(前半から続く)


l  中国の国際行動

FP AUGUST 26, 2016

China Is Fueling a Submarine Arms Race in the Asia-Pacific

BY ELIAS GROLL, DAN DE LUCE

南シナ海で中国が巨額の投資でレーダー基地を建設しているが、他国はこれを阻止できない。それは軍拡競争を刺激する。アジアの海で、潜水艦の競争的な拡大が起きている。

YaleGlobal, 30 August 2016

G20 Summit: Leaving West to Deal With Crises, China Focuses on Positives

François Godement

YaleGlobal, 1 September 2016

Despite Chinese Shadows, Southeast Asian Friendship With US Worth Cultivating

Satu Limaye

FP SEPTEMBER 2, 2016f

Does Chinese Civilization Come From Ancient Egypt?

BY RICARDO LEWIS

FP SEPTEMBER 2, 2016

Anxiety in the Air, World Leaders Converge on China

BY JOHN DELURY, HO-FUNG HUNG, PHILIPP IVANOV

Bloomberg SEP 2, 2016

Kerry's Soft Words Blunt U.S. Hard Power in South China Sea

Eli Lake


l  シリア・パラドックス

NYT AUG. 26, 2016

Syria’s Paradox: Why the War Only Ever Seems to Get Worse

By MAX FISHER


l  飲酒による死亡

FT August 27, 2016

America is still learning how to cope with the demon drink

Philip Delves Broughton


l  新興経済

FT August 27, 2016

The rally in emerging markets masks frailties

Project Syndicate AUG 29, 2016

An Opportunity for Egypt and the IMF

MOHAMED A. EL-ERIAN

Bloomberg AUG 30, 2016

Central Asia Is Less Stable Than It Looks

Leonid Bershidsky

乱気流のサインが出た。「シートベルトを締めてください。」

ソビエト連邦からの移行を果たした中央アジアの「スタン」諸国は、ウズベキスタンの独裁者カリモフが死亡したことで、混乱期に入ると予想される。ロシアを含めて、こうした諸国には平和的な権力継承のメカニズムが確立されていない。


l  トランプとメキシコ

NYT AUG. 27, 2016

Trump and the Dark History of Straight Talk

By MARK THOMPSON

FT August 29, 2016

Trump campaign benefits from criticism of trade imbalances

Wilbur Ross

Project Syndicate AUG 31, 2016

The Many Extremes of Donald Trump

SIMON JOHNSON

FP AUGUST 31, 2016

What Enrique Peña Nieto Should Tell Donald Trump

BY DANIEL ALTMAN

私がもしメキシコ大統領であれば、ドナルド・トランプにアメリカとの経済関係に関して、会談でいくつか言いたい。トランプが大統領になったとき、メキシコ経済がダメージを受けるのを減らすためだ。

メキシコ経済の成長率は、2013年以来、3%に満たない。政府債務は増大し、ペソ価値はドルに対して2008年に比べて半減した。同じ期間に賃金は40%しか上昇していないから、輸入財の価格は高くなり、彼らの生活水準は停滞もしくは悪化している。

トランプの政策はメキシコにもアメリカにも影響する。彼はNAFTAを破棄するという。それはメキシコからアメリカへの輸出財を高価にし、アメリカ企業は他国から輸入するだろう。輸出の81%がアメリカ市場向けであるから、メキシコ経済は甚大な打撃を受ける。

トランプは繰り返し、メキシコに壁の建設費用を支払わせるため強制すると主張した。支払うまで、メキシコ人の送金を止めるとか、メキシコからの輸入に課税するとか。しかし、送金の禁止は効果がなく、輸入税はメキシコ経済にさらに大きなダメージを与える。

その結果は、皮肉なことに、アメリカへの移民を増やすだろう。他の経済でもそうだが、失業と貧困が増えるとき、メキシコ労働者たちは外国で仕事を探す。しかも、壁の建設を恐れて、彼らはいち早くアメリカに移民するだろう。トランプの政策は、メキシコからの未登録労働者を増やすのだ。

治安に重大な問題が生じる。メキシコの輸出品でNAFTAにも輸入税にも関係ないのは、麻薬である。もはや他の産業で雇用されないメキシコ人たちは、生活のために麻薬貿易に加わるだろう。それは、国境に壁があってもなくても、暴力と汚職を増やす。

移民や犯罪の増大はトランプの政治目的にとって都合が良いかもしれないが、両国の経済にとっては好ましくない。

NYT SEPT. 1, 2016

Why This Economy Needs Donald Trump

By DAVID MALPASS

Project Syndicate SEP 2, 2016

Clintonomics vs. Trumponomics

MICHAEL J. BOSKIN

NYT SEPT. 2, 2016

Moderate Republicans, Unite!

By MICHAEL TOMASKY

FT September 3, 2016

Mexico visit highlights the two faces of Trump


l  日本の内政外交

Project Syndicate AUG 29, 2016

Japan vs. the Currency Speculators

KOICHI HAMADA

アメリカが求めるようなTPPによる為替介入の禁止を認めたら、アベノミクスは崩壊する。政治情勢からみて、日本政府はTPPを拒めないだろうが、日銀は外国債券を購入して金融緩和を続けるべきだ。円高に投機するファンド・マネージャーたちに対抗するには、消費者に向けた「ヘリコプター・マネー」も議論するべきだ。

Bloomberg AUG 31, 2016

China's 'Little Green Boats' Have Japan on Alert

Eli Lake

日本の尖閣諸島周辺に多数の中国漁船が現れている。それに乗っているのは、本当は軍人であろう、と見られている。

ロシアが2014年にクリミアで行ったように、中国は所属を画した兵士たちを使って尖閣諸島を奪うつもりだ。アメリカは同じ失敗を許せない。


l  リベラルな民主主義の十字路

FT AUGUST 30, 2016

Capitalism and democracy: the strain is showing

Martin Wolf

リベラルな民主主義とグローバルな資本主義との結婚は永久に続くのか?

西側民主主義における、特にその最も重要な国で大統領候補がポピュリストであるとき、この問いは深刻だ。過去40年間に西側で政治経済システムが成功したことは、世界の他の部分でも魅力を発揮するとは言えない。では、どうなるのか?

リベラルな民主主義、すなわち、普通選挙権と個人の権利、と資本主義、すなわち、財、サービス、労働力の自由な売買、の間には自然な結合がある。それらは個人や市民としての人々の選択を重視する。

しかし、それらが対立することも容易にわかる。民主主義は平等主義であるが、資本主義は結果において不平等だ。もし経済が崩壊すれば、1930年代のように、人々は権威主義体制を選ぶかもしれない。もし経済的な成果があまりにも不平等に分配されれば、富裕層は民主主義を金融寡頭政治に変えるだろう。

歴史的には、資本主義の成立と選挙権の拡大とは一緒に進んだ。それゆえ最も豊かな諸国がリベラルな民主主義を採用している。実質所得の増大が広まることで、資本主義の正当化と、民主主義の安定性が維持された。しかし今、資本主義はそうした繁栄を容易に実現できなくなっている。逆に、不平等は増大し、生産性の上昇は遅れている。このことは民主主義を非寛容にし、資本主義の正当性を失わせる。

しかも、現代の資本主義はグローバルな性格を強めている。これも自然なことだ。資本家たちは、それが許されるならば、法的限界を無視して活動する。機会がグローバルなら、彼らの活動もグローバルだ。

しかしDani Rodrikが注目してきたように、グローバリゼーションは国家の自律性を制約する。「民主主義と、国家主権と、グローバルな経済統合とは、互いに矛盾する。われわれはこれら3つの中から2つを結びつけるだけで、同時に3つを完全に実現できない。」

国境を超える資本移動の自由は、特に、国家が課税し、規制する能力を制約するだろう。さらに、大規模な移民は個人の自由と民主的な主権との最も厳しい対立となる。移民問題が現代民主主義の避雷針となっていることも当然である。

リベラルな民主主義とグローバルな資本主義との関係が破たんするとしたら、何が起きるのか? 1つの可能性は、グローバルな金融寡頭政治であり、国民的な民主体制は終わる。ローマ帝国で起きたように、共和制が続くかもしれないが、その内容は失われる。

その逆の可能性は、非リベラルな民主主義、あるいは、国民投票型の独裁制である。支配者は国家と資本家をともに支配する。ロシアやトルコで起きていることだ。管理された国民的資本主義が、グローバルな資本主義にとって代わる。1930年代に起きたことがそうであったように、西側政治家もそれを目指すかもしれない。

リベラルな民主主義とグローバルな資本主義の両方を保持することを望む者は、難しい問題に答えねばならない。すなわち、企業の利益のために、国民政府が規制する能力を制限する国際合意をさらに強化すべきか?  Lawrence Summersが主張するように、国際合意は規制のハーモナイズや障壁の除去として正当化するのではなく、市民たちに強い力を与えることで支持される。

経済政策の第1の目的は、少数者ではなく多数者の利益、市民の理想にある。もし政治家がそれを見失えば、われわれの政治秩序は崩壊する。


l  長期停滞

Project Syndicate AUG 30, 2016

How to Fight Secular Stagnation

MICHAEL SPENCE

Project Syndicate AUG 31, 2016

The Economic Trend Is Our Friend

J. BRADFORD DELONG


l  Appleと世界課税

Bloomberg AUG 30, 2016

Wanted: A Government to Claim Apple's Taxes

Leonid Bershidsky

FT AUGUST 31, 2016

Brussels strikes at Apple’s tax planning

FT September 1, 2016

Apple, keep your cool over global tax

John Gapper

FT September 1, 2016

Washington will not let Brussels have the last word on Apple

Itai Grinberg

FP SEPTEMBER 1, 2016

Will Congress Get Serious About U.S. Offshoring Loopholes?

BY ANNE USHER

FT September 2, 2016

Ireland reels from the unlikely Apple windfall


l  クルドの夢

FT AUGUST 31, 2016

Kurds’ dream of statehood looks as distant as ever

David Gardner


l  ヨーロッパの経済政治統合

VOX 31 August 2016

Europe needs its own Alexander Hamilton

Sylvester Eijffinger

Bloomberg SEP 1, 2016

Want a Free Market? Abolish Cash

Narayana Kocherlakota


l  イスラム国家

Project Syndicate SEP 1, 2016

The Islamic State’s European Strategy

OMAR ASHOUR

FT September 3, 2016

Isis is down, but not yet out

John Sawers

********************************

The Economist August 20th 2016

Political reform stalls: Africa’s fragile democracies

(コメント) 夏休みで、あまりじっくりと読めませんでした。

アメリカの金融システムが、金融危機後の救済によっても改革が進まなかったことを「仲間内の資本主義」と呼んで懸念しています。これではかつてアジア通貨危機を「クローニー・キャピタリズム」と呼んだことと違いません。経済学を変えた重要なアイデアとして、ナッシュ均衡を取り上げています。しかし、私には納得いくものではありません。

唯一面白かったのは、アフリカの民主主義に関する考察です。民主化されたと言っても、それに必要な制度や運動は育たず、市民の政治意識も変わっていません。西洋型の民主主義に全く同型でなくても、その土地にあった民主主義が育つにはどうしたらよいのか? 記事は、都市中産階級が増大することを重視します。そのためには、豊かな諸国が市場を開放し、貿易や金融システムを利用しやすくする、言い換えれば、グローバルな政治構造をもたらす民主化が重要なのです。

******************************

IPEの想像力 9/5/16

Eテレ:地球ドラマチック「レンガを運び続けて」を観ました。

巨大なレンガ工場と高い煙突が目立つ風景の中、地面にはレンガが整然と積まれています。バングラデシュの少女、タジンは11歳です。朝6時から夕方6時まで、12時間、レンガを1000個も運び、やっと98円を稼ぎます。・・・わずか、98円です!

・・・私は,叫ぶのをやめて,深くため息をつきました.

レンガ工場の近くに暮らし、父親は自転車タクシー(輪タク)で収入を得ますが、なかなか家族の生活や家賃を支払うことはできません。子供たちも小学校を諦めました。タジンは,母親がくれた小遣いで自分のサンダルを買うことも延期し(思ったより高かったので),弟の服を買います.

バングラデシュの子供たちは、なぜこれほど貧しいのでしょうか? 子供たちが、世界のどこでも、学校に通い、十分に賃金を得る職に就いて、生活を改善できる余地は、ほとんど無尽蔵にある、と私は確信します。

それこそが、無制限労働供給下の経済発展、です。もし社会モデルを改善できるなら。

貧困の原因は、「社会構造」である、と番組はインドの社会学者の意見を紹介しました。人口の10%が資源の90%を支配し、多くの農民は小作で、債務を負っています。タジンの両親もそうです。

貧しい農民は仕事を求めて、首都ダッカに流入し、ほとんどが文字を読めない未熟練労働者であるため、限られた仕事にしか就けません。輪タク、レンガ運び、あるいは,鉄パイプを素朴な道具と人力で生産する鉄工所、など。

世界市場向けの輸出で、衣類の縫製加工が多くの労働者を雇用できれば、あるいは、子供たちがもっと学校に通って、熟練労働者として働けるようになれば、バングラデシュは次の新興工業国となり、急速に成長するでしょう。しかし、タジンの両親は、娘が学校に通えば、生活に困り、債務も返済できない、と反対します。

つまり、タジンのような子供たちが大きな可能性を得るには、

1.   土地所有構造など、資源を独占する経済社会システムの改革を推進する。

2.   輸出向けの労働集約的な加工場を育成・誘致する。

3.   そのためのインフラ整備や学校の建設にもっと投資する。

4.   親たちの教育に対する考え方、教育システムや教師の教授法を改善する。

そして、そのために豊かな諸国の担うべき役割は、バングラデシュに公共財支援や民間投資を行い、それが十分な税収,世界市場への輸出として利潤を生むように、貿易と投資の国際システムを貧しい人々にも利用可能にすることでしょう。

さらに、出稼ぎや留学、移民の可能性が考えられます。

すなわち、トランプやメイのように、政治が自国民の利益だけを優先する姿勢は、世界を貧しくし、その成長を損なっています。貧しい家庭の子供が学校に通うことだけでなく,世界銀行は「チャーター・シティ」にも投資し始めるかもしれません.そして,豊かな諸国では,産業構造や地域経済を積極的に転換し続けるか,あるいは、深刻な政治的危機に向かいます.

進歩的な野党は、何を主張するべきなのか? 民主党党首選挙の候補者たちが訴える、もっと意欲的な,力強い政策を聴きたいです。

******************************