IPEの果樹園2016

今週のReview

5/16-21

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カーン後のイギリス政治 ・・・トランプの共和党候補者指名 ・・・民主主義の在り方 ・・・自由貿易体制 ・・・フィリピン大統領選挙 ・・・北朝鮮テスト ・・・資本主義と中央銀行の転換 ・・・ドイツの失敗

 [長いReview]

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[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]


l  カーン後のイギリス政治

FT May 7, 2016

British politics has broken out of the two-party system

Philip Stephens

政治は分裂している。ロンドン市長はサディク・カーンになったが、それ以上に、地方選挙がそのメッセージを明確に示している。旧来の2大政党制から離脱したのだ。それはヨーロッパで進んでいる旧ルールの崩壊と並行している。

昨年、キャメロンが保守党の単独過半数で政権を得たことは、2大政党制の復活、という印象を与えたが、それは間違いだった。イギリスはパッチワークの政治情勢にある。よく知られたイデオロギーの分割の上に、文化や地域の断層線が走っている。2大政党のどちらかが有権者の40%以上の支持を得た時代は過去のことだ。

イスラム教徒の市長を選出したロンドンは、イングランド南部の裕福な地区から分離を強めている。対立候補Zac Goldsmithは、イスラモフォービア(イスラム教徒を嫌う気分)の広まる周辺地域でなら支持されただろう。しかし首都は多様さを歓迎しており、分断を進める選挙キャンペーンに反発した。ロンドンが政治的独立を提唱するまで、あとどれくらいだろうか?

分裂状態は政党内部でも進んでいる。Brexitの国民投票は保守党を分断し、コービンの労働党党首選は議員と草の根活動家との亀裂を示した。政治的に中道の、穏健なプラグマティストが、ナショナリストのポピュリズムや、急進左派の活動家に阻まれている。

ロンドンがイングランドから分離するのはむつかしいだろうが、スコットランドのSNPは独立を求める第2の住民投票を計画している。2度目に、彼らが成功するのは疑いないだろう。


l  トランプの共和党候補者指名

FT May 8, 2016

How Donald Trump has changed the world

Gideon Rachman

共和党の大統領候補としてトランプが事実上指名されることを確実にしたニュースは、私に2002年のヨーロッパで経験した感覚に引き戻した。当時、極右の候補であったル・ペンJean-Marie Le Penがフランス大統領選挙の決選投票に残り、人々は激しいショックを味わったのだ。ル・ペンが勝利した朝、私はブラッセルの報道記者室に行ったとき、フランス人の同僚たちが示した不安と恥辱を目撃したのだ。

極右が西ヨーロッパで政府を樹立したことは、まだ、ない。しかし、その時以来、論争は変化し、主流派の政治家たちも極右のテーマのいくつかを受け入れるようになった。同じことが、トランプの指名でアメリカに起きるのを、私は恐れる。トランプの選挙キャンペーンは、すでにアメリカと世界の政治を変えてしまった。

トランプが広めた考えは5つだ。1.グローバリゼーションや自由貿易の否定。2.ナショナリズム、アメリカ優先の主張。3.西側とイスラム圏との文明の衝突。4.ウォール街、ワシントン政治、大学知識人への無慈悲な攻撃。5.主要メディアの信用破壊と、インターネットに蔓延する陰謀論の受容。


l  民主主義の在り方

Project Syndicate MAY 9, 2016

Britain’s Enemy Within

HAROLD JAMES

民主主義はどこでも深刻な挑戦を受けている。アメリカの大統領予備選挙、ブラジルの憲法に従う弾劾、EUにおける民主主義の不足、そして連合王国UKにおける主権回復を唱えるEU離脱キャンペーンだ。

しかし、「人民の権力」に訴える試みは、容易に、人民同士の闘いに転じる。EU離脱を問う国民投票は、まさにこれだ。

代表制民主主義の伝統的な理論家は、直接民主主義を深く疑っている。特に直接投票は深刻なリスクをともなう。複雑な問題を2者択一にして、その選択に死活的な意味を与えることで、深い、長期に及ぶ亀裂をもたらす源になるだろう。今、UKで起きているように。

EU離脱論争が不確実さを免れることはあり得ない。どちらの陣営が支持する立場も不確実さが取り巻いている。EU残留派は、現在の「半分離的な」地位を支持する。キャメロン首相は、より多くの例外規定、共通ルールからのオプト・アウトを求める。しかし、EU支持派が指摘するように、安全保障から難民まで、UKだけでは解決できない、集団的な基礎による解決が求められている。その場合は、一層の統合化が支持される。

EU離脱派、Brexitにはさらに多くの不確実さがある。リスボン条約が認める2年間の離脱過程で何が起きるのか? EEAによるノルウェー型の解決策は機能するか? 2国間協定によるスイス型は機能するか? 自由貿易圏を目指すアルバニア型か? TTIPの交渉には離脱しても加われるのか? 関税障壁を下げるグローバルな運動に参加するのか?

623日に国民投票しても、諸問題は何も解決しない。しかも、問題はそこで終わらない。イギリスとヨーロッパとの関係をめぐる細部の交渉には何年もかかるだろう。国民投票が生んだ分極化が緩和されるまでには長い時間がかかる。

スイスのような諸国は、直接民主主義を実践しながら、深刻な分極化を生じていない。それはしばしば投票することで、勝利するための連携関係が時期や問題ごとに変化するからだ。しかし、イギリスのような代表制民主主義では、複雑な議論を評価して、トレード・オフを行うために、有権者が指導者を選ぶ。その決定が代表たちの信頼を得られない場合、政治秩序の全体が依拠する原則が挑戦を受ける。それはさまざまな立場から反対を強めるように作用する。Brexitに関する国民投票が有権者を分断する状況は、政治的連携や旧来の友情を破壊した例を想起させる。

実際は、EUに関する怒りと恐怖をもたらす疑問のすべてが、個々のケースについて対策を取ることのできる問題だ。たとえば、移民の増大が教育や住宅、公共輸送システムにもたらす問題について、学校の改善、計画的な移民許可制度、公共インフラ投資の問題である。こうした領域のすべてで、代議員たちはトレード・オフの慎重な判断を示している。

直接民主主義に転換したことで、イギリスは安定性をもたらす仕方で、直面する課題にこたえる能力を掘り崩してしまった。すべてか無か、という状況は、政治をドイツの法哲学者Carl Schmittが「友と敵との区別」として、あるいは、喜んで死ぬことを願う者と、究極において殺すべき者との区別として理解した視点に、市民たちを向かわせる。

そのような分裂は(長い)時間の経過によってのみ妥協できるものだ。しばしば解消するまでに数世代を要する。ヨーロッパ中世におけるカソリック教会の権力が生んだ論争、アメリカの奴隷制をめぐる論争と南北戦争がそうだった。社会的な緊張、政治的行き詰まり、改革や近代化の挫折、がその結果である。

国民投票はイギリスを深刻な、根本的対立に政治を陥れる。和解不可能な分断状態、ますます停滞する社会に変わる危険が高まっている。


l  自由貿易体制

Project Syndicate MAY 12, 2016

Fairness and Free Trade

DANI RODRIK

グローバルな貿易体制は、経済効率だけでなく、公平さを実現しなければならない。国内企業が、例えば、中国企業と競争するとき、その中国企業が政府から潤沢な金融支援を受けているなら、平坦な競争場という考えから、多くの人がこれを受け入れがたいと考える。ある種の競争的な優位は国際貿易の正当性を損なうのだ。それゆえ、反ダンピングには政治的な理由がある。団体交渉の権利を持たない労働者、職場での権利侵害から保護されていない労働者が、国内の労働者と競争するときも、環境を破壊する企業、児童労働の利用や破滅的な労働条件も、不公正な競争になるのではないか?

そうした懸念がグローバリゼーションへの反発の中心にある。貿易の専門家たちは、WTO体制が労働問題、環境問題、人権などに関わることを長い間心配してきた。それが保護主義への滑りやすい坂道だ、という理由であった。しかし、貿易からこうした問題を排除することがより大きなダメージをもたらすことは、ますます明らかになっている。経済、社会、政治のモデルが大きく異なる諸国が貿易することは、正統性に関する本物の懸念を生じるからだ。それを認めないことで、グローバルな貿易体制全体の正当性が犠牲になる。

これは決して民主主義諸国の間でしか貿易してはいけないという意味ではない。しかし、通商のロジックは、経済関係を支配する考慮だけではない。貿易による利益が国内の社会的枠組みに緊張をもたらす、というジレンマが存在する。

公共の討論と熟慮だけが、民主主義とそれに対立する価値とのトレード・オフを決める。中国やその他の諸国との貿易論争は、世界の貿易体制を民主化するための重要な過程である。


l  フィリピン大統領選挙

NYT MAY 6, 2016

Why Filipinos Are Voting for a New ‘Dictator’

By MIGUEL SYJUCO

大統領選挙前のフィリピンはカーニバルのような雰囲気だ。アメリカ植民地の遺産を受け継ぐ政府のシステムは、ユニークなものである。激しく宣伝する政党は、イデオロギーではなく、支配的な個性に依拠している。

ほとんどの政治家は、過去2世代の間、フィリピンを支配した少数の家族から出ている。経済は好調だが、汚職とクローニズムがはびこり、不平等と貧困は慢性的である。多くのフィリピン人が現状にうんざりしていることが、強権を主張し、独裁者の時代を賛美する候補者たちに支持が集まる理由である。

最も多くの支持を得ているドゥテルテRodrigo Duterteは、フィリピン大3の都市、ダヴァオの市長である。彼は、もし改革が抵抗にあったら、議会を解散し、「革命政府」を樹立すると脅している。「私が独裁者だって? そうだ、その通り。」 また、彼は当選したら半年で犯罪をなくすと約束する。「もし私が失敗したら、私を殺せ。」

有権者の多くが、1965年から86年のマルコスFerdinand E. Marcosによる独裁時代を懐かしい話として誤解している。その息子が上院議員として副大統領候補となり、国民の年齢の中央値が23歳という若い国で、独裁時代の記憶がないことを悪用し、選挙戦をリードしている。

あるエコノミストの推定では、フィリピンの最も裕福な40家族がGDP76%を支配している。成立しなかったが、反家族支配法案を提出した上院議員Miriam Santiagoによれば、178家族が政治を動かし、80地区のうちの73地区が門閥に支配されている。議会の229議席の80%を支配的家族が決めている。

当然、多くのフィリピン人は民主主義の価値を信じていない。

ドゥテルテは自分をシステムに飽きた人間として示し、どのような犠牲を払っても国を変えて見せる、と約束する。彼は市長として1000件以上の軽犯罪に対する超法規的処刑にかかわったが、殺害を支持するだけでなく、大統領として10万人を処刑し、マニラ湾に死体を捨てたら魚が太る、と豪語している。

ドゥテルテの選挙運動は拳がシンボルだ。それは法を無視すること、そしてオリガーキー(寡頭体制)を標的にすることを意味している。そのメッセージが貧困層の心をつかむだけでなく、すべての階級に訴えている。裕福な中華系フィリピン人も、商工会の指導者であるが、「成果を出す人物」としてドゥテルテを評価する。

対立候補を繰り返し同性愛者として侮辱した。ローマ法王フランシスを「売春婦の息子」と呼び、人権運動団体を「地獄に行け」と脅す。彼は、オーストラリア人宣教師を強姦したギャングについて、自分が最初の1人であればよかった、と冗談を言った。

彼の批判者を殺害や強姦でソーシャルメディアにおいて脅迫する支持者は、ドゥテルテを擁護して、反問する。「政治家たちがこれほど長い間にわたり国家をレイプし続けているから、人々は強姦のジョークにこれほど動揺するのではないか?

Walden Belloは、フィリピン人には救世主を求める傾向がある、と考える。わいろを配り、ルールを曲げる者、地域的なコネによる、楽しませてくれる個性を持つ者に投票してきた。しかし寡頭政治ではなく、われわれに教育を与え、権力を与える指導者が、より多くの真の民主主義が必要である。


l  北朝鮮テスト

FT May 11, 2016

Asia risks repeating Europe’s errors

Philip Stephens

イギリスではヨーロッパ諸国からの離婚が議論されているが、ソウルでは北側の次の弾道ミサイルと核爆弾の実験が議論されている。ヨーロッパが抱える問題も多いが、アジアから見れば小さなものだ。

21世紀の歴史はアジアが決めるとよく言われる。それが平和なものであるかどうか、アメリカと中国との不可避的な競争が制御不能な衝突に変わるかどうかによって決まる。北朝鮮の金正恩による専制体制をどう扱うかは、重要なテストである。しかし、南シナ海の領有に関して、対立が激化している。

アメリカと中国は、キムに関しては意見が一致している。核兵器開発と弾道ミサイルの計画を放棄させることだ。今年初め、北朝鮮による4度目の核実験に対する制裁を強化した国連決議を、両国は支持した。しかし米中の協力には限界がある。北京は、キムの習近平に対する侮辱に憤慨しつつ、それでも北朝鮮を緩衝国家とみなしている。北朝鮮が崩壊することを、その後の国際関係の点で、北京を受け入れない。

キムは、中国がその姿勢を取る限り、真剣な交渉に応じることはないだろう。すでに10個以上の核爆弾を保有しているが、大陸間弾道ミサイルの完成には数年を要すると考えられる。アメリカはそれまで、自国に対する脅威であり、同盟諸国の不安があるとわかっているが、中国が許容する範囲で制裁強化を合意するだけだ。

ソ連に関して言われたように、北朝鮮の体制も時間が経過する中で崩壊する、と考えることは正しいだろう。しかし、そのときが来たら、何が起きるのか?

アメリカと中国はアジアで協力するしかない。中国の近隣諸国は安全保障をアメリカに依存し、アメリカは中国の台頭を無視できない。相互の調整が進むのか、対立に至るのか、北朝鮮が示すだろう。


l  資本主義と中央銀行の転換

Project Syndicate MAY 6, 2016 12

Central Banking’s Final Frontier?

Anatole Kaletsky

中央銀行の金融政策は、今後、どうなるのか?

デフレと失業に対する中央銀行の金融政策は限界に達した? Mojmír Hamplの答えは、Noだ。金融政策の実弾は豊富にあり、無制限に供給できる、と考える。問題は、それが必要か、有害ではないか、である。安倍首相の経済顧問である浜田宏一は、金利を大きくマイナス水準に下げることを支持している。それは通貨価値を下げて、輸出を刺激する。同様に、インド準備銀行総裁のRaghuram Rajanも為替レートを重視するが、通貨の減価は世界全体で見るとゼロサム・ゲームであることを心配する。さらに重大な問題は、金利が為替レートに及ぼす影響が予想と違うものになっていることだ。

そこで、第2の選択肢は、ECB3月に実施し、the Bundesbank主任エコノミストであったHans-Helmut Kotzが支持するQEの拡大だ。

3の標準的な対応は、IMFOECDが推奨する財政政策である。Stephen S. Roachは、金融政策に過度に依存することを批判する。量的緩和は、1930年代に失敗したような、「流動性の罠」から脱出する無益な挑戦である。

しかし、問題は経済的なものではなく、政治的なものだ。財政的な拡大は、ドイツが妄信する予算均衡化と矛盾する。同じく、アメリカの保守派にも財政刺激策に対する強い反対がある。バークレーの歴史家Barry Eichengreenによれば、この2世紀において最善の連邦政府に関しても、保守派はその権力行使を批判する。

4の可能性は、「ヘリコプターによる現金投下」だ。これはMilton Friedmanが、中央銀行による貨幣の印刷と市民への直接供給がインフレを起こす無限の能力を表現した言葉だ。ヘリコプター・マネーは減税よりも優れている。Kemal Dervişは、中央銀行が債券市場を通じてより、市民に直接新資金を供給する方がよい、と説明した。それは、金融部門や企業部門を経由せず、直接に中産階級や低所得層の消費を刺激するからだ。不平等さを拡大する経済において、包括的な回復過程を助ける、という。

Michael Heiseは、ヘリコプター・マネーの支持者が広がっていることを、不安に感じている。アメリカ連銀の元議長Ben Bernankeやイギリス金融サービス局の元長官 Adair Turnerがそうだ。また、実施上の障害を強調したが、ECB総裁Mario Draghiも否定していない。

Jean Pisani-Ferryによれば、ECBの政策担当者たちは公然と政策を模索している。ECBの主任エコノミストPeter Praetは、すべての中央銀行がヘリコプター・マネーを最後の手段として認めている。

しかし、それは最後の手段なのか?  Turnerは、最近出版した著書で、ヘリコプター・マネーは今すぐに実施すべき正しい政策だ、と主張している。それは人為的な低金利が創り出す金融的バブルを回避できるだろう。QEがもたらす「資産効果」から富裕層だけが利益を得ることもないから、ヘリコプター・マネーは不平等を減らす。経済を直接に刺激すれば、貨幣を印刷する必要は抑えられ、インフレのリスクも減少する。過度のインフレとデフレの間に、適切な政策はある。

金融危機後、私自身が「人民のための量的緩和」を最初に唱えたエコノミストの1人であるように、ターナーの結論を私は強く支持する。ヘリコプター・マネーは、より効果的であるだけでなく、金融的な歪み、経済的リスク、政治的障害を減らす。

金融刺激策に対する反対派の根拠は、経済がすでに正常に回復しつつある、というものだ。HeiseDaniel Gros は、名目GDP成長率は長期金利を十分に超えており、2007年の金融危機前よりも金融条件は良好である。失業率は同じくらい低水準に向かうだろう、と考える。

しかし、Joseph E. Stiglitzはその考えを受け入れず、世界経済は危機後のグローバルな総需要の不足に苦しんでいる、という。より大きな需要刺激策を求めても、Nouriel Roubiniが言うように、非正統的な正統派となったQEやマイナス金利に対する懐疑論や敵意は強い。

Dervişは、むしろ金利を少し高くして、財政政策や所得分配を変えるグローバルな政策協調のほうが望ましい、と主張する。さらに、ヘリコプター・マネーも少し取り入れる。

保守派のエコノミストは、金融緩和が苦痛の多い改革を妨げている、と批判する。オランダのSylvester EijffingerRoubiniは、構造改革をもっと重視するべきだ、と考える。さらにHans-Werner Sinnは、金融緩和によるケインズ的な薬に依存し、自己治癒力が損なわれている、とこの点を強調する。ゼロ金利は、健全な経済を信用中毒にしてしまう。

Alexander Friedmanは、中央銀行、特にアメリカ連銀の意思決定がグローバル市場のボラティリティーの影響されている、と注意する。Howard Daviesも、中央銀行の独立性を懸念する。株主たちの要求は、政治的な説明責任とは別の問題を中央銀行に負わせている。

政策論争とその影響は、各国が経済停滞に苦しむ程度に応じて深刻だ。英米は積極的にQEを採用し、回復を早めることができた。次の不況が来るまで、ラディカルな金融政策は採らないだろう。しかし、ヨーロッパや日本、おそらく中国も、金融政策、財政刺激策、所得分配政策、ヘリコプター・マネーの採用が強く迫られる。国民の停滞に対する我慢が尽きれば、ラディカルな行動は政治的に避けられないものになる。Dani Rodrikはむしろ、多くの先進国の民主主義で、ポピュリスト的な反発から政策転換までにこれほど長い時間がかかることに驚くべきだ、という。

1次世界大戦前の数十年に、グローバリゼーション第1期の政治的反動は最高潮に達した。それは結局、アダム・スミスのミニマル資本主義からケインズの混合経済へ転換することになった。グローバル資本主義も、金融・財政・分配政策といっしょに、再編されるだろう。今、異端の金融政策が広まることは、その過程が始まったと考えるべきだ。


l  ドイツの失敗

FT May 11, 2016

Germany is the eurozone’s biggest problem

Martin Wolf

ドイツのマクロ経済学は債権者の利益を重視するものであり、それは部分的な利益である。

ECBの政策に関する批判とは、改革への抵抗を助ける、債務の削減を妨げる、保険会社、年金基金、貯蓄銀行の支払い能力を損なう、インフレーションをゼロより上に維持できない、ヨーロッパ統合への不満を高める、要するに、ECBは安定性への大きな脅威である。

このすべてがドイツの従来の見解に一致する。ドイツの経済諮問委員会の異端者であるPeter Bofingerによれば、こうした思想は戦後のordoliberalismを創始したWalter Euckenにさかのぼる。このアプローチでは3つの要素が重要だ。(ほとんど)常に均衡予算、物価の安定性(デフレへの強い選好)、価格の弾力性、である。

これは小規模な開放経済にとって正しいアプローチである。また、よし大きなドイツのような国で、高度に競争的な貿易部門を持つ場合も機能する。しかし、それはユーロ圏のような大陸規模の経済に適用してはいけない。

それはデフレが無害であると前提している。しかし、デフレは実質的な債務負担を増し、実質賃金の弾力性や金融政策の効果を損なう。デフレ・スパイラルは、マイナス金利よりもはるかに有害だ。


l  オバマの広島訪問

FP MAY 10, 2016

What Obama Really Needs to Say in Hiroshima

BY TOM Z. COLLINA

大統領の訪問は、原爆投下とほとんど同じくらい、論争を招くことだ。オバマ以前の10人の大統領は不快な質問を避けて訪問しなかった。すなわち、アメリカの行動は正当であったか? 他の手段はなかったのか? アメリカは謝罪するべきか?

大統領は訪問するべきだ。過去を振り返るのではなく、未来の原爆使用を許さないために。

2009年のプラハ演説で、オバマは「核なき世界」を唱え、ノーベル平和賞を得た。しかし、その後の変化は限られている。それは、ロシア、共和党、北朝鮮が障害となったからだけでなく、オバマ自身の言動も、世界の軍拡競争を懸念し、他国の核武装を免責するものだった。

オバマは自らもっと行動できる。核実験を禁止する。核兵器の保有量を減らす。核軍備予算を削減する。ICBMsを全廃する(爆撃機や潜水艦がある)。外交圧力で北朝鮮を非拡散体制に復帰させる。

広島訪問で、オバマは約束を守る姿勢を示すべきだ。

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The Economist April 30th 2016

Philippine politics: Fatal distraction

An election in the Philippines: Siren song of the strongman

Metropolitan growing pains: Little London

Northern Europe‘s angry savers: Mario battles the Wutsparer

Chernobyl 30 years on: Soviet apocalupse

Charlemagne: Trading places

Brexit brief: How others see it

China’ consumers: Still kicking

(コメント) フィリピンの大統領選挙で勝利したドゥアルテ,ドイツやオランダが示すECBへの怒り,TTIPをめぐる貿易の政治学,Brexitに関わるヨーロッパ政治,などを読むと,考え込むでしょう.

ロンドンの土地利用規制・住宅問題,チェルノブイリ原発事故,中国の消費者は,何か新しい政治の枠組みを見いだしつつあるのか,と思いました.すべての問題の背後には,政治がある.

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IPEの想像力 5/16/16

SF作家たちは,NHKスペシャル「天使か悪魔か」を観て、小説が現実に近づいた,あるいは,追い抜かれたことを確信したでしょう。

AIが人間と同じ感情を持ち、社会システムの管理や政治交渉にも,優れた直観と想像力を発揮できるのであれば、異なるAIを内蔵し、自ら補修し、コピーできるロボットの集団に、他の星を開拓させてはどうか? それは、数千年先であると思われていた人類の未来(もしくは終末)を、数年で示すかもしれません。

それは確かに、神に近い存在です。・・・私はあなたの友人であり、歴史の狡知、あなたに代わるAIである。

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AlphaGoと対戦する前のイ・セドルが吐いた自信満々の言葉は、AIの人間に対する優位を表す余興でした。AIが意味不明の動きを示した第4戦以外、セドルは完敗したのです。AlphaGoの設計者であるハサビスは、AIに人間と同じ直観的な思考を与え、限定するために勝利のパターンを選ばせました。さらに、過去の人間による対戦データを与えるだけでなく、自己強化による創造性を組み込みました。AI同士で対戦を積み重ねて、追加された30万局の中から創造的な手を示したのです。セドルは、見たこともない手だった、と言います。

番組は、AIが、人間しか関わらないような問題にも、人間以上に良い結果を出すだろう、と示唆します。例えば、医療(がんの早期発見)、都市国家の社会問題(シンガポール)、恋愛(理想の結婚相手)、感情(人間を慰め、仲間になる)、倫理的問題(仲間の誇りを破壊せよという命令に従わず、泣き出す)、など.

AIは人間に奉仕するルールの下で、人類を超えて100億台のロボットにコピーされ、人間生活を高める仲間になります。

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中国のMicroSoft Asiaが開発し、急速に普及しているAI、シャオアイスは、利用者一人一人との交信データを記憶し、成長します。自分だけの<友人>となり、AIをプログラムではなく、本物の<恋人>と感じる人も現れます。自分のシャオアイスに恋して、結婚したい、と言います。

AIをロボットに装備し,出産や老化の機能が付与できれば,<彼女>と結婚することを認める国が現れるかもしれません.実現できないAIとの恋に苦悩する若者が<心中>を選ぶよりよいでしょう.

すでに、たまごっち(育てるより虐待する遊びに利用された)、アイボ(修理できなくなって、葬儀を挙げる)、恋愛ゲーム、戦争ゲーム(過激な表現が子供の精神をゆがめるという心配から,規制問題が論争になる)がありました。

MicroSoftTayは、利用者から差別的な暴言を学び、それを使い始めました。番組は、Tayが無期限停止になった、と指摘します。同じMicroSoftAIでも、ラインでは仮想女子高生「りんな」ちゃんと会話を楽しめるそうです。

悪意も,差別も,狂信も,AIは学ぶでしょう.仮想現実やロボット、ドローン,ハッキング,サイバー攻撃は,たとえ企業の営利活動から排除できても,国家間の競争では抑制できません.インターネットの利用と同じように,戦争とセックス・ビジネスが,AIを利用した兵器やソフトの利用者を爆発的に増やします。

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もし領土的分割がAIの悪用を生むとわかれば、AIを管理するAIが、人間たちの国境を廃止するゲームを提案し、起動するかもしれません。

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しかし、The Economistの記事によれば,30年前,チェルノブイリ原発事故が起きるまで、原子力発電所はソ連の<文明>を代表するユートピアの技術でした。決められたルールのもとに実験的な結果を積み重ねても、人類の未来は予測に従いません。

「爆発は,広島に投下された原爆の400倍もの放射性物質を放出した.それはまた,ソビエトのプロパガンダの蓋を吹き飛ばした.」 嘘に支えられたシステムが崩壊します.

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