IPEの果樹園2016
今週のReview
7/18-23
*****************************
イラク戦争の検証 ・・・Brexit後の変貌 ・・・アメリカ政治の不安定化 ・・・南スーダン ・・・イスラム国家 ・・・南シナ海と国際法 ・・・ドイツの経常収支黒字 ・・・グローバリゼーションと左派 ・・・グローバリゼーションと政治選択 ・・・ファシズムが来る ・・・メイ首相の誕生 ・・・保護主義の広がり
[長いReview]
******************************
主要な出典 Bloomberg, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times,
The Guardian, NYT: New York Times, Project Syndicate,
SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, そして、The Economist (London)
[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
l イラク戦争の検証
NYT JULY
7, 2016
Iraq War
Lies, 13 Years Later
By THE EDITORIAL BOARD
FT July 8,
2016
The
Chilcot report has killed off the innocence of the Blair era
Janan Ganesh
Project
Syndicate JUL 8, 2016
Revisiting
the Iraq War
RICHARD N. HAASS
7年を費やし、12巻の証拠を示して、イラク戦争を検証したthe Report of the Iraq
Inquiry, (the Chilcot
Report)が公開された。その分量を読む者は少ないだろう。サマリーだけでもサマリーが必要だ。
しかし、非常に高くついたイラク戦争から教訓を学ぶことは重要だ。
l Brexit後の変貌
The
Guardian, Friday 8 July 2016
We can’t
leave the negotiations with Europe to the Tories
Jeremy Corbyn
FT July 8,
2016
The case
for Scottish independence looks stronger post-Brexit
Nicholas Macpherson
SPIEGEL
ONLINE 07/08/2016
The
Waiting Game
Playing
for Time After Brexit
By Christoph Scheuermann in London
SPIEGEL
ONLINE 07/08/2016
Interview
with Juncker and Schulz
'Deadly
for Europe'
Interview Conducted by Klaus Brinkbäumer,
Horand Knaup and Michael Sauga
Project
Syndicate JUL 8, 2016
Defusing
Migration
PETER SUTHERLAND
たとえ欠陥はあるとしても,半世紀にわたってヨーロッパの平和と安定とを促してきたEUという有意なプロジェクトを,イギリスの有権者が離脱するとは,考えもしなかった.
Brexitの勝利は,理性に対する不安の勝利である.「離脱派」は,不正直かつ無慈悲に,支配エリートに対する大衆の不信感,エリートの利益を実現するために起きた,不平等の増大,急激な社会変化に関する大衆の不満を,利用したのだ.反移民キャンペーンにおいて,離脱派とタブロイド紙は協力して,移民の影響についての歪曲された事実や真っ赤なウソを広めた.
この傾向は発展した諸国に広く見られる.ポピュリストの政治宣伝が,移民は国民の資源を枯渇させる,移民は国家主権を脅かす,と主張し続けている.支配権を回復するには,ハッチを閉めて,国際的な同盟を破棄し,国境の内側に退くことだ,と主張する.ヨーロッパの難民危機は,その間違った印象を強めた.
真実はそうではない.移民のせいで財政赤字を垂れ流すのではなく,高齢化する受け入れ社会にダイナミズムを注入しているのだ.移民の統合化は困難な挑戦であるけれど,達成可能ものである.
EUはその制度のシッパイに苦しんでいるというより,加盟諸国の多くが移民を正しく扱おうとしないのだ.欧州委員会の示す政策はむしろ適切なものであった.特に,ドイツやスウェーデンは積極的に応じた.
世界には2500万人が自国の外に逃れて暮らしている.6500万人が紛争や災害,その他の悲惨な条件から逃れて難民となっている.今年ヨーロッパに来るのは22万7000人程度である.阻止レ3000人近くが地中海で水死した.
人道的な危機に対して,豊かな諸国の多くはその義務を果たそうとしない.彼らの再定住を受け入れるという約束さえ果たさない.だれも,無際限な移民流入を認めろとは主張していない.移民を支持する者は,難民たちを保護し,合法的な諸過程を明確に示すことで,人々の管理された移動が容易になる,と主張しているのだ.例えば,ドイツでは難民の統合化を助ける言語と職業の訓練が行われるし,カナダでは民間のスポンサーシップで新移民を受け入れている.
移民に対する初期の投資は,わずか5年で,回収できるだろう.それは新移民たちによる経済活動から税収が増えるからだ.そのためにも,彼らが合法的に雇用され,活動できなければならない.
これらの複雑な問題に取り組む,新しい大胆な指導力が求められている.有権者を説得し,ますます多くの国が内向きになるのを止めるべきだ.この意味で,旅行やインターネットを通じて,外の世界と容易にアクセスできる環境で育った新しい若者たちは文化の多様性を受け入れ,その多くがEUを支持している.
The
Guardian, Saturday 9 July 2016
Failure to
confront Britain’s political ultras has cost us dear
Nick Cohen
FT July 9,
2016
An
EEA-minus deal for the UK is wishful thinking
Wolfgang Münchau
The
Guardian, Sunday 10 July 2016
The
Guardian view on the Act of Union: time to reimagine the United Kingdom
Editorial
NYT JULY
12, 2016
England’s
Last Gasp of Empire
By BEN JUDAH
エリザベス1世からエリザベス2世まで、イングランドは帝国だった。もはやそうではない。
エリザベス1世が1588年に王位に就いてから、彼女の冒険商人たちは帝国を探求した。エリザベス2世が生まれたときまでに、それは地球の4分の1近くにまで広がった。
Brexitが広めた、栄光を再現するという幻想、“taking back control”は、その逆のことを実現する。スコットランドはイングランドとの同盟から離脱するだろう。北アイルランドの地位も疑わしい。
この小さくなったイングランドが、ウィンストン・チャーチルによって確保された、国連の安保理常任理事国として拒否権を持つことが維持できるだろうか? 大国は、イギリスが彼らの要求を拒否することなど許さない。
イングランドがEU離脱を選択した理由は、エスニックの変化、であった。
「ここはもはやイングランドではない」と、国民投票の取材で国中を旅する私に多くの人が述べた。「私たちはもはや自分の国とは思わない。」
その理由は、移民だ。イングランド中部で、移民、とは、非白人のイギリス人を意味する。財政緊縮策より、移民が、彼らの離脱を選ばせた。
エリザベス2世が王位に就いた1953年に、イギリスの非白人人口は2万人しかいなかっただろう。ロンドンは非常に世界市民的な首都であったが、それでも1931年に、外国生まれの人口は3%でしかなかった。
第2次世界大戦以前には、ユグノー、アイルランド人、ユダヤ人の、限定された移民の流入があっただけだ。エリザベス2世の時代に、イギリスのエスニック転換が起きた。外国生まれの人口は、1931年、イギリスのわずか1.75%であったが、2011年には、イングランドとウェールズの20%になった。
Brexit以来、襲撃や放火が起きている。歴史的に、エスニックの変化は社会が経験するもっとも困難な事態の一つだ。しかし、なぜ今、怒りが爆発したのか?
離脱派は、イギリスがドイツの独裁に目に見えない形で従っている、と宣伝した。多くの人々がEUから移民の流れが押し寄せると考えていた。トルコの加盟は避けられない、と。郊外の住民たちは(移民の)暴力を恐れたのだ。それは表面には表れないが、数世紀に及ぶブリティッシュの本質を失ったことへの怒りであった。帝国、教会、海軍、階級。
彼らの夢想と病的なノスタルジーが、グレイト・ブリテンの最後の痕跡を引き裂いた。
NYT JULY
12, 2016
Brexit and
Irish Unity
By GERRY ADAMS
FT July
13, 2016
Britain
will still need plenty of us immigrants
Michael Skapinker
Project
Syndicate JUL 14, 2016
The Case
for Muddling Through Brexit
BENJAMIN J. COHEN
市場の不安はすべて生じるか? 私の助言としては、深く息をして、長い目で見よ、である。話はまだ終わっていない。
投票の後、特に、シティの利益や貿易関係者の不安は高まっている。どうすれば、有権者の民主的な意思を損なわずに、シティなどの求めるような、「ヨーロッパの一部」であり続けることができるのか?
その答えは、なんとか事態をやりくりするmuddling through、というものだ。幸いにも、EUはそれが1つの伝統である。
Brexitの国民投票は、in と out だけを問うが、その間に多くの選択肢があった。イギリスはもはや正式な加盟国ではないが、非公式なパートナーである、という妥協策を考えることだろう。
Project
Syndicate JUL 14, 2016
The
Federalist Threat to Europe
ANDERS BORG
イギリスの有権者が離脱を選択したことの効果をすべて知るのは数十年後である。
確実に言えることが1つある。それは、イギリス有権者の一方的な決定にもかかわらず、イギリスと緊密な関係を維持することがヨーロッパの最善の利益になることだ。ヨーロッパの政治にはよくあることだが、些末なパワーゲームで共通の利益を失うとすれば、これはあまりにも重大な問題である。
経済的に見て、EUの成長やヨーロッパ主要企業の展開に、イギリスとの貿易、特に金融センターとしてロンドンが欠かせない。政治的に見て、EUとUKが直面する諸問題と協力の重要性は変わらない。プーチン、ISIS、難民流入、NATOなど、共通の戦略が欠かせない。
しかし、Jean-Claude Junckerなど、連邦の強化を求める者は、例えば、共通の財政政策を主張している。これは2つの理由で間違っている。
1.EUの経済問題は構造的なものだ。共通の財政政策では解決できない。むしろ問題を悪化させるだろう。労働市場の弾力化を推進するのも間違いだ。2.増税や歳出削減は政治的な支持を得られない。
EUの連邦化は、むしろEUの将来における最大の脅威である。
l Brexitの衝撃吸収策
FT July 8,
2016
Brexit:
Weighing the costs of a lighter pound
Roger Blitz
国民投票の直前、世論調査によると残留派が勝つ、という予想で、ポンドの価値は最高に達し、1.50ドルになった。
離脱派の衝撃的な勝利を受けて、為替市場でポンドは売られた。イングランド銀行総裁Mark Carneyが述べたように、50年前に変動レート制が再導入されて以来、2日間では最大の下げ幅であった。
先週の下落が市場を落ち着かせたと思ったが、その後、市場の不安が再現した。30年ぶりの安値、1.30ドルになった。政治的に不安定な発展途上諸国の通貨価値下落に似てきたというわけで、Brazil, Russia, Turkey and South Africa新興市場は新しいメンバーを歓迎する、とジョークが交わされた。
UBSのGeorge Magnusによれば、1944年のブレトンウッズ・システムで固定レートになる前は、ポンドの大幅下落も珍しくなかった。1980年代の石油価格下落で、1992年、ポンドのERM離脱で、最近では2008年の金融危機で、ポンドは大きく下落した。
以前と同じように、ポンドの下落はイギリス経済の衰退を予感させる。しかし、Brexitの支持者は、ポンドの下落でUK企業の輸出は増える、という。世界経済の低成長、低金利の中で、ポンド下落は貿易の優位を与える好条件だ。アメリカやG20は「通貨戦争」を懸念した。
1990年代はポンドが過大評価された時代であった。ヨーロッパの危機に対する安全な避難所であった。しかし状況は大きく変わった、とMagnusは言う。現状ではポンドに構造的な弱さがある。経常収支赤字の中で、イギリスは資本流入を続けられるのか?
Carney総裁はイギリス経済に対する影響によっては金利引き下げを考えている。しかし、BoEはポンド下落を止めることができないだろう。経常赤字の問題は、イギリスの市場アクセスに関係している。EUとの交渉がどうなるか?
ポンドの下落を支持するかどうかは、その原因次第である。もし資産がポンドから引き出されるなら、ポンド安はイギリス経済を脅かす。しかし、金融緩和や景気減速に応じたポンド安は好ましい。ポンドの下落は、ドルとのパリティに向かうかもしれない。
FT July 8,
2016
The weaker
pound offers cold comfort this time
FT JULY 9,
2016
Can the
City of London thrive after Brexit?
FT July
13, 2016
Why
cutting UK interest rates now is too risky
DeAnne Julius
不確実性の高い状況で、Brexitの衝撃を金利引き下げで吸収すると期待するのは危険である。
FT July
15, 2016
Britain’s
chance to show the world how to do stimulus
Stephanie Flanders
金融政策が限界に達していることは広く認められており、次の金融危機に対する準備が必要だ。イギリスはBrexitによって移民危機に対するポピュリズムの政治に屈したが、その後の経済に対する衝撃に財政刺激策で応えるなら、それは世界の模範になるだろう。
NYT JULY
12, 2016
Still
Confused About Brexit Macroeconomics
Paul Krugman
l マイナス金利
FT July 8,
2016
Negative
interest rates: a remarkable financial moment
Larry Summers blog
l 中国経済
Project
Syndicate JUL 8, 2016
Realizing
the Potential of China’s G20 Presidency
JOSÉ ANTONIO OCAMPO
FT July
14, 2016
The
chronic spin that blights China’s economy
James Kynge
正しい情報が得られず、正しい融資が行えない。
l アメリカ政治の不安定化
NYT JULY
8, 2016
How Trump
Can Save the G.O.P.
By SAM TANENHAUS
FT July
10, 2016
Dallas’s
threat to the 2016 race
Edward Luce
NYT JULY
13, 2016
Let’s Grow
Up, Liberals
By KEVIN BAKER
NYT JULY
13, 2016
The
(G.O.P.) Party’s Over
Thomas L. Friedman
単一政党の専制国家より悪いものが1つだけあるとしたら、それは単一政党の民主国家だ。なぜなら、前者は少なくとも事態を秩序に従って処理できるから。他方、後者は、ますます近年のアメリカが示す傾向であるが、大きなこと、難しいこと、重要なことは、何も実行できない。
私はヒラリー・クリントンが50州のすべてで勝利し、そして民主党が大統領、下院、乗員、さらに実質的に最高裁を取ることを望む。トランプが単に大統領にならないだけでなく、投票で粉砕されることがアメリカにとって良いことであるからだ。
第1に、クリントンが圧勝すれば、われわれは常識的な銃規制法案を成立させることができる。また、1000億ドルをほぼゼロの金利で借りて、政府はインフラを再建できる。それはブルーカラー労働者の雇用を増やし、アメリカの成長を刺激する。
クリントンが圧勝すれば、歳入に中立的な炭素税を導入できる。オバマケアの問題点を改善できる。同時に、トランプが共和党の大統領候補指名争いで示したような選挙運動を、すなわち、州流派を軽蔑し、対立候補を侮辱し、女性・身体障碍者・ラテン系住民・イスラム教徒を蔑視し、ヘイト・グループを蔓延させ、憲法を無視し、好んで嘘をつき、かつて大統領候補争いで見たことがないような醜悪な材料を持ち込んだことについて、2度とだれもすべきでない、と示せる。
最後に、トランプが政府のすべての分野で共和党の惨敗を示すことで、共和党自身が生まれ変わる必要を認めるだろう。
アメリカは安定した中道右派と、安定した中道左派の政党を必要とする。現在、共和党は健全な右派政党ではない。宗教的保守派、マイノリティになることを恐れ、貿易や移民を嫌い白人男性、銃規制の反対派、中絶反対派、規制反対の自由市場派小規模商店主、などの寄せ集めである。
共和党の混乱を最終的にすべて乗っ取る、外来侵略種がロナルド・トランプであった。像の風船を上げても、共和党はもはや存在しない。11月にクリントンが圧勝することで、共和党は統治と妥協を求める中道右派政党に戻るだろう。
NYT JULY
14, 2016
College
Men for Trump
Thomas B. Edsall
FT July 15,
2016
US
election: Unconventional times
Edward Luce
l 南スーダン
FP JULY 8,
2016
The
Independence Day Nobody’s Celebrating
BY JASON PATINKIN
Bloomberg
JULY 13, 2016
Saving the
World's Newest Nation
Editorial Board
FT July
14, 2016
South
Sudan, the world’s youngest failed nation
アフリカで解放運動がこれほど順調に独立国家に至ったケースはない。しかし、その後、これほど派手に失敗したケースもない。解放運動the Sudan People’s Liberation Movement (SPLM)から体制を支配するようになった政権は、南スーダン国民を爆撃し、奴隷化した。
武装集団には人道に対する罪を犯している者もある。独立を支援した国際社会は、この混乱を収拾することにもっと強く関与する責任がある。
FP JULY 8,
2016
First, They
Came for the Experts
BY JAMES TRAUB
l イスラム国家
NYT JULY
9, 2016
Is the
Islamic State Unstoppable?
By HASSAN HASSAN
支配都市や領域を減らしても、イスラム国家は衰退していない。むしろ戦術を変化させて、情勢に適応する。彼らが行う自爆テロは増加している。その犠牲者は増大している。
ISIS、イスラム国家は、イラク戦争後のアルカイダにおける分派闘争から、独立してカリフ国家の宣言を経て、アルカイダを超える影響力を持つようになった。彼らの目標は、世界の聖戦を指導することだ。12世紀に十字軍に勝利したイスラム聖戦主義の戦略書を採用している。
イラク政府やシリア内戦が、今もスンニ派を弾圧している以上、イスラム国家に向かう兵士たちは減少せず、彼らが行う自爆テロ攻撃は増大し続ける。
FP JULY
12, 2016
Trump’s
Possible VP Believes ISIS Could Conquer the U.S. and Drink Americans’ Blood
BY PAUL MCLEARY, DAN DE LUCE
FT July
13, 2016
It is too
early to declare that Isis is on the run
David Gardner
2003年にアメリカがイラクに侵攻し、スンニ派の少数派支配体制から、多数派であるシーア派の体制に変えた。2011年、アサド体制の打倒を求める民主化運動に、西側はスンニ派が主流の反政府勢力を支援しなかった。こうした裏切りをISISは利用して、16億のイスラム教徒に13億の多数を占めるスンニ派の犠牲者意識を煽った。
この地域に西側が頼ることができるのは、国家を持たないクルド人しか存在しない。イラクやシリアは分裂している。
NYT JULY
13, 2016
Why the
U.S. Military Can’t Fix Syria
By STEVEN SIMON and JONATHAN STEVENSON
l 南シナ海と国際法
(China
Daily) 2016-07-09
Seeing
through the veil of arbitration to sit down for talks
(China
Daily) 2016-07-11
The right
to reject tribunal ruling is real
By Quan Xianlian
Project
Syndicate JUL 12, 2016
The South
China Sea Is Not China’s
GARETH EVANS
ハーグの常設仲裁裁判所(PCA)が、南シナ海における中国の行為にフィリピンが訴えた件で、国連海洋法条約the United Nations Convention on the Law of the Sea (UNCLOS)を適用した判決を下した。中国が自国の湖とみなす行為を、予想以上に強い言葉で否定したのだ。
土地がなければ、領海もEEZ(排他的経済圏)もない。中国が主張するような南シナ海への主権や監視活動、軍事施設などの建設も認めない。
中国政府が島や環礁、岩礁の占拠を放棄することはないだろう。南シナ海への主権を主張することもやめないだろう。しかし、中国がその面目を失わないような形で何らかの行動を取るように促すことが、地域の安定化にとって重要だ。
たとえば、中国がthe Spratlysの人工島に軍事施設を建設することを中止する。紛争地域the Scarborough
Shoalで新しい主権を主張しない。「九断線」による要求を主権と結びつけない。そしてASEANの行動規範に従い、交渉に応じる。
逆に、中国が主張をエスカレートさせるかもしれない。UNCLOSを無視して、排他的な航空識別圏(ADIZ)を主張する。それはアメリカが無視しているが、軍事的衝突の危険が高まる。
Project
Syndicate JUL 12, 2016
Defusing
Asia’s Arms Race
THITINAN PONGSUDHIRAK
NYT JULY
12, 2016
Testing
the Rule of Law in the South China Sea
By THE EDITORIAL BOARD
FP JULY
12, 2016
What Is
the Future of the South China Sea?
BY M. TAYLOR FRAVEL, JESSICA CHEN WEISS,
PETER DUTTON, ORVILLE SCHELL, EDWARD FRIEDMAN, TOM NAGORSKI
FP JULY
12, 2016
After
South China Sea Ruling, China Censors Online Calls for War
BY BETHANY ALLEN-EBRAHIMIAN
FP JULY
12, 2016
Hague
Court Strikes Down Beijing’s South China Sea Claims
BY KEITH JOHNSON, DAN DE LUCE
Bloomberg
JULY 12, 2016
China's
Dubious Land Grab in the South China Sea
Justin Fox
FT July
13, 2016
A big test
for Beijing over the South China Sea
(China
Daily) 2016-07-13
Inherently
biased and unjust 'piece of paper'
(China
Daily) 2016-07-13
Tribunal
null and void from the beginning
By JIN YONGMING
Project
Syndicate JUL 13, 2016
China’s
Challenge to the Law of the Sea
BRAHMA CHELLANEY
Global
Times 2016-7-13
S.China
Sea issues challenging, not devastating
FP JULY
14, 2016
China’s
Legal Scholars Are Less Credible After South China Sea Ruling
BY JULIAN G. KU
YaleGlobal,
14 July 2016
Law
Challenges China Dream for Control of South China Sea
Nayan Chanda
中国はどちらの対応もとることができる。判決を無視して、地域紛争と国際的な面目失墜を続けるのか、あるいは、外交的な努力で緊張緩和を図るのか。ただし、その場合は、ますますナショナリズムに刺激された国内の聴衆に、習が弱腰であると非難される。
中国自身が成立を促した国連海洋法によって、尊敬されるグローバルな大国の地位を得るどころか、悪者国家とみなされるリスクを高める結果になった。
中国は攻撃的な姿勢を抑えて、フィリピンや他のASEAN諸国と真剣な外交交渉を行い、行動規範を合意することも可能である。実際、中国が面目を失い、怒りに駆られて行動することを想えば、アメリカやASEAN諸国はこの判決をむやみに利用しない方がよいだろう。南シナ海の平和を維持するために、アメリカがフィリピン、インドネシア、ベトナム、その他のアジア諸国に圧力をかけて、攻撃的な行動を取らないように求めている、とロイターは伝えた。
Bloomberg
JULY 14, 2016
International
Law Isn't Quite Law, But It's No Joke
Noah Feldman
国際法はジョークなのか? そうだ、とも言えるし、そうでない、とも言える。
国際法は、強制力を行使する主権国家の命令ではない。通常、その条文や判断に国家を従わせることはできない。その点が、国内法と異なる。
しかし、国際法は重要だ。中国が国連海洋法に違反している、という判決は、世界の他の諸国が中国の軍事的な拡大について考えていることを示す、一種の早期警報として機能する。それはフィリピンだけでなく、中国と太平洋で利害が衝突している他の諸国、そして彼らに安全保障を提供するアメリカにとって有益である。
矛盾することだが、この判決は中国にとっても役に立つ。この判決は、中国が、地域的な拡大が合法化できない、と理解するのに役立つだろう。それでもおそらく中国は拡大をやめないだろう。しかし、そのことがもたらす抵抗について、中国指導部は明確なイメージを持っただろう。抵抗は彼らに大きなコストをもたらす。
好ましくない国際法廷の判決を無視するのは、中国だけではない。1986年、アメリカは、反政府ゲリラへの資金提供に関して、ニカラグア政府による国際法廷への告発と審議に加わるのを拒否した。アメリカ政府は法廷を認めず、敗北しても、その判決を無視した。
超大国に無視されても、国際法廷の権威は失われなかった。判決には限界がある、ということだ。アメリカは国際的な行動を非合法化されることはなかった。アメリカは非常に重要な国であり、国際法廷を無視しても、それに見合うような強い制裁を受けることはなかった。
中国も同様である。中国が判決を無視しても、より広範な国際法のゲームから中国を追放することはない。中国は、さまざまな国際機関に属しており、国際法違反を批判するとしても、システムから追放することは無益である。
中国が主張する主権や、人工島の建設は、違法であると繰り返し主張されるだろう。「九断線」が最初に現れたのは、1947年、中間民国政府によるものであって、アメリカとも問題にならなかった。しかし今は、中国による広範な主権の要求が紛争になっている。今後も、近隣諸国とアメリカからの反対は、弱まることがない、と知ることになった。
こうした情報を国際法廷が与えたことは、それがなかった場合を考えると、意味のあることだ。すなわち、中国からの好戦的な主張に、他国の好戦的な反発が生じ、それはすべての関係諸国に損害をもたらし、偶発的に、軍事衝突も起きかねない。
国際法とは、軍事力行使の枠外で、情報交換するメカニズムである。長々と話し合うことは、銃撃するより良いことだ。
(China
Daily) 2016-07-14
Unlawful
award only raises regional tensions
By SHEN DINGLI
(後半へ続く)