IPEの果樹園2016

今週のReview

9/5-9/10

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コロンビア内戦終結の合意 ・・・Brexit後の論争 ・・・国家の悪弊 ・・・ジャクソン・ホール・シンポジウム ・・・トランプとメキシコ ・・・日本の内政外交 ・・・リベラルな民主主義の十字路

 [長いReview]

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[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]


l  コロンビア内戦終結の合意

Project Syndicate AUG 26, 2016

Colombia’s Gift to the World

SHLOMO BEN-AMI

4年間の交渉を経て、コロンビア大統領Juan Manuel Santosと反政府ゲリラthe Revolutionary Armed Forces of Colombia (FARC)との和平協定が成立する。コロンビア内戦は、60年間も続き、推定22万人が殺害され、600万人が避難民となった。この外交的な成果を上げたサントス大統領はノーベル平和賞に値する。

和平協定には3つの重要な要素が働いた。コロンビア軍の能力が高まり、FARCの兵士たちを殺害した。サントス大統領の外交により、ベネズエラ、エクアドル、ボリビアという、近隣のFARC支援諸国と関係を修復した。最後に、キューバがアメリカとの和解を目指す新政策を採用し、サントスが和平の機会をつかんだ。

サントスはまた、紛争の根源を解決するために動いた。犠牲者と土地返還に関する法律the Victims and Land Restitution Lawを定めたのだ。暴力的な反乱地域を平定すると同時に、土地を失った何百万もの農民たちに正義をもたらし、生活水準を改善した。ゲリラたちから、語られることのない虐殺行為を正当化する土地改革の目標を奪ったのだ。その法律は、生き残った女性や子供の人権に関する特別条項を含んでおり、国連人権高等弁務官事務所からも称賛された。

確かに,この法律と過渡的正義の体制には反対派もいるし,有権者を分裂させた.元大統領Álvaro UribeFARCの兵士たちへの処罰が不十分だ,と和平に反対している.しかし,この合意は画期的である.それは報復ではなく,真実を語ることを強調する.「正義を回復すること」が目的だ.国民が回復するとしたら,それは長期の,野蛮な戦争が破壊したコミュニティーが修復され,再生することによってだけである.

犠牲者の最優先という原則により,ハバナにおけるFARC指導部との話し合いには,犠牲者の代表も参加した.女性やLGBTの権利を守る部局,また虐殺に関する歴史を検証する部局を設けて,和平がとん挫することを防いでいる.

和平の実現には国内政治が重要だ.内戦は人々を団結するが,和平には不可避的な妥協や擬制が伴う.平和を持やタスコストに対して,誰が支払うかで意見の対立が生じる.民主的な指導者にとって,戦争を続けるよりも,和平交渉の方がリスクは高い.しかも,サントス政権は民主的な選挙によって支持されなければならず,そのような過程を必要としないFARC指導部と交渉することに困難がある.それにもかかわらず,サントスは民主的な手続きを守り,透明性を重視した.

今後の過程は和平交渉以上に困難であるかもしれない.

NYT AUG. 26, 2016

Colombia’s Milestone in World Peace

By STEVEN PINKER and JUAN MANUEL SANTOS

コロンビアの和平は,南北アメリカ,そして世界が平和に向かう里程標である.

この数十年間に,アメリカやソ連が支援することも加わり,各地の内戦が多くの犠牲者を出してきた.Guatemala, El Salvador and Peru, as in Colombia・・・Nicaragua, Argentina

地域の国家間での紛争も,クーデタも,繰り返された.

しかし,今やラテンアメリカも平和な世界に参加できる.世界の戦争地帯は,ナイジェリアからパキスタンまで,人類の6分の1に集中している.戦争は紛争を解決するありふれた方法から,珍しい,小規模の,人々の規範から外れた方法に変わった.

紛争後の社会は脆弱で,紛争再発を防ぐには継続的な支援が必要だ.しかし,平和はユートピアの理想ではない.


l  Brexit後の論争

The Guardian, Friday 26 August 2016

Don’t be fooled. There will be damaging fallout from Brexit

Will Hutton

2カ月たって,離脱派はその勝利が事実や証拠によるものではなく,感情によるものだったと認めている.大破局が起きたわけではないが,スーパータンカーが方向を変えるように,その反応は非常に緩やかに,まだ始まったばかりである.

VOX 26 August 2016

Brexit and other harbingers of a return to the dangers of the 1930s

Avinash Persaud

623日の国民投票で,イギリス国民はEU離脱に52%が賛成し,48%が反対した.離脱派のキャッチフレーズは,しばしば内外のエリートに対する拒否を示す怒りの声とみなされた.エリートたちはこの選択を,事実を無視した,莫大な経済的損失を招く,排外主義によって煽動された,と理解した.

しかし,Brexitを無知や,労働党指導者の失敗とみなすのは,さらに危険な意味を持つ.それは,1930年代にヨーロッパとアメリカを経済混乱に陥れ,第2次世界大戦の惨禍に導いた,強力な社会変化を見逃すことを意味する.それはイギリスだけでなく,トランプの台頭のような,国際的現象だ.

離脱を選択した有権者は,高齢で,大学を卒業していない者が多い.

多くの国や時期についての研究が示すように,貿易自由化の調整コストをもっぱら負担する者は,EU離脱を選択した有権者と同じである.すなわち,非熟練の,高齢の労働者たちだ.Brexitは,無知な有権者の非合理的な反応ではなく,他の地域にも見られる,貿易によって損失を被るもののきわめて合意的な投票であった.

もちろん,貿易自由化から利益を得るかどうかは,単に,大学卒業の資格があるかどうかの問題ではない.自由化が,あなたと同じ熟練の労働者の供給を増やすかどうか,である.アメリカでは1970年代以来,インフレに比べて平均時給が上昇しなかった.そして70%の労働者の時給は低下してきたのだ.低熟練部門では,イギリスの工場が,いつでも働くことができる待機労働者に対して,支払う仕事がないような「ゼロ時間」契約を導入できるようになった.

事実が経済学の理論に従う珍しいケースだ.貿易は,その国の厚生水準をネットで高める.これを実験で示すことは難しいが,スエズ運河の閉鎖は,その純粋な例である.196765日にイスラエルはエジプト空軍に攻撃を加えた.スエズ運河閉鎖によって,インドからイギリスには,喜望峰を回る追加の4800キロ,16日間が必要になった.えいきょうをうけたすうかこくのぼうえきとGDP に関するJames Freyrerの研究によれば,貿易において10%の増額(もしくは減額),国民所得の1.6%追加(もしくは減少)であった.

貿易による受益者は,敗者に対して補償することで,その勝利を正当化できる.しかし,貿易自由化はネオリベラルの主張と結びついていた.すなわち,それは敗者の失敗である,と.貿易自由化は,失業手当,労働者再教育,(低所得者向け)社会住宅の廃止と一緒に行われた.貿易による利益は分配されることなく,ますます集積したのだ.貿易自由化により,諸国間の所得格差は縮小したが,国内の所得格差は拡大した.Brexitやトランプの共和党大統領候補指名は,ひとびとが意見を変えたことを示した.

流行の対策は金融緩和であるが,これは熟練を持つエリートたちがもっぱら所有する住宅や金融資産の価格を上昇させ,他の者からはますます手が出なくなる.消費を刺激する効果はほとんどない.持続的な効果を得るには,財政政策を使って敗者たちに補償することだ.職を失った労働者たちの熟練を高める強烈な政策,新しい職場のそばで労働者が借りることのできる住宅を建設する政策だ.

それにはコストがかかるが,何もしなければもっと大きなコストを強いられる.もし貿易ナショナリズムが1930年代の貿易・通貨戦争に至れば,貿易とGDPは減少し,大量失業が生まれる.

FT September 2, 2016

Brexit gives us a chance to finish the Thatcher revolution

Nigel Lawson

さまざまな脅迫にもかかわらず,イギリスの有権者たちは正しい選択をした.それは民主的な自治政府を持つことを意味する.

嬉しいことに,われわれが正しいカードを配るなら,Brexitから十分な経済的利益を得ることができる.

私は1980年代にイギリス経済を転換させたサッチャー政権の閣僚であった.それはサプライサイドの改革であった.法的な規制緩和が決定的に重要な中身であった.しかし,それはイギリスが自国で行っている規制にとどまり,ますます多くのEUによる規制体系によりイギリスは取り込まれていた.Brexitはこの改革を完成するチャンスを与えるものだ.

イギリスを,ヨーロッパで最もダイナミックな,自由な国にすることだ.

現在,すべての関心はEUとの交渉に向かっているが,特別な合意など必要ない.EU市民の資格を失うことは災厄ではない.世界中の他の諸国がヨーロッパ単一市場と取引しているのだから.自由貿易協定などなくても,WTOの加盟国であることで,貿易はできる.

ロンドンの地位を心配する声もあるが,ニューヨークと並んで世界の2大金融センターに代わる国はヨーロッパの時間帯に存在しない.むしろ銀行同盟や金融取引税のようなEUの規制こそ金融センターを損なうだろう.

移民規制や共通農業政策にかかわる農業問題は交渉を必要とするが,EU規制体系を離脱することの利益は大きい.


l  国家の悪弊

FP AUGUST 26, 2016

The Countries with the Worst Bad Habits

BY STEPHEN M. WALT

ロシアはしばしば反政府活動家やジャーナリスト、元高官を毒殺する。それは古くからあることだ。ロシアに限らず、国家には様々な悪弊がある。

アメリカは相手の事情を無視して民主主義を拡大し、それが逆噴射すると戦争を起こした。遠くの国で、標的とする人物を爆撃している。イスラエルは占領政策と厳格な報復措置を実施している。周辺地域で関係者たちを殺害した。ドイツは、その極端なインフレ嫌悪の政策を理由にユーロ圏のデフレを悪化させ、他国で深刻な失業を生じている。

こうした悪弊は治せないことではない。ドイツや日本が平和国家になった。アメリカもかつての奴隷制や人種差別を是正した。しかし、一朝一夕に変わるものでもない。現実的であるべきだ。


l  ジャクソン・ホール・シンポジウム

FT AUGUST 30, 2016

Jackson Hole was a missed opportunity for a policy pivot

Mohamed El-Erian

ジャクソン・ホール・シンポジウムは2つの意味で注目された。1.世界経済は今もその生産能力を下回って活動している。2.金融政策だけに依存する状態が続いている。

中央銀行家たちは経済的な課題に対する新しい政策を示す、と期待する者もいた。他方、こうしたことが、非生産的とまではいわないが、効果がないと考える者もいた。結局、国際金融システムに重要な役割を果たす中央銀行は、現行の政策を続けるだろう。

それは失望させるものだ。

今、求められているのは政策の新機軸だ。中央銀行家たちに過度に依存することをやめて、より全体的な対応、成長志向の、構造改革に及ぶ広範な政策対応が必要だ。

われわれはT字路にある。どちらに進むのか?


l  トランプとメキシコ

FP AUGUST 31, 2016

What Enrique Peña Nieto Should Tell Donald Trump

BY DANIEL ALTMAN

私がもしメキシコ大統領であれば、ドナルド・トランプにアメリカとの経済関係に関して、会談でいくつか言いたい。トランプが大統領になったとき、メキシコ経済がダメージを受けるのを減らすためだ。

メキシコ経済の成長率は、2013年以来、3%に満たない。政府債務は増大し、ペソ価値はドルに対して2008年に比べて半減した。同じ期間に賃金は40%しか上昇していないから、輸入財の価格は高くなり、彼らの生活水準は停滞もしくは悪化している。

トランプの政策はメキシコにもアメリカにも影響する。彼はNAFTAを破棄するという。それはメキシコからアメリカへの輸出財を高価にし、アメリカ企業は他国から輸入するだろう。輸出の81%がアメリカ市場向けであるから、メキシコ経済は甚大な打撃を受ける。

トランプは繰り返し、メキシコに壁の建設費用を支払わせるため強制すると主張した。支払うまで、メキシコ人の送金を止めるとか、メキシコからの輸入に課税するとか。しかし、送金の禁止は効果がなく、輸入税はメキシコ経済にさらに大きなダメージを与える。

その結果は、皮肉なことに、アメリカへの移民を増やすだろう。他の経済でもそうだが、失業と貧困が増えるとき、メキシコ労働者たちは外国で仕事を探す。しかも、壁の建設を恐れて、彼らはいち早くアメリカに移民するだろう。トランプの政策は、メキシコからの未登録労働者を増やすのだ。

治安に重大な問題が生じる。メキシコの輸出品でNAFTAにも輸入税にも関係ないのは、麻薬である。もはや他の産業で雇用されないメキシコ人たちは、生活のために麻薬貿易に加わるだろう。それは、国境に壁があってもなくても、暴力と汚職を増やす。

移民や犯罪の増大はトランプの政治目的にとって都合が良いかもしれないが、両国の経済にとっては好ましくない。


l  日本の内政外交

Project Syndicate AUG 29, 2016

Japan vs. the Currency Speculators

KOICHI HAMADA

アメリカが求めるようなTPPによる為替介入の禁止を認めたら、アベノミクスは崩壊する。政治情勢からみて、日本政府はTPPを拒めないだろうが、日銀は外国債券を購入して金融緩和を続けるべきだ。円高に投機するファンド・マネージャーたちに対抗するには、消費者に向けた「ヘリコプター・マネー」も議論するべきだ。

Bloomberg AUG 31, 2016

China's 'Little Green Boats' Have Japan on Alert

Eli Lake

日本の尖閣諸島周辺に多数の中国漁船が現れている。それに乗っているのは、本当は軍人であろう、と見られている。

ロシアが2014年にクリミアで行ったように、中国は所属を画した兵士たちを使って尖閣諸島を奪うつもりだ。アメリカは同じ失敗を許せない。


l  リベラルな民主主義の十字路

FT AUGUST 30, 2016

Capitalism and democracy: the strain is showing

Martin Wolf

リベラルな民主主義とグローバルな資本主義との結婚は永久に続くのか?

西側民主主義における、特にその最も重要な国で大統領候補がポピュリストであるとき、この問いは深刻だ。過去40年間に西側で政治経済システムが成功したことは、世界の他の部分でも魅力を発揮するとは言えない。では、どうなるのか?

リベラルな民主主義、すなわち、普通選挙権と個人の権利、と資本主義、すなわち、財、サービス、労働力の自由な売買、の間には自然な結合がある。それらは個人や市民としての人々の選択を重視する。

しかし、それらが対立することも容易にわかる。民主主義は平等主義であるが、資本主義は結果において不平等だ。もし経済が崩壊すれば、1930年代のように、人々は権威主義体制を選ぶかもしれない。もし経済的な成果があまりにも不平等に分配されれば、富裕層は民主主義を金融寡頭政治に変えるだろう。

歴史的には、資本主義の成立と選挙権の拡大とは一緒に進んだ。それゆえ最も豊かな諸国がリベラルな民主主義を採用している。実質所得の増大が広まることで、資本主義の正当化と、民主主義の安定性が維持された。しかし今、資本主義はそうした繁栄を容易に実現できなくなっている。逆に、不平等は増大し、生産性の上昇は遅れている。このことは民主主義を非寛容にし、資本主義の正当性を失わせる。

しかも、現代の資本主義はグローバルな性格を強めている。これも自然なことだ。資本家たちは、それが許されるならば、法的限界を無視して活動する。機会がグローバルなら、彼らの活動もグローバルだ。

しかしDani Rodrikが注目してきたように、グローバリゼーションは国家の自律性を制約する。「民主主義と、国家主権と、グローバルな経済統合とは、互いに矛盾する。われわれはこれら3つの中から2つを結びつけるだけで、同時に3つを完全に実現できない。」

国境を超える資本移動の自由は、特に、国家が課税し、規制する能力を制約するだろう。さらに、大規模な移民は個人の自由と民主的な主権との最も厳しい対立となる。移民問題が現代民主主義の避雷針となっていることも当然である。

リベラルな民主主義とグローバルな資本主義との関係が破たんするとしたら、何が起きるのか? 1つの可能性は、グローバルな金融寡頭政治であり、国民的な民主体制は終わる。ローマ帝国で起きたように、共和制が続くかもしれないが、その内容は失われる。

その逆の可能性は、非リベラルな民主主義、あるいは、国民投票型の独裁制である。支配者は国家と資本家をともに支配する。ロシアやトルコで起きていることだ。管理された国民的資本主義が、グローバルな資本主義にとって代わる。1930年代に起きたことがそうであったように、西側政治家もそれを目指すかもしれない。

リベラルな民主主義とグローバルな資本主義の両方を保持することを望む者は、難しい問題に答えねばならない。すなわち、企業の利益のために、国民政府が規制する能力を制限する国際合意をさらに強化すべきか?  Lawrence Summersが主張するように、国際合意は規制のハーモナイズや障壁の除去として正当化するのではなく、市民たちに強い力を与えることで支持される。

経済政策の第1の目的は、少数者ではなく多数者の利益、市民の理想にある。もし政治家がそれを見失えば、われわれの政治秩序は崩壊する。

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The Economist August 20th 2016

Political reform stalls: Africa’s fragile democracies

(コメント) 夏休みで、あまりじっくりと読めませんでした。

アメリカの金融システムが、金融危機後の救済によっても改革が進まなかったことを「仲間内の資本主義」と呼んで懸念しています。これではかつてアジア通貨危機を「クローニー・キャピタリズム」と呼んだことと違いません。経済学を変えた重要なアイデアとして、ナッシュ均衡を取り上げています。しかし、私には納得いくものではありません。

唯一面白かったのは、アフリカの民主主義に関する考察です。民主化されたと言っても、それに必要な制度や運動は育たず、市民の政治意識も変わっていません。西洋型の民主主義に全く同型でなくても、その土地にあった民主主義が育つにはどうしたらよいのか? 記事は、都市中産階級が増大することを重視します。そのためには、豊かな諸国が市場を開放し、貿易や金融システムを利用しやすくする、言い換えれば、グローバルな政治構造をもたらす民主化が重要なのです。

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IPEの想像力 9/5/16

Eテレ:地球ドラマチック「レンガを運び続けて」を観ました。

巨大なレンガ工場と高い煙突が目立つ風景の中、地面にはレンガが整然と積まれています。バングラデシュの少女、タジンは11歳です。朝6時から夕方6時まで、12時間、レンガを1000個も運び、やっと98円を稼ぎます。・・・わずか、98円です!

・・・私は,叫ぶのをやめて,深くため息をつきました.

レンガ工場の近くに暮らし、父親は自転車タクシー(輪タク)で収入を得ますが、なかなか家族の生活や家賃を支払うことはできません。子供たちも小学校を諦めました。タジンは,母親がくれた小遣いで自分のサンダルを買うことも延期し(思ったより高かったので),弟の服を買います.

バングラデシュの子供たちは、なぜこれほど貧しいのでしょうか? 子供たちが、世界のどこでも、学校に通い、十分に賃金を得る職に就いて、生活を改善できる余地は、ほとんど無尽蔵にある、と私は確信します。

それこそが、無制限労働供給下の経済発展、です。もし社会モデルを改善できるなら。

貧困の原因は、「社会構造」である、と番組はインドの社会学者の意見を紹介しました。人口の10%が資源の90%を支配し、多くの農民は小作で、債務を負っています。タジンの両親もそうです。

貧しい農民は仕事を求めて、首都ダッカに流入し、ほとんどが文字を読めない未熟練労働者であるため、限られた仕事にしか就けません。輪タク、レンガ運び、あるいは,鉄パイプを素朴な道具と人力で生産する鉄工所、など。

世界市場向けの輸出で、衣類の縫製加工が多くの労働者を雇用できれば、あるいは、子供たちがもっと学校に通って、熟練労働者として働けるようになれば、バングラデシュは次の新興工業国となり、急速に成長するでしょう。しかし、タジンの両親は、娘が学校に通えば、生活に困り、債務も返済できない、と反対します。

つまり、タジンのような子供たちが大きな可能性を得るには、

1.   土地所有構造など、資源を独占する経済社会システムの改革を推進する。

2.   輸出向けの労働集約的な加工場を育成・誘致する。

3.   そのためのインフラ整備や学校の建設にもっと投資する。

4.   親たちの教育に対する考え方、教育システムや教師の教授法を改善する。

そして、そのために豊かな諸国の担うべき役割は、バングラデシュに公共財支援や民間投資を行い、それが十分な税収,世界市場への輸出として利潤を生むように、貿易と投資の国際システムを貧しい人々にも利用可能にすることでしょう。

さらに、出稼ぎや留学、移民の可能性が考えられます。

すなわち、トランプやメイのように、政治が自国民の利益だけを優先する姿勢は、世界を貧しくし、その成長を損なっています。貧しい家庭の子供が学校に通うことだけでなく,世界銀行は「チャーター・シティ」にも投資し始めるかもしれません.そして,豊かな諸国では,産業構造や地域経済を積極的に転換し続けるか,あるいは、深刻な政治的危機に向かいます.

進歩的な野党は、何を主張するべきなのか? 民主党党首選挙の候補者たちが訴える、もっと意欲的な,力強い政策を聴きたいです。

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