IPEの果樹園2016

今週のReview

9/19-9/24

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ドイツ政治と難民危機 ・・・北朝鮮の核実験 ・・・インフラ投資による刺激策 ・・・EU2層化 ・・・マイナス金利政策 ・・・Brexitの経済危機 ・・・移民プログラムと国際協定 ・・・シリアの停戦合意 ・・・PTSDとしてのトランプ

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, The Guardian, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, そして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]


   ドイツ政治と難民危機

NYT SEPT. 8, 2016

Angela Merkel’s Loyalty Test for German Turks

Anna Sauerbrey

トルコのエルドアン大統領がその権威主義体制を固めるのを避けることは難しいし,それは西側との関係を悪化させるだろう.それは政府間だけでなく,ドイツ国内のトルコ系ドイツ人のコミュニティーとドイツ社会との関係でも飽きる.

例えば6月に,ドイツ議会が,1915年にトルコでアルメニア人の数万人が殺害された事件を,ジェノサイド,と決議したことに,エルドアンは激しく抗議した.ドイツのトルコ人たちも,同様にブランデンブルグ門の前で抗議した.

またこの夏のクーデタ後も,エルドアン政権への支持を示す動きが広がった.エルドアンが呼びかけたことに応じて,多くのトルコ系住民が街頭で連帯を示したのだ.ケルンでは約4万人が集まってトルコ国旗を振った.

しかしこうした行動は,他のドイツ人に彼らの二重の忠誠心を疑わせるものだ.Der Spiegelの調査によれば,ドイツ国内のトルコ人コミュニティーを通じて,トルコ政府はドイツを組織的に分断している,というイメージが広がっている.

ドイツ内のトルコ系住民は文化的にも宗教的にも保守的で,エルドアンの政党に共感する.それは彼らの権利であるが,それでも1人のドイツ人として,冷酷な支配者を称える姿は見たくない.その支配者はトルコの独立したメディアを弾圧し,クーデタを支持した疑いで数千の人々を逮捕し,死刑の復活を吹聴しているのだ.

もちろん,コミュニティーは単純ではない.エルドアンへの姿勢もそうだ.

ドイツへの忠誠に関する問題で,メルケルがトルコ系ドイツ人にドイツ国家への忠誠を求めたことは,エルドアンがトルコ人とその他のドイツ人との分断を図り,トルコ人の飛び地を作ることと並んで,互いの疎外感を深めた.

しかし,メルケルは多くのドイツ人に向けても話した.緊張や後退もあったし,トルコ系ドイツ人の子どもたちの教育や富裕さの水準は平均よりかなり低いが,それでもドイツは統合化に成功しつつある,と.

偏見,不信,イスラムの伝統的な習慣に対する批判や人種差別もあった.エルドアンに対する過剰な支持を見て,左派やリベラルにも不満が起きた.彼らにとって,ドイツ人であること,ドイツ国家への忠誠とは,憲法への忠誠,そのリベラルで民主的な価値への忠誠である.

たとえ数十年を経ても,緊張と後退をともなう,この過程は終わらないだろう.しかし,楽観主義を支持する理由もあるのだ.ドイツは統合化を完成できるし,やり遂げねばならない.

SPIEGEL ONLINE 09/09/2016

Clinging to Power

Is The Merkel Era Coming To an End?

By SPIEGEL Staff

FT September 10, 2016

Germany: Spotlight falls on the far right

Guy Chazan

訪問者にとって,東ドイツの町Bitterfeldは静かである.しかし住民の1Rene Kにとって,町の姿はディストピア物語だ.アフリカやシリアからの難民たちが連射の駅で住民たちに乱暴する.若者たちは酔っぱらい,朝の6時から投石する.女たちは防犯スプレーなしに家から出ることはなくなった.

Rene Kは,29歳,ボランティアの消防団員だ.彼にとってBitterfeldは,失業と緊縮財政によって衰弱した町であり,多くの難民たちが流入することで社会的な平穏さは打ち砕かれ,公共サービスはガタガタになった.

変化を望む彼がAlternative for Germany, or AfDを歓迎したのは珍しいことではない.右翼の,反移民政策を掲げる政党で,ドイツの政界を翻弄し,メルケル首相の主要な問題になっている.Afdはこの町で32%を得票した.

FT September 12, 2016

Prepare for a power shift after Germany’s general election

Wolfgang Münchau

SPIEGEL ONLINE 09/13/2016

Merkel's Challenge

Navigating the Post-Fact Era

A SPIEGEL Editorial by Klaus Brinkbäumer


   北朝鮮の核実験

NYT SEPT. 8, 2016

North Korea Tests a Mightier Nuclear Bomb, Raising Tension

By CHOE SANG-HUN and JANE PERLEZ

FP SEPTEMBER 9, 2016

North Korea’s Nuke Program Is Way More Sophisticated Than You Think

BY JEFFREY LEWIS

FP SEPTEMBER 9, 2016

Why Did Sanctions Fail Against North Korea?

BY JOHN HUDSON, DAVID FRANCIS

北朝鮮の核兵器開発に対する制裁が効果を発揮していない。それでもワシントンは、金正恩の間違った行動に対する処罰として、制裁を目指している。

ある専門家によれば、北朝鮮は、すでに経済が崩壊しており、自国の生存を維持する唯一の手段は核兵器である、と確信している。そうであれば、いかなる制裁も無視するだろう。また、繰り返し制裁を受けてきたことで、それに対する抵抗能力が高まったようだ。

制裁自体が、支配体制の資源管理をますます個人に対して強力なものにするから、金正恩の命令を効果的にする面もある。中国との貿易は制裁の中でも継続しており、中国政府が北朝鮮の体制が動揺することを望まない姿勢を示している。

北朝鮮の核開発を抑えると期待された中国が、金正恩への権力交代後、北朝鮮との関係悪化で、その役割を果たせなくなった。金正恩はいまだに中国の指導部と面談したことがない。北朝鮮内部の中国政府に近い関係者は、叔父を含めて、粛清された。

中国は、また、韓国が配備することを認めたアメリカのthe Thermal High Altitude Area Defense (THAAD) systemを、北朝鮮が核実験を急ぐ主要な要因として非難している。

FP SEPTEMBER 9, 2016

Can U.S. Missile Defenses Keep Up With the North Korean Threat?

BY PAUL MCLEARY, DAN DE LUCE

金正恩は、これまでに発射したミサイルの数を超える、30基以上の弾道ミサイルを2016年に発射した。中国を含む、近隣諸国を脅迫する道具を手に入れ、グアムにも届くだろう。

長期的には、北朝鮮がアメリカ本土を攻撃する大陸間弾道弾ミサイルも開発することを心配している。THAADはあるが、そのコストは膨大だ。1つのシステムに16億ドルかかる。北朝鮮が多くのミサイルを持つ以上、韓国や日本にはTHAADシステムがあっても不足する。

それゆえ、ソウルとワシントンは、B52による空爆でミサイル貯蔵庫を予防的に破壊する、という別の選択肢を検討している。

防衛関係者は、敵対的なミサイル開発が比較的安価に行われる一方で、アメリカがそれから自国を防衛するためのシステム開発には莫大な費用が掛かることを気にしている。しかも、高度な防衛システムでも、長距離の大陸間弾道弾をすべて打ち落とすことは実証されていない。

こうした予測不可能な北朝鮮に対する不安から、アメリカの抑止力として韓国を核武装する意見も出始めている。

BLOOMBERG3SEP 9, 2016

Taming North Korea

NYT SEPT. 9, 2016

A Big Blast in North Korea, and Big Questions on U.S. Policy

By DAVID E. SANGER, CHOE SANG-HUN and JANE PERLEZ

NYT SEPT. 10, 2016

North Korea, Far From Crazy, Is All Too Rational

By MAX FISHER

北朝鮮は非合理的なのか? 狂っているのか? そのふりをしているだけか?

繰り返し問われた問題であるが、その答えは同じであった。北朝鮮の行動は、決して狂っているのではなく、合理的である。「狂った国である」とか、「無謀な暴力を行使する」という『評価は、北朝鮮に有利に働いている。そして、北朝鮮より強い敵の行動を抑えている。しかし、そのイメージは概ね、誤解とプロパガンダの産物だ。

ある意味で、それは非合理的であるより、一層、危険である。戦争を望まないときでも、北朝鮮は戦争のリスクを高めるからだ。しかも、戦争が起きるとしたら核戦争を意味する。

NYT SEPT. 13, 2016

How the Next President Can Stop North Korea

By JOEL S. WIT

アメリカこそ、北朝鮮との交渉に不可欠の国である。次の大統領は、最初の100日間に、新しい外交イニシアティブを開始するべきだ。

アメリカは同盟諸国を守るすべての措置を取るべきだ。それには、中国の怒りを招いても、韓国に最新のミサイル防衛システムを配備することが含まれる。イランに対して行われた制裁に比べて、まだ不十分な北朝鮮に対する制裁を強化するべきだ。

そして、北朝鮮との交渉を通じて、彼らの安全保障に関する懸念を解消する必要がある。朝鮮戦争の停戦から、アメリカとの恒久的な平和条約合意に移るべきだ。しかしそれには、北朝鮮も含めて、関係諸国の不信感を克服することが難しい。

それにもかかわらず北朝鮮は対話を求めている。なぜなら経済不安があるからだ。おそらく、国際社会から孤立して、経済的な成長はむつかしい、と理解したからだろう。アメリカの新しい大統領が、北朝鮮の核武装論を転換する道を開くべきだ。

(China Daily) 2016-09-14

Nuke tests won't solve DPRK's problems

By Hu Mingyuan


   インフラ投資による刺激策

Project Syndicate SEP 9, 2016

Infrastructure Investment’s Missing Link

CHRISTOPHER SMART

FT September 12, 2016

Building the case for greater infrastructure investment

Lawrence Summers

経済が自律的に成長と雇用を回復しないとわかった以上、政策介入が緊急に必要だ。ソ連の停滞の兆候がチェルノブイリ事故であったように、老朽化した橋、水中の鉛による子供たちのIQ低下、GPSを利用できない交通輸送システム、などはアメリカの未来に深刻な問題となっている。

アメリカは今すぐにもっとインフラ投資をするべきだ。問題は政策枠組みである。

5つの基本問題に応えることだ。1.どれくらい投資するのか? GDP1%2.2兆ドル。2.優先順位は? メインテナンスが遅れている。3.財源は? 増税、債務、使用料。4.民間部門の役割は? 民営化はあまりにも多くの補助金をともなっている。5.投資を効率的に行えるか? 透明性を高める。規制の集約化。


   EU2層化

FP SEPTEMBER 9, 2016

How French Socialism Built — and Destroyed — the European Union

BY ARTHUR GOLDHAMMER

Bloomberg SEP 9, 2016

The European Welfare State Has a Future Again

Philipp Ther

FT September 13, 2016

A two-tier model to revive Europe

Gideon Rachman

スロヴァキアのBratislavaで開催されるEUサミットは、UK抜きの最初のサミットである。イギリス政府はその方針で紛糾し続けているが、ヨーロッパはBrexitの扱いに着手する。

彼らの気分は重苦しいものだ。ドイツの副首相Sigmar Gabrielは、それを代表するように警告した。イギリスには、代価も支払わずに、EUの好きなところだけ残すことはできない、ということを示させねばならない。

それは気分として、また政治的にも、理解できるが、間違いだ。Brexitを脅迫と考えるのではなく、むしろ機会とみなすべきだ。イギリスが示したのは、もはや加盟諸国がより高次の政治統合を喜ばない、ということだ。先週、the Visegrad Four — Hungary, Poland, Slovakia and the Czech Republicも、EUをより緩やかなブロックにして、いくつかの権限を国民国家に戻すように求めた。

Brexitに関する交渉は、EU2層に分割する改革の機会となる。第1層は、より緊密な政治統合に進む。第2層は、単一市場と外交・安全保障に関する協力に参加する。この2層アプローチは、連邦主義者とユーロ懐疑論・反連邦主義者との主張に見合うものだ。

2層の反連邦主義者には、the Visegrad Fourだけでなく、おそらくthe Irish, the Dutch, the Swedes and the Danesも加わる。第1層は、Germany, Belgium, Italy, Spain and (probably) Franceである。

2層化することで、EUは最も重要な2つの使命を満たすことができる。すなわち、単一市場と、世界政治における地位向上だ。しかも、2層化はBrexitの解決につながる。イギリスは第2層に参加し、さらにEU外からも、Switzerland, Norway, Turkey and Ukraineが参加しやすくなる。

もちろん、細部に問題は残る。法律の制定、ユーロ圏、人の自由移動、などについて妥協案が必要だ。オランダが求めるような「緊急停止」や、人の移動と労働とを区別する妥協案がある。

Brexitを協議離婚とみなし、アルカトラズに収容することで加盟諸国を脅しても、それはEUを改善しない。だれをも快適に保つ2層化に挑むべきだ。

FT September 15, 2016

Europe’s survival depends on its leaders’ defence of democracy

Alexander Stubb

NYT SEPT. 15, 2016

Where Is Europe’s Moral Authority?

Nikos Konstandaras

民主主義は互いを嫌う宿命にある。人々が政府に重要な発言権を得れば、隣国やパートナーよりも、自分たちの利益を優先し、短期的な関心で動く。その情念の潮流が移り変わる中で、是な苦に関する制度の基準が、人々を説得するために利用される。

しかし、指導者たちが、ナショナリズム、排外主義、自己利益優先に抵抗できない、あるいは、その意志を持たない場合、どうなるのか?

多くのリベラルな民主主義において、安定性と繁栄とを保障してきた(内外の)システムのネットワークが解体しつつあるようだ。豊かさは保障されず、移民が流入し、テロが起きて、ポピュリズムへの誘惑が強まっている。指導者たちは対話を通じて市民の対立を和解し、長期的な視点で説得できない。政治家たちは正しいことを実行できないと感じている。社会をますます小さな利己的集団に分断する諸力が圧倒的している、と。

ギリシャの債務危機でも、EUの財政緊縮でも、ドイツの難民危機でも、その傾向は明らかだ。経済的困難が政治を分裂させる。どうすれば経済的関心、安全保障に関して、相互に対立するより協力できるのか?

単一の、統合した政策が見いだせないとき、分裂は激化するだろう。外からの介入だけが事態を打開する。それが第2次世界大戦後の、トルーマン・ドクトリンやマーシャル・プランだった。今のアメリカには、そのような関心や能力がない。1930年代とその後の惨禍を回避するために、EUはできた。

もし道徳的な高い見地に立つなら、メルケル首相だけがEU諸国にそれを説得できるだろう。難民に関する人道主義と、各国の個別的な経済に関する優先目標、そして、緊密な経済同盟による成長促進の間で、バランスを取ることである。他の指導者たちも、同様に勇気を示して、分断ではなく協力による安全保障と繁栄を追求するよう、有権者を説得することだ。


   マイナス金利政策

FT September 10, 2016

The twisted logic of negative interest rates

John Kay

ユーロ圏や日本で、マイナス金利を支持する者は、停滞する経済を刺激できる、と考えている。しかし、貯蓄者はマイナス金利を嫌って、現金を保有するだろう。それだけでは不十分だ。

議論の前提を考え直すべきだ。金利が十分に下がっていないのではなく、期待がそれほど低いのである。金融危機後の不況や財政緊縮で、若者の雇用も悪化している。金融緩和で上昇した住宅を、彼らはますます買えなくなった。金融緩和は、ますます支出しない者へと富を再分配している。

ヨーロッパには明らかに多くの投資が必要だ。エネルギー、輸送、住宅、技術革新。しかし、これほどの低金利でも投資する話を聴かない。そして、マイナス金利で資金調達した企業の目的も、長期投資ではなく、短期的利益だ。

FT September 14, 2016

Monetary policy in a low-rate world

Martin Wolf

金融政策は、長期金利を決めることはできないし、短期金利についても大きな影響を与えることはむつかしい。自然金利が低下しているからだ。

超低金利の世界は長く続くかもしれない。金融政策は次に何をなすべきか? マイナス金利? ヘリコプター・マネー? インフレ目標の引き上げ? 短期金利が低下してしまえば、次の不況に対処する手段がない。

財政政策で大規模な公共投資を行い、民間投資や成長のための条件を改善できる。

FT September 16, 2016

The alchemists who turn negative bond yields into profit

Gillian Tett


   Brexitの経済危機

The Guardian, Sunday 11 September 2016

Why would the EU appease the deluded Brexiters?

Nick Cohen

FT September 11, 2016

The false promise of a free-trade paradise for Brexit Britain

Nick Clegg

FT September 12, 2016

Brexit from the perspective of Brussels

David Allen Green

Project Syndicate SEP 13, 2016

Brexit and the Pound in Your Pocket

BARRY EICHENGREEN

Brexitの初期のリターンは、離脱派の主張とは逆に、良くない。国民投票後の7月に、消費者信頼感は急速に悪化した。製造業、建設業でも、一気に悪化している。

1つ、良いニュースは、ポンドが下落したことだ。為替レートが減価すれば、イギリスの輸出の競争力が改善する。また、高価な輸入価格に対して、消費者は支出を国内製品に転換する。これがイギリス経済を刺激するのだ。

問題は、それがどの程度か、ということだ。懐疑派によれば、イギリスの主な輸出は、価格競争力と関係ない、金融サービスである。イギリスの製造品輸出が伸びる可能性は、グローバルな需要の減少で限定されている。

この点を、イギリスの過去の経験が明らかに示している。1931-1932年にイギリスの製品貿易赤字は4分の1も減少した。1933年までに、サービス貿易でも大きく改善した。経済は回復に向かっていた。

3つの状況がこれを実現した。1.余剰生産力があったので、企業は生産を増やせた。2.イギリスは、1932年のオタワ会議で、英連邦諸国と有利な通商合意を結んだ。3.政治的な不確実さは急速に解消した。1931年の危機に責任を問われた労働党政府は退陣し、広く支持を得て保守党政府に代わった。

現在は、明らかに、こうした条件がない。貿易財部門に余剰生産力はあまりなく、EUやその他の諸国との交渉によって法的な枠組みが変わる。政治的不確実さを解決するための選挙も。当面は期待できない。投資家たちは様子見の姿勢である。

1949年も、イギリスは同じような状況にあった。対米貿易赤字と投資家心理が問題になった。9月に、ポンドが再び切り下げられ、18年前と同様、30%も価値を失った。賃金上昇圧力を抑えて、イギリスの輸出は競争力を回復した。ドル圏に対する貿易赤字は急速に減った。1949年の貿易赤字が1950年には黒字になって、GDPも増大した。

この時も3つの条件があった。1.アメリカの景気回復。2.朝鮮戦争勃発による需要。3EPUの成立によるイギリスとヨーロッパ諸国の貿易管理が相互に撤廃された。

3のケースは1967年の切下げだ。1966-67年の国際収支危機は、生産性上昇を超える賃金上昇、それによる貿易赤字、そして、この状態を持続的でないとみなす外国投資家たちからの資金が減って生じた。この時は、貿易収支が改善するのに2年かかった。失業率がすでに低く、貿易財部門に資源を再配置するのに時間がかかったのだ。

その期間、外国投資家は投資を嫌い、調整の困難によってポンドがさらに暴落すると心配した。UKは短期資本を集めることもできなくなって、IMF融資に頼った。

歴史が示すように、為替レートは競争力にとって重要であるが、期待しすぎてはいけない。現在、外部の経済状態が不良で、貿易財の生産拡大に資源を再配置することは難しく、通商交渉が一夜で合意することはない。

金融政策に代わる財政政策による刺激に関しては、今までのところ、政府に緊急意識がない。

Bloomberg SEP 13, 2016

Don't Believe the Good Economic News About Brexit

Tyler Cowen

Brexitの後もイギリス経済は好調だ、という報告を信用すべきではない。そのコストは見えないだけで、非常に高い。諸国民はさまざまな方法で経済的な代償を支払いうる。現実に不況を意味するとは限らない。Brexitによる損失はゆっくりと感じられるだろう。Brexitは、単に不況になるより悪いものだ。

まず、ポンドの価値が下落した。それはイギリスの資産がグローバルな基準で観て価値を減らしたことを意味する。家計の資産はネットで約9兆ポンド失われた。UK政府の保有する土地などの資産を加えて考えるなら、約12兆ポンドになる。

輸入はイギリスGDPの約30%である。10%のポンド減価は、この輸入が高価になることで、3600億ポンド、1人当たり5,625ポンドの損失になる。この3600億ポンドの損失は、心理的に苦痛にならないような、多年にわたって発生する。しかし、典型的な不況のコストよりも大きい。

国家を、将来に富をもたらすメカニズムと考えるなら、Brexitのコストはさらに高い。まだ生産されていない、将来の富も、その価値を失うからだ。

本当の問題は、イギリスがEUを離脱して関税が上がったとき、輸出がどうなるか、また、時間とともに輸入がどれくらい高価になるか、である。Brexitのコストが広まるにつれて、イギリス人は脆弱だと感じ、政治家に求めすぎ、EUとの関係を大きく、また早く制限しすぎるのではないか、と懸念する。

The Guardian, Wednesday 14 September 2016

The Guardian view on Europe: Britain will be outside looking in

Editorial

SPIEGEL ONLINE 09/14/2016

The Brexit Bill

Britain's Departure Likely to Cost EU Billions

By Peter Müller, Christian Reiermann and Christoph Schult

FP SEPTEMBER 14, 2016

Theresa May’s Incredible Shrinking Brexit

BY ROBERT COLVILE

Brexit不況ではない。メイ首相は、何がBrexitだと思うのか?

メイがBrexitを鎮静化した理由は3つある。1Brexitは退屈なものだ。さまざまな分野の離脱条件を交渉する。2.メイは、マーガレット・サッチャーではなく、むしろゴードン・ブラウンだ。細部にわたる行政管理能力が強みである。3.メイの政権運営、特に、Brexitをめぐる体制が、3人の対抗する個性Boris Johnson, Liam Fox, and David Davisによって分裂状態にある。

メイにとってのBrexitとは、活動しないこと、になっている。しかし、その沈黙は失策とみなされるだろう。「テレサ・メイとは、自分を定義しないこと、頭を出さないことで成功した政治家だ。」と、労働党の元影の首相であったEd Ballsは言う。

選挙を考えれば、彼女が何を決めても、多くの有権者は反対する。だから決定を先延ばしにしている。

The Guardian, Thursday 15 September 2016

Brexit was a revolt against liberalism. We’ve entered a new political era

Martin Kettle

FT September 15, 2016

Europe’s crises demand hard talk in Bratislava

FT September 15, 2016

Peace and prosperity in Ireland are threatened by Brexit

John Bruton


後半へ続く)