IPEの果樹園2016
今週のReview
10/10-15
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ヨーロッパの左派政党 ・・・アメリカとロシアの停戦合意崩壊 ・・・アメリカ大統領選挙 ・・・金融危機後の低成長 ・・・アメリカにICBMsは要らない ・・・コロンビア国民投票の停戦案否決 ・・・メイの中道保守革命 ・・・ハンガリー,ポーランドの保守政権 ・・・国連平和維持軍 ・・・ウクライナ分割とドイツ再統一 ・・・グローバリゼーションと国民国家 ・・・国民投票の正しい使い方 ・・・日本の政治を動かす ・・・紛争を回避するTPP ・・・北朝鮮をめぐる制裁システム
[長いReview]
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主要な出典 Bloomberg, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times,
The Guardian, NYT: New York Times, Project Syndicate,
SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, そして、The Economist (London)
[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
l ヨーロッパの左派政党
The Guardian, Thursday 29 September
A Labour party of the future is
beginning to emerge
John
Harris
リバプールのカンファレンス・センターに労働党大会を見に行った。それはジェレミー・コービンの支配を祝う場所だが、いろんな人々が集まって議論している。最も中身があって楽しめたのは、転換した世界、5日間の「政治。芸術、文化の祭典」という集会だった。イギリス人の政治に関する非教条主義的な対話に参加した。出現しつつある断層線は何か、2時間にわたって議論した。
コービンの信奉者たちは、党内民主主義や、左派が権力を握るチャンスを考えている。しかし、多くの聴衆はそう思っていない。現在、労働党内で大きな声を上げている者たちと人々の間には、深い、見過ごされている相違がある。党の左派も右派も、この混乱から抜け出す力はない。
彼らはともに20世紀の政治党派であり、自分たちだけが真実を独占する、と考えている。コービンがとどまるべきか、辞任すべきか、と議論する。左派は1970年代の闘いを懐かしく思い、右派は1990年代の成功を回想する。私に言わせれば、イギリス左派の長期の未来に関して、どちらも何も語っていない。
FT October 3, 2016
The left in Europe needs to change
political course
Wolfgang
Münchau
政治評論家たちは、Brexitは起きないし、トランプが共和党大統領候補には指名されないし、さらに、ジェレミー・コービン労働党党首がイギリス首相にはならない、と言っていた。本当だろうか?
中道左派の指導者で成功した者たちは、特にBill Clinton in the US,
Tony Blair in the UK, Gerhard Schröder in Germanyであるが、彼らはグローバル資本主義に代わるものを提案したのではなく、その成果を再分配したのだ。それは左派ではなく、ほとんど穏健な中道派であった。
しかし、ある時代に成功したことが、いつも正しいとは限らない。たとえば、1920年代、30年代に、穏健な、体制を擁護する社会民主党はひどい失敗を犯した。その現代との共通点は、民主的政府が長い緊縮政策を続けたことである。主要政党がそれに代わる政策を示さないとき、過激な党派が支持されるようになる。
ワイマール共和国で、社会民主党SPDの支持率は、1919年の37.9%から、1933年の18.3%にまで減少した。この期間にSPDはさらに中道派になり、結局、デフレ政策を支持した。他方、この決定は、有権者の多くをナチスや共産党に投票させたのだ。
EU諸国の社会民主政党や社会党は、金融危機後に緊縮政策を支持し、今やその政治的な代価を支払っている。アメリカの民主党、イギリスのニュー・レイバー、ドイツの社会民主党SPDは、金融市場の規制緩和を熱心に推進したのだ。さらにSPDは、ユーロ圏の安定協定を支持し、財政均衡を求める憲法改正も支持した。彼らが歴史から教訓を学ばなかったのは明白だ。
世界金融危機はこの時代の最大の経済事件であり、政治を再定義する衝撃があった。
しかし、経済政策には顕著な変化が見られない。大規模な公共投資は提案されていない。主要政党で、これを主張するのはコービンの労働党だ。5000億ポンドの投資を約束している。あるいは、ドイツなら、東ドイツの共産党から変わった、左派党the Left partyだけだ。その提案を軽視してはならない。マクロ政策を転換し、金融危機後の停滞を抜け出す可能性がある。
ユーロ圏は複雑だ。こうした転換は、ドイツがユーロ債の発行や債務の貨幣化に強く反対する限り、ユーロ圏離脱を意味するからだ。それは過激な党派だけが主張しており、彼らの勝利を意味する。欧州委員会の提案もあるが、その中身はあいまいで、マクロ経済に無関係だ。
1980年代にそうであったように、政治は経済情勢に応じて調整する。それが1930年代のような形なのか、中道派の市場自由主義者たち支持しているコンセンサスの崩壊になるか、わからない。しかし、コービンを無視するのは間違いだ。
The Guardian, Monday 3 October 2016
If Europe's centre-left clings to
discredited ideas, it will die
Paul
Mason
スペイン社会党の党首が失脚した。それはヨーロッパ中で保守派の力を強めるだけだろう。
2度の選挙を経ても連立政権が組めず、政治的混乱が続いている。スペイン社会党はヨーロッパにおける社会民主主義の限界を示すものだ。ラディカルな左派、すなわちPodemos in Spain, Syriza
in Greece, Bernie Sanders in the US and Corbyn in Britainは、ネオリベラリズムを批判して登場するが、その代替案を持たない。唯一、ラディカルな左派が政権に就いたのはギリシャであるが、シリザは北欧の社会民主主義に屈服させられた。
第2次世界大戦後、ヨーロッパ左翼は再建された。それはソ連の影響を排除する防波堤になるからであり、またスペインやポルトガル、ギリシャの軍事独裁体制が崩壊し民主化されたからだ。中道左派にはほとんど優れた思想家が出なかった。グローバルな影響力を持ったのは、ハンガリー出身のアメリカ人、カール・ポランニーだけだ。ポランニーは、資本主義が自由な市場に向かう運動と、それに反対する運動(社会の諸利益に従い資本主義を規制する)という、「二重の運動」から成っている、と考えた。彼の思想は、社会民主主義が「労働者階級を保護する」というより、「資本主義を改善するために規制する」という目的を与えた。
保守派に近づいて政権に参加しても、それは資本主義を転換することには向かわない。すでに警鐘がなった。オーストリアの大統領選挙で、左派よりの中道候補をほとんど退け、極右の候補が当選するところまで支持されたのだ。ヨーロッパの中道左派は、教訓を学ぶべきだ。ネオリベラリズムに執着すれば、死滅する。
FT October 6, 2016
The side of Spain that seeks sound
governance
David
Gardner
バスク議会選挙で分離独立派が増えたことで、スペイン社会党の指導体制が崩壊した。再び連立政権は成立しなかった。ラホイ首相の指名に社会党が協力するには、与党の政治腐敗が問題になる。反体制の諸政党が有権者の不満を吸収するからだ。
バスク、カタロニアの排外主義的運動が、政権参加による社会民主主義の改革を葬った。
l アメリカとロシアの停戦合意崩壊
The Guardian, Friday 30 September
2016
Peace in Syria is possible. Here’s
how it can be achieved
David
Owen
NATOがトルコを支援して、トルコによる飛行禁止空域の設定と、人道支援、ISISの撃退に向け、シリアへの地上軍の投入を促すべきだ。
アメリカ政府は、トルコのクーデタ未遂事件にかかわったとされる、アメリカ亡命中のギュレンFethullah Gülenに関して、具体的な証拠を認めた。トルコ政府との関係を改善するだろう。ロシアを含む近隣諸国がシリア内戦に介入し、影響圏を拡大しているが、NATOとロシアの軍事交渉は影響するはずだ。
外交だけでシリア内戦は終わらない。
The Guardian, Tuesday 4 October 2016
Syria isn’t a cold war conflict: the
US and Russia can’t just fix it
Mary
Dejevsky
FT October 5, 2016
The prospect of a superpower war in
Syria is hardly far-fetched
Dmitri
Trenin
アサド政権のアレッポ攻撃に関して、アメリカはロシアも「戦争犯罪」に加担していると非難した。これに対して、プーチンはプルトニウム利用に関するアメリカとの2000年の合意を停止した。
シリアでロシア軍は、アメリカがオバマ大統領の任期最後にシリアで軍事力を行使することはない、と考えている。しかし、もしアメリカが反政府勢力に対して、ロシア軍の戦闘機を撃墜できる兵器を供給すれば、事態は変わるだろう。1980年代のアフガニスタンで起きたように。
2016年のアメリカ・ロシアによる軍事協力は、対立に向かう。西側のメディアで、すでにプーチンは、ユーゴスラビアのミロシェビッチ、イラクのサダム・フセイン、リビアのカダフィと同じ、悪辣な国家指導者のイメージになっている。
アメリカにも、ロシアにも、シリア内戦は終結できない。協力するしかないだろう。
FP OCTOBER 5, 2016
This Is How America Will
Accidentally Join the Syrian War
BY
MICAH ZENKO
NYT OCT. 6, 2016
Don’t Intervene in Syria
By
STEVEN SIMON and JONATHAN STEVENSON
アメリカとロシアのシリアにおける停戦合意は崩壊した。
この失敗と、アレッポで苦しむ人々の映像は、アメリカに再び軍事介入を支持する意見を刺激している。火曜日、副大統領候補Tim KaineとMike
Penceのテレビ討論は、ともにアメリカの積極的な行動を求めた。
しかし、それは間違いだ。アメリカが介入しても重大な戦争に巻き込まれないという時期ではもうない。遅すぎる。あるいは、ロシアやアサド政権と敵対する姿勢を貫けず、その後、立場を変えて弱腰だと非難されるだけだ。アメリカの目標は、市民の犠牲者を減らし、人命を救い、政治的な解決に向かう取り組みが続くように助けることである。停戦合意は、どれほど苦しいものでも、それを達成する最善の方法である。
モスクワは、明らかに、アサド政権の生存をシリアにおけるロシアの利益を守る決定的な目標と考えている。それはロシアが中東における地政学的なプレーヤーとして重要な役割を果たす前提なのだ。その結果、アサドはロシアに対する重要なテコを握り、いまだに化学兵器を自由に使用している。ロシアが停戦合意によって和平を促しても、アサドは反抗的な残虐さを抑えなかった。
アメリカは、ロシアがアサド政権に対して持つ抑制の効果を知らず、それゆえ、シリアで軍事的な関与を強めることは危険なのだ。
アメリカの介入支持論者は、市民をアサドやロシアの空爆から守る飛行禁止空域を設ける、という。しかし、それはロシア軍機を撃墜するリスクを生じる。まさに今週、ロシア軍は新しい防空システムをシリアに持ち込んだ。小規模な、目標を限定した空爆だけでシリアの行動を変えることはできないだろうし、介入のエスカレーションに向かう。もしくは、効果のない空爆を続けて、無能さを示す。
こうして紛争が激化し、国際的な圧力を受けて、アメリカがコストのかかる、終わりに見えない、感謝されない地上軍の投入に及ぶことを、国内世論は支持しない。アメリカを、国際秩序に不可欠の対抗とみなし、リベラルな国際介入主義を唱える者は、もはや1990年代ではない、ということを忘れている。
アメリカには明確なシリア政策がある。空爆と、アメリカが支援する反政府勢力、そして、可能な限りロシアとの協力によって、イスラム国家を敗退させることだ。人道支援を拡大する。持続可能な停戦と、アサドの政権離脱に向けた政治的以降に関する交渉を進める。それは不満の多い過程であろうが、それ以外の選択肢に比べて、唯一、意味のある方針だ。
オバマは、ロシアとの停戦合意に向けた交渉を再開せよ。
l アメリカ連銀
FT September 30, 2016
Four modifications to Fed’s current
posture
Larry
Summers blog
l アメリカ大統領選挙
FT September 30, 2016
America’s sour mood gives a false
impression of its state
Jacob
Weisberg
アメリカ大統領選挙は、オプティミズムを見失っている。レーガンがカーターを破って以来、楽観主義が悲観論を優越する、というのは政治の法則であった。しかし、トランプもクリントンもそうではない。
Project Syndicate SEP 30, 2016
Trump’s Magical Economic Thinking
SIMON
JOHNSON
NYT SEPT. 30, 2016
The Death of Idealism
David
Brooks
アメリカ大統領選挙は、ベビーブーマー世代の最年長者たちによる闘いとなった。しかし、70歳のトランプと68歳のクリントンは、まったく異なる時代を代表している。
トランプは1983年に、マンハッタンの5番街にトランプタワーをオープンした。1970年代の停滞を払しょくし、1980年代、資本主義は気力を取り戻した。ソ連を敗退させつつあった。
トランプは、今や、純粋の利己主義にまで退化した資本主義を代表する。他人を者のように扱い、嘘をついて捨てる。税金を支払わないことを自慢し、他人が支払えばよいと考える。住宅破産で利益を上げ、苦しむ家族のことなど考えない。市民生活という概念を全く知らず、市民としての責任を果たすなど考えたこともない。
トランプの精神とは、・・・何でも自分のものにする。だれもが自分の面倒を見ろ。
トランプはわれわれに、資本主義のチャンピオンという人々でさえ、道徳的な自制心がともなわなければ、資本主義がいかに腐食性の悪質なものか、思い出させる。指導者が約束を守らないとき、社会生活は不可能だ。
クリントンは、1969年に演説した。そこには1960年代の、たっぷりと心を鼓舞する、理想主義が示されていた。彼女は、一見、不可能なことも可能にする芸術としての政治を説き、社会の改造ではなく、人間お改造に向かうべきだ、と主張した。
クリントンは、信頼を回復するような社会を夢見た。人々を操作しない。社会的なエンジニアリングを考えない。
その詩的な、躍動する感覚は、クリントンの選挙キャンペーンに全く見られない。クリントンは恐るべき対抗者であるが、国民の抱える諸問題に対して人間的な姿勢を示せない。情緒的なつながりを感じさせない。
大統領になってしたいことを、彼女は多くのプロジェクトとして並べるが、公共財への情熱的なイメージは生まれない。それは利益集団へのプログラムであり、連邦支出による有権者の買収でしかない。
この1960年代と1980年代の革命を継承した2人の対決が意味するのは、社会的な、そして、経済的な個人の解放であり、コミュニティーの弱体化であった。そして2人の選挙キャンペーンは、理想主義を死滅させた。
皮肉なことに、ベビーブーム世代の継承者に求められる課題とは、理想主義を再生することである。アメリカは孤立や分断化の危機にあり、利己主義、冷笑主義、不信、自閉によって引き裂かれた社会の部品を再び継ぎ合わす必要がある。
高齢の2人のベビーブーマーからは、まったく、それを得られない。
FT October 3, 2016
Trump’s policy mix and the dollar
Gavyn
Davies
NYT OCT. 3, 2016
Donald Trump Trashes Nafta. But
Unwinding It Would Come at a Huge Cost.
Neil
Irwin
「アメリカ製」自動車を買うとき、あなたはメキシコやカナダで生産された部品が非常に複雑に組み合わさった自動車を買うだろう。電化製品やカーペットを買うときもそうだ。
これがNAFTA発効から23年を経た世界である。こうした緊密な統合化が進んでいる事態は、トランプの言う「アメリカが結んだ最悪の条約の1つ」を破棄することが容易ではない、というのを示している。それはアメリカ人の数百万人の雇用を支える産業が混乱することを意味する。
Dellコンピューターを組み立てる台湾Faxconn工場で、メキシコ人労働者たちが働いている。製品のデザインはテキサスで行われ、世界中で販売される。低賃金コストのおかげで、Dellは中国のLenovoと競争できる。そして、そのおかげで、Dellはアメリカ国内で多数のエンジニアや販売員に高給を支払い、雇用できている。
同様の現象がほかでも見られる。ヨーロッパでは、ドイツの製造業が世界市場の競争で成功している。しかし、ますます多くの労働集約的な、付加価値の少ない自動車部品、その他の製造業品が、賃金の安い、ポーランドやハンガリーのようなEU諸国から流入する。
確かに自動車産業のアメリカにおける雇用者数は減少したが、2010年以来、アメリカ国内の新規プロジェクトに770億ドルが投資された。メキシコに投資されたのは260億ドルである。
NAFTAを破棄すれば、企業が調整できない、ということではない。こうしたネットワークが発達した理由が失われ、その再調整にはコストが抱える、ということだ。NAFTAには欠陥もマイナス面もある。しかし、NAFTAのないアメリカ経済は、再調整されるか、世界経済の孤島になる。
NYT OCT. 4, 2016
Trump, Taxes and Citizenship
David
Brooks
FT October 5, 2016
US election: The rise of the Trump
Democrats
Demetri
Sevastopulo in Lisbon, Ohio
FT October 6, 2016
Demagogues reach beyond the bigots
Philip
Stephens
NYT OCT. 6, 2016
Global Trade War, Trump Edition
Thomas
B. Edsall
FT October 7, 2016
The cold war past haunts our
electronic future
Gillian
Tett
l 金融危機後の低成長
Project Syndicate SEP 30, 2016
Escaping the New Normal of Weak Growth
MICHAEL
SPENCE
金融危機後の低成長は、よく言われるような、生産性の上昇率が低いからではない。むしろ、世界経済の問題が、複雑に絡み合った、多数のアクターに関係している性格を帯びているため、ナッシュ均衡の状態に落ちって動き出せないことである。そして、危機後の救済策や金融緩和はすでに限界に達している。
金融政策だけで高い成長経路を実現することはできない。それは基本的に、家計や金融部門、政府がバランス・シートを回復するための時間を与えるに過ぎないのだ。しかし、政府は財政刺激策や構造改革に向けた十分な行動を取らない。それは、日本、ヨーロッパの一部の諸国で、債務の増大によって制約されているからだ。
そこには政治的な動機もある。金融政策に負担を求めるばかりで、構造改革、債務削減、銀行の再編・自己資本強化、といった難しい政策には手を出さない。反発を恐れるからだ。そして、中期的には成長を妨げるような、短期の刺激や弾力性を優先する。
中央銀行は金融緩和から抜け出せない。それを前提に、他のアクターも行動しようとしない。成長が損なわれるほど、中央銀行の信認は失われ、さらには独立性も傷つけられる。投資家たちはますます利回りの低下によりレバレッジに頼り、資本移動が浮動性を高める。
かつて政治指導者たちは、一時的に成長を損なうような、構造改革と社会保障改革に取り組む勇気があった。それが将来の財政を安定化したのだ。一般に、財政当局は、金融当局と、国内。国外で協力を組織する必要がある。
そのような行動は、低成長の政治的な帰結、すなわち、不平等の拡大、国際貿易や投資への不信、中央銀行の独立性喪失が耐え難いほどになって、採られるだろう。その行動が直ちに採られないことで、ポピュリストの指導者たちが登場する。
その意味で、ポピュリズムは現状維持を許さない有益な圧力になっている。ただし、もっと悪い結果をもたらす恐れもある。
l アメリカにICBMsは要らない
NYT SEPT. 30, 2016
Why It’s Safe to Scrap America’s
ICBMs
By
WILLIAM J. PERRY
近年、アメリカとロシアは冷戦時代の核兵器を再建し始めた。世界を新しい軍備拡大競争の瀬戸際に押しやっている。しかし、われわれは20世紀の有害なドラマを再現する必要などない。
アメリカの核戦力維持・再建計画は、不必要な規模であり、無駄が多い。30年間で1兆ドルを支出する。
アメリカの地上に配備された大陸間弾道弾ミサイルICBMsは、冷戦時代の基本政策であったが、安全に放棄できるはずだ。それは間違った情報で偶発的な核戦争を生じる危険がある。もし敵がアメリカに向けてミサイルを発射したと感知したら、大統領は自国のミサイルが破壊される前に、ICBMsの発射を決断しなければならない。考える時間は30分もない。
40年ほど前に、国防次官補であったとき、私は間違った警報を経験した。深夜に起きて、私は国防省のコンピューターがソ連の発射した200基のICBMsを映し出すのを観たのだ。文明が消滅する瞬間を想像する恐怖を味わった。
今や、アメリカは潜水艦発射型ミサイルとステルス戦闘機によって守られている。われわれはその正確さと防衛力に自信を持っている。核兵器に過剰な投資をすることや、軍備拡大競争を刺激することは間違いだ。むしろアメリカは抑止力を維持する水準に核保有を抑制するべきだ。そしてロシアにも同じことをするよう説得する。
両国はそれによって大きな利益を得るだろう。軍拡競争を避ける唯一の道は、それを拒否することだ。
l シモン・ペレス
NYT SEPT. 30, 2016
Shimon Peres: Not Just a Man of
Peace
By
TOM SEGEV
NYT OCT. 3, 2016
Shimon Peres: The Peacemaker Who
Wasn’t
By
HANAN ASHRAWI
l インド・パキスタンの水戦争
FP SEPTEMBER 30, 2016
Why the India-Pakistan War Over
Water Is So Dangerous
BY
MICHAEL KUGELMAN
l コロンビア国民投票の停戦案否決
FP SEPTEMBER 30, 2016
Why Colombia’s Government
Compromised for Peace
BY
JAVIER CORRALES
FT October 2, 2016
Colombia does a Brexit with No vote
to peace deal
John
Paul Rathbone in Bogotá
コロンビア政府と反政府ゲリラFARC (Fuerzas Armadas
Revolucionarias de Colombia) との和平合意が、国民投票によって否決された。それはBrexitに似ている。
反対派は対案を示していない。次に何をするべきか、わからないのだ。0.4%という僅差だった。再交渉によって条件を改善できるのか?
11月のアメリカ大統領選挙でも、同じようなショックは起きるのか?
NYT OCT. 2, 2016
Colombia Peace Deal Is Defeated,
Leaving a Nation in Shock
By
JULIA SYMMES COBB and NICHOLAS CASEY
The Guardian, Monday 3 October 2016
Why Colombians voted against peace
with the Farc
Isabel
Hilton
否決された理由はいろいろある。この国の地理的・政治的な分裂状態。サントス大統領の支持率は高くない。ゲリラの指導者を称賛することは受け入れがたい。和平合意でサントスは前面に立ち、不満を強めた。もしサントスではなく、犠牲者たちが和平合意を提示したら、投票結果は違っただろう。
反対派を指導したウリベ元大統領は、今も支配地域で高い支持を得ている。ウリベが反ゲリラ闘争を強化し、犠牲者も増えた。しかも暴力的な土地収奪を行い、和平合意では返還を求められている。
反対した人々は考える。FARCの得た利益は不当だ。ゲリラが政治参加することも許せない。左派の独裁政権に向かう恐れがある。庶民は犠牲になって、暴力を振るった者たちが利益を得た。犯罪者たちが過去の罪を問われない。
内戦と平和とを選択するのではなく、もっと違う条件の平和を求めた。これまで誘拐や暗殺を繰り返してきたFARCの指導者が、今さら愛を訴えても、支持されない。
FT October 3, 2016
Onus on Colombia’s No camp for
‘better’ accord
FP OCTOBER 3, 2016
What the Hell Just Happened in
Colombia?
BY
ELIZABETH DICKINSON
Bloomberg OCT 3, 2016
Colombia Needs a Plan B for Peace
NO
WE CAN'T.
FP OCTOBER 3, 2016
U.S. Scrambles to Support Santos
After Shock Defeat of Peace Deal
BY
JOHN HUDSON
NYT OCT. 4, 2016
Resurrecting Colombia’s Peace Deal
By
THE EDITORIAL BOARD
和平合意は、完全とは言えないが、内戦の原因にまでさかのぼって解決するロードマップを示し、和解と、内戦の犠牲者にわずかでも正義とをもたらす、大きな枠組みを提示するものだ。
しかし多数の国民は、すでに弱体化した、国民が憎む反政府武装勢力に対して、サントスは譲歩し過ぎた、と考えた。反対派を指導したウリベ元大統領は、ゲリラの戦闘員には特別法廷で犯罪を裁き、コミュニティー・サービスに従事し、異動を制限するが、投獄はしない、という特赦を与えることを提案する。また、FARCに議席を与え、正当に転換するのを助ける合意にも、批判が強い。
NYT OCTOBER 5, 2016
Can Colombia Overcome Fear to
Achieve Peace?
By
JAIME ABELLO BANFI
The Guardian, Thursday 6 October
2016
A peace deal in Colombia is still
possible – as my Northern Ireland experience shows
Jonathan
Powell
コロンビアの国民投票で和平合意が否決されたと聞いたとき、私は胸苦しかった。この5年間、サントス大統領の交渉に助言してきたからだ。1300万票の6万票しか差はなかったが、否決されるとは信じられなかった。
その前の月曜日、Cartagenaでの和平協定調印式に、私は2人の女性と並んで座っていた。彼女たちは息子を内戦で亡くし、その遺影を胸に抱いていた。調印のとき涙を流した彼女たちが、その後、喜んで立ち上がった。それはFARCの指導者Timochenkoがコロンビア国民に対して、彼らが内戦中に行ったことを許してほしい、と願ったときだ。それは、20万人を超える犠牲者、数百万人の難民をもたらした内戦が終わる、という希望を見出したときだった。
和平合意に国民投票を強いる法的な理由はなかった。しかし、私は大統領の判断を支持した。合意文書を実行することは非常に難しいとわかっていたからだ。
だが、特にBrexitが起きてから、私は国民投票を心配し始めた。世論調査だけではわからない。政権の支持は低かった。右派のウリベ元大統領が指揮する強烈な反対運動が、この合意を攻撃していた。
私は投票率が心配だった。世論調査で60対40の差により承認されると予想されるとき、わざわざ平和のために時間をかけて投票所へ行くだろうか? 実際、投票率は38%だった。
1998年の北アイルランドに関するグッド・フライデー合意を思い出した。ナショナリストの支持を得ていたが、ユニオニストからの支持は不明確であった。その重大さに気付いて、われわれはトニー・ブレアのすべての時間を使って支持獲得に運動した。ジョン・メージャーも協力した。奮闘の結果、ユニオニストのかろうじて半分から支持されたのだ。
内線は双方の信頼を破壊した。合意を相手側が実行して初めて、信頼は回復する。言葉だけでは無理だ。しかも人々は合意に自分たちの条件を求める。コロンビア国民の多くは、ゲリラ指導者を長期に投獄し、彼らには政治活動を許すべきでない、と考えている。
北アイルランドでもそうだった。シン・フェインのGerry Adams and Martin
McGuinnessについて、同じことが言われた。しかし、合意とは双方に譲歩を求めるものだ。一方的な要求だけでは成立しない。あるいは、そんな合意は続かない。30年間投獄されるとわかって、ゲリラの指導者たちが調印することはない。この合意では、移行期の正義、という革新的な条件が盛り込まれた。
サントスは、和平合意に代わる道はない、と表明した。この後退を経て、より強い合意を結ぶことだ。地理的に分断され、政府はその一部を統治できるだけで、暴力が支配する国で、和平合意が失われれば、FARCが支配権を失った真空地帯に麻薬ギャングが支配力を強め、あるいは、かつての準軍事組織が殺戮を始めるリスクは常にある。
国民投票の敗北後、サントスは、和平合意は残る、と述べた。FARCも、ジャングルに戻って内戦を再開することはない、と述べた。ウリベでさえ、平和を支持し、FARCは暴力から守られる、と述べた。
内戦は再発しない。平和は永久にここにある。
VOX 06 October 2016
How not to build a state: Evidence
from Colombia
Daron
Acemoglu, Leopoldo Fergusson, James Robinson, Dario Romero, Juan F. Vargas
(後半へ続く)