前半から続く)


   プーチンの外国政治介入

FP JANUARY 6, 2017

How Trump Can Play Nice With Russia, Without Selling Out America

BY MICHAEL MCFAUL

Bloomberg JAN 6, 2017

To Deal With Putin, First Know His Goals

Leonid Bershidsky

ウクライナ介入、シリア介入、アメリカ大統領選挙介入、ヨーロッパのポピュリスト運動支援。なぜプーチンはこうしたことをするのか?

プーチンとその側近たちは、自分たちが戦争ではなくゲームの主役であると考えている。その勝利は経済的なものだ。ロシアの資産価値を高め、グローバルな経済ルールを書き換える。プーチンは何度も、リスボンからウラジオストクまでの貿易圏に言及した。ドイツでは、AfDの指導者、プーチン支持者のFrauke Petryが、アメリカ、ロシア、EUを含む緊密な経済統合を主張した。

ウクライナ危機が始まったのは、ロシアが隣国ウクライナをポスト・ソビエト型自由貿易圏に引き込むためだった。中東では、トルコやアメリカの同盟諸国に、ロシア製の武器を売り込んでいる。ロシアは核兵器を大量に保有している。アメリカやNATOにも、ロシアと戦争を起こす気はない。イラン型の核管理協定を結ぶことも考えられない。

プーチンに中途半端な封じ込め策は通用しなかった。ロシアとの戦争を始める覚悟が要る。そうでなければ、説得し、宥和するしかない。西側はそれを拒むが、現在の政策はプーチンの権力基盤を強化し、西側に友好的なロシア内の廃政府勢力を苦しめている。

プーチンの戦略目標を達成することは、矛盾した形で、現在のロシアの脅威を解消することにつながるだろう。

NYT JAN. 7, 2017

How We Fool Ourselves on Russia

By WILLIAM J. BURNS

The Guardian, Saturday 7 January 2017

Russian treachery is extreme and it is everywhere

Nick Cohen

FT January 10, 2017

The threat posed by Putin’s cyber warriors

NYT JAN. 10, 2017

Russia’s D.N.C. Hack Was Only the Start

By ROBBY MOOK

FP JANUARY 10, 2017

Stealing Elections Is All in the Game

BY STEPHEN M. WALT

優れた歴史家Marc Trachtenbergは,ロシアによるアメリカの大統領選挙に対する介入を激しく非難する主張は,ナイーブであり,明らかにダブル・スタンダードの証拠がある,と述べた.

彼は,アメリカ人がこうした介入に満足すべきだとか,無関心であることを求めているのではない.むしろ,われわれは驚くべきではないし,ロシアが新たに敵意を示したと考えるべきでもない,という.こうした介入は,そもそもアメリカが確立したものである.外国の政治を操作することは,長期にわたって,アメリカが得意とする手法であったのだ.

FT January 12, 2017

What Vladimir Putin really wants from Donald Trump

Philip Stephens

Bloomberg JAN 12, 2017

Trump's Team Looks Smarter on Russia

Leonid Bershidsky


   日本のTPP推進

FP JANUARY 6, 2017

Abe Wants to Be the Last Free Trade Samurai

BY WILLIAM SPOSATO

日本の国会はやっとTPPを承認したが,トランプ次期大統領はこれを破棄すると約束している.アメリカ抜きでは,TPPは無意味である,と安倍首相も認めている.

しかし,トランプのもたらすカオスを,安倍は機会とみる.アメリカが抜けた穴を日本が埋めて,アジアの貿易を促し,緊密な経済統合を推進することが日本の首相に求められるからだ.しかし,日本は自由貿易の推進役として不適当な国内産業の保護と規制を残している.

TPP商人は,自民党の伝統的な「外圧」戦略である.他方,アジア地域の貿易に関しては,中国が独自の考えを示している.中国はTPPを信じていない.むしろRCEPを推進している.中国が動かなければ,他のアジア諸国も参加しないだろう.

尖閣諸島や南シナ海の領海に関して,日本と中国は合意できるのか? それはトランプ次期大統領にかかっている.AppleiPhone30を超える諸国から約200の企業が部品を供給していることが示すように,貿易は2国間の不均衡だけを意味しない.

「もし米中間で経済戦争が起きるとすれば,それは米中貿易戦争ではない.アメリカと東アジアのすべての国との貿易戦争である.日本も含めて,この地域のすべての諸国が,中国経済と緊密に統合されている.」とコロンビア大学のカーティスGerald Curtis教授は語った.

NYT JAN. 6, 2017

No Closure on the ‘Comfort Women’

By THE EDITORIAL BOARD

NYT JAN. 8, 2017

Can the African Union Save South Sudan from Genocide?

By MAHMOOD MAMDANI


The Guardian, Saturday 7 January 2017

With Trump and Putin, Europe is now between a rock and a hard place

Natalie Nougayrède


●イギリス国民医療保険

The Observer, Saturday 7 January 2017

The Observer view on the crisis in the NHS

Observer editorial

FT January 13, 2017

Theresa May ignores NHS warnings at her peril


VOX 07 January 2017

Passing of Anthony B. Atkinson

Thomas Piketty


   中国とトランプ

Bloomberg JAN 8, 2017

How China Can Stop Trumpism

Michael Schuman

FP JANUARY 9, 2017

China’s New Silk Road Is Getting Muddy

BY JOSHUA EISENMAN, DEVIN T. STEWART

中国を新しい中心にする国際秩序に向けて,OBOR(一帯一路)はその主要な軸をなすものだ.しかし,この計画を成功させるには,兵站,政治,安全保障,金融における重大なリスクを克服しなければならない.すなわち,巨額の資金が無駄になり,混乱した債務諸国に取り巻かれ,無意味な巨大建造物が残されるかもしれない.それは時が経つことでわかるはずだ.

FP JANUARY 10, 2017

A New Way to Hold the U.S.-China Relationship Together

BY GAL LUFT

両国は世界経済の成長率を高めるために,インフラ投資を推進することに共通の利益を持っている.中国が市場開放を守り,中国に成長に依拠してすべての国が貿易や投資を増やすことを支持する,と表明したことは歓迎される.

FP JANUARY 11, 2017

Caught Between Trump and China, Taiwan Takes Checkbook Diplomacy to Central America

BY ROBBIE GRAMER

Bloomberg JAN 12, 2017

Uncertainty Fills the Taiwan Strait

Noah Feldman


   トランプ外交の危うさ

FP JANUARY 8, 2017

Trump Doesn’t Know What He Doesn’t Know About Foreign Policy

BY STEPHEN M. WALT

ドナルド・トランプ次期大統領が唱えるリアリストの外交政策を前提すれば,なぜ私や他のリアリストたちがトランプを支持しないのか,と疑問を示す者がいる.しかし,私はトランプを支持しない.

何より,外交政策は大統領の判断がすべてではない.トランプの利益相反,縁故主義,女性蔑視,富裕層への偏り,深刻な謬見と人種差別.

研究者としてキャリアを築くのは,ロジックと証拠に基づいた著述である.世界がどのように機能しているかを論証するのだ.研究者たちも間違いを犯すが,その姿勢は正直なことが前提である.トランプの外交政策に関する動きが,研究者たちを納得させることはない.

台湾の蔡英文総統と電話で話し合った.それは対中政策の重大な見直しである,という.しかし,そのやり方は外交として間違いばかりだ.なぜTPPを拒んで同盟諸国を苦しめるのか? ヨーロッパの場合でも,ロシアと和解しEUを軽視する.極右政治集団を称賛する.そのような火遊びは外交ではない.

トランプがこれまでの外交を失敗だったと批判しても,もっと悪い状態に導くこともある.既存の外交ドグマを批判するなら,もっと優れたものを示すべきだ.しかし,そのためには,アメリカの国益に関する明瞭な理解,国際政治や国際貿易の働き方に関する基本的な知識,他者の異なる見解にも共感する能力,信頼できる協力関係を他国と築くことが求められる.

もしトランプが今後大きく変わるとしたら,それはうれしい驚きであろう.しかし今,その証拠は何もない.

NYT JAN. 10, 2017

Bannon Versus Trump

David Brooks

この先の数年間、明らかに、アメリカの外交政策は、共和党の常連と、エスノ・ナショナリズムを掲げるポピュリスト、そして、ドナルド・トランプの関心が循環する中で放出される永久の混沌、によって形成されるだろう。

共和党の外交専門家たちは第2次世界大戦後の秩序に基づく大戦略を立てた。アメリカが指導する同盟、規範、組織で、各国の民主主義体制を結びつけ、平和を維持したのだ。彼らはこの秩序を維持し、拡大することを追求し、プーチンを、それに牙をむくオオカミとみなしている。

トランプがホワイトハウスに入れたエスノ・ナショナリズムを信奉するポピュリストたちは、こうした秩序を信用しない。2014年のヴァチカン会議でSteve Bannonが行った演説に、それはよく示されている。

・・・人間的な資本主義が野蛮な資本主義にとって代わられ、それが金融危機をもたらした。国民的な民主主義がクローニー資本主義、すなわち、グローバル・エリートによるネットワークに代わった。伝統的な美徳が、堕胎やゲイの結婚に代わった。主権を持った国民国家が、EUのような、不幸な多角的組織に代わった。

退廃し、衰弱した西側は、自信に満ちた、信念に基づくイスラム教的ファシズムに対して脆弱である。それこそ、われわれの時代の全地球的な脅威である。・・・

このような見方において、プーチンは貴重な同盟者である。彼自身が、多人種、多言語のグローバルな秩序を、強固な国民諸国家に置き換えようとしているからだ。

プーチンのイデオロギー担当者Alexander DuginBannonとを比較するのは面白い。それは20世紀の、2つの異なるマルクス主義を読むようなものだ。一方は、アメリカのキリスト教。他方は、ロシア正教だ。両方とも、世界史の壮大な理論を持ち、諸文明の終末論的な衝突を確信し、経済、道徳、政治の分析を結合している。両方とも、自分たちが国際ポピュリスト運動の緩やかな連携の一部である、という自覚を持っている。それはフランスの国民戦線、イギリスの独立党、などを含む。DuginBannonも、相手の重要さを認めている。

「われわれ、ユダヤ=キリスト教の西側世界は、(プーチンが語る)伝統主義者でなければならない。」とBannonは言う。「特に、ナショナリズムの前提を支持する、という意味で。」

先週、アメリカ情報部がロシアのハッキングを報告したことで、John McCain Lindsey Grahamのような共和党の外交分野の常連たちは、エスノ・ナショナリズムのポピュリストたちと衝突した。トランプは明らかに後者に属しており、Fox Newsと驚くほど多くの共和党議員がトランプに流れた。

もしトランプがプーチンほどの実力者であるなら、アメリカの大戦略は根本的に転換し、戦後のグローバルなコンセンサスを破棄して、地球規模で生まれつつあるさまざまな右派ポピュリスト運動と同盟するだろう。しかし、トランプはプーチンではない。プーチンのような規律、計算、経験、知識がない。Bannon, Michael Flynnたちは、トランプを革命的な大統領にしようとするだろうが、彼は外交エスタブリシュメントを率いる指導者になれない。注意を欠いた、予測できない、その瞬間の自分の地位以外は何に対しても基本的に無関心な指導者である。

ホワイトハウス内の摩擦は続き、権力の著しい混乱が爆発する。無数の驚くべきtweetがまき散らされるが、根本的な戦略の転換は起こらない。恐るべき政策も、優れた政策も生み出さない。

より重大な闘いは、共和党そのものがエスノ・ポピュリストの政党に転換するかどうか、である。ポピュリストたちは優位にある。彼らのイデオロギーには力があり、グローバリゼーションは弛緩している。その精神は衰弱し、われわれの経済的・文化的諸問題に答える力がない。


   トランプ時代のアメリカ経済予測

Project Syndicate JAN 9, 2017

Trumpian Uncertainty

JOSEPH E. STIGLITZ

経済予測は難しい.しかし,私はここ数年正しく予測できた.それはモデルによるより,基本的な力に注目したからだ.不平等は拡大し続けており,強力な財政刺激策は実行されなかった.その結果,2008年の危機から回復する過程は遅れたのだ.

それが政治的な結果をもたらしたことは明らかだ.しかし,なぜこれほど遅れたのか? なぜ人々の苦しみから果実を得たのが右派だったのか? 熱烈にグローバリゼーションを推進し,その過程で職を失った人々への支援を拒んできたのは,右派であった. 26の州で,底辺層への医療保険拡大をもたらすメディケイドの拡大を拒んだのは,共和党員だった.なぜ,他者を利用し,公平な税負担を免れることを自慢する者が,勝利を得たのか?

ドナルド・トランプは時代の精神をつかんだのだ.事態が悪化する中で,有権者たちは変化を求めた.今,彼らはそれを得るだろう.深刻な不確実性が避けられない.トランプは中国との貿易戦争に勝利すると信じているが,これはゼロサム・ゲームではない.

富裕層への減税とトリクル・ダウンの発想は間違っている.過激な発言,午前3時のTweet,レーガン革命の再現は,しばらく成功するかもしれない.しかし,いつまでか? その後はどうか?

2017年とその先には,予測不可能な海がある.

Project Syndicate JAN 10, 2017

The Age of Trump

Joseph E. Stiglitz

Project Syndicate JAN 11, 2017

The Challenge of Economic Inclusion

Christine Lagarde


   キンドルバーガーの罠

Project Syndicate JAN 9, 2017

The Kindleberger Trap

JOSEPH S. NYE

中国の習近平主席は,古代ギリシャの歴史家から由来する「ツキディデスの罠」を用いて,アメリカに警告した.それは,既存の大国(アメリカ)が新興の大国(中国)を極端に恐れることから,破滅的な戦争が起きる,というものだ.しかし,トランプはもう1つの罠にも注意するべきだ.それは,中国が強すぎることではなく,弱すぎることから生じる,「キンドルバーガーの罠」である.

キンドルバーガーCharles Kindlebergerは,マーシャル・プランの知的な設計者であり,その後,MITで教えた.そして,1930年代が深刻な不況となった原因について,アメリカがイギリスに代わって最大のグローバル・パワーになったとき,グローバルな公共財の供給をイギリスに代わって行わなかったからだ,と論じた.グローバルなシステムの崩壊は,不況,ジェノサイド,世界戦争になった.今,中国のパワーは増大しているが,グローバルな公共財の供給を助ける意志はあるのか?

ただし,ツキディデスの罠は歴史解釈について間違っている.イギリスはドイツの台頭を恐れて第1次世界大戦を起こしたのではない.むしろドイツが,ロシアの台頭を恐れていた.オーストリア・ハンガリー帝国の弱体化とスラブ民族主義の台頭があったのだ.また,古代ローマについても,アテネは急速に台頭しておらず,むしろスパルタと均衡状態にあった.

戦争は,非人格的な諸力によって起きるのではなく,困難な時代の間違った判断によって起きる.

Project Syndicate JAN 9, 2017

The Next World Order

ANA PALACIO

FT January 13, 2017

World leaders reckon with a global rebalancing

Klaus Schwab


   オバマ政権の評価

The Guardian, Monday 9 January 2017

Pity the sad legacy of Barack Obama

Cornel West

The Guardian, Wednesday 11 January 2017

Europe loved Obama. Trump’s excesses remind us precisely why

Anne Perkins

FT January 11, 2017

Barack Obama failed to fulfil promise of his Middle East policy

David Gardner

FT January 9, 2017

The implications of Iraq’s endless war

Nick Butler


   イギリスのIMF借り入れ

FT January 9, 2017

Review – ‘When Britain Went Bust’

Diane Coyle

1976, イギリス政府はIMF融資を受けた.それは政治家や官僚に強い影響を与えた.それは様々な弱点を解決しなかったことの結果であった.


   インドの通貨改革

NYT JAN. 9, 2017

The Cost of India’s Man-Made Currency Crisis

By THE EDITORIAL BOARD

NYT JAN. 9, 2017

Narendra Modi’s Crackdown on Civil Society in India

By ROHINI MOHAN

Bloomberg JAN 11, 2017

Modi's Setback on Black Money

Editorial Board

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The Economist December 24th 2016

Barack Obama: The agony of hope

Cambridge economist: Exams and expectations

Charlemagne: A warning from the past

Poor-world migration: The beautiful south

Free exchange: A cooler head

(コメント) (クリスマス特集号の後半です.)

アメリカを中東における戦争状態から離脱させ,金融危機後の経済回復に人種間の和解や低所得層への社会保障システムを提供しようとした大統領が,その成果を全く評価されないことについて,私には不満があります.そして,その理由が,国内政治における議会との対立,外交における失敗である,というのはその通りでしょう.

希望に始まった大統領が苦悩に押しつぶされる過程を見て,弱さと失政を非難する者に対して,アメリカ国民は反論するより,沈黙することを選んだのです.プーチンであれ,トランプであれ.ティー・パーティーであれ,イスラム国家であれ.

移民の多くは裕福な国に入れず,むしろ貧しい隣国で働いている,ということ,トマス・シェリングの訃報をめぐって,興味深い記事を読みました.

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IPEの想像力 1/16/2017

特集号の記事で,ケンブリッジの経済学について読みました.エコノミストとは何か? それに応じて,経済学とは何か? その答えも変わりました.

良いエコノミストの条件として,1924年にJ.M.ケインズは述べました.「エコノミストは,数学者で,歴史家で,政治家で,哲学者でなければならない.」

ケンブリッジ大学はイギリス帝国から秀才を集めて,経済学のフロンティアを開拓した.当時の試験問題は,学生たちが経済原理と時事問題とを組み合わせて考えることを求めた.例えば,1927年の試験問題は,財政の支出先,金の将来,株主の権利と義務,民主主義に代わるもの,などについて,3時間でエッセーを書かせた.統計学の試験はあったが,他の科目で数式はほとんど現れなかった.

現在のケンブリッジの学生は,新聞を読まなくても1年の期末試験に答えられる.2015年の,最終学年で受ける5ページのマクロ経済学期末試験は,ユーロ圏の性格が政府債務危機に影響しているか,というような政策の難問について尋ねた.複雑で,高度な数式モデルを理解している必要があった.特殊な領域の技術的な政策用具を学び,数学は必要だが,歴史を学ぶ時間はなくなった.

学生たちのテキストは,マーシャルの『経済学原理』から,ケインズの『貨幣,利子,雇用の一般理論』に変わり,その後,経済学のコンセンサスを築く役割は,アメリカ,マサチューセッツのケンブリッジに移った.

しかし,政治を分離した,限定的な政策科学,というコンセンサスが動揺する今,ハジュン・チャンのように,ケンブリッジの研究者たちは,経済学を政治の中に再統合し始めています.

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他の記事では,ノーマン・コンクェストが扱われました.「今から950年前のノーマン・コンクェストは,イギリスがかつて経験した最も激しい政治変化であった.それはまた,非常に暴力的な事件でもあった.」

それは恐るべき流血の惨事であったが,同時に,多くの進歩をもたらした,と記事は主張します.イギリスの経済は大きく変革されて,諸制度,貿易パターン,投資が改善された,と.イギリス経済とノルマンディーのヨーロッパ経済とは統合され,長期の経済ブームを実現したのです.1人当たり所得が増大し,南北格差を含めて,ノーマン・コンクェストが現在のイングランドを作った,と考えます.

征服王ギヨーム,のちのウィリアム国王は,ノルマン地方からチャネル海峡を渡って上陸し,亡くなった国王の義弟を殺害して王位に就いたのです.4000人を超えるイングランドの地主が追放され,その土地はフランスから来た貴族に与えられました.ウィリアムが命じて作らせた「ドームズデイ・ブック」は,イングランドの土地と資産を(鋤1本まで)詳しく記載された台帳で,支配の基礎になりました.

記事は,イギリスがグローバリゼーションを拒むことの愚かさと,その時代から続く南北格差がBrexitに与えた影響を指摘しています.

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近頃,京都も,奈良も,猛烈に寒い.・・・そんな風に思いながら,深い積雪に沈む北国の街並みを映像で観ると,そこに暮らすことの大変さが迫ります.それでも,マイナス10度,マイナス20度の凍土に,多くの都市があり,文明が築かれてきました.

冬が終わるまでに,多くの難民が命をなくすと言います.トランプ大統領の就任式が,シリア難民やアメリカ国内の貧しい移民たちに希望を与えることはないでしょう.世界の人口や富の分布を厳密に調べ,その利用に関して征服王たちが新しい言葉でルールを定めるとき,この猛烈な寒さで命を落とす者が十分に考慮されるのか,暗黒の時代にも,新しい思想や運動は世界のどこかで生まれているかもしれないな.・・・

雪の残る京都を走りながら,私はそう想いました.

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