前半から続く)


l  サンダースとトランプ

FT MAY 21, 2016

Hillary Clinton and the ghost of Ralph Nader

Edward Luce

もしラルフ・ネイダーが邪魔しなかったら、アル・ゴアはほぼ確実に2000年のフロリダで勝利し、ジョージ・W・ブッシュに代わって、アメリカ大統領になっていただろう。サンダースはトランプに同じことをしてやるのか?

NYT MAY 21, 2016

How to Save Clintonism

By DAVID M. SHRIBMAN

NYT MAY 23, 2016

Do Sanders Supporters Favor His Policies?

By CHRISTOPHER H. ACHEN and LARRY M. BARTELS

Bloomberg MAY 26, 2016

Finding Better Ideas to Rebuild America

Noah Smith


l  伊勢志摩サミットと財政政策

FT MAY 21, 2016

Can the G7 rekindle the flame of co-operation?

Stephen King

来週は、中国が台頭する前の、そして冷戦が終結する前の世界を、懐かしい、と思う気持ちを捨てる時かもしれない。G7が日本で開催されるからだ。

週末には財務長官と中央銀行総裁たちが集まっていたが、数日を経て、そのボスたちが指導者の写真撮影会を開く。世界の成長がいつまでも低水準であることを観れば、国際政策協調を再興する時期が来た、と言えるだろう。

その最盛期には、G7が世界経済のハンドルを握っていた。良い行動を約束して、世界経済のリスクを減らし、不均衡を解消した。19859月のプラザ合意の後、イタリアとカナダを除くG5は、工業諸国の繁栄を分かち合った。1980年代後半には、高い成長、低いインフレ率、実質金利の低下、アメリカの双子の赤字を減らし、初期におけるドルの過大評価を逆転した。

その後、確かに、急激なドル安を止める1987年のルーブル合意では、すべてがうまく行ったわけではなかった。数か月後、株価の下落が起きたのだ。しかし、この時期、政策協調は有効であった。たとえば、アメリカが財政赤字を減らすには、日本とヨーロッパがより拡大的な国内政策を採ることで、グローバルなリスクを抑えた。

その後の事態は協調を不可能にした。アメリカの第1次湾岸戦争、ドイツの東西再統一、日本は株価のバブルが破裂した後始末に忙殺された。

政策協調を支持する弱い理由は、通貨戦争の回避だ。金融緩和が通貨を安くして国内を刺激しても、それはゼロサム・ゲームになる。強い理由は、協調がもたらす利益である。正しい政策協調はプラスサムだ。金融危機後の低成長は、世界に「最後の消費者」を求める。貯蓄のパラドックス、多くの人が貯蓄し、支出しないから、低成長、ディスインフレ、低金利が続いている。他国から貯蓄を受け取る新興市場にはバブルが起き、それが破裂する。

理想的な世界では、ドルが準備通貨であるから、アメリカは財政赤字のコストを気にせずに刺激策をとる。中国は家計の貯蓄を、金融改革により、将来の高い所得を期待した国内消費の拡大に向ける。ドイツは過剰な貯蓄を外国に輸出することなく、企業の国内投資増や、労働者の賃金引上げに向ける。3国が経常収支の赤字を増やし(あるいは、黒字を減らし)、世界貿易や世界成長率を高める。金利は正常化するだろう。

しかし、今は1980年代と異なる。共同行動を取る目的が共有されていない。成長やインフレが低すぎるけれど、その政策については、ケインズ的な解釈と供給側の改革を重視する解釈(特にドイツ)が対立している。合意に対する信頼の問題もある。2009年のロンドンG20サミットで合意したこと(持続的な回復が達成されるまで金融緩和と財政刺激策を続ける)が、中国以外の国では維持されていない。

何より、G7諸国はもはや世界最大の経済ではない。中国を含まないG7は、その成立に先立つ条件がない。

Project Syndicate MAY 23, 2016

A Debt Agenda for the G7

MARTIN FELDSTEIN

G7で合意するべき重要な課題は、政府債務を減らすことである。

政府債務が増大すれば、それは生産的な民間投資を減らすだろう。また企業は財政赤字の増大が増税を意味すると考えるから、その予想が投資を損なうだろう。将来、金利が上昇すれば、利払いのために増税し、投資が減り、経済活動が弱くなる。不況が来ても政府による財政的な緩和策が採れず、安全保障にも脅威になる。

中央銀行は、異常な低金利政策を続けるべきではないし、将来、必ず金利を引き上げることを明確にアナウンスして準備させるべきだ。他方、議会は増税を支持しないが、財政支出の総額を抑える税制には合意できるだろう。それはさまざまな税額控除や戻し税に関する支出の抑制を意味する。増税できなくても、財政支出を減らし、計画的にGDP比率を低下させる。

FT May 24, 2016

G7 leaders should address security risks in East Asia

Hisao Tonedachi

Project Syndicate MAY 24, 2016

Rediscovering Fiscal Policy at the G7

JEFFREY FRANKEL

伊勢志摩サミットで話し合うべき最大のテーマは、世界経済の回復が弱いことであり、財政刺激策の合意である。各国の政治指導者たちは、マクロ経済学の教科書を読み直した方がよい。

かつてエコノミストたちが財政政策を批判したのは、それが「政治的に制約されていた」からである。今、財政政策が非常に効果的であるときに、エコノミストたちが一層の声を上げるべきだ。

積極的な財政政策が支持された時代には、反循環的な財政政策が議論された。景気拡大期には増税し、不況になれば景気を刺激する。1965年、ミルトン・フリードマンが、1971年には、リチャード・ニクソンが「われわれは皆、ケインジアンだ」と述べたように、それは時代精神であった。

しかし、2000年以降、景気変動と同じ方向で拡大もしくは縮小する財政政策が採用された。アメリカのジョージ・W・ブッシュ大統領、その後の共和党議員たちだ。また、ヨーロッパでもギリシャの財政緊縮策が現れた。特にドイツが強要したものだが、結果は大幅な経済の縮小による債務比率の上昇だった。G7会合の議長国である日本も、消費税引き上げの失敗を犯した。

発展途上諸国でも、財政黒字を維持し、外貨準備を増やして、財政政策の余地を得たにもかかわらず、反循環的な財政政策を採用しない国がある。

The Guardian, Wednesday 25 May 2016

The Guardian view on G7 aid spending: don’t trash it, match it

Editorial

(China Daily) 2016-05-26

The G7 meeting: what's possible and what's likely

By Adam Slater


l  ヘリコプター・マネーとマイナス金利

FT May 21, 2016

The IMF and calling Berlin’s bluff over Greece

Wolfgang Münchau

FT May 22, 2016

The helicopter money drop demands balance

Adair Turner

2008年の金融危機から8年が経っても、世界経済は低成長、低すぎるインフレ、増大する債務に苦しむ状態だ。巨額の金融刺激策も十分な需要を生み出せない。資金を与えられた財政赤字、すなわち、より広まった呼び方では「ヘリコプター・マネー」は、残されたわずかな政策選択肢の1つである。

問題は、適切な条件、適切な量の貨幣を、確実に与えることを保証するルールや責任体制を決めることだ。それは政治的な問題である。

もし政府と中央銀行だけが貨幣を発行し、政府が支出や減税のためだけに貨幣を増やし、その追加の貨幣が消費者のポケットに入って支出されるなら、また、もし完全雇用ならインフレになり、完全雇用以下なら景気が刺激されるなら、また、貨幣供給の規模によって、少し増やせば物価の上昇と生産の増大、多く増やし過ぎればハイパーインフレーションになる、というのであれば、それは簡単であろう。

しかし、現実には、銀行システムが融資によってそれを変え、乗数が働く。準備率規制をすれば、貨幣供給の規模が重要になる。重要なことは、政府に中央銀行が融資してはならない、というタブーを破れば、政治的な支持を得るために、選挙の前に貨幣を大量に印刷する危険があることだ。それは、バーナンキが主張したように、独立した中央銀行がインフレ目標に従った貨幣量を供給することで解決できる。

他方、インド中央銀行総裁のラジャンが逆の意味で反対した。中央銀行が窓から大量の貨幣を投げるのを観た人々は、その貨幣を支出するより、貯蓄してしまうだろう。だから名目需要は増加しない。

「多すぎる」問題も、「少な過ぎる」問題も、ルールと責任体制にかかっている。中央銀行が政府に直接融資することを禁止する、という状態から、厳格に規定された規律に移行するなら、人々は追加された貨幣を支出し、われわれは有益な政策手段を手に入れるだろう。

FT May 23, 2016

The Fed, the markets and expectation management

Mohamed El-Erian

Project Syndicate MAY 24, 2016

The False Promise of Negative Interest Rates

ROBERT SKIDELSKY

ケインズの伝記作家として、私は問うときがある。「ケインズはマイナス金利をどう思うだろうか?

一般理論の記述を思い出す.もし政府が失業を減らすために他に(住宅を建てる,など)何も思いつかないなら,銀行を埋めて,それを再び掘り出すことは,何もしないより良いだろう,と.

採用した国は,Denmark, Sweden, Switzerland, Japan, and the eurozoneそしてアメリカやイギリスも魅力を感じている.しかしマイナス金利も,2008年の金融危機以後,景気回復を促す金融政策の(効果のない)工夫の最新例である.

名目金利はゼロ以下に下がらないが,投資家の期待利潤率は容易にマイナスにもなる.だから,中央銀行が商業銀行の残高に課税して,融資を強いるのだ.ただし,そのマイナスの効果を世界銀行は指摘している.銀行の経営を圧迫し,過度にリスクを取るのを促し,厳禁経済を奨励し,年金・保険会社が長期債務に耐えられなくなる.

不況に対して,金融政策だけでは十分な効果が生じない,ということだ.「長期停滞」と失業が問題になる時代には,政府が大きな役割を引き受けることになる.中央銀行から政府が直接に借りて,それを住宅建設,公共輸送システムの更新,エネルギー節約技術の導入,などに支出する.残念だが,現在,それはタブーである.

VOX 24 May 2016

Helicopter money: The illusion of a free lunch

Claudio Borio, Piti Disyatat, Anna Zabai


l  オバマのベトナム訪問

FT May 21, 2016

Washington’s warming relations with Vietnam

NYT MAY 23, 2016

Moving On in Vietnam, but Remembering Its Lessons

By JOHN KERRY, JOHN MCCAIN and BOB KERREY

アメリカとベトナムの関係は大きく変わった.かつてアメリカ兵としてベトナム戦争に参加したこと,現在の状態を想像することは全くできなかった.

FP MAY 23, 2016

Washington’s Honeymoon in Cam Ranh Bay

BY JAMES HOLMES

YaleGlobal, 24 May 2016

With Eye on China, Obama Strengthens Ties With Vietnam

Murray Hiebert


l  アフリカの携帯電話革命

VOX 22 May 2016

Liberation technology: Mobile phones and political mobilisation in Africa

Marco Manacorda, Andrea Tesei


l  TPP

FP MAY 22, 2016

Have Old Ideas About NAFTA Hurt the TPP?

BY PHIL LEVY

Project Syndicate MAY 23, 2016

Make America Trade Again

ANDERS FOGH RASMUSSEN


l  エリートの失敗

FT May 23, 2016

Donald Trump’s retreat from American greatness

Gideon Rachman

FT May 23, 2016

How to defeat rightwing populism

Martin Wolf

トランプの登場は,共和党だけでなく,エリートたちの失敗である.

トランプは右派のポピュリストである.ポピュリストは制度を否定し,専門家を拒否する.彼らが示すのは,カリスマと無知だ.右派は外国人を排斥する.トランプは取引のための交渉を追加する.

ポピュリズムに頼れば,ベルルスコーニが示したように,必要な改革が大きく遅れるだけだ.トランプは同盟関係や国際制度を解体するだろう.それは現在の経済・政治秩序を破壊する.財務省証券に影響が出るし,アメリカの(部分的な)デフォルトを唱えることは資本流出とドル下落を意味する.世界金融を混乱させ,アメリカの国際的な役割も失わせる.

保護主義は偽薬でしかない.労働者に対する減税や最低賃金の引き上げが重要だ.しかし,基本的な問題は,高所得国の内部で,グローバリゼーションの勝者が,その敗者に対する責任を感じていないことだ.システムの正当性は,エリートたちの行動に依存している.

NYT MAY 24, 2016

We’ve Seen the Trump Phenomenon Before

Eduardo Porter

FP MAY 24, 2016

How to Save America From Donald Trump

BY DAVID ROTHKOPF

Bloomberg MAY 24, 2016

The Danger of President Trump Isn't Dictatorship

Megan McArdle

Project Syndicate MAY 25, 2016

How the West Was Lost

CARL BILDT

NYT MAY 25, 2016

How Do You Solve a Problem Like Trump?

Thomas B. Edsall


l  中東の秩序

FT May 23, 2016

Middle East: The factions behind the fight against Isis

Erika Solomon and Geoff Dyer

The Guardian, Tuesday 24 May 2016

Drones are not all bad – but what if Isis starts using them?

Mary Dejevsky

SPIEGEL ONLINE 05/25/2016

'Waiting for the World'

An Interview with One of Aleppo's Last Doctors

By Christoph Reuter

Project Syndicate MAY 26, 2016

Reconciling with Sykes-Picot

RICHARD N. HAASS

サイクス=ピコ条約は衛フルの帝国主義が中東地域で衝突するのを回避するために結ばれた.それは成功したのだ.確かに,国境線は人口やエスニック,地理的な要因を無視しているかもしれない.しかし,それは多くの地域にみられる.


l  オーストリア

FT May 23, 2016

Austria’s race to the right is a lesson to mainstream parties

Heather Grabbe

FT May 23, 2016

The Austria presidential result was too close for comfort

Tony Barber

NYT MAY 23, 2016

Letter From Austria: Is Europe’s ‘Tolerant Society’ Backfiring?

William Egginton


l  アメリカの貯蓄と対外赤字

Project Syndicate MAY 23, 2016

America’s Saving Perils

STEPHEN S. ROACH

アメリカの貿易赤字の理由は明白だ.アメリカ人が生産する以上に消費し,外国から貯蓄を吸収し続けているのだ.しかし,政治家たちは有権者を責めるより,外国人を責める.

国際的な貯蓄の不均衡は,国際資本移動を不安定化し,資産バブルや金融危機を招く.貯蓄と支出とのバランスを慎重に行う政策は,アメリカや中国にとって重要だ.その意味で,中国の改革はアメリカよりも一歩前進している.

しかし,外部に不満を強めるアメリカの有権者たちはそのことを意識しない.その結果は,アメリカン・ドリームの終わりである.


l  ロボット

The Guardian, Tuesday 24 May 2016

If robots are the future of work, where do humans fit in?

Zoe Williams

FT May 24, 2016

The growing threat from online bank robbers


l  次の不況

FT May 24, 2016

How should we respond to the next recession?

Larry Summers blog


l  ポーランド

Bloomberg MAY 24, 2016

Poland's Europe Problem Has Deep Roots

Noah Feldman


l  ルワンダ

FT May 24, 2016

Rwanda’s leader is both Solomon and Saddam

David Pilling


l  文化大革命

NYT MAY 24, 2016

Breaking the Silence About the Cultural Revolution

By THE EDITORIAL BOARD


l  南アメリカの革新派

The Guardian, Thursday 26 May 2016

Why did South America’s progressive dream die so suddenly?

Uki Goñi


Project Syndicate MAY 26, 2016

Good News for Humanity

GARETH EVANS

YaleGlobal, 26 May 2016

An Alternative to Boycotts or Divestment for Israel

Ian Shapiro and Nicholas Strong


l  ドイツとは何か?

NYT MAY 26, 2016

What Is German?

Anna Sauerbrey

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The Economist May 14th 2016

The war within

The Arab World: The clash within a civilisation

An election in the Philippines: The dangers of Duterte Harry

The Philippines: Fist of iron

The Cultural Revolution, 50 years on: It was the worst of times

Zimbabwe’s new currency: Who wants to be a trillionaire?

(コメント) 中東における秩序崩壊に関する特集記事が印象的です.それは異なる文明の間の衝突ではなく,同じ文明の中の衝突です.1.専制支配体制の崩壊,2.石油に依存した地代経済の崩壊,3.イスラム内部の聖戦主義を加速したサウジアラビアとイランの闘い,4.外部勢力の介入.

解決の道をどこに求めるのか? サイクス=ピコ条約のように,領土を再分割するべきだ,民族や宗派ごとに分離するべきだ,という解決策を,The Economistは支持しません.むしろ連邦制と権力の分散・地方分権を薦めます.

フィリピン,中国の文化大革命,ジンバブエについても,内戦の流れを回避する政治的なモデルに向けて,指導者たちと民衆との対話が権力の正当性を高める仕組みを探します.

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IPEの想像力 5/30/16

広島訪問を観て,アメリカ大統領がオバマであることを喜びました.トランプであれば,どうだったか? 他方,オバマと歩く日本の首相が安倍晋三であることは,献花と敬礼に,靖国神社や自衛隊への敬礼を連想しました.

政治は想像力であり,政治家とその言葉は,国家や国民をつなぐシンボルとして強い意味を持ちます.アジアや世界も,彼らが歩むことの意味を考えます.

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「死が空から舞い降りた.」

ゲーテのファウストのように,オバマは文明と科学技術のもたらす破滅について,広島で考えます.

国家が戦争を行い,戦争が国家を作った.歴史社会学者たちはその関係について述べました.原子爆弾は,戦争を,そして,おそらく従来の国家を不可能にしました.原子爆弾は,広島から日本を変え,アメリカを変え,世界を変えたのです.

オバマが帝国の興亡について,無辜の民が苦しんだ,と言及したとき,その帝国とは日本やナチス・ドイツであり,イギリス帝国やアメリカ帝国でもある,と感じました.アメリカは謝罪せず,人類の文明とともに,その過ちと苦しみを共有する視点から,オバマは考えます.

同じ高度な文明が「都市」を,「芸術」を残し,「正義」,「調和」,「真実」をもたらした.人類史が示す「紛争」と「征服」の繰り返されたパターンを考えること.最も裕福で,最も強大な国家間で行われた第2次世界大戦において,数年のうちに約6000万人が死んだ,と知るべきだ.

都市への無差別な空爆も,ドローンによる国境を超えた暗殺も,政治指導者たちは決断してきた.オバマは,トルーマンも正しいと信じて決断したのだ,と考えます.その上で,アメリカ国民に広島の姿を見るように求めます.

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「武器」と「社会的革新」が戦争を肥大化してきた.それは逆転できないのか? オバマは「核なき世界」の実現に失敗しました.プラハ演説を引き継いで,その答えは何か?

その答えは,暴力や征服を正当化する文明,信念,宗教ではなく,科学でもない.しかし,技術進歩と人間の制度が組み合わさるとき,戦争ではない,優れた成果を人類にもたらすことができる.

広島を観よ.日米の「同盟」だけでなく「友情」が,二度と再び戦争を起こさない関係を築いている.ヨーロッパにおける「統合」と「民主主義」が,次の戦争を防ぐだろう.人民が抑圧から解放され,国際社会が条約や制度を築くことで,戦争が起こらない(より起こりにくい)世界に向かう.その過程で,核兵器は廃絶できる.と,オバマは考えたのです.

確かに今も,世界中で,暴力や恐怖,政治の腐敗が存在しているけれど.・・・そうだ.われわれは,まだ,なすべき多くのことを抱えている.

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核兵器を増やし続けることの論理的な矛盾を認めねばならない.「恐怖のロジック」ではなく,戦争についての「考え方」mindsetを変えるときだ.

紛争を外交によって予防することが重要であり,紛争が拡大してから軍事的に解決することは非常に劣った解決策でしかない.平和的な協力の方が,暴力的な競争よりもはるかに優れている.破壊する国民より,建設する国民を高く評価するべきだ.

アメリカの歴史を振り返り,(奴隷制,など)多くの過ちを犯したとしても,幸福を追求する権利,差別されない,すべての市民の人権を,アメリカや他の多くの民主主義国は認めている.

一人の人間として想像する力で,人類を結びつけることができる.「人権」という思想について.われわれがそれを学び,われわれが選択することで,子供たちに異なった世界を語ってやれるはずだ.

「共通の人間性」を認めた,「戦争の起こりにくい世界」,「残酷な行為を受け入れない人々」を実現する.

そのような話を「被爆者」から聴くことができる.なぜなら,彼らは原子爆弾を浴びて,戦争それ自体を心から憎むからだ.

幸福を追求する平等な権利について,国境の中でも,それを実現することはむつかしい.人類が1つの家族であれば,と思うだろう.広島に来て,それを想像することだ.

71年前の広島にも,朝,キッチンで子供たちとあいさつした父親や母親がいただろう.職場や学校に向かった.私たちと同じように暮らす人々が,この広島に多くいて,亡くなった.

普通の人々は,2度と戦争してはいけない,ということを理解している.軍事力に頼る国家と国家の指導者たちは,広島に来て,何がなされたかを学ぶべきだ.

しかし今,平和の中を子供たちは学校に通っている.

子供たちを守り,世界中の子供たちにも,同じようにこの幸せを広げていくことを,私たちは目指す.

私たちは,広島・長崎でそれを知る.

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アメリカの指導者による謝罪ではなく,広島訪問の意味を,自分もその一人でしかない人類に問いかけます.

同様に,オバマは問われています.・・・拷問について,諜報活動について.ドローンや傭兵(民間軍事サービス契約)について.

ベトナム戦争や,アフガニスタンとイラクにおける戦争について.

東シナ海や南シナ海について,北朝鮮について,香港・台湾について.

沖縄など,米軍基地周辺の強姦・殺人など,軍関係者による重大犯罪について,シリア難民やパレスチナ難民について.

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真珠湾攻撃について,安倍首相は問われます.アジアの侵略について,軍国主義について.

国会や皇居に中華人民共和国の国家主席を招いて,人民大会堂や南京に日本の内閣総理大臣を招いて,その演説を聴く日も来るでしょう.

日本政府は,広島・長崎を経験し,憲法9条を持ちながら,核兵器廃絶のために何をしたのか?

毎年,複数の国家元首・政治指導者や紛争地域の軍事関係者を広島に招いて,紛争回避・平和構築のためのサミットを開催してはどうか?

オバマは,被爆者を含む運営委員会に,1人の委員として参加します.

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