前半から続く)


l  アフリカの移民

Project Syndicate AUG 19, 2016

An OPEC for Migrant Labor?

SAMI MAHROUM

Project Syndicate AUG 19, 2016

Counting Africa’s Invisible Workers

CARL MANLAN

FP AUGUST 19, 2016

In Pursuit of the African Dream

BY TY MCCORMICK

エチオピアを逃れて、兄弟は未来への機会を求めて国境を超えた。15日間をかけて2500マイルを移動する計画であったが、すぐに密入国業者に棄てられた。


l  新興市場と金融緩和

Project Syndicate AUG 19, 2016

China’s Painful Structural Transformation

ZHANG JUN

FT August 25, 2016

As China nears exhaustion investors must look elsewhere

James Kynge

欧米日の量的緩和が、銀行や投資家にとって、新興市場の債券を最小の悪い選択肢として好まれている。それは新興市場の安価な労働力や投資機会に注目したのではなく、マイナスではない債券利回りだけを求めている。

量的緩和ではないが、中国も国有銀行と地方政府、国有企業を通じて、同様の信用拡大を行った。しかし、もはや投資拡大には利潤の見込みがない。


Project Syndicate AUG 19, 2016

Trump’s Fiscal Follies

JEFFREY FRANKEL


l  将来の天皇とだれが結婚するか?

NYT AUG. 20, 2016

Who Wants to Marry an Emperor?

By MINAE MIZUMURA

「税金を食いつぶす寄生虫」という感覚から、国民の苦しみを癒す役割に尽くす人物として、私は天皇に好意を持ったし、高齢者であるにもかかわらず公務に追われる身に同情した。だれも彼のような仕事を望まないだろう。

しかし、天皇よりも辛いのは、彼の妻になる女性だ。だれが天皇になる者と結婚するだろうか?

首相がころころ変わるこの国で外交的や役割を担い、また西側の知識人には理解できない制度を継続することに、私は楽しみを感じる。

しかし、たとえ天皇制を残すとしても、その子孫は天皇と結婚する女性がいなければ生まれない。彼女の役割は男子を生むことだ。美智子はそのストレスから言葉を失った。療養した後も、あまりにもか細い、衰弱した姿になって、私は驚いた。

天皇とその子供たちには、引退することも、仕事を選ぶこともできない。女性が天皇になることも、昔の法律により、あるいは、2600年の伝統により、否定する。だれが男子を生むために彼と結婚するだろうか?


l  ネオリベラリズム

The Guardian, Sunday 21 August 2016

The death of neoliberalism and the crisis in western politics

Martin Jacques

ネオリベラリズム、ハイパー・グローバリゼーションに対する反発は遅かったが、今や拡大し、抑えられないだろう。


l  世界政治の将来

FP AUGUST 21, 2016

Choose Your Own Adventure: The Future of the World

BY STEPHEN M. WALT

トランプに関して書き続けるより、もう1つの、ひどいけれどましな話、Brexitを取り上げたい。先週、the American Academy of Arts and Sciences on the implications of the Brexit voteに参加し、近頃の世界がどこに向かうのかについて考えたからだ。

現在の世界秩序が解体しつつある、と人々が感じているのは理解できる。世界の貧困は減少し、大国間の戦争は起きず、科学技術の目覚ましい進歩にもかかわらず、世界政治は20年前に期待された理想に向かっていない。

われわれの誰も未来を予測できないのだから、期待する世界政治やわれわれが勧める政策選択は、重要な意味で、核心となる信念に依存している。世界政治の基本性格について、重要なアクターのアイデンティティについて、彼らの行動を決める最も重要な主要因について、何を重視するか、という信念だ。

ギルピンには悪いが、私は3つのモデルを示したい。

1は、リアリズムの再生だ。リアリストは、国家を重要なアクターと考える。国家間の関係は、再発し続ける紛争や戦争によって決定される。国家に対して強制できるような効果的な世界政府がないから、国家は他国が何をするのか心配し、自己防衛のためにパワーや優位を求めて競争するからだ。国家間競争は、非国家アクターの登場も刺激する。

この視点からは、過去70年間が、奇跡的な、輝かしい例外であった。冷戦期は、2極化と核兵器による抑止力で、戦争を効果的に抑制した。ヨーロッパは、民主主義、経済的相互依存、平等化、エスニックな同質性によって、平和の維持、EUの成長と拡大を実現した。しかしそれは、アメリカ(そしてソ連)の「平和を広める力」が背景にあった。

こうしたリベラルな秩序が解体することは、不可避ではないが、それが起きてもリアリストたちは驚かない。ソ連は消滅して、対抗するために団結する必要はなくなった。ヨーロッパ市民は自国を守るために防衛する意志を持たず、アメリカに頼っている。ユーロ危機、難民危機、その他、EUの将来が怪しくなっている。Brexitへの支持投票は、最近の遠心力を示す1つの例でしかない。それは、少なくとも26年前から、リアリストたちが予測していたことだ。

しかし、それは悲観的に過ぎるかもしれない。1945年から2000年は、単なる例外ではない。むしろ転換点だった。将来は完全に異なったモデルに向かうのではないか。

2のモデルは、リベラルの復活だ。リベラリズムの楽観主義は1990年代に頂点に達した。「歴史は終わり」、われわれは豊かになることを新しいグローバル化した秩序の中で追求する。それらは東にも拡大する。トルコも西側に参加し、ロシア、中国、中東でさえ、次第に、リベラルな、ルールに依拠した世界秩序に、漸進的に、参加するだろう。それは他国にとって利益をもたらす、アメリカによる監視の下で実現する。

民主主義の拡大は、最近、後退し始めている。それでもリベラルな秩序が世界の将来に関するモデルとして残るのは、それを長期的に観た場合だけである。EUについても同じだ。ただし、EUには世代間で異なる効果がある。高齢者ほど伝統的なアイデンティティに縛られている。他方、若者は移動の自由を重視し、より広いヨーロッパにアイデンティティを求める。

将来に関するリベラルな思想は、歴史が長期的には正義を実現する、というものだ。識字率は高くなり、経済発展や相互依存は進む。代表による政府は、経済成果を競うだろう。こうした現実に機能する諸力によって、リベラルな秩序は一時的な後退を経て拡大する。19世紀の権力政治が復活するわけではない。

3に、根本的な不確実性がある。第1と第2のモデルは、世界政治を強い構造的力によって形成されると考える。その力が、独自のやり方で異なる社会を形成し、個々の政治指導者に時間を通じて実行できる選択肢を制限する。しかし、第3のモデルでは、世界政治をそのように観ていない。世界政治の見通しは、異なる条件、偶発性、指導者の交代、人間の気まぐれ、意図しない結果や不測の事態が不可避に交差する、非常に脆弱なものだ。

もし911の犯人たちが事前に逮捕されていたら、イラク戦争は起きず、アフガニスタンの占領もなく、イスラム国家やシリア内戦もなかっただろう。Brexitや、ウォール街の金融バブルもそうだ。

3のモデルによれば、世界政治の将来の可能性は途方もない、予測不可能なものだ。それは政治的選択の重要性、社会がある進路から異なる進路に転換することの容易さを示している。

アメリカの有権者は、11月の投票によって何が起きるか、強く意識しなければならない。


FT August 22, 2016

Donald Trump’s dark inner Richard Nixon

Edward Luce


l  ユーロ圏改革

Project Syndicate AUG 22, 2016

Reform or Divorce in Europe

JOSEPH E. STIGLITZ

ユーロ圏のルールや制度を改革することでのみ、ユーロは機能するだろう。すなわち、

収れん基準(財政赤字の制限)を破棄する。緊縮より成長の戦略を採用する。危機を繰り返すシステムを解体する(各国政府の債務をユーロ債に)。不均衡の調整コストを公平に分担する。ECBの権限をインフレ抑制だけでなく、雇用、成長、安定性にも拡大する。預金保険を共有する。後進地域に対する産業政策を、禁止するのではなく、奨励する。


l  太平洋の平和

Project Syndicate AUG 22, 2016

The Foundations of Pacific Stability

ERIC K. FANNING

NYT AUGUST 23, 2016

Why the TPP Deal Won’t Improve Our Security

By CLYDE PRESTOWITZAUG. 23, 2016

NYT AUGUST 23, 2016

Is Playing Tough in China’s Interest?

YaleGlobal, 23 August 2016

Claiming Dominance, China Sheds Pretense of Peaceful Rise

Frank Ching


FT August 23, 2016

Situation vacant: technology triathletes wanted

Anne-Marie Slaughter

FT August 26, 2016

Corporate tax reform is vital to boosting America’s growth

Robert Gordon


l  戦場写真

FT August 24, 2016

The fleeting influence of a powerful war photograph

Roula Khalaf


l  メルケルの難民受け入れ

SPIEGEL ONLINE 08/24/2016

Two Weeks in September

The Makings of Merkel's Decision to Accept Refugees

By SPIEGEL Staff


l  財政赤字の誤解

Project Syndicate AUG 24, 2016

The Scarecrow of National Debt

ROBERT SKIDELSKY

政府の債務が増大していることを心配する友人に、私は何と説明したらよいのか。それはすでに1.7兆ポンドであり、毎秒5170ポンド増えている、と示すサイトもある。多くの高齢者は債務が増えることを嫌う。

しかし、公的債務は個人の借金とは異なる。GDPに対する公的債務の比率が、90%というデフォルトに向かう閾値を超える、と心配する者もいる。しかし、公的債務の増大が増税を意味し、民間の消費を抑制する、という「クラウディング・アウト」論は間違いだ。

日本はすでに230%に達しているが、そんなことは起きていない。英米はまだまだ遠い水準だ。しかも、公的債務が増えてきた間も、その借入コストは下がって、今もほとんどゼロである。

公的債務を増やすことで民間が消費を減らしたとすれば、それはのちの世代ではなく、その債券を購入した同じ世代である。


l  トルコ

FP AUGUST 24, 2016

Why Turkey Went to War in Syria

BY FAYSAL ITANI

FT August 26, 2016

Erdogan takes a risk fighting on three fronts

David Gardner


YaleGlobal, 25 August 2016

Modi Throws Down Gauntlet to Pakistan and China

Harsh V. Pant

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The Economist August 13th 2016

Cheating death

War against crime in the Philippines: A harvest of lead

New rivalries on a contested continent: Asia’s scramble for Africa

Six big ideas: Fiscal multipliers - Where does the buck stop?

Free exchange: The problematic proposal

(コメント) 人間は死をだますことに成功しつつある,と特集記事で紹介します.老化を生じないような薬,治療,手術,IPs細胞による臓器の移植,など.それは就労や結婚という社会の在り方を根本的に変えるでしょう.

フィリピンで強権的指導者が推進する犯罪撲滅,豊かな諸国で嫌われるTPPTTIP,それ以上に,ケインズ経済学の乗数に関する優れた説明と評価の変遷が興味深いです.

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IPEの想像力 8/29/16

台湾の観光ツアーに家族で参加しました。

いちばん情緒があったのは,有名な九份の夜景でした.階段に面した九份の茶房でお茶の淹れ方を習い,お菓子と一緒に,暮れ行く景色を楽しみました。

ガイドさんが連れて行ってくれた朝の市場では,さまざまな食材や花,雑貨が売られ,活気がありました.市場の端にあるお寺では、線香を3本取って,彼らを真似てお辞儀しました.地元の有名な寺では,お経が一斉に始まり,さまざまな神様がいて、庶民の恐れや願いのすべてに形を与えているのだな,と納得します。キリスト教会や天皇制よりも,私には親しみがわきました.

ふんだんに並ぶお供えや、2枚の木札を落として始まる占いの仕方も聞きました。

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観光は、極端に偏った消費行為だな、と感じました。それは,学生に勧める「旅」というものと根本的に異なります。

観光バスや、ホテルの朝食、お土産のショッピング休憩は,私たちに,迷うことなく消費を促します。時間と体力が許す限り,そして,もちろん財布も,観光客は景色の中を移動しながら,消費し続けます.

自然が豊かな貧しい国が観光開発に頼るとき,あるいは,日本の地方経済を観光で活性化する,というとき,よく考えた対応が必要です.

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台湾旅行で最も感心したのは,マグカップの文字です.畏怖,でしょうか.

次男が故宮博物院の記念に買った、中華の朱色と見える大きなマグカップには、皇帝が彼の統治を改善するために、「国務に関して恐れることなく意見せよ」という意志を示し、特別な高官だけに与えた石章(石の刻印)がデザインされていました。

絶対的な権力,無謬の権威を示すはずの皇帝が,特定の賢者や高官に,意見することの自由を与えたのはなぜでしょうか.今,中国の杭州では習近平主席がG20を主催しています.あるいは,香港の立法院では選挙が行われ,「民主派」だけでなく,香港の独立を唱える「本土派」が議席を得ました.

西洋とは違う意味で,民主主義の伝統がある,と中国の指導者たちは考えるのでしょうか.

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忠誠記念堂では衛兵の交代式を観ました。

厳しく選抜された衛兵たちは,整然と行進し,銃剣の構えや型を同時に示して入れ替わります.直立したまま,瞬きもせずに,不動の姿勢を保つのだ,とガイドは自慢しました.

記念堂の門には,片側に孫文が指導した辛亥革命,もう片側には,国民党・蒋介石が指導した抗日戦争が彫刻されています.台湾の人々は親日的である,と言いますが,それは北京政府との対立が深刻であるからでしょう.尖閣諸島に関しては,北京と同じ立場です.

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MRT(台北の地下鉄、メトロ)はとても便利でした。ホテルから歩いて2キロほどで、メトロの駅があり、もっと利用できたらよかったです。一人旅なら、メトロですべての名所旧跡を訪ねたでしょう。駅までの道の半分ほどが、国立台湾技術大学のキャンパスに沿った道でした。

とても立派なキャンパスです。ジョギングしていた朝6時過ぎにも、学生が歩いていました。小国として、世界市場に生き残るために、国家が技術の開発や教育に期待する姿勢を強く感じました。

また、娘と尋ねた国立台湾芸術大学も、その美しいキャンパスや設備に、国家の意気込みを感じました。

台湾の庶民の暮らしは、まだ貧しいものです。しかし,雑然とした住居の群れを,近代的な高層ビル群が分断します.中国語の車内放送を聞きながら,地上を走るメトロの車窓から見える都市の景観は、映画「ブレード・ランナー」と似ています。

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台湾の複雑な歴史は、そのガバナンスに多くの複雑な意味を与えています。

現在,中華民国の総統である蔡英文は,前任者と違って,1つの中国論を支持しません.国民党の独裁体制は民主化され,国民党による台湾への支配と弾圧に関して,蔡総統は謝罪する姿勢を示しました.

中国共産党,国民党,台湾の大企業による中国進出,日本の植民地時代,アメリカの提供する「あいまいな」安全保障,それらの複雑な関係の下で,通りを埋め尽くす中小企業,市場や屋台の活気が,アジアのガバナンスを問う「カナリア」です.

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