IPEの果樹園2016
今週のReview
5/30-6/4
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中国の経済改革 ・・・ヨーロッパ難民危機の見通し ・・・拷問とドローンによる暗殺 ・・・Brexit論争 ・・・オバマの広島訪問 ・・・トランプとその克服 ・・・ギグ・エコノミー ・・・伊勢志摩サミットと財政政策 ・・・ヘリコプター・マネーとマイナス金利 ・・・オバマのベトナム訪問 ・・・エリートの失敗 ・・・中東の秩序 ・・・アメリカの貯蓄と対外赤字
[長いReview]
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主要な出典 Bloomberg, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times,
The Guardian, NYT: New York Times, Project Syndicate,
SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, そして、The Economist (London)
[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
l 中国の経済改革
FT May 20, 2016
The conflicting currents of
Beijing’s five-year plan
FP MAY 24, 2016
Is China on a Path to Debt Ruin?
BY
HOUZE SONG, DEREK SCISSORS, YUKON HUANG
中国の債務は急増し、2016年第1四半期にGDPの237%に達した。それはアメリカやユーロ圏に匹敵し、多くの発展途上諸国に比べて大幅に高い比率だ。しかも、2007年末には148%であったから、中国の債務が増大する速さが注目されている。
2008年の金融危機が再現するのか? 中国政府はいつまでこのような刺激策を続けられるのか? その限界と構造改革への努力は、成長率にどう影響するのか?
Yukon
Huang, Senior Associate, Carnegie endowment: 中国が債務崩壊の間際にあると考える者は間違っている。中国人の貯蓄率は高く、中国政府には財政的な余裕がある。債務の多くは、国有企業が直接・間接に国有銀行から借りているから、民間債務のダイナミズムと異なる。
中国の企業や地方政府が経済全般に影響するという証拠はない。しかし、債務の水準は慎重な管理を超えている。特に企業債務がそうだ。それでも債務が急増したのは、建設・不動産開発、商品・石油、という限られた分野である。例外的な水準にある国有企業はいずれ処理されるだろう。
シャドー・バンキングについての多くの警告にもかかわらず、事態はそれほど深刻ではないし、政府が重要な機関の救済、銀行の資本増強に財政的な支援を行う意志がある。しかし、安定化は混乱した過程であり、緩やかに金融資源を消耗する。中国の投資家たちは経験が少ないため、市場の悪化に予想できない形で反応する。株価が経験した急激な高騰とその後の暴落は、リスクに関する人々の認識を変えた、
中国は、財政制度や金融市場において改革を進める必要がある。地方政府が、インフラ整備を、銀行や土地開発に依存し過ぎている。銀行だけでなく、株式市場や債券市場の発展が必要だ。
Houze
Song, Program Associate, Paulson Institute: 中国の債務は、国有企業に集中しており、しかも急激に年20%も増えている。それは資本の効率的な配分を損ない、低生産性、低成長を避けられない。
中国は危機を避けることだけで低成長を続けるのか? それはないだろう。北京は財源を持っており、しかも、資本流出によって処理を強いられるはずだ。かつてのように高成長で債務処理を待つこともできない。
Project Syndicate MAY 25, 2016
China’s Incomplete Growth Strategy
YU
YONGDING
成長の減速は投資決定の問題を示している。需要不足ではなく、供給側の問題だ。債務とデフレの循環が起きている。しかし、不動産開発への過剰投資は抑えるべきだが、先進国水準の生産性を実現するためにインフラ投資はさらに必要である。
l ヨーロッパ難民危機の見通し
FT May 20, 2016
The solution to Europe’s migrant
crisis has shaky foundations
Ian
Bremmer
絶望した人々が潮流となって北ヨーロッパに流入した危機は、この数か月で急速に減少し、一息ついている。バルカン・ルートにおける障害と、EUがトルコとの合意により難民を送り返し始めたからだ。
しかし、この成功はギリシャとトルコに大きく依存している。
ギリシャは、5年間で3度の救済融資を受け、債務は総額3200億ユーロに達している。そのギリシャが多数の難民を受け入れ、同時に、労働人口の4分の1、若者では半数が失業している。過去7年間で企業の4分の1が閉鎖され、賃金は40%近く下落した。2007年以来、経済規模は4分の1も縮小した。
この18か月間で100万人以上の難民が海を越えてギリシャに入った。約5万人がまだギリシャにいる。彼らの多くは難民キャンプで残りの人生を過ごすかもしれない、と考えている。しかし、これほど多くのギリシャ人が生活に困っているのに、難民たちの生活を政府が維持することは不可能だ、と疑問を感じている。社会不安の可能性が高まっている。EUの財政支援はわずかずつしか与えられない。IMFとギリシャの債権諸国との意見は対立しており、ギリシャが債務免除される見通しはない。
他方、トルコの姿勢も、シェンゲン協定諸国におけるトルコ国民に対するビザの廃止と交換に、海上からのギリシャ入国を阻止することに協力する、という合意であった。しかし、大統領のエルドアンRecep Tayyip Erdoganは憲法改正により任期を延長し、権力の強化を図ろうとしている。欧州委員会は、トルコがテロ対策法を改正して、それがジャーナリストや政府批判への弾圧に利用されないように求めている。EUが合意したダウトオール首相は辞任し、ヨーロッパ議会はトルコに対するビザの廃止を嫌っている。
難民危機の負担は、大部分がドイツに集中し、それを受けてメルケル首相が対応策をまとめた。ギリシャとトルコの同意が条件になっている。この難民抑制策が効果的であるのは、3者がそれを支持する限りでしかない。
FP MAY 20, 2016
In Defense of Denmark
BY
JAMES KIRCHICK
The
Guardian, Monday 23 May 2016
When the
world failed Syria, Turkey stepped in. Now others must help
Recep Tayyip Erdoğan
VOX 23 May
2016
The
migration crisis and refugee policy in Europe
Timothy J Hatton
ヨーロッパの難民受入れシステムは混乱し、ますます論争を分裂させて、その場しのぎの解決策に向かいつつある。現在の「自発的な」難民受入れシステムに代わって、より包括的な難民割り当てシステムに移行するべきである。それができなければ、一層の政治的な反発が起きるだろう。
難民の急増は、内戦地域や人権侵害の状態から逃れる人々が増えたことによるものだ。「経済難民」ではない。しかし、難民認定の率は、1992年まで減少したが、その後、50%にまで改善し、それから2002年まで再び低下し、今は50%の水準にまで回復してきた。しかし、認定されなかったものの多くは非合法な滞在を続けている。
世論の動向は、難民に対して好意的である。しかし、ヨーロッパ外の貧しい国からの移民には制限することを求めている。世論は反移民の姿勢を示していない。EUに対する懐疑論が高まっているにもかかわらず、移民・難民に関してはEUレベルの意思決定を求める人が増えている。
EUとしてなすべきことは、1.「自発的な」難民への動機を減らすことだ。厳格な国境管理には明らかに効果がある。EUの境界警備体制に独自の権限と財源、スタッフを与えるべきだ。2.難民キャンプの条件を改善することだ。長期的には、地域社会への統合、送還、再定住化が必要である。3.難民受け入れ能力をEUレベルで高めることだ。EU加盟諸国で1人当たりの難民認定数は大きく異なる。難民認定を超国家機関に委ね、その受け入れや財源負担も公平に行うべきだ。
そのような政策は、世論によって支持される。政治が躊躇しても、危機によって転換を強いられるだろう。
Bloomberg MAY 25, 2016
Immigration Isn't That Bad for
Native Workers
Noah
Smith
l 拷問とドローンによる暗殺
Project Syndicate MAY 20, 2016 2
Why Torture Doesn’t Work
SHANE
O'MARA
拷問はむだである。拷問は、それを行う者にも、その社会にも、深刻な影響を与える。
信頼できる情報は、日常における法の執行やテロ行為の防止にとって欠かせない。それゆえ情報収集や操作は行動科学や脳科学に基づき行われるべきだ。ハリウッド映画が描くような狂気の想像力によるのではない。
拷問は人類の歴史とともにあった。その呼び方は違うが。例えば民主主義の下では、拷問は極秘に行われ、心理的、神経的、生理的な機能の核心を狙った技術を好んで用いる。これらの技術は、水責め、窒息、束縛、ストレスの強い姿勢を強いる、などと同様、極寒、騒音、強い光線、など、物理的な証拠を残さない。しかしそれらの影響は、たとえば、裸にする、社会的に孤立させる、銃、ドリル、犬を使って威嚇する、愛する者への攻撃を工作する、などもともなう、破滅的なものである。
そのおぞましさにもかかわらず、擁護する者には事欠かない。味方の命がかかっている。情報を得なければならない、と。強いストレスをかけることで、彼らが知っていることを吐き出すだろう。
しかし、このような主張を正当化する証拠はない。実際は、拷問がその達成すべき目的を破壊する。拷問によって自白したことは膨大な量となり、そこに本質的な重要情報は含まれていない。かつて、どれほど多くの女性が拷問によって、自分は魔女である、と認めたことか。ガリレオは拷問される脅しだけで、地球が太陽の周りを回転しているという主張を否定した。
無意味な自白を強要するために、無防備な者に物理的、精神的な攻撃を加えることは、人格を損ない、恥辱を与え、精神的な障害を与えるものだ。民主主義の下で、こうした拷問が行われるなら、拷問を行う者は社会的な支持を得て、あるいは楽しみから、自分たちの仲間にも拷問をするようになる。民主的な制度や法の支配が破壊されるだろう。
FP MAY 23, 2016
Obama Rolls the Dice With Killing of
Taliban Chief
BY
DAN DE LUCE, JOHN HUDSON
FP MAY 24, 2016
The Magical Thinking of Killing
Mullah Mansour
BY
ROSA BROOKS
タリバンの指導者Mullah Akhtar Mohammad Mansour,をドローン攻撃で殺害した.オバマ大統領は,「重要な一里塚」と述べたが,この一里塚はどこにも通じていない.
大統領や国防総省の幹部たちは満足するのかもしれない.しかし,これにはコストが伴う.アメリカの同盟諸国でさえ,こうした国境を超えた殺害を歓迎しない.また,攻撃されたコミュニティーはアメリカを憎み,テロ組織の募集は容易になる.特に,避けられないこととして,巻き添えで市民が死亡する場合は.
対テロ作戦は,莫大な財源を失い,的外れなことをしている,とJohn Mueller and Mark
Stewartは新著(Chasing Ghosts: The Policing of Terrorism)で批判した.
NYT MAY 25, 2016
What Happens After the Drone Strike?
By
THE EDITORIAL BOARD
NYT MAY 25, 2016
The Hits and Misses of Targeting the
Taliban
By
VANDA FELBAB-BROWN
l Brexit論争
Project Syndicate MAY 20, 2016 2
Will Brexit Destroy Britain and
Europe?
PHILIPPE
LEGRAIN
Joschka
Fischer, Richard Haass, Joseph Nye、など、Brexitに関する意見を整理する。
Carl
Bildtは、EUの成果を強調した。統合化への約束はギリシャ、スペイン、ポルトガルの民主化を助けた。共産主義体制が崩壊したときも、EU加盟が中東欧の移行過程を指導した。ヨーロッパのソフトパワーが、トルコの民主的改革を促し、ウクライナを最近の方針転換に導いた。
Joschka
Fischerは、イギリスが求めているヨーロッパは「単一市場」だけであり、離脱論が現れた、と考える。離脱には様々な理由が挙げられる。自由市場を好む保守派は、より自由で、豊かで、民主的になる、という。「完全な」主権を回復し、独自の通商条約を結び、さまざまな規制を破棄して、国境管理による移民排除が可能になる。移民規制こそUKIPの主要な目標だ。他方、左派強硬派はEUの「ネオリベラリズム」から離脱できる、と考える。
EU離脱はイギリスに多大の経済コストを強いるだろう。離脱過程に関する多くの不確実性を恐れて、投資と成長が損なわれるからだ。一時的でなく、長期の効果として、貿易、直接投資、移民、競争、生産性上昇、生活水準について悪影響が出る。なぜ、それにもかかわらず、多くのイギリス人が離脱を支持しているのか?
Ana
Palacio、Harold James、Simon Johnson ・・・彼らは離脱後も、ロンドンがヨーロッパの金融市場として第1位であり、移民が来ないだけで、単一市場の利益を失わない、と信じている。それは間違いだ。ポンドの価値は大きく下落するだろう。金融市場の安定性にも破滅的な効果を与える。
Ian
Buruma、Mark Leonard、William Hague、Mohamed
El-Erian ・・・イギリスはグローバルな影響力を失う。イギリス政府は分裂し、保守党は分裂し、スコットランドは独立してUKも分裂する。EU懐疑論者の保守派も、今はBrexitに反対している。
Javier
Solana、Richard Haass、Buruma、Clemens Fuest ・・・EUやアメリカ、西側にとってもマイナスだ。安全保障、外交、国際的な地位が悪化する。EU統合化の反対論はさらに強まり、極右のポピュリズムが優勢になる。北アイルランド和平の条約も不安定化する恐れがある。EU内の独仏同盟は強い発言力を得るが、実質的にはドイツの支配であることを家の加盟諸国は嫌うだろう。イギリス抜きのEU内で保護主義が強まるのも抑えられない。
Boris
Johnson、Jacek Rostowski、Joseph Nye ・・・残留派は、離脱による不確実さや不安を強調した。しかし、こうした「不安作戦」は、EUだけでなく、NATOについても言える。もしフランスでル・ペンが大統領になったら、NATOはどうなるのか? 各地で地政学的な脅威が現れているとき、Brexitは国際システムの無秩序な展開を刺激する。
Rostowski、Nye、Gareth
Evans ・・・イギリスは英語圏の諸国と緊密な同盟を組む、と離脱派は主張している。しかし、戦略を決めるのは、歴史(英語)ではなく、地理である。イギリスとカナダはアメリカと対抗する中国に関心がない。オーストラリアとニュージーランドにロシアのことは関心がない。またイギリスの貿易はもはやオーストラリアやアメリカに重要ではなく、TTPやTTIPのようなメガ地域協定の方が重要である。ヨーロッパから離れたイギリスには孤独しかない。
Anatole
Kaletsky、James、Dominique Moisi ・・・合理的な議論だけなら、Brexitが起きる心配はない。しかし、論争は合理的ではない。「不安」や「恐怖」を叫べば、人々はその解決を強い国民国家に求める。残留派は「希望作戦」を必要としている。残留派が頼れる様な「EUアイデンティティー」は存在しない。
NYT MAY 20, 2016
‘Brexit,’ a Feel-Good Vote That
Could Sink Britain’s Economy
By
PETER S. GOODMAN
The
Guardian, Monday 23 May 2016
Vote
Leave’s campaign of fear will cause lasting divisions
Polly Toynbee
危機感を強めた残留派は、離脱がもたらす経済コストの宣伝を津波のようにばら撒いていた。離脱派は、外国人排斥の感情を強めている。トルコ人が来るぞ! というわけだ。人口7600万人のトルコが加盟したら、EUの政治バランスが全く変わってしまう。しかも、殺人、誘拐、銃撃、犯罪の急増を警告する。
現実には、トルコが加盟する見込みは全くない。嘘の宣伝でも気にしない。コミュニティーは、だれを排除するかで定義される。その精神が常に素晴らしいものとは限らない。
これまで極右の台頭を排除できた選挙制度も、保守党が分裂し、UKIPに合流することで変わるだろう。反エリート感情の高まりはBrexitを有利にする。
The
Guardian, Monday 23 May 2016
We have
failed to stop segregation in Britain. Time to try again
Chuka Umunna
FT May 24,
2016
For
Britain, it should be clout not out
Gordon Brown
FT May 24,
2016
Democracy
is being undermined by ‘responsive’ politics
John Kay
FT May 24, 2016
The Vote Leave campaign resorts to
conspiracy theories
Sebastian
Payne
FT May 25, 2016
Vote Leave is damaging Britain’s
political culture
FT May 25, 2016
A Brexit myth of Brussels (mis)rule
Philip
Stephens
SPIEGEL ONLINE 05/25/2016
Embedded in Brexit
An Inside Look at the Anti-EU
Movement
By
Christoph Scheuermann
FT May 26, 2016
The self-inflicted dangers of the EU
referendum
Martin
Wolf
Project Syndicate MAY 26, 2016
A Post-Referendum Agenda for Britain
CHRIS
PATTEN
l オバマの広島訪問
Project Syndicate MAY 20, 2016
Hiroshima With or Without Remorse?
ARYEH
NEIER
オバマ大統領が広島を訪問し、1945年の原爆投下を謝罪しないとしても、そこで起きたこと、その理由を考えるように関心を集める、というのは良いことだ。
原爆の使用を支持する議論は、第2次大戦が早く終わった、というものだ。それにより、米兵や日本人の犠牲者が少なくなった。多くの市民が犠牲になることで、日本人は戦争を続けることが大きなコストになると理解したはずだ。
なぜ都市ではなく、人口の少ない軍事施設を標的にしなかったのか? アメリカの関係者たちは、原爆の都市におよぼす効果について知りたかったのだ。東京は、すでに激しい空爆を受けていたので、原爆の効果が分かりにくい。京都も検討されたが、最高司令官Henry Stimsonの新婚時の記憶や、京都の文化遺産が考慮された。
しかし、この説明は矛盾している。戦争終結を早めるためなら多数の市民を殺害することも正しいのか? そのような理由を認めれば、どのような虐殺も正当化できてしまう。しかし、オバマが謝罪しないのは、アメリカ人の多くが今もそう思っているからだ。
アメリカ人にとって、太平洋戦争を始めたのは日本人だ。日本人はアジアで行った残虐行為について十分に謝罪していない。特に、軍に性的サービスを強要された従軍慰安婦に対する姿勢がそうだ。
さらに、アメリカには世界で果たすべき特別な役割がある、と考えている。ベトナム戦争も、イラク侵攻も、それによる民間人の犠牲者に謝罪していない。それはアメリカ例外主義の1つだ。
しかし、アメリカが謝罪したこともある。第2次大戦中の日系人に対する扱いを謝罪した。他国の指導者も謝罪したことがある。1970年12月、西ドイツのブラント首相がワルシャワ・ゲットーを訪れ、深甚な謝罪の姿勢を示したことは有名だ。それは衝撃的であったが、戦争において、それだけの恐怖に加担したドイツ人がグローバルな地位を回復した瞬間を挙げるとしたら、この謝罪のときがそれであった。
オバマが、多くの市民の生活を破壊したことについて、アメリカの責任に言及してほしい。
FT May 25, 2016
Hiroshima visit revives
contradictions for a Japanese-American
Joji
Sakurai
NYT MAY 25, 2016
In Obama’s Visit to Hiroshima, a
Complex Calculus of Asian Politics
By
GARDINER HARRIS
オバマの広島訪問は、大小の国がますます不穏な対立を生じている東アジアの情勢に影響する。アメリカの有権者が大統領の謝罪を望まないだけでなく、中国や韓国など、日本帝国に戦時中の侵略と虐殺を味わったアジア諸国が懸念している。
しかし、オバマとその側近たちは、ベトナム戦争からイラク戦争まで、アメリカを果てしない災難に導いたワシントンの通念を軽蔑するようになった。それゆえオバマは、90年近くもアメリカ大統領が訪れなかったキューバに行ったし、イランの専制国家を支配するムラーたちに会って核合意を結んだし、ベトナムを訪れて長年にわたる武器禁輸措置を解除した。
オバマにとって広島訪問は、核廃絶や核事故・核攻撃のリスクを抑える試みの一環だ。「核兵器を大量保有し、それを使用した唯一の国として、アメリカには行動する道義的責任がある。」と、オバマはプラハで演説した。
しかし、アメリカの核兵器保有の近代化や、北朝鮮、パキスタンの核武装は、オバマ政権の下で世界がより危険な状態に向かったことを示すものだ。また、韓国、中国は、オバマの訪問が安倍首相の歴史認識を正当化することに反対している。安倍は、昨年の安保法制により、部分的に国外での武器使用を認める法制化を果たした。
中国は、アメリカの姿勢が日本寄りになるのを嫌っている。アメリカ政府は、気候変動の条約にどうしても欠かせない中国の支持を意識して、日本より中国の姿勢を重視してきたが、その後は、東・南シナ海の紛争を憂慮し、日本との同盟関係を強調するようになった。
オバマの訪問が安倍政権の支持につながることを嫌う声は東京にもある。また、日本政府は、ようやく実現した韓国との関係改善や歴史認識問題が再び論争になること、真珠湾に来て演説するように求められることを心配している。
日本はアメリカによる「核の傘」を弱めてほしくない。核廃絶は、すべての国が同時に行うべきだ、と日本の政府高官は発言した。
The Guardian, Thursday 26 May 2016
The Guardian view on Obama in
Hiroshima: facing a nuclear past, not fixing a post-nuclear future
Editorial
NYT MAY 26, 2016
Fear Sharpens in Japan That
Hiroshima’s Lessons Are Fading
By
JONATHAN SOBLE
NYT MAY 26, 2016
Obama, in Japan, Emphasizes
Lingering Threat of Nuclear War
By
GARDINER HARRIS
l アルゼンチン債務危機
VOX 20 May 2016
What the world can learn from
Argentina's holdout saga
Juan
José Cruces, Eduardo Levy Yeyati
l トランプとその克服
NYT MAY 20, 2016
Obama’s War on Inequality
Paul
Krugman
共和党の大統領候補になると予想されるトランプは、その公約に従い、富裕層への課税を削減し、Dodd-Frank金融規制法を廃棄するだろう。彼は時に「ポピュリスト」と呼ばれるが、その政策は、労働者を犠牲にして富裕層をより豊かにするものだ。
オバマ政権は、一般に理解されている以上に、極端な経済的不平等を解消するために多くの成果を上げた。そして、もしトランプではなくヒラリー・クリントンが大統領になれば、この闘いは継承されるだろう。
そもそも、政策によって不平等を減らすことができるのか? と問うかもしれない。それは2つの面で実行できる。1つは、高所得者に課税し、低所得の家族を支援する、再分配政策だ。もう1つは、「プリ分配」と呼ばれる政策で、低賃金労働者の交渉力を強化し、また、一握りの人々が莫大な報酬を得ることを制限するものだ。
アメリカの歴史では、ニューディール政策によって、中産階級の社会を創った。また世界を比較して観れば、先進諸国の中で、アメリカは不平等がもっとも深刻な国であり、デンマークが最低水準だ。
現在のアメリカは、デンマークになりそうにないし、ニューディール政策にも議会の共和党が反対する。しかし、主に低所得労働者を支援するオバマケアの実現と、ブッシュ政権下の高所得者に偏った減税が失効したことは、所得最上位の1%に大幅な増税を実現した。
プリ分配政策としては、金融規制改革がその意味を持っている。トランプが廃止することに熱心なものだ。
アメリカ政府は2大政党が富裕層の献金で支配するオリガーキーであり、経済エリートの利益に奉仕するだけだ、という声がある。それは間違いだ。オバマ政権は不平等の緩和に成功した。次の大統領にも求めることができる。
NYT MAY 20, 2016
The Fragmented Society
David
Brooks
アメリカ社会と政治の現状を理解するために読むべき本が何冊かある。Robert Putnam’s “Our
Kids,” Charles Murray’s “Coming Apart”、 そして追加したいのは、Yuval Levin’s fantastic
new book, “The Fractured Republic”である。
われわれの政治や思考の中には1950年代・60年代へのノスタルジーがある。左派は比較的平等であった時代、右派は団結と安定さがあった時代として懐かしがる。現代は、より分散し、分裂してしまった。
社会は分散したが、富と貧困は集中している。社会、政治、経済状態として、二極分解した社会にわれわれは住んでいる。政治家たちは何かのせいにして攻撃する。銀行が悪い、移民が悪い、トランプが悪い、など。しかし、過去の安定した社会は近代化を生き延びることができなかったし、回復することもできない。
そのような社会は、グローバリゼーション、フェミニズム、性革命、移民の増大、より大きな消費の自由を生き延びることができなかった。より大きな弾力性、創造性、個人の選択を、われわれは楽しんでいる。それらを捨てることはないだろう。
われわれは、新しい社会でローカルな近隣地区の組織化を学ぶ過程にある。個人、家族、町、国民、世界における循環を生きることだ。さまざまな点で、その連鎖を修復しなければならない。古代ギリシャやローマがそうであったように。
The Guardian, Sunday 22 May 2016
Flirting with Trump? No, the US will
vote for a Boulder solution
Will
Hutton
コロラド州、ボールダーBoulder, Coloradoが21世紀のアメリカの都市化を指導するだろう。
トランプやEU離脱派と違い、ボールダーは寛容な文化、先進的な技術、思慮深い都市化・インフラ投資、ダイエットからマウンテン・バイクまで、さまざまな新しいサービス産業を育て、豊かで満足できる都市生活を示している。
どれほど高い関税を導入し、メキシコ故郷に壁を築いても、アメリカが製造業雇用で繁栄することはない。ロボット化の過程は止められない。事務職にも及ぶだろう。豊富な富があっても、満たすべき人間的な必要は無限にあるのだ。富の公平な分配こそが条件だ。
そのためには、ボールダーが示したように、インフラ整備と人々への投資を行うことだ。企業は1兆7000億ドルも余剰資金を保持するより、こうした分野で投資に向かうことだろう。公共政策が富裕層支配の政治に翻弄されていてはできない。もっと課税し、支出するべきだ。
FT May 22, 2016
Inequality and the monopolies of
unfettered techno markets
Izabella
Kaminska
FT May 25, 2016
Why Americans don’t trust government
Larry
Summers blog
ギグ・エコノミー
NYT MAY 20, 2016
In Sweden, an Experiment Turns
Shorter Workdays Into Bigger Gains
By
LIZ ALDERMAN
VOX 21 May 2016
How much we work: The past, the
present, and the future
Timo
Boppart, Per Krusell
FT May 23,
2016
The gig
economy needs a new bargain for workers
ギグ・エコノミーが広がっているが,ヒラリー・クリントンに政策を助言するElizabeth
Warren上院議員は,これを敵視しない.インターネットで単発の仕事を請負う,あるいは,ウーバーのような知ら受け労働の組織化は,さまざまな利点を持っているからだ.実際,パリの移民たちは,正規の職業に就けないから,こうした新しい労働を歓迎している.
政治には,ギグ・エコノミーが競争や労働条件を悪化させない条件を整備する責任がある.この問題は,多くのパートタイムや下請け労働者の条件改善とも共通している.
1.社会保障の一体化,2.給付は労働者に対するもので,起業に対してではない,3.既存の労働法を守らせる,4.集団交渉に参加させる.
l 暴徒による政治
The Guardian, Saturday 21 May 2016
Across the world, the rule of law is
losing out to rule by the mob
Natalie
Nougayrède
(後半へ続く)