(前半から続く)
l グローバリゼーションと第3次世界大戦
SPIEGEL ONLINE 11/11/2016
Concern in Brussels and Berlin
Trump Spells End of Normality for
Europe
BY
SPIEGEL Staff
Project Syndicate NOV 11, 2016
The End of US Soft Power?
SHASHI
THAROOR
Project Syndicate NOV 11, 2016
The Trump Shock in Latin America
JORGE
G. CASTAÑEDA
Bloomberg NOV 11, 2016
Putin Knows Working With Trump Won't
Be Fun
Leonid
Bershidsky
NYT NOV. 11, 2016
What Europe Needs to Hear from Trump
By
WOLFGANG ISCHINGER
NYT NOV. 11, 2016
Russia Isn’t Actually That Happy
About Trump’s Victory
By
RUSLAN PUKHOV
FT November 12, 2016
Donald Trump’s victory is our
post-crisis political reckoning
John
Kay
Brexitとトランプの共通する背景として、グローバリゼーションによる敗者の不満がある、と言われるが、それは間違いである。2つの事件を起こしたのは、主に、グローバリゼーションによって経済的な不利益を受けた地域や人々ではない。むしろ、クリントンではなく、最もトランプを支持した有権者の行動は、年齢、教育水準、エスニシティで示される。
国によって所得分配に影響する要因は異なっている。支持者たちの経験の分散が、ポピュリズムの特徴である。それは、左派にも、右派にもあるし、シングル・イシュー政党にもある。現在の政治的分裂状態の最重要な原因は、経済的なものではなく、伝統的な政治的構造や権威が崩壊したことである。そのことに経済的な起源があった。
冷戦終焉を「歴史の終わり」とFrancis Fukuyamaが呼んだとき、それは厳しい寄生を逃れた資本主義と、リベラルな民主主義の組み合わせであった。それらは自身の内に崩壊の種を抱えていた。強欲の肯定、株主価値の最大化は、世界金融危機に至り、資本主義という組織の正当性を失わせた。
しかも、実際的な社会主義が伝統的な政党組織を失い、左派に対する対抗同盟であった保守派の旧政党も、その敵を失って、バラバラになってしまった。旧来の政治構造が分解、消失した後の空間で、トランプは成功したのだ。それは伝統的なメディアの支配を破壊し、“truthiness”への道を開いたソーシャル・メディアを駆使したものであった。
メディアが果たしていたフィルター機能は失われ、どのような意見も等価になったのだ。あなたがそれを真実と思うなら、それが真実だ、という考えが広まった。だれもが容易に、自分と同じ偏見を見出し、真実として確認できる。かつて民主主義の諸制度を批判することはタブーであったが、彼らはBrexitを制限した判事たちを「人民の敵だ」と攻撃する。トランプの支持者たちは「ヒラリーを投獄せよ」と呼び掛けて連鎖する。
他者の見解に敬意を払うことはなく、民主主義が依拠する正当性の権威さえも破棄する。世界金融危機に対する民主的な政治家たちの対策が役に立たなかった後、政治制度の民主的バランスは失われた。
Project Syndicate NOV 12, 2016
Preparing Asia for Trump
GARETH
EVANS
Project Syndicate NOV 13, 2016
Will Trump Bring Down the West?
CHRIS
PATTEN
Project Syndicate NOV 15, 2016
Donald Trump’s Brave New World
NINA
L. KHRUSHCHEVA
NYT NOV. 15, 2016
How Germany Soured on Obama
By
MADHVI RAMANI
NYT NOV. 15, 2016
Mexico Awaits Trump’s Next Move
By
IOAN GRILLONOV. 15, 2016
The Guardian, Wednesday 16 November
2016
We must rethink globalization, or
Trumpism will prevail
Thomas
Piketty
グローバリゼーションに関する議論を転換する時である。貿易は良いことだが、公平で、持続可能な発展は公共サービス、インフラ、医療や教育のシステムを必要とする。これらは公平な税制を必要とする。もしこうしたシステムを提供できなければ、トランプ主義が蔓延するだろう。
FT November 16, 2016
The new deal that must be forged
between Europe and the US
Alexander
Stubb
FT November 16, 2016
How Donald Trump will make Russia
great again in the Middle East
David
Gardner
NYT NOV. 16, 2016
Turkey’s Populists See an Unlikely
Ally
Mustafa
Akyol
FP NOVEMBER 16, 2016
Barack and Angela’s Tragic Romance
BY
JOERG FORBRIG
Project Syndicate NOV 17, 2016
Europe Against the Ropes
FP NOVEMBER 17, 2016
Trump’s Syria Strategy Would Be a
Disaster
BY
CHARLES LISTER
FP NOVEMBER 16, 2016
How World War III Could Begin in
Latvia
BY
PAUL D. MILLER
4年前、私はロシアのウクライナ侵攻を予測した。私の次の予測は、バルチック諸国への侵攻だ。それはトランプ大統領の最初の、そして最大の試練になる。
ロシアのプーチン大統領は、明確な目標と大戦略を持っている。しかし、それはリアリストが考えるようなものではない。プーチンの行動を、基本的に合理的で、防衛的な目標によって説明する者がいる。NATOの拡大がロシアを脅かしたから、ロシアはそれに反撃したのだ。西側は、ロシアを犠牲にして、その影響圏を拡大した。今、ロシアはその報復を行っている。John Mearsheimer によれば、“Ukraine
Crisis Is the West’s Fault” である。
多くのリアリスト学者の分析と同じく、これはナンセンスだ。プーチンは、合理的な自己利益を冷静に計算して行動しているのではない。そのようなことをする人間はいない。われわれは、もっと深い前提や信念によって形成され、定義された自己利益に従って行動している。それらはイデオロギーや信仰と言ってもよい。
プーチンは、近隣諸国へのヘゲモニーを保持することがロシアの安全保障に必要だと信じている。それはロシアの国民性や歴史的な宿命に関する彼の確信なのだ。プーチンは単なるナショナリストではない。クレムリンは特別なナショナリズムによって動いており、それは信仰、宿命、救世主のイメージと混じり合っている。この物語では、ロシアが正教の守護者であり、その信仰を守り、拡大する使命を持つ。
真に合理的なロシアにとって、NATOやEUの拡大は脅威とならないだろう。なぜならリベラルな秩序は開放的で、包摂的であるから、ロシアの安全と繁栄を増大させるからだ。しかし、世界をロシアの宗教的ナショナリズムのレンズで観る、プーチンとロシア人にとっては、西側がそもそも退化とグローバリズムを意味するゆえに、脅威なのだ。
プーチンの大戦略とは、NATOを解体すること、特にその第5条、相互安全保障を無意味にすることだ。すでに、グルジアとウクライナにより、NATOの信頼性は浸食された。両国はNATO加盟国ではなかったが、明らかに加盟を検討していた。しかし、ロシアにより領土の一部が占拠された状態で、NATO加盟は不可能だ。
プーチンの次の行動はさらに危険なものである。それはNATO加盟国であるバルチック諸国に浸透することだろう。国境を超えて正式な軍隊を動かす侵攻ではない。あいまいな軍事的危機を醸成するものだ。おそらく、ロシア語を話すラトビアとエストニアの国民(人口の約4分の1がエスニック的に観てロシア人である)が、暴動を起こし、権利を守れと要求し、告発して、「国際的な保護」を求める。優れた装備と訓練された「ロシア系バルチック人民解放戦線」が現れ、政府の要人暗殺や爆破事件により内戦状態になるだろう。
国連安保理の決議はすべてロシアによって拒否される。しかし、ロシアは一方的に平和維持軍を提供するだろう。NATOの会議で、ポーランドが第5条の発動を要請し、ロシアの攻撃に対する集団防衛を求めるが、ドイツとフランスは激しく抵抗する。だれもがアメリカの決断に同盟の行方を観るだろう。
もしアメリカが行動しなければNATOは崩壊し、逆に第5条を発動するなら、トランプ大統領はラトビアに始まる第3次世界大戦を開始するリスクに直面する。
FT November 18, 2016
The dangers of striking a grand
bargain with Putin
ANA
PALACIO
l 第3のリベラリズム
FT November 11, 2016
Seven takeaways from the victory of
Donald Trump
Lionel
Barber
NYT NOV. 11, 2016
David Plouffe: What I Got Wrong
About the Election
By
DAVID PLOUFFE
FP NOVEMBER 11, 2016
Let’s Face It: The U.S. Constitution
Needs a Makeover
BY
CHRISTIAN CARYL
FP NOVEMBER 11, 2016
I Spent Election Night Being
Comforted by a Chinese Law Professor
BY
ISAAC STONE FISH
FT November 12, 2016
Trump v Clinton: Why the pollsters
seemed to get it wrong
Philip
Delves Broughton
Project Syndicate NOV 12, 2016
Slouching Toward Trump
ROBERT
SKIDELSKY
なぜ民主主義はそれ自体の中に衰退する傾向を持つのか? Brexitとトランプ主義の成功は、エリートに対する反対の声であった。
アリストテレスにまでさかのぼるが、民主主義の欠陥は、それが富裕化により寡頭制を招くことだ。より不平等な社会では、異なるライフスタイルや価値観が富裕層と「庶民」とを分断する。ゲイティッド・コミュニティーが現れて、世論は分裂してしまう。
民主主義の正当性を破壊するのは、文化ではなく、経済だ。F.D.ルーズベルト、ケインズ、EU創立者たちにより再建されたリベラルな戦後秩序は、グローバリゼーションの経済学によって破壊された。リベラリズムの危機が起きたのは、英米という、ネオリベラリズムを最も強く信奉し、実現した2つの国であった。
エリートたちは利己的で、腐敗し、犯罪者である、とポピュリストたちは主張する。トランプ主義はリベラリズムの危機に対する解決策なのだ。アメリカは国際安全保障に関する責任を放棄する。保護主義の伝統に回帰する。1兆ドルのインフラ投資を行う。
リベラル派は、単に嫌悪し、絶望するのではなく、リベラルの価値をできるだけ失わずに、トランプ主義の積極面を取り込むべきだ。そして第3のリベラリズムを実現する。
NYT NOV. 11, 2016
Bernie Sanders: Where the Democrats
Go From Here
By
BERNIE SANDERS
FP NOVEMBER 11, 2016
Donald Trump Will Dramatically
Realign America’s Political Parties
BY
LEE DRUTMAN
The Guardian, Sunday 13 November
2016
Brexit meets Trumpism: the malign
new force spanning the Atlantic
Matthew
d'Ancona
FT November 13, 2016
The Republican party is being
refashioned
Peter
Wehner
FT November 16, 2016
Trump v Putin: is the spectre of
nuclear war back after 25 years?
Neil
Buckley, Sam Jones and Kathrin Hille
FT November 16, 2016
Angry voters were made on factory
floors
John
Gapper
FP NOVEMBER 16, 2016
Western Liberalism Is Dying in China
BY
MA TIANJIE
NYT NOV. 17, 2016
When Work Loses Its Dignity
By
SHERROD BROWN
l トランプ大統領
FP NOVEMBER 11, 2016
Donald Trump Is the End of Global
Politics as We Know It
BY
YASCHA MOUNK
Bloomberg NOV 11, 2016
Trump Desperately Needs a James
Baker
Jonathan
Bernstein
FP NOVEMBER 15, 2016
The End of the End of History
BY
SHADI HAMID
NYT NOV. 16, 2016
Donald Trump, Help Heal the Planet’s
Climate Change Problem
Thomas
L. Friedman
SPIEGEL ONLINE 11/17/2016
A Turning Point for Globalization
Inequality, Market Chaos and Angry
Voters
By
SPIEGEL Staff
l 中国の視点
FP NOVEMBER 11, 2016
The People of Hong Kong vs. The
People’s Republic of China
BY
SUZANNE SATALINE
NYT NOV. 15, 2016
‘We Have a Fake Election’: China
Disrupts Local Campaigns
By JAVIER C. HERNÁNDEZ
Bloomberg NOV 16, 2016
Hong Kong Needs a Champion
Anson
Chan
l アメリカ連銀の金利引き上げ
FT November 12, 2016
Federal Reserve’s vice-chair readies
markets for rate rise
Sam
Fleming in Washington
l トランプの財政・金融政策
FT November 12, 2016
Trump makes the stock market great
again
FT November 12, 2016
The president-elect’s policies will
make America grow again
Anthony
Scaramucci
NYT NOV. 15, 2016
Trump Campaign’s Easy Answers
Confront Hard Reality
Eduardo
Porter
今秋、トランプは、彼のストレートな解決策が、実際は、彼が約束したほどストレートではない、と認めるように強いられた。
巨大な美しい壁を作るというのは、フェンスのようなものであり、1100万人を強制退去させることはない。貿易についてもそうだ。NAFTAを破棄したり、中国との貿易戦争を刺激したりするのは望まない。そんなことをしても製造業の雇用は戻らない。
彼は支持者に見放されるのか? 政治家というのは、平均的な有権者の関心に従うのではなく、富裕層の関心に従うものだ、と政治学者Larry Bartelsは説明する。
底辺の有権者たちは雇用を与え、所得を平等化する政策を求める。しかし、頂点の有権者たちはそれに反対する。政府支出の削減に対しても、意見は反対だ。富裕層は貧困層よりも、支出削減に賛成するだろう。
トランプのポピュリスト政策は、もっと共和党の伝統的政策目標に似たものへと変化するだろう。オバマケアを廃止するより、Paul Ryanが提案したような、高齢者へのバウチャーによる民間保険の購入に変えるのだ。
FP NOVEMBER 15, 2016
If Anyone Can Bankrupt the United
States, Trump Can
BY
DANIEL ALTMAN
急速な財政赤字の増大と高金利が意味するのは、トランプの任期4年にも政府債務が持続不可能になることだ。彼のビジネスがそうであったように、新しい破産が迫っている。今度は、やり直しがない。
Bloomberg NOV 17, 2016
Don't Build Trump's Wall. Amend the
Constitution.
James
Gibney
FT November 18, 2016
Wall Street looks like a winner
under Donald Trump
Gillian
Tett
l SNSの拡大と世界秩序構築
NYT NOV. 12, 2016
Lies in the Guise of News in the
Trump Era
Nicholas
Kristof
Bloomberg NOV 14, 2016
How to Keep Steve Bannon Out of the
White House
Jonathan
Bernstein
NYT NOV. 15, 2016
Steve ‘Turn On the Hate’ Bannon, in
the White House
By
THE EDITORIAL BOARD
トランプが国民を統一する大統領になる、と期待する者は、ホワイトハウスの主任ストラテジストに指名されたStephen Bannonやthe
Breitbart News Networkが何を広めているか、確かめてみるべきだ。
そのヘッドラインを観ただけでも、黒人は犯罪者であり、移民たちはアメリカ生まれの娘を強姦し、フェミニストはすべての男性を去勢しようとしている、という。その読者のコメントも観るべきだ。彼を称賛する人々が誰か、知るべきだ。白人ナショナリストのRichard Spencer、American
Nazi Partyの議長、the Ku Klux Klan のDavid
Duke。
FT November 16, 2016
Face up to responsibility, Facebook
and friends
NYT NOV. 16, 2016
Bullying in the Age of Trump
By
EMILY BAZELON
NYT NOV. 16, 2016
Facebook’s Damage to Democracy
David
Leonhardt
FP NOVEMBER 16, 2016
How Social Media Helps Dictators
BY
ERICA CHENOWETH
Bloomberg NOV 16, 2016
Fake News Is All About False
Incentives
Leonid
Bershidsky
NYT NOV. 16, 2016
Social Media’s Globe-Shaking Power
Farhad
Manjoo
先週、大統領選挙が技術産業にとって思うような結果にならなかったことで、多くのシリコンバレー関係者に、誤った情報がインターネット上に広まることの重要性を理解させた。
月曜日に、Googleと Facebookの広告表示方針が変更された。虚偽の情報で金儲けするフェイク・ニュースの情報交換を禁止したのだ。それは意味のあることだが、遅すぎた。
フェイク・ニュースのもたらす危険は、その一部でしかない。何十億人もがFacebook, WhatsApp,
WeChat, Instagram, Twitter, Weiboなどに、いつも関心を向けている世界では、ソーシャル・メディアがますます文化的・政治的な影響を強める。その効果はグローバルな事件の推移さえ変える力を持っている。
ソーシャル・ネットワークが主流のメディアを打ち破った。それは政治資金集めや広告に関して、伝統的な政治的優位を崩壊させた。政治政党や、超国家機関、人種差別や外国人排斥の表現を抑制する暗黙の、しかし長期に維持されていた社会的禁止措置を含めて、旧来の制度や物事のやり方に動揺をもたらし、入れ替わった。
最も重要なことは、人々が互いに、自由な情報交換を行うことで、かつては限適した影響しか持たなかった社会集団に驚くほどの組織化能力を与えたことだ。こうしたアドホックな社会運動の広がりは、その形態や党派性もいろいろだ。「オルタナ右翼」の白人至上主義者、イギリスのBrexit運動家、中東におけるISIS、東欧やロシアのハッカー集団、いずれの集団も、かつて考えられないほどのパワーを得て、予測不可能な、地政学的な衝撃を与えている。
Ian
Bremmerは、「インターネットには現状に不満を持つ何十億もの人々がいる。彼らは、その政府を権威主義的だと考え、エスタブリシュメントを間違っていると批判し、アイデンティティ政治や中産階級の空洞化により不満を強めた。」
過去において、トランプのような候補が勝利することはなかった。すべての主流の評論家が批判し、政治資金も組織も伝統的な政治専門家にも、トランプは受け入れられなかった。しかし、インターネットで共鳴する人々の中にメッセージを入れたのだ。トランプはすべての既存の政治秩序を打ち破った。「もしソーシャル・メディアが無かったら、トランプは勝利できなかっただろう。」
Facebookの最も恐ろしいことは、そこに多くの嘘が並んでいることではなく、その広がりが歴史を、突然、予想外な形で、変えてしまうことだ。ソーシャル・メディアが世界を破壊する力を得た。この現実を認めねばならない。
この十年で、世界中にウェブを介した社会運動が現れた。イランの「緑の革命」、中東とアフリカの「アラブの春」、アメリカの「ウォール街選挙運動OWS」、黒人差別に反対する#BlackLivesMatter、など。2008年のオバマを含めて、各地の選挙にも影響が表れていた。イギリスがEU離脱を決めたことにも、フィリピンでドゥテルテが大統領になったことも、そうだ。
ソーシャル・ネットワークの影響を研究するClay Shirkyは、Facebookの偏在性が震源となっている、と言う。毎月、18億人のブログがFacebookで情報交換している。およそ世界人口の4分の1がネットワークに参加している。その影響は想像を絶する。特に、公的に議論される話題の範囲を限定していた主流派メディアの力が失われた。
たとえば、白人のエスノ・ナショナリズムを主張しても、それは多数によって無視されていた。テレビで移民に関する情報を観ると心の中で不満を叫び、白人のキリスト教徒の方が他のアメリカ人よりアメリカ的なのだ、と言いたくても、他にそう思う者がいるかどうか、わからなかった。しかしインターネットのおかげで、かつて悪意のある見解と排除されていた者が、彼だけではないと知った。こうした人々が情報交換し、その世界観を広め、主流派を圧倒できる。こうした集団にトランプのような政治家は目を付ける。
ヒラリー・クリントンの敗北は、民主党の将来も、ワシントンのエリートではなく、Facebookの諸集団が決めることになるだろう。トランプは氷山の一角でしかない。
l インフラ投資と保護主義
NYT NOV. 12, 2016
When Borders Close
By
RUCHIR SHARMA
FT November 14, 2016
A badly-designed US stimulus will
only hurt the working class
Lawrence
Summers
世界中のポピュリスト的経済計画に関して故Rudiger Dornbuschが研究したように、ときには直後にプラスの結果をもたらすが、中長期の結果は、労働者階級のために始めた計画が、彼らに破滅的なものとなった。トランプの計画も同じであろう。
トランプの財政政策は,積極的な刺激策であればよいが,実際には,その政策顧問たちが主張するように,民間投資を利用する補助金政策であろう.その場合,多額の税金を投入しながら,インフラの近代化や社会保障の充実には向けられず,民間企業の利潤を増やすものに限られる.
メキシコ・ペソが10%も下落したように,トランプのドル高は,貿易赤字を拡大し,アメリカの輸出や雇用を失わせるものだ.
FT November 14, 2016
Donald Trump’s dangerous delusions
on trade
Project Syndicate NOV 15, 2016
Straight Talk on Trade
DANI
RODRIK
貿易を非難するデマゴーグが影響力を強めている責任の一部は、エコノミストたちにある。
自由貿易路支持する議論だけでなく、分配の問題や市場の失敗に関して、エコノミストは貿易自由化がもたらす様々な影響を分析できる。ところが、そのような効果を明言することは避けてきた。なぜなら、貿易を非難するデマゴーグに悪用される、というのだ。
しかし、貿易自由化を推進する者たちも、エコノミストを悪用して、公共の利益とは関係ない、自分たちの利益を主張したのだ。たとえば、特許を拡大した製薬会社、金融取引を広めた銀行、利潤を多国間で有利に扱う多国籍企業だ。貿易による利益が、国内の規制を無効にしたり、衛生や環境上の問題につながったりしても、金融市場の混乱や独占につながるとしても、自由貿易論はそれらを無視した。
エコノミストたちは、オウムのように比較優位の素晴らしさを説き続けた。しかし、貿易が経済全体にもたらす追加の利益は非常に小さく、特に1990年代からは小さくなっていた。それにもかかわらず通商条約を「自由貿易協定」と呼んで、自由貿易論のプロパガンダを続けるのでは、TPPの内容を読んだアダム・スミスやデイヴィッド・リカードが墓石の下で苦悶することだろう。
エコノミストたちの自由化に向けた情熱は、その敵による逆襲を強める結果になった。欧米で無謀なデマゴーグによる貿易反対論が影響力を強めた背景には、エコノミストたちの無思慮な自由化推進論があった。
FT November 16, 2016
Donald Trump’s false promises to his
supporters
Martin
Wolf
FT November 16, 2016
Donald Trump’s folly in picking a
fight with Beijing on trade
John
Plender
NYT NOV. 16, 2016
Want America First? Try Free Trade
By
THOMAS J. BOLLYKY and EDWARD ALDEN
NYT NOV. 17, 2016
Trump’s Biggest Test: Can He Build
Something That Inspires Awe?
By
JAMES B. STEWART
l 移民政策
VOX 15 November 2016
US and EU immigration pressures in
the long run
Craig
McIntosh, Gordon Hanson
Bloomberg NOV 17, 2016
Canada Should Be Trump's Model for
Immigration Reform
Noah
Smith
l トランプと日本
NYT NOV. 15, 2016
The Trump Effect on Tokyo
By
YOICHI FUNABASHI
FP NOVEMBER 15, 2016
Donald Trump’s Meeting With Shinzo
Abe: First Test on Asia
BY
MIKE GREEN
FP NOVEMBER 15, 2016
Attention, U.S. Allies: This Is Not
a Drill
BY
LAWRENCE FREEDMAN
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The Economist November 5th 2016
The Chinese in Britain: Raise the red lantern
Online governance: Lost in the splinternet
China’s industrial policy: Plan v market
Refugees in Sweden: Seeking asylum – and jobs
Free exchange: Apps and downsides
(コメント) イギリスにおける中国系移民社会が変容した結果,議会に立候補する者が出てきました.それまで社会保障システムに頼ることを拒んできた世代とは違う,新しい世代が,しかも,世界各地の,富裕な中国系移民によって,イギリスの政治的コミュニティーへも参加を重視するようになったようです.
インターネットによるコミュニティーにも,何かルールを決めて守らせるような,政府のようなものが求められています.それが無ければ,各地の政府による分断化が止まりません.中国における「産業政策」の評価に関して,かつてのケインズvsハイエク論争が再現しています.
スウェーデンの移民・難民政策と社会の変化,また,ウーバーにおける労働者の権利や社会保障に関しても,私たちの現在が未来を創造しつつあるのです.
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IPEの想像力 10/21/16
大企業や公官庁は、なぜ年功序列型の賃金体系や長期雇用を守ってきたのか? その理由が、「弾力的な硬直性」 “Flexible Rigidity” である、と思いました。・・・間違っているかもしれませんが。
なぜこんなことを書くか、と言えば、以前からロナルド・ドーアの論説は面白いと思っていたら、たまたまRIETIのHPで「元気出せ 労働組合」や「声なき声になったデフレ退治論」を読んだからです。また、濱口桂一郎の『新しい労働組合』を読み始めました。
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「声なき声になったデフレ退治論」(2003年)で、ドーアは構造改革論や金融政策を批判しています。
ドーアは、デフレを放置する日銀や、インフレ目標をゼロ%にするエコノミストを批判します。その理由が、2-3%のインフレ率を安定的に維持することが望ましい、という点なのです。
デフレより、ある程度の安定的なインフレの方が、消費者は積極的に購入し、企業も大胆に投資できます。そして、名目金利が高い方がむやみに貯蓄を増やさなくてもよい。株価が上昇するし、実質賃金を引き下げる場合にも、インフレの方が実行しやすい。
それは、どういう意味でしょうか? 私は、個別企業についても、産業についても、経済全般に関して、技術革新や国際競争にかかわる必要な構造調整に対する社会的な軋轢、調整コストが抑制できる、という意味だと思いました。
規制緩和などの小泉「構造改革」と区別して、ドーアは書いています。「儲けが少なくなった斜陽産業から、将来性のある新しい部門の産業に人的資源・金銭的資源が移っていくプロセス」をどうやって進めるか。衰退産業とベンチャーの増大によるか、世代交代によるか、企業の経営多角化による内部の資源移転によるか、であると。
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「元気出せ 労働組合」(2004年)では、組合が弱くなったせいで、日本の景気回復のパターンが遅れているかもしれない、というわけです。
もっと労働組合が強く賃金引き上げを求めれば、日本の企業は賃金の上昇に応じただろう、というのです。その場合、高賃金は企業のコストや競争力の悪化になると言うより、金融政策が十分に緩和されていれば、国内の価格に転嫁することでインフレになり、円安を介して国際競争力を維持できる、と考えます。
賃金引き上げを我慢して、構造改革に協力する労働組合の姿勢は、自己破滅的な性格を示しています。国際競争や小泉「構造改革」で労働組合は弱くなり、ますます日本的な構造調整の主体として、その発言力も資源移転能力も失ってしまうのです。
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降ってわいたように、私は大学の教職員組合の委員長になって、長時間労働の解消や研究時間の確保を求めてきました。何が問題なのか? と何度も考えましたが、よくわかりません。財政規律を唱える当局と対立するより、構造改革を唱える形で、自由な時間を得ようと努めました。組合が連呼しても、デフレの中で賃金を上げる(雇用を増やす)ことはむつかしい、と思ったからです。しかし、生活賃金の引き上げは重要です。
かつて、農村からの労働力供給が、経済成長のための弾力的な構造調整を支えたことが高度成長で重要でした。しかし、出稼ぎや人口の都市化は失われ、欧米のような移民労働者の利用も限られてきました。今や、日本の農村が疲弊し、高齢化が急速に進んで、財政破たんするという時期になって、ようやく、政府と日銀はその答えを探し始めたようです。
政府が財政赤字を無視する方法を日銀と工夫し、経団連に賃上げを強いるほど労働組合が力を盛り返すとしても、中国との輸出競争が続く限り、長期的なデフレが必要であったかもしれません。その出口が見えたか、と思ったとき、中国と世界の成長は減速し始めました。
次の成長モデルはどこにあるのか? 21世紀の労働組合は考えます。
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