IPEの果樹園2017
今週のReview
1/16-21
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ドイツの報道とポピュリズム ・・・情報革命のマイナス面 ・・・リベラルな民主主義 ・・・ポピュリストを理解する ・・・アメリカの地理と外交 ・・・トランプの偽政策 ・・・プーチンの外国政治介入 ・・・日本のTPP推進 ・・・中国とトランプ ・・・トランプ外交の危うさ ・・・トランプ時代のアメリカ経済予測 ・・・キンドルバーガーの罠 ・・・オバマ政権の評価 ・・・イギリスのIMF借り入れ
[長いReview]
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主要な出典 Bloomberg, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times,
The Guardian, NYT: New York Times, Project Syndicate,
SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, そして、The Economist (London)
[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
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ドイツの報道とポピュリズム
FP JANUARY 4, 2017
Blitzkrieg: Breitbart Invades
Germany!
BY
SUMI SOMASKANDA
「10月、19歳のドイツ人大学生が、南部の都市フライブルグで強姦され、殺された。彼女の死体は近くの川に捨てられていた。ひと月足らず後に、警察は17歳のアフガニスタン難民を逮捕した。彼は有罪判決を受けた犯罪者であるとわかった。2013年、ギリシャで殺人未遂の罪で10年の刑を受け、わずか2年で釈放されていた。その後、ドイツに難民を装って入っていた。」
これは重大な犯罪のニュースか? それは誰に尋ねるかによるだろう。ドイツの夜の主要ニュースはどれも取り上げなかった。全国ニュースでは地方の殺人を取り上げない、とTagesschauの編集者はいう。全国紙のDie Zeitも、誰が犯人かはっきりするまで取り上げなかった。
しかし、この対応は怒りを含んだ関心を呼んだ。指導的な政治家も、そのような姿勢が極右の影響を広めることに利用される、と批判した。ドイツの既存メディアは、これまでも移民危機に関する報道の取り上げ方を批判されてきた。ドイツのメディアに中東の報道を提供し、政治雑誌Internationale Politikの編集責任者でもあるSylke
Tempelは言う。「人々は、われわれが何か隠しているのではないか、と考えることをジャーナリストたちは知っている。」 「これにどう対処すればよいのか? 非常に難しい問題だ。」
アメリカの右翼メディアBreitbartがドイツとフランスへの進出を計画している、と公表した。ドイツのメディアやメルケル政権が、彼らの進出に良い条件である、と判断したようだ。反イスラムのPEGIDAがメンバーを増やしたし、右翼のポピュリスト政党AfDも支持を拡大し、地方選挙で当選者を出している。Breitbartのドイツ進出計画をAfDは歓迎した。
ドイツのニュース・メディアは、多様な意見、バランス、中立的な報道に関して、戦後体制に深く根差している。報道の仕方には戦後の政治主流派を前提し、強いナショナリズムを避け、穏便な合意形成を重視している。ドイツには、プライヴァシーを保護し、ヘイト・スピーチを禁止する法律がある。報道内容をチェックする多くの監視機関がある。
しかし、AfDは、ドイツ人がこうしたメディアの在り方に不満を高めている、と考えるのだ。
SPIEGEL ONLINE 01/06/2017
Democracy Under Pressure
Germany Balances Liberty and
Security in Face of Terror
By
SPIEGEL Staff
Bloomberg JAN 10, 2017
High Inflation, Low Rates Are a
Threat to Merkel
Leonid
Bershidsky
次の選挙でドイツの伝統的な政党にとって大きな脅威になるのは、移民で、おポピュリズムでもない。それは、ドイツ人の貯蓄がインフレで減少しているのに、ECBは金利をゼロ近辺に下げたままだ、ということだ。
AfDはそのホームページで、ドイツの預金者たちがECBの金融緩和政策により「収奪されて」いると書いている。
預金が好ましくないとき、貯蓄は他の投資に向かうのだが、ドイツの家計には株式投資の文化がない。単純性を重視して、ドイツ人が住宅を購入し、住宅価格が上昇している。しかし、保有率は低く、バブルは全く起きていない。低金利の利益を受けているとはいい難い。
ECBとドイツとの非難合戦の末に、ドイツの中産階級は金利引き上げを求めてもむなしく、かといって、ドイツ人が低金利で債務を楽しむこともない。
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情報革命のマイナス面
Project Syndicate JAN 6, 2017
Free Speech and Fake News
PETER
SINGER
アメリカ大統領選挙のおよそ1週間前に、ある人物がTwitterに、ヒラリー・クリントンはペドフィリア(小児性愛)の仲間の中心人物だ、と書き込んだ。その噂はソーシャル・メディアで広がり、右派のトーク・ショーでホスト役のAlex Jonesが、繰り返し、クリントンは児童虐待をしたとか、彼女の選挙運動責任者であったJohn Podestaが悪魔の儀式に参加していたとか、話した。YouTubeの投稿ビデオで、Jonesは「ヒラリー・クリントンが殺害し、切り刻んで、レイプした、すべての子供たち」に言及した。そのビデオは選挙の4日前に投稿され、40万回以上も視聴された。
Podestaは、しばしば、ワシントンDCのComet Ping Pongというピザ・レストランからメールを出した。クリントンのメール疑惑からの連想で、ペドフィリアの集まりについて、ピザ・レストランが疑われ、ハッシュタグ#pizzagateが使用された。この疑惑は、ある種のメッセージを自動的に広めるプログラムを使用し、あたかも多くの人がこの問題を真剣に懸念しているような印象を与えた。
選挙後になっても、NYTやワシントン・ポストがこれを否定しても、噂は広がっている。ピザ・レストランComet Ping Pongは嫌がらせや脅迫を受け続けた。マネージャーは警察に訴えたが、こうした噂も憲法によって守られている言論の自由だ、と言われた。
フェイク・ニュース、すなわち、「能動的に間違った情報を広めること」が、まじめなニュース・サイトのまとめた情報として流され、民主的制度の脅威になっている。イスラエルの国防大臣がパキスタンを核攻撃すると脅した、というフェイク・レポートもあった。
「沈黙を強いるのではなく、一層の言論をもとめる」ことが虚偽をあばく、という理由は、特に選挙において、ナイーブに思える。言論の自由を守る憲法の解釈を変える必要があるかもしれない。Jonesがクリントンについて言ったことは、もちろん、名誉棄損である。しかし、裁判には時間と金がかかる。通常、何年も。民事訴訟で名誉棄損を訴えるのは、事実上、一部の資産家に限られる。刑事名誉棄損に関する従来の慎重な適用は適当でなくなった。
インターネット時代の刑事名誉棄損に関して、考え方が変わるだろう。
FP JANUARY 6, 2017
Donald Trump Has the Keys to the
Most Invasive Surveillance State in History
BY
JAMES BAMFORD
FT January 7, 2017
Create the right conditions for
growing up with social media
Helen
Lewis
NYT JAN. 7, 2017
How to Destroy the Business Model of
Breitbart and Fake News
By
PAGAN KENNEDY
11月後半のある日、地球・環境科学の教授Nathan PhillipsはBreitbart Newsを観た。彼はそのサイトについて、「計画出産は女性の魅力を失わせ、狂わせる」といった、憎しみに満ちた見出しがある、と聞いたからだ。こうしたサイトに広告を載せて資金を与える会社があるのだろうか、と驚いた。しかし、大学が広告を出していることに衝撃を受けた。その大学の中に、彼自身が学位を得たDuke University’s
Nicholas School of the Environmentもあった。
環境科学を教える大学が、気候変動を否定するサイトで広告したいだろうか? Phillipsは、大学の事務室がどのようなサイトに彼らの広告が出ているかをしらないので、その「性差別的、人種差別的な」サイトにDuke大学が協力している、とTweetした。環境学科との混乱したやり取りの末に、その広告はBreitbart Newsから消された。
新しい消費者運動の動きが広がっている。それはオンライン広告のルールを書き換えるものだ。この1か月半で、何千もの活動家が「ヘイト・ニュース」の会社を始めた。虚偽、白人至上主義、イスラム教徒や、ゲイ、女性、アフリカ系アメリカ人、などへの攻撃を促す内容、こうした有毒な混合物だ。11月半ば、Twitterのグループ、Sleeping
Giantsが新しい運動のハブになった。Breitbartに広告を出している企業や団体に、その取り下げを求めている。また、シリコンバレーのハイテク企業や多様性を支持する億万長者たちが、Breitbartなどのサイトを支援している。彼らにも連絡を取って、広告を取り下げるように求めた。
広告はしばしば自動的に掲載されている。それでも企業は、ネオナチやハッカーの利益になるような行為をやめるべきだ。ハードコアのポルノビデオと朝食の広告を並べたいのか? 小さなコストで大きな聴衆を得られる、というのが広告の原則だが、彼らはそれを訂正するべきだ。オンライン広告の世界にも透明性が求められる。フェイク・ニュースやヘイト・スピーチの「企業家たち」は政治の在り方を変えてしまう。
新しい現実とは、こうした抗議活動がホワイトハウスの主要人物を憤慨させ、攻撃されることだ。トランプ次期大統領は、すでに、Breitbartの元編集者を上級顧問としてホワイトハウスに雇っている。トランプが企業に与えるダメージは、Lockheed MartinへのTwitterによる攻撃で、その株価が急落したことに示されている。
NYT JAN. 9, 2017
Who’s Really Placing Limits on Free
Speech?
Donald
P. Moynihan
FT January 10, 2017
Data capitalism is cashing in on our
privacy . . . for now
John
Thornhill
ラスヴェガスにおける家電の展示会では、つなげる、学習する機械が標語であった。
消費家電のテクノロジーは、生産性以上に、根本的な変化を経験した。それは、Brexit、トランプから、南シナ海まで、われわれの社会のかたちを作り変えている。データがますます経済的な価値を決め、パワーの行使や、われわれの最も内面的な生活にまで侵入している。
金融資本主義から、データ資本主義の時代になった、という者もいる。宗教の誕生と並ぶ、データ主義が登場する、という議論もある。このデータ革命のスピードと規模は、確かに衝撃的である。2016年には、毎日、550万のデヴァイスがオンラインで連結した、という推定がある。2020年までに、その総数は3倍以上に増大し、208億に達すると推定される。IoTは現実になる。
2016年第1瀬半期、Facebook
と Googleが、アメリカのデジタル広告料の85%を占めている、という驚異的な事実がある。その成功は、データを利用してターゲットを絞った広告を行う点にある。医療、輸送、エネルギーなど、多くの産業分野で、人工知能を駆使したデータ処理が行われている。
こうしたデータの利用は、消費者にとって大きな利益をもたらす一方、アイデンティティ、セキュリティ、プライヴァシーの問題が深刻である。
Sir
Nigel Shadbolt(the Open Data Institute)は、個人間で大きな非対称性があるとしても、プライヴァシーを諦めるのは早すぎる、という。技術は、人々からプライヴァシーを奪うことも、強化することも、なしうるからだ。次の情報革命は、消費者にとって情報の支配を強化するものだろう。
FP JANUARY 11, 2017
There Is a Cure for Fake News and
Dangerous Leaders
BY
DAVID ROTHKOPF
NYT JAN. 11, 2017
Online and Scared
Thomas
L. Friedman
Project Syndicate JAN 12, 2017
The Emergence of a Post-Fact World
Francis
Fukuyama
1990年代、インターネットとWWWが登場した。2000sの初め、ソーシャル・メディアが発達した。情報は解放され、カラー革命が世界各地で起きた。情報を抑圧することは不可能になった。
その積極的な側面とともに、暗黒面も現れた。旧体制の権力者は、インターネットを管理し、多数の検閲者を配置し、ハッカー軍団を形成した。自動配信プログラムによってソーシャル・メディアには誤情報があふれた。2016年、それらは目に見える形で、内外の政治を変えた。
主要な情報操作を行ったのはロシアだった。アメリカの選挙は嘘で充満し、ドナルド・トランプはかつてないほど偽情報や情報操作を多用した。オバマ大統領の出生を疑う“birtherism”を蔓延させた。
大統領選挙では、トランプは事実と異なることを主張し続けた。間違いであることが明白であっても彼は主張し、さらに悪いことに、共和党支持者たちは彼の嘘を罰しなかった。
正しい情報を示して対抗することは、残念ながら、偽情報をまき散らす人物や自動配信プログラムが支配するソーシャル・メディアにおいては無効である。良い情報が悪い情報を駆逐するとは言えない。
トランプの世界では、すべてが政治的なものだ。正しい情報を提供する公平な機関は存在しない。トランプは選挙期間中に、連銀議長を非難し、FBIの判断を拒み、腐敗していると攻撃した。諜報機関の、ロシアによるハッキングを示す調査結果も認めなかった。
こうした状態を続ければ、民主主義の諸機関が機能しなくなるだろう。実際、選挙資金の制限は無視され、議会は機能しなくなっていた。アメリカの選挙は、操作されている、政治的な偏りを組み込んでいる、あからさまな買収である、と攻撃されるようになった。すべての機関が信頼を失えば、全般的な信頼の死に至る。党派的な政治抗争が生活のすべてを蹂躙するだろう。
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リベラルな民主主義
FT January 6, 2017
At last, liberals are waking from a
long dream
Yuval
Noah Harari
2017年、リベラリズムは再生する。新しい社会的、政治的なビジョンが模索されている。1930年代、1960年代の危機がそうであったように、より魅力的なリベラリズムが発明され、再生する。
The Guardian, Monday 9 January 2017
Our democracy is broken: here's a
utopian idea for fixing it
Zoe
Williams
問題は、政治家ではなく、民主主義である。1930年代には、民主主義に代わるものがなんであるか、人々は知っていた。しかし、若者たちはそれを知らず、権威主義的な指導者に魅力を感じている。彼らは、官僚制、不誠実、行動の欠如、無責任、政府は自分たちを理解していない、という感覚を持っている。
投票は民主主義の一部、意思決定の最後でしかない。多くの具体的な改革リストがあり、行動することが求められている。貿易相手を非難したり、国境管理に支出を増やしたり、人種的な憎悪を高めるより、日々の行政を改革するべきだ。悲観主義や、祝面論ではなく、希望が市民の行動を促す。
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アメリカ民主主義の欠陥
Project Syndicate JAN 6, 2017
America’s Failures of Representation
and Prospects for Democracy
ROB
JOHNSON
Project Syndicate JAN 6, 2017
Federalism and Progressive
Resistance in America
LAURA
TYSON and LENNY MENDONCA
NYT JAN. 6, 2017
Rumors of Hillary Clinton’s Comeback
Frank
Bruni
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ポピュリストを理解する
Project Syndicate JAN 6, 2017
The Pitfalls of Strongman Populism
SERGEI
GURIEV
NYT JAN. 6, 2017
Can a Bombay Strongman Explain
Trump?
By
SUKETU MEHTAJAN. 6, 2017
Project Syndicate JAN 12, 2017
Trump Before Trump
BARRY
EICHENGREEN
ドナルド・トランプを理解するには、イギリスのイノック・パウエルEnoch Powellと比較することが最も参考になるだろう。パウエルは、1960年代後半から1970年代初めにかけて、熱烈なネイティビズム演説を行ったイギリスの政治家である。
トランプとパウエルとでは、異なった出身や経歴が見られる。しかし、1968年の悪名高い「血の河」“Rivers of Blood”演説によって、パウエルは雄弁家としての才能を駆使し、主流派の政治とは決別した。そして移民や、1968年の人種関係法を非難した。トランプの標的であるメキシコ系移民に当たるのは、パウエルにとってのインド系、パキスタン系移民であった。
しかし、トランプと異なり、パウエルの権力獲得は失敗に終わった。
第1に、パウエルの世論に訴える力は制限されていた。演説や少数のタブロイド紙に頼る活動は、主流のメディアから無視された。テレビ・ラジオ放送は圧倒的にBBCが支配しており、Twitterも、Fox
News or Breitbartもなかった。
第2に、パオエルはイギリスの議会制度を尊重した。彼自身がその中で育てられた。
第3に、当時のイギリス有権者が政治に抱く不満は、今のアメリカよりも限定的であった。
最後に、イギリスの政治システムが、パウエルのような一匹狼の活動を制限した。アメリカの大統領制は、それを効果的に抑制できなかった。
FP JANUARY 12, 2017
Donald Trump Is Making the Great Man
Theory of History Great Again
BY
DAVID A. BELL
偉大な指導者の個性は歴史を変えた。ヘーゲルやカーライルはそう指摘した。指導者たちは歴史のダイナミズムを体現するからだ。
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アメリカの地理と外交
NYT JAN. 6, 2017
Why Trump Can’t Disengage America
From the World
By
ROBERT D. KAPLAN
ドナルド・トランプは世界からアメリカを切り離すと脅している。そのような立場はアメリカの歴史を大きく逸脱するものではないか? 我々が論争で忘れている重要な要素がある。それは、アメリカ自身の地理である。
アメリカの物理的な位置とトポグラフィーは、われわれの外交政策の精神を提供する。だれでも知っているように、アメリカは北米大陸の温帯にある。かつてイギリスの地理学者Halford J. Mackinderは北米を、アフロ・ユーラシアの「世界島」から離れた、最も重要な「衛星」と呼んだ。アメリカは単に、物理的に旧世界の脅威や複雑さから切り離されていただけではない。アメリカは、世界の他の地域のすべてを合わせたよりも多くの、航行可能な河川流域を支配していた。この河川流域は、人口が非常に分散しており、大平原やロッキー山脈のように痩せた土壌であった。河川システムはアメリカの肥沃な土地にも広がっていたから、それらを豊富な鉱物資源がある中西部と結び付け、19世紀における人口の中枢間で財の移動を可能にした。この河川システムはミシシッピー河に流れ込み、メキシコ湾とカリブ海域に至った。こうして農場と、人口稠密地帯の都市とを結びつけ、グローバルなコミュニケーションの海路にもつながった。
アメリカは旧世界から一度も切り離されたことはなかった。「アメリカにとっての地中海」であるカリブ海を支配したことで、アメリカは西半球を支配する。それはモンロー宣言からパナマ運河建設によって完成した。西半球を支配することで、アメリカは他の半球における勢力均衡を決定する地位を得たのだ。アメリカはいかなる国も、あるいは、諸国家の同盟も、旧政界を支配することは許さない、というのが2度の世界大戦と冷戦の意味であった。
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トランプの偽政策
NYT JAN. 6, 2017
The Age of Fake Policy
Paul
Krugman
木曜日、大まかな推定で、7万5000人のアメリカ人がレイオフもしくは解雇された。労働者たちのいくらかは新しい良い仕事を得るだろうが、多くは少ない稼ぎになり、何か月も、何年も、仕事がない者もいるだろう。
もしこれがあなたに破滅的なことに聞こえて、何という破壊が起きたのか、と尋ねるなら、その答えは、いや違う、だ。木曜日は労働市場の普通の1日であったことを仮定したものだ。
アメリカ経済とは、要するに、1億4500万人を雇用する巨大な経済である。しかもそれは変化し続けており、産業や企業が興亡を繰り返す。常に、敗者もいれば、勝者もいる。平均的な1カ月に、150万人の「非自発的な」離職者があり、労働日ごとに7万5000人、という推定になる。
こんなことを言うのは、真の経済政策と偽の経済政策とを区別するためである。後者は、最近、ニュースで多くの注目を集めている。
真の経済政策とは、巨大かつ豊かなアメリカ経済において、十分に大きな資金を動かし、広範な経済の領域に影響する政策だ。もしthe Affordable Care Actを廃止するなら、それは中・低所得の家庭に対する数千億ドルの補助金を奪い、およそ3000万人を医療保険から排除することになるから、まさにこの定義に当てはまる。
逆に、偽の経済政策としては、トランプがCarrierの工場移転に介入したことだ。800人の雇用を救った、という報道もあれば、会社は機械化するだけだろう、という報道もある。つまり、トランプがしたことは宣伝でしかなく、大したことではない。偽の政策だ、という意味だ。GMやフォードの意思決定に対する攻撃もそうだ。
個々のケースに介入しても、それは19兆ドルの経済活動にとって重要なインパクトにならないのだ。
それにもかかわらずニュースになるのは、それが偽のポピュリズムに対応するからだ。トランプは白人労働者から多くの支持を得た。彼らはトランプを味方だと思っている。しかし、トランプの本当の政策は、貿易戦争を煽ることを除けば、従来からの共和党の政策である。億万長者たちへの大幅減税、そして、トランプの支持者の多くに影響する、公共支出の野蛮な削減である。
だからトランプは、あちこちで、わずかな雇用を守るために介入するのだ。実質的に、アメリカ経済を変えるものではなく、彼の宣伝戦略として。少なくとも、しばらくは。
また、企業の側にも新政権に接近する動機がある。
ニュース・メディアの自己満足が主流派のニュースにも表れている。トランプが雇用を救った、と繰り返し伝えることは、このような主張が本質的にフェイクであると注意しないなら、ジャーナリズムの裏切りである。
偽の政策に関する見出しが並ぶことで、真の政策は締め出される。
FT January 9, 2017
Trump presidency: America First or
America Alone?
Philip
Stephens
Project Syndicate JAN 10, 2017
Trump’s Defective Industrial Policy
DANI
RODRIK
ドナルド・トランプ次期大統領の間違った産業政策はすでに全面展開している。
誘惑と脅迫とを組み合わせて、トランプは企業の移転を思いとどまらせ、アメリカ人の雇用を1000人も守った、という。工場を海岸移転する企業は、その製品輸入に大幅に高い関税を支払わせる、と警告した。フォード、GM、ボーイング、ロッキード&マーチンにも、関税や政治契約を利用して脅迫する。
トランプのこうした政策スタイルは、以前の大統領たちと非常に異なっている。それは高度に彼個人に負う、気まぐれなやり方だ。脅しと嫌がらせを用いる。成果を自慢し、誇張して、現実に成功であるかのように嘘を述べる。それは公共の見世物であり、Twitter上の演技である。それは民主主義の規範を深く蝕む。
エコノミストは、政府とビジネスが適当な距離を取るように求める。公職にある者は民間企業と自分とを区別しなければならない。少なくとも、汚職や差別的な優遇を疑われないように。
しかし、ビジネスと政府との相互作用は、多くのアメリカ企業の成功にとって重要であった。Michael Lind, Stephen
Cohen, and Brad DeLongの政策分析は、連邦政府が提供した投資、インフラ、金融、その他の民間企業支援を挙げて、アメリカがハミルトン的な伝統の相続者であることを再認識させた。
アメリカの重要な技術革新には、しばしば政府の援助が貢献した。株式公開する前のApple and Intel、電気自動車のTesla、太陽電池のSolyndraなど。そして、2011年のSolyndra倒産の例が示すように、政府が行う多くの支援ケースは失敗した。最終的に、全体としてのポートフォリオが社会的なリターンをもたらしたか、を問うべきだ。
「開発国家」としてのアメリカを分析したFred Block and Matthew
Kellerによれば、市場原理主義者のイデオロギーとは異なり、「公的資金を受けた研究所の分散型ネットワーク」と公的融資プログラムの「寄せ鍋」が、民間企業とともに作用し、製品の市場開拓を助けた。バイオテクノロジー、グリーンテクノロジー、ナノテク、など、革新を実現した協力型ネットワークには連邦・地方政府の支援が重要であった。
こうした産業政策は、もちろん、東アジア諸国の政策の特徴であった。中国が世界の工場へと転換した輸出志向型モデルの成功は、政府による支援と指導なしに考えられない。中国がグローバリゼーションの受益者であると主張する者が、アメリカ政府も中国をまねて産業政策を行うことに警戒感を示すことは皮肉である。
中国と違い、アメリカは民主主義を支持する。民主的な国の産業政策は、透明性、説明責任、制度構築を必要とする。政府と民間企業との関係は、慎重に調整されなければならない。たとえば、自動車産業で多くの雇用が失われるとき、政府はどのように支援するべきか? 技術と市場に関して政府は重要な情報を得なければならない。また、親しい企業のポケットに公的資金を突っ込むことはできない。
トランプ式の産業政策は、この点で間違っている。一方で、彼が指名した経済閣僚たちは、ウォール街と大企業の幹部である。他方で、彼の政策決定Tweetは制度的な対話に関心がない。このような産業政策は、クローニズムと嫌がらせの間をふらふらするだけだ。中には利益をもたらすケースもあるだろうが、アメリカ労働者や経済全般を助けることはない。
Project Syndicate JAN 10, 2017
Hoping for the Best Against Trump
IAN
BURUMA
FP JANUARY 10, 2017
Can the GOP Stomach Trump’s Economic
Plan?
BY
PEDRO NICOLACI DA COSTA
(後半へ続く)