前半から続く)


l  アメリカと国際秩序

FT November 5, 2016

US election: The Russia factor

David J Lynch, Sam Jones, Catherine Belton, Kara Scannell, Tom Burgis, Geoff Dyer and Neil Buckley

FT November 6, 2016

Why some in the Chinese elite plump for Trump

Daniel Bell

Bloomberg NOV 6, 2016

China's Gift for the Next President

Tom Orlik

FP NOVEMBER 7, 2016

Why Chinese Elites Endorse Hillary Clinton

BY ISAAC STONE FISH

FP NOVEMBER 8, 2016

This Is What It Looks Like When Russia Really Wants to Mess With Your Election

BY DANIEL SERWER, SINIŠA VUKOVIĆ

YaleGlobal, 8 November 2016

Russia Sets Out to Bring the Middle East Under New Order

Chris Miller

Bloomberg NOV 8, 2016

The Upside of Russian Interference

Leonid Bershidsky


l  アメリカの財政政策

FT November 5, 2016

The prevailing case for caution by central banks

FT November 7, 2016

New fiscal theory and the US election

Gavyn Davies

過去に何度も、大統領選挙が財政政策の転換をもたらした。財政刺激策が、かつてのケインズ主義的な意味で復活してきた。しかも、金利が低くなって財政赤字が制約でなくなり、財政政策を需要ではなく、供給側の政策として主張している。

最も重大な障害としては、1.景気循環の局面が変わった。需要不足ではなく、完全雇用でインフレが心配されている。2.議会が反オバマで行動しない。しかし、これらは変わるだろう。


l  新右翼

The Guardian, Saturday 5 November 2016

It’s not enough to moan about the new right – resist it

Nick Cohen

Bloomberg NOV 7, 2016

Updating Libertarianism for the 21st Century

Noah Smith


l  香港への介入

NYT NOV. 6, 2016

Hong Kong Elected 2 Separatists. China Took Drastic Action.

By MICHAEL FORSYTHE

FT November 7, 2016

Stamp duty rise will not burst Hong Kong property bubble

Jennifer Hughes in Hong Kong

FT November 8, 2016

China tries chequebook diplomacy in Southeast Asia

Charles Clover

VOX 08 November 2016

Saving China’s stock market

Yi Huang, Jianjun Miao, Pengfei Wang

Bloomberg NOV 7, 2016

Why China Doesn't Understand Hong Kong

Adam Minter


l  移民

FT November 7, 2016

Migration: Reversing Africa’s exodus

Maggie Fick, James Politi and Duncan Robinson

EUとアフリカ諸国による移民に関する協力会議は、移民流出諸国に対策を求め、資金提供するという枠組みである。EUの外交官たちはそれを成功とみなすが、アフリカ諸国の意見は異なっている。


l  安倍・プーチンの外交ペア・ダンス

FP NOVEMBER 7, 2016

Donald Trump’s Peace Through Strength Vision for the Asia-Pacific

BY ALEXANDER GRAY, PETER NAVARRO

FT November 8, 2016

Japan must proceed cautiously with Russia

安倍晋三はウラジミール・プーチンと奇妙な外交的ダンスを望んでいる。そのタイミングは理解し難い。ウクライナとシリアの件で、日本の同盟諸国とロシアとの関係が悪化しているからだ。

しかし日本の首相は、グローバルな、長期的ロジックに応じて動いている。それは戦略的な問題と短期のリスクとのバランスを取ることを意味する。

双方の指導者は会談の成果を求めて多くの投資をしてきた。安倍は北方4島の返還を交渉したい。第2次世界大戦終結時、ロシアはクリル諸島、すなわち、日本の北方領土を占拠した。この問題があるせいで、日ロ間では和平条約も結ばれていない。

安倍にとって、その返還は大きな成果になる。それは、1972年に田中角栄が日中関係を正常化したことに匹敵する、戦後の最重要な外交課題であるからだ。安倍はまた、ロシアに対する影響力を強めて、ロシアと中国の同盟関係が深まることを牽制したい。それは日本の対中国戦略でもある。

その枠組みを準備するために、日本はロシアとの経済関係を強化している。世耕経済産業大臣が、経済協力に関して話し合うため、先週、モスクワに派遣された。プーチンも、大きく遅れているエネルギー分野の発展を推進するため投資を渇望しており、特にシベリアで、こうした安倍のアプローチを好むだろう。

世界は、攻撃性を増す中国の台頭に直面し、勢力均衡を安定的に維持することを願っている。日本のアプローチは、この点から有益だ。ロシアと敵対する西側は、中国がロシアをジュニア・パートナーとして取り込むことで、権威主義的な国家ブロックが成立するのを望まない。

しかし、中期的には、日本がロシアと外交関係を強化することは、G7の協力や、ロシアへの経済制裁を損なうことになる。また、日本の国益にとってもリスクがある。和平条約を結ぶ代わりに、ロシアは4島の内、色丹、歯舞の2島しか返還しないだろう。それは北方領土の、面積の7%でしかなく、経済的にも、安全保障面でも、価値のないものだ。

日本は、このことでアメリカやEUが日本から離反するリスクを負う。またロシアが、中国との関係において、必ず日本に有利な形の支援をするとは思えない。

Bloomberg NOV 10, 2016

Japan Shuts Down Its Monetary Lab

Noah Smith

インフレ率の引き上げに向けた日本の金融的実験は、政府と中央銀行との関係を転換するものになりかねない。世界は財政政策による刺激策と、構造改革による成長率の引き上げに向かっている。


l  ドイツ

FT November 7, 2016

The power behind the shift to renewable energy in Germany

Nick Butler

FP NOVEMBER 10, 2016

In Watching the Spread of Nationalist Populism, Eyes Now Turn to Germany

BY EMILY TAMKIN

ドイツにもトランプ現象は起きるのか?


l  アフリカとICC

Project Syndicate NOV 7, 2016

Africa Versus the International Criminal Court

ARYEH NEIER


l  ヒラリー・クリントンの敗北

SPIEGEL ONLINE 11/08/2016

Digital Democracy

How Google and Facebook Can Reshape Elections

By Marcel Rosenbach

NYT NOV. 8, 2016

Homeless in America

Thomas L. Friedman

The Guardian, Wednesday 9 November 2016

It was the rise of the Davos class that sealed America’s fate

Naomi Klein

ヒラリー・クリントンが敗北したのは、彼女とその選挙マシーンがネオリベラリズムを支持していたからだ。ネオリベラリズムの世界観にこそ、悪夢を創り出した最大の責任がある。

ここにこそ、理解しなければならない地獄がある。規制緩和、民営化、緊縮財政、そしてコーポレート・トレード(企業の秘密情報)、このようなネオリベラリズムの政策により、人々の生活水準は一気に悪化した。仕事を失い、年金を失い、セーフティーネットを失った。十文たちの子供は、親たちの世代よりも貧しくなる、とわかった。

同時に、人々はダヴォス階級の誕生を目撃した。それは金融部門とハイテク部門における億万長者たちが高度に結びついた緊密なネットワークである。選挙によって指導者を決めても、彼らはダヴォス階級の利害に反することを恐れる。ハリウッドのセレブ達がそれを示している。しかし、彼らの増大する富とパワーは、膨張する人々の債務と無力さに、直接関係しているのだ。

ドナルド・トランプやBrexitの離脱派は、人々の苦痛に直接訴えた。彼らの答えは、懐古的なナショナリズムや、どこか遠くの経済官僚たちである。ワシントン、NAFTAWTOEUなどだ。そして移民や非白人を攻撃し、イスラム教徒を侮辱し、女性を蔑視する。ヒラリーやビル・クリントンは、ダヴォスのパーティーで乾杯した。

トランプのメッセージは、「すべては地獄だ。」 ヒラリーのメッセージは「すべてがうまく行っている。」 しかし、うまく行っているどころではない。

1930年代からわれわれが学ぶことは、ファシズムと闘うのは真の左翼だけだ、ということだ。再分配的なアジェンダを示し、温暖化防止のために資金を出し、組合員が十分の報酬を得られる職場を作る。制度化された人種差別と闘い、経済的不平等と闘い、気候変動と闘うことは、1つの政策体系になるものだ。

人々には怒る権利がある。強力な、分野を超えた左派のアジェンダこそ、その怒りに応えるものだ。ぼろぼろになった社会を再生する、全体的な解決策が必要だ。

The Guardian, Wednesday 9 November 2016

There’s a lot of reaching out to do. I pray Trump’s arms are long enough

Jesse Jackson

The Guardian, Wednesday 9 November 2016

Globalisation is dead, and white supremacy has triumphed

Paul Mason

The Guardian, Wednesday 9 November 2016

Donald Trump is moving to the White House, and liberals put him there

Thomas Frank

The Guardian, Wednesday 9 November 2016

The US has elected its most dangerous leader. We all have plenty to fear

Jonathan Freedland

アメリカは深淵から身を引くと思っていた。しかし、最後にアメリカそうしなかった。地上で最も強力な政府を、不安定な変わり者、性的な襲撃者で、強迫的な嘘つきに預けた。

今やアメリカは、その誕生からこれまで、世界を照らす理想の国としてみなされていたが、暗闇に墜落した。アメリカが歴史を正義に向けて前進させると、8年前の朝、バラク・オバマが感動的にそれを国民に向けて表現したはずだった。

今日、アメリカは世界にとっての希望ではなく、恐怖の源になった。

恐るべきことに、下院も上院も共和党が多数を得て、トランプをチェックできる機関はなくなった。その衝動を制御できない男が制約を失い、超大国のパワーを自分のエゴや自我のために駆使することになる。

1100万人の未登録移民を国外追放する。イスラム教徒の入国を禁止する。メキシコとの国境に巨大な壁を建設する。堕胎した女性に罰を与える。中国との貿易戦争を始める。リアリティー番組のスターが核兵器のボタンを押せるのだ。

The Guardian, Wednesday 9 November 2016

So what is Trumponomics? More of the same

Aditya Chakrabortty

FT November 9, 2016

Donald Trump’s scrupulously obedient acceptance speech

Sam Leith

FT November 9, 2016

President-elect Donald Trump must move fast to calm markets

Mohamed El-Erian

ドナルド・トランプ、当選おめでとう。

あなたが大統領になって最初の100日間で何をするか、また何をしないかが、アメリカとグローバルな経済に巨大な影響を与える。また、これから数日中にあなたが示すコミュニケーションの内容は、それが安心できる、国民の統一を促すものであるかどうか、その仕方とともに、金融市場を落ち着かせるために決定的に重要だ。保護主義、経済の予測不可能性、連銀への敵対的姿勢により、市場は動揺しているのだ。

中産階級や下層の人々は苦しんでおり、アメリカン・ドリームを信じられなくなっている。アメリカ経済を強化し、特に、個人のレベルで経済的な安定性を取り戻すことだ。また、経済の専門家たちが広く合意しつつある、高度で、包括的な成長の実現に向けて、あなたは選挙中の約束を実行することだろう。インフラ整備プログラム、企業への税制改革だ。

市場は心配しているが、上下両院を共和党が制したので、速やかな実行も可能だ。それは経済・金融・政治の分野で好循環を生じるだろう。

同様に重要なことは、あなたが約束したことで、今後は再考し、取りやめるべきことを明確にすることだ。中国やメキシコに対して関税率を引き上げるのは、やめるべきだ。オバマケアやNAFTAを廃止するのは、それに代わる政策を示せないなら、やめるべきだ。連銀の政治からの独立やその金融政策決定の能力を攻撃するのも、やめるべきだ。

FT November 9, 2016

Donald Trump’s win is a mandate to blow up Washington

Edward Luce

アメリカ国民は表明した。いや、叫んだ。もはや何事も同じではないぞ、と。

ドナルド・トランプの衝撃的な勝利は、150年前の南北戦争以来なかったような重大な試練を、アメリカ民主主義に科すだろう。

トランプが強力であるのは、上下両院の多数を共和党が支配し、それゆえ最高裁の判事を支配し、アメリカ軍を支配ずるからだ。わずかな例外を除いて、チェック・アンド・バランスが働かない。アメリカの有権者はワシントンで新しい自爆テロを行った。

アメリカ他方で、戦後のグローバルな秩序を構築し、維持してきた。トランプは明白に、この秩序から離脱すると主張した。大統領となって「アメリカ第1」をどのように進めるかは別にして、この点は疑いない。アメリカ国民は、疑う余地のないシグナルを世界に送った。

FT November 9, 2016

Donald Trump ushers in the era of political improvisation

Gillian Tett

SPIEGEL ONLINE 11/09/2016

Europe Reacts to Trump

'The World Is Crumbling in Front of Our Eyes'

SPIEGEL ONLINE 11/09/2016

A Political Catastrophe

Trump's Victory Ushers in Dangerous Instability

A Commentary by Roland Nelles

Project Syndicate NOV 9, 2016

Global Stability in the Trump Era

CARL BILDT

Project Syndicate NOV 9, 2016

Europe, Alone in Trump’s World

MARK LEONARD

Project Syndicate NOV 9, 2016

Trump’s New World Disorder

PHILIPPE LEGRAIN

歴史の終わりである。ベルリンの壁が倒れてヨーロッパで共産主義体制が崩壊したことを祝ってから27年後に、ドナルド・トランプがアメリカ大統領に選ばれて、より賢明な、心の広い、彼の前任者たちが構築してきたリベラルな国際秩序を破滅の危機にさらす。

楽観論者は、トランプが選挙期間中に言ったことは、実行しない、と考えている。彼の周りにはインターナショナリストの顧問たちが就くだろう。アメリカ政治システムのチェック・アンド・バランスが彼の気性を抑制する、と。しかし、上院も下院も共和党が支配したから、彼は政策をより自由に実行できる。特に、通商政策と外交においては大統領が大きな権限を有する。

すでにグローバリゼーションは、近年、停止したが、トランプが逆転させるだろう。TTPの承認手続きは放棄され、TTIPNAFTA、そしてWTOルールを破棄する。それは世界不況をもたらすだけでなく、世界を対立する貿易ブロックに分断する。

トランプは、東アジアの経済だけでなく、安全保障も破壊する。アメリカが自由貿易や同盟諸国への安全保障から離脱することは、日本、韓国、その他の国に、中国に対抗して自国を守るために核武装せよ、と促すことになる。孤立化に向かうアメリカより、中国との関係改善を望む国は、フィリピンだけではない。

Project Syndicate NOV 9, 2016

Which Way for US-China Relations Under Trump?

MINGHAO ZHAO

Project Syndicate NOV 9, 2016

Donald Trump’s Foreign-Policy Challenges

JOSEPH S. NYE

NYT NOV. 9, 2016

Donald Trump’s Revolt

多数のアメリカ人にとって考えられない、そして、世界の大部分の人々にとっても考えられない、3つの単語が、アメリカの未来になった。・・・President Donald Trump

トランプの台頭に大きく貢献した新しい右翼the alt-rightは、もはや“alt”を外すだろう。トランプが勝利した夜、「アメリカを取り戻すときが来た!!!」と彼らは叫んだ。

NYT NOV. 9, 2016

Donald Trump’s Shocking Success

Frank Bruni

NYT NOV. 9, 2016

President Donald Trump

Roger Cohen

驚愕の中で沈黙するニューヨークで、私は書いている。2008年,2012年,バラク・オバマが勝利したときと,何と違うことか! 当時は歓喜する群衆がタイムズ・スクウェアにあふれた.この偉大な都市,クリントンと民主党の牙城で,沈黙が示すものとは.・・・東海岸,西海岸のエリートたちが,危険な傲慢さに寝返り,トランプの登場をもたらした,内陸部の感情を軽蔑し,無視していたことだ.

これは中部アメリカの報復である.特に,社会的,文化的規範の変化に戸惑う白人労働者階級のアメリカ,世紀の半ばまでに,マジョリティーからマイノリティーになる人々の報復だ.だれもが,自分でジェンダーを決めるトイレを愛するわけではない.

バラク・オバマは人気があったけれど,アメリカ最初の黒人大統領が出ても,人種差別がなくなったわけではない.性差別も生きているし,トランプの卑劣な差別表現が選挙の勝利につながったことはそれを示している.

トランプの受諾演説は,人々が結束することを呼びかけるものだった.しかし,トランプは何でも言うし,全く逆のことも言う.彼は繰り返し嘘をついた.もっとも醜い選挙運動から生まれた,傷ついたアメリカにある分断を,軽視することはできない.

私は最悪の場合,トランプが選挙運動で示した同じやり方でアメリカを統治する姿を恐れる.アメリカと世界は,本当の危険に直面する.


l  気候変動

FT November 9, 2016

A 19th century plague revived in an age of climate change

Emma Glennon


l  トランプと国際秩序の終わり

FP NOVEMBER 9, 2016

Is a Trump Presidency Really a Big Win for Putin?

BY REID STANDISH

FP NOVEMBER 9, 2016

The Plot Against America

BY JAMES TRAUB

FP NOVEMBER 9, 2016

China Just Won The U.S. Election

BY JAMES PALMER

Project Syndicate NOV 10, 2016

Protecting Europe in the Age of Trump

GUY VERHOFSTADT

Project Syndicate NOV 10, 2016

The Art of the Middle East Deal?

DAOUD KUTTAB

NYT NOV. 10, 2016

For Europe, Trump’s Election Is a Terrifying Disaster

By CLEMENS WERGIN

ヨーロッパにとって,トランプの当選は新しいシステム・リスク,戦略リスクを意味している.

ドイツのメルケル首相は状況の深刻さをわかっている.水曜日,トランプの勝利をメルケルは祝福したが,同時に,アメリカとヨーロッパとの関係の基礎は,その価値によって結びついている,と注意した.すなわち,民主主義,自由,法律と人類の尊厳に対する敬意,それらは出自や肌の色,宗教,ジェンダー,性的指向性や政治的立場によって影響されない,という価値観だ.「これらの価値に立って,未来のアメリカ大統領,ドナルド・ドランプと,緊密に協力したい.」と,メルケルは述べた.

FP NOVEMBER 10, 2016

It’s Time to Audit NATO

BY JAMES STAVRIDIS


l  アフガニスタン難民

FT November 10, 2016

How Qatar is feeling the heat

Simon Kuper


 

NYT NOV. 10, 2016

Doors Slam Shut for Afghan Refugees

By THE EDITORIAL BOARDNOV. 10, 2016

パキスタンはアフガニスタン難民を追い返した.ヨーロッパは定住化を受け入れない.アフガニスタンではタリバンが攻勢を強めて,さらに多くの難民が生じている.

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The Economist October 29th 2016

Liberty moves north

Canada: The last liberals

Banyan: A shrimp among whales

Charlemagne: The age of vetocracy

Digital money: Known unknown

(コメント) アメリカではなく,カナダが,自由で開放的な,世界の社会・政治モデルになった.それは地理的な条件もあるけれど,その政策において優れていたからだ.移民のポイント制は国民に一定の管理能力を与えたし,財政規律を柔軟にとらえ,低金利を生かした政府支出も行った.潤沢なセーフティーネットによって,ポピュリストの叫びに国民の不安が共鳴することを防いだ.

韓国に関する記事は,大国間政治に翻弄され続ける朝鮮半島と朴大統領の苦しみを描いています.なぜ日本は,もっと韓国の政治に共感し,協力する姿勢を持てないのか,非常に残念です.

EUとカナダの貿易協定を阻止した,ベルギーの地方政府に関する解説,デジタル・マネーの新種がいよいよ貨幣の効果的な代替物になりそうだ,という記事に注目します.

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IPEの想像力 11/14/16

イギリスのEU離脱、すなわちBrexitとは、一体、何なのか? それは国民投票後の政治過程に委ねられていたわけです。

離脱派や、その支持を必要とするメイ首相は、EU離脱が単一市場からも離脱することだ、と示唆した後、ポンドの価値は急落し、高等法院とも対立しています。さらに離脱派は,イングランド銀行とその政策を攻撃し、権力を取り戻せ、という呪文をここでも唱えます。国民投票とは、何だったのか? 何のための民主主義、誰のための権力か?

アメリカでは,トランプ支持を煽動してきた新右翼メディアの指導者がホワイトハウスの参謀に入ります.EUでは,中央政府に権限を委ねる身代金として,地方政府がさまざまな譲歩や補助金を求めます.それは,結局,自分たちの成長を枯渇させるとしても,地方政府に許された唯一の政治的発言力なのです.

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鞍馬口で毎週木曜日に開く古本市に立ち寄り,司馬遼太郎の『この国のかたち』を買いました.

私は時代小説が大好きですが,池波正太郎や山本周五郎,平岩弓枝,藤沢周平,など,買い集めても,司馬遼太郎は読みませんでした.解説が長く,話に入り込めないのです.

しかし,この評論には驚嘆しました.とても面白い,と思います.特に,「‟雑貨屋“の帝国主義」に出てくる<異胎>が刺激的です.

「きみは何かね,ときいてみると,驚いたことにその異胎は,声を発した.」

司馬は,おそらく夢の中で,山を登り続けているとき,これに会った.そこに,「巨大な青みどろの不定形なモノが横たわっている.」

そして,粘膜質の,ぬめった,ときに褐色になったり,黒い斑点を帯びたり,黒色になったりする,というモノが,どのような醜い生き物か,その声や思いを描くのです.

このモノの説明は,すぐに書いてあります.1905年から1945年まで,「その間の40年間のことだと明晰にいうのである.」「つまりこの異胎は,日露戦争の勝利から太平洋戦争の敗戦の時間が,形になって,山中に捨てられているらしい.」

司馬がこのモノを意識したのは,日本が「日露戦争の勝利以後,形相を一変させた」からです.

参謀本部,統帥権,に加えて,司馬がその時代の変化を引き起こした大きな要因として注目するのは,「大群衆」です.日露戦争が,戦争遂行能力の点で,長期的には日本が不利であったため,小村寿太郎はぎりぎりの条件で講和を結んだ,と司馬は書いています.

しかし,この講和条約に反対する国民集会が開かれ,「平和の値段が安すぎる」,「講和条約を破棄せよ,戦争を継続せよ,と叫んだ.」 群衆は暴徒化し,警察署,交番,教会,民家を焼き,一時的に無政府状態に陥って,ついに戒厳令まで出した,と司馬は強調します.

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国民投票や大統領制は、民主主義の理想ではなく、その逆である。むしろ政治が行き詰まった状況で採用される、非常に極端なケースであり、萌芽的な、あるいは、過渡的・危機的なケースであると思うようになりました。

大統領制は一種の王制であり、国民投票は無血革命です。民主主義ではありません。そして日本では,統治能力を失った国が,司馬の会った,あの異胎に変わるのです.

いよいよ次は、JAPEXITです。アメリカ依存だけでなく、国民投票と大統領的な権力集中により、戦後の平和憲法や,高齢者・障害者の福祉国家から離脱します。内閣府の肥大化は,司馬遼太郎の憎んだ「参謀本部」に向かう予兆かもしれません.

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