(前半から続く)


l  アレッポ住民の選択

FP OCTOBER 20, 2016

Civilians in Mosul Face ‘Impossible Choice’

BY PAUL MCLEARY, DAN DE LUCE

NYT OCT. 21, 2016

Does ISIS Need Territory to Survive?

NYT OCT. 21, 2016

Flee or Stay? For Mosul Residents, Both Choices Are Risky

By TIM ARANGO

NYT OCT. 21, 2016

The Siege Starts Without Warning

By MILJENKO JERGOVIC

FT OCTOBER 22, 2016

Mosul: Voices from a war zone

Erika Solomon

NYT OCT. 24, 2016

The Islamic State After Mosul

By HASSAN HASSAN

イスラム国家が後退した後に真空状態を埋めるのは、どのような秩序なのか?

FT October 26, 2016

Aleppo and Mosul — two sides of the same sprawling war

Roula Khalaf

緑のバスに乗るか、死体になるか? アレッポ東部の住民に、シリア政府のジェット戦闘機から散布されたパンフレットである。ダマスカスとモスクワは、3日間の「人道的通路」を宣言した。

同じころ、他の説明書も住民たちに配布された。それはアメリカが支援する同盟軍が、イラク北部のモスルをISISから解放するために、配布したものだ。空爆の際に、どのように安全にとどまるかが説明されている。難民流出を防ぎ、住民の生活を維持しようとしている。

アレッポとモスルは、同じ戦争の異なる側面である。しかし広大な中東の混乱状態においては、その違いは容易に無視される。

ウラジミール・プーチンはこの混同を助長しているようだ。ロシア軍によるアレッポの空爆を、西側は戦争犯罪と非難しているが、アメリカとその同盟軍がモスルを攻撃するにつれて、ロシアの罪を一時的に忘れるだろう、というわけだ。ロシアはイラクの都市を指さして言う。そこに市民がいるではないか? 爆撃することで犠牲者が出る、と。

2つの町の不幸は、同じスンニ派の悲嘆から生まれた。2011年、シリア、アレッポの多数派であるスンニ派は、少数派のアラウィート派が独裁体制を強いることに反対する運動に参加した。イラクでは、2年前、イラク北部にISISが侵攻し、モスルを制圧した。それは住民の多数派がスンニ派で、バクダッドのシーア派政権により弾圧されていたからだ。

2つの町はよく似た終焉に向かっている。アレッポでは、テロリストへの攻撃と称して、シリア政府軍とロシアの戦闘機が反政府派の住民を爆撃している。他方、モスルは、狂信的な過激派たちが町を暗黒時代に戻そうとした。イラク政府軍とクルド人の部隊が、西側の空爆や特殊部隊による支援を受けて、ISISを敗退させ、住民の解放を目指している。

モスルの解放は、ISISの撤退だけでなく、住民たちの扱いによっても評価されるだろう。イラク政府軍が奪還したスンニ派地域の記録は良くない。住民たちは政府軍やシーア派民兵の報復を恐れている。

モスル住民は、アレッポと同じような人権蹂躙を免れ、プーチンが予告したような惨劇を回避せねばならない。アレッポは処罰されつつあるが、モスルは救出されるのだ。

FT October 26, 2016

The assault on Aleppo is a moral test for the west

David Gardner

Project Syndicate OCT 27, 2016

Masters of War in Syria and Iraq

CHRISTOPHER R. HILL


l  アメリカのシリア介入

Bloomberg OCT 20, 2016

Ukraine and Syria Are in U.S. Election Limbo

Leonid Bershidsky

FP OCTOBER 20, 2016

America Must Prevent Iraq From Falling Apart Again

BY JAMES F. JEFFREY

モスルの陥落は、イスラム国家の政治的・軍事的力をイラクから失わせるだろう。しかしイラクの将来は、モスル陥落後に始まるイラクの再統合、内外の政治的安定化にかかっている。

イスラム国と戦うイラクの同盟諸国は、イラクの安定的な秩序、健全な国家建設に、必ずしも関心が一致しない。アメリカは欠かせないパートナーとしてとどまるが、掃除に、サウジアラビア、トルコ、イランのような重要諸国との協力が欠かせない。ワシントンはこれらの国の特別な目標に配慮し、調整しなければならない。

それは容易なことではないが、ヨルダン、ボスニア、コロンビアでは成功した。次のアメリカ大統領はイラクに焦点を当てるべきだ。

FP OCTOBER 23, 2016

Turkey’s New Maps Are Reclaiming the Ottoman Empire

BY NICK DANFORTH

FP OCTOBER 24, 2016

The Great Myth About U.S. Intervention in Syria

BY STEPHEN M. WALT

シリアへの軍事介入を主張する声が再び高まっている。彼らの中には、残酷な事態が起きていることを知りながら、アメリカが行動する「意志」を示さなければ、アメリカの評価は失われる、という理由で、軍事介入を要求している。それはアメリカの衰退を加速する、というわけだ。

私はアメリカがシリア内戦に介入するべきではないと考える。もちろん、その最初から、アメリカはさまざまな形で関与してきたのだが。私はその目標に関しては同意するが、それを達成するために軍隊を派遣することには反対だ。そのような決定は、結局、流血の事態を止められないし、報復を招くし、一層の過激派の参加をもたらすだけだろう。

特に、軍事介入を支持する者が、戦後のシリアの政治体制のあり方に関して何も説得的な目標を示さず、そこに至る道も示していないことは重要だ。イラクでも、リビアでも、その独裁体制を崩壊させた後、アメリカは新しい秩序を構築できなかった。

私が何より拒否するのは、軍事介入を抑制することが、アメリカのパワー、イメージ、評価を損なう、という主張だ。そのような意見に根拠はない。実際、アメリカは多くのケースで軍事介入をしなかった。それがアメリカ外交に大きなダメージを与えたことなどない。

パキスタンの分離独立、冷戦下の多くの事件、カンボジアのポルポトによる虐殺、エル・サルバドルやグアテマラにおける極右武装集団による虐殺。

問題は、人道的危機にアメリカが介入するべきかどうか、ではない。アメリカがそのパワーと情報を駆使することが、受け入れ可能なコストで、事態を改善するか、ということだ。

Project Syndicate OCT 25, 2016

Rethinking Humanitarian Aid in Civil Wars

JONATHAN KENNEDY and DOMNA MICHAILIDOU

FT October 28, 2016

Clinton and Obama: An American rift over an Egyptian despot

Geoff Dyer and Heba Saleh


FT October 21, 2016

The pioneering spirit America would do well to revive

Gillian Tett


l  ロシアの戦争宣伝

FT October 21, 2016

Russia’s gas pipeline threatens European unity

Konrad Szymanski

Project Syndicate OCT 26, 2016

The Return of Containment

DOMINIQUE MOISI

NYT OCT. 26, 2016

Playing With Fear: Russia’s War Card

By MICHAEL KHODARKOVSKY

ロシアのメディアは戦争の恐怖を高めている。最近、プーチンの同盟者である超ナショナリストのVladimir V. Zhirinovskyは、もしヒラリー・クリントンが当選すれば、第3次世界大戦が起きるだろう、と宣言した。

何世紀にもわたり、ロシア帝国は近隣の弱小国を滅ぼして拡大した。それは強固な抵抗、もしくは、勝利できない戦争に直面するまで続いた。西側は今、モスクワに明確なメッセージを送らねばならない。ウクライナやシリアのような冒険を次に犯せば、その代償はロシアにとって支払いきれないものである、と。ソ連が軍備拡大の負担に耐えられず、崩壊したことを思い出せ。

FP OCTOBER 26, 2016

Putin’s Chaos Strategy Is Coming Back to Bite Him in the Ass

BY MARK GALEOTTI

軍事、外交、さらにはアメリカの大統領選挙に対する介入まで、プーチンが繰り返した強硬策は、外交の天才を意味しない。その得られた成果は、彼らが支払ったコストに見合わないものだ。現在の成果と見えるものは、将来の破滅をもたらすような内容だから。

FT October 27, 2016

Four rules for a realistic reset with Vladimir Putin

Philip Stephens

プーチンとの関係は4つの点で見直せる。1.決意を示せ。プーチンは戦略家ではなく、機会主義者だ。2.西側の一貫性。3.相互利益がある分野では共同行動に関与。4.敬意を求めている。

FP OCTOBER 27, 2016

Europe’s Militaries Have a Sharing Problem

BY ELISABETH BRAW


l  自由貿易論

Project Syndicate OCT 21, 2016

The Free-Trade Miracle

BJØRN LOMBORG

FT October 25, 2016

Ceta debacle heralds a period of disintegration for the EU

Wolfgang Münchau


l  イギリスのナショナリズム

The Guardian, Saturday 22 October 2016

English nationalism has shattered my sense of belonging in Britain

Ian Jack


l  アメリカの保守派

FT October 23, 2016

The war for America’s conservative soul

Edward Luce

勇気、指導力、美徳。それらはかつて保守政党が称賛したものだ。トランプには全くない。その失われた者のあまりの大きさは、共和党の内紛が終結する見込みを遠くしている。

FT October 25, 2016

We should make the most of the Trump effect

Jurek Martin


l  金融政策の迷走

FT October 23, 2016

It’s the demography, stupid!

Gavyn Davies

FT October 24, 2016

To revive America’s economy, raise interest rates

Tony James

Project Syndicate OCT 25, 2016

The Blind Alley of Monetary Populism

JEFFREY FRANKEL

金融政策をめぐってポピュリストたちの主張には一貫性がない。金融緩和が債務者に利益になり、債権者を苦しめることは、歴史的にポピュリストたちが高金利に反対し、金融緩和を求めた理由であった。しかし、今は金融緩和がかつてない水準で、株高による富裕層の所得を説明する。他方、好況が続いて雇用が増え、賃金上昇にも役立った。

金融政策を使って所得分配を平等にすることを中央銀行の目標にするのは間違いだ。不平等は、もっと他の政策で是正できる。金融政策は次のバブルや金融不安定性を回避するべきである。

Project Syndicate OCT 25, 2016

Taking Monetary Policy to the People

HOWARD DAVIES

中央銀行の独立性は、これまでのように、議論の余地がないことではなくなった。非伝統的な量的緩和にまで踏み込んだことで、預金者の不満や弊害について、以前のコンセンサスは動揺している。独立性とは、国民に対する高度な説明責任と透明性によって与えられているものだ。

Project Syndicate OCT 26, 2016

What Could Go Wrong in America?

MARTIN FELDSTEIN

アメリカ経済の状態は良好だ。しかし、1年後の経済が悪化しているとしたら、その原因は何だろうか? 金融資産の価格が正常な水準を大きく超えていることは暴落のリスクを意味しており、それゆえ連銀は短期金利を引き上げるのをためらっている。

VOX 26 October 2016

Why unconventional monetary policy works in theory

Roger Farmer, Pawel Zabczyk


l  国際刑事裁判所

FT October 24, 2016

The ICC still has a valuable role to play

ICCthe International Criminal Court)国際刑事裁判所は、2002年に設立され、ジェノサイド、戦争犯罪、人道に対する犯罪を、その国の司法が機能していない場合に裁くための国際法廷である。旧ユーゴスラビア、ルワンダ、シエラレオネで戦争犯罪が裁かれた。

当時の国連事務総長Kofi Annanは、「人類の普遍的な権利、法の支配に向けた巨大な1歩である」と称した。ICCはその時代の産物であった。冷戦の終結、西側リベラリズムが、ICCを高貴な思想であるだけでなく、可能なものにしたのだ。

しかし、ICCはその構造と実施面で問題に直面している。もしその両方を解決できなければ、ICCの正当性とパワーの実効性は維持できない。すなわち、1つは、安保理常任理事国が介入することだ。5か国中3か国はICCの法的枠組みを承認していない。ICCが裁く犯罪者の多くが、ICCの設置を当事国が認めない、あるいは、常任理事国の反対で、告発を免れている。例えば戦争犯罪が繰り返し起きている中東地域で、ロシアが反対するシリアや、アメリカが反対するイスラエルでは、ICCが機能しない。

このことが意味するのは、ICCの裁判事例がアフリカに集中している、ということだ。多くのアフリカの指導者が、ICCは衰退する帝国のパワーを手助けする道具である、弱小国に強制し、峡谷を保護する仕組みだ、と考えている。

もう1つの問題は、平和と正義との対立だ。スーダンのように、一方の正義は他方にとって受け入れられず、ICCの要請は平和のための交渉を破壊する恐れがある。

FP OCTOBER 26, 2016

Is the International Criminal Court Crumbling Before Our Eyes?

BY DAVID BOSCO


l  公的年金制度の改革

Project Syndicate OCT 24, 2016

The Creeping Public-Pension Debacle

BILL EMMOTT

もし発展した諸国が合理的に行動するなら、有権者が支払った税金の使い方について関心を持つなら、その公的年金制度の支払い開始年齢を70歳以上にするだろう。改革に取り組まないことで、西側の福祉国家は財政的に衰微し、経済的に病弱で、政治的に緊張状態を強める。

高齢化は、社会的、経済的に見て、地球温暖化に等しい。人々は負担を将来世代に先送りする。しかし、公的年金制度に関するつじつま合わせは、温暖化以上に、高いコストをもたらす。

1970年、フランスの男性労働者が引退する実質的な平均年齢は67歳だった。それは当時の平均寿命と同じだった。今では、引退する年齢が60歳を切り、平均寿命が83歳に近い。OECD加盟13か国のGDPから10%が公的年金に支出されている。

ドイツのビスマルク首相が世界最初の国家による年金制度を1889年に導入したとき、年金給付は70歳からだった。ほとんどの人がそれほど長く生きなかったし、多年の給付を受けることもなかったのだ。先進諸国の人口の5分の1が(さらには3分の1が)65歳以上になることから、公的年金への支出は政府の他の支出をクラウド・アウトしてしまうだろう。それは、インフラ整備、教育、研究・開発、防衛、その他の重要な公的支出を削減することにつながる。年金生活者は、それを支出するから、無駄になるわけではない。しかし、より高い成長をもたらすものでもない。

労働組合は今も公的年金制度の改革に反対している。また、政治家によっては、雇用の塊が固定的であるという間違った考えから、年金給付によって高齢者が労働市場から退出する方が、若者の雇用に好ましい、と考えている。それは間違いだ。引退を遅らせることは雇用を奪うのではなく、むしろ雇用を創出する。また、企業もコスト削減のために高齢者を解雇するより、高齢者の雇用を継続する・増やすような条件を提示するべきだ。


l  新しいドル不足

Project Syndicate OCT 24, 2016

The Return of Dollar Shortages

CARMEN REINHART

2次世界大戦後のヨーロッパにおいて、戦争により破壊から経済再建を行うための資本財を供給できる国はアメリカしかなかった。そして、「ドル不足」が起きた。ドルを入手する方法がなければ、各国は輸出を増やそうとした。各国が同じように輸出拡大を争い、しかも為替レートはドルに固定していたから、非公式のドル市場a parallel currency marketが成立した。

現在、再び「ドル不足」が起きている。それは、主に中国の投資ブームがもたらした石油や一次産品価格の上昇が、各地の輸出国に巨額の外貨準備をもたらしてきたからだ。国によっては、貿易黒字による為替レートの増価を抑えること、あるいは、ドルに固定することが選択された。

ブームが終わって、国際商品市場の価格が急落すると、為替レートを変動させていた諸国は通貨価値が急落したが、固定もしくは安定化していた国では外貨準備が急激に減少した。その過程で、「ドル不足」が再現したのだ。たとえ為替レートが減価しても、世界経済が不況になる中で輸出量はなかなか増えず、輸出額も増えない。他方、債務はドル建である。

かつて、ヨーロッパ諸国の不安定化を抑えるために、アメリカは寛大な条件でマーシャル・プランを通じてドルを供給した。しかし、今、アメリカの政治と有権者は内向きである。新興諸国や発展途上諸国はIMFに頼るだろう。そして、中国がドルを供給するチャンスかもしれない。

Bloomberg OCT 26, 2016

Why This Dollar Surge Is Different for the Fed

Mohamed A. El-Erian


l  中国のバブル崩壊

Project Syndicate OCT 24, 2016

The World Economy Without China

STEPHEN S. ROACH

中国経済は、その不動産バブルが破裂して、崩壊に向かうのか? 私は中国政府には経済の構造転換に進む覚悟があり、金融危機を回避しながら、それに成功する戦略がある、と考える。

しかし、そのような楽観論は少数派だ。だが、悲観論は何を意味しているのか?

中国が不況になれば、資源輸出国だけでなく、周辺のアジア諸国、そして、日本や韓国、アメリカにも影響する。それは世界GDPの成長予想を、3.1%から1.6%に下げるだろう。世界不況の規模は、1975年(1%成長)や1982年(0.9%成長)に近くなる。

Bloomberg OCT 25, 2016

China Can Resist a Crash But Can't Prevent One

Tyler Cowen

7%8%の高い成長を多年にわたって実現した多くの経済が,オーバーヒートして,バブルとその破裂に至る.1980年代,90年代に,韓国や日本で起きたことだ.しかし,中国経済は成長を保ち(公式統計で6.7%),破局論者たちの予測を裏切った.今年の景気回復を示すデータもある.

しかし,崩壊の危機は去っていない.不動産市場のバブルを示す多くの証拠があり,経済はますます政府の刺激策と民間融資の拡大に依存している.

いくつかの理由で,中国経済は西側のモデルと異なっている.それゆえ,経済予測はバブルの分析というより,レースの勝者を予測することに近い.

アメリカと違い,中国には国有企業が多い.その事実は,中国政府に巨大な資産のストックを操作する能力を与える.悪いニュースがあっても,政府は企業に資産を使って支出し,雇用を維持するように指令できる.それは財政刺激策のようなものだ.不況になると,西側経済において即座に所得を減らすが,中国では資産の減少に転換され,大きな景気後退をまぬがれる.

それは有益であるかもしれないが,同時に,悪用される.中国の倒産はあまりにも少なく,過剰な生産力,非効率な企業が残されている.

1つの問題は,企業の資産が尽きる,あるいは,もっと前に,国有企業の経営者たちが異なる政策を要求することだろう.そして,もう1つの問題は,あまりにも多くの非効率な企業が生き残る,ということだ.最終的に,激しい不況が起きた場合,アメリカが金融危機の際に持っていたような,さらにひどい不況を回避するための資産がなくなってしまう.

中国は貧しい国であり,危機を回避するために資産を失っている.外貨準備が減少し,債務の水準が急速に高まっているのも,その現れだ.

エコノミストたちは,この10年間,中国の経済システムには,欧米の経済システムより,はるかに長く危機を遅らせる能力がある,と知った.

では,経済危機は起きないのか?

中国には,それを支持するいくつかの要因がある.労働生産性の上昇,生産性を高める都市への人口移動,外国からの技術移転.そして,かつてほどではないが,自由化と政策の改善である.企業の不調に対して,こうした要因は救済を可能にしていた.投資低迷や債務の負担が深刻になる以上に,財政政策は十分に長い間,成長を維持できる,と考えるかもしれない.

だが悲観的に考えるなら,中国人はまだ経済危機を脱したわけではなく,政策担当者たちは,ますます短期的な,政治的権力を維持することに焦点を向けている,と見るだろう.大きな不況を回避するたびに,より多くの債務,より過剰な投資が残っている.それは一層のプラスの要因を必要とするが,生産性の上昇や都市化は減速しつつあるのだ.

これは競争である.このレースの結果に,世界経済は大きく依存している.政策担当者が勝利することは次第に難しくなっている.私は,キャッチアップのプラス要因がいつでも勝利する,とは思わない.

中国にとっての1929年は,まだ,その登場を延期されていたとわかっても,私は驚かない.

FT October 26, 2016

Sluggish global trade growth is here to stay

Martin Wolf

なぜ世界貿易の成長は減速したのか? 世界経済の成長が減速したからか? 投資機会が枯渇したのか? あるいは、保護主義が高まったのか?

全てが正しいが、その重要さは異なる。

もし世界貿易が再び成長するとしたら、それはアジアの2大国、インドと中国にかかっている。西側の指導力では変えられないのだ。

FT October 27, 2016

If China cannot beat Europe, it will acquire it

John Gapper

YaleGlobal, 27 October 2016

Four Fallacies About Trade and Globalization

Ajai Gaur and Ram Mudambi


Project Syndicate OCT 25, 2016

America After the Election

RICHARD N. HAASS

Bloomberg OCT 27, 2016

Four Steps to Save American Politics

Cass R. Sunstein


l  環境破壊の現状

NYT OCT. 25, 2016

North Carolina’s Noxious Pig Farms

By THE EDITORIAL BOARDOCT. 25, 2016

NYT OCT. 25, 2016

Resettling China’s ‘Ecological Migrants’

Text by EDWARD WONG             Photographs and video by JOSH HANER


l  北朝鮮

YaleGlobal, 25 October 2016

Exasperated Neighbors Wish Regime Collapse for North Korea

Shim Jae Hoon


l  アベノミクス礼賛

Project Syndicate OCT 26, 2016

The Secret Success of Abenomics

KOICHI HAMADA

日本経済の力強い回復を旧来の統計は正しく示さない.より正しい基準では,アベノミクスの成功は輝いている.


l  ヴェネズエラ

NYT OCT. 26, 2016

A Dangerous Standoff in Venezuela

By THE EDITORIAL BOARD

FP OCTOBER 27, 2016

After 24 Years, I Am Leaving the Disaster Venezuela Has Become

BY PETER WILSON


FP OCTOBER 27, 2016

Ukraine’s Women Are Kicking Ass and Taking Names

BY ILYA LOZOVSKY


l  ベーシック・インカム

Bloomberg OCT 27, 2016

My Second Thoughts About Universal Basic Income

Tyler Cowen

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The Economist October 15th 2016

The debasing of American politics

Intervention in Yemen: The forgotten war

China’s property market: Rotten foundations

Sterling: Taking a pounding

Hong Kong politics: No swearing

A policeman’s lot: Not happy

US-Mexico trade: In the shadow of the wall

The rise of Syria’s White Helmets: Local heroes

The United Nations’ secretary-general: Can the next man do better?

Chinese property: When a bubble is not a bubble

Buttonwood: Flash and the firestorm

China today (1) To have and to hold

(コメント) クリントンが勝つだろうが,共和党は議会上下院を支配して協力を拒むのではないか.クリントン大統領は行政命令に頼り,予算の成立を阻まれ,行政府の閉鎖や債務不履行の脅迫,弾劾裁判請求,政府に正当性はない,というイメージが広まる.

サウジアラビアによるイエメンへの軍事介入をなぜ西側は支援するのか? 石油を,資本を,軍隊を,西側は中東においても維持し,望ましい形に転換するため関与を強めるしかないからだ.そのためにも,戦争犯罪を裁く国際法を尊重するべきだ.

中国のバブルに関して,アメリカとメキシコの貿易と投資がもたらした統合経済に関して,国連事務総長の決定に関して,ポンド価値下落に関して,興味深い記事が読めます.

シリアに生まれた,爆撃の後の瓦礫からの人々を救出するボランティア部隊の存在に,戦争の高貴な側面を観ます.

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IPEの想像力 10/31/16

中国では,昨年,株式市場の投機的な取引がバブルを生じ,崩壊しました.その後,世界金融危機を回避したものの,下落したはずの住宅市場のバブルが再燃し,債務による取引が過熱している,と警告する報告や記事が増えています.

立ち退きを拒む住宅が,そのまま残された形で,政府や業者が新しい造成工事を進める現象を「ネール・ハウス」(爪の家)というようです.世界各地で,林立するクレーンや都市の超高層ビルとともに,バブルを象徴する現象です.

Jo Blason, "China's nail houses: the homeowners who refuse to make way – in pictures," The Guardian, Tuesday 15 April 2014.

https://www.theguardian.com/cities/gallery/2014/apr/15/china-nail-houses-in-pictures-property-development

一方ではバブルが生じ,その破裂によって実体経済が大きく損なわれる.他方では,開発業者によって住む家を追われ,法律も政府も守ってくれない貧しい人々が増える.・・・なぜ,こうした現象が起きるのか?

バブルが生じないように,金融取引(特に銀行融資)が不動産によって膨張するメカニズムを止める方策は提案されています.これら2つの結びつきを切ることは,長期経済成長の安定化や所得分配の平等化にとって,重要な前進となるでしょう.

あるいは,人々が自分の意思に反して住宅から追い出される,住むことのできないような状態に追い込まれることは,正しい法律や制度の導入によって防げるはずです.確かに,開発業者は,住民の合意を得るまで時間がかかるかもしれません.しかし,社会の在り方を調整するのであれば,それは必要なプロセスです.調整を促す補償や代替の選択肢,合意形成を促す住民組織,公共住宅のプール,など,各地の取り組みが参考になるでしょう.

エコノミストの記事は,不動産部門が中国GDPに占める割合を約4分の1とみなし,その回復によって世界GDPに重要なダイナミズムを与えた,と評価しています.ただし,ますます投機的になり,規制は無効になっている,と注意します.

私は,かつて「大西洋経済」の長期変動と統合を描いたB.トーマスなどの研究を思い出します.今や「太平洋経済」の誕生だな,と感じたわけです.中国や西側の諸政府は,次のバブル崩壊を回避できるのか? 国境を超えた平和と繁栄を共有する時代にふさわしい,新しい政治が各地に生まれてほしい,と願います.香港の若者たちが政治に参加したように.

しかし,中国に関するM. Peiの新著を紹介する記事,持つ者と持たざる者,は深刻な事態を伝えます.共産党エリートや地方の犯罪集団により成長は私物化されており,政治においても,権力の分散がもたらした地方幹部の独裁・専横が強まっている,というのです.そして,もしこの1党独裁体制が崩壊すれば,その結果は,ロシアやウクライナで起きた混乱に近いだろう,と考えます.

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市民の居住区域や,病院,食糧貯蔵所,水道局などを爆撃して,人々の離散,消滅を狙うシリア政府は,狂気の「民主主義」であると思います.その暗黒の中から,White Helmetsというボランティア組織が誕生したことに驚きます.・・・なぜ彼らは,命を失う危険を知りながら参加するのか?

「子供や老人が,がれきの中でまだ生きている.彼らはあなたの眼を見て,希望を持ち,助けてほしいと訴える.それは(自分がそれに応えることは)素晴らしい感動だ.」

住民を瓦礫の中に取り残す不動産開発も,債務を支払えない家族を住宅から追い出す金融危機も,空爆のようなものです.アメリカとメキシコの統合経済が政治的枠組みを模索するように,日本政府のTPP法案は,成否に関わらず今後も内容を精査されるでしょう.大国の合意がこれからの世界経済に新しい性格を与えます.

日本の地方は,高齢者たちの暮らしは,その中で,どのように変わるのでしょうか?

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