前半から続く)


l  億万長者+将軍+イデオローグたち

NYT DEC. 9, 2016

Donald Trump’s Military Government

By GORDON ADAMS

NYT DEC. 12, 2016

Flawed Choices for the State Department

By THE EDITORIAL BOARD

Bloomberg DEC 12, 2016

Exxon CEO Has the Skills for a Better Russia Policy

Leonid Bershidsky

Project Syndicate DEC 13, 2016

Toward a Rust Belt Powerhouse

FP DECEMBER 13, 2016

Tillerson’s Confirmation Battle Will Be First Test for Trump’s Russia Ties

BY JOHN HUDSON

The Guardian, Wednesday 14 December 2016

The Guardian view on Donald Trump’s team: not the new normal

Editorial

汚れた選挙で決まった,汚れた大統領による,汚れたチームだ.

これはアメリカ企業のためのチームである.ウォール街の銀行家たちにとってはクリスマス・プレゼントだ.そして軍人を多く指名し,重要な連邦政府の給付を廃止する.正常なところは全くない.公私の区別もつかない大統領が選ばれた.

FT December 14, 2016

The president-elect’s cabinet of curiosities

JIM O'NEILL

ドナルド・トランプの政権中枢になる国務長官に,ExxonCEOであるRex Tillersonが指名された.これはどういう意味を持つのか? CIAは,ロシアのハッカーがアメリカの選挙に介入したと考えている.トランプのプーチンに対する称賛や,彼の仲間にプーチンとつながる者もいる.国務長官は,グローバルな石油企業を経営してきたことで,ロシアとの緊密なコネクションを持つことになる.

他の閣僚たちも異端者ばかりだ.億万長者たち.将軍たち.イデオローグたち.

Project Syndicate DEC 14, 2016

The Manchurian Cabinet

NINA L. KHRUSHCHEVA

NYT DEC. 14, 2016

Donald Trump’s Nominees Are In for a Rough Ride

By THE EDITORIAL BOARD

FP DECEMBER 14, 2016

How to Be a Loyal State Department Bureaucrat in the Trump Administration and Keep a Clear Conscience

BY JOSEPH CASSIDY

FP DECEMBER 14, 2016

Trump’s War Against Intelligence

BY MICAH ZENKO

Project Syndicate DEC 15, 2016

Head for the Bunkers?

CARL BILDT

FP DECEMBER 14, 2016

Trump’s Team of Rivals, Riven by Distrust

BY THOMAS WRIGHT

FT December 17, 2016

Rex Tillerson, the Texas oilman chosen by Trump

Ed Crooks


l  ポピュリズムの地政学

Project Syndicate DEC 9, 2016

The Geopolitics of Populism

DANNY QUAH and KISHORE MAHBUBANI

Brexitやトランプを支持した有権者は,グローバリゼーションに取り残された人々なのか? 全般的な生活水準が上昇する中で,職場を失った労働者や消滅する産業が,有権者の不安を強めたのか? また,急速な技術革新の波及が不平等を拡大し,政治的な混乱を生じているのか?

こうした説明は間違っている.

アジア諸国も不利な立場の人々を助け,職場を失った人たちに再訓練や新しい雇用機会を提供するべきだろう.もちろん,すべての社会は最貧困層の面倒を見るし,社会的な移動性を高めるべきだから.起業家や運命を切り開く人々には報酬が与えられる,しかし,そのような政策でポピュリストの反乱は沈静化できない.不平等は根本原因ではないのだ.それは,支配権を失うという感覚だ.

選挙データは,より多くの貧困層がクリントンに投票し,富裕層がトランプに投票したことを示している.経済の階段を落ちていくことを恐れる人々がトランプに勝利をもたらしたのではない.Brexitでも,離脱派は経済の支配権を取り戻すと主張したのであり,不平等や排除と闘うことを掲げたのではない.裕福なビジネスマンがBrexitを支持した.

トランプと離脱派をつなぐものは,グローバリゼーションの利益から排除された怒りではなく,彼らがもはや自分の運命をコントロールできない,という不安である.所得分配のすべての階層で,不安を感じている.戦後の過酷な社会主義的実験の中で,東欧の多くの人々が,また文化大革命の中で多くの中国人が,コントロールができないという感覚を味わった.しかも,これらの社会では不平等が最小になっていた.

矛盾することであるが,グローバリゼーションは不平等を減少させたのだ.新興市場の何億人もが貧困から抜け出せた.1990年代を通じて,新興諸国のGDPを(市場の為替レートで)合計すれば,それはG7諸国のGDP合計のわずか3分の1であった.しかし,2016年までに,そのギャップは消滅した.

国際的な所得分配の不平等が減少したことこそが,個々の国で不平等が増大したことより,グローバルな秩序にかつてないストレスを与えている.西側諸国が提供するものと,新興経済が要求するものとの間に,ミスマッチが増大しているのだ.大西洋をまたぐパワーの枢軸が,世界を運営する力を失い,これらの国の政治エリートから庶民まで,コントロールを失ったと感じている.

新興経済圏,特にアジアの,地政学的な台頭が,秩序に新しい均衡を求めており,さもなければグローバルな不安定性が続く.所得格差を解消することは貧困層を助けるが,開発された諸国の不安を解消することはないだろう.

NYT DEC. 15, 2016

Will Democracy Survive Trump’s Populism? Latin America May Tell Us

By CARLOS de la TORRE

NYT DEC. 16, 2016

Is Donald Trump a Threat to Democracy?

By STEVEN LEVITSKY and DANIEL ZIBLATT


l  メルケルの転換

Bloomberg DEC 9, 2016

In 2017, Watch Merkel Pivot to the Right

Leonid Bershidsky


l  インドの通貨改革

FT December 10, 2016

India’s cash bonfire is too much, too soon

Kenneth Rogoff

一夜にして高額紙幣の廃貨を宣言したモディの通貨改革は,その目標が正しくても,あまりに杜撰で,準備不足であった.何よりも,中央銀行であるインド準備銀行が,旧紙幣と交換する新紙幣の印刷をしておらず,それができるまでに数か月もかかる.これでは,経済が停滞し,現金を利用する多くの労働者,商人,供給業者の活動を止めてしまう.

モディは,この過激な改革で長期的な利益をもたらす可能性はまだあるが,短期的な結果は破滅的である.汚職,脱税,犯罪による資産,テロリストたちによる偽札の増加,など,改革は合理的な理由を掲げている.

発達した諸国でも,高額紙幣の利用は脱税や犯罪にもっぱら役立っており,小額紙幣が果たすべき役割と区別できる.高額紙幣は緩やかに,5-7年かけて廃貨することが望ましい.キャッシュレス(貨幣の無い)社会ではなく,現金取引が少ない社会に向かうのだ.

インドには銀行口座を持たない人々が何億人もおり,もっと必要な通貨・金融改革がある.


l  米中貿易紛争

FT December 10, 2016

America and China square off over trade

アメリカと中国との間で,貿易摩擦は常にあった.15年前に中国がWTOに加盟してから,通貨価値や,貿易の規制,直接投資の排除,などが問題になった.しかし,おおむね国際法の枠内で争いは処理されてきた.双方の姿勢が,特に,トランプの大統領当選により,明らかに貿易問題をゼロサムと考えることは紛争を予想させる.

この15年間で,多国間のルールが紛争を抑制したことは重要だ.しかし,通貨価値の問題は解決がむつかしい.アメリカの努力にもかかわらず,為替レートの不整合に関する国際的な政策の枠組みは築けなかった.伝統的に,アメリカの保護主義を抑制する勢力が弱まっていることも心配だ.通常は,議会が保護主義を叫び,ホワイトハウスが大人の態度を示して抑制した.トランプがホワイトハウスに入るとき,逆に,共和党の議会がそれを抑制するのか?

アメリカの大企業は,自国の保護主義が外国市場を閉ざすことを恐れて,拙速な行動を抑えていた.しかし,トランプは就任前でも,ボーイングを標的にした.アメリカの商務長官は,従来から輸入を阻止する業界の利益に従うが,通商代表部は輸出企業の利益を重視してそれを抑えた.後者の指名はまだなされない.

中国の指導部は国内経済の減速を心配している.アメリカが予測できない,好戦的な大統領を選んだことで,貿易紛争のリスクは高まっている.

NYT DEC. 15, 2016

Can Trump Get Tough With China?


l  イタリア

FT December 12, 2016

Italy poses a huge threat to the euro and union

Wolfgang Münchau


l  人民元の下落局面

FT December 11, 2016

China: Renminbi stalls on road to being a global currency

Gabriel Wildau and Tom Mitchell

201510月に、当時のキャメロン首相が習近平主席をUKに迎え、ロンドンでは中国人民銀行が1年物債券を発行し、人民元のオフショア取引を開始した。ロンドンが人民元の海外取引で金融センターの地位を確立した、とみなされた。

その後、IMFは、人民元を国際準備通貨の仲間、SDRのバスケットに加えた。そしてそのことを「中国経済はグローバルな金融システムに統合する重要な段階」を越えたものと述べた。

しかし、そのIMFの決定以前から、新しい、より多様なグローバル通貨システムの夜明けというより、人民元の国際化は勢いを失い始めていた。

中国の貿易決済に占める人民元の割合は、昨年、26%から16%に低下した。香港における人民元預金額は、2014年のピークで1兆元を超えたが、その後、30%減少した。中国国内金融資産の外国人による保有額は、20155月に4.6兆元であったが、今は3.3兆元である。外国為替市場における人民元のグローバルな取引額は2013年に9位となったが、スイス・フランとスウェーデン・クローナの間に挟まれて、今も8位である。

人民元の国際的な利用を推進する構造的力は、20057月にドルに対する固定制を離脱し、20141月まで人民元が増価し続けたことで、これを利益の機会とみなし、投機することであった。巨額のドルが中国に流入していた。しかし、その流れは逆転した。先月、8年ぶりの低水準となり、年間で最悪の下落を示した。人民元資産の売却が逆方向の投機になっている。

UBSのエコノミストWang Taoによれば、資本勘定を閉じたまま急激に成長した結果、家計や企業には、海外資産を購入して多様化したい、という強い欲求がある。また、国内のバブルに関する懸念も強まっている。

アメリカの金利引き上げが予想され、ドナルド・トランプが当選したことで、ドルは13年ぶりの高い水準に達した。中国では、成長減速と債務の累積に関する懸念から資本流出が続いている。昨年、中国人民銀行が行った金利引き下げも、利回りを求める投資家たちへの魅力を失わせた。中国企業の海外における買収など、人民元を売る取引を抑制する政府の動きも、人民元国際化が後退した、という疑いを強めている。

改革志向の中央銀行は、SDRバスケットに参加するという威信だけでなく、これを北京や金融エリートたちが改革を受け入れる「トロイの木馬」にする、という目論見があった。2010年以来、人民元国際化のために多くの改革が実行されてきた。銀行預金と貸付金利の規制緩和、預金保険制度、為替レートの弾力化。資本勘定の自由化もそうだ。香港を通じて、株式の連動を勝っていたグローバルな投資家たちが、上海・深圳の中国国内株式を購入できるようになった。

しかし、改革が資本の流入と流出とを概ね均衡していたときは為替レートに強い圧力を生じなかったが、今や状況は全く変化している。

北京は厳しい選択に直面する。資本移動の自由化を逆転するか、あるいは、為替レートの管理を諦め、大幅な価値の切り下げを受け入れるか。元IMF中国担当のエコノミストEswar Prasadは、為替レートの動きを管理し、同時に、資本の国際移動を許すことには、明らかに限界がある、という。多くのエコノミストは変動レート制を採用するべきだと考えるが、中国人民銀行は為替市場に介入し続けている。

市場圧力によって為替レートは変化するが、介入でその変動を抑制する。「ダーティー・フロート」である。支持者は、介入によってグローバルな投資家がパニックになるのを防ぐ、と考える。しかし反対者は、外貨準備を浪費して、不可避の為替レート調整を遅らせているだけ、と考える。

人民元が無秩序な減価を示せば、経済全体が混乱を生じ、最悪の場合、政治的安定性も損なわれる、という不安がある。他方、元中国人民銀行顧問、中国社会科学院のYu Yongdingは、規制を撤廃して変動レートに移っても、為替レートは安定するだろう、と考える。中国は大幅な貿易黒字であり、外貨建債務も少なく、強い資本規制を行っているからだ。「一時的にオーバーシュートしても、反発する。」

しかし、香港のHSBC主任エコノミストQu Hongbinは、「ドルが強くなり、アメリカの政策に関する不確実さが増しており、貿易戦争も懸念されるとき、誰が通貨価値を市場に任せたいと思うだろうか? 非現実的な考えだ。」という。

中国は混合型アプローチを続けるだろう。改革を前進させるような投資、習近平の提唱する新シルクロード、中央アジア、中東、ヨーロッパをつなぐインフラ建設を推進するような、グローバル・バリュー・チェーンを築く投資は続けられるだろう。しかし、対象を厳選する。

人民元国際化は、資本流出に対する短期の反応ではなく、もっと長期の経済改革によって決まる。たとえば、累積債務や、国有「ゾンビ」企業の改革、銀行部門の自己資本増強だ。もっと広範な改革、もっと厳しい姿勢が求められる。しかし、今はそれが見られない、とPrasadは述べた。

NYT DEC. 12, 2016

How Xi Jinping Can Avoid Becoming a Dictator

By HO PIN

FT December 13, 2016

Too big, too Leninist – a China crisis is a matter of time

Martin Wolf

習近平の汚職追放キャンペーンは成功しないだろう.

Minxin Pei がその優れた著書 China’s Crony Capitalismで示すように,権力者になる者がライバルを汚職の罪で葬ることはあまりにも容易である.それほど汚職は蔓延しているからだ.そして,汚職は経済をゆがめ,行政を劣化させ,共産党の社会的正当性を失わせる.

それは中国における急速な経済改革の成功,富の増大と一緒に進んだ.汚職は過去において成長を妨げなかった.しかし,それは続かないだろう.1.時間とともに広まる.2,教育を受けた人々の意識が変わる.3.成長が減速する.4.技術革新が必要になる.

習近平の解決策は,一層のレーニン主義的政党と,一層の市場改革である.この組み合わせは非常に疑わしい.

FT December 15, 2016

Managing the inevitable decline of the renminbi

人民元の価値は増大し続けると信じて中国に資本が流入した時期は終わり,資本の流出が起きている.資本流出を規制するとともに,外貨準備を失っても介入して為替レートを安定化しているが,それはいつまでも続かない.

資本流出を止めるには,大幅な切り下げを行うか,変動レートに移行する必要がある.変動レートになっても,市場で通貨価値は同様に急落する.切下げ幅が小さければ流出は止まらず,大きすぎれば混乱を招く.それは政治的な不安定化と,近隣諸国におけるショックを招く危険がある.

パニックを避けるために,中国政府は「ダーティー・フロート」を続けるだろう.それは外貨準備を失い,改革を遅らせ,経済効率を低下させる.世界経済の状況は2015年半ばに比べて改善している.

海外旅行や留学,外国企業の買収を妨げるより,資本流入を促す改革を進めるほうがよい.すなわち,国有企業,銀行部門,不動産市場の改革,経済ナショナリズムに従う政策の廃止.

トランプ政権は,中国が為替市場に介入することを,人民元の大幅な減価を抑える安定化が目的である,と知るべきだ.

Project Syndicate DEC 15, 2016

Righting China’s Property Rights

SHANG-JIN WEI


l  AIと洗車

The Guardian, Monday 12 December 2016

Our problem isn’t robots, it’s the low-wage car-wash economy

Paul Mason

イングランド銀行総裁Mark Carneyが,極度に低賃金の職場を廃止し,富を再分配する必要がある,と語ったことは正しい.そして,そうすることで機械を解放するだろう.

われわれの主要な問題は,ロボットが人間の職場を奪うことではない.それは洗車業界が示している.洗車はかつて機械で行われた.今,それは雑巾を持った5人が行っている.イギリスの手洗い洗車点は2万店だが,その1000点ほどが規制に従っているだけだ.対照的に,機械による洗車店は,10年で,9000点から4200店に減った.自由市場モデルが,労働市場のグローバル化と結びついて,一種の工業化の逆転を起こしたのだ.

先週,Carneyは,主要な政策担当者の1人として,グローバリゼーションの危機,自由市場経済の停滞,新技術の遅れて生じる効果,について認識を示した.8年前の世界金融危機以後も,詮索担当者たちは,危機の原因であった自由市場とグローバリゼーションをさらに進めてきた.TTIP推進やBT分割がそうだ.

Carneyは,そのような薬は効果がない,と認めた最初の1人である.それがもたらすのは,低成長,賃金の低迷,生産性の停滞,増大する不平等である.中央銀行は貨幣を印刷することで,患者を延命することができる.しかし,新しいシステムをデザインするのは政治家とエコノミストである.

Carneyの考える解決策は,第1に,エコノミストたちが,資本主義の既存の形態は99%の人々にとって好ましくない,と認めることだ.第2に,成長を刺激するには,貨幣を増やすことではなく,生産性を高めるように経済を設計しなおすことだ.第3に,富を,富裕層にではなく,貧困層に再分配する必要がある.

メイ内閣は,Carneyの話をよく聞いて,ハモンドの財政緊縮策を放棄し,税収を増やし,タックスヘイブンを閉鎖し,低賃金・低生産性の職場を創り出さないように手段を講じるべきだ.それは経済の再規制・規制強化であろう.

公共サービスの民営化を逆転させて,非営利団体とし,生産コストを下回る低価格で,鉄道や通信,エネルギーを供給すれば,効果的な再分配になる.最底辺の人々にも,突如,生きる力が回復する.何よりも,賃金を引き上げるべきだ.そのために,あらゆる職場で労働組合を結成し,強化する.Amazonから建設業者まで,法によって組合との交渉を求められるなら,経済全般で賃金が上昇する圧力を生じる.あるいは,地方政府や国が,公共部門の賃金を引き上げる.それらは,グローバリゼーションによる30年間の労働市場改革を逆転するものだ.

より高度な熟練,高付加価値,高賃金の職場を増やすことができるだろか? それは明らかに少ないだろう.技術革新やロボットは,新しい職場の創出よりも急速に広まる.グローバルな成長は停滞してしまう.

自由市場型のグローバリゼーションから,管理された,制限された,後退する過程を,1930年代のようなグローバル・システムの分裂や,トランプ,プーチン,安倍,習近平の混沌としたアプローチではない形で,実現する必要がある.

安価な労働者を利用するビジネスを締め出し,高賃金を促す,新しいタイプの資本主義は,経済学教授や西側の資産保有型富裕層の怒りの声を呼ぶだろう.レース・トゥ・ザ・ボトムを逆転し,技術革新や生産性上昇のもたらす富の分配をよく考える.特に,高度に複雑な,個人主義的形態を取る消費経済において,最もうまく機能する再分配政策とは何か,よく考えることだ.

FT December 13, 2016

Growth hinges on technology but the fruits must be shared

Carl Benedikt Frey

Project Syndicate DEC 14, 2016

The Promise of Digital Finance

LAURA TYSON and SUSAN LUND

FT December 16, 2016

Technology, trains and the power of unions

SUSAN LEIGH ANDERSON

Project Syndicate DEC 16, 2016

The Promise of Ethical Machines

Bloomberg DEC 16, 2016

Why Artificial Intelligence Won't Displace Human Artists

Leonid Bershidsky

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The Economist December 3rd 2016

The mighty dollar

The world economy: The dollar squeeze

China’s falling currency: A harder call

India’s demonstration: Modi’s bungle

India’s demonstration: The ropy rupee recall

Internal migrants: More children, more grandparents

Syria: Aleppo falls apart

(コメント) ドルが強くなれば,それは世界経済に間違ったシグナルとなり,その後の危機を各地で誘発します.これは1980年代にレーガノミクスで世界が学んだことでした.世界金融危機後の超金融緩和が,新しい不安定化の条件を広めることも,同様に歴史的な経験です.

しかし,今回の主役はアメリカと,日本ではなく,中国です.プラザ合意はないでしょう.

アメリカ,中国,インドの通貨が,緊密に統合化する金融市場の影響をどのように吸収し,あるいは,拡大するのか?

「アレッポを忘れるな!」という言葉を,ロシア大使の殺害において聞いたとしたら,ベルリンのトラックによる襲撃とともに,世界政治を震撼させる事件が続いていると思います.

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IPEの想像力 12/19/16

NYTOp-Docsに載った動画Indefinite, by Darren Emerson は,無期限の拘束を続けるイギリスの制度を廃止するよう訴えます.

スーダン,イエメン,ウガンダ,スリランカ,など,世界中から安全な暮らし,拷問からの自由を求めてイギリスに到着した人々が,入国を拒否され,拘留されたまま,数日ではなく,数か月,数年を留置所に隔離されたまま過ごしています.無期限の拘束を認めるのは,EU諸国の中でイギリスだけだ,と伝えます.

窓は完全に閉じられたまま開くことはなく,携帯電話を取り上げられ,有刺鉄線と鉄格子の建物に閉じ込められる.犯罪者かテロリストのように扱われ,「人生は終わった」と考え,自殺する者も多い.どこかの部屋で悲鳴が上がると,看守が走って行きます.

これは政治劇であり,合成された映像です.拘束された人も,看守も,一瞬,炎を噴き出して激しく燃え始めます.しかし現実のデータも,2015年に自殺を試みた者が毎日,平均1人,出たと示します.2957人が拘束下で自殺し,その内の11人は子供でした.

難民申請は官僚制によって阻まれ,地獄の中にいるようだ.自分がなんの理由で拘束されているか,いつまで続くのか,何も説明されない.元の国に帰ることもできない.半分ほどが社会に戻されるが,彼らは一文無しで,仕事も,住宅も,何もない.家族も,子どもも失い,自分を失う.

すべてのDetention Centreが廃止されるべきだ,と訴える人々を動画は映します.人は非合法ではない.地球上のだれ一人,法によらず,拘束してはならない.

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グローバリゼーションの否定的な意味が議論されるようになって,その負の側面をどうするべきか,注目が集まります.移民・難民,通貨・金融・資本移動,それと衝突する,各地の国民主権・民主主義・福祉国家です.

アメリカ市場を最大の輸出先とする国の数は1994年に44か国でしたが,20年後,2014年には32か国です.しかし,外国為替市場や外貨準備に占めるドルの支配的地位は変わらず,事実上のドル圏,すなわち,ドルと一緒に価値を変動させる通貨圏は,世界人口でも世界GDPでも60%を占めています.(The Economist, December 3rd 2016

人民元は急速に国境を超えて利用されるようになり,アメリカのドルに代わって,世界の通貨価値の基準,取引や金融決済の最終手段,準備として,受け入れられる,と思われたこともありました.しかし,今は違います.

貿易黒字や外貨(ドル資産)準備があっても,国内の貯蓄に見合う好ましい金融資産はなく,信頼される金融市場も育っていないからです.人民元の価値は,外国の資産を買うために人民元を売る中国人自身によって切り下げられます.人民元の価値が減少する,という予想は,国内のバブルや国際的な金融政策の対立から,突如,自己実現的なパニックに向かいます.

他方で,トランプのドル高も恐ろしい副作用を生じている,といくつかの論説が警告します.銀行や企業は低金利のドルを調達して,現地の通貨に換えて投資しています.ドルの価値やアメリカの金利が上昇すれば,彼らは返済できません.トランプの大幅減税,インフラ投資,規制緩和に期待する株価上昇も,アメリカの好景気が世界経済の停滞を解消する機会となるか,保護主義と国内政治の混乱をもたらすのか,わかりません.

人民元の急落を防ぐために介入しても,トランプはそれを人為的な輸出促進政策とみなすかもしれません.過剰生産力や累積債務,あるいは銀行の不良資産を,政府が強権的な手法で維持し,ショックを緩和することは,必ずしも良い結果を保証しません.

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市場の統合化で,次第に国境が失われ,市場の示す価格や所得が正しいシグナルとして働くと期待されました.すなわち,各地の企業や投資家が,そして私たちが,労働者として,消費者として,行動を変えることで,グローバリゼーションの利益を広めるだけでなく,マイナス面も柔軟に吸収できる.あるいは各地に制度を築いて市場の混乱を抑制できる.

富を生み出すシステムが,望ましい社会を実現するような条件であることが,正当な権力の条件です.移民・難民を拘束し,資本規制を強化する政府が,その解決策を示すわけではありません.

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