(前半から続く)
l ノーベル経済学賞:企業とは
VOX 29 October 2016
Oliver Hart, Nobel laureate
Maija
Halonen-Akatwijuka
VOX 01 November 2016
Oliver Hart and the nature of the
firm
Kevin
Bryan
l FBI長官の政治介入
NYT OCT. 29, 2016
Comey, Clinton and This Steaming
Mess
Frank
Bruni
NYT OCT. 29, 2016
America, Your Election Is Not Rigged
By
GARRY KASPAROV
Bloomberg OCT 29, 2016
FBI's Comey Feeds Election Mistrust
Francis
Wilkinson
The Guardian, Sunday 30 October 2016
The Guardian view on the FBI’s
Clinton probe: exactly the wrong thing to do
Editorial
FBIのJames
Comey長官がメール問題を再捜査すると声明したことは、選挙結果に甚大な影響を与えるものだ。
アメリカ政治はあまりにも分裂し、パラノイアに冒されているため、FBI長官はむつかしい選択を強いられる。もし水面下で再捜査し、選挙後に公表すれば、その結果にかかわらず、一方もしくは双方から、だまされた、と非難されるだろう。陰謀論者が大騒ぎする。しかし、今、公表することで、捜査が選挙の最重要な論点になり、アメリカと世界を変えるものとなった。恐るべきことだ。
まさにそれゆえ、司法省にはルールがある。それは政治的な偏向だという非難から、党派性がないことを保障するためのものだ。司法省は捜査中の案件に関する情報公開を厳しく制限している。特に選挙に影響するようなものは公開しない。
Comeyは、2つの点で、権力を濫用した。第1に、捜査はまだ初期段階だ。メールはクリントンが送ったものではないし、FBIが読んだわけでもない。その説明は非常にあいまいだ。第2に、議会に通知するべきではなかった。操作は政治から厳格に切り離されるべきだ。特に分裂状態のアメリカ議会からは。信じられないことだが、クリントンが当選すれば、直ちに弾劾を求める、と主張した共和党議員さえいる。これは無法状態に踏み出すものだ。
彼の行動は、良く言ってナイーブ、悪くすれば政府機関を悪用した。選挙結果に介入したことを、将来、責められるだろう。
NYT OCT. 30, 2016
On Clinton Emails, Did the F.B.I.
Director Abuse His Power?
By
RICHARD W. PAINTER
FT October 31, 2016
The albatross around Hillary
Clinton’s neck
Edward
Luce
NYT OCT. 31, 2016
Working the Refs
Paul
Krugman
これまでずっと、Working the Refsは右派の政治戦略であった。すなわち、偏っている、不公平だ、その結果がだれに有利であるかにかかわらず、彼らは叫ぶのだ。それは、しばしば効き目がある。
より保守的な人物が支配的になるからだ。
NYT OCT. 31, 2016
Why Clinton’s Emails Matter
By
TIMOTHY NAFTALI
NYT OCT. 31, 2016
No, ‘Emailgate’ Is Not Worse Than
Watergate
By
JOHN W. DEAN
Bloomberg OCT 31, 2016
Comey Did the Right Thing
Editorial
Board
Project Syndicate NOV 1, 2016
America’s Race to the Ballot’s
Bottom
ELIZABETH
DREW
NYT NOV. 1, 2016
James Comey’s Big Mistake
By
THE EDITORIAL BOARD
NYT NOV. 1, 2016
The Long Shadow of J. Edgar Hoover
By
TIM WEINER
l モスル
SPIEGEL ONLINE 10/29/2016
The Attack on Mosul
Three Shepherds on a Surreal Front
By
Christoph Reuter
l 強権的政治指導者
FT October 30, 2016
China’s strongman rule sets a test
for the west
FT October 31, 2016
Trump, Putin, Xi and the cult of the
strongman leader
Gideon
Rachman
モスクワからマニラ、北京からブダペスト、アンカラからデリーまで、ナショナリストの「強権的」指導者が流行になっている。
強い指導者への熱望は、専制体制でも民主体制でも変わらない。北京では先週、習近平が、共産党に「中核的指導部」を唱え、毛沢東的な、個人崇拝の傾向にまた一歩近づいた。世界の強権指導者に対するパトロンとなったロシアのウラジミール・プーチンは、民主主義の罠を逃れるさらなるルールの個人化を進めている。
民主主義の形態を残しつつ、専制体制との混合物を目指すのは、各地の強権的指導者が試みている。トルコのエルドアン大統領、より少ない程度ではあるが、ハンガリーのオルバン首相だ。インドのナレンドラ・モディ、日本の安倍晋三は、本来の民主的システムを維持しながら、その中で、指導者の決断や、ナショナリズムの風潮を刺激しながら、強権化を進めている。
トランプの政治スタイルは、プーチンやエルドアンのような、最も専制的な支配者とよく似ている。国外には多くの敵対勢力、国民に対する陰謀、「内部の敵」を強調する。外国人による屈辱の歴史を逆転して、自国の再生を約束する。
トランプは、アメリカのシステム全体が腐っていると主張し、沼地の水を抜いて掃除する、と約束する。新しい強権指導者が登場するとき、腐敗したエリートへの攻撃、というのをよくやる。プーチンはオリガークを粉砕し、習は汚職撲滅運動を推進した。また個人的な崇拝を刺激するカルトを集める。
1930年代との類似した情勢も顕著だ。当時、大恐慌の後、世界中で政治が過激化した。2008年の金融危機後も、ヨーロッパ、中東、アジアで紛争が起き、強い指導者を求める声が高まっている。強権的指導者の外交は、制度や国際法よりも、男と男の関係を重視する。安倍首相も、ロシアの指導者との個人的な親しさを強調する。こうした個人に依拠する外交は、劇的であると同時に、瞬時に不安定化する。
マッチョ強権指導者が流行すると同時に、メルケルに代表される強力な女性政治家が現れた。彼女たちは、静かな、合意形成を重視する。ヒラリー・クリントンがホワイトハウスに入れば、強権指導者の信奉者たちに打撃を与えるだろう。
China Daily 2016-10-31
Three powers will shape future state
of world
By
Dmitri Trenin
The Guardian, Tuesday 1 November
2016
The Guardian view on Russia: neither
a partner nor an enemy
Editorial
FP NOVEMBER 1, 2016
No Time to Lose: Why the Next
President Must Move Quickly to Reassert U.S. Power
BY
JOHN HANNAH
The Guardian, Wednesday 2 November
2016
If the west is weak, Putin’s Russia
is a much greater threat
Natalie
Nougayrède
FP NOVEMBER 2, 2016
Vladimir of Arabia
BY
EMILE SIMPSON
FT November 3, 2016
The next American president must
look to Europe first
Nicholas
Burns
NYT NOV. 3, 2016
Rodrigo Duterte Plays U.S. and China
Off Each Other, in Echo of Cold War
By
MAX FISHER
ドゥテルテ大統領が中国とアメリカに対して示した行動は、冷戦の時代に中規模の諸国が米ソの間で行った行動に等しい。ドゥテルテは、中国から多くの経済支援を訳されたと同時に、アメリカによる安全保障の約束も保持したままである。
冷戦期の外交を分析したガディスJohn Lewis Gaddisは、「新しいパワー・バランシング」と呼んだ。アジア、アフリカ、ヨーロッパで、諸国が繰り返し米ソに相手側への転換を示唆し、その脅迫によって利益を得たのだ。
これらの脅しはしばしば無意味なのだが、超大国は小国が軌道から外れることを恐れて、直ちに報酬を与えるしかなかった。「尻尾が犬を振り回し始めた。」と、ガディスは書いた。
ユーゴスラビアのチトー、エジプトのナセル、中国の毛沢東もそうだ。フランスでさえ、1960年代にド・ゴールはNATOを離脱し、ナショナリズムを鼓舞して、国内権力を高めながら、しかもアメリカの安全保障を得たままであった。
アメリカには、他になす術がない、と当時のジョンソン大統領は認めた。
FP NOVEMBER 3, 2016
Vladimir Putin Won’t Be Sweating the
Election Result on Tuesday
BY
JULIA IOFFE
FP OCTOBER 30, 2016
Thailand’s Junta Wants the Monarchy
to Surrender
BY
PAUL CHAMBERS
l シリア内戦は終わらない
FT October 31, 2016
Partition presents the best hope for
peace in Syria
Ray
Takeyh
シリア内戦は今も荒れ狂い、アレッポは炎上している。政治家や政策立案者たちは、戦争を管理するためのプランを示す。安全圏、人道的支援ゾーン、難民再定住化計画、外交的和平のフレーム。
そのようなプランは、戦争を止めるものではない。そのための唯一の方法は、アメリカとヨーロッパがシリア分割案を示し、それを強制するために大規模な軍隊を展開することだ。それを恐れるから、政治家や戦略家たちは退却を議論するだけで、敵対関係を止めることは議論しないのだ。
ケリー国務長官はレバノン内戦の終結を念頭に置いて行動している。レバノンは宗教的に分裂した、キリスト教徒、スンニ派、シーア派の支配的連合によって統治される国であった。その微妙なバランスが崩れ、1970年代半ばから内戦に突入した。地域の大国がこれに介入し、すべての和平工作が失敗した。
1991年に内線が終わったのは、多くの要因が戦争を維持不可能にしたからだ。グローバルなレベルでは、冷戦が終結し、ロシアは西側との関係改善を望み、中東での生産的な役割を目指した。地域レベルでは、イランがよりプラグマティックなラフサンジャニの下で、サウジアラビアとの関係改善を進めた。それと並行して、シリアは戦後のレバノンに影響力を確保したため、戦争の長期化は必要なくなった。
しかし、外部のアクターが合意しても、それを内部の戦闘集団に強制しなければならない。彼らは戦闘を続ける傾向がある。また、アメリカは、レバノンのように、ロシアとの合意が地域の安定化、そしてシリア国内の戦闘集団にも及ぶと考えた。これは間違いだ。ロシアとアメリカの対立はシリアに限らない。多くの紛争テーマを抱えている。さらに、イランとサウジアラビアとの対立も地域的な冷戦に固定され、戦闘集団は今も勝利を確信している。
ケリーの間違いは、ロシアとイランの支援を得て、シリアを再建できると信じていることだ。たとえ合意が成立しても、各地の武装勢力は戦闘をやめない。アサドの樽爆弾で家族を亡くした者は支配体制がわずかでも残ることを受け入れないし、ISISは存亡の危機にある。最善の策は、切り離された小さな独立州が、連邦の枠組みによって生き残ることであり、それには数十年を要するだろう。
アメリカと英仏などの西側同盟軍が、権力をシェアする原則を描き、それを守らせるために大規模な軍を展開する。その駐留期間は長引くだろう。しかも衝突や犠牲が生じる。
シリア内戦が終わらない理由はこれだ。アメリカには必要な軍事力がある。しかし、彼らが躊躇する理由は理解できる。政治家たちは成功する見込みのない中途半端な手段を提案し、シリアは燃え続ける。
FP OCTOBER 31, 2016
How to Turn Things Around in Syria
BY
EVAN MCMULLIN
FT November 2, 2016
Erdogan muddies Syrian and Iraqi
political waters
NYT NOV. 2, 2016
You Don’t Need a No-Fly Zone to
Pressure Russia in Syria
By
STEVEN HEYDEMANN
Project Syndicate OCT 31, 2016
The Universal Right to Capital
Income
YANIS
VAROUFAKIS
l 難民と移民
VOX 31 October 2016
New eBook: Refugees and Economic
Migrants: Facts, policies and challenges
Francesco
Fasani
l TPP支持論
Bloomberg OCT 31, 2016
TPP Is Exciting. Let's Make the Case
for It.
Tyler
Cowen
TPPはもはや成立する見込みはない、とあきらめている。それは多くの反対派がいるだけでなく、支持派がTPPによる明確なビジョンを描けないからだ。
最善の支持論は、「もしアメリカがTPPを承認しないと、中国がこの地域のルールを決めるだろう」というオバマの言葉だ。しかし、アメリカの有権者たちは、地政学的な影響を操作する政治家たちの試みを信用せず、自国に関心を集中する。
また、TPPは1万8000もの関税を引き下げ、雇用を創出する、と主張している。しかし、レーガンの大型減税と違って、有権者のポケットに入るわけではない。抽象的な数字である。
企業が政府を訴える仕組みも、反対運動にとって大きな論点になっているが、だからTPPはアジア諸国の競争力を失わせ、アメリカ企業に有利だ、と主張するわけではない。そのような主張は自由貿易論の伝統的支持者が嫌う。
TPPを支持する最高の見取り図とは、それを北米に限り、さらに言えば、アメリカ合衆国に限定することで理解できる。世界経済とは、各地の優れた繁栄の中心に向けて資本や意欲的な人々が集まること、ビジネスを起こし、革新や雇用が生まれることを意味する。アメリカはその最大・最高の集積地域である。
アジアの資源を引き寄せ、グローバルな指導力を保持するか、TPP諸国が他の地域に向かうのか、アメリカ経済の将来には大きく2つの道がある。アメリカン・ドリームの再生として提唱されるときだけ、TPPは成立する可能性がある。
NYT NOV. 1, 2016
Surprise: A Trade Deal Wins Approval
By
THE EDITORIAL BOARD
NYT NOV. 1, 2016
Powering Australia’s Economic Surge
By
GEORGE MEGALOGENIS
Bloomberg NOV 1, 2016
Debating Free Trade and the Populist
Backlash
Tyler
Cowen & Noah Smith
Global Times 2016/11/2
China’s opening up won’t follow US
roadmap
By
Ding Gang Source
l 日本の驚異
Bloomberg OCT 31, 2016
Is Japan Too Scared to Succeed?
Michael
Schuman
日本についてのデータで最も恐るべきものは、ベンチャーキャピタルの投資額だ。それは2015年にわずか8億ドルである。アメリカ720億ドル、中国490億ドルと比べて、あまりにも少ない。イスラエルでさえ26億ドルである。
日本人に企業を起こす者がこれほど少ない理由はいろいろあるだろう。
l 歴史を問う
FT November 1, 2016
An exam paper from the future
Gideon
Rachman
ジャーナリズムは歴史の最初の書き手であると言われる。そこで、2066年に歴史の試験がどうなるか、私が出題し、その解答を予想してもらった。未来の歴史家は、現在の政治事件に関して、どんな問題を出すのか?
FTの読者から9月20日の締め切りまでに届いた興味深い意見を紹介する。
FT November 1, 2016
2066 history exam: The great powers
sabotaged global prosperity
Thomas
Wright
FT November 1, 2016
2066 history exam: How the media
polarised major parties
Sam
Wilkin
FT November 1, 2016
2066 history exam: Ivanka Trump as
president ... logical, really
Jeremy
Shapiro
FT November 1, 2016
2066 history exam: Putin left ‘post-truth’
politics and chaos
Paul
Knott
FT November 1, 2016
2066 history exam: The poetic
justice of maths mangling humans
Philipp
Keller
FT November 1, 2016
My 2066 history exam: readers
results revealed
Gideon
Rachman
NYT NOV. 1, 2016
How Waning Competition Deepens
Labor’s Plight
Eduardo
Porter
l 温暖化
FT November 2, 2016
Climate change and the risks of
denying inconvenient truths
Martin
Wolf
地球温暖化は進んでいる。パリ協定の中身は、実効力がなく、目標の達成に不十分だ。しかも、右派からは「温暖化」防止策を市場経済の否定とみなして反対する者がいる。また、低コストの、簡単な挑戦だとみる者もいる。どちらも間違っている。
Project Syndicate NOV 2, 2016
Radical Realism About Climate Change
LILI
FUHR
l ハンバーガー
Bloomberg NOV 2, 2016
Global Chain Restaurants Are the
Future of Food
Megan
McArdle
西側世界の食事はコピーしたようによく似ている。わずかに地元のアレンジを加えただけで、グローバルなファーストフードのチェーン店がハンバーガーやフライドチキンを売っている。
レストランに「規模の経済」が働くとは言いにくい。なぜ急速に成長しているのか?
l レバノンの石油資源
Project Syndicate NOV 3, 2016
Can Lebanon Escape the Resource
Curse?
NASSER
SAIDI
レバノンで,2年半も決まらなかった大統領を議会が決めた.予算赤字(GDP比8.1%)も,累積赤字(GDP比144%)も多い.この国に油田が発見されたことで,経済発展や財政再建が進むかもしれない.
しかし,「石油の呪い」を避けるには,主要なリスクに対してガバナンスを改善する必要がある.すなわち,1.石油価格は著しく不安定で,下落したままだ.2.埋蔵量は不確かである.3.領土紛争が関係している.4.政治が機能していない.
改革を進めるためには,1.EITIのような国際機関と協力して,採取産業からの資金の流れを透明化する.2.天然資源憲章を採用して,制度と利権を切り離す.3.財政政策に健全性を求める法的枠組みを設ける.
混乱する地域で問題の多い国が転換し,資源を健全かつ効果的に管理できれば,「石油の呪い」を免れて発展のモデルになるだろう.
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The Economist October 22nd 2016
Putinism
The battle for Mosul: Crushing the caliphate
Bhutan: Happy-grow-lucky
Banyan: Duterte’s pivot
Politics: Master of nothing
Election 2016: Hating Hillary
Special Report: Russia – Inside the bear
(コメント) ロシアは強くない.その経済,政治,社会の中に多くの深刻な問題を抱えている.人口は高齢化し,2050年までに10%も減少するだろう.政府支出と国有企業によってGDPの70%が支えられている.腐敗,汚職が広がり,経済的な利益と損失もクレムリンが決める.国内の弱さがあることで,プーチンは対外強硬策を好む.民主化を求めた都市のインテリや富裕層は,弾圧するより,戦争のプロパガンダとナショナリズムにより焦点を失った.
中国はあまりにも巨大で,指導者の命令は地方官僚にまで届かない.党の規律を強化しようとするが,成功するとは思えない.ソ連崩壊と同様に,分裂した権威主義体制の限界が来た.
ヒラリーは,なぜこれほど嫌われたのか? アメリカ政治に潜在するセクシズム,男性優位の発想や感覚が問われている.彼女の当選は,それを変えるはずだったが,トランプのアメリカに対抗して,女性たちは何を始めるべきか?
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IPEの想像力 10/7/16
コンゴでもなく,リビアでもなく.最も富裕で,最も強力な軍と金融ネットワークを持つ国.
トランプの勝利を伝えるNew York Timesのウェブ記事を観て,何とも掴みどころのない不安と不満の混濁した汚水があふれ出るのを感じます.それだけでなく,とても危険な,滑落する予感,あるいは,怪しい世界観が地面から湧き出してくる,異様な印象を持ちました.
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何だ,これは?
私たちは,宇宙船で冬眠しながら航行し,違う惑星に移住したのかもしれません.
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ヒラリーはこれほど嫌われていた? 中央権力に対する,不実なシステムに対する,また,専門家や政府機関・国際機関の分析や予測に対する,塩を噛むような憤りがあるのか?
政治的な正しさ,というルールで,差別的な表現・意思表示を抑制する,表面的な回避策は,むしろ政治を闇に押し込んだ.あるいは,政治の常道である多数派工作や政治資金集めが,政治を全く異質なものにして,政治論争から真実の社会対立・権力闘争を見えなくしてしまった.
その1: これは,ベルルスコーニだ.嘘と笑い.恫喝,金,セックス,超資産家,スポーツ,メディア,政治やエリートを嫌う人々のためのショー・ビジネス.
その2: あるいは,もしかしたら,明日はレーガンだ.・・・毒舌より,明るい笑顔が素敵.素人だから,中央の政界を知らないから,当選したよ,と,ヒラリーを呼んで,抱きしめる.国民のために和解しよう.・・・あなたは勉強しすぎだね.
その3: 企業を,女性を,共和党を,ついにホワイトハウスを乗っ取り,もう十分だ.後のことは考えていない.自分は帝王のようにふるまい,政策に関してはコンサルタントに委ねる.人気を維持する代わりに,政策の中身は両党の重要なものを取り入れる.
その4: さらに将来は,プーチンだ.選挙後の安定期から,次第に,最高権力者の妄想へと彼の関心が移るかもしれない.そして,歴史に名を残すため,偉業がほしくなる.最強の軍隊を動かせるから.小国を相手にマッチョを誇示する.それに飽きたら,どうするのか?
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アメリカの社会的分断はどうなるのか? ますます発展途上国の政治,新興市場の経済危機に似てくるかもしれない.
この選挙が残す「感覚」というのは,人々に大きな穴が開くことではないか.時間が経つにつれて,民主主義に対する不信感,空虚感が深まり,政治的な合意を得ることの困難を避けるようになる.裏取引でしかなかったもの,水面下の脅迫や買収でしかなかったものが,政治交渉そのものになる.
世界の各地に広がる無秩序や暴力,無政府状態のもたらす貧困,難民,フロンティの管理体制はどうなるのか?
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金融を中心にした市場統合の流れは,今後,何を目指すのか? 超資産家や非リベラルな民主的強権体制は,むしろ金融資本との緊密な連携を生み出す.
中国や新興市場の躍進は,何に向かうのか? アメリカ市場を失って破滅するのか?
保護主義,金融緩和の継続,ドル安,減税,軍備拡大,などが,移民規制とともに始まるとしたら,それはどのような経済になるのか? アメリカの景気回復と,それにつれて,主要国との2国間交渉でアメリカ第1の通商条約を結びなおす.
それは,予想外に,自国と世界の景気回復,ユーロ圏,人民元の貿易・通貨圏を,一定の独自性において,着実に整備させ,3極経済管理体制に向けた模索が始まるのかもしれない.
中東への軍事介入はやめる.ロシアとの対抗関係も解消する.グローバルな勢力均衡を重視して,大国間外交の世界に向かうだろう.その基準は,国際的な理想や経済的利益ではなく,支配者にとっての国内政治だ.
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この星で,私たちは,冬眠から覚めた昆虫になる.
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