前半から続く)


● リアリストの守るリベラルな社会

FP DECEMBER 23, 2016

The World Can Have Peace and Prosperity, If It Wants

BY STEPHEN M. WALT

海外における平和や善意の見通しは失われていく。内外の政治が暴力と紛争に落ち込むのを避けるには、何が間違っていたのか真剣に反省し、現在のアプローチを再考するべきだ。

私は、国際平和がアメリカの国益だ、という論説を1年前に書いた。しかし、大統領候補たちは誰もそれを主要なテーマにしなかった。それどころか、1人の候補はさまざまな異常な発言、好戦的な態度を繰り返し、最後には、この男が勝利した。

アメリカだけでなく、EUも緩やかな解体に向かっているように見える。シリアは壊滅された土地となり、Afghanistan, Yemen, Somalia, Iraq, South Sudan, and Libyaは、なお暴力に沈んで、その終わりが見えない。アジアの政治情勢もパワー・シフトが始まり、アメリカ次期大統領は「1つの中国」政策を見直し、TPPを破棄すると述べて、中国を挑発しながら管理し、アジアにおけるアメリカの地位を下げるつもりのようだ。

国家主権に対するウェストファリア型アプローチの優れた点は、明快な境界線を引き、違反行為を即座に指摘できることだ。この特徴によって、戦争を不可能にすることはできないが、攻撃を明白にして、国家が知らない罠を踏んで偶発的な戦争に陥りにくくした。国家主権の規範は失われ、他国への介入手段がより多く、しかも高度になるにつれて、国家は、他国が国内の政治に介入することを恐れる理由が増え、相互に危険を高め合い、報復を繰り返すようになる。ハッカー、サイバー兵器、ドローン、その他の軍事兵器が広まる世界では、特に指導者がリスクを無視している場合、誤算や、不慮のエスカレートを起きやすい。

アメリカ国内の平和に向けた展望も悪化している。Steven Levitsky and Daniel Ziblattが、今週、NYTで論じたように、安定した民主主義には、機能する経済、信頼できる選挙、洗練された憲法があるだけでなく、フェアプレイと自制心というインフォーマルな規範が必要である。彼らはこれを「ソフトなガードレール」と呼んだ。規範が有効であるのは、政治的なライヴァルも、同じ政治コミュニティに属しており、一時的な政治的優位を権力保持のために、そして、権力を固定化するために利用するべきではない、という信念を共有しているからだ。

しかし、今ではこうした規範が確実に崩壊しつつある。その結果は、むき出しの、何のルールもない、禁止する行為などない権力争いである。アメリカの立憲的秩序や国内的な安定性も当然のこととみなせなくなっている。

1990年代の初めには、こうした事態は全く予想されてなかった。多くの専門家が、共産主義の敗北により、アメリカとその他の世界は長期の平和と繁栄の時代に入る、と予想した。民主主義と自由市場が広まり、グローバリゼーションは普遍的な繁栄をもたらすものだった。この楽観のどこが間違っていたのか?

まず、アメリカの主要政党でリベラルな国際主義の支持者が、間違いを含んだ国際平和論を信奉したことだ。経済的相互依存は、諸国を団結させ、紛争を不合理で不可能なものにするはずだったが、相互依存は暴力的な衝突に対する信頼できる障壁ではなかった。グローバリゼーションは約束した成果をもたらさず、まったく遠くの土地で起きた経済変化、特に金融パニックに対する各国の脆弱性を高めた。2008年のウォール街崩壊で、エリートたちの知恵が疑われ、知らないことを恥じないポピュリズムに2016年は侵略された。

次に、アメリカの指導者たちは、民主主義が広まれば平和になる、と信じていた。新しい民主主義国にはアメリカが安全保障を与えた。しかし、この理想主義的な考えはリアリストの基本原理を無視したものだ。NATO拡大はロシアとの親しい関係を悪化させ、グルジアやウクライナなどで、ロシアの反撃にあった。他方、中東における民主主義の拡大は、地域全体で既存の政治制度を破壊し、統治不能な一帯からアルカイダやイスラム国家などが現れた。

3に、多くの学者や評論家はアメリカのパワーが圧倒的であるから、今後、長期的に紛争を抑え込むことができる、と考えた。しかし、アメリカ政府はどこでも、新しい政治秩序を押し付けることに失敗した。他の諸国が能力を高めると、アメリカの世界全体に及ぶ治安維持能力は低下した。

ワシントンの外交における最優先事項は、平和の維持ではなかった。逆に、民主党員も共和党員も、無法国家の撲滅、民主主義の普及、軍縮と兵器の流出、アメリカ指導の国際機関に参加するため他国が国内政治改革を進めること、に関心があった。この理想主義的な超党派が信奉するリベラル・ヘゲモニーこそ、オバマがムバラク大統領の追放を支持し、シリアのアサド大統領に「辞任せよ」と求めた理由である。

私はリベラルの理想を誰よりも好ましいと思うが、それはアメリカ外交の基礎にできないし、安定した平和の処方箋にもならない。

FP DECEMBER 27, 2016

The Crisis Manager’s Cheat Sheet for 2017

BY MICAH ZENKO

次期大統領ドナルド・トランプは、アメリカが軍事介入と混乱の悪循環を犯していると非難した。他国への介入を抑制した国際秩序を望む、という。それは北京でも、モスクワでも、繰り返されてきた主張である。

しかし、2017年に起きる危機は、トランプの外交方針を変えるかもしれない。その予想を、the Council on Foreign Relations’ Center for Preventive Action (CPA)の評価に従って考えてみる。これは、クラウド・ソース、専門家によるリスク評価で30のシナリオを選び、その後、7000人以上のUS政府職員、専門家、研究者に依頼し、30の緊急事態が起きる、そして、アメリカの利益に影響する、起こりやすさを予測してもらった。500以上のサーベイから、高度、中度、低度の起こりやすさが推定された。

1.高度の緊急事態であり、アメリカ外交担当者はその緊急事態に備えなければならない。

●北朝鮮が核兵器もしくは大陸間弾道ミサイルを実験し、あるいは、軍事的挑発や、国内の政治混乱を生じる。

●ロシアとNATO加盟国が軍事衝突に至る。

●重要なインフラに対して、高度に破壊的なサイバー攻撃が行われる。

●テロ攻撃。 ●アフガニスタン。 ●トルコ政府とクルド人の武装集団が衝突し、イラン、イラク、シリアも巻き込む。 ●外部の支援を受けてシリア内戦が激化する。

2.中度の緊急事態。

●東シナ海で中国と日本が軍事衝突する。

●南シナ海で中国と東南アジア諸国とが軍事衝突する。

EUの難民危機による政治不安が激化する。

●テロ攻撃か、カシミール地域の反乱から、インドとパキスタンの軍事衝突が起きる。

FT December 29, 2016

A perilous moment for Asia’s peace and stability


● 不平等と資本主義の関係

NYT DEC. 23, 2016

Growth, Not Forced Equality, Saves the Poor

By DEIRDRE N. McCLOSKEY

不平等に対する怒りがアメリカ大統領選挙を支配した.しかし,論争は盛んだが,明晰さは乏しい.

貧困の撲滅は明らかに良いことだ.幸い,それは世界的規模ですでに起きている.世界銀行によれば,歴史上かつてないほど,最も貧しい人々がまともな暮らしをするのに必要なものを利用しやすくなっている.上海が悲惨な場所であったのはそれほど以前のことではないが,今や,アメリカの最もモダンな場所のように見える.しかも,もっと良い道路と橋がある.インドの実質所得は10年で2倍になった.サブサハラ・アフリカでも成長が始まった.豊かな諸国の貧困層も,1970年より暮らしは改善し,食糧,医療,エアコンのようなアメニティーを得ている.

イギリスの偉大な小説家Anthony Trollopeは,1867年の小説“Phineas Finn”で書いた.男女同権を説くヒロインに,ラディカルで,もっと長い展望を持った友人が,No, と応える.平等とは醜い世界であり,恐れるべきだ,と.むしろ,自分より生活水準の低い人々を助けるべきだ.

貧しい人々が,住む場所,食べるもの,読書と投票の機会,そして,警察や裁判所で公平に扱われることは倫理的に重要だ.ハーヴァードの著名な哲学者John Rawlsは,差異の原則,と呼んだ.裕福な企業家が最も貧しい人の生活を改善するなら,企業家の所得が増えることは正当である,と.

貧困は決して良いことではない.しかし,経済的な差異も含めて,差異はしばしば良いことだ.ニューヨークと,カリフォルニアと,上海の人々は財を交換する.政治が貿易を邪魔するのはばかげている.

経済的な平等が実際に目標にできるとしたら,それは小さな社会,家族がピザを分け合うような場合だけだ.大きな社会で,正当な,十分に配慮したやり方ではできない.特化の進んだ,ダイナミックな経済には合わない.もしやるとしたら,暴力的な方法になる.

だれの富を削るのか? どのくらい削るのか? 無私の人々が作る政府はどのように再分配するかを知っている,と信頼することは,ナイーブである.事実はそうではない.脳外科医とタクシー運転手が同じ報酬なら,脳外科医は足りなくなる.人々に職を与えるすべての中央計画は,平等も実現するだろうが,それは暴力的で,魔術でしかなかった.スターリンのロシアや毛沢東の中国が試みたが,おびただしい暴力を用いた.

国家が暴力的にビル・ゲイツから富を奪い,ホームレスに再分配することはできる.われわれはセーフティネットを整備して,暴力を抑えるべきだ.また,富裕層から貧困層への再分配で実現できる平等は少ない.上位20%の所得すべてを下位80%に与えても,その生活は25%改善されるだけだ.もし繰り返し行うなら,富裕層はアイルランドやケイマン諸島に移住するだろう.

貧困の問題を解決するのは,よりよいものを手に入れるために交換することから生じる成長である.韓国の経済成長は最貧層の実質所得を1953年の30倍に増大させた.環境の制約に配慮し,豊かなエンジニアが増えるような,成長を高めることだ.炭素の固定化技術や,新しいエネルギーを見つけた者が報酬を得る.それはすべての者を豊かにする.

マルクスとエンゲルスをまねれば,「すべての労働者は団結せよ.経済停滞の他に失うものは何もない.リベラルな社会で,交換による生活改善を求めるのだ.」

それを資本主義という.

The Guardian, Tuesday 27 December 2016

London has tackled homelessness before. It’s time to do so again

Sadiq Khan

Project Syndicate DEC 27, 2016

The Plant-Based Solution to Hunger

BARBARA UNMÜSSIG

NYT DEC. 29, 2016

Help for Australia’s Coal Workers

By MEGAN McGRATH

インドのコングロマリットAdaniが所有する30マイルに及ぶ巨大な炭鉱の開発がクイーンズランドに許可された.オーストラリアの遠隔地における炭鉱開発を担うのは,”fifo” と呼ばれる一時雇用契約の労働者たちである.彼らは鉱山で,食事,シャワー,ベッドを提供され,航空券を得て,自宅と繰り返し往復する労働者だった.彼らの多くは高い賃金に魅力を感じて集まった,教育をあまり受けていない,若い労働者たちだ.

かつて2003-2015年のブームでは,Adanififo労働者を利用して,12時間の交代制,週7日間で3週間まで働き,それから帰宅して1週間休む,というサイクルを求めた.労働者たちは近隣の町からも離れ,レジャーもなく,家族から切り離されてロボットのように働いた.多くの者が共有ベッドで眠った.その結果,彼らの間に高い頻度で鬱状態や不安が強まった.

FP DECEMBER 29, 2016

New Year’s Resolution: Jobs

BY FRED P. HOCHBERG


● ソ連崩壊からiPhoneまで

FP DECEMBER 24, 2016

What China Didn’t Learn From the Collapse of the Soviet Union

BY JAMES PALMER

ソ連崩壊から25年経つが、これまで多くの内部調査文書、会議、ドキュメンタリーが中国共産党によって発行された。その95%はキャリアのためにその時の政治路線を守る無意味なものだった。

ソビエトの指導者が切り捨てられるまで、中国人の多くはゴルバチョフが好きだった。彼の「グラスノスチとペレストロイカ」を、活力を失った経済への改革として、中国の「改革開放」に似ていると思ったのだ。

それゆえソ連崩壊は、中国が同じ道をたどらないように、政治的な許容度の範囲内ではあるが、激しい内省を求めた。共産党自身、一層の内部改革が必要だ、と主張する声もあったが、それは大衆の改革要求を解放することへの恐怖に変わった。東欧における民主化運動、「カラー革命」が広がる中で、ナショナリズムの強まるのを観たからだ。地域や少数民族への監視を強め、1989年には共産党が野蛮な弾圧を実行した。

習近平の本能では、党の真実とは、革命の継承者である彼に従うことであった。指導者のシグナルに従うことを、地位の上昇のための第2の天性とする国において、彼の姿勢が論争それ自体を決定した。

この10年、習は、ソ連崩壊からアラブの春まで、体制転換について深く懸念した。そして、中華人民共和国やその他の革命の殉教者たちは組織された運動でなければならず、そうでなければ革命は、アメリカの導く敵を混乱させる陰謀に変わる、と考えた。

Project Syndicate DEC 26, 2016

A Growth Agenda for China

MICHAEL SPENCE and QIAN WAN

中国が成長を持続するために決定的な要因がいくつかある。

トランプ大統領の下で、アメリカとの関係がどうなるか。ヨーロッパの政治不安がどうなるか。アジア諸国が中国との貿易・投資協定を結べるか。資本流出の増大やトランプのもたらすドル高に応じて、人民元の為替レートがどうなるか。

しかし、それ以上に中国内部の要因が重要だ。実体経済の減速、民間部門の弱さ、過剰生産力、過度のレバレッジ、住宅価格の高騰、などから、金融部門が問題を抱えている。中国の銀行業はいまだに国有企業 (SOEs) と地方政府系金融機関 (LGFVs)によって融資を拡大している。SOEsは影の銀行によっても借り入れを増やしている。

これは経済全体の成長を損なうものであり、中央政府はSOEs改革を推進している。しかし、銀行は民間部門のリスクを恐れて融資を好まず、地方政府は失業増大と社会不安を恐れている。SOEsはさまざまな優遇政策、補助金、免税、融資を得られる。

SOEsへの偏りをなくすことが、高い成長のために必要だ。

Bloomberg DEC 27, 2016

Latin Economies Face a Big China Choice

Mac Margolis

NYT DEC. 29, 2016

How China Built ‘iPhone

By DAVID BARBOZA

中国の中央に位置するZhengzhou鄭州にあるFoxconnのプラントは、世界最大のiPhone工場だ。世界のiPhoneの約半数を生産するFoxconnを誘致するために、鄭州市の地方政府は多くの優遇措置を施した。

●生産複合施設の建設費用6億ドルを一部負担し、融資した。

●労働者の住宅建設10億ドルを支出した。

●電力コストを5%値下げした。

●発電所や24キロに及ぶパイプラインなど、インフラを整備した。

●法人税と付加価値税を5年間免除した。次の5年間は半減する。

25000万ドルの譲許的融資を市政府が与える。

●労働者の雇用、訓練、新採用のための補助金を負担する。

●社会保険その他の支払いを年間1億ドルに抑える。

●輸出を伸ばせばボーナスを支払う。

●輸送コストに補助金を与える。

NYT DEC. 29, 2016

An iPhone’s Journey, From the Factory Floor to the Retail Store

By David Barboza

Bloomberg DEC 28, 2016

A China-Watcher's Guide to 2017

Christopher Balding


● トランプ大統領

Project Syndicate DEC 27, 2016

The Age of Incompetence

J. BRADFORD DELONG

共和党のアメリカ大統領は,ジョージ・HW・ブッシュその多くが無能だった.ニクソンは知識があったけれど,その人物が好ましいものではなかった.レーガンの無知をサッチャーは辛らつに語ったが,彼は役柄を心得ていた.ハリウッドでも,ホワイトハウスでも,与えられたセリフを覚え,作品が最後にどうなるかは任せたのだ.ジョージ・W・ブッシュはレーガンであるように期待されたが,自分で考えようとして,副大統領や国防長官の仲間となり,大失策を犯した.

トランプはどうか? 政治を何も知らず,自分は有能だと自慢し,ボスになる.

NYT DEC. 27, 2016

Don’t Let Trump Speak for Workers

By RICHARD TRUMKA

Project Syndicate DEC 28, 2016

The American Public Against Trump

ALAN S. BLINDER

アメリカ人は,その民主主義が成功モデルではなく,失敗する例を示した.投票数も,投票時のトランプの評価も,その当選を支持していない.

主要な問題で,トランプの主張や指名する閣僚たちはアメリカの世論と対立している.温暖化防止は重要だし,アメリカ人は富裕層や大企業への増税を望んでいるのだ.唯一,グローバリゼーションに関して,トランプは世論の多数に属するが,その保護主義はアメリカと世界を不幸にする.

なぜトランプは当選したのか? クリントンや多くの者が,ロシアのサイバー攻撃と,FBIのコニー長官を非難する.

FT December 29, 2016

It has been a brilliant year in politics

Paul Nuttall

Project Syndicate DEC 29, 2016

Trump’s Extreme Oligarchy

SIMON JOHNSON


● トランプとアジア

FP DECEMBER 27, 2016

Donald Trump’s Pivot Through Asia

BY MAX BOOT

Bloomberg DEC 27, 2016

Trump's 180-Degree Turn on China Policy

Noah Feldman


● 所得の移転・補償

FT December 28, 2016

When robots take jobs, workers deserve compensation

John Thornhill

かつてロンドンで,渡し船の水夫は主要な職業であった.彼らは次第に消滅し,その過程で,水夫たちの組合は補償金を要求した.同じことが,ロボットやAIによる雇用の減少に対しても行われるだろう.


● ポーランド

FT December 29, 2016

Poland is a nation ill at ease with itself

Henry Foy


● ティートマイヤーの訃報

FT December 28, 2016

Hans Tietmeyer, central banker, 1931-2016

Peter Norman

FT December 28, 2016

Former Bundesbank president Hans Tietmeyer dies

Guy Chazan in Berlin

ブンデスバンクの元総裁,ヨーロッパ単一貨幣の設計者の1人であるティートマイヤーHans Tietmeyerが亡くなった.85歳であった.

「ドイツ・マルクの最後の守護者」として,EMUの準備とECBの設立で批判的な役割を果たした.ECBに,物価の安定に尽くし,政治的な干渉を受けない金融政策決定を求めた.また,ユーロ圏で財政赤字を出す政府に対して,共通通貨の価値を重視し,Stability and Growth Pactを守るよう求めた.

一時,進学を学んでカソリックの牧師をめざしたが,その後,経済学の博士となった,エアハルトLudwig Erhardの下で経済大臣となり,20年後,コールHelmut Kohlの下で財務副大臣となって,国際経済サミットのシェルパを務めた.1990年,連銀理事に加わり,ドイツ再統一の貨幣問題を扱う特別チームに指名された.

2010年,共通通貨以外の道はない,と述べたが,同時に指摘した.「政策の諸領域で協力し,調和することが,通貨同盟を長期的に機能させるためには必要だ.」


● 移民

NYT DEC. 28, 2016

Fix Immigration. It’s What Voters Want.

By TOM COTTON

Project Syndicate DEC 29, 2016

The Next Migrant Wave

STEPHEN GROFF


● 2016

NYT DEC. 28, 2016

2016: Worst. Year. Ever?

By CHARLES NEVIN

FT December 30, 2016

Year in a Word 2016


● イギリス政治

The Guardian, Thursday 29 December 2016

May is no Henry VIII – but Brexit has dragged us back to a very Tudor chaos

Rhiannon Lucy Cosslett


● 2017年予測

FT December 29, 2016

Forecasting the world in 2017

FTのジャーナリストたちが2017年を予測します.その前に,2016年の予測はどうなったのか,チェックしています.16の予測の中から,9もしくは10が実際に起きた,と.しかし重大な意味で,Brexitとトランプ当選を予測できなかった.


● 支配か,協力か

Project Syndicate DEC 29, 2016

Learning to Love a Multipolar World

JEFFREY D. SACHS

アメリカがグローバルな協力を推進するか,あるいは,鬱屈した野心から生じた軍事拡大主義に向かうか.その選択がアメリカと世界の将来を決める.

世界人口の4%しか占めず,世界生産に占める割合も下がり続ける中で,アメリカは新しい軍備拡大競争や保護主義的貿易政策でグローバルな支配という幻想にしがみつく.そうすることが世界は,アメリカの傲慢さと軍事的脅威に対抗する同盟に向かう.アメリカは,古典的な「帝国の過剰拡大」に陥り,遅かれ早かれ破産する.

正気であれば,情熱的に,開放的に,グローバルな協力を推進し,21世紀の科学技術を活用して,貧困,病気,環境の脅威を取り除くべきだ.多極世界は,安定した,繁栄する,安全なものになる可能性がある.多くの地域大国が登場することは,アメリカに対する脅威ではなく,新しい繁栄の時代に向けた機会であり,建設的な解決の道があるはずだ.

Project Syndicate DEC 29, 2016

Trump’s Uncertain New World

JORGE G. CASTAÑEDA

FP DECEMBER 29, 2016

Obama Never Understood How History Works

BY DAVID GREENBERG

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The Economist December 17th 2016

China’s digital dictatorship

China’s social-credit system: Creating a digital totalitarian state

War in Syria: The fall of Aleppo

Taiwanese politics: From riches to rags

Pax Trumpiana: Allies and interests

The Asian Development Bank: The incumbent

Venezuala’s monetary madness: Cash and grab

Free exchange: Rage against the dying of the light

(コメント) 中国のインターネット管理は予想に反して成功し,デジタル全体主義社会に至るかもしれない,と記事は懸念します.民主主義社会ではそうではない,という仮説に,トランプとバノンは試されます.他方,国際秩序ではパックス・アメリカーナからパックス・トランピアーナに変わるのか? その時代を予想します.

どちらの動きもまだ始まったばかりです.アジア開発銀行を改革し,内外の通貨制度を改革し,地域的な不平等を解消する動きもあるはずです.

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IPEの想像力 1/2/2017

紅白歌合戦の前に、テレビで「初音ミク マジカルミライ2016」のコンサートを観ました。歌詞とメロディーを入力すれば,歌を歌いだす,というロボットやAIの原型です.舞台に上がったミクの映像にペンライトを振って参加者が共鳴する姿は印象的です.ミクは彼らの協働作品です.

これはカラオケの進化型のようです.私にとっては、攻殻機動隊の音楽や映像がどこかで変異した,ヴァーチャル・キャラクターに出会ったような気がしました。

初音ミクとドナルド・トランプがネット上でぶつかったら、どちらが勝つのか? そんな疑問を持ちました。攻撃的な極右のセリフと声で,大衆に向けた煽動演説を繰り返す政治家のボーカロイドが現れるのは簡単です.

紅白では,香西かおり、椎名林檎、2人の歌が続きました。それはともに恋愛歌ですが、歌詞や演出は全く異なる世界でした。集団で舞台に上がって,歌や踊りを披露するさまざまなアイドル・グループがいる半面,フォークソング,民謡,演歌もあります.

紅白歌合戦は,あたかも国民的な情感が「男と女」の2極だけで分けられる,という前提に立つ歳末儀式でした.しかし,国民的「合戦」の形式は無意味になっています.

少子化を心配する一方で、インターネット恋愛に夢中でミックミクにされる若者たちや、深夜まで浴びるほど酒を飲まされる営業回り,上司のセクハラ,パワハラに苦しむ若い社員たち、長時間労働とAIやロボットたちとの競争激化に従うしかない,と諦める人々がいます.自分の町で死にたい,と自宅を提供して,ホーム・ホスピスに改造するする人もいます.

遅延や事故の続く鉄道システムに苦しんでも,直そうとする人がいないように,私たちはポピュリストの不満を共有します.しかし,ある時代,ある社会においては,改革する人々がいたのです.

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職人たちが作る物にこだわる姿は,私たちの「郷愁」だけでなく新しい「共感」を呼びます.

「和風総本家 日本の職人」は,櫛・クシの職人,鋏・ハサミの職人を紹介していました.着物を着る人が少なくなり,プラスチックの櫛や100円ショップの鋏でも十分だ,と思うようになりました.多くの寿司職人が回転ずし屋によって廃業したと思います.

日本の伝統工芸は,外国人観光客や外国の職人が彼らの製品を手にしたからです.職人とその工芸品を愛用する人との感動は,互いの姿を映像として結びつけたことで生まれます。彼らの技量を称賛し,感謝する人が,フランスやイタリアにいました.

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インドの企業Adaniがオーストラリアの炭鉱を開発するとき,そこで働くのは“fifo” (fly-in, fly-out jobs) と呼ばれる一時雇用の労働者たちであり,彼らは飛行機で遠隔地に通勤するという話に驚きました.

中国の鄭州に世界最大のiPhone生産拠点があり,この工業団地を動かすのはAppleから生産を請負った台湾企業Foxconnと地方政府の支援である,という話にも驚きました.

ロシアの国際的な情報戦争や外国の選挙に対する介入が真実であるとすれば(真実だと思います),安倍首相がプーチンとの友情を確信することの恐ろしさを痛感します.

他方,米中関係の新しい展開において,台湾や南シナ海,東シナ海,沖縄も,ゲームのカードになることを恐れます.

欧米における監視カメラの大量設置やテロ対策としての諜報活動,GoogleFacebook情報収集・分析技術と,中国の目指す共産主義的な(共産党が支配する)「調和のある社会」を実現するために社会管理を個人レベルにまで広げる試みには,共通した懸念があります.

現代のウェストファリア体制を担うには,すべての大国が核兵器や戦闘機,ドローン,空母だけでなく,the Great Firewall(好ましくないサイトへのアクセスを遮断する), the Golden Shield(ネットを利用して個人の思想や行動を監視する), the Great Cannon(敵対的なサイトや人工衛星を破壊する)を持たねばなりません.

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2017年の最初のエッセーを書くために,バノンを検索して,ウォール・ストリート・ジャーナルの社説「スティーブ・バノン氏とは何者か? 「レーニン主義者」を自称するトランプ次期政権の主席戦略官」を読みました.

ロボットやAIと共存する時代が来るまでは,人だけでなく,多くの組織や社会集団,制度や国家も,生死を賭けた革新に取り組みます.その動きが「怒り」や「憎悪」を刺激することで加速できる,とは思いませんが,多くのバノンが出番を待っているのでしょう.

しかし,彼らを止めるため,初音ミクが立候補するでしょう.彼女の歌う政治や社会,国際関係の未来が,若者たちの改革に向かう共感を支えます.

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