IPEの果樹園2016
今週のReview
9/19-9/24
*****************************
ドイツ政治と難民危機 ・・・北朝鮮の核実験 ・・・EUの2層化 ・・・マイナス金利政策 ・・・Brexitの経済危機 ・・・移民プログラムと国際協定 ・・・PTSDとしてのトランプ
[長いReview]
******************************
[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
●
ドイツ政治と難民危機
NYT SEPT. 8, 2016
Angela Merkel’s Loyalty Test for
German Turks
Anna
Sauerbrey
トルコのエルドアン大統領がその権威主義体制を固めるのを避けることは難しいし,それは西側との関係を悪化させるだろう.それは政府間だけでなく,ドイツ国内のトルコ系ドイツ人のコミュニティーとドイツ社会との関係でも飽きる.
例えば6月に,ドイツ議会が,1915年にトルコでアルメニア人の数万人が殺害された事件を,ジェノサイド,と決議したことに,エルドアンは激しく抗議した.ドイツのトルコ人たちも,同様にブランデンブルグ門の前で抗議した.
またこの夏のクーデタ後も,エルドアン政権への支持を示す動きが広がった.エルドアンが呼びかけたことに応じて,多くのトルコ系住民が街頭で連帯を示したのだ.ケルンでは約4万人が集まってトルコ国旗を振った.
しかしこうした行動は,他のドイツ人に彼らの二重の忠誠心を疑わせるものだ.Der Spiegelの調査によれば,ドイツ国内のトルコ人コミュニティーを通じて,トルコ政府はドイツを組織的に分断している,というイメージが広がっている.
ドイツ内のトルコ系住民は文化的にも宗教的にも保守的で,エルドアンの政党に共感する.それは彼らの権利であるが,それでも1人のドイツ人として,冷酷な支配者を称える姿は見たくない.その支配者はトルコの独立したメディアを弾圧し,クーデタを支持した疑いで数千の人々を逮捕し,死刑の復活を吹聴しているのだ.
もちろん,コミュニティーは単純ではない.エルドアンへの姿勢もそうだ.
ドイツへの忠誠に関する問題で,メルケルがトルコ系ドイツ人にドイツ国家への忠誠を求めたことは,エルドアンがトルコ人とその他のドイツ人との分断を図り,トルコ人の飛び地を作ることと並んで,互いの疎外感を深めた.
しかし,メルケルは多くのドイツ人に向けても話した.緊張や後退もあったし,トルコ系ドイツ人の子どもたちの教育や富裕さの水準は平均よりかなり低いが,それでもドイツは統合化に成功しつつある,と.
偏見,不信,イスラムの伝統的な習慣に対する批判や人種差別もあった.エルドアンに対する過剰な支持を見て,左派やリベラルにも不満が起きた.彼らにとって,ドイツ人であること,ドイツ国家への忠誠とは,憲法への忠誠,そのリベラルで民主的な価値への忠誠である.
たとえ数十年を経ても,緊張と後退をともなう,この過程は終わらないだろう.しかし,楽観主義を支持する理由もあるのだ.ドイツは統合化を完成できるし,やり遂げねばならない.
FT September 10, 2016
Germany: Spotlight falls on the far
right
Guy
Chazan
訪問者にとって,東ドイツの町Bitterfeldは静かである.しかし住民の1人Rene Kにとって,町の姿はディストピア物語だ.アフリカやシリアからの難民たちが連射の駅で住民たちに乱暴する.若者たちは酔っぱらい,朝の6時から投石する.女たちは防犯スプレーなしに家から出ることはなくなった.
Rene
Kは,29歳,ボランティアの消防団員だ.彼にとってBitterfeldは,失業と緊縮財政によって衰弱した町であり,多くの難民たちが流入することで社会的な平穏さは打ち砕かれ,公共サービスはガタガタになった.
変化を望む彼がAlternative for Germany, or AfDを歓迎したのは珍しいことではない.右翼の,反移民政策を掲げる政党で,ドイツの政界を翻弄し,メルケル首相の主要な問題になっている.Afdはこの町で32%を得票した.
●
北朝鮮の核実験
FP SEPTEMBER 9, 2016
Can U.S. Missile Defenses Keep Up
With the North Korean Threat?
BY
PAUL MCLEARY, DAN DE LUCE
金正恩は、これまでに発射したミサイルの数を超える、30基以上の弾道ミサイルを2016年に発射した。中国を含む、近隣諸国を脅迫する道具を手に入れ、グアムにも届くだろう。
長期的には、北朝鮮がアメリカ本土を攻撃する大陸間弾道弾ミサイルも開発することを心配している。THAADはあるが、そのコストは膨大だ。1つのシステムに16億ドルかかる。北朝鮮が多くのミサイルを持つ以上、韓国や日本にはTHAADシステムがあっても不足する。
それゆえ、ソウルとワシントンは、B52による空爆でミサイル貯蔵庫を予防的に破壊する、という別の選択肢を検討している。
防衛関係者は、敵対的なミサイル開発が比較的安価に行われる一方で、アメリカがそれから自国を防衛するためのシステム開発には莫大な費用が掛かることを気にしている。しかも、高度な防衛システムでも、長距離の大陸間弾道弾をすべて打ち落とすことは実証されていない。
こうした予測不可能な北朝鮮に対する不安から、アメリカの抑止力として韓国を核武装する意見も出始めている。
NYT SEPT. 10, 2016
North Korea, Far From Crazy, Is All
Too Rational
By
MAX FISHER
北朝鮮は非合理的なのか? 狂っているのか? そのふりをしているだけか?
繰り返し問われた問題であるが、その答えは同じであった。北朝鮮の行動は、決して狂っているのではなく、合理的である。「狂った国である」とか、「無謀な暴力を行使する」という『評価は、北朝鮮に有利に働いている。そして、北朝鮮より強い敵の行動を抑えている。しかし、そのイメージは概ね、誤解とプロパガンダの産物だ。
ある意味で、それは非合理的であるより、一層、危険である。戦争を望まないときでも、北朝鮮は戦争のリスクを高めるからだ。しかも、戦争が起きるとしたら核戦争を意味する。
●
EUの2層化
FT September 13, 2016
A two-tier model to revive Europe
Gideon
Rachman
スロヴァキアのBratislavaで開催されるEUサミットは、UK抜きの最初のサミットである。イギリス政府はその方針で紛糾し続けているが、ヨーロッパはBrexitの扱いに着手する。
彼らの気分は重苦しいものだ。ドイツの副首相Sigmar Gabrielは、それを代表するように警告した。イギリスには、代価も支払わずに、EUの好きなところだけ残すことはできない、ということを示させねばならない。
それは気分として、また政治的にも、理解できるが、間違いだ。Brexitを脅迫と考えるのではなく、むしろ機会とみなすべきだ。イギリスが示したのは、もはや加盟諸国がより高次の政治統合を喜ばない、ということだ。先週、the Visegrad Four —
Hungary, Poland, Slovakia and the Czech Republicも、EUをより緩やかなブロックにして、いくつかの権限を国民国家に戻すように求めた。
Brexitに関する交渉は、EUを2層に分割する改革の機会となる。第1層は、より緊密な政治統合に進む。第2層は、単一市場と外交・安全保障に関する協力に参加する。この2層アプローチは、連邦主義者とユーロ懐疑論・反連邦主義者との主張に見合うものだ。
第2層の反連邦主義者には、the Visegrad Fourだけでなく、おそらくthe
Irish, the Dutch, the Swedes and the Danesも加わる。第1層は、Germany,
Belgium, Italy, Spain and (probably) Franceである。
2層化することで、EUは最も重要な2つの使命を満たすことができる。すなわち、単一市場と、世界政治における地位向上だ。しかも、2層化はBrexitの解決につながる。イギリスは第2層に参加し、さらにEU外からも、Switzerland, Norway,
Turkey and Ukraineが参加しやすくなる。
もちろん、細部に問題は残る。法律の制定、ユーロ圏、人の自由移動、などについて妥協案が必要だ。オランダが求めるような「緊急停止」や、人の移動と労働とを区別する妥協案がある。
Brexitを協議離婚とみなし、アルカトラズに収容することで加盟諸国を脅しても、それはEUを改善しない。だれをも快適に保つ2層化に挑むべきだ。
NYT
SEPT. 15, 2016
Where
Is Europe’s Moral Authority?
Nikos Konstandaras
民主主義は互いを嫌う宿命にある。人々が政府に重要な発言権を得れば、隣国やパートナーよりも、自分たちの利益を優先し、短期的な関心で動く。その情念の潮流が移り変わる中で、是な苦に関する制度の基準が、人々を説得するために利用される。
しかし、指導者たちが、ナショナリズム、排外主義、自己利益優先に抵抗できない、あるいは、その意志を持たない場合、どうなるのか?
多くのリベラルな民主主義において、安定性と繁栄とを保障してきた(内外の)システムのネットワークが解体しつつあるようだ。豊かさは保障されず、移民が流入し、テロが起きて、ポピュリズムへの誘惑が強まっている。指導者たちは対話を通じて市民の対立を和解し、長期的な視点で説得できない。政治家たちは正しいことを実行できないと感じている。社会をますます小さな利己的集団に分断する諸力が圧倒的している、と。
ギリシャの債務危機でも、EUの財政緊縮でも、ドイツの難民危機でも、その傾向は明らかだ。経済的困難が政治を分裂させる。どうすれば経済的関心、安全保障に関して、相互に対立するより協力できるのか?
単一の、統合した政策が見いだせないとき、分裂は激化するだろう。外からの介入だけが事態を打開する。それが第2次世界大戦後の、トルーマン・ドクトリンやマーシャル・プランだった。今のアメリカには、そのような関心や能力がない。1930年代とその後の惨禍を回避するために、EUはできた。
もし道徳的な高い見地に立つなら、メルケル首相だけがEU諸国にそれを説得できるだろう。難民に関する人道主義と、各国の個別的な経済に関する優先目標、そして、緊密な経済同盟による成長促進の間で、バランスを取ることである。他の指導者たちも、同様に勇気を示して、分断ではなく協力による安全保障と繁栄を追求するよう、有権者を説得することだ。
●
Brexitの経済危機
Project Syndicate SEP 13, 2016
Brexit and the Pound in Your Pocket
BARRY
EICHENGREEN
Brexitの初期のリターンは、離脱派の主張とは逆に、良くない。国民投票後の7月に、消費者信頼感は急速に悪化した。製造業、建設業でも、一気に悪化している。
1つ、良いニュースは、ポンドが下落したことだ。為替レートが減価すれば、イギリスの輸出の競争力が改善する。また、高価な輸入価格に対して、消費者は支出を国内製品に転換する。これがイギリス経済を刺激するのだ。
問題は、それがどの程度か、ということだ。懐疑派によれば、イギリスの主な輸出は、価格競争力と関係ない、金融サービスである。イギリスの製造品輸出が伸びる可能性は、グローバルな需要の減少で限定されている。
この点を、イギリスの過去の経験が明らかに示している。1931年-1932年にイギリスの製品貿易赤字は4分の1も減少した。1933年までに、サービス貿易でも大きく改善した。経済は回復に向かっていた。
3つの状況がこれを実現した。1.余剰生産力があったので、企業は生産を増やせた。2.イギリスは、1932年のオタワ会議で、英連邦諸国と有利な通商合意を結んだ。3.政治的な不確実さは急速に解消した。1931年の危機に責任を問われた労働党政府は退陣し、広く支持を得て保守党政府に代わった。
現在は、明らかに、こうした条件がない。貿易財部門に余剰生産力はあまりなく、EUやその他の諸国との交渉によって法的な枠組みが変わる。政治的不確実さを解決するための選挙も。当面は期待できない。投資家たちは様子見の姿勢である。
1949年も、イギリスは同じような状況にあった。対米貿易赤字と投資家心理が問題になった。9月に、ポンドが再び切り下げられ、18年前と同様、30%も価値を失った。賃金上昇圧力を抑えて、イギリスの輸出は競争力を回復した。ドル圏に対する貿易赤字は急速に減った。1949年の貿易赤字が1950年には黒字になって、GDPも増大した。
この時も3つの条件があった。1.アメリカの景気回復。2.朝鮮戦争勃発による需要。3.EPUの成立によるイギリスとヨーロッパ諸国の貿易管理が相互に撤廃された。
第3のケースは1967年の切下げだ。1966年-67年の国際収支危機は、生産性上昇を超える賃金上昇、それによる貿易赤字、そして、この状態を持続的でないとみなす外国投資家たちからの資金が減って生じた。この時は、貿易収支が改善するのに2年かかった。失業率がすでに低く、貿易財部門に資源を再配置するのに時間がかかったのだ。
その期間、外国投資家は投資を嫌い、調整の困難によってポンドがさらに暴落すると心配した。UKは短期資本を集めることもできなくなって、IMF融資に頼った。
歴史が示すように、為替レートは競争力にとって重要であるが、期待しすぎてはいけない。現在、外部の経済状態が不良で、貿易財の生産拡大に資源を再配置することは難しく、通商交渉が一夜で合意することはない。
金融政策に代わる財政政策による刺激に関しては、今までのところ、政府に緊急意識がない。
FP
SEPTEMBER 14, 2016
Theresa
May’s Incredible Shrinking Brexit
BY ROBERT COLVILE
Brexit不況ではない。メイ首相は、何がBrexitだと思うのか?
メイがBrexitを鎮静化した理由は3つある。1.Brexitは退屈なものだ。さまざまな分野の離脱条件を交渉する。2.メイは、マーガレット・サッチャーではなく、むしろゴードン・ブラウンだ。細部にわたる行政管理能力が強みである。3.メイの政権運営、特に、Brexitをめぐる体制が、3人の対抗する個性Boris Johnson, Liam Fox, and David Davisによって分裂状態にある。
メイにとってのBrexitとは、活動しないこと、になっている。しかし、その沈黙は失策とみなされるだろう。「テレサ・メイとは、自分を定義しないこと、頭を出さないことで成功した政治家だ。」と、労働党の元影の首相であったEd Ballsは言う。
選挙を考えれば、彼女が何を決めても、多くの有権者は反対する。だから決定を先延ばしにしている。
●
移民プログラムと国際協定
NYT SEPT. 12, 2016
How Mexico and the U.S. Can Fix
Migration
By
ERNESTO ZEDILLO and CARLOS M. GUTIERREZ
アメリカとメキシコは、豊かな歴史を共有してきた。1世紀以上も、人々は国境を超えて仕事に従事してきた。彼らの労働と産業とは、相互に有益な、上手に規制された市場において機能していたのだ。しかし近年、労働力の多くは闇市場において取引され、労働者とその家族、治安、財政を、両国で損なっている。
両国は、1965年に、労働力移動を規制するために協力することをやめた。それは以前のブラセロ協定が不満なものであったからだ。1942年に始まったその協定は、両国から見て、労働者の保護が不十分であった。しかし、その欠陥を正すより、それ以降、両国は、低熟練の労働力移動を協力して規制する、いかなるまともな試みも拒んできた。
その結果が悲しい現実である。1170万人のメキシコ生まれの人々がアメリカに暮らしており、その約半分は公式の許可を持っていない。悲劇の根本原因は、労働力の新しい、合法的な流れに、合った、うまく規制された枠組みを、過去の政府が協力して立ち上げなかったことだ。
こうした活動分野の規制により、すべての教育レベルでアメリカ人労働者の雇用を改善し、両国の投資と成長を高め、アメリカとメキシコの法の執行を強化することができる。われわれは、アメリカとメキシコの間の新しい2国間合意を提案する。
21世紀型の合意形成には、過去の政府とは異なり、両国から優れた専門家や関係者を招いて、彼らの政治的考えや専門知識を合意のために広く活用する。彼らは国家安全保障、労働組合、司法、実業界、外交、経済学、といった分野に及び、将来に向けた現実的なプランについて考察する材料を提供する。
新しい協力の時代に多くのことが革新される。すなわち、アメリカの雇用主はアメリカ人労働者を先に雇用する。両国の労働者が雇用主の間でビザを移転できる。予期せぬ移民労働者の増大が起きたときは緊急停止できる。労働者の訓練や帰還,統合化に向けたインセンティブ。労働者の権利や法律を守り、労働者を集め、採用することへの、包括的なシステム。
われわれは2世代にわたって単独に問題を解決しようとしてきた。それらは失敗したのだ。国境を共有する両国が、将来を共有するために、しっかり考え抜いた代替案を実行するときだ。
FT September 14, 2016
US economy: Citizenship for sale
Kara
Scannell
アメリカのEB2と呼ばれるプログラムは、投資家がアメリカ市民権を得るための手段となるものだ。高失業率の地域で、少なくとも10人を雇用するプロジェクトに、50万ドルを投資すれば、最終的に、外国籍の個人が、永久にアメリカに居住し、労働できる永住権が得られる。
マイアミはすでに、ベトナム、ブラジル、アルゼンチン出身の裕福な家族が集まる磁石となっているが、EB5プログラムを使って、中国からの資金を吸収しようとを考えている。マイアミの官僚たちは、中国との緊密な関係を持つ国際銀行業のセンターになることを考え、中国の航空各社に本土からの直行便を開始するように説得している。
批判的な意見では、このプログラムは資金洗浄に利用されている。同様のプログラムを、カナダは廃止したし、オーストラリアは要求条件を厳しくした。市民権を売りに出す、というのは、この国が依拠する価値観になじまない、と弁護士で、カリフォルニア選出の民主党Dianne Feinstein上院議員は述べる。
あるアメリカの弁護士は、富裕層が投資によってビザを得る一方で、その投資は裕福な地域に偏っている。という。プログラムの支持者も、犯罪を防ぐ規制が要るし、安全保障の観点からも不安がある、という。
EB5プログラムは1990年の移民法の一部として、アメリカの経済と雇用を刺激するために始まった。それ以来、155億ドルが投資され、8万4400人が雇用された。申請者は、雇用を生むことに100万ドルを融資するか、経済的に衰退している地域では、50万ドルを融資する。およそ5年後に、投資家はグリーン・カード(永住権)を得て、うまく行けば、利潤を伴って資金も帰ってくる。
アメリカでは年の上限が1万人のビザとなっている。その水準には2014年に初めて到達した。中国人の投資家が圧倒的に多く、昨年のビザ発行の86%である。
マイアミでは、ミッキー・マウスと麻薬取引のイメージを否定し、資本流入が都市の国際的な地位を高め、より多くのビジネスを誘致したい、と考えている。中国の不動産開発業者と組んで、彼らの資金を置いておく最善の場所にするつもりだ。世界金融危機後、アメリカの不動産融資は削減されたため、中国からのEB2資金が重要な開発投資の源泉となった。多くの海外投資家にとって、それはアメリカの優れた教育システムへのアクセスや、本国の政治不安に対する避難所としても魅力がある。
オバマが中国を訪問し、キューバとの禁輸を解除し、パナマ運河は拡張される。マレーシア育ちのKi嬢は、「マイアミはアジア市場に目覚めた。3年前なら仕事はなかっただろう。しかし今、私は中国語が話せるし、アジアとのコネがある。金儲けになる。」という。
●
PTSDとしてのトランプ
FP SEPTEMBER 13, 2016
Donald Trump Is the Symptom of Our
PTSD
BY
DAVID ROTHKOPF
どうしてこうなったのか?
今は2016年9月である。ドナルド・トランプは、世界史上最強の国の、次の指導者になる可能性がある2人の内の1人である。アメリカ人の10人中4人がトランプを支持している。彼の支持者たちの方が、ヒラリー・クリントンの支持者たちより、熱狂的で、意志が固い。
しかし、この2人の客観的な分析が示すことは、まったく異なっているはずだ。
トランプには、実際、大統領になる何の資格もない。何度もビジネスで失敗した。公務に就いたことはない。違法行為に関して複数の捜査対象である。人種差別と女性蔑視の発言をその経歴や選挙運動中に規則的に行った。「嘆かわしい」としか言いようのない集団、すなわち、白人至上主義者、反ユダヤ主義者、その他のヘイト集団と、意図的かつ組織的につながった。さらに、(ロシア国営放送も含めて)繰り返しウラジミール・プーチン大統領を公に称賛した。プーチンはロシア民主主義を組織的に弾圧し、隣国を侵略し、国際法をあざ笑い、アメリカの利益を損なった人物だ。もっと悪いことに、彼はロシアの体制と緊密に協力した人物を自分の顧問としてきたし、ロシアの諜報機関がアメリカの選挙に介入することにより、驚くべき露骨さで選挙運動を有利にしようとした。
トランプは単にアメリカのベルルスコーニであるだけでなく、われわれのプーチンであり、次のムガベなのだ。
トランプの成功は、明らかに一部は、その敵である元上院議員のヒラリー・クリントンに関する疑いを広めたことによるものだ。
しかし、薄っぺらなセンセーショナリズムと根拠のない非難の下には、もちろん(逆の)事実がある。
ヒラリー・クリントンは、間違いなく,現代の,最も資格のある大統領候補だ.大統領夫人,上院議員,国務長官を務めた経歴がある.彼女を知っているものは誰でも,その知性,勤勉さ,温かみ,愉快さを語るだろう.彼女はすべての会議に準備して出席した.外交専門家,世界のトップエコノミストと会議に参加したとき,彼女が事態を理解しており,しかも,誰よりもよく知っている,というのは明らかであった.彼女は自分を主張するより,意見に耳を傾けた.だから彼女の周りには優れたチームができ,彼女の行動に忠誠を示すのだ.
では,なぜこうなったのか? 選挙戦は混迷し,アメリカで起きていることに世界は頭をかいている.多くのアメリカ人も,アリスに続いてウサギの穴の中に飛び込んだような感じだ.
こうした事態を説明する理論は多くある.しかし,われわれがこうした起源のどれかをたどると,必ず,トランプ大統領はあり得ない,という時代に戻る.民主党員も,共和党員も,独立派もそうだ.
こうした諸力に対する触媒となり,不可解な事態をもたらしたものが何かあったはずだ.もちろん,それを科学的に決定することは不可能である.しかし,何かがあったのだ.
9・11の15周年にあたって,私はこのことを強く意識した.人命が失われ,国民的な悲劇が起きるのを,私たちは集団的に目の当たりにして,この国全体が近代史になかったような心理的ショックを受けた.これによってわれわれは,より傷つきやすい,かつてないリスクにさらされていることを実感した.それは冷戦期の最悪の日々にもなかったほどのレベルの不安・恐怖を生んだ.
事実はそうではない.われわれは第2次世界大戦後,おそらく最も安全で,より強い.リアルな脅威は存在しない.われわれの敵は弱く,小さく,異様な,滅ぶしかない者たちである.
傷つきやすいという感覚が引き伸ばされたことは,トラウマの激しさを示すものだ.世界金融危機など,その後のショックも心理的なダメージを深めた.われわれは,国家として,心的外傷症後ストレス不安PTSDにあるのだ.トランプはその苦悩の兆候である.
彼は解決策ではない.この国も心理的な健全さを回復することが答えである.それはオバマが始め,クリントンが約束することだ.海外における尊厳を高めながら,自国のシステム,物質面,経済面,社会面でも利益をもたらす.
トランプ現象に対する生産的な反応とは,アメリカは偉大であり,その偉大さを支持者だけでなく,システム内の不平等に苦しむ,取り残された人々にももたらすことで理解してもらう方法を見いだすことだ.
********************************
The Economist September 3rd 2016
Uberworld
The British economy and budget: The right kind of budget
Marriage in Japan: I don’t
Xinjiang: The race card
Germany’s refugee anniversary: Assimilation report
Australia’s economy: Good on you
(コメント) ウーバーが目指す世界の姿に驚きます.1台の自動車も,1人の運転手もいない,配車システムを管理するサービスは,人々を自動車の個人所有から解放し,固定的な公共輸送からも解放して,快適な自動運転車のグローバルな輸送・移動システムを実現します.
新疆の共産党書記長が図った民族問題の解決策には,テロ組織の弾圧,開発援助,同化,イスラム信仰の禁止,住民の登録証携帯義務付け,があります.ウイグル人が自分たちの土地に住むことも監獄のようだ,と記事は描きます.
オーストラリアの経済が好況を続ける幸運と経済政策は,他の諸国と違いました.世界金融危機にも,中国の経済リバランスと国際商品価格の下落にも,オーストラリアは好況を維持したのです.その要点は,為替レートの変動と財政刺激策のようです.
******************************
IPEの想像力 9/19/16
ダイナミックな社会,とは,どういうものでしょうか? 所得格差はあまりなく,あるいは,基本的な所得は保証されていて,教育や訓練,就労の機会が豊富にあり,革新的な試みに人材や資金が容易に集まるとしたら,その社会に生きる人たちはとてもダイナミックだろう,と思います.
しかし,それは実際には,どういう社会なのか?
****
「未来EYES」を観ました.加藤百合子さんの話でした.M2Laboエムスクエア・ラボの社長です.
農家の高齢化や労働力不足が大変な問題だ,と分かっているのに,それを解決するための工学系の知識が活用されていない.農家の苦しみはわかっても,何を求められているのか,わからないからだ.
加藤さんは,外国にあった「ほうれん草の収穫ロボット」を見つけて,日本でも農家に利用できるよう農林水産省に紹介しました.彼女と仕事をするのは厳しいが楽しい,と官庁側のスタッフは言います.
農家が出荷するコストを下げたい.関係者の会議で,農業バスを考えます。個々の農家ではなく,バスで,人ではなく野菜を,農家から集めて回るのです.
子供たちの農業会社・起業経営塾も開きます。自分たちで解決するしかない.コミュニティーで解決する仕組みを考えたい,と彼女は言います.農業x工業xママ=M2
****
国際報道2016を観ました。アメリカにおいて,ヒスパニックの影響力が強まっている、という話です。カリフォルニアでも,フロリダでも,経済や政治を動かすエンジンになるでしょう.
最初に紹介されたのは野菜の巨大な倉庫です。ヒスパニックの好むサルサの野菜も含めて、多くの野菜がメキシコからトラックで届きます。働く労働者たちもヒスパニックです。
安い労働力としてアメリカに入ったヒスパニックたちですが、彼らの子孫はアメリカの社会に育ち、大学でも学びました。自分たちのビジネスも始めています。人材派遣会社の女性社長は、大学の理事にもなって、低所得のヒスパニックの学生に奨学金を与えるプログラムに寄付します。
ヒスパニックたちは、そのパワーを政治にも反映させるべきだ、と考えるようになっています。トランプが大統領候補になって、メキシコ系移民やヒスパニックを侮辱する発言を繰り返したからです。
所得水準も確実に白人を追い上げています。その購買力は、もはやスペイン並だ、ということです。ヒスパニックの人口増加率は高く、都市によってはヒスパニックの人口が大部分を占めます。英語が通じないことも起きています。それを好まない白人が多いことも紹介されました。
****
同じ報道番組は、中国の都市で、レンタルサイクルがビジネスとして急速に広がっている、という話もありました。中国・自転車版のウーバーですね。
パンクしないタイヤ,GPSで追跡できる,自動車の渋滞をまぬがれ,大気汚染を抑えて環境にも優しい.中国の都市では,北欧のような市民社会が広がり始めているのでしょう.
****
こうして日本、アメリカ、中国の話を観ると、意外な印象が生まれます。日本は老人ばかりで衰退に向かうのではないし,アメリカ人は差別やテロに負けず,中国は巨大な国家の権力装置によって動いているのではありません.
苦しむ人々がいる限り,リベラル派や社会主義は,その理想を回復すると思います.
******************************