IPEの果樹園2016

今週のReview

12/26-31

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悲観と楽観 ・・・トランプ・ブーム ・・・トランプ政権の閣僚たち ・・・孫正義 ・・・シリア内戦の転換点 ・・・安倍・プーチンの温泉会談 ・・・不確実性の時代 ・・・トランプの経済戦争 ・・・脱税の社会環境 ・・・ホームレスと老人 ・・・ベーシック・インカム ・・・リベラルな民主主義の防御 ・・・ロシア大使暗殺 ・・・ドイツの秩序とポピュリズム ・・・廃貨の意味 ・・・ソ連崩壊の意味 ・・・ロボットと人間の補完的社会

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, The Guardian, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, そして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]


l  悲観と楽観

FP DECEMBER 12, 2016

The Case for Optimism

BY DAVID ROTHKOPF

歴史的に観て、われわれは楽観論を支持することができる。Thomas Friedmanが新著Thank You for Being Late: An Optimist’s Guide to Thriving in the Age of Accelerationsで示したことは、現実を理解すれば、恐怖は消える、ということだ。しかし、中東の30年間を取材した人物が楽観論を支持するには、もっと歴史的な変化を知る必要があった。

世界はかつてなく平和で、人々は長生きし、多くの富を享受している。技術革新を悲観するべきではない。事態を改善する人々の能力は高まっている。

FP DECEMBER 12, 2016

The Only Way Forward

BY ANNE-MARIE SLAUGHTER

今年は多くの面で大国の政治が注目された。ロシアが地球規模で復活し、サウジアラビアとイランとの闘争が中東を支配した。中国は再び中華思想を強め、東アジア、東南アジアで自分たちの主張に従うよう求めた。北朝鮮は核兵器の強化に励んだ。イギリスまでEUを拒んで、Britanniaの主権という保守の夢を膨らませた。さまざまな取引と同盟の変化に満ちた世界で、パックス・アメリカーナは衰弱し、トランプが大統領選挙で勝利したことで、アメリカ外交は明らかにリアリストの方向に進む。

世界には2100万人の難民、4100万人の国内避難民がいる。戦争、飢餓、独裁政治によって住む場所を失った人々だ。50万ものシリア人が目の前で殺されている。良心のある世界が人々の苦しみに驚くことは、もはやなくなった。毒ガス、樽爆弾、計画的で組織的なレイプ、ジェノサイドの拡大。

それでも今年はヒューマニズムの年である、と言えるだろうか?

数字がそれを示している。世界には195の国がある。国際法によって定義された国家とは、人口、領土、政府を持つ政治体であり、他国との関係を結びことができる。人類は世界的な規模で自分たちを組織する良い方法を持たない。EUは地域的な試みだが、アイデンティティ危機に苦しんでいる。国家が将来も重要であり続けるだろう。

ノーベル平和賞が示すように、個人が重要な活動によって世界を変えた。しかし現在では、普通の人々、決して著名ではなく、ノーベル賞をもらわない人々が、かつてないパワーを得ている。携帯の情報端末を20億人が持っているから、企業や社会運動を起こし、芸術を楽しみ、難民を誘導し、同じ考えの人を集めることができる。個人が夢を実現する能力は、人類史上で最も高まっている。

社会企業家や社会的影響に投資する行為Social entrepreneurship and social-impact investingは、個人がグローバルな問題の解決に関わる、オープンな、新しい展望を示している。政府がその財源を気にして、グローバルな問題に取り組む上での制約になっているが、社会企業家のプールは個々人のエネルギーや革新を集める上で無制限である。New York TimesのコラムニストNicholas Kristofはそれを“DIY foreign aid”と呼んだ。

政府もこうした増大する個々人の能力を考慮に入れるようになったし、それは次第に外交の本質や実践を変化させてきた。国家間のチェスゲームであった外交が、ウェブによってさまざまな参加者を増やすことができる。企業、市民団体、大学、財団、市長、知事、など、誰もがグローバルなネットワークに参加し、気候変動、テロ、伝染病、人権蹂躙、などの問題に対処する。

Oxfordの教授で活動家でもあるThomas Haleは、昨年12月のパリ協定が交渉の変化を示した、と説明する。国際協定が、法的強制力のある機関から、「触媒的、潤滑油的」なモデルへ、パラダイム・チェンジしたのだ。多くのアクターがスケジュールに従って増大する約束を守るように支援する。

「ノン・パーティー・ステークホルダー」が招かれたが、彼らはNGOsのロビイストだけではない。99以上の国家から集まる7000の都市、88か国から集まる約5000の企業も含まれた。地雷禁止の国際条約を実現した交渉もそうだ。オバマ大統領が開催した国連難民総会サミットもそうだった。行動を呼びかける民間部門のCEOsが集まった。

プロの外交官は、人道的な関心を棄てるように求められる。無辜の人々が死んでも、都市ががれきとなっても、歴史的な遺産が破壊されても、彼らは嘆かず、あるいは、少なくともそれを表に出さない。マキャベリなら、自国の民の利益にならないとしたら、グローバルなモラルを避けるべきだ、と言うだろう。ジョージ・ケナンが述べたように、「法律・道徳の重視」は、問題を解決するより、一層の流血をもたらした。すべての行動には結果がともない、その多くが意図しないものである。

しかし、組織の細分化が進み、小集団が現れれば、紛争は良くも悪くも政府の手に負えなくなる。政府が言っても戦闘集団は戦いをやめない。アメリカのケリー国務長官と、ロシアのラブロフ外相とは、シリア停戦に合意した。しかし、両国政府は、そして他のいかなる政府も、戦場の兵士たちを統治できなかったのだ。

人々に起きることが重要である。子供を拷問された者、両親を殺され、兄弟を殺された者、居住地区を粉砕された者は、そのことを決して忘れない。冷戦後に、どれほど多くの「凍結された紛争」が爆発したことか。報復は延期されることはあるが、終わることはない。不正義が究極的に、少なくとも、ある種の正義の手段で報いを受けない限り。

人道主義だけでは十分ではない。暴力と追放の災いは、人から人へ、家族から家族へ、国から国へ、疫病のように広がる。多くの国の多くの虐殺には、その報いがなされないままだ。しかし、他の政府がジェノサイド、人道に反する犯罪、エスニック・クレンジング、そして、組織的な、深刻な戦争犯罪に関与するのを止めるため、政府は行動しなければならない。それは、自己利益としてヒューマニズムを受け入れる、ということだ。予防することが望ましい。

歴史家Yuval Noah Harariによれば、およそ7万年前に、ホモサピエンスは「認識革命」を経験した。「架空の言葉」を駆使して、実在しないもの、例えば、愛、芸術、法、を想像することができるようになった。そして、それらに命を与えたのだ。

デジタル化され、自動化され、データで設定される未来では、人道的な価値が祝福され、推進されるだろう。すべての生命に対する敬意を高めることこそが、唯一、前進をもたらす。

FT December 19, 2016

Reform the economic system now or the populists will do it

Wolfgang Münchau

現代の経済ガバナンスは根本的な再評価が必要である。中央銀行の独立性、インフレ・ターゲット、金融市場の規制緩和、財政政策の目標。リベラル・エスタブリッシュメントがその見直しをしないから、ポピュリストたちがわれわれのためにそれをするのだ。

たとえばMarine Le Penは、フランスをユーロ圏から離脱させ、中央銀行に政府支出を融資させるだろう。

われわれは、制度、ルール、その関係、基礎となっている支配的なマクロ経済理論を、一層深く考えねばならない。中央銀行はいつも独立していたわけではないし、インフレ・ターゲットが当たり前になったのは最近のことだ。1990年代まで、知る者はいなかった。財政政策の中期目標もそうだ。ニュー・ケインズ主義経済学がこうした議論を広めた。J.M.ケインズなら、すでに死んだエコノミストたちに苦しめられている、と言うだろう。

だから人々が専門家の意見を聞かなくなったことも驚きではない。彼らは間違った予測を行い、現実を認識できないから。世界銀行の主任エコノミストになったPaul Romerは、経済学に対する激烈な批判を書いた。

しかし、マクロ経済学者たちは問題を認めないだろう。彼らは政策を支配し続けている。システムのゲートキーパーとして、また、システムの受益者として。独立を誇る中央銀行家、財政諮問委員会の委員、あるいは、財務大臣その人である。現代のプラトン型哲人王として称賛される、時代を無視した人々だ。

内部からの改革を避けることで、ポピュリストたちを招き寄せた。

FT December 22, 2016

My Christmas tree lights and the success of globalisation

John Gapper

FP DECEMBER 22, 2016

Trump’s Trade Agenda Would ‘Turn Back the Clock to Another Age’

BY DAVID FRANCIS


l  トランプ・ブーム

FT December 12, 2016

The dangers of Donald Trump’s coming boom

Edward Luce

予想では、ドナルド・トランプは敗北するだろうし、もし勝てば市場は崩壊するはずだった。その全く逆のことが起きたのだ。投資家たちは、彼が約束した良いことばかりを期待し、悪いことは何も起きないと思っている。

グローバルな貿易戦争、大規模な移民追放、ではなく、大幅減税、規制緩和、財政刺激策だ。118日以来、すべての指標が上昇した。世界市場はトランプ・ブームを期待している。その意味では、トランプはすでにロナルド・レーガンの相続人である。

しかし、「トランプ相場」の逆転の種はすでにまかれている。最大の脅威はアメリカ連銀だ。すでにトランプが勝利する前から、Janet Yellen議長は2019年までに3度か4度の利上げを行う見込みを語っていた。それは財政の引き締めが続くことを予想していたから、トランプの勝利がその予想を変えた。巨額の刺激策と、すでに5%を切った失業率で、アメリカ経済のインフレ傾向は強まるだろう。Yellenは金利引き上げを加速するしかない。

ゼロ下限金利の「新常態」時代は終わり、中央銀行と投資家のアニマル・スピリッツが闘う旧時代がやってきた。

そこには2つの不安がある。第1に、連銀とトランプとが衝突するだろう。パーティーの最中にパンチ・ボウルを下げられて怒らない大統領はいない。Yellenの任期は2018年初めまで、残り1年しかない。トランプは選挙中に、Yellenを解雇すると約束していた。大統領にそんな権限はないが、空席の2人の連銀理事を指名することによりYellenを抑え込むことはできる。共和党は、権力を持たない時期には財政緊縮を要求するが、権力を得たときは逆に刺激策を認める。

2の不安は、ドル高が進むことだ。財政赤字増大と高金利は、必然的に、ドル高をもたらす。輸入品が安く、輸出品は高くなるから、アメリカの貿易赤字は増えるだろう。昨年、4000億ドル近い赤字を出している中国に対する赤字も増える。経常収支の赤字が増えるのもレーガン主義の特徴だった。しかし、トランプはそれを減らすと公約した。グローバリズムを逆転し、製造業を呼び戻すことはトランプの選挙運動で最重要な部分であった。

市場は、トランプの世界貿易に対する脅威を無視し、短期的にはレーガン風の景気拡大を期待している。重要な経済閣僚に投資銀行家を指名する「ゴールドマンサックス政権」であることに、ウォール街は安心した。しかし、事態が悪化すれば、その様相は一変するだろう。

貿易赤字の増大とともに、連銀の独立性を犯し、中国をスケープゴートにして、移民を追放し、メキシコに高関税で脅すだろう。市場は、自分たちが最初に感じていた、トランプの恐怖を思い出すはずだ。

NYT DEC. 13, 2016

Where Were Trump’s Votes? Where the Jobs Weren’t

Eduardo Porter

NYT DEC. 14, 2016

Will the Trump Era Bring Higher Interest Rates? Don’t Count On It

Neil Irwin

高金利やドル高が予想したほど大きく現れないこともある。トランプが財政刺激策を十分に大規模なものにできるとは限らない。連銀が金利を引き上げることも、かつてニクソン大統領が連銀に求めたように、トランプは遅らせるように求めるかもしれない。

Bloomberg DEC 14, 2016

The Fed Must Live With Uncertainty Under Trump

Editorial Board

FP DECEMBER 15, 2016

Why the Trump Economic Boom Will Never Come

BY PEDRO NICOLACI DA COSTA

FP DECEMBER 15, 2016

The U.S. Economy Needs More Productivity, Not Jobs

BY GILLIAN TETT

Bloomberg DEC 16, 2016

Four Ways to Help the Midwest

Noah Smith

ドナルド・トランプ次期大統領が、アメリカの通商政策を転換するかどうかは不確かだ。さらに、それがアメリカ中西部にプラスの効果をもたらすかどうかは、さらに疑わしい。

この地域が、かつて製造業の力を誇る伝説の土地でありながら、苦闘していることは間違いない。問題は、どのような政策が最も効果的に機能するのか、である。民主党が提案した、目標を絞った税額控除や、最低賃金の引き上げは、バンドエイド(一時的な緩和策)に過ぎない、職場が持つ、尊厳、敬意、移動性、独立心、人としての価値や自由にとっての意味を無視している。貧困の痛みを公的給付は和らげるが、最後に、中西部の人々は職場を求める。彼らが支持したのは、職場をもたらすと約束した候補者であった。

われわれはまた、中西部の人々にもっと活況の地域に移動するべきだ、と単に励ましてもならない。多くの人々は、自分が育った土地、友人や家族がいる土地、しばしばそこに住宅を持つ土地を、容易に捨てることができない。

また、製造業に限定した産業政策も、恐らく機能しない。ラスト・ベルトと言えば、自動車産業や製鉄所のことを想う人が多い。こうした産業を呼び戻しても、それが最善の道であるかどうか、われわれにはわからない。政府は将来の成長産業を見つけることに失敗することで有名だ。地域の産業が示す未来は、その過去に根を持つ必要はないのだ。

どこから始めればよいのか? Bloomberg Viewの同僚であるConor Senのアイデアに賛成だ。それはラスト・ベルトの公共部門が負う年金支払いの債務を救済することだ。この1度きりの救済は、人口が減少し、経済が衰退している地域に対して行われ、その地域がインフラ整備や公共サービス、独自の開発計画を推進するのを励ます。

それは第1歩である。中西部の再活性化プロジェクトには4つの柱がある。

1.インフラ整備 ・・・衰弱する地域は人口を失い、都市がインフラに投資することもできなくなる。その結果、都市はまるで被災地域のようになる。連邦政府は、道路、橋、鉄道の修復、ブロード・バンドの改善に財政資金を配分するべきだ。

2.大学 ・・・大学は地域の成長を助ける。もっと多くの大学、その拡大を支持する。大学と地元企業との協力、知識産業の拡大を助けるべきだ。

3.ビジネス開発 ・・・コロラドが示した経済ガーデニングを見習うことだ。地元の人々が起業することを助ける。市場調査やリソースを結び付け、中小企業とその成長を励ます。それは多くの雇用と中産階級を育てる。

4.都市開発 ・・・人口過密を抑制するために開発規制をする都市がある。こうした高レンタルの沿岸都市から、企業が中西部に避難するのを促せるだろう。また、創造的な人々に魅力的環境を提供し、住宅開発を促して家賃を低く維持する都市もある。ニューヨークやロサンゼルスのように犯罪を減らした成功例からも学ぶべきだ。

未来の産業を促してラスト・ベルトを再生するために、政府には多くのことができる。

FT December 22, 2016

Dr Strangelove meets Trump’s stock market


l  トランプ政権の閣僚たち

FP DECEMBER 13, 2016

How to Wage Hybrid War on the Kremlin

BY MAX BOOT

FP DECEMBER 14, 2016

How to Rebuild Eastern Ukraine

BY JOSH COHEN

NYT DEC. 17, 2016

Donald Trump: The Russian Poodle

Nicholas Kristof

NYT DEC. 17, 2016

Arguing the Truth with Trump and Putin

By MASHA GESSEN

NYT DEC. 17, 2016

Donald Trump’s Foreign Policy Team: Built to Fail

By JAMES MANN

国務長官にExxon Mobilの最高経営責任者Rex Tillersonを指名したことで、ドナルド・トランプ次期大統領の外交チームがそろった。それは第2次世界大戦後の共和党前任者たちのいかなるチームとも根本的に異なっており、長く続く見込みはないだろう。

その違いを、トランプは明らかに美徳として誇示するだろう。確かに、ブッシュ政権が示したように、ワシントンで長い経験を持つ者を指名しても、それは外交政策の成功を、特にチーム内に強い不和があれば、保証しない。しかし、トランプのチームは、George W. Bushだけでなく、George H. W. Bush, Ronald Reagan or, for that matter, Gerald Ford, Richard M. Nixon or Dwight D. Eisenhowerとも違う。だれ1人、前政権で、閣僚のトップもしくは次官、あるいは、安全保障会議のメンバーを経験した者がいない。

国家安全保障会議で、トランプには外交経験がなく、副大統領もCIA長官も議会の出身であり、国務長官はビジネス界、国防長官、安全保障顧問は軍出身である。軍の経験は、作戦遂行に偏っており、外交のより概念的、抽象的な側面が弱い。

これまでの共和党政権には戦略的な焦点があった。冷戦があった時代と、その後は、アメリカが世界でいつ、どのように、軍事力を行使するべきか、という問題が議論された。ジョージ・W・ブッシュのイラク侵攻は論争となった。

新しいチームは、イスラム国の壊滅に集中する、イランとの新しいアプローチ、ロシアと和解する、などと言われているが、その戦略的目標や性格は示されていない。他の地域や、多くの指導的な大国との関係をどうするのか、国務に関する決定において、トランプやティラーソンのビジネス経験は役立たない。

トランプの人選は、おそらく意図されたことであろうが、相互に知らない、人柄や世界観を異にする者が指名されている。国家安全保障会議で、誰が協力を促すのか? Brent Scowcroftのような役割を担う人物が欠けている。チーム内には強烈な対立が仕組まれているように見える。James N. Mattisはオバマ政権の核に関するイラン合意を支持するが、Flynn, Mike Pompeo、そしてトランプ自身はそれを攻撃した。Pompeoはロシアに対する強硬派である。

レーガンは、ゴルバチョフと協力して、冷戦の終結を助ける歴史的な成功をおさめた。しかしレーガンは、外交政策の目標を決め、それに向けて国家を動かすために顧問たちの創造的な緊張関係を利用した。トランプはそうではない。彼はチーム内の対立を煽ることを好み、その後に勝者を指名する。

これはビジネスでは有効かもしれないが、外交政策では失敗する。外交においては、ゴール・ポストが動くだけでなく、そもそも政権の最初には存在しない。もしトランプが決めなければ、この敵対者を集めたチームは、殺し合いを始める。

FT December 20, 2016

A reversal of fortunes for Russia and the west

Frederick Studemann

FP DECEMBER 22, 2016

George Kennan Is Still the Russia Expert America Needs

BY MATTHEW ROJANSKY


l  孫正義

FT December 13, 2016

Masayoshi Son: The risk-addicted billionaire behind SoftBank

Kana Inagaki

ビッグでクレイジーなアイデアを持つ男、という評判を裏付けた。

イギリスがEU離脱を決めて1か月もたたないうちに、半導体デザインのArm Holdings243億ポンドで買収した。サウジアラビアの実力者Mohammed bin Salman皇太子とともに、1000億ドルで技術分野に投資する基金を設立した。アメリカの新興企業に500億ドルを投資すると約束して、トランプ次期大統領との関係を築いた。

孫は、在日韓国人の貧しい家庭に生まれた2世であり、1981年に設立した小さな企業を世界第3位のモバイル企業にした。アメリカではSprintを所有する。


l  北朝鮮

FT December 13, 2016

North Korea poses a clear and present danger

NYT DEC. 13, 2016

Can Smuggled TV Shows Change North Korea?

By JIEUN BAEK


l  シリア内戦の転換点

YaleGlobal, 13 December 2016

Fall of Eastern Aleppo Marks Turning Point for Syrian Civil War

Dilip Hiro

ロシアの軍事的支援によって、シリアのアサド政権は、2012年以来、反政府派が支配していたアレッポ東部を、事実上、すべて取り戻した。

内戦はいつも野蛮であるが、シリア内戦はその犠牲、難民、インフラ破壊のおびただしさの点で特に野蛮である。人口2200万人のシリアで40万人が殺害され、610万人が国内避難民となった。ほかに480万人が近隣諸国やさらに遠くの難民となっている。最初の4年間の経済損失は2060億ドルで、5人の内4人が貧困線以下である。数え切れないほど多くの空爆が、意図的か偶然か、民間人に対するものだった。

内戦は、それがどうして始まったかに関係なく、国内の戦闘集団の支援者として外国を呼び込む。外部勢力が十分な利益を認めている限り、内戦は続く。彼らが、その代理戦争で勝利できないと結論するか、人や物資に投資し続ける価値はないと考えたとき、戦争は終わる。それは1975-1990年のレバノン内戦で起きたことだ。

シリア内戦は、6年目に入るが、より複雑で、広い影響を及ぼすものだ。2011年、アラブの春の一部として、非武装の反政府デモが起きたが、その後、トルコ、ヨルダン、イラク、イラン。サウジアラビア、カタール、そしてアメリカとロシアを含む血まみれの戦場となった。

それは地域の宗派争いであった。アサドのアラウィート派は、シーア派に属し、イラク、イラン、レバノン人のシーア派であるヒズボラに支援された。トルコ、ヨルダン、サウジアラビア、カタールのスンニ派政府と敵対した。2011年、オバマ大統領がアサドに政権を退くよう求めた。

ロシアはシリア政府を外交的に支援し、中国にも支持されて、国連安保理決議を回避した。20159月から、ロシアは軍事介入を始めた。プーチンは、既存政府に敵対する武装勢力をすべてテロリストとみなす。

ソ連はシリアをアメリカの影響から切り離し、ロシアも友好関係を引き継いだ。シリア内部では、他の宗派やキリスト教徒も現状維持を望んでアサドを支持した。

アサドに敵対する勢力、人口の3分の1は、さまざまな反政府派の寄り合いだった。その異質な集団は統一を欠き、それが弱点となった。スンニ派の外部勢力も分裂していた。トルコはアメリカと協力したが、イランはシリア政府との同盟関係を深めた。イラクも、イランがシリアを支援するのを黙認し、軍事物資を供給した。

しかし、20158月には政権を失う瀬戸際にあったアサドを復活させたのは、ロシアの軍事介入であった。軍事顧問と重火器をシリア政府軍に供給した。前線基地を設けて、水陸そして空路で供給した。

地域のバランス・オブ・パワーは変化した。サウジアラビア、アラブ首長国連邦、カタール、バーレーン、トルコの政府幹部がロシアのプーチン大統領と会談した。ついに、エルドアンがサンクト・ペテルブルクを訪問してプーチンとの親密な関係を主張し、アサドの政権離脱要求をやめた。ロシア軍による空爆が決定的な影響を及ぼし、イラク軍とヒズボラが支援する政府軍がアレッポ東部を奪還し、内戦は正式にアサドの勝利で終結するだろう。

イラン・シリア・ロシアが枢軸となって、アメリカと湾岸産油諸国による、数十年に及ぶ覇権を倒す位置に就いたのだ。

The Guardian, Tuesday 13 December 2016

Aleppo’s people are being slaughtered. Did we learn nothing from Srebrenica?

Nedžad Avdić

FT December 13, 2016

Tehran is the real victor in the battle for Aleppo

David Gardner

シリアとイラクで外部勢力が加わった激しい戦争状態が続いた。その結果、各地の都市部における反政府勢力を制圧したことで、イランが地域の秩序を築く勝者になるだろう。

ロシアと関係改善を望み、イランとの核合意を破棄する、と約束したトランプ大統領は、中東政策を試される。

NYT DEC. 13, 2016

What Comes After Aleppo Falls?

By FAYSAL ITANI

Bloomberg DEC 14, 2016

Russia and Turkey Pushed the West Out of Syria

Leonid Bershidsky

NYT DEC. 14, 2016

Aleppo’s Destroyers: Assad, Putin, Iran

By THE EDITORIAL BOARD

FT December 15, 2016

A Middle East graveyard for western delusions

FT December 17, 2016

The battle for Aleppo: ‘It felt like the last goodbye’

Erika Solomon and Geoff Dyer

Bloomberg DEC 18, 2016

Lessons From a Dark Year in Syria

Noah Feldman

FP DECEMBER 19, 2016

Stop the Hand-Wringing About Aleppo

BY EMILE SIMPSON


l  安倍・プーチンの温泉会談

Project Syndicate DEC 13, 2016

Japanese Foreign Policy in the Trump Era

BILL EMMOTT

日本の首相、安倍晋三は12月を和解の月にするつもりだ。第2次世界大戦で日本が戦った2国の指導者と会談する。アメリカとロシアだ。

しかし、実際には、これは日本にとっても、東アジアの近隣諸国にとっても、好ましくない、潜在的には不安定化をもたらす時期なのだ。

真珠湾で日米の指導者が握手するのは、昨年5月にオバマが広島の原爆ドームに来たことへの返礼である。相互に許し合うことは、双方が共有する価値の強調だ。

しかし、このジェスチャーが、安倍がプーチンとの、故郷である山口における会談のわずか10日後に行われることは、和解とは違うものを意味するだろう。ロシアは日本と和平条約を結んでいない数少ない国である。それはソ連が当時の日本領土であった島々を占領したからだ。

その島々は、漁業以外、特に経済的価値もないが、日本人にとって感情的な意義が大きい。またロシアにとって、いかなる領土の譲歩も好まないし、戦略的に重要である。最近、4つの島の2つにミサイルを配備した。

両国が親交を深めるのは、その背後に中国への警戒感がある。ロシアは、欧米との制裁で天然ガスの市場を奪われる代わりに、中国との大型契約を結んだ。中国との軍事演習も行っている。しかし長期的に、ロシアは強力な南の隣国に依存していると見えるのを望まない。日本は、東シナ海を中国が支配するのを恐れているし、ロシアのアジアにおける友人であることを大いに歓迎する。

ドナルド・トランプが当選したことで、ヒラリー・クリントンなら考えられなかった機会が安倍首相に開かれた。安倍は外国の首脳として、真っ先にトランプに会いに行った。他方で、トランプがTPPを破棄することを明言したために、安倍はルールに依拠したアジア貿易に関して中国の役割を軽快し、またトランプが日本や韓国に防衛費の分担を増すよう要請したことを心配しているだろう。アメリカが「1つの中国」政策の支持を変えるかもしれない発表は、地域の緊張を高めるものだ。

これは政治的な危険を意味すると同時に、安倍の念願である憲法改正のチャンスでもある。尖閣諸島の防衛に軍備を強化し、憲法9条の改正に向けた高いハードルを越えねばならない。

核攻撃を受けた国として、平和主義の否定には強い抵抗がある。オバマとの握手と演説は、安倍が戦争の危険を深く考える姿勢を示すことで、そのハードルを下げる意味もある。

FT December 14, 2016

Remarkable rebound in Japanese stocks

Katie Martin

FT December 14, 2016

Japan and Russia braced for an island challenge

Robin Harding and Kathrin Hille

色丹のロシア人は返還が静かに行われるなら支持するだろう。モスクワからはあまりに遠く、彼らの将来は日本との経済交流にかかっている。しかし、島によって事情は大きく異なる。

もし2島の返還をロシア人に説得できるとしたら、それはプーチンだけだろう。

安倍は、4島返還を主張するナショナリストたちに不安を感じるだろう。しかし、国民の多くは2島返還を受け入れる。それに何か付け加えることが安倍の課題だ、と顧問は語る。

FT December 16, 2016

Positive ripples from Donald Trump’s victory cheer Japan

Gillian Tett

FP DECEMBER 16, 2016

Putin Wants Economic Cooperation With Japan But Won’t Give Back Islands

BY EMILY TAMKIN

YaleGlobal, 20 December 2016

Russia Pivots to Asia

Taehwa Hong

Bloomberg DEC 20, 2016

Trump Helps Make Japan Normal Again

Editorial Board

トランプのもたらすドル高は、円安を通じて、日銀を助けている。日本経済を正常化に向かわせるかもしれない。

FT December 21, 2016

Shinzo Abe’s act of peace at Pearl Harbor masks a hawkish intent

Joji Sakurai

安倍の真珠湾訪問は、彼のタカ派の意図を隠すためのものだ。韓国との合意も、オバマの広島訪問も、日本軍の正しさを信じる歴史観に根差す、安倍のプラグマティズムに過ぎない。

Project Syndicate DEC 22, 2016

From Russia With Unrequited Love

BRAHMA CHELLANEY

安倍は、プーチンとの関係構築に費やした政治的資本にほとんど何も得るものがない。日本のジレンマはむしろ深まった。ドナルド・トランプ次期大統領がロシアとの関係を改善すれば、安倍の機会が増えるのか? プーチンがアメリカを得たら、日本など必要ない。

FP DECEMBER 22, 2016

With Historic Defense Spending Boost, Japan Turns Further Away from Pacifism

BY ROBBIE GRAMER


l  ドイツの難民

SPIEGEL ONLINE 12/14/2016

The Death of an Ideal

Killing in Germany Triggers Fresh Refugee Debate

By SPIEGEL Staff

NYT DEC. 15, 2016

Why Islam Gets Second-Class Status in Germany

By ALEXANDER GÖRLACH


l  不確実性の時代

Project Syndicate DEC 14, 2016

The Age of Hyper-Uncertainty

BARRY EICHENGREEN

2017年は、ガルブレイスJohn Kenneth Galbraithが『不確実性の時代』The Age of Uncertaintyを出版してから40年目である。われわれがどれほど不確実であるか、考えるのによい時期だ。

1977年は、OPECによる第1次石油ショックが起きた後、世界は次のショックを心配していた(実際、それが起きた)。アメリカは低成長とインフレ、すなわち、スタグフレーションに苦しみ、政策やそのモデルが機能しないという新しい問題に直面した。ブレトンウッズの国際通貨制度は崩壊し、国際貿易や世界経済の成長についての不安が広がった。

20世紀の第3四半期、安定性と予測可能性をともなう黄金時代は終わり、大きな不確実性の時代が始まるように思えたのだ。

しかし、2017年から見れば、それはむしろうらやましい時代であった。1977年にはドナルド・トランプ大統領はいなかった。カーターJimmy Carterは歴史上の優れた大統領ではなかったかもしれないが、グローバルなシステムを危機にさらすような脅しは示さなかった。NATOWTOなど、アメリカの国際的責務に反することはなかった。

カーターは、連銀と敵対しなかったし、再選のために金融政策をゆがめる理事を指名することは考えなかった。むしろ通貨の安定性を確立する支柱としてPaul Volckerを連銀議長に指名した。連邦財政の赤字を引き継いだが、それを膨張させることはなかった。

1977年、ヨーロッパの統合化は希望に満ちていた。デンマーク、アイルランド、そして何よりUKが、高い成長をもたらすECに加わった。ECは地域通貨システム、「トンネルの中のヘビ」を立ち上げたばかりだった。しかし2017年には、Brexitの交渉が待っている。それがどうなるのか、いつまで続くのか、誰にも分らない。さらに、他の国も離脱するのか、EUの将来は不安なままだ。

1977年に、金融市場は新興市場の動向をほとんど注意しなかった。ラテンアメリカ、東アジアの発展途上諸国が成長していたが、それは金融センターからの融資にますます依存していた。中国はまだ世界から切り離されていた。第三世界は、余りにも小さく、世界市場に影響しなかった。

その状況は全く変わった。

中国、ブラジル、トルコが、近年のグローバルな経済成長の大部分を担っている。彼らに起きることが世界経済に大きく影響する。中国における企業の債務累積、政府による改革推進がどうなるのか、不確実だ。トルコは経常収支の赤字が膨張し、予測不能な大統領、不安定化する地政学的環境にある。ブラジルが比較優位をもつ輸出品があるとしたら、政治スキャンダルくらいだ。

もしガルブレイスが2017年に同じ本を書くとしたら、1970年代を「確実性の時代」と呼ぶだろう。

NYT DEC. 14, 2016

Trump’s Approach: A Fresh Start or Crazy Reckless?

Thomas L. Friedman

われわれは何と無謀なことをしてしまったのか?

トランプの目標にはまともなものもある.技術革新やインフラ投資,起業に対する障壁をなくすのは良いことだ.グローバル・イシューに関してロシアとより緊密に協力することや,中国との貿易に関してより強い姿勢を示すことも正しいと思う.

しかし,環境への影響を無視したり,プーチンの悪意を無視したり,中国と台湾が安全保障のバランスを慎重に築いてきたことを,東アジアの繁栄と安定性を無視して破壊することは,問題を生じるし,激しい逆効果をもたらすだろう.

プーチンが自由と,そのもっとも重要なアンカーである西側の同盟に対して与える脅威は強まっており,これにアメリカ外交がどのように応えるのか,問われている.トランプ政権の対応は,われわれが住む世界を,他の何よりも深く変えるだろう.


後半へ続く)