前半から続く)


l  インドの変化

FT August 8, 2016

Rural India slowly emerges from isolation

Amy Kazmin

Project Syndicate AUG 8, 2016

India’s Cow Vigilantes

SHASHI THAROOR

以前はさまざまな妥協によって個人の選択を認めていたインドでも、ヒンズー至上主義を唱えるBJPの政治支配によって、牛肉食を非合法化することが広まっている。しかも、牛を保護する法律の制定は、イスラム教徒やDalits(いわゆる不可触民)への暴力とともに強める傾向がある。


l  アメリカの政府債務

Project Syndicate AUG 8, 2016

America’s Looming Debt Decision

KENNETH ROGOFF

アメリカは政府債務をどうするべきか? 異常な低水準が終わるときのことを考えておくべきではないか?

左派よりの論客は、日本を観て、債務の規模は関係ない、と言う。債務の構造が問題なだけだ、と。しかし、日本は、自分たちが決して他国の見習うようなモデルではない、と知っている。他方、ヨーロッパは財政緊縮をやめて、失業者を減らすべきだろう。それに対して、アメリカの景気回復は順調で、失業問題も解消されている。


l  金融市場統合と国際収支不均衡

VOX 08 August 2016

Foreign savings: No gain, some pain

Eduardo Cavallo, Barry Eichengreen, Ugo Panizza

貧しい国は貯蓄を輸入して経常収支の持続的な赤字を出しながら成長率を高めることができるのか? しかし、10年以上の大幅赤字を出した国の多くが、その結末は幸せなものではない。


l  クリントンとトランプ

NYT AUG. 8, 2016

Can Clinton or Trump Recapture Robust American Growth?

By ROBERT J. GORDONAUG. 8, 2016

NYT AUG. 8, 2016

Donald Trump, Hoping to Change Subjects, Says He Will Bring Prosperity

By NEIL IRWIN and ALAN RAPPEPORT

FP AUGUST 8, 2016

Donald Trump: Keep Your Hands Off the Foreign-Policy Ideas I Believe In

BY STEPHEN M. WALT

トランプが外交政策に関して述べていることは、従来からリアリストたちがアメリカ外交に関して批判していたことだ。アメリカは国益を優先し、外国の防衛を一方的に負担せず、他国の国家再建を目指すべきではない。

しかし、その正しい主張も、トランプが示す多くの間違った考えによって支持することはできない。

FT August 9, 2016

Uberisation and the dangers of neo-serfdom

Rana Foroohar

NYT AUG. 10, 2016

Trumponomics Is Reform Conservatism’s Evil Twin

Ross Douthat

FT August 11, 2016

Donald Trump evokes Latin America’s old-style strongmen

John Paul Rathbone

NYT AUMAUG. 11, 2016

The Millions of Americans Donald Trump and Hillary Clinton Barely Mention: The Poor

By BINYAMIN APPELB


l  ヒンクリー・ポイント

FT August 9, 2016

Hinkley Point is a test of mutual trust between UK and China

Liu Xiaoming

FT August 10, 2016

China flexes its muscles over Hinkley Point

The Guardian, Thursday 11 August 2016

The Guardian view on doing business with China: not a question of whether, but when and how

Editorial


FT August 9, 2016

German angst over Chinese M&A

Guy Chazan


l  Brexit後のEU改革

Project Syndicate AUG 9, 2016

Three Paths to European Disintegration

PHILIPPE LEGRAIN

Brexitに対して、伝統的な連邦主義者が一層の統合を求めているが、それは支持されないし、危険である。EUには、次々に離脱を目指す政治集団が要る。また、EUのルールを守れず、それに対して処罰もできないケースが増える。そして、より多くの国で、ナショナリズムや極右の政権が成立するだろう。

EUは、その関与を限定し、しかも、効果的に成果を上げねばならない。

YaleGlobal, 9 August 2016

Brexit Could End Up Strengthening the European Union

Chris Miller

Bloomberg AUG 9, 2016

A Nobel Alternative to the Current Euro System

Leonid Bershidsky

Joseph Stiglitzは新著("How a Common Currency Threatens the Future of Europe")で、「弾力的なユーロ"flexible euro"」を提唱した。それは加盟諸国が固定した範囲内で為替レートを変動できるシステムだ。不況に苦しむ諸国にとって、おそらく刺激策となるだろう。

それは、Stiglitzによれば、完全な財政統合と、完全な財政的独立(各国の通貨回復)との、妥協点を示すものだ。

異なる諸国やその集団は独自のユーロを発行する。異なるユーロ間の価値は変動する。ただし、変動幅は制限され、ユーロ圏の金融政策によって影響を受ける。時が経つにつれて、連帯が形成され、制限はなくなり、1992年にマーストリヒト条約が目指したような単一通貨の目標に近づく。

新通貨を独自通貨にするより、各国のユーロにする方が、ユーロ圏統一の目標を維持できる。何より、赤字国は切り下げることができる。

2012年、イギリスのエコノミスト、Roger Bootleは、ユーロに関する改革案を検討した。そして、「北部」ユーロと「南部」ユーロに分割することを検討していた。また、Stiglitz自身も、かつて、ドイツがユーロ圏を離脱することを求めた。それによってマルクは強くなり、ユーロは弱くなって、ドイツの貿易黒字は減少する。ユーロ圏は輸入代替による景気刺激策を得るのだ。他方、ドイツは輸出に代わる刺激策を見つけねばならない。

ユーロ圏内の赤字国が通貨を切り下げることは、彼らの問題を解決するだろうか? 輸入代替型の刺激策は、2014年の秋に石油価格が暴落したとき、ロシアが採用した政策であった。事実上、Stiglitzの処方箋と同様、ロシアは、ルーブルを通貨バスケットに固定していた体制から、即座に離脱した。中央銀行は金利を引き上げ、ルーブルの価値は大幅に下落したため、西側からの輸入品を制限する政府の措置とともに、輸入代替モデルが成功し、ルーブルは安定した。

しかし、輸入禁止でいくつかの国内部門が成長したとはいえ、投資の減少を補うことはできなかった。国内需要は不足し、過剰な規制が投資を阻んでいる。南欧諸国にとっても、新しいユーロで南欧諸国にシンプルな解決策が見つかる、というわけではないだろう。

経済運営を失敗し、汚職が広まり、政治的な動機で規制が増えた、技術革新にも品質管理にも劣った経済を、改革しなければならない。金融政策が最大の問題ではないのだ。

Project Syndicate AUG 10, 2016

The Silent Death of Eurozone Governance

DANIEL GROS

財政赤字の抑制に関するEUの「安定成長協定the Stability and Growth Pact (SGP)」が、スペインとポルトガルに対して強制されないことについて、欧州委員会も他のEU諸国も沈黙したままである。

おそらく、ドイツやフランスでは国民の関心が安全保障に集中し、イギリスではBrexitによって混乱したから、財政赤字を削減する目標は軽視されるようになったのだろう。しかし、EUがその合意されたルールを強制できないとしたら、EUのガバナンスは消滅したに等しい。加盟国は自国の政治を優先し、EUにとっての共通利益を無視したのだ。


l  ペンタゴン

FP AUGUST 9, 2016

How the Pentagon Became Walmart

BY ROSA BROOKS


l  トルコ

FT August 10, 2016

A diplomatic dilemma in dealing with Turkey

Project Syndicate AUG 11, 2016

Taking Turkey Seriously

CARL BILDT


l  イスラム国

SPIEGEL ONLINE 08/10/2016

Retreat and Delusion

Is the Islamic State Finally Collapsing?

By Christoph Reuter

FT August 11, 2016

Jihadi group rebranding is an opportunity for Syria

Ahmed Rashid

NYT AUMAUG. 11, 2016

Obama’s Worst Mistake

Nicholas Kristof


l  金融

Project Syndicate AUG 10, 2016

Demystifying Monetary Finance

ADAIR TURNER


l  タイ軍事政権

FP AUGUST 10, 2016

How to Get the Public to Enshrine the Power of Your Military Junta: Thailand Edition

BY BENJAMIN SOLOWAY


l  オリンピックの愛国心

Bloomberg AUG 10, 2016

Jingoism Is the Ugly Side of Olympic Competition

Leonid Bershidsky


l  開発

FT August 11, 2016

The case for reform at the World Bank

MICHEL FORST

Project Syndicate AUG 11, 2016

Do-No-Harm Development


l  グローバル・ガバナンス批判

Project Syndicate AUG 11, 2016

The False Economic Promise of Global Governance

DANI RODRIK

財、サービス、資本、情報の流れが、技術革新と市場自由化によって、国境を超えて急増しているため、世界中で諸国は緊密に統合され、いかなる国もその経済問題を自国だけで解決できなくなった、と言われる。われわれはグローバルなルール、グローバルな合意、グローバルな制度を必要としている、と。

しかし、このような主張は、真にグローバルな問題、すなわち、気候変動や伝染病の蔓延のようなものに限られ、ほとんどの経済問題に関して正しくない。世界経済はグローバルな共通財a global commonsではないのだ。グローバル・ガバナンスは非常に限られた財に当てはまるだけで、むしろときには有害でさえある。

なぜなら、単一の気候システムに対してではなく、良い経済政策は、その開放度も含めて、まず何より各国の経済状態に影響する。悪い経済政策の代償を支払うのももっぱら国内だ。市場開放やその他の経済政策はグローバルな安定性を高めるが、それが選択されるのは自国の利益になるからであって、世界精神に沿うからではない。

資源国が「最適関税」を採用して、消費国に多くの支払いを求めることは、世界経済の利益にならず、国際ルールによって制限もしくは禁止するのが良い。しかし、ヨーロッパの農業補助金は、それが農産物の高価格や増税となって不利益をもたらすのは、もっぱら自分たちの問題だ。そのような政策は、他の政治目的によって、分配や、行政や、さまざまな動機で採用されている。

先進諸国も、さまざまな国内政策で、不平等の増大を放置し、それが金融危機につながった。しかし、タックス・ヘイブンもそうだが、問題は国際協調によって解決される、というのが答ではない。国際的な行動計画などなくても、先進諸国には多くのことができる。そのような国内政策を嫌う既得権層が、グローバル・ガバナンスを唱え、その結果、グローバリゼーションと国内政策のハーモナイゼーションが推進されている。

むしろ、国内の経済政策に民主主義的な決定が重視されるような改革が重要だ。透明性、代表制、説明責任、科学的・経済的な証拠を求めることだ。国際機関は、そのような基準を各国に求める役割を果たすべきだ。

国内政策の失敗を正すのは国内政策決定過程の改善であって、グローバル・ガバナンスではない。


l  アベノミクス

Bloomberg AUG 11, 2016

Abenomics Won't Work. And That's OK.

Chen Zhao

人口が減少することを前提すれば、アベノミクスは成功しない。日本は繁栄する島国ではあるが、世界経済に与える影響力を失っていく。慢性的な需要不足は、財政刺激策や日銀の金融緩和で解決できない。


l  ロシアの介入

FT August 12, 2016

Russia plays a dangerous hand in Ukraine conflict

********************************

The Economist July 30th 2016

Overhyped, enderappreciated

Japan’s economy: Three-piece dream suit

Globalisation and politics: The new political divide

The impact of free trade: Collateral damage

Six big ideas: Financial stability – Minsky’s moment

(コメント) アベノミクスから、世界は何を学ぶべきか? あまり多くない、ということです。日銀はインフレ目標を達成できませんでした。ただし、基準をどうとるかで成果は現れています。他方、財政政策の余地は意外にある、というわけです。誰かが支出しなければなりません。円安で利潤を増やした企業の、投資行動を批判します。

グローバリゼーションや自由貿易をめぐる政治対立が諸国の政治を作り替えています。左派党派の対立ではありません。

ミンスキーの「金融不安定化」説が説得的な整理で興味深いです。

******************************

IPEの想像力 8/15/16

明仁天皇は、その公職に対する義務を果たすことに対して、高齢や病気によって引退することを認めるように、国民に直接願いました。

天皇制度とは何でしょうか?

憲法があっても、王制が政治から切り離されている、というのは、ありえないことです。イギリスの王制は、フランス革命と対比され、あるいはドイツ帝政とも比較されて、特異な形で議会を尊重する伝統を築きました。日本の天皇は、イギリス王室の在り方を1つのモデルにしたいと考えているように思います。

伝統の継承や国民的な統一を象徴する機能は、多くの国の王制が担うものでしょう。敗戦の際に、占領軍が日本を統治するための道具として、天皇制を残したことも重要であったと思います。

今回の天皇が発した声明は、高齢化社会における天皇と皇室の在り方、国際化と技術変化が迅速な政治的対応を求められる時代、そして、自民党政権が憲法改正に向かう議席を確保しつつある情勢、に向けられたものでした。

天皇の放送と言えば、「日本のいちばん長い日」(1967年版、映画)を、先日、観ました。裕仁天皇による玉音放送の録音盤を奪い、降伏を阻止しようとした反乱軍を描いた半藤一利のノンフィクション作品から生まれた映画です。

さまざまな国の歴史において、王族は政治に翻弄され、利用されました。敗戦について天皇が不決断であったり、皇室内に対立する意見があれば、ポツダム宣言を受諾する最終的な決定が遅れたりしたでしょう。ソ連軍の占領地域が拡大し、戦後統治におけるドイツのような分断が起きたかもしれません。

ネパールでは、王族の殺害事件があり、反政府軍が長期の内戦を経て停戦後の選挙で権力を握り、王制が廃止されました。しかし、その後も憲法改正が混乱を極めています。

トルコではエルドアンが、またロシアではプーチンが権力を集中し、一種の王制を目指していると言われます。

タイでは、王を侮辱する者やメディアに罪を科す法律が濫用され、高齢の国王が軍事政権の正当化に利用され続けて、王位継承と政治介入への不安が高まっています。

****

伊藤ミマの卓球がすばらしい。2000年生まれの15歳か!

少女のガッツとパワー、瞬間的な反応に、思わず溜息が出ます。こんな選手がいるのか。

卓球台とそれを挟んで対決する選手たちが、とても大きく感じられました。

****

しかし、オリンピックの報道が、あまりにも日本選手の活躍情報、メダル獲得数、だけに終始し、プロレス中継のような国家間競争を演出することは、オリンピック精神を否定するものではないでしょうか? 他国の選手でも、その素晴らしい運動能力や演技を称え、その人柄や出身国のさまざまな優れた面を、人類の平和の祭典として紹介し、宥和する機会にしなければなりません。

もっと優れた中国選手や韓国選手の成果と個性的なインタビュー、さまざまな小国の特異な事情などを取り上げて、彼らの研鑽と苦楽を知り、共感するべきではないでしょうか?

****

天皇を政治利用する保守系の政治団体や政党、政治指導者たちは、明仁天皇の放送をどのように聞いたのでしょうか? 天皇は「象徴天皇」が社会の中で生き生きと支持されることを願い、現行憲法の擁護を掲げた、と思えるからです。

しかし、これが安倍政権の憲法改正に対する反抗であった、とは思いませんでした。天皇の神格化や国家神道への明確な拒否であったとはいえ、憲法9条や日米安保など、国民が議会を通じて選択する問題には介入しない、という姿勢を貫いているからです。

むしろ、天皇が別の人物であり、政治についての強い意見を持つとか、政治的な団体や国際関係に特別な関心を示す場合、また、奇矯な振る舞いや特権を誇示するような事件が続くなら、象徴天皇制はどうなるのでしょうか?

戦争の議論が高まる中で、憲法改正や天皇制に関して政治が動き始めたからこそ、オリンピック開幕、原爆投下と終戦の記念日、高校野球の開幕の間に、生前退位と象徴天皇制を結びつける声明が挟み込まれ、静かに私たちの政治意識が変容したのです。

******************************