(前半から続く)
● グローバリゼーション以前
NYT DEC. 30, 2016
Clove Trees the Color of Ash
By
AMITAV GHOSH
多くの国で人々は過去を懐かしむ。もっと統合されていない、もっと確実な時代があったはずだ、と。しかし、そうだろうか? グローバル化しない世界とは、どのような世界か?
かつてモルッカ諸島と呼ばれた、インドネシアの島々に、地球上でここにしかない香辛料があった。千年以上も人々はスパイスを争い、富の源泉となった。中世の数世紀には、ヴェニスがスパイス市場を事実上独占した。
グローバルなコネクションのない世界は想像することができない。それはいつも存在し、恐るべき影響を広めた。しかし、19世紀の西側による「自由貿易」が中国にアヘンを広めたように、制約のないグローバリゼーションを称賛することは間違いだ。
コスモポリタニズムも、パロキアリズム(地域に閉じこもった偏見)も、それ自体が美徳ではない。何をもたらすものか? 何が目標なのか? と問うべきだ。
YaleGlobal, 5 January 2017
Alaska Airport Is a Big Link for the
Global Supply Chain
Will
Swagel
● 市場の改善
NYT DEC. 30, 2016
To Make the World Better, Think
Small
Arthur
C. Brooks
The Guardian, Thursday 5 January
2017
The free market isn’t working – and
Labour now dares to say so
Clive
Lewis
●
歴史と世界経済
FT December 31, 2016
A year of riding out global economic
shocks
FT January 4, 2017
The risks that threaten global
growth
Martin
Wolf
世界経済のフロンティア、特にアメリカにおける技術革新と、遅れた経済によるキャッチアップが、グローバルな経済の成長を支持する。キャッチアップは続くが、技術革新のスピードは減速するかもしれない。
戦争、インフレ、金融危機のような、ショックを避けること。ユーロ圏の解体や中国経済の混乱がないか。さまざまな地政学的危機の発生。
FT January 5, 2017
Martin Wolf: The long and painful
journey to world disorder
Martin
Wolf
人類は歴史から教訓を学ぶことができるのか? 1914年から1945年までに経験した、激しいナショナリズムと外国人排斥の時代に戻るのか? 1980年代に、進歩、調和、民主主義を信じた、市場開放とソ連崩壊によって始まる新しい世界、という希望は灰燼と化した。
現代のグローバルな経済的、政治的なシステムは、20世紀前半の惨禍に対する反応から生じた。その時代はまた、19世紀のかつてない、高度に不均等な経済進歩がもたらした。工業化、ボルシェビキ革命、大恐慌、1930年代のヒトラーと日本の軍国主義。
グローバリゼーションの逆転と紛争の時代が続くのか? あるいは、西側ではない諸大国が、特に中国とインドが、グローバルな協力的秩序を維持する上で重要な役割を果たすようになるのか? それが問題である。
● フェイクニュース
FT December 31, 2016
A sharp US riposte to Moscow’s cyber
breach
NYT DEC. 31, 2016
Lessons From the Media’s Failures in
Its Year With Trump
Nicholas
Kristof
Project Syndicate JAN 3, 2017
Comrade Trump and the Truth
CHRIS
PATTEN
嘘が公共の議論や主張において真実を締め出すことを許してはならない。嘘を流すソーシャルメディアには事実で対抗せよ。フェイクニュースや偏見を流す共謀者には挑戦せよ。真実を歪めるテレビやラジオの番組には電話で抗議せよ。その広告主には意見を述べよ。コミュニティ指導者たちは行動するべきだ。
Project Syndicate JAN 4, 2017
Trump’s Unrealpolitik
SHLOMO
BEN-AMI
NYT JAN. 5, 2017
Why Rural America Voted for Trump
By
ROBERT LEONARD
●
フランス
FT January 1, 2017
France contemplates breaking with an
unsustainable status quo
Wolfgang
Münchau
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政治参加より自殺
FT January 1, 2017
How Japan resists the populist tide
John
Plender
なぜ日本だけ政治エリートに対する反発は示されないのか? 20年間も低迷し、世界の平均を大幅に超えた自殺率であるのに、ポピュリズムは広がらない。
日本は1990年代後半からデフレが続き、生産性上昇率も低い。Richard Koo によれば、1990年代の悪名高いバブルで国民が失った富は、1990年から2015年までに株式と不動産だけで、1500兆円と推定される。それはアメリカが1930年代の不況で失った富の、GDP比で観て3倍である。
トランプやグリッロはいない。ナショナリストの極右政治家で、南京大虐殺は中国のでっち上げだと主張する石原慎太郎はいたが、有権者に支持されなかった。
日本の例外性は、その社会の階層性、同調性、包括性に求められるだろう。合意を重視する姿は2011年の震災と津波で示された。不平等は拡大したが、英米に比べれば低く、犯罪率も驚くほど低い。人口が減少しても移民を受け入れない。
日本はまた、グローバリゼーションの勝者である。貿易黒字を維持しているし、経済が失われた10年に苦しんだ、というのは間違いだ。それは人口が減少したからであり、1人当たりの成長率ではアメリカよりも良い。失業率はピークでも5.5%、今はわずか3%である。
しかし、日本の状態はバラ色ではなく不均等だ。企業に比べて家計は苦しみ、狂気のような国債の累積が将来世代にはある。大都市の高齢者は安定した、年功賃金を享受したし、今も職を維持しているが、若者たちは低賃金のパートタイム労働者だ。
見えないところで怒りがたまっているかもしれない。若者は老人ほど投票に行かず、彼らの怒りは政治に届かない。むしろ、高い失業率に示される。
Bloomberg JAN 2, 2017
Japan Takes On Its Workaholics
Noah
Smith
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メルケル
NYT JAN. 1, 2017
Angela Merkel, Russia’s Next Target
Jochen
Bittner
FT January 2, 2017
Angela Merkel leads Europe’s fight
for liberal values
FP JANUARY 3, 2017
Merkel Should Beware Bavarians, Not
Populists
BY
DAVID CLAY LARGE
SPIEGEL ONLINE 01/04/2017
Trump's World Order
Merkel Anticipates Frosty Relations
with U.S.
By
SPIEGEL Staff
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政治家たちへの問い
FT January 2, 2017
You can only turn back the clock on
liberalism so far
Janan
Ganesh
FT January 2, 2017
Trump, Putin, Xi and the rise of
nostalgic nationalism
Gideon
Rachman
ロシア、中国、トルコ、ハンガリー、アメリカ、イギリス、日本、インド、多くの国で懐古的なナショナリズムが政治的勢力配置を再編し、支持層を拡大している。彼らが外部勢力の脅威を喧伝し、「内部の敵」を創り出す政治手法は、危険である。しかし、すべての国で支持されているわけではない。カナダやオーストラリアはそうではない。
イギリスやアメリカはなぜ変わったのか? グローバリゼーションの影響は無視できない。新興諸国、アジアの追い上げも関係あるだろう。
Project Syndicate JAN 2, 2017
The Five Lessons of Populist Rule
SŁAWOMIR
SIERAKOWSKI
ポピュリストが政策に失敗して自滅する、という予想は正しくない。ポーランドも同じような混乱や批判を予測されたが、彼らは急速に改革を実行した。
NYT JAN. 3, 2017
The Snapchat Presidency of Donald
Trump
David
Brooks
NYT JAN. 3, 2017
Threat to U.S. Democracy: Political
Dysfunction
Eduardo
Porter
Project Syndicate JAN 4, 2017
Lessons from the Populist Revolt
Michael
Sandel
2016年の激動は、政治エリートたちが人々の本当の苦悩を理解せず、解決できなかったことから生じている。Brexitやトランプを支持した人を,単に偏屈や人種差別主義と非難する政治は間違っている。
進歩的な諸政党は、4つの主要問題に答えるべきだ。
1.所得の不平等。通常,より大きな機会の平等が答えとして示される.すなわち,再訓練,高等教育,差別の撤廃.しかし,多くの者にとって,こうした約束には意味がない.社会的な成功を理想としてきたアメリカでも,貧しい両親に生まれた子供は成人しても貧しい.最下位5分の1の階層で生まれた子どもの43%が同じ階層にとどまり,トップの5分の1に入るのはわずか4%である.
進歩的な人々は,ますます離れる社会的な階段を人々が登ると励ますより,直接,富と権力の不平等を是正するべきだ.
2.能力主義の傲慢。公平な能力主義,社会的な地位は努力と才能を示すものだ,という主張を容赦なく求めることは,人々が成功や失敗を解釈する上で,道徳的な腐食をもたらす.能力主義のシステムでは,勝者が自分の成果を道徳的に優れている結果と考え,敗者を見下すようになる.敗者はシステムが操作されたと考え,また彼らが失敗に責任を問われるシステムに失望する.
オバマやクリントンは機会を強調し,トランプは勝者と敗者を語った.アメリカ政治の最も深い亀裂は,高等教育を受けた者と受けていない者との間にある.
3.労働の尊厳。技術変化やアウトソーシングにより職が失われることは,社会が労働者の役割に十分な敬意を払っていないという意味である.経済分析の焦点は,モノづくりではなく,カネの管理にシフトした.ファンド・マネージャーやウォール街のバンカーが法外な収入を得て,伝統的な意味の仕事にはもろい,不確かな敬意しか示されない.
ロボットやAIが現在の職の多くを時代遅れにしてしまい,ベーシック・インカムを与えることが提案される.それは歓迎するべきか,それとも抵抗するべきか? 仕事の意味や良い生活におけるその位置づけを,政党は問われるだろう.
4.愛国心と国民的コミュニティ.自由貿易と移民はポピュリストが最も取り上げる怒りの対象である.それは経済問題として長期的に対処すべきことだが,同時に,人々が国家に寄せる情念と関係している.安価な商品や安価な労働を国家が優先するのは,自分たちの職場を裏切る行為ではないか.その感情は醜い形で表現される.リベラル派は彼らを非難するのではなく,仲間である市民を,国家の連帯感を,どのように維持するのか?
これら4つの不満に応える中で,われわれの時代の政治が形成される.
Project Syndicate JAN 4, 2017
Can the EU Survive Populism?
DANIEL
GROS
EUはポピュリストたちの標的になっている。ポピュリストたちは、人民の意思が歪曲されている、と民主主義の独立した制度を批判する。しかし、代表制民主主義では、その時の多数が得た権力を制限する必要がある。ポピュリストはこうしたリベラルな民主主義を否定する。彼らはEUの代表する者を攻撃する。大量移民の時代に、アイデンティティ政治が強まるのは避けられず、多文化主義の理想は軋轢を生じる。
EUが、もし経済問題で有権者の実際的な不満を生じたのであれば、そのやり方を変えることができる。欧州委員会は、事実上、緊縮策を放棄したし、カナダとの自由貿易協定は中身が見直された。しかし、EUが代表するもの、リベラルな民主主義、開放型の経済、ヨーロッパの市民が理想とする生活を否定するなら、それは変えられない。
ポピュリストたちは実現できない多くの約束をする。それが失敗したとき、人々の意思はEUに戻るだろう。そのときにまだEUが存在すれば。
The Guardian, Thursday 5 January
2017
As well as protesting, Poles need to
strengthen their state
Timothy
Garton Ash
ポーランドの民主主義は若く、非常に弱い。
ポーランドでLaw and Justice party (PiS)が権力を得たことは、有権者の選択として、その政策を追求することが許されるだろう。そのイデオロギー的、文化的な政策綱領はナショナリストのポピュリスト政党であることを示しており、私は嫌いだが。
しかし、PiS政権が民主主義の諸制度を自分たちの権力維持や政策のために改変することは許されない。本来、権力者のこうした行動を制限し、阻止するべき民主的制度が、ポーランド国民によって強く支持されていないことに驚いた。
FT January 5, 2017
Trump and Brexit-style politics long
exploited by left and right
Edmund
Fawcett
Project Syndicate JAN 5, 2017
Democracy’s Broken Promises
ANDRÉS
VELASCO
近代の、競争的な、代表制民主主義では、政治家は遠くの存在で、信用できない。ポピュリストはその欠陥を攻撃した。
民主主義の政治家たちは、有権者を説得して利害を調整し、同盟化を組織する。それは選挙資金が明確で、利益相反がなければ、健全な政治過程である。しかし、候補者が有権者の不安や怨嗟を煽るとき、不健全になる。しかも、社会が複雑になり、グローバリゼーションや技術変化の影響を政治が効果的に管理できないことで、政治的緊張は高まる。
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トランプのビジネス介入
Project Syndicate JAN 2, 2017
“America First” and Global Conflict
Next
NOURIEL
ROUBINI
FP JANUARY 4, 2017
Trump and Xi Need a Timeout
BY
ZHENG WANG
FT January 5, 2017
The protectionist trade fallacies of
America First
トランプの怒りを恐れて、フォード社は16億ドルのメキシコにおける新工場建設をキャンセルし、ミシガン州の工場を拡大すると発表した。
たとえトランプがこうした介入を続けても、アメリカの雇用を増やすことはないだろう。実業界の指導者は政治的な介入を懸念し、効率的な国際的サプライ・チェーンは混乱し、アメリカの伝統的な貿易相手国にも保護主義やポピュリズムを生み出すだろう。
アメリカ・ファースト政策は、すべての国にゼロサム的な重商主義思考を広める。
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デジタル世界に住む
Project Syndicate JAN 2, 2017
Charting Our AI Future
LUCIANO
FLORIDI
ガリレオは自然を数学で書かれた本とみなし、物理学で解読できると考えた。われわれの世界は数字(0と1)で書かれており、コンピューター科学で読まねばならない。
この世界では、多くの職務を人間よりコンピューターの方がうまくやる。魚が水の中に住むように、デジタルな情報空間はわれわれの自然の性質になじまない。われわれ、アナログの有機体は、新しい住環境に適応するのであり、アナログとデジタルの要素が混じったものが含まれる。
新しい職は生まれるし、社会の分断化を抑えるために、規制や法律、新しい税も必要だろう。しかし、「すばらしい新世界」や「ターミネーター」が来る、という警鐘は間違いだ。
Project Syndicate JAN 3, 2017
Rethinking Labor Mobility
HAROLD
JAMES
グローバリゼーションや技術変化によって仕事を失う人々に,条件も付けず,ベーシック・インカムを給付することが主張されている.それは悲惨な結果につながる戦略である.無意味な活動や,何もしないことに支払いを受ける人々は,社会から一層,切り離され,孤立してしまう.それを取り入れた地域では条件が改善せず,不満が高まるだろう.
人々が経済に創造的に,意味ある形で参加するような,機会を下がるべきである.急速な技術・グローバル化の時代から「敗者」に何が起きたか,研究するべきだ.
18世紀後半から19世紀の産業革命の時代に,特に繊維産業で熟練労働者たちが大規模に職を失った.彼らに対して政府が補償したのではなく,彼らが大西洋を越えて移民した.そこで新しい仕事を得て,繁栄することもあったのだ.
しかし1世紀ほどして,大規模な移民は終わった.多くの国は移民流入を禁止した.ヨーロッパの農民たちは,世界中で拡大する食糧生産により,仕事を失った.彼らは過激な政治集団を形成し,ますます戦闘的になるナショナリズムや,経済.社会的なユートピアを混ぜ合わせた主張に向かった.こうしたグローバリゼーションへの反対運動が,第2次世界大戦で頂点に達したが,国際秩序を破壊した.
第2次世界大戦後,工業諸国の政治家たちは新しい方法で農民たちの困窮を回避した.農業に補助金を与え,国際競争から保護したのだ.この政策が成功したのは,農産物が無駄なものでなかったことと,農民は都市の新しい職業に向けて移動したからだ.それは製造業やサービスの高賃金職であった.
現代のグローバリゼーションはこうした分野の職場を脅かしている.だれも望まない,時代遅れの職を保護することは無駄である.若者には都市部のダイナミックな職場があるかもしれないが,より大きな適応力と弾力性を求められる.
最も重要な移動性は,物理的な意味ではなく,社会的,心理的な意味での移動だ.残念だが,アメリカや多くの工業諸国では,元気のない,硬直した教育システムがそれに対応していない.
The
Guardian, Wednesday 4 January 2017
Universal basic income is not a
magic solution, but it could help millions
Anthony
Painter
それは万能薬ではないが,多くの人々を助けるだろう.
NYT JAN. 4, 2017
From Hands to Heads to Hearts
Thomas
L. Friedman
なんでも機械でできる時代になれば、私たちは人間について新しい定義を求められる。人とモノとを区別するのは、「考える」ことではなく、「愛すること、気遣うこと、夢見ること」である。
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アトキンソンの訃報
FT January 3, 2017
Sir Tony Atkinson, economist and
campaigner, 1944-2017
Chris
Giles and Sarah O’Connor
NYT JAN. 3, 2017
Anthony B. Atkinson, Economist Who
Pioneered Study of Inequality, Dies at 72
By
SEWELL CHAN
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国境警備と老人介護
FT January 3, 2017
A public-private partnership will
solve Europe’s migrant crisis
Erik
Prince
リビアの国境警備体制を、より広範な再生プログラムとともに、展開する。
YaleGlobal, 3 January 2017
Modern Servitude: Romanian Badante
Care for Elders in Italy
Raluca
Besliu
ルーマニアの貧しい女性たちが,イタリアの増大する老人たちに介護サービスを提供している.それは,厳しい条件の契約労働だ.彼女たちはイタリア語も話せない.
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ブラジル
NYT JAN. 5, 2017
The End of the World? In Brazil,
It’s Already Here
Vanessa
Barbara
●
フェイスブックのゼッカーバーグ
FT January 6, 2017
Mark Zuckerberg walks off to look
for America
Robert
Shrimsley
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The Economist December 24th 2016
The year of living dangerously
Internet security: Breaching-point
The Chinese economy: Smooth sailing, until it’s not
The state of states: Our country of the year
Brentry: Domesday economics
Banyan: The politics of taking offence
Disney’s Utopia on the I-4: Yesterdayland
(コメント) インターネットでも犯罪行為やフェイクニュースを明確な基準で取り締まる必要があります.中国経済が安定しているように見えるのはいつまでか? ディズニーが築いたユートピア都市と産業技術社会の理想を,アメリカ人は今も楽しみます.
2016年の優秀国家賞を受賞したのは,困難な状況から成長したエストニア,アイスランド,困難を克服しようとしている中国と台湾,リベラルな社会と開放経済を支持するカナダ,を抑えて,内戦終結に合意したコロンビアです.他方,理想的な政治の革新を遂げたはずのインドネシアにおける,アイデンティティ政治の過激化を操る軍や警察の政治介入は大きな不安です.
最も面白かったのは,イギリスのノルマン・コンクエストです.アラブの春やBrexitに,グローバリゼーションと技術革新の論争が重なるほどの,過激な歴史を紹介しています.
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IPEの想像力 1/9/2017
NHKドキュメンタリーで、一本のペンで描く、池田学の絵を観ました。細い線だけで描く、超細密技法です。彼はアメリカの美術館に招かれ、その地下で3年かけて壁画を制作します。
1枚の巨大な壁画ですが、何かもっと語り掛けてくる、静かな、しかし、饒舌な、想像力を刺激する仕掛けが、いっぱい詰まったジャングルジムを登るような感覚です。
絵本か、漫画を観るような物語性
謎解きや発見、解釈を求める寓話性
絵を観て想うのは、日本の漫画文化やアニメの開示したダイナミックな世界でした。もちろん世界中に、さまざまな壁画や宗教画があり、独自の風刺漫画もあるのでしょう。
宮崎駿 ・・・バベルの塔 ・・・SF小説
これは空想であり、誰かを非難したり、何かを攻撃したり、現実を嘆くわけではありません。その意味では、宿命論、文明観、終末思想、復活神話、宗教画のようなものだと思います。
ユートピアとディストピア ・・・都市国家 ・・・旅 ・・・遠隔地商人 ・・・巡礼 ・・・布教
しかし、明らかにその空想はリアルな世界から集まった刺激により得られたものです。画家のイメージが凝集し、創り出した、空間的な広がりと集積が、大きな塊、流れとなって、観る側のイメージを圧倒し、目の前の景観を一新します。
地震や津波、天災の破壊力 ・・・殺戮、戦災ではなく ・・・原発事故、自然破壊を問うわけでもない ・・・再生を願う ・・・死と誕生のサイクル
バラバラであった私たちの経験と感性が、大きなものの中に吸い込まれ、埋め戻されるように、1枚の絵を眺めてしまうでしょう。
寄せ集め ・・・自然 ・・・生物 ・・・社会インフラ ・・・祭典 ・・・祈り
「観る」とは絵の中にその時代、その社会を反映し、「描く」とは画家が生きる社会的な行為なのだ、とその「絵」の成り立ちを説明します。
集団的な悲しみや喜び
生命の連鎖
苦悩はある
希望もある
傷つく者や亡くなる者はあっても、殺戮や憎悪は表現されないようです。文明の虚構、醜悪さ、非人間的な、作為的・詐欺的な側面が、画家の主要なイメージに入り込むことがなかったのは、リアルではないとしても、観る側にとって幸いです。イメージは画家と家族の善良な人柄に育つのでしょう。
同じ町に住む少年が、何度も彼のスタジオを訪れ、感謝の手紙を渡してくれます。
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大学ラグビーの決勝戦、「帝京大 対 東海大」は歴史的な熱戦でした。これほどの激戦を観たことはない、と思ったほど。
あまりの力闘に、観ている側の体が次第に硬直し、息を止める瞬間が続きました。
鍛え上げた体と体で激しくぶつかり合う、ラグビーに注ぐ情熱がすばらしい。
ほとんど反則のない試合に、真剣勝負の鮮烈な闘志が輝きます。レフェリーの判断、試合を止めて再開するときの明確な説明、選手たちへの指示とキャプテンへの注意が、この試合の興奮を維持しました。それに従い、集中力を持続して全力を出し尽くした、選手たちの紳士的態度も立派です。
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にっぽん紀行「Tokyo Okubo オオクボ・ドリーム」で、インドから来たユーソクさんは言います。「将来の不安はあるけれど、働けることは幸せだ。」
駅のアナウンスは24か国語、住民の3割は外国人。家族を残してきたインド人の男性。娘の学費を稼ぐためアルバイトを掛け持ちする父親。仕事をなくして部屋を出た中国人の若者は、仏像が置いてある民家の1階で写経します。
日本が、だれにとっても夢を実現できる土地になってほしい、と少しでも多くの人が願うように。それが、私の今年の抱負です。
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