IPEの果樹園2016

今週のReview

7/4-9

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Brexitの衝撃と波及

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, The Guardian, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, そして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]


FT June 23, 2016

The waves from Brexit start to spread

Larry Summers blog

Brexitは始まった。アメリカ市場が開く前に、考えておくことがある。

ショックに対して市場は冷静に反応するだろう。為替市場はそれほど大きく変動していない。それは中央銀行が秩序の維持に必要なら何でもすることを市場参加者たちが信頼している証拠である。また、資産の価格下落に対する投機的な買いが入った。ロンドンでもブラッセルでも、人々は冷静に発言し、行動している。特に、市場はアメリカ連銀が金利引き上げを延期する姿勢に信頼を寄せている。

しかし、アメリカ市場が開いて、これらすべてが一気に変化するかもしれない。投資家たちは新しい浮動的な環境を嫌うだろう。週末にリスクを抱えたくない。月曜日の朝に資産が売られるリスクもある。1987年の株価暴落も同じように起きた。

ヨーロッパの諸銀行が弱体であることにもっと注意を払うべきだ。銀行の株価が下がっている。また、リスクを回避するために、ドルや円の資産に向けた資本逃避が起きている。これは新興市場にとって危険なことであるし、通貨戦争にもつながる恐れがある。

イギリスにとっての経済効果は2つある。一方では、離脱の不安、イギリス自体の分裂もありうる。他方で、豊富な通貨供給とポンドの減価が起きるだろう。この12か月間では成長が大きく鈍化し、不況が始まると思う。

イタリアやスペインで、イギリスより大きく株価が下げたのは、「離脱の感染」を恐れるからだ。ヨーロッパ経済の見通しは、国によっては、イギリスよりも悪い。為替レートの減価も、金利も、対応する余地がないからだ。

世界経済に対する効果は心理によって大きく変わる。イギリスが示した予想外の結果は、トランプが大統領選挙で勝利する見込みを一気に強めた。そのリスクは、特に国際的な展開を中心としている企業で投資決定を凍結することになる、と懸念される。またリスクからの逃避が、日本のインフレ促進政策や中国の通貨安定化に困難な状況をもたらす。

主要諸国には金利を下げる余地がない。財政再建をする時ではない。どこでも財政刺激策を考えるべきだ。為替レートの不安定化や保護主義、銀行の弱体化によるグローバリゼーションの逆転を抑えねばならない。

どこでも政治的な予測は信用できないことがはっきりした。特に、アメリカ大統領選挙だ。各国の「反発型ナショナリズム」を抑えるべきだ。グローバルな視点より、地域の人々や利益を重視せよ、という声は強い。こうした声を、破滅的な形ではなく、建設的な形で吸収できる政治家と戦略が求められている。

FT June 23, 2016

Political losses from Brexit will be deep and enduring

Richard Haass

株価は下落するが、少なくとも一部はすぐに回復する。しかし、政治的、戦略的な評価価値はそうではない。

最大の損失を示すのはイギリス・連合王国UKだ。スコットランドは、時期は分からないが、もはや分離を避けられないだろう。キャメロンは歴史的大失策を犯したと言える。

北アイルランドも不安定な平和を20年間維持したが、新しい圧力を受けてアイルランドとの併合を求める声が強まる。それは住民たちの分断を強める。北アイルランドとイギリス政府内の離脱派は、高い代償を支払うだろう。

連合王国は連合を失い、前より貧しい、弱い、魅力のない国になる。

次第に、ドイツとそれ以外の加盟諸国との差は拡大し、緊張が高まるだろう。2番目に大きな経済、最大の軍事力を失い、EUが世界で果たす役割は小さくなった。Brexitは、低成長、ロシアのウクライナ介入、難民流入に対して、EUが対応する力を低下させる。

アメリカも、Brexitの代償を支払う。たとえイギリスが弱くなっても、ヨーロッパ、中東、アジアで、イギリスに代わる特別な関係は見つからず、それを維持するしかないだろう。

国民投票は有権者がその不安や不満を表明することになったが、彼らの行動は大きなコストを生じた。無責任で、効果のない、ラディカルな解決策に人々は向かう、ということを民主主義とその機関は学んだ。

FT June 23, 2016

Britain left the EU decades before the referendum

Wolfgang Münchau

私は残留を支持したが、国民投票の結果をいくらか喜んでいる。私は今もヨーロッパ統合を圧倒的に支持するが、それは選挙で支持されなかったと認めねばならない。

残留派の主張は、離脱による経済的な悪化に関してマクロ経済学者の示すコンセンサスであったが、そうしたモデルはここ数十年も失敗していた。不況の予測によって恐怖を煽るキャンペーンは、彼らの傲慢さを示しており、嫌われた。

しかし、その戦術以上に、残留派には根本的に問題があった。すなわち、イギリスはずっと前に離脱を決めていたからだ。その離婚手続きは1990年代初めに始まった。マーストリヒト条約に関して、当時、保守党のジョン・メージャー首相は、通貨同盟に関するオプト・アウトを決めて、ゲームは終わった、と宣言した。

その後、ゴードン・ブラウンもこの権利を積極的に支持したし、トニー・ブレアはユーロ圏加盟を望んだが、後にはオプト・アウトに同意した。デーヴィッド・キャメロンも、ユーロ懐疑派との話し合いで保守党党首になった。つまり、これは残留派と離脱派のコンテストではなく、2つのユーロ懐疑派が争っていたのだ。

現代のEUにとって、単一市場にだけ加盟し、ユーロ圏には加盟しない、というイギリスのような国は、持続可能な地位を得られない。それがEUの政治経済である。

ユーロの誕生はヨーロッパ統合の性格を、非常に深い意味で、変えてしまった。もはやEUを共通市場として語ることはできない。たとえまだユーロ圏に参加していない国でも、それはイギリスの考えるEUとは異なる。イギリス政府も反対派も、正式にオプト・アウトを行使しているだけでなく、一貫して、将来もユーロを採用するつもりはない、と表明しているのだ。

ユーロ圏の議論とイギリスが切り離されたときから、その利害は乖離し始め、疎外され、ユーロ懐疑論が広まった。

ユーロ圏は単一市場の一層の統合を求めている。銀行同盟や共通労働市場が必要である。しかし、ユーロではないから、イギリスには必要ない。また、市場統合におけるイギリスの利益は、シティをユーロ圏のオフショア金融センターとして拡大する、という特殊な利益にとどまる。それは国民経済の成長にとって持続的な目標ではない。また、他のEU諸国にとっても受け入れられない。

私は、解体への不安と、BrexitEUの困難な諸問題を解決する発射台になる、という希望との間で迷っている。EUは、10年かかる財政統合や真の銀行同盟を決断するかもしれない。そうしなければ、改革は実現せず、ユーロ圏は崩壊するだろう。たとえEUの枠組みは残っても、政治的なパワーは失われる。

イギリスにとっても、ヨーロッパにとっても、将来には危険がある。私はイギリスが新しい地位で調整することには楽観するが、EUの主要な大国の中に政治的指導力を見いだせない以上、ヨーロッパについて楽観することはむつかしい。

FT June 23, 2016

How Vote Leave won the EU referendum

Sebastian Payne

「勝利をもたらしたのは2つのBである。Boris and bordersボリス・ジョンソンと国境管理・移民問題。」

離脱派は世論調査や賭け屋を打ち負かした。規律ある運動、代表的な人物、スローガン。常に“Vote leave, take back control”が叫ばれた。

キャメロンの再交渉が残留派のアキレス腱となった。3年前に国民投票を表明したときから、キャメロンは大幅な改革への期待を高めた。しかし、キャメロンがしたことは現状維持でしかない。その責任は大陸の指導者たちにもあるのだが。

残留派が経済不況を予測したが、離脱派は2年もかけて、財界を動員した離脱キャンペーンをしていた。経済論争は、終盤で、移民とトルコに関する注目により消滅してしまった。

また、労働党内の分裂、指導力の欠如は深刻だったし、メディアが果たした役割も無視できない。

The Guardian, Friday 24 June 2016

Brexit won’t shield Britain from the horror of a disintegrating EU

Yanis Varoufakis

離脱派が勝利したのは、多くの有権者がEUを権威主義的で、不合理な、議会制民主主義を軽蔑するものとみなし、われわれの主張するEU改革を信じなかったからだ。

私は全ヨーロッパでラディカルなEU残留を支持する運動Democracy in Europe Movement (DiEM25)を展開した。イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドを訪問して、革新勢力に対して、EU解体が解決策にはならない、と説得した。解体は各地にデフレ圧力を生じて、緊縮策を強化して、エスタブリシュメントの権力と外国人排斥の傾向を強めるだろう。

私はEUに残留し、同時にEUの既存権力や制度に反対した。われわれの敵は、キャメロンであり、計量モデルで恐怖を煽るイギリス大蔵省であり、我慢ならないほど傲慢なシティであり、ヨーロッパ周辺部に拷問を続けるブラッセルのEU本部であり、イギリス有権者を脅して離脱への怒りに火を付けたドイツのショイブレ財務大臣であり、フランスの情けない社会党政権であり、ヒラリー・クリントンとその大西洋「有志連合」であり、緊縮策を受け入れ続けるギリシャ政府である。

離脱の反応は、その警告を超えて暗いものであろう。しかし、市場の反応はしばらくすれば落ち着き、イギリスはEUとノルウェー型の合意を結ぶだろう。

イタリア、フィンランド、スペイン、フランス、そして明らかにギリシャは、現在の枠組みにおいて持続可能ではない。ユーロ圏の構造は経済停滞を固めるものであり、債務とデフレの悪循環、そして外国人排斥の右翼を強めるものである。

今後の計画を推進するのはドイツのショイブレ財務大臣だけだ。Brexit後の不安を利用して、永久にユーロ圏を財均衡同盟に変える機会とする。彼の計画には、いくらかの飴と巨大な棍棒がある。すなわち、小規模のユーロ圏予算を組んで、失業手当と預金保険を整備する。棍棒は、各国の赤字予算を拒否する権利だ。

もし私の予想が正しければ、Brexitは鉄の檻になる。この制度化された緊縮策は、イギリスだけでなく中国にもデフレを輸出するだろう。

しかし、別の可能性は、鉄の檻が破られて、たとえば、フランスやイタリアがその制約を無視して、ドイツが崩壊するユーロ圏を離脱することだ。それはウクライナまで及ぶドイツ・マルク圏を誕生させ、巨大なデフレのエンジンとなる。マルクは大幅に増価して、ドイツ企業の国際競争力は失われ、イギリスと中国はデフレショックにむしろうまく対処できるだろう。

Brexitを経験したEUの指導者たちは、民主化の要求を圧殺し、恐怖による支配を強めるだろう。多くの進歩的なイギリス人が離脱を選ぶことは当然である。

私は残留を確信するが、イギリス国民の選択を歓迎する。EUには民主主義が不足しており、民主的な主権を回復するべきだ。EU解体は全速力で進行するだろう。国境や政治的党派を超えて、ヨーロッパが民主主義を回復することこそ、外国人排斥の、デフレを広める、1930年代型混乱に陥るのを避けるために必要だ。

FT June 24, 2016

Brexit will reconfigure the UK economy

Martin Wolf

真っ赤な嘘が勝利した。Boris Johnson, Michael Gove, Nigel Farage, The Sun and the Daily Mailが広めた嘘だ。連合王国、ヨーロッパ、偽側、世界が損なわれた。イギリス史における、第2次世界大戦後、おそらく最大の破滅的事件である。

ポンドの価値が下落しても、イングランド銀行は短期的にこれを無視するだろう。しかし、インフレに影響するようになれば介入が必要だ。そのためには外国からの支援がなければならない。

シティの役割も変化するだろう。多国籍企業や銀行のスタッフは減少する。

FT June 24, 2016

Merkel and Hollande must seize this golden chance

Daniela Schwarzer

Brexitはパリとベルリンに最高のチャンスを与える。ロンドンを疎外することなく、この危機を機会に変えることができる。

市民たちは、市場とともに、EUが動揺しないことを知りたいはずだ。投資家たちはユーロを試すだろう。もしEUがここで無力な姿を示せば、南部の辺境では最悪の衝撃が襲う。それはECBにも止められない。

必要なことは、むやみに統合の深化を求めることではない。第1に、指導者たちは通貨同盟を完成するべきだ。同時に、失業や不平等に対するしっかりした政策、インフラ、技術革新、教育に対する投資を通じて競争力を高める政策を示すことだ。

2に、ベルリンとパリは、民主的な正当性を高める制度改革を提案するべきだ。EUではなくUKに関する投票であったが、事態は変化した。ユーロ圏の財務大臣や議会の改革は、条約を変更しなくても実現できる。

3に、安全保障に関する改革だ。イギリスに限らず、自分たちの運命をコントロールすることを願う声はイギリスに限らず強い。それがEUにおける右派と左派のポピュリズムに向かっている。指導者たちは国境管理、難民政策、情報機関の協力に関して、行動しなければならない。

ロンドンとの交渉は強い姿勢で臨むべきだ。反EUの運動に、これが手本であってはならない。新しい合意は、閣僚理事会、ヨーロッパ議会、イギリス国会で承認される。イギリスはこの国会承認をEUとの新しい関係として歓迎するべきだ。

Project Syndicate JUN 24, 2016

Britain’s Democratic Failure

KENNETH ROGOFF

イギリスのEU離脱を決めた投票で最も狂ったところは、指導者たちが加盟の利益と移民圧力との評価を国民投票に問うたことではない。離脱の基準を愚かなほど低く設定したことである。単純多数決を求めたのだ。投票率70%であれば、わずか35%の支持票で離脱が決まることになる。

これは民主主義ではない。共和制に対するロシアン・ルーレットである。重大な結果をもたらす決定に、それは一国の憲法を改正するほど重大なことであるのに、何のチェック・アンド・バランスもなかった。

1年後に再投票は準備されていない。議会はBrexitを支持していない。有権者たちは選択の結果を十分に理解していなかった。UKも、世界経済も、政治的安定性も、離脱によって大きな打撃を受けた。

平和に暮らす西側諸国の住民は、それを気にしなくてもよいのか。戦争や内戦が起きることはないから。しかし、決定が及ぼす重大な結果が長期にわたる場合、多くの社会は多数決の条件を厳しくしている。イギリスの国民投票には、スコットランド(2014)やケベック(1995)の先例があった。そのルールを再考するべきだ。

現代民主主義は、破滅的な結果が情報を十分に得ていない有権者によって支持されるとか、少数派の利益を損なうということがないように、チェック・アンド・バランスのシステムを発展させた。重大な決定であればあるほど、その決定水準を高くするべきだ。たとえば、憲法改正には、予算案の通過よりも高い水準を求める。しかし、現在の国際的なモデルでは、飲酒年齢を引き下げるより国家を分割する方が簡単だ。

古代ギリシャの民主主義では、多数派の支配を、情報を知る党派が重大な決定に大きな発言力を確保する異なった仕組みを考えた。スパルタでは、賛成・反対の喝采で決めた。人々はその支持する程度を声によって示せた。他方、アテネでは、女性を除くが、すべての階級に完全に平等な投票権を与えた。いくつかの破滅的な戦争を決めた後、アテネは独立した機関により大きな権限を与えることにした。

もしイギリスがEU離脱を国民投票で問うなら、その決定基準をもっと高くすべきであったし、2年を待って2度の投票を行うべきだった。世界が重要な決定を単純多数決に委ねるのは、カオスの方程式である。

Project Syndicate JUN 24, 2016

The Brexit Revolt

HAROLD JAMES

EUは第2次世界大戦後に戦争回避を目指して構築された。

EUに至った2つの戦争は、国民国家間の競合する目標が中心的な役割を果たした。それゆえヨーロッパ市民は、新しい政治秩序の基礎として国際主義を受け入れ、いかなる犠牲を払ってもそれを擁護した。ヨーロッパ市民を相互に結び付け、統合のために個別国家に制限を課す、超国家機関の構築は決定的に重要だった。

その結果、ヨーロッパはしつこく叱る乳母のようになった。加盟国には何ができるか、債務危機からどうやって抜け出すか、年金受給者にどれくらい支払えるか、EUは主張した。それはギリシャのような小国にとって、不公平な、時には残酷な要求として非難された。統合によって成長が容易になる、という夢は叶わなかった。

さらに移民や難民危機が加わった。国境の開放を主張し続けるEUは、マニアックな趣味のクラブを維持するホストのようになった。多くのヨーロッパ市民は移民を歓迎しなかったが、EUはそれを無視した。キャメロンもEU残留を支持したが、移民は、国民医療制度の維持に関して、イギリス国民に利益をもたらしている、と明確に主張しなかった。

国民は、専門家や政治エリートを嫌って、離脱を選択した。しかし、イギリス経済や政治の安定性を維持する解決策には、ヨーロッパに代わるものはない。

NYT JUNE 24, 2016

Tony Blair: Brexit’s Stunning Coup

By TONY BLAIR

私が首相のとき、イギリスの未来はヨーロッパとともにあると信じていた。スコットランドの自治を拡大し、北アイルランドの和平を進めて、連合王国を守った。EU離脱はこれらを危うくする。

保守党の一部とUKIPによる離脱運動は、もし労働党がそれを許さなければ、決して成功しなかっただろう。

Brexitの前から、現代のポピュリスト政治家たちが政党の支配を握ることはあるとわかっていたが、イギリスのような国家の支配権を得るとは思われなかった。それが起きたのだ。

そこには極右と極左の収れんがみられる。右派な移民を非難し、左派な銀行家を非難する。権力者たちへの怒りは、複雑な問題にデマゴーグの解決策を示すが、その背後にあるのはグローバリゼーションに対する敵意である。

極右や極左の幻滅に終わる実験ではなく、中道が権力を維持するべきだ。

NYT June 24, 2016

Brexit: The Morning After

By PAUL KRUGMAN

Brexitによる経済の破壊的な影響は心配しなくてよい。実際、それは予想外に小さかった。

確かにイギリスは貧しくなるだろう。それは、関税引き上げによるよりも、市場アクセスが不確実なことで長期投資が減るからだ。

金融的なショックが議論されたが、ポンドの下落はそれほど大きくなかった。それは通貨危機の国から見るなら、自国通貨で借金できるからであり、イギリスはアルゼンチンではない。歴史的に見ても、1992年にERMを離脱したときの4分の1の下落幅より少ない。

資本逃避と金利の引き上げが議論されたが、Brexitの影響を世界経済は恐れるから、むしろ金融緩和が進むのであり、イギリスも金利を下げるだろう。

むしろ問題は政治である。政治的に非常に悪い結果がイギリスでもヨーロッパでも起きるだろう。Brexitはポピュリスト、分離主義、外国人排斥の運動が大陸も含めて猛威を振るう始まりである。これはヨーロッパ経済が「長期停滞」に向かう傾向が加わって、危機に転じる。

こうした懸念は残留派が勝利しても同じである。政府が統合されないまま通貨を統合した上に、南欧の無責任な財政を非難するゲームを展開し、文化や所得水準が大きく異なる諸国間で労働力の移動を自由化することを唱えている。こうしたユーロ圏は機能しない、という問題をBrexitは示した。

Brexitがイギリス政治の最悪の部分を刺激し、これからUKを分断することが心配だ。

FP JUNE 24, 2016

David Cameron’s Austerity Bomb Finally Went Off

BY DANIEL ALTMAN

イギリス人は、キャメロン政権の財政緊縮、しかも、イデオロギーに支配された公共部門の雇用削減によって、金融危機後、長期の、より厳しい不況を強いられた。失業は増え、生活水準は悪化して、このBrexitによるポンドの価値下落は彼らを直撃する。キャメロンは政権を去り、新しい進路を探すべきだ、と言うだけだ。

FT June 26, 2016

Can Brexit be stopped? Anything is possible

Philip Stephens

Brexitから4日が経って、戻ることはできるのか? ブレア元首相は2度目の国民投票も可能だと示唆した。金融市場は動揺し、人々は後悔している。なんでも可能であると言えるが、2つのことが言える。そして、投票のやり直しはできない。

1に、離脱派もEUとの関係を破棄することは容易でないし、途方もなく破壊的であることを理解しただろう。第2に、真に予想外の出来事が起きない限り、議会が国民投票の結果を無視することはできない。最低でも、国民投票の結果を再考する、と公約する政党が総選挙で勝利しなければならない。

国民投票は、離脱が何を意味するか何も示さない。単一市場にとどまることは多数が支持するだろう。しかし、離脱派の指導者たちはそれを認めない。その結果、政治は機能しなくなる。また、EUへの財政負担金も、それを国民医療システムに支出するという意見と、小さな政府を支持する意見が、離脱派の中で分裂している。

EU支持派はあきらめるだろうか? 今後の2年間で、イギリス国内政治が大幅に転換することはありうる。考えられないことを考えるような、新しい政治の枠組みができるかもしれない。保守党も労働党も分裂し、新しい、中道的な、ヨーロッパを支持する政党が誕生する。

FT June 26, 2016

I do not believe that Brexit will happen

Gideon Rachman

翌日も、私の憂慮は深まった。しかし、その後、遅くなったけれど、私は理解した。この映画は前にも観た、と。私は結末を知っている。それは、イギリスがEUを離脱する、ということで終わらない。

EUを長く観察している者には、国民投票のショックはこれが初めてではない。1992年、デンマーク国民はマーストリヒト条約を否決した。2001年、アイルランド国民はニース条約を否決したし、2008年にはリスボン条約を否決した。

それでどうなったのか? EUはその後も維持された。デンマーク人とアイルランド人には、EUがいくらか譲歩した。そして2度目の国民投票が行われ、その条約を受け入れたのだ。なぜイギリスの国民投票もそうしないのか?

確かに、イギリスはEUからの離脱を決めたのであり、新しいものだ。しかも、デンマークやアイルランドのような小国ではない。キャメロンは辞任の意思を表明し、イギリス政治の主要なアクターも変わるだろう。

しかし、イギリスにも2度目の国民投票に向かう兆候がある。離脱派の指導者であったボリス・ジョンソンは、離脱することがEUに再考を促す唯一の交渉手段である、と述べていた。ジョンソンは、デンマークが国民投票でマーストリヒト条約を否決したころ、ジャーナリストとしてブラッセルにいたからよく知っている。

ジョンソンは何であれ離脱でなければならないとは考えていない。直前になって、残留派から離脱派に変わったのだ。彼の目標は首相になることであって、離脱派を指導したのはその手段である。ジョンソンが首相になれば、EUに対する立場を変えるかもしれない。

ヨーロッパの交渉相手も、イギリスの姿勢を認めるだろう。ドイツのショイブレ財務相は、イギリスがすでに単一通貨もシェンゲン協定も認めていないのだから、EUの中核には参加せず、単一市場へのアクセスだけを維持したい、というのは既存モデルの延長である、とその地位を容認したことがある。

ジョンソンが第2の国民投票をする前にEUから得る譲歩は、移民流入に関する何らかの上限を定めて、イギリス政府がEU市民の流入にも緊急ブレーキをかける権利を認めることだ。もしEUがキャメロンにこれを認めていたら、国民投票の結果は変わっていただろう。

たとえEU加盟諸国がイギリスの行動に憤慨しているとしても、財政負担や軍事・外交面で、イギリスのEU加盟は重要だ。イギリスの労働市場が閉ざされることはEUの苦痛になる。

たとえドーバー海峡の両側に、その合意を激しく非難するグループがいても、双方の穏健派が合意を支持する。

FP JUNE 28, 2016

It’s Time for the Elites to Rise Up Against the Ignorant Masses

BY JAMES TRAUB

Brexitは,現実を無視した党派が大衆の支持を得ることを示した.既存の左派も右派も,その一部が大衆の怒りを吸収する,現実を無視した党派に移るかもしれない.

グローバリゼーションの底辺で,政治が解体しつつある.かつて,1960年代にラディカルであった党派は,その後の現実を変え,政治的な枠組みを作り変えた.しかし,彼らの党派が大衆からの支持を失っている.アメリカでも,イギリスでも,ヨーロッパでも,現実に依拠したエリートたちと,それを強く嫌う,現実を無視した党派との対立が,新しい政治を形成するだろう.

FP JUNE 28, 2016

London Should Secede From the United Kingdom

BY PARAG KHANNA

ロンドン市民たちは,しばしば,国家として独立することを楽しい思考実験として語ってきた.しかし今,彼らはそれを賢明な現実の提案と考えるだろう.

Bloomberg JUNE 28, 2016

Brexit Without Tears, Norway-Style

Leonid Bershidsky

「おいしいところだけつまみ食いは許さない」と,ドイツのメルケル首相は語った.

限られたモデルしか存在しない.WTO,トルコ,カナダ,スイス,そして,ノルウェーだ.離脱派とEUが支持するのは,ノルウェーであろう.

Brexitは誇張である.実際には,イギリスとEUとは,適度に距離を置いた協力関係になる.裏切り者への復讐と,血みどろの離婚劇ではない.EUは回避策と漸進的な改革を好む.

FT JUNE 30, 2016

Britain is starting to imitate Greece

Philip Stephens

このままではEUとの交渉が進められない.イギリスの2大政党は解体するだろう.そして,極端なナショナリズムや左派の強硬派ではない,新しい親ヨーロッパ政党が誕生する余地がある.独仏とEU諸国は,同じような扱いをギリシャとの間で経験した.

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The Economist June 18th 2016

Divided we fall

Brexit: What if?

The referendum campaign: The Battle of Evermore

Mass arrests in Bangladesh: Round up the usual suspects

Between the borders

(コメント) 前半だけ見ました.特集記事は別に紹介します.

Brexitに向かう趨勢を分析しています.離脱派の宣伝が勝利しました.キャメロン(とEU指導者たち)は争う条件を間違ったのです.

バングラデシュのテロ事件が起きる前に,政治情勢に懸念がある,と記事が伝えていました.

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IPEの想像力 7/4/16

国民投票の直前,「残留」を支持するThe Economist June 18th 2016 は,EUを理解するための複雑な叙述を提示しました.“Between the borders: The idea of European unity is more complicated than its supporters or critics allow”

国民国家を超えるモデルとしてではなく,かといって,国民国家にとどまるモデルでもない.ヨーロッパが多くの森や湖を持つ豊かな土地であるように,EUは国境によって分断された国家間の戦争を抑えて,エスニックなモザイクを生み出し,そのような現実に応じた,新しい政治体をめざす試みの途上にある,ということを認めます.

・・・なぜEUは生まれたのか? 国民国家を滅ぼすものとしてではなく,それを救済するものとしてEUはできた,とは,どういう意味か?

3650万人を殺害したヨーロッパの戦争が,その終結策としてEUを生んだ.たとえばユーゴスラビアでは,ブドウ畑の25%,家畜の50%,道路の60%,鉄橋の75%,工業の30%,住宅の20%が破壊されたのだ.

1648年,ウェストファリア条約という国家間体制を築いたのも30年戦争であった.平和は国家間のバランスで実現するはずだった.しかし,近代国家の膨張をバランスさせることは困難であった.ナポレオンが始めた国民軍は,各地に国境を超えるエリートに代わる,国民として中途半端に教育された群衆を生んだ.

1814年以来,ドイツは5度もフランスを侵略した.ヨーロッパの国民国家はそれぞれに植民地を拡大し,世界を2度も戦争に巻き込んだ.1948年,ソ連がプラハで共産主義革命を支援した後は,ドイツへの恐怖にソ連の恐怖が加わった.

これがローマ条約を結んだ背景である.ヨーロッパ中で,政府は人々を裏切った.飢餓,消耗,恐怖にさいなまれた末に,庶民の福祉に徹するために平和を維持する政府を強く求めた,分断され,解体された世界で,国家が正当性を認められるには,新しい有権者たちに,繁栄,雇用,福祉をもたらす必要があった.彼らは,ボルシェビキに頼らなかった労働者たち,農業賃金が1930年代に急落しても,ファシズムに走らなかった農民たちである.

戦争を阻止することとヨーロッパ共同体との繋がりは,フランスにとって明白だった.フランスが繁栄するにはドイツの原料が必要だ.また,ドイツに新しい侵略を許してはならない.1945年,ド・ゴールは,ルールとラインの石炭と鉄鉱石を永久にフランスのものとし,西ドイツを農業国にすることが最善の解決策だと考えた.

この考えはアメリカとイギリスによって拒否された.彼らは,貧しく,抑圧された西ドイツが,反乱を起こし,ソ連の影響下に入るのを恐れたからだ.

だから1949年,フランスの外相,ロベール・シューマンは,ヨーロッパという神話を復活させ,新しい思想,新しい歴史を与えた.モネの石炭鉄鋼共同体である.それは新種の通商条約であった.参加する6か国の上に高等管理局を設け,新しい加盟国に開かれていた.・・・

EUは抑制された試みでした.なぜなら,諸国家は権力をできるだけ失いたくなかったし,同時に,政治やその熱狂に対する深い疑念が存在したからです.ボルシェビキやナチズム,ヨーロッパの統一秩序や単一通貨は,すでに空しく唱えられていました.

また,モネと連邦主義者たちは,諸国家の特権を奪えませんでした.

・・・1950年にヨーロッパ軍を作る提案がなされた.それはNATOの下で西ドイツが再軍備するのに代わる案であった.フランスのド・ゴール主義者たちが反対し,アメリカはフランスとの関係を見直すと脅したが,1954年に朝鮮戦争が終わると,フランス議会はヨーロッパ防衛共同体案を否決した.・・・

それ以降,石炭鉄鋼共同体はヨーロッパ経済共同体(EEC)として,自由貿易圏になったのです.アメリカはこのヨーロッパの統合を慎重に促そうとしていました.ジョージ・ケナンはそれを要約しました.「ヨーロッパ統合なしにドイツが再建されれば,ドイツは支配するようになるだろう.ドイツが再建されなければ,ロシアが支配するだろう.アメリカは,ドイツ問題を解決できるような,強く,繁栄するヨーロッパを求める.」

ヨーロッパの統合計画が現在のような水準に達したのは,1980年代の例外的な高揚期,ジャック・ドロールの時代でした.彼は,フランスの財務大臣から欧州委員会委員長になって,統合化を爆発的に推進したのです.単一市場,EU,政府の拒否権を制限,ヨーロッパ議会の権限強化,単一通貨.共同市場は北部と南部で加盟国を増やし,ワルシャワ条約の解体は旧共産主義諸国にEU加盟を新しいモデルとしました.

この深化と拡大は,EUを機能不全にする困難な初期条件となりました.

1861年に,「われわれはイタリアを作った.さあ,イタリア人を作らねばならない.」とイタリアの政治家が述べたように,EU市民を作る道具をブラッセルは持っていません.ヨーロッパの偉人たちを並べ,ヨーロッパの歴史教科書を書き,反発を招きました.ヨーロッパ防衛軍がフランスによって拒まれてからは,「ロウ・ポリティクス」として関税や貿易を話し合いました.それは有権者の支持を得ずに,官僚たちだけで進めました.

一気に権力装置を作り上げ,政治的アイデンティティーはそれに従う,と考えることもできます.しかし,ヨーロッパ議会の現状は懐疑論を強めるだけです.2001年,ヨーロッパ憲法の提案も,オランダとフランスで拒否されました.

かつてヘンリー・キッシンジャーは,ヨーロッパの平和を地政学的なシステムとみなし,パワー・シフトと正当性の源泉に注目しました.ジャン・モネは,正当性を政府から市民に移そうとしました.しかし,市民たちがこれに反対し,パワー・シフトも起きています.人口移動とユーロは,国民国家による均衡の条件を根本的に変えてしまいました.

現在のようなパワーをプールする政治は,危機によってしか進みません.それはあまりに遅く,あまりにわずかしか改革しないことで,一層の危機を招きます.新しいドイツ問題が起きています.「ドイツは,ヨーロッパの中で多くの国の中の1国であるには大きすぎ,EUのコストを単独で負うには小さすぎる.」

戦争を繰り返すボーダーランドから,森林と湖の広がるヨーロッパに多様な市民が育つには,まだ1000年の平和が必要です.

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