前半から続く)


l  1回のテレビ討論

Bloomberg SEP 25, 2016

The Questions That Clinton and Trump Should Be Asked

Albert R. Hunt

Bloomberg SEP 26, 2016

Trump Takes the Bait and Hooks Himself

Jonathan Bernstein

The Guardian, Tuesday 27 September 2016

The Guardian view on the US presidential debate: Trump fails the test

Editorial

1回のテレビ討論は、明白に、クリントンがトランプに勝った。しかし、ニューメディアが支配する新しい世界で、伝統的な基準がどこまで通用するか、である。

FT September 27, 2016

How the west might soon be lost

Martin Wolf

FT September 27, 2016

Trump fails to clear low bar in the US presidential debate

Edward Luce

分裂した政治世界で、有権者たちは分割された画面だけでなく、分割された現実認識を生きている。2人の支持率は今後もスウィングするだろう。

NYT SEPT. 27, 2016

Clinton’s Victory Without Breakthrough

Roger Cohen

FP SEPTEMBER 27, 2016

Damned by Faint Trump

BY KORI SCHAKE

Bloomberg SEP 27, 2016

Trump's Strengths Didn't Help Him This Time

Ramesh Ponnuru

Bloomberg SEP 27, 2016

Clinton Proves It Pays to Prepare

Margaret Carlson

FT September 28, 2016

America’s dystopian presidential debate

2人のテレビ討論を聴いた人は、アメリカが破局の瀬戸際にあると思うだろう。トランプによれば、アメリカは、第三世界の国のように、その雇用を中国などに大規模に奪われて苦しんでいる。暴力は制御不能になっており、アメリカの各地が内戦状態にある、というのだ。

クリントンの話は、それほど情緒的ではないが、アメリカが開放的な世界経済による脅威にさらされている、という前提を共有する。彼女はTPPを支持する姿勢を示さず、もしバラク・オバマを継承した場合、アメリカが世界に対してどのような姿勢を示すか、明らかにできなかった。

2人がアメリカ人に向けて伝えたメッセージは、「恐れよ、もっと恐れよ。」 世界はそのことに注目しなければならない。

アメリカ経済の相対的な健全さと、特に、ヨーロッパや日本に比べて、アメリカ政治を翻弄するディストピアとのギャップは、大きな謎である。トランプの指摘に反して、アメリカの失業率はヨーロッパの半分である。2008年の大不況から速やかに回復したし、移民流入は雇用を奪うことも、賃金を下げることもなく、メキシコからの非合法な流入は逆転した。アメリカ人の所得の中央値は、長い低迷を終えて、昨年やっと上昇した。不況の時期に貿易や外国人をスケープゴートにすることはあるが、景気は回復している。

アメリカの不満とは何か、である。中産階級の所得水準は、まだ、今世紀の初めよりかなり低い。アメリカ経済の成長は、上位10%の富裕層、特に最上位の1%に集中している。1990年代の生産性急上昇は再現しないだろう。工場労働者の将来は特に荒涼としている。彼らの憤慨がトランプへの支持を高めたのだ。

トランプもクリントンも、20世紀半ばの工場労働者の快適な雇用を取り戻せる、と言うが、それは幻想である。労働者たちが苦しむのは、アメリカ国内の分配が悪化した政であって、その原因は北京ではなくワシントンにある。アメリカの税制が間違っているのだ。

アメリカが挑戦するべきは、繁栄する諸都市を21世紀の技術革新に至るハブにすることだ。外国人を非難するのは政治的に有利かもしれないが、愚かな政策と経済停滞の深化につながる。

FT September 28, 2016

Trump is right to take aim at the ‘political’ Fed

Judy Shelton

FT September 28, 2016

Donald Trump: excuses to take you to the end of the world

Robert Shrimsley

FP SEPTEMBER 28, 2016

The Mytilenean Dialogue From 428 B.C. Explains Who Really Won the Trump-Clinton Debate

BY ROBERT ZARETSKY

FT September 29, 2016

Donald Trump is living in his own world

Jurek Martin

The Guardian, Thursday 29 September 2016

Do you live in a Trump bubble, or a Clinton bubble?

Timothy Garton Ash

ドナルド・トランプは5分ごとに嘘や間違ったことを言う、と最近の分析は述べている。今年のテレビ討論は、アメリカのメディアがこのナルシスティックな、自慢する、虚像の、無知な、そして危険なデマゴーグを、有権者にどのように伝えるべきか、という論争でもある。メディアに起きていることが、その問題の一部なのだ。

ニュー・ヨーク・タイムズでさえ、その社説で、トランプのことを「アメリカ現代史で、主要政党が出した最悪の候補者」と書いた。彼は国内の市民的な平和を乱し、国外においてアメリカの地位を脅かす、と。

残念ながら、メディアが立場を示すことは、アメリカ民主主義の構造的な腐食を加速することになるだろう。自由な表現を支持する議論は、民主的な自治に必要なものと考えられてきたことを示す。市民たちは関連するすべての議論や証拠を知ることができる場合だけ、自分たちで選択して、統治者を決めることができる。まず発言し、それから投票する。だから双方の議論を聴くべきなのだ。

しかし、月曜日のテレビ討論は有権者が共有する例外的な短い時間である。彼らはその他の時間を、自分たちの共鳴ボックスのような仲間との情報交換に費やす。それはインターネットが与える「繭(まゆ)」のような、「フィルター」のような条件だ。

トランプの支持者たちにとってそれは、Fox News, rightwing radio talk shows, internet sources such as Breitbart、そしてFacebookの友人たちだ。他方、クリントンの支持者には、MSNBC, National Public Radio, Public Broadcasting Service, そして Slate the Huffington Post、仲間たちのソーシャル・メディアがあり、今ではthe New York Timesもそうだ。

インターネットがメディアの伝統的なビジネスモデルを破壊して以来、だれもが関心を集め、マウスをクリックしてもらうために情報を流し、メディアは伝統的な株式取引所の立会場と同じものに変わった。すなわち、絶叫、絶叫、絶叫、である。

ニュアンスを考え、バランスを取り、証拠を基に報道する、というのでは聴き手を集めることができない。異なるリアリティを作るため、事実、証拠、専門家の意見よりも、神話、並外れた誇張、嘘、強烈な、単純化された物語が重要になる。トランプは“Make America great again”と連呼し, EU離脱派は“Take back control” と叫んだ。プロパガンダの歴史が示すように、嘘は、心がマヒするほど繰り返すことで支配的になり、真実を締め出すことができるのだ。

VOX 29 September 2016

Evaluating Trump’s trade policies

Gary Hufbauer, Euijin Jung


l  メイのBrexit

The Guardian, Monday 26 September 2016

A hard future awaits for Theresa May without a vision for soft Brexit

Anne McElvoy

Project Syndicate SEP 26, 2016

Managing the Economic Consequences of Nationalism

MOHAMED A. EL-ERIAN

イギリスが予想外のEU離脱を決めた6月の国民投票の後、世界中の人々がBrexitの始まりを詳しく知りたいと思った。それはまた、世界各地に現れているナショナリストの改革論がどうなるかを考えるヒントになるはずだった。

ドイツのAfD、フランスのル・ペン、アメリカのトランプ、など、有権者がナショナリズムを支持して彼らを選んだ場合、何が起きるのか?

しかし、Brexitの投票後、経済や金融は急速に平静さを取り戻した。問題は、次にどうなるか、である。その平静さは、もちろん、薄っぺらなものだ。国民投票の前の予測では、離脱が決まれば甚大な経済的苦痛と経済の混乱が起きるだろうと言われた。

今のところ混乱が封じ込められているのは、メイ首相がBrexitの過程を漸進的に進めるアプローチを選んだからだ。また、イングランド銀行も経済に流動性を供給し、市場参加者に金融の安定性を保ち、市場の異常な動きによって無秩序な状態になることを回避する、と約束した。

個のイギリスの示した平静さを維持する能力は、他のケースでも政治的アクターがショックや意外さを管理すること、その正しいアプローチを示している。

さらに、将来のBrexit過程に関する詳細を決めるのは秘密交渉とし、それを公表するとき、力強い、包括的な成長と、金融の安定性を高める、信頼できる国内改革の一部として示すべきである。

飛行中に、飛行機のエンジンを取り換えるのは至難である。

FT September 27, 2016

Hard Brexit is not inevitable

Peter Mandelson

欧州委員会は、イギリスができるだけ早く離脱してほしいと考えている。イギリス政府の強硬派は、できるだけ完全にEUから離脱したいと考えている。

双方は交渉が始まる前から、その条件を破滅的なものにしている。もっと双方の緊密で協力的な関係を築くために焦点を絞る者はほとんどない。しかし、その代価にかかわらず離脱を推進する者たちは、そうした熱意を冷ますべきだ。

The Guardian, Thursday 29 September 2016

Who needs a coherent plan for Brexit when you have dreams and fantasies?

Polly Toynbee

Project Syndicate SEP 29, 2016

Saving Europe By Reversing Brexit

ANATOLE KALETSKY

「危機を無駄にするな」というのはEU1つの原則である。しかし、同時に5つの危機は多すぎる。Brexit、難民、財政緊縮、東部南部の地政学危機、中欧の「非リベラル民主制」。

もし危機によってEUが消耗しつくすことを恐れるなら、Brexitの妖精をボトルに戻そうとするだろう。しかし、それには海峡を挟んで多くの不可能なことを合意しなければならない。

イギリスでは投票後に失望が広がっている。また、EUでは民主的な圧力に対して、プラグマティックな妥協や政府間取引を行うほうが、各地の有権者に積極的なシグナルを送れるだろう。

1に、Brexitと難民危機を合わせて、移民と社会保障に関する修正を認める。第2に、難民危機とユーロ危機を合わせて、新しい財政ルールを認める。第3に、移民改革と「非リベラル民主制」を合わせて、EU財政支出の優先順位と外交を変更する。最後に、EUの民主的な正当性を高めるため、ユーロ圏とEU機関との緊張を解消する。

それらはいずれも不可能な改革に思える。しかし、Brexit以前はEU離脱も不可能なはずだった。革命的な時期には、不可能なことが数か月で実現するものだ。


l  技術革新を恐れるな

FT September 26, 2016

Men without work

Larry Summers blog

Project Syndicate SEP 28, 2016

How Scary is Disruptive Technology?

MARTIN FELDSTEIN

技術革新の流れによって、ドライバーのいない自動車が道路にあふれ、AIとロボットがホワイトカラーの職業を占拠するようになりそうだ。人の雇用は減って、労働者の余剰が増大する、と予測するアナリストも現れる。

しかし、私は、アメリカが新しい技術にも容易に適応する、と楽観している。勝者と敗者は出るが、アメリカ人全体は生活が改善するし、職を失った労働者も他の分野で雇用されるだろう。大量失業が起きると心配する理由はない。

その根拠は何か? 歴史である。急速な技術革新は歴史的に新しい現象ではない。そのたびに、景気循環を経てアメリカ経済は完全雇用に復帰した。1950年には1300万人を雇用した製造業部門が、機械化により、現在では900万人しか雇用していない。製造業の生産額は75%も増えている。

コンピューターはさらに広くサービス部門でも労働者に代わるだろう。しかし、ロボットやコンピューターの利用は労働時間を減らし、余暇を増やす。人々は生活の質を高め、あるいは高齢化して、ますます多くのサービスを求める。現在、アメリカの雇用の81%はサービス部門である。

アメリカの失業率がEUの半分であるのは、多くの理由が関係しているが、特に、アメリカの労働法や労働組合が少ないせいで、被雇用者や企業に新しい技術の採用を妨げない、ということが重要だ。アメリカが比較的自由な労働市場を維持するなら、労働者たちは新技術にも積極的に調整するだろう。


l  シリア内戦

FT September 26, 2016

We are all Stalinists on Syria

Gideon Rachman

シリア内戦、トランプの暴言、メルケルの苦境。世論はニュースで大きく変化する。そして、時間が経てば、逆にも振幅する。それゆえ世論に訴えて、外交政策を決めることはできない。

国内のリベラルな民主主義を守るため、政府は外交におけるリベラルな民主主義の価値を否定する。

NYT SEPT. 26, 2016

To Save Mosul, Arm the Sunnis

By JAMAL AL-DHARI

FT September 28, 2016

Russia aims to turn Aleppo into another Grozny

David Gardner

シリア軍は弱体で反政府軍に敗北し、ロシアは十分な規模で地上軍を展開することができない。そこで、シリア東部の反政府勢力を滅ぼすために、ロシア軍はチェチェンで行ったように都市インフラの破壊を再現する。水や食料の供給を破壊し、病院も爆撃する。

ロシアの国連代表は、それでも、シリア軍の軍事的な抑制を称え、シリア政府は和平を望んでいる、と主張する。

ロシアのプーチン、イラン、トルコ、そしてアメリカのオバマ。彼らはシリアを地政学的な中東の操縦桿として奪い合うが、その結果は、すべてを滅ぼす。


l  中国の債務と不動産市場

Project Syndicate SEP 26, 2016

Keynes and Hayek in China’s Property Markets

ANDREW SHENG and XIAO GENG

中国の不動産市場は、再び、バブルなのか? 市場の調整は終わったのか? 金融危機後のケインズ主義的な需要維持を重視した政策と、土地利用や住宅建設規制によって、住宅価格は高騰していた。

しかし、地域によって、不動産価格の変動には大きな違いがある。中国の不動産市場には、まだ政策による介入の余地が多くある。

NYT SEPT. 26, 2016

Hong Kong and the Realities of China’s Rise

By YUEN YING CHAN

VOX 27 September 2016

Why a banking crisis in China seems unavoidable

Edoardo Campanella, Daniel Vernazza

中国のGDPに対する債務の増大は、銀行危機を予想させる。これまでの9つの激しい金融危機に至ったケースNorway (1990), Sweden (1991), Finland (1991), Japan (1992), Mexico (1994), UK (2007), US (2007), Ireland (2008), and the Netherlands (2008)は、その水準を示している。危機の前に、概ね、その比率が8倍を超えていた。

現在、中国は30倍である。政府の行動が必要だ。

FP SEPTEMBER 29, 2016

How to Fix China’s Crooked Congress

BY THOMAS KELLOGG

(chinadaily.com.cn) 2016-09-29

RMB’s SDR inclusion a new chapter as global currency

By Peter Wong Tung Shun


l  モスクワと国際政治

FP SEPTEMBER 26, 2016

Moscow Looks to Gain in Moldova’s Election Amid Anger Over Corruption

BY REID STANDISH

Bloomberg SEP 26, 2016

Russian Economy Takes Hit From Putin's Grip

Leonid Bershidsky

Project Syndicate SEP 27, 2016

Trump Through Russian Eyes

NINA L. KHRUSHCHEVA

NYT SEPT. 29, 2016

Vladimir Putin’s Outlaw State

By THE EDITORIAL BOARD


l  地球を救え

The Guardian, Tuesday 27 September 2016

No fracking, drilling or digging: it’s the only way to save life on Earth

George Monbiot


l  コロンビアの和平合意

FT September 27, 2016

Colombia: ‘Leave the rifles behind’

Andres Schipani and John Paul Rathbone


l  サウジアラビアのショック療法

Project Syndicate SEP 27, 2016

Saudi Arabia’s Shock Therapy

NASSER SAIDI

石油価格の下落で財政赤字と経常収支赤字を急増させているサウジアラビアは、一種のショック・セラピーとして、昨年、国家改造計画を発表した。それは石油を産出する他の諸国Norway, Malaysia, Indonesia, and Mexicoをモデルに、経済の多様化を目指すものだ。そのためには新しい社会契約、外国資本への開放、法の支配や説明責任を実現した、高い透明性を必要とする。


l  スポーツ,強欲,汚職

The Guardian, Wednesday 28 September 2016

As long as greed governs global sport, corruption will be endemic

Simon Jenkins


l  シモン・ペレスの訃報

FT September 28, 2016

Shimon Peres, Israeli leader, 1923-2016

John Reed and Avi Machlis

Project Syndicate SEP 28, 2016

Israel’s Last Founding Father

ITAMAR RABINOVICH

NYT SEPT. 28, 2016

Peres: 93 Years Young

Thomas L. Friedman

ペレスShimon Peresはナイーブではなかった。彼は、イスラエルの核兵器開発計画を立てた人物として、一般に認められている。弱冠29歳で国防省の局長となった。何度も閣僚となり、首相、大統領にもなった。彼は、中東が北欧ではない、と知っていた。イスラエルは無慈悲な敵に囲まれており、ユダヤ人がこの地域に自分たちの国を築き、維持するとしたら、敵が無慈悲である限り、自分たちも無慈悲になるしかない、という意味だ。しかし、彼は話がそれで終わることを拒んだ。

初めはイスラエルの壁を多く築いた人物であるが、真の安全保障は壁ではなくウェブで達成される、と信じた。すなわち、イスラエルがパレスチナやアラブ諸国と関係の網の目に入ることで、平和は得られるのだ。

NYT SEPT. 28, 2016

Shimon Peres, the Realist Dreamer

By TZIPI LIVNI

国民から裏切り者と呼ばれ、「オスロの犯罪者」という叫びを聴いた。その叫びは彼を傷つけた。

しかし彼は平和を求め、説得した。すべての指導者は彼から教訓を学ぶべきだ。Follow your inner compass no matter what. 政治家たちは明日の朝刊の見出しを考えるが、真の指導者なら歴史の書物について考えよ。

最新の3者会談(イスラエル、ぺレスチナ、アメリカ)の席で、私は結論した。・・・“history is not made by cynics. It is made by realists unafraid to dream.” その時、私はペレスのことを考えたわけではない。しかし、彼の訃報に接して、最初に思ったことはそれであった。

FP SEPTEMBER 28, 2016

Can Israel’s Peace Movement Survive the Loss of Shimon Peres?

BY DEBRA KAMIN

Bloomberg SEP 28, 2016

Shimon Peres, Model Public Servant

NYT SEPT. 28, 2016

Israel’s Philosopher-Politician

By SERGE SCHMEMANN

NYT SEPT. 28, 2016

Israel Without Shimon Peres? In Many Ways, His Dream Faded Long Ago

By ISABEL KERSHNER

NYT SEPT. 29, 2016

Peres and the Passing of Hope

Roger Cohen

ペレスの長い生涯で分岐点となったのは、199511月、ラビンが暗殺されて、ペレスが首相になったときから、1996529日の選挙までの期間であった。ペレスはネタニヤフに敗北した。もしペレスが勝利していたら、オスロ和平プロセスは成功し、彼は平和の夢想家ではなく、その構築者として死んだだろう。

それから半年、ペレスは逡巡した。

19961月、ハマスの指導的な指揮官がガザで殺害され、続く2か月に、パレスチナ人の一連の自爆攻撃がイスラエル人に対して行われた。それらの事件がペレスの政治力を弱め、オスロ・プロセスを葬った。また、ペレスはレバノンに対する、何も結論の出ない、大規模な爆撃を始めた。ペレスは和平から安全保障にイメージを変えようとしたが、それは彼の信用を損なうだけだった。ネタニヤフの勝利は、50.4%49.5%という僅差であった。

FP SEPTEMBER 29, 2016

What Would Shimon Do?

BY DENNIS ROSS


VOX 28 September 2016

Conceptual challenges in international finance

Stefan Avdjiev, Robert McCauley, Hyun Song Shin


l  壁のある世界

Bloomberg SEP 28, 2016

All Border Walls Have Something in Common

Leonid Bershidsky

この2日間、私はBrownsville, Texasの国境周辺を自動車で移動した。今や世界各地で、40以上の国が、こうした壁の建設を行っている。

人々の移動を妨げ、コミュニティーを分断する壁には、類似した特徴がある。ドイツの心理学者Dietfried Mueller-Hegemannは、1973年に出版した本で、「壁の病い」the Wall Diseaseと呼んだ。ベルリンの壁の近くに住んでいた東ドイツの住民には、鬱症状、アルコール依存、その他、生活を嫌う態度が、壁から離れた住民よりも多く見られた。

世界のどこでも、住民たちは壁を嫌う。壁の存在は迷惑で、人間性を損なう。そして、壁は意図された目的を達成しない。実際には、壁によって移民・難民をとらえやすくし、あるいは、誘導するだけだ。ベルリンの壁は、どれほど厳しい警備でも、人々は超えることができることを示した。

実際に建設されるとき、壁の性格は変わってしまう。また、壁には、それを正当化するために、様々な名前が付けられる。

安全保障や生活の質を理由に壁を築くが、問題を解決するには、壁ではなく合意が必要だ。EUとトルコが合意したように。それには政治家の指導力、長期のビジョン、技量と決意が求められる。壁の建設について熱心に議論するのは、その国に、こうした重要な政治力がないことを示す。


l  社会保障

Bloomberg SEP 28, 2016

Affordable Housing Is Easy. In Theory.

Megan McArdle

Bloomberg SEP 29, 2016

Pensions Fly Only If You Believe They Can

Megan McArdle


l  ヨーロッパの多極政治

Project Syndicate SEP 29, 2016

Managing a Multipolar Europe

MARK LEONARD

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The Economist September 17th 2016

A giant problem

Special Report: Companies – The rise of superstars

British politics: Britain’s one-party state

The Labour Party: Salvaging Jerusalem

Tibet: The plateau, unpacified

Buttonwood: Trust busting

(コメント) インターネットという技術が企業の環境を根本的に変え、グローバルな企業の集中が起きています。それは、企業が取引を内部化するのは市場よりもコストを安くできるからだ、というコースの考えた企業の限界を、根本的に変えてしまった、と特集記事は考えます。個人や伝統的な個別企業には不可能であるような効果を、インターネットを介して市場を拡大する一握りの企業は実現しているからです。それは消費者によって支持されて、革新的な商品を広めているという面と、経済や企業の生存条件を著しくゆがめるという面があります。

Brexitが示したイギリス政治の爆発は、保守党だけでなく、むしろ労働党で深刻です。どうなっているのか? という疑問に、優れた考察が示されています。

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IPEの想像力 10/3/16

Brexitが起きた1つの理由として、労働党の姿勢が分裂し、労働者に対してEU残留を説得できなかった、と指摘されています。左派のコービン党首がEUに反対してきたことが、EU支持の党の立場と矛盾したからです。

The Economistの記者は、2015年にジェレミー・コービンが党首選で勝利したとき,バーミンガムとレスターの中間にあるNuneatonの町で,買い物の人々に尋ねました.この町は1983年以来,常に勝利した側の政党に投票してきたからです.イギリス有権者の意見を代表する性格がある町なのでしょう.彼らは慎重に保守党のテレサ・メイを支持し,コービンについては「冗談だろ」,「彼が世界の動きを知っているとは思えない」,「だめだ」と応えました.

コービンは,Brexit投票後に,党内で不信任の動議が出され,40名の議員は彼を支持し,172名が反対した,ということです.これほど議員たちに支持されていない党首が再選されるのは考えられないことですが,コービンは動議にも揺るぎませんでした.なぜなら党首選では勝利することを確信していたからです.

再選により,コービンは党内権力を確立し,議員たちの役割を低下させ,一般党員やオンラインの活動家に大きな発言権を与えると思われます.支持者たち(コービニスト)によれば,すべての先例に背いて,労働党はイギリス政治を変える.そして,パワーを強め,広範な社会運動になる.南欧,特にギリシャのシリザが示すモデルだ,というわけです.

ただし,Nuneatonの住民が示したように,労働党は次の選挙で全く支持されないでしょう.かつて,トニー・ブレアの時代には,有権者の意向に沿うことがすべてでした.1997年,2001年の選挙で,ブレアの労働党が大勝しました.イラク戦争後の2005年でも,保守党を退けたのです.

何が起きたのか? 

保守党は,次第に,中道の人々をブレアから奪いました.イラク戦後の占領政策と沈静化の失敗は決定的でした.2007年に長く蔵相であったゴードン・ブラウンがブレアを退け,同時に草の根の運動家たちから支持を受けて,左に寄ります.しかも,直後の世界金融危機により党内の労働組合勢力が左派に傾いて,2010年の総選挙では,組合がブラウンの後継者であったエド・ミリバンドを支持しました.彼は一層の左傾化を進めたけれど,金融危機後の不況をブラウンの失策とみなす保守党の宣伝に押されて,2015年,選挙で労働党が敗北します.

党員の減少に対して,ミリバンドは新しいルールを定め,3ポンドを支払うなら党員として党首選挙に投票できる,としました.この変更の重要な意味を,主流派の議員は誰も理解しませんでしたが,コービンは積極的に支持者を党員に勧誘しました.それは理想主義的な中産階級の若者,あるいは,ブレアの時代に労働党を去った旧世代の社会主義者たちでした.党首選の有権者は倍増し,コービンの優位が確立されたのです.

コービンは,イラク戦争に反対したし,閣僚や,影の内閣に参加した経験がないことは,その罪の無さ,一貫した反対派の経歴として,評価を高めました.しかし,彼の主要な立場,すなわち,鉄道を再国有化し,国歌斉唱を拒み,イギリスの核武装に反対し,労働組合が失った権限を回復し,エネルギー産業を国有化する,という主張を有権者は支持しません.

イギリスは,野党が存在しない,保守党の長期政権時代を迎えるかもしれません.しかし,保守党内でも、グローバリゼーションへの不満とEU懐疑派が強まり、ナイジェル・ファラージの独立党UKIPが保守党の支持基盤を奪いつつありました。UKIPは、労働党の姿勢に不満を持つ労働者たちにも支持者を拡大していました。

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Brexitの背後に,イギリス国内の権力争いがあったのは当然です.問題は,保守党も,労働党も,国民のための成長戦略やグローバリゼーションとの関係を示せなかったことです.イギリスでも,アメリカでも,ドイツ,フランス,など,多くの民主国家で,移民・難民の扱いが政治の辺境にいる過激な党派によって強調されます.

The Economistの特集記事は,GoogleAmazon,などのグローバル・スーパースターについてです.技術革新による新商品・サービスは消費者によって支持され,莫大な利益を上げて,その極端な資産の蓄積と釣り合わない,わずかな雇用しか創出していません.彼らが葬った職場に比べて,社会に還元される富の少なさ,グローバルな節税行動と政府に対する強烈なロビー活動は,市場への社会的な支持を失わせます.

主要政党どころか,先進的な民主主義の体制が崩壊の危機を抜け出せるとは,容易に期待できません.

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