IPEの果樹園2016

今週のReview

10/3-8

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民主主義は移民を支持できるか? ・・・アメリカ政治と投票率 …アジアと出生率の低下 ・・・トランプ vs クリントン ・・・金融緩和への批判 ・・・労働党党首選挙 ・・・1回のテレビ討論 ・・・メイのBrexit ・・・技術革新を恐れるな ・・・中国の債務と不動産市場 ・・・シモン・ペレスの訃報

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, The Guardian, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, そして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]


l  民主主義は移民を支持できるか?

Bloomberg SEP 22, 2016

Time to Privatize Immigration

Mihir Sharma

明らかに、西側は移民危機に直面している。開発された世界が高齢化と経済停滞に苦しみながら、市民たちの多くは制御不能な外国人の流入に反対しているのだ。アメリカは別だが、こうした経済の多くは長期にわたる成長の危機も経験している。状況が違えば、その解決策は明らかだ。インドや中国、その他の発展途上の世界から、創造的で、生産的な人々を多く受け入れて、活力を回復することである。

しかし、移民をめぐる政治が荒れているとき、それはどうやって実現できるのか? 現行の西側アプローチは持続可能ではない。1つの答えは、皮肉なことだが、ヨーロッパの「血と土地」を守る政治体と同様に、歴史的には移民を拒んできた日本かもしれない。

日本の移入民の数はアメリカ他オーストラリアに比べて非常に少ないが、それでも増加しつつある。安倍政権になって、外国人居住者が10%増えた。政府は、議論のある「技能・研修制度」への反対を和らげようとしてきた。

他の諸国では「労働許可システム」がある。インド企業は、もっと外国人労働者たちが企業間で移動できることを、イギリス政府に求めている。アメリカでは、H1-Bビザが企業の熟練労働派に与えられる。しかし、企業は日本のインターンシップ・プログラムを使っている。外国人たちは来る前に自国で将来の被雇用者として訓練を受ける。政治的にも、文化的にも、非常に異なった企業があるから、このやり方は有益だ。

H1-Bビザを利用する企業は、低賃金のソフトウェア・エンジニアを特定の事業に雇用するため、それを「ボディー・ショッピング」と軽蔑される。それは効率性を全般に高めるが、長期的な生産性やイノベーションには役立たない。その決定的な改革は、その国が本当に必要とする移民を選択する上で、多国籍企業が選択やその国での暮らしの準備を助けることだ。

他の方法として、オーストラリアやカナダはポイント制を採用している。年齢、英会話能力、学歴、などで、移民たちをグレードするが、エリート的であり、平等主義的な国家にはふさわしくない。アメリカの高等教育機関は、優れた才能を持つ移民たちをひきつける磁石である。彼らは大学を卒業し、アメリカに残って働き始める。ただし、市民権を得る選別が地方政府に委ねられるのは好ましくない。

こうした点で、企業が、ふさわしい移民労働者を選別し、自国にとって必要な、また同化する能力の高い人々を入国させることは、優れている。移民を民営化することが必要だ。

SPIEGEL ONLINE 09/26/2016

Following the Money

On the Trail of African Migrant Smugglers

By Alexander Bühler, Susanne Koelbl, Sandro Mattioli and Walter Mayr

YaleGlobal, 27 September 2016

Prepare for the 21st Century Exodus of Migrants

Joseph Chamie

21世紀の移民を吸収するには、教育、医療、治安、食料・水の供給を計画しなければならない。その際、発展途上諸国の人口増加を考慮するだけでなく、近年、移民を生じている経済的、社会政治的な諸力にも注意しなければならない。すなわち、内戦、気候変動、貧困である。

The Guardian, Wednesday 28 September 2016

Labour can win on immigration – but not by channelling Enoch Powell

Zoe Williams

NYT SEPT. 29, 2016

What Does Immigration Actually Cost Us?

Thomas B. Edsall

全米科学アカデミー(NAS)が移民の影響に関する509ページの報告書“The Economic and Fiscal Consequences of Immigration”を発行した。左派も右派も、直ちに反応した。

NASの研究は、移民がアメリカにとって利益をもたらすことを確認した。」 リベラルな政策推進団体であるAmerica’s Voiceは、移民支持の立場から、こう表明した。トランプやそのネイティビストの群れが移民の恐怖を煽るのは間違っている、と。

保守派は、同じ報告書の異なった解釈から、一層の移民規制を主張した。「NASの研究は、移民が労働者と納税者の損失であり、大企業の利益になる、ということだ。」 移民研究所の所長Steven Camarotaは、移民がアメリカ人の賃金を下げ、移民たちと企業の利益になる、と述べた。

こうした反対の意見が示されることは、NAS報告の主要な発見が持つ複雑さによる。競争する意見を許容する多面性があるのだ。報告書が示すのは、移民が一方の正しさ、他方の間違いを、明解に決めることのできる問題ではなく、コストも利益もある、ということだ。

たとえば、低熟練の移民労働者が低賃金で熱心に働くことは、多数のアメリカ人の消費コストを下げた。医療、育児、食事の提供、住宅の清掃、修復や建設、など。同時に、こうした低賃金労働者は、アメリカ生まれの労働者の間で、低熟練層から高熟練層への、富の再分配を生じた。

さらに研究は述べている。移民の追加供給は、それによる賃金の低下から、資本の収益を増大させ、移民余剰the immigration surplusが生じた。そして資本を多く所有しているネイティブは利益を受け、資本をあまり所有していないネイティブは貧しくなった、と。

こうした対立を認めながら、それでもNASは、はっきりと移民を支持している。

「移民はその国の経済成長の一部である。移民による労働供給は、人工的な悪条件から経済が停滞する他国の諸問題を、アメリカは回避できる条件となっている。特に、労働力の高齢化や、高齢者による消費の減退である。さらに、高熟練の移民は人的資本の追加となり、その国の核心、企業家精神、技術変化に必要な能力を高めている。」

NASの研究は、移民が財政的に負担となるかどうかについても、双方に根拠を与える。すなわち、2011年から13年について、州と地方の財政に、第1世代の大人が与えた純コストは、平均、1人当たり1600ドルであった。しかし、第2世代と第3世代以降の大人がもたらした財政への純利益は、それぞれ、1人当たり、1700ドル、1300ドルであった。要するに、2011年から2013年に、第1世代の大人とその被扶養者は、574億ドルのコストとなり、第2世代と第3世代以降の大人は、それぞれ、305億ドルと2238億ドルの利益をもたらした。

移民支持派は、まさにこのままのことを主張したが、移民反対派は「移民たちは、現時点の公共サービスに対する十分な税金を支払っていない」と主張する。

こうしたイデオロギー的な亀裂は、大統領選挙や議会の論争でも見られる。トランプはクリントンの立場に示された原則を批判する。「政治家たちが移民制度の改革を議論するとき、その意味は、非合法移民のアムネスティ、低賃金、国境の開放、である。」・・・「われわれは、自国民より他国民の必要のために移民システムを作る、世界で唯一の国である。」

移民に関する論争と政治的な分極化は密接に結びついている。移民が多いほど、政治は分断されたのだ。たとえば、保守派は移民による送金を、本来アメリカで投資できた資金である、「外国人によるアメリカの富の盗掘」とみなす。しかし、NASは、送金による経済的な損失はごくわずかであり、むしろ貧しい国へ豊かな国からの支援となり、世界の成長を高め、国家間の不平等を減らし、国際移民をも減らす可能性がある、という。

移民の政治は複雑だ。移民を支持つる共和党のジレンマとは、ヒスパニックの支持を得るのに必要な移民政策の自由化が、他方で、2つの有力な支持基盤を損なうのだ。すなわち、すでにアメリカに住む最近の移民たちと、高校を卒業していないすべての労働者たちである。また、移民の増加から経済的利益を受けるのは、共和党内のエスタブリシュメントである、企業、地主、投資家である。彼らは、トランプが候補争いの過程で、まさに攻撃した人々だ。

しかし、移民が増えることで、どれくらい、だれの賃金が減るのか、合意は存在しない。ハーヴァード大学のエコノミストGeorge Borjasは、移民がアメリカの労働者の賃金を減らす、特に、高校を卒業していない労働者の賃金を減らす、と主張した。他方、UCバークレーのエコノミストDavid Cardは、Borjasと論争し、移民はアメリカ人労働者の賃金を減らさないし、むしろ増やすかもしれない、と主張する。「証拠を見ればわかるように、通常、人口の増加は生産性を高める。」

確かに多くの政府が移民を管理し、選挙では反移民の候補者が得票しているが、その勝利は短命であろう。イエール大学のノーベル賞受賞者である、エコノミストのRobert Shillerは、最近おエッセー“The Coming Anti-National Revolution”で、世界が多くの知的な革命を経験してきたように、コミュニケーションの発達、グローバル企業の雇用、日常的なインターネット経由の接触を通じて、国境による障壁は失われる、と主張した。

トランプとクリントンは、異なる視点で、選挙を戦う。そして、大統領選挙が終わっても、論争は続くだろう。そして移民政策の改善を求める人々は、失われた過去を回復しようとする人々と、対峙するのだ。


l  アメリカ政治と投票率

Project Syndicate SEP 23, 2016

Voting for a Better US Political System

JEFFREY FRANKEL

アメリカ政治は脱線し、線路に戻るとも思えない。政治的な選挙区の変更、拡大する経済格差、選挙資金システム、公平さを欠くジャーナリズム。国民はこの制度を直接に改善できない。しかし、彼らに改善できる根本問題は1つある。投票率だ。

民主制の良いところは、人々が投票によって変化をもたらすことだ。

しかし、今では政治的な幻滅が広がっており、投票する人が減っている。富裕層や有力者が政治を決めて、普通の人々が選挙に影響することはない、と思うからだ。特に若者や、ラティーノ、アジア系アメリカ人に、選挙登録が減っている。

不平等化や献金の増大を大衆が変えるには、彼らが投票することだ。もし投票率が下がれば、それこそ献金できる富裕層が候補者の政策を決めてしまう。

抗議の投票、というのは、その結果をよく考えるべきだ。それは自分たちの理想とする政策から離れた候補者を当選させてしまうだろう。200年の大統領選挙で、グリーン・パーティのラルフ・ネーダーは290万票を得て、民主党候補のアル・ゴアが敗北した。

また、イギリスのEU離脱を決めた6月の国民投票では、多くの若者が残留を望んだのに、投票しなかった。他方、高齢者の多くは離脱を支持し、Brexitが起きたのだ。

オーストラリアのように、投票を義務化し、投票しない者に罰金を科す国もある。選挙の日に、投票しても無駄だから、と部屋から出ない者は間違いだ。彼らの投票こそが選挙結果を変えるのだ。だから民主党大会でオバマが述べたことを、11月まで私たちは繰り返して強調しよう。何人かの代表がトランプに関してブーイングしたとき、彼は述べた。「ブーするより、ボートだ。」


l  アジアと出生率の低下

Project Syndicate SEP 23, 2016

Can South Korea Make More Babies?

LEE JONG-WHA

韓国の合計特殊出生率は、1.24である。それは世界で最も低い国に属する。女性が生涯に2.1人の子供を産まなければ人口規模は維持できない。それをはるかに下回っている。

韓国のような先進的な経済で、子供を育てるコストが増大し、特に、教育コストが高い。貧しい、就職することが難しい若者たちは、結婚も、子供を持つことも諦めている。出生率の低下は、最初、歓迎された。子供により多くの投資をするからだ。しかし、やがて経済成長を損ない、年金システムを破たんさせた。

FP SEPTEMBER 23, 2016

Beijing Wants More Baby-Making

BY MEI FONG

917日、中国中部の都市、Yichang宜昌市で、政府職員が共産党に公開書簡を送り、第2子の奨励によって都市の出生率低下に歯止めをかけるよう求めた。2016年前半、その後、中国全土で第2子の出産が奨励された。労働人口の減少が経済成長を抑制することを恐れるからだ。

要するに、中国は「一人っ子政策」から「もう1人多く産む政策」に変わったのだ。しかしその政策転換は、少なすぎるし、遅すぎる。


l  トランプ vs クリントン

NYT SEPT. 23, 2016

The Lying Game

Paul Krugman

クリントンよりトランプの方が多くの嘘をつく。それは無党派の、PolitiFactのような、事実検証機関があるから言えることだ。

メディアも、ジャーナリストも、その役割を果たすことだ。

NYT SEPT. 23, 2016

Why Trump Won’t Save the Rust Belt

By EDWARD McCLELLAND

先月、トランプはデトロイト経済クラブで、自由貿易によって破壊されたかつての大都市について話した。

「デトロイトは私の敵対候補の経済政策が間違っていたことを示す生きた例である。」 「彼女は高い税金、過激な規制を唱え、仕事をコミュニティーから奪う。その治安政策はますますあなたの町を危険にする。」 そして結論した。「彼女は過去の候補だ。私たちこそ未来の候補だ。」

しかし実際は、トランプこそミシガンの過去を表している。だから州のあらゆる調査で支持を失っているのだ。トランプの選挙キャンペーンは懐古趣味の性格が強い。彼が約束する製造業の復活は、1980年代の態度であり、当時の有権者にふさわしい。あのころ、ミシガンには排外主義が強かった。特に、燃費の良い自動車を作る日本人を嫌っていたのだ。

トランプは、NAFTAのような通商条約を攻撃して、ブルーカラー労働者たちにアピールすれば、ミシガンなど、中西部の州で支持される、と信じている。多くの中産階級の製造業雇用が、メキシコに輸出された、と非難している。

しかし、サービスと知識に依拠した諸産業こそ、ミシガン経済でますます重要な役割を果たしている。典型的なミシガン労働者は、今、自動車を生産していない。2000年代に入って、健康関連産業が最も重要な雇用部門だ。トランプは、多くの自動車労働者が職を失ったのは、貿易よりも、機械化によるものであり、また、外国企業が(労働組合のない)南部に建てた工場との競争に負けたからだ、という事実を無視している。

トランプの経済ナショナリズムは、エスノ・ナショナリズム(自民族・白人優先主義)につながる。それは現在の労働者たちにも好まれない。かつて自動車関連製造業で働いていた男性Marcus Riddleは、その工場がコスタリカに移転され、今では1時間9ドルの老人介護ホームで働いている。しかし、インド人と黒人の両親を持つ彼は、クリントンに投票する、という。「トランプは人種差別主義者だ。」

ミシガン経済の未来は、デトロイトの自動車工場にはない。過去の候補は、未来の候補に勝てない。トランプが回復すると約束している生活とは、1980年代にもすでにわかっていたように、消滅しつつあったのだ。

NYT SEPT. 24, 2016

Hillary Clinton’s Final Exam

By DAVID AXELROD

FP SEPTEMBER 25, 2016

Why Are We So Sure Hillary Will Be a Hawk?

BY STEPHEN M. WALT

Project Syndicate SEP 26, 2016

Why is the US Presidential Race So Close?

ELIZABETH DREW

NYT SEPT. 26, 2016

Why Donald Trump Should Not Be President

By THE EDITORIAL BOARD

確かに、トランプは多くの群衆を集めている。その嘘、暴言、侮辱、外国人を嫌うナショナリズム、性差別主義ではなく、もっと高い目標に訴えるものだ。

しかし、彼は政府職員に魔法のような改善策をもたらすのか? その率直な発言が優れた政治家であると言えるのか? 世界の指導者たちと有利な交渉をできるのか? いずれも事実に反している。

FP SEPTEMBER 26, 2016

We’ve Got to Face It: Trump Is Riding a Global Trend

BY CHRISTIAN CARYL

ヒラリー・クリントンが勝利するには、トランプが時代精神を表していることを認めて、それに勝利しなければならない。

世界の多くは鬱屈した感情に捕らわれている。西側の民主主義は集団的な崩壊の不安に悩まされている。成長の回復は遅く、テロや移民への不安がまじりあう。それは政治エリートが普通の住民の不安を全く感じていない、という感覚を広げる。

イギリスにおけるEU離脱投票は、ファラージやジョンソンがこの感情を利用したのだ。フランスのル・ペン、ハンガリーのオルバン、フィリピンのドゥアルテ、トルコのエルドアン、エジプトのシシ、など、世界各地にポピュリストの指導者が現れている。

この現象には経済的な背景がある。技術の急速な変化と自由貿易協定だ。しかし、経済的な説明だけでは不十分だ。

ようこそイド(自我意識)の時代へ。不断に、容赦ない変化を続ける世界の住民たちは、この不確実さと不安に対応しようとする。それは合理的な政策を唱える政治家に向かうだけではない。有権者たちは、あまりにも容易に、理性と経験の冷静な声を無視し、デマゴーグたちの腕の中に飛び込む。有権者たちは、彼らを守ってくれる強権的な指導者に惹きつけられる。

トランプの描く悪夢のアメリカ像は、不況に苦しみ、絶望したアフリカ系アメリカ人に押しつぶされ、蔓延した犯罪と移民流入によって冒されているのだが、まったく現実と合わない。しかし、彼の支持者には、その暗い戯画が、人口学的、文化的な変化を味わっている彼らの社会に重なるのだ。

不平等を改善する経済機会の創出や、リベラルな民主主義を唱えるだけでなく、われわれはイドのパワーを認める必要がある。そして、市民たちを変化のショックから守ること、政治の分極化を防ぐこと、切迫した問題に応える政治の新しい空間を生み出すこと、また、インターネットにはびこる陰謀説に対抗する情報政策が必要だ。

Project Syndicate SEP 28, 2016

Confronting the Populists

CHRIS PATTEN


l  左派は生き残れるか?

NYT SEPT. 23, 2016

Will the Left Survive the Millennials?

By LIONEL SHRIVER


l  メキシコとNAFTA

NYT SEPT. 23, 2016

Forget Trump’s Wall: For Mexico, the Election Is About Nafta

By IOAN GRILLO

NYT SEPT. 27, 2016

What Can Mexico Do About Trump?

Eduardo Porter


l  北朝鮮

NYT SEPT. 23, 2016

South Korea’s President Has No Easy Options in Dealing with an Aggressive North

By CHOE SANG-HUN

Project Syndicate SEP 29, 2016

No Appeasement for North Korea

CHRISTOPHER R. HILL

非核化しなくても、アメリカ政府は北朝鮮と交渉するべきだ、という意見がある。われわれには失うものが多くあるから、と。しかし、北朝鮮に宥和は無意味だ。北朝鮮の行動をさらに刺激するだけである。国際社会が北朝鮮を核保有国として認めることも正しくない。

北朝鮮には、これまでに合意したことを守るという選択肢がある。


l  金融緩和への批判

Bloomberg SEP 23, 2016

The Fed's Mission: A Rocket Launch From Jupiter

Narayana Kocherlakota

日銀は20年以上も苦しんできた。

ゼロに近い金利水準では、中央銀行がデフレと闘う術がない。物価が下落するという不安が、ほとんど自己実現的なものになる。それは、地球ではなく木星からロケットを発射するような試みである。木星では重力がはるかに大きいのだ。

インフレ目標が2%であるアメリカ連銀は、まだ1.3%のインフレしかないとき、経済のエンジンがもっと加速しなければ金利を引き上げない、と説明した。それは木星からの発射であることを知っているからだ。

FT September 24, 2016

The growing challenge to central banks’ credibility

FT September 26, 2016

Only government action can resolve a global solvency crisis

William White

中央銀行は、かつてなかったような実験的な金融緩和を試みてきた。未知の恐怖がその過激な政策を緩和することはなかった。それ自体危険であるが、その政策を逆転することも危ない。

極端な金融緩和は総需要を刺激できなかった。債務は、特に新興市場で累積し、将来の支出に対する期待を抑え、現在の投資を抑えている。消費者はますます貯蓄を増やして、引退後の所得を確保したいと考える。

金融緩和には2つの好ましくない副作用がある。

1に、金融の不安定化を強める。融資が減り、長期と短期の利子がその差を失う。銀行、保険会社、年金などのビジネスモデルが危機に瀕する。金融市場もその構造が変質し、資産価格は危険なほど高い水準に達している。

2に、将来の成長を損なう。金融危機前に悪化した資源配分は、ゾンビ銀行やゾンビ企業に固定されてしまう。そして金融機関も金融市場も、正常に機能しなくなる。

金融緩和政策の副作用を超えて、2つの悪循環が働いている。需要面で、累積債務が向かい風となり、さらに金融緩和を求め、さらに債務を増やす。供給面では、資源配分の悪化が成長を減速し、一層の金融緩和、一層の資源配分悪化、低成長につながる。

期待利潤の減少が過去の金融政策によるのであれば、その政策を続けることは正しくない。しかし、金利を上げることも難しい。世界経済は、実物面でも金融面でも壊れやすい状態だ。

幸い、抜け出す方法はある。中央銀行ではなく政府が行動することだ。

J.M.ケインズに従い、2つの解決策が示唆できる。1.財政刺激策の余地を活用するべきだ。長期の財政再建策を法制化することで持続可能性が強化できるだろう。2.民間部門と一緒に、インフラ投資を増やすべきだ。

フリードリヒ・ハイエクに従うなら、2つの解決策がある。1.過度の債務は償却するか組み替える。金融機関は自己資本を増やすか、不良資産が多ければ倒産させる。2.成長率を高める構造改革を行う。それは債務の維持能力を高め、長期の配当をもたらす。

われわれはケインズにもハイエクにも従うべきだ。その障害は、明らかに、思考の枠組みにある。経済と政策の働き方を見直し、財政再建の法制化を進め、中央銀行は政府が行動するための時間を稼ぐに過ぎない、と理解することだ。行動する時が来た。

Project Syndicate SEP 26, 2016

The Return of Fiscal Policy

NOURIEL ROUBINI

すでにG7諸国の政府は、財政刺激策に映り始めた。

Project Syndicate SEP 26, 2016

Desperate Central Bankers

STEPHEN S. ROACH

日銀もアメリカ連銀も、その金融政策の成果は乏しい。

ZIRPQQENIRP、さまざまな短縮語の政策は並ぶが、日銀も安倍政権も、約束した水準は達成できていない。

1930年代にケインズが得た教訓は、流動性のわなから抜け出す唯一の方法は財政政策である、ということだ。

FT September 27, 2016

Europe’s banks need consolidation to find stability

Lorenzo Bini Smaghi

Project Syndicate SEP 27, 2016

Secular Stagnation or Self-Inflicted Malaise?

HANS-WERNER SINN

リーマンブラザーズが世界経済を不況に落ち込ませてから、8年が経過した。工業世界全体が第2次世界タイ背に以来最悪の危機を経験した。中央銀行は超低金利を維持したが、危機はまだ完全に終わっていない。逆に、南欧諸国やフランスのように、ほとんど成長できない国もある。日本は4半世紀も停滞している。

それは「長期停滞」の証拠だ、という者もいる。利潤の期待できる投資プロジェクトが枯渇し、自然実質金利が低下し続ける。それゆえ政策金利もそれに応じて下げ続けるしかない、と。しかし、私はむしろ違うメカニズムが働いている、と思う。それは、自己誘発型停滞“self-inflicted malaise”と呼ぶものだ。

この仮説は、シュンペーターJoseph Schumpeterの景気循環論で考えるとよくわかる。市場参加者の間違った期待は、繰り返し、信用膨張と資産価格上昇のバブルを生じる。不動産価格も上昇し、建設ブームが起きて、所得の上昇が借り入れをますます強気にする。

その後、バブルは破裂する。投資は破たんし、不動産価格は下落する。企業も銀行も破産し、工場もマンションも空っぽのまま放置され、人々は解雇される。物価と賃金が下がって、新しい投資家が新しいビジネスを始める。こうして「創造的破壊」を経て、急速な拡大の新局面が現れる。

現在の危機では、金融政策で創造的破壊を阻止してしまう。シュンペーターの景気循環は大規模な債券購入で克服される、と中央銀行は信じている。紙幣を増刷し、金利を下げるのだ。

それは多くの資産を救ったかもしれないが、同時に、若い起業家、新しい投資家の登場を阻んだ。特に、日本やヨーロッパでは、多くのゾンビ企業とゾンビ銀行が生き残っている。彼らは競争を妨げ、成長が回復するのを許さないのだ。ECBのように、中央銀行によっては、金利の連続的な引き下げで、資産価格が上昇し、金融緩和の罠に陥っているケースもある。このままでは、マイナス金利やヘリコプター・マネーに突入する。

罠から脱出する唯一の道は、創造的破壊を加速することだ。ヨーロッパの場合、それは債務免除、ユーロ圏離脱、通貨切り下げを伴うものだろう。

その衝撃は既存の資産保有者に痛みを生じる。しかし、土地、不動産などの資産価格のドル価値が下がった後、新しいビジネスと投資が速やかに増大し、雇用が生み出されるだろう。投資の自然収益率は回復し、経済も正常な率で拡大する。この離脱は早ければ早い方が穏やかであり、ヨーロッパとその他の経済も安堵できるだろう。

Project Syndicate SEP 28, 2016

The Perils of Debt Complacency

CARMEN REINHART

FT September 29, 2016

Europe must address its banks’ enduring malaise


l  労働党党首選挙

Bloomberg SEP 23, 2016

A U.K. Labour Party Split? That's Electoral Suicide

Matt Singh

FT SEPTEMBER 24, 2016

Labour moderates must find a new argument against Jeremy Corbyn

コービンの党首再選は、予想どうりであり、また落胆するものである。コービンはより強い権限を得るだろうが、世論の支持は失い、議会から消滅していく。それはまた、ヨーロッパのラディカルな支持者を集めるヨーロッパ最大の政党である。

コービンに反対する勢力は、社会民主的な価値をラディカルな党員にも訴えるべきだろう。しかし、労働党内の亀裂はBrexitの投票後も拡大している。

FTはコービンの辞任を求めた。彼の再選がイギリスに効果的な野党を生み出すことはないだろう。労働党には才能ある者たちが多くいるのであって、彼らはコービンに代わる政治プログラムを示し、労働党の再生を目指すべきだ。

The Guardian, Sunday 25 September 2016

Now Labour’s two sides can start to bridge the great divide

Gary Younge

労働党には以前から2つの競合する流れがあった。左派の活動家Hilary Wainwright1987年に書いた本で、それをエスタブリシュメントとグラスルーツと呼んだ。

エスタブリシュメントは上意下達の指導権をモデルに、選挙における勝利だけを目指した。あたかも組閣自体が目的であるように。他方、グラスルーツは、片足を党組織、もう片足は社会運動に置いている。彼らは議会にも実現できないような、社会の根本的転換を目指している。

前者はプラグマティズムを誇り、ありのままの社会に関与する能力、ウェストミンスターで権力を握り、漸進的な関与の増大が多数の人々の生活を改善する、と考える。しかし後者は、行動主義を信奉し、パワーの分配そのものに挑戦する。

コービンの党首再選と指導力の強化が、こうした2つの流れを、労働党の設立原則にさかのぼって生産的に共存する道を見出すのでなければ、党とイギリスにとって大きな損失になるだろう。

The Guardian, Sunday 25 September 2016

The Guardian view on Labour in opposition: come together

Editorial

FT September 25, 2016

Labour MPs must find a policy platform to challenge Jeremy Corbyn

Matthew Taylor

Bloomberg SEP 26, 2016

U.K. Labour Party Stands Up for Irrelevance

Therese Raphael

FT September 27, 2016

Moderates have little hope of reclaiming Labour

Janan Ganesh

The Guardian, Tuesday 27 September 2016

How do Labour and the unions make themselves relevant in the 21st century?

Abi Wilkinson

労働党大会を聴いていると、彼らは今も組合活動が支持基盤だと信じている。しかし21世紀になって、組合も党も、もっと他の形態の労働者たちが多くいることを認め、彼らの声を聴くことを考えるほうが良い。

NYT SEPT. 27, 2016

Mr. Corbyn’s Labour Party

By THE EDITORIAL BOARD

The Guardian, Wednesday 28 September 2016

Did Jeremy Corbyn’s conference speech win over the party? Our writers’ verdict


l  リベラリズムは生き残れるか?

The Guardian, Saturday 24 September 2016

Only true liberalism can thwart the demagogues

Nick Cohen

FT September 25, 2016

Scare stories will not stop populist insurrections

Wolfgang Münchau


l  黒人への銃撃

NYT SEPT. 24, 2016

Where to Go From the Anger in Charlotte

By CHARLES H. RAMSEY

NYT SEPT. 26, 2016

Police Violence: American Epidemic, American Consent

Charles M. Blow


(後半へ続く)