IPEの果樹園2016

今週のReview

10/17-22

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ポピュリズムとポンド安 ・・・金融政策の未来 ・・・ノーベル経済学賞 ・・・グローバリゼーションと政治 ・・・アメリカ大統領選挙 ・・・ポンド価値の急落 ・・・北アイルランドのBrexit ・・・シリア内戦 ・・・人民元のSDR参加 ・・・リベラルを阻む5冊 ・・・IT時代の労働者と教育 ・・・民主党大統領の政策綱領

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, The Guardian, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, そして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]


l  ポピュリズムとポンド安

The Guardian, Friday 7 October 2016

We’re marching towards extreme Brexit. Someone must speak for the 48%

Jonathan Freedland

FT October 8, 2016

Theresa May is taught a hard lesson by the financial markets

FT October 9, 2016

Theresa May’s ethos of more state, a little less ‘anything goes’

David Goodhart

メイは、先週の保守党大会で、労働者階級にアピールした。EU離脱を選択したイギリスだが、その政治や制度は少しヨーロッパ大陸に近づく。

政権を得る上で労働者階級からの支持が重要であるとはいえ、その数は人口の3分の1以下にまで減少している。しかし、約半数は自分を労働者階級と考えている。

メイは、大陸のキリスト教民主党のように、労働者と中産階級に支持を広げたいのだ。イギリスでも、ヨーロッパで30年前に起きたように、都市部のリベラルや旧労働者層が政治的に分散している。

しかし、イギリスの政治文化はヨーロッパと異なる。それは今も、ヨーロッパよりアメリカに近い。より対決的で、世論の変化に従う。イギリス首相は、クエスチョン・タイムにおいて、毎週、立場を問われ、選挙にもさらされる。イギリスが、ドイツのように難民を受け入れることは考えられない。

キリスト教民主同盟が階級を超えて支持を広げたのは、ヨーロッパに冷戦があったからだ。イギリスには縁のない、政党のあいまいな性格は、ドイツ社会民主党が労働市場改革を担ったことにもみられる。

イギリスは今後も、比較的、自由市場(アメリカに近い)、比較的、大きな政府(しかし、ヨーロッパほど大きくない)、そして公的部門は、文化的に許される、平等主義的な精神に支配されるだろう。メイが、最近の首相の中では最もリベラルな嗜好を示すが、イギリス政治を変えることはない。

政府は人口の底辺50%に同情心を持つ、リベラルなポピュリズムを模索する。

Bloomberg OCT 9, 2016

Ditch the 'Hard Brexit' Fallacy

Clive Crook

Project Syndicate OCT 10, 2016

The Political Logic of Hard Brexit

JACEK ROSTOWSKI

テレサ・メイは保守党大会で「小イングランド」演説を行った。イギリスは「ハードBrexit」へ向かう。

それはイギリスの世論に反するものだ。7月の調査BBC/ComResでは、66%EUの単一市場を維持するように求めている。同時期のICM調査では、10%だけが、単一市場より、移民を規制することを優先した。30%は両方を同じ程度に重視し、38%は単一市場アクセスを優先した。

一部の怒れる白人労働者たちが離脱派の主要な部分を占めるが、貿易を支持する中産階級のBrexit派がいるので、それを残留派に加えるなら、明らかに多数を形成する。通常であれば、政府は多数派の嗜好を政策に反映し、「ソフトBrexit」をめざすだろう。しかし、古典的な革命パターンが現れている。

Brexit派によれば、人民の声を実現するべきだ。議会で多数を占める「偽物の」Brexitを好む議員や政府職員たちを一掃するべきだ。こうした革命的主張は、ヨーロッパ政治の最悪の伝統でイギリスのプラグマティズムを押しつぶすものだ。

UKの交渉姿勢は、第1に、経済的な損失を抑え、第2に、カナダのEU交渉が示したように、EU加盟諸国すべての合意を要する。その点で、UKの交渉力は弱い。Brexit派があくまで「権力を取り戻せ」という国民投票の主張を実現するつもりなら、それは政治的な破滅である。

政治的に見た、ハードBrexitは、政府にとってソフトな、弱い立場なのだ。有権者は長い年月をその代償の支払いに費やすだろう。

Bloomberg OCT 10, 2016

The U.K.'s Dangerous New Identity Politics

Pankaj Mishra

FT October 11, 2016

For Remainers, the only good Brexit is hard Brexit

Janan Ganesh

FT October 11, 2016

A gig economy is no excuse to go back to the past

Sarah O'Connor

FT October 11, 2016

Is the UK heading for ‘hard’ Brexit just because it’s easiest?

David Allen Green

FT October 12, 2016

Life in Brexit Britain for a proud citizen of the world

Roula Khalaf

メイ首相が「世界市民」でだれを刺したのかはわからない。しかし、10年以上前にUK市民になる前、私は「外国人労働者」であった。現在のレトリックでは、それはイギリス人の受け入れ主に対して、誰かの仕事を奪うことで、害を与える者を意味する。

幸い、そのころグローバリゼーションや多文化主義は良い意味で使われていたから、イギリスは私を歓迎してくれた。

世界市民を、より緊密に結びついた、広範な世界に帰属し、人権や温暖化に強い監視を持つ、というのが以前の意味だったと思う。しかし今では、政治家たちは極右からの攻撃を恐れている。Brexitの政治運動は、排外主義を強め、「本物の」市民と、「偽物の」市民を作った。

アイデンティティは扱うのが難しい問題であるが、今も国民性が強い政治的アピールになる。メイは、Brexitに有権者の鬱屈を観たが、その処方箋を間違った。解決するより悪化させている。

移民は重要な問題だが、Brexitを生んだ問題はほかに多くある。不平等は現在の危険な問題だが、世界市民や国際エリートの責任ではない。ポピュリズムや偏狭なナショナリズムによって国を分断してはならない。

FT October 12, 2016

Why Theresa May is so critical of monetary policy

Stephen King

Bloomberg OCT 12, 2016

Theresa May's Confusing New 'Conservatism'

Editorial Board

メイは、Brexitだけでなく、イギリス保守党を作り変え、イギリスも作り変える。新しい産業政策、消費者や労働者の参加した重役会議、イギリス人労働者の優先的な雇用。それらは大衆の不満を意識しているかもしれないが、グローバルで外向きのイギリスにとっては重要ではない。

SPIEGEL ONLINE 10/13/2016

Cold Britannia

Searching for the True Britain

An Essay by Christoph Scheuermann

FT October 14, 2016

Theresa May’s activism is a decisive break with the past

Martin Wolf

テレサ・メイは保守党のサッチャー主義を追放する、保守党政権下で、イギリスは公平さを重視し、政府の介入を支持する。

1942年にベヴァリッジ報告が出版されたが、当時の労働党キャラハン首相も、同様に、景気回復や雇用の拡大を政策で支持し、「他の選択肢はない。」と述べた。

金融危機、生活水準の停滞は、自由市場アプローチの正当性を掘り崩した。しかし、その政策が機能するかどうかは、細部によるだろう。外国人に対するレトリックは失敗だった。

新しい政府の行動主義は、イギリスの弱点である、インフラ、教育、住宅の供給を改善できるかどうか、である。


l  フィリピンのポピュリスト政治

FT October 7, 2016

Rodrigo Duterte, the populist punisher who has people hooked

Michael Peel


l  金融政策の未来

FT October 7, 2016

The end of ‘QE infinity’?

Gavyn Davies

QE1からQE2、そして、QE3、さらに無限のQEなのか? そんなことはない。すでに主要中央銀行でQEの方針は転換しつつある。

無限にQEを続けた末に、破滅に至る、ということもないだろう。その効果は失われ、マイナスの副作用に対する批判が生じている。政治状況も変化した。

イギリスではポンドの急激な減価がインフレを高めている。金融政策を緩和し続けることは、もはや適当ではない。底辺層に関心を向けるメイ首相や、財政再建目標の延期によって財政政策に余地を高めた蔵相は、インフラ投資や住宅建設を増やすだろう。

日銀は、QEから長期債の利回りに目標を転換する。アメリカ連銀は、トランプへの懸念から、金利引き上げを延期した。もはやゼロ金利になった世界で、貨幣と債券との差はデフレ対策にほとんど効果がなくなった。

Bloomberg OCT 7, 2016

Low Rates Are Here to Stay

Noah Smith

超低金利は金融市場を不安定化するのか? 日本は20年間も安定している。世界は、同様に、ゼロ金利を望んでおり、安定した状態が続くだろう。

FT October 8, 2016

Today’s mix of frothy markets has troubling echoes

Sebastian Mallaby

多くの先進諸国で政治は不安定化し、同様に恐ろしい切断が世界の金融市場に起きるかもしれない。将来の成長を基に得られるはずの株価は、世界中で成長見通しが悪化しているにもかかわらず、過去5年間、株価が鋭く上昇してきた。

債券市場は特に危険な状態にある。利回りがごくわずか、もしくはマイナスであるのに、投資家たちは債券を買い続けている。アメリカの住宅価格は金融危機前の水準に近付いている。イギリスはその水準を超え、カナダははるかに超えてしまった。

この危険な泡の源泉は、異常なまでの金融緩和である。この事実を否定する者はいないが、思慮深いコメンターたちの多くが、それでも貨幣を供給し続けるべきだ、という。残念ながら、1人の経済史家として、このような議論を聞くと、以前に観た映画の恐ろしい結末を思い出す。

10数年前、連銀は同様の苦境にあった。アラン・グリーンスパンが短期金利を1%にまで引き下げ、長期金利についても過激な新政策を示した。投資家に低い短期金利が「当分は」続くという期待を誘導し、それにより長期金利を引き下げたのだ。この強い金融緩和で、住宅価格や金融市場は過熱した。しかし、コア・インフレーションは1.5%以下であった。

グリーンスパンと仲間たちは、沸騰する金融市場と低インフレ状態について不安を抱いていた。しかし、今の連銀と同様、彼らは行動しないことを選択したのだ。後から見て、われわれはそれが間違いだったことを知っている。

エコノミストJohn Campbell and Robert Shillerは、景気循環を調整したPERで観て、アメリカの株価は2007年と同じくらい過大評価である、と指摘する。2005年には、Ben Bernankeが中国の過剰貯蓄を犯人にした。今は、Lawrence Summersが、技術革新や人口要因を低投資の理由に指摘する。それらが正しいとしても、金融政策がバブルの責任を負わない、ということにはならない。

中央銀行はジレンマに苦しむ。低成長と低インフレは金融的な刺激策を求めている。しかし、金融資産は基本的な価値を超えてしまい、危険な状態にある。国によって、正しい判断は変わってくる。

歴史が示すように、金融資産の安定性は、少なくとも、物価の安定性と同じように重要だ。

FT October 11, 2016

It would be wrong to abandon the policy of negative rates

Kenneth Rogoff

ヨーロッパや日本の経験から、マイナス金利を批判する声は強い。しかし、マイナス金利やめるのは間違いだ。

その最も悩ましい問題である現金への逃避が解決できる手段をもっと研究することで、マイナス金利政策は長期的に有効な手段となる。「正常な」金利が低い時代には、マイナス金利が必要だ。もし(低金利時代に)金融危機の際、マイナス金利を拒めば、雇用や生産、資産価格が大きく下落する。

マイナス金利は、決して、前例のない手段ではない。紙幣の前に、君主たちは日常的に金属貨幣を悪鋳した。たとえば、より少ししか銀を含まない貨幣で債務を支払ったのだ。ゼロ金利やそれ以下の水準での問題は、印刷機をフル回転して解消した。実質的な貨幣の減価でインフレを引き起こした。

マイナス金利を支持するには、その代わりに提案されている政策を検討することだ。財政政策は当然だ。ゼロ金利でインフラ投資を行うことには賛成だ。しかし、それ以上に何があるか? 保護主義、構造改革、民間金融市場への政府介入。いずれも非常に危険である。

Bloomberg OCT 12, 2016

A Fed Divided Against Itself

Mohamed A. El-Erian

Bloomberg OCT 12, 2016

Preparing for the Post-QE World

Jean-Michel Paul


l  ノーベル経済学賞

FT October 7, 2016

Confusion and comedy devalue the Nobel Peace Prize

Bronwen Maddox

FT October 7, 2016

Nobel Prize winning is more science than an art

Project Syndicate OCT 10, 2016

Nobel Economics Versus Social Democracy

AVNER OFFER

近代社会を管理するエリートたちの中で、エコノミストだけがノーベル賞をもらえる。

エコノミストたちが特異であるというどんな理由があるとしても、ノーベル賞の受賞による反響が、その政策の信用を高める。たとえその政策が、不平等を拡大したり、金融危機を生じやすくしたりして、人々の利益を損なうものであっても。

しかし、経済学はすべてを説明するわけではない。世界に関する他の考え方が、雇用、医療保険、教育、年金など、最も発展した諸国のGDPの約30%について配分を決めている。それは社会をどのように管理するかについての考え方、社会民主主義、であr。それは政治の方向だけでなく、統治の方法を示すものだ。

標準的な経済学は、社会が利己的な個人の市場取引によって動く、と仮定する。彼らの選択が「見えざる手」によって集まり、効率的な国家になる、と。しかし、この原理は理論としても、実際においても、根拠がない。前提は非現実的で、モデルは矛盾しており、その予測はしばしば間違っている。

ノーベル経済学賞は、1968年に、スウェーデンの中央銀行the Riksbankが設立した。新しい賞は、物価の安定性による生活の改善を重視するか、課税や社会投資、所得移転による不確実さの減少ですべての人の利益を重視するか、という長期にわたる論争から生まれた。スウェーデン王立科学アカデミーはノーベル賞を授与するが、スウェーデンは先進的な社会民主主義国家である。

1950年代、60年代、信用の拡大に関して、the Riksbankとスウェーデン政府とは対立した。政府は雇用や住宅建設を重視したが、総裁のPer Åsbrinkはインフレ抑制を重視した。ノーベル賞は、300年に及ぶthe Riksbankの主張であった。

科学アカデミーの中で、中道・右派のエコノミストが選考過程を支配した。厳格にバランスを取りながらも、その偏りは受賞者に示されている。経済学賞を支配した大物は、ストックホルム大学のAssar Lindbeckであった。彼は社会民主主義の立場から離れ、高税率や完全雇用が破滅に至る、と警告した人物だ。彼の介入は、金融緩和が1990年代の金融危機や、2008年の世界的危機に至った、政策の失敗を無視している。

そのような関心はIMF、世界銀行、アメリカ財務省と一致しており、彼らは民営化、規制緩和、貿易・金融取引の自由化という、ワシントン・コンセンサスを主張した。その政策はビジネスと金融のエリートたちを裕福にしたが、激しい危機を生じ、新興市場の成長を破壊した。

社会民主主義は、経済学に比べて、深い理論化がなされていない。プラグマティックな政策の組み合わせで不確実性を抑制する。数十年に及ぶ激しい攻撃を受けたが、それでも社会民主主義は、市場が効率的に、平等に、十分な量を供給しない公共財を、供給する点で欠かせないものだ。

経済学の理論は説得力が高く、社会民主主義はわれわれに欠かせないものであるから、両者が突然変異して相互に調整することが望ましい。多くの不幸な結婚について、離婚することがその答えにはならないのだ。

Bloomberg OCT 10, 2016

An Economics Nobel for Examining Reality

Noah Smith

Bloomberg OCT 10, 2016

Economics Nobel Rewards Theories Worth Building On

Tyler Cowen


l  カタールからの投資

SPIEGEL ONLINE 10/07/2016

Sheikh Up

Qatari Investors Eyeing Control of Deutsche Bank

By Martin Hesse and Christian Reiermann


l  グローバリゼーションと政治

Project Syndicate OCT 7, 2016

The Cost of Overhyping Globalization

DANIEL GROS

IMF・世界銀行の総会は、グローバリゼーションの逆転に対して、政治家たちが自由貿易の利益を説くように訴える。

しかし、その前提は単純すぎるだろう。彼らは世界貿易の成長が減速した理由を探した。しかし、貿易障壁は目立って増えておらず、むしろ景気の低迷が投資の減退により貿易も減らしている、と指摘した。貿易自由化も進展しなくなっている。

彼らが「貿易と成長との好循環」について強い確信を持っていること自体が、問題の一部であるだろう。グローバリゼーションの信念は多くの者に極端なグローバリゼーションを提唱させ、極端に高い期待を生じてきた。こうした不可能な期待が満たされないとき、人々は騙されたと感じ、自由貿易に背を向け始めたのだ。

自由化の利益は、自由化が進めば次第に減少する。第2次世界大戦後、貿易障壁は多かった時代には自由化のもたらす利益を支持しても、すでに障壁の少ない現在、自由化は大きなインパクトをもたらさない。そして、この20年間も続いた国際商品市場ブームが、グローバリゼーションに対する高成長の錯覚を広めた。

商品市場ブーム、商品価格の大幅な上昇が貿易も投資も増やした。しかし、エコノミストや政治家はそれを自由化の利益と主張し、「ハイパー・グローバリゼーション」への信仰を強めたのだ。しかし、国際商品価格の上昇は輸入国の生活水準を低下させる。だから先進諸国の労働者たちは経済的に困窮し、グローバリゼーションを問題視したのだ。

NAFTAは雇用の純減をもたらしたわけではないが、アメリカ労働者たちの生活水準悪化の時期に重なった。それがNAFTAについての印象を悪くした。また世界金融危機で住宅価格が下落し、自分たちの豊かさを感じることもなくなった。アメリカ労働者たちは、一握りの石油たシェールガスの部門を除いて、状況の厳しさを実感するようになった。それがトランプのようなデマゴーグに機会を与えている。

政治エリートたちはグローバリゼーションの価値を高く売り過ぎた。市場開放に労働者たちが反対することは、異常でも何でもない。逆に、グローバリゼーションの逆転で、国際商品価格が下落していることは、先進諸国の生活水準を回復させるだろう。不況が保護主義に向かう危機は回避

できるかもしれない。

VOX 07 October 2016

Globalisation and anti-globalisation voters: Evidence from Germany

Christian Dippel, Robert Gold, Stephan Heblich

NYT OCT. 8, 2016

Among the Post-Liberals

Ross Douthat

FT October 10, 2016

Voters sour on traditional economic policy

Lawrence Summers

1968年に多くの国で政治的混乱が広まったとき、アメリカのベトナム戦争を超えて、何かが動揺していた。

同様に、経済危機を欠いたまま政治的混乱が広まっている。Brexit、トランプ、ヨーロッパの極右、ロシアのプーチン、中国では毛沢東崇拝が復活した。世界はポピュリスト的な権威主義の復活を経験している。

世界経済の自信を回復するために、政府は中央銀行と協力し、投資を主導するべきだ。

Project Syndicate OCT 11, 2016

Mayday in the UK

PHILIPPE LEGRAIN

メイは今や、Brexit派のポピュリズムに服従した。

非リベラルな政治は、かつても見られた。ユーロ否定派、外国人嫌い、貿易も移民も排除する。グローバリゼーションの原則も失われるだろう。「国際エリート」に奉仕するとみなす自由な通商条約の相手はポピュリズムによっていなくなり、ナショナリズムは中国からの投資にもドアを閉ざす。

The Guardian, Wednesday 12 October 2016

Neoliberalism is creating loneliness. That’s what’s wrenching society apart

George Monbiot

The Guardian, Thursday 13 October 2016

Liberal internationalists have to own up: we left too many people behind

Timothy Garton Ash

2度目の大統領候補TV討論会を観て、友人が言った。「クリントンの問題は、彼女がリベラルのコンセンサスを体現するようになったことだ」、と。まさにそうだ。他方、反リベラリズムも結びついている。トランプ、Brexit投票、ポーランドのナショナリズム=ポピュリズム政権、プーチン。など、さらに続く。

リベラルな国際派は、不正直でデマに満ちた反リベラルなポピュリストたち、Trump, Nigel Farage and ポーランド元首相 Jarosław Kaczyńskiから、自らを切り離しておかねばならない。しかし、リベラリズムの欠陥、特に、過去4半世紀のグローバリゼーションに示された欠陥を正直に認めるべきだ。

ポピュリストたちは、自由市場型のリベラルなグローバリゼーションがもたらした経済的、社会的、文化的不満の混じった状態にアピールする。

経済的に失った者、他者に比べて生活水準を改善できなかった者たち。所得は停滞もしくは減少し、仕事は中国やインドに去った。低賃金の移民、急速に変化する経済に適応する若者、デジタル化した機会にも、仕事を奪われた。彼らはテレビ画面で、素晴らしく成功した人々の暮らしを観る。われわれは、ロシアやカザフスタンのような寡占体制の国家に住むのか? と問うのは、カール・マルクスではなく、保守派の政治学者Francis Fukuyamaである。「他者」を非難する文化が広まっている。フランスではイスラム教徒が、イギリスではポーランド人労働者が、人々の不満に直面する。トランプ主義者たちにとっての「他者」は、イスラム教徒であり、メキシコ人たちだ。

ポピュリストはこれらの不満をパラノイド型に転換する。しかし、不満の源は現実にある。その一部に、1989年の歴史的な勝利から生じた、自由市場における、グローバル化したリベラルな資本主義がある。

この世界を建てたのは、その通り、われわれリベラルな国際派である。官僚主義や国家介入、EUの多面的な性格について、ヨーロッパ懐疑派は常に非難しているが、ヨーロッパ統合とは、自由化、グローバリゼーション、障壁の打破であった。

では、すべての国の労働者たちが、ポピュリストに従い、互いに敵対して団結を叫ぶとき、これらのナショナリスト=ポピュリストによる反革命に対して、リベラルは何をなすべきか?

「包括的な成長」と、カナダのJustin Trudeauは言う。「すべての者のための経済」とクリントンは言う。しかし、どうやって?

ドイツの歴史家Jürgen Kockaは、資本主義という経済システムには、しばしば金融危機を契機に、危機(恐慌)に陥る性質がある、と述べた。それは広範な部門で人々の福祉を損ない、社会的・政治的な混乱に向かう。その効果が強まった現在を、資本主義の金融化段階、とKockaは呼ぶ。市場は常に、政治が提供する制度的枠組みの上でのみ機能する、と。

グローバル化したリベラルな資本主義のもたらす国境を超えた影響に対抗するため、より一層の国際協力が必要になる。ポピュリスト、ナショナリストが各地で反対方向に進むとき、リベラルな国際主義を強化することが、それを薄めることではなく、グローバリゼーションへの対応策である。


l  アメリカ大統領選挙

NYT OCT. 7, 2016

How Trump and Clinton Can Interpret This Jobs Report

Neil Irwin

FP OCTOBER 7, 2016

The 18 Essential Foreign-Policy Questions Clinton and Trump Need to Answer

BY FP CONTRIBUTORS

2人の大統領候補に何を質問するべきか?

Stephen M. Walt ・・・中国の経済的、軍事的なパワーは急激に増大したし、その領土的な主張はますます攻撃的になっている。アメリカは南シナ海の航行に関して中国の支配を阻止するべきか? そのために軍事力を行使するのか? もしそれを好まないなら、どのようにして中国の地域支配を抑えるのか?

NYT OCT. 7, 2016

Those Who Don’t Understand Trump Are Doomed to Repeat Him

Arthur C. Brooks

NYT OCT. 8, 2016

Tax Me. Please.

By VANESSA WILLIAMSON

課税に対する反対が1970年代以降の共和党政治を組織する原理になっている。しかし、アメリカ人は税金逃れを賢明なこととは考えない。納税を市民の倫理的な義務と考える。

The Guardian, Saturday 8 October 2016

A free market in tax is a grotesque reality

Nick Cohen

FT October 10, 2016

Donald Trump and the declining prestige of US democracy

Gideon Rachman

大統領選挙はアメリカ民主主義の最高の表現であるべきだ。しかし、第2回のTV討論は、性的な攻撃、脅迫、嘘、相互の侮辱、といった下品な主張が中心であった。

トランプの登場は、いたるところで民主主義への敬意を損なった。

FT October 10, 2016

Trump debate performance stems the bleeding — for now

Edward Luce

FT October 10, 2016

Trump country shrugs and changes the channel

Gillian Tett

FP OCTOBER 10, 2016

HILLARY CLINTON FOR PRESIDENT OF THE UNITED STATES

BY THE EDITORS OF FOREIGN POLICY

Foreign PolicyFP)編集部は、半世紀にわたって、どの大統領候補にも支持を示さなかった。われわれはFPの独立性と客観性を愛し、強く守ってきたからだ。われわれは、政治的な立場にかかわらず、すべての読者との関係を重視してきた。

まさにそれゆえ、今、FP編集部は中立の伝統を破り、ヒラリー・クリントンを次期アメリカ大統領として支持する。

われわれは読者に、安全保障と外交政策に関する考察、分析を提供してきた。このことの延長として、ドナルド・トランプがアメリカ大統領になることがもたらす脅威の甚大さを、明確にする義務があると感じている。その危険は、アメリカにとどまらず、国際経済、グローバルな安全保障、アメリカの同盟諸国、無数の罪もない人々に及ぶだろう。トランプの経験のなさ、屈折した政策思想、大統領には根本的にふさわしくない性格により、彼らが犠牲になる。

FP OCTOBER 10, 2016

Donald Trump Isn’t Campaigning to Run a Democracy

BY MAX BOOT

FT October 11, 2016

Toxin of association with the outrageous Donald Trump

FT October 11, 2016

How a President Hillary Clinton will handle a hostile Congress

Peter Orszag

NYT OCT. 11, 2016

Trumpism After Trump

Roger Cohen

Project Syndicate OCT 12, 2016

The US Election and the World

NABIL FAHMY

NYT OCT. 12, 2016

Trump and the Nuclear Keys

By BRUCE G. BLAIR

NYT OCT. 12, 2016

Can the U.S. Win This Election?

Thomas L. Friedman

まじめな話、なぜチケットを売らないのか? アメリカ大統領選挙を他の世界に向けて視聴者に反敗すれば、アメリカの債務を完済できるだろう。しかし、アメリカ市民はこの選挙から何を得るのか?

効果的な政府を得る、と言いたいところだが、われわれは改善すべき問題の多くを積み残し、指導力をもたらさず、この技術革新と温暖化が加速する時代に、最重要な諸問題の解決を次の4年間も待つだけで過ごす。

選挙ドラマが最悪の悲劇に終わるのを避けるには、何が必要か? まず、現在の共和党が変わることだ。そして、クリントンが大勝し、少なくとも、民主党が上院で多数を握る。そうなればクリントンは、大統領として議会・穏健派の共和党議員とも協力し、重要な政策を実現できる。たとえば、戦闘用銃器の規制、ゼロ金利を利用したインフラ投資、所得税・法人税に代わる炭素税の導入、オバマケアの改革、移民法の改正、税制と給付の改革、など。

FT October 13, 2016

American business finally backs the Democratic nominee

Roger Altman


l  ノーベル平和賞

FP OCTOBER 7, 2016

What Good Is a Nobel Peace Prize in Colombia?

BY SIOBHÁN O'GRADY


(後半へ続く)