が南シナ海で建設した人工島を、ロシアの違法なクリミア併合に結び付けて、これらの島へのアクセスをアメリカは許さない、という明確なシグナルを北京に送る、と話した。それは、アメリカが海上封鎖することを意味するように聞こえた。中国版のキューバ・ミサイル危機である。

Tillersonが意図した以上に語って、アメリカの公式な立場を超えてしまっただけかもしれない。アメリカ政府は太平洋の航行の自由だけを主張し、南シナ海の領海に関しては特定の立場を取らない、と表明してきた。しかし、トランプ政権の台湾への姿勢転換も、中国との対決を示している。

1979年の米中関係正常化から、アメリカは北京の「1つの中国」政策を認め、台湾を反来軍の占拠した中国の地方とみなすことに同意した。それゆえ、台湾の指導者とアメリカ大統領との直接対話は避けてきた。しかし、トランプは蔡英文総統と電話で会談し、その後も、北京が貿易問題で譲歩しなければ、「1つの中国」政策を見直すと発言した。中国は、台湾がもし独立を宣言すれば軍事侵攻する、と繰り返し主張してきたのだから、トランプの発言は高いリスクを取る政策だ。

台湾、Tillerson、貿易問題。3つのTがそろったことは、トランプのアメリカが中国と衝突する、という意味だ。他方、習近平の下で、中国はナショナリズムを強めている。

ダヴォスでは、あたかもアメリカに代わって太平洋の平和を維持するのは自分である、と主張する習近平であるが、実際は違う。アジアにおけるアメリカの同盟諸国に、軍事的、外交的、経済的な圧力を強めているのだ。韓国やシンガポールなどは、中国との経済関係をさらに深めながら、安全保障ではアメリカに頼っている。しかし、韓国政府に対して、中国はアメリカとのミサイル防衛システムを受け入れた決定を翻すように求めている。シンガポールにも、台湾での軍事訓練をやめるよう、輸送機の通過に不満を示している。

トランプと習の立場は、遅かれ早かれ、必ず衝突する。それはアジアの同盟諸国をさらに苦しめ、アメリカからの離反を促すかもしれない。


   トランプ時代の経済

NYT JAN. 14, 2017

Why Trump Can’t Make It 1981 Again

By RUCHIR SHARMA

ドナルド・トランプが勝ったことも驚きだが、その後に起きた経済の反応はさらに大きな驚きであった。市場は、この100年間で最も強い選挙後の上昇を示した。その高揚感は経済全般に広まり、投資家や消費者を強気にしている。トランプは、レーガン以来、最もビジネスに好意的な大統領である、というコンセンサスが背景にある。

確かに、トランプの顧問たちは、減税と規制緩和で、レーガン時代の成長率である3.5%の再現を計画している。彼の支持者たちは、疑う者を敗北主義者と呼び、アメリカが1980年代の経済ブームを再現できないという経済法則などない、と主張した。

そのような法則は存在するのだ。経済成長を支える諸力は、レーガン時代に比べて、世界中で大幅に弱まった。経済諸力を超える高い成長を試みる国は、どれほど例外的な場合も含めて、浮動的なブームと破たんの循環が起きるリスクに直面するだろう。

経済の潜在的成長率は概ね2つの要因で決まっている.そして制約される.すなわち,人口増加率と生産性上昇率である.レーガン時代には,それらがともに年率でおよそ1.7%の増大を示したから,アメリカの潜在成長率は3.5%であった.近年のアメリカの人口増加率と生産性上昇率はそれぞれ0.75%に落ちている,だから潜在成長率は1.5%で,レーガン時代の半分にも満たない.これを超える政策を取れば,財政赤字やインフレーションになってしまうだろう.

1000年にわたって,人口増加率の制限を破る経済はなかった.19世紀後半まで,世界の人口増加率は0.5%を超えなかったし,経済成長率が持続的に1%を超えたこともなかった.第2次世界大戦後,ベビー・ブームで人口増加率は2%に近づき,経済成長率は歴史上初めて4%近くに達した.

しかし今,世界中で,家族の子どもの数は減り,人口増加率は約1%まで低下している.若者が労働市場に追加される数は減るが,ある程度,それを生産性の上昇や移民で補うことはできる.しかし,トランプにはそのようなプランがない.支持者たちは,レーガンのように減税と規制緩和すれば新工場や新設備への投資が増え,生産性が高まる,と主張する.生産性を予測することも,計測することも難しいから,たとえば,今の2倍にあったと仮定しよう.それでも,成長率は2.5%であり,3.5%にはならない.

人口増加の時代は終わったのだ.アメリカでも,中国でも.異なる水準にある経済が,この変化を受けて成功の基準を見直すことになる.確かに成長減速の現実を有権者が受け入れることは難しいだろう.ポピュリストやナショナリストの実験が唱えられる.しかし,低成長は変えられない.

FT January 16, 2017

A bitter comedown from Donald Trump’s sugar high

Lawrence Summers

Project Syndicate JAN 16, 2017

The Trump Deficit

KENNETH ROGOFF

Alberto Alesina and Guido Tabelliniが示したように,野党の反対を無視できる政府は,財政赤字を増やすだろうか?

NYT JAN. 17, 2017

Presidents Have Less Power Over the Economy Than You Might Think

Neil Irwin

YaleGlobal, Tuesday, January 17, 2017

US Dollar Reigns Supreme for Developing World, But Not For Long

Will Hickey

Project Syndicate JAN 18, 2017

The Illusions Driving Up US Asset Prices

ROBERT J. SHILLER

投機的な市場は幻想に弱い.市場の愚かさを理解しようとしても経済予測には役に立たない.最近,アメリカの金融市場がそうだ.トランプは大統領として何をするのか,明確な,一貫した説明をしていない.トランプのような大統領はいなかった.近いとすればクーリッジだろう.アメリカのビジネスを信奉し,減税して非常に成功したが,1929年の大恐慌につながった.その財務長官はアメリカでも有数の大富豪であるアンドリュー・メロンだった.

NYT JAN. 18, 2017

Donald Trump and Janet Yellen Look to Be on a Collision Course

Neil Irwin

FT January 20, 2017

Donald Trump has to make start-up America great again

Gillian Tett


   米中経済

FT January 16, 2017

Aussie dollar heading for the rough

Jennifer Hughes in Hong Kong

米中の貿易戦争が始まれば、オーストラリア・ドルの為替レートは激しく影響を受ける。


   中国のグローバル戦略

FT January 16, 2017

China’s energy strategy: power and independence

Nick Butler

FP JANUARY 17, 2017

Xi Jinping, Head of World’s Largest Communist Party, Champions Global Trade

BY EMILY TAMKIN

火曜日、ダヴォスの世界経済フォーラムで、習近平主席が演説した。習は、グローバル貿易と既存の国際経済秩序の王者として登場したのだ。それは「反トランプ」を代表し、グローバル・エリートに称賛される演説だった。

ただし、習はグローバリゼーションへの支持を「経済的なもの」に限定した。グローバリゼーションは、そのマイナス面を取り除くために、積極的に管理されるべきである。また、開放性とは、経済以外の多様さを受け入れることである。

習は「ダヴォス・マン」ではない。グローバリゼーションを再出発させる前に、それを再定義するべきだ。

Bloomberg JAN 17, 2017

China's Yuan Woes Get Worse

Christopher Balding

FT January 18, 2017

Populism and China’s trade tensions with the west

Yukon Huang

FT January 19, 2017

Xi Jinping’s guide to the Chinese way of globalisation

Eric Li


   トランプの大統領就任

NYT JAN. 16, 2017

With All Due Disrespect

Paul Krugman

NYT JAN. 16, 2017

John’s Gospel of Trump’s Illegitimacy

Charles M. Blow

FT January 17, 2017

Donald Trump masters the art of the unexpected

Robert Zoellick

NYT JAN. 17, 2017

Marching to the Beat of Trump

By ARTHUR C. BROOKS and GAIL COLLINS

FP JANUARY 19, 2017

What Kind of New Beginning?

BY DAVID ROTHKOPF

表面的には祝福を表している。過去と同じく、4年ごとに、われわれの大統領が宣誓する。

しかし、2017年の就任式を、最新の民主主義を祝う国家行事とみなしてはならない。これはもっと暗黒の儀式である。葬列に近い。アメリカの多数派は、この儀式を祝祭ではなく、失われた諸価値、破壊された基準のための葬儀と見る。我々すべてが問題とするのは、これより良い者に変えることができるのか、である。

FP JANUARY 19, 2017

What to Really Expect on Day One of the Trump Administration

BY FP STAFF


   最富裕層と35億人

NYT JAN. 16, 2017

World’s 8 Richest Have as Much Wealth as Bottom Half of Global Population

By GERRY MULLANY

Oxfamによれば。グローバル化した世界では、所得分配がどうなっているのか? 世界で最も裕福な8人の資産が、人類の半分、36億人の資産を合計したものに等しい。それは昨年、62人であった。

ビル・ゲイツBill Gates, Microsoft創業者。$75 billion.

アマンシオ・オルテガAmancio Ortega Gaona, スペイン人。ファッション企業Inditex創業者。Zaraブランド。$67 billion.

ウォーレン・バフェットWarren E. Buffett, 投資ファンド、持株会社Berkshire Hathawayの会長。$60.8 billion.

カルロス・スリム・ヘルCarlos Slim Helú, メキシコの通信業界を動かす。$50 billion.

ジェフ・ベゾスJeff Bezos, Amazon創業者。$45.2 billion.

マーク・ザッカーバーグMark Zuckerberg, Facebook創業者。$44.6 billion.

ラリー・エリソンLawrence J. Ellison, Oracle創業者。$43.6 billion.

マイケル・ブルームバーグMichael R. Bloomberg, New York市長、Bloomberg L.L.P.創業者。$40 billion.


   ロシア経済改革

FT January 17, 2017

Russia needs a revolution to reform its economy


   トランプとグローバリゼーション

FT January 17, 2017

The economic peril of aggrieved nationalism

Martin Wolf

人類は部族的である。われわれは社会的,文化的な生き物であるから.文化は,家族だけでなく,創造の共同体において協力を促す.「ネイション」もそのようなコミュニティであり,祖先を共有する,という意味だ.

想像の共同体を創り出す能力は,人類の強みであり,同時に,最大の弱みでもある.それは人々を他者と分ける.今でも,指導者たちは専制支配を正当化し,時には戦争さえも正当化するために,ナショナリズムを利用する.

人類の歴史を通じて,社会間の戦争は常にあった.勝利は,少なくともエリートにとって,戦利品,パワー,地位をもたらした.戦争のために資源を動員することが国家の重要な役割であった.

繁栄をもたらす他の方法は,通商である.通商と戦利品とのバランスは複雑だ.ともに文化に支えられた強力な制度が必要だ.しかし,戦争は忠誠心を持つ軍隊が行うが,通商は正義に基づく安全がなければならない.

経済学がもたらした最大の貢献は,社会が互いに戦争して征服するより,互いに貿易するほうが豊かになれる,というアイデアだ.より裕福な相手と貿易するほうが利益をもたらす機会は大きい.しかし,貿易は部族への忠誠心を破壊する.それゆえ,グローバリゼーションに取り残された人々の支持を得るために,ナショナリズムや保護主義という,戦術を駆使する者が現れる.彼らは約束した繁栄をもたらさず,自分たちのために権力を得たいだけだ.

彼らは民主主義を人民投票型の独裁制に変える.熱狂を広め,敵を創り出す.信頼できる,独立の情報源,という考えを否定する.エルドアンも,プーチンも.かつてオーウェルが述べたように,何が真実か,は権力者が決める.ドナルド・トランプもそうだ.

FT January 17, 2017

Fate of free trade depends on the whims of Donald Trump

Alan Beattie

Project Syndicate JAN 17, 2017

In Defense of Globalization

JIM O'NEILL


   ヨーロッパ

NYT JAN. 17, 2017

The Rise and Fall of European Meritocracy

Ivan Krastev

Bloomberg JAN 17, 2017

Trump's Rejection of the EU Could Make It Stronger

Leonid Bershidsky

FT January 19, 2017

Brexit, Donald Trump and the threat to Europe

Philip Stephens


   トランプ外交の不安

NYT JAN. 17, 2017

Trump Threatens a Good Neighbor

By ENRIQUE KRAUZE

FT January 18, 2017

More questions than answers in Donald Trump’s Mideast rhetoric

David Gardner

FT January 19, 2017

Atlantic era under threat with Donald Trump in White House

Gideon Rachman

NYT JAN. 19, 2017

Are You Not Alarmed?

Charles M. Blow

トランプ政権は,アメリカの民主主義を破壊するだけでなく,暴力的な衝突も起こすだろう.これは民主主義とファシズムの問題,戦争と平和の問題だ.

中国の南シナ海における行動を制するという声明は,米中間の軍事衝突を意味するものだ.さらに,「1つの中国」政策も見直すと発言している.

トランプは,貿易における最大のパートナーであるだけでなく,北朝鮮をけん制する上でも重要な中国と対立し,北朝鮮の核問題は東アジア諸国で,特に日本が核武装することが抑止になる,と考えている.メルケルと握手しながら,プーチンを心の友と呼ぶ.NATOは「時代遅れ」である,と.

こんなことは起こりえない,と思うのか? そのうちもっと冷静になる? トランプの顧問たちは彼より利口だし,彼を黙らせるだろう?

あなたが望むとしても,そんな証拠はない.この男は思慮深くなかったし,注意を欠いていた.口から出まかせで話し,指先で戦争をささやき続ける.その相手はアフガニスタンではない.核武装した巨大な国だ.

あなたも武器を準備しておくべきだろう.

Bloomberg JAN 19, 2017

Russia Re-Enacts the Great Game in the Balkans

Leonid Bershidsky

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The Economist January 7th 2017

Japan’s economy: The second divine wind

Trumponomics: Men of steel, houses of cards

Fixing failed states: First peace, then law

British politics: Theresa Maybe

Theresa May: Steering the course

Demography in Japan: A negative-sum game

Decrimilising Zimbabwe’s sex trade: Less stigma, more competition

Fixing fragile nations: Conquering chaos

(コメント) 日本の社会と経済が高齢化することの現状と地方政府の取り組みを伝えます.トランプの保護主義が,鉄鋼産業の貿易摩擦にモデルを求めることは,iPhoneの生産を知らないからだ,と嘆いています.ジンバブエが売春を犯罪から外したとき,売春婦たちは喜んだけれど,それは早すぎた,と伝えます.ジンバブエ経済の不況が深まる中で,だれでも参加する売春市場の価格が急落したのです.

Brexitをめぐって,メイ首相の政治姿勢が問われています.指導者の持つ個性や思想が歴史の転換に反映されるのを,イギリスのジャーナリズムは克明に分析する優れた伝統を持っている,と思います.

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IPEの想像力 1/23/2017

トランプ時代が開幕し,予想を超える混沌が広がりつつあります.

パクス・アメリカーナと言われた時代には,多くの国で人々がアメリカのパワーを恐れ,嫌いながら,アメリカにあこがれ,アメリカを真似ました.多様な文化や思想が受け入れられる,豊かで,民主的な,アメリカのようになりたい.

しかし2017年のアメリカは,国際制度や条約,国際社会の規範を信用しない指導者を権力の座に就けました.アメリカは十分に武装しておく.アメリカの利益だけが優先されるべきだ.そう主張するトランプは,中国との武力衝突さえ準備している.お前たちは武装しないのか?

1980年代からバブルの時代まで,日本人の多くが,アメリカに非難されるより,積極的に協力する国際体制に参加する姿を思い描きました.しかし,今は違います.

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The Economistは,日本社会の高齢化による変貌を描いています(Demography in Japan: A negative-sum game).出生率の低下,平均寿命の伸長,極めて限られた移民流入,さらに,地方の若者が都市へ流出することも重なって,高齢化は日本全域で,静かな,圧倒的な破壊力を示し始めています.

東京郊外の多摩ニュータウンを取り上げます.年金生活者から住民税が取れないため,地方財政がひっ迫します.集合住宅を一気に取り壊して,その土地に新しい,より広い間取りの高層住宅を立て,若い夫婦と子育て家族を招きたい,と考えています.しかし,20代の人口は2000年以降,現在までに,1830万から1280万人へ減少し,2040年には1050万人になります.これは「ネガティブサム・ゲーム」である,と.

さらに山間に入り込んだ奥多摩では,46%65歳以上,26%75歳以上です.公共サービスの供給も困難であるため,役所は都市への移住を勧めていますが,老人たちは崩壊する家屋から動きません.インターネットと宅配によって生活を続けている,というのです.

奥多摩を維持・再生するプランがあります.1つは,ワサビの栽培です.新しい農業を興して,若い家族を呼び込む.そのために,無料のワクチン接種・学校給食・送迎バスを提供します.さらには,無料の住宅を提供するのです.約450軒ある空き家を,不動産税を避けるために町に寄付してもらい,これを若い夫婦に貸します.15年間住んだ後は,家賃を全額返還する,というわけです.

もう1つのプランは,外国人が日本語を学ぶ施設を誘致したことです.学生が減って廃校になった中学の建物を,語学教育のJerryfishに貸します.多くの国に施設を持つこの企業が,東アジアや東南アジアの国で日本語を学んだ若者たちに,日本で学ぶ施設を提供します.もし彼らがこの町を気に入り,定住するなら,これは移民政策の小さな自由化の始まりかもしれない,と結んでいます.

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私は,トランプがアメリカを乗っ取る世界では,高齢化を解決する社会的選択肢が影響を受ける,と思います.社会保障システムは,国内の社会的軋轢,グローバルな構造転換の圧力に対抗する,人々の互助的な精神に依拠しているからです.

東ドイツの工業地帯が崩壊し,財政基盤を失ったとき,人々は都市圧縮のモデルを模索しました.中国では,大気汚染や交通渋滞,住宅価格の高騰に対して,都市の戸籍を持たない住民に中級都市で戸籍を提供し,分散化を促しています.フランス,パリ郊外の移民・難民が多く住む地域では,自動車に放火する事件が相次ぎました.スウェーデンやデンマークでも,極右や保守派による攻撃は激しく,リベラルな移民政策が転換されています.

メルケルの,難民に対する門戸開放から生じた社会的・政治的危機は,トルコとの政治合意と難民施設への財政支援によって,より包括的な社会統合と,ヨーロッパから中東に及ぶ移民・難民レジームを模索しつつあります.イタリアの高齢化を支えるのは,ルーマニアから来た女性たち,介護労働者の供給だと読みました.ロンドンでも,フロリダでも,医療機関の底辺労働者を中心に,看護婦,医師まで含めて,多くの移民が働いています.彼らの権利が保障され,十分な賃金を得られるなら,その国の経済にも活力を与えるでしょう.

日本はどうでしょうか? もし若い移民たちの活力を拒むのであれば,医療,年金,住宅,ホスピス,そして外国の豊富な女性や若者の労働力を組み合わせ,「ノアの箱舟計画」とも呼べる,老人たちの互助組織を海外展開してはどうでしょうか? Fifo契約で労働者たちが遠隔地の鉱山で働くように,老人たちも温暖な保養地を,スタッフとともに交代して滞在します.中にはその街を気に入り,住民とともに暮らし続ける人もあるでしょう.

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テレサ・メイのBrexit戦略は,いよいよその中身に踏み込まねばなりません.保守党内を説得し,野党を説得し,国民を説得して,Brexit後のイギリスとは何か,具体的な目標と実現方法を問われています.そのとき,重要になるのは,彼女の生まれた町,家,学んだ大学と,そのときどきの言動,若い政治家を鍛えた保守党内の権力闘争です.メイが業績を残した内務省の管理体制や,Brexitを指揮する姿勢が批判されます.

習近平,プーチン,トランプの間で,たまたま安倍首相が接近していたプーチンとトランプの間に同盟ができることを喜ぶのは,あまりにも早計で,危険な大国間政治に頼る試みです.日本人の長期的な展望を描くものではありません.3人に共通するのは,戦後秩序から離脱した,ということでしょう.

安倍政権が長期化することの背景とは,日本社会と政治,ビジネスを動かす高齢者たちではないか.

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