IPEの果樹園2016
今週のReview
5/2-7
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Brexit論争 ・・・中国の改革とSDR ・・・サウジアラビアの改革 ・・・アジアの水不足 ・・・グローバリゼーションの制御システム ・・・TPPとTTIP ・・・軍事介入より国内改革
[長いReview]
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[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
l Brexit論争
The
Guardian, Thursday 21 April 2016
It took
Barack Obama to crush the Brexit fantasy
Jonathan Freedland
離脱派はオバマがこの問題で黙っていることを望んだはずだ。しかしダウニング街で演説したオバマは、当然ながら、これはイギリス国民が決めることだ、と言いつつ、明確に離脱派を批判した。
反EU派は、大陸の近隣諸国より、アメリカの周りを太陽系のように動く英語圏の国々を当然の仲間と考えてきた。ブラッセルから切り離されても、シドニーやトロント、そして何より、ニューヨークやワシントン、ロサンゼルスがある、と。Brexitが求めているのは、妻から離れることを夢見る男の、彼をもっとよく理解してくれる他の女である。
それがアメリカのはずだったが、オバマはそれをあっさり否定した。アメリカは、EUから離脱したイギリスと、新しい、より緊密な関係を築く意図はない、と。アメリカと新しい通商条約を結ぶつもりなら、他の国と同じように、順番待ちの列に並ぶことだ。
慌てて離婚してはいけない。あなたは大歓迎されると思っているようだが、アメリカにそんなつもりはないよ。より明るい、ヨーロッパではない未来が、Brexit後に待っている、という考えを、オバマはくじいたのだ。
Brexit論者たちは激怒した。当然だろう。彼らは一斉に、激しい反アメリカ論を展開している。1939年までさかのぼって、アメリカが第2次世界大戦でイギリス側についたのは、そうやってイギリスが持っていた世界への影響力を粉砕したかったのだ、と。
ロンドン市長Boris
Johnsonは、トランプの本に示唆されて、「半分ケニア人の大統領」はその「先祖」からイギリスを嫌っているのだから、信用できない、と述べた。ロンドン市長が離脱派を支持したのは、政治的に柔軟で、キャメロンの次の首相を狙うスマートな計算であったのだろうが、これがその代償である。
もしオバマが残留派で、トランプやル・ペンが離脱派の支援者であるなら、あなたはどちらを選ぶのか?
離脱派はオバマの議論を偽善と言う。アメリカは、イギリスのようにEUで主権を奪われていないからだ。しかし、この比較は愚かである。イギリスは強く、豊かな国であるが、大陸に付属する、比較的小さな国である。アメリカは事実上の大陸だ。また、オバマがダウニング街で説明したように、アメリカも主権を譲歩している。たとえ議会の決定を翻すようなものであっても、アメリカはWTOやNAFTAのルールに従うのだ。
l 中国の改革とSDR
FT April
21, 2016
Reconciling
divergent views on China’s economy
Yukon Huang
中国経済に関する楽観と悲観とは容易に合意を見いだせない。これからも6-7%の成長が可能だとみなす者もいるが、3-4%か、もっと低いだろうとみる者もいる。
その背景には、中国経済の大きなゆがみが存在する。楽観派はこのゆがみを生産性が上昇する余地と見ている。他方、悲観派はそれを経済衰退の過程と見ている。
このパラドックスを解くカギは、国家の経済に対する過剰介入である。悲観派はここにリスクを観ているからだ。たとえば、金融危機後の財政支出は、政府債務の対GDP比率を急速に高めた。しかし、その数字は発展途上諸国の中では高いが、発展諸国に比べて低いものだ。政府の予想通りである。
確かに、不動産市場では価格が高騰し、債務の膨張によるリスクを管理する必要がある。しかし、それは「金融深化」の結果でもある。これまで過小評価されていた資産価値が市場において高まってきたのだ。不動産の過剰供給が解消するには、まだ数年かかるかもしれない。しかし、中期的に、中国経済は信用膨張に頼らず成長軌道を回復しなくても、効率的な市場の機能を妨げていた多くのゆがみに対処するべきだ。
これから10年を考えるとき、供給側の課題はより難しい。世界市場の低迷と国内投資の減少が指摘されている。2013年の3中全会が示したように、資源配分で市場がより「決定的な」役割を担うだろう。それは特に、都市化において実現する。大都市に向けた労働者の移動が、さまざまな障壁を廃止することで高い生産性を実現する。父さんを認めて資源を開放し、教育、医療、金融、通信、エネルギーの分野でも民間の競争を取り入れる。
GDPに占める消費のシェアは低く、構造的な問題を意味している。ここでも財政改革がその解決を促すだろう。投資が減少することを補いような形で、財政基盤を拡大しながら、社会保障や環境問題に対する政府支出が増える。
それに加えて、生産性の上昇を実現する改革に政府支出が増えることで、6.5%の成長は可能である。
Project
Syndicate APR 25, 2016
How to
Finance Global Reflation
ANDREW SHENG and XIAO GENG
現在のグローバル化した世界では、金融市場が国家の政策によるコントロールを超えている、という意識が強まっている。少数の国が緊密に結びついたグローバル市場に影響するが、それ自身の政治的・経済的な制約に縛られている。その結果、世界経済は金融的な循環を強め、そこから容易に脱け出せない。
数年前にClaudio Borioが指摘したように、グローバルな金融循環は、実体経済の循環よりも長く、大きくなっており、それは支配的準備通貨であるUSドルの価値の変動と緊密に結びついている。ドルが安くなって、他国に資本が流入するとき、その国の融資が増え、成長が起きる。
特に新興市場では、資本流入がインフレ、資産バブル、通貨の増価をもたらす。その結果は、金融的かつ地政学的なリスクが高まって、アメリカドルの投資家に対する魅力が増すことになる。資本がアメリカに逆流し、ドルの価値は高まって、他方、新興市場経済は資産バブルの破裂と通貨価値の下落という結果に直面する。
ゼロ金利の世界では、強いドルが1930年代の金本位制と同じように、世界市場にデフレを広めている。アメリカ経済は世界を長期デフレから脱出させる最良の位置にあるが、いわゆるトリフィンのジレンマから抜け出せない。長期の国際的利益と、短期の国内的利益とが対立し、アメリカはますます大きな経常収支赤字を出すことで世界に流動性を供給できるが、そうしない。
アメリカも、他の準備通貨を発行できる先進諸国も、それはしそうにない。ヨーロッパや日本は成長が停滞し、債務が増大しているから、財政支出を増やすために増税や債務を増やす政治家の意志がともなわない。その結果、金融緩和に過度に依存している。その非伝統的な金融緩和にも十分な効果はなかった。家計や企業が債務を削減し続ける限り、バランス・シート不況は続くだろう。中国の政策担当者たちも、まだ経済成長の一層の減速が起きる不確実性に制約されている。
問題は、需要を拡大する機会がないことではなく、その機会を生かす意志がないことだ。発展途上諸国のインフラや気候変動の緩和のために、グローバルな公共財へ投資すれば、グローバルなリフレーションをもたらすだろう。トリフィンのジレンマを解決するには、新しい準備通貨を国際機関が発行するべきである。それがIMFのSDRだ。
SDRが準備通貨になるのはまだだいぶ先であるだろうが、金融政策の効果を伝達するメカニズムとして、グローバルな金融アーキテクチュアでSDRの役割を次第に拡大するべきだ、ということに概ね合意が成立している。
IMFの口座を通じて、増額したSDRにより投資することで、各地の中央銀行は資源を生み出すのだ。なぜならSDRは投票権でもあり、世界銀行や他の国際開発銀行で、どのようなグローバルな公共財が投資に値するか、決めることになる。過度のインフレが生じないように、SDRの配分を微調整することができる。
かつては、投資可能な金融資源が各国内の貯蓄に制限された。近年では、非伝統的な金融緩和政策で流動性や融資を増やしているが、インフレを刺激する効果が見られない。それらから学び、グローバルな公共財への投資を拡大して、インフレを起こさずにグローバルな景気回復を実現できる。
l サウジアラビアの改革
FT April
25, 2016
A bold bid
to transform Saudi Arabia’s economy
サウジアラビアをわずか4年で石油依存から脱出させる、という、30代の副皇太子Mohammed
bin Salman(MbS)は、保守的な王国の根本的な体制転換を目指している。無駄な政府支出を削減し、民間部門を活性化して雇用を生み出すことが必要だ。
MbSはSalman国王の強力な息子として知られており、官僚の抵抗や王室内の権力争い、超保守的なイスラム聖職者に対抗できるかもしれない。石油価格の下落で予算赤字がGDPの17%に達し、持続不可能であること、また、国王がかつてないほどの権力集中を実現したことは、改革に有利である。その権限は、OPECがイラン抜きの生産凍結に反対したことでも明確になった。
改革の具体的内容には、国有石油公社Aramcoの部分民営化、王国の政府系投資ファンドの改革が含まれている。しかし、サウジ経済の転換には、政府からの給付に慣れた非常に保守的な社会において、もっと激しい改革が必要になる。すなわち、補助金を削減し、新しい税金を賦課し、公的な閑職を廃止する。それらは体制が忠誠心と見返りに給付してきた職場や利益であり、社会契約の根本的な転換を意味する。
今のところ緊縮策を受け入れている国民も、一層の削減には緊張を増すだろう。改革の実行に信頼を得るために、王室の拡大家族に関するより大きな透明性を求められる。
ダイナミックな民間部門を育てるのは一層困難な課題である。短期的には、外国からの投資を増やすこと、長期的には、安価な外国労働者への依存を減らすことが不可欠だ。それは教育改革に重点を置いて、女性の労働参加も高めるべきである。
多くのサウジの若者は、息苦しい、不公平な社会を、経済改革が変革することを望んでいる。国民の半数が25歳以下であるサウジで、若者たちが改革に失望することは、より危険な戦闘集団に向かう恐れがある。
経済改革の目標に見合った社会・政治改革を、皇太子が実現するように望みたい。
l アジアの水不足
Project
Syndicate APR 22, 2016
Asia’s
Troubled Water
BRAHMA CHELLANEY
アジアの水問題は悪化し続けている。すでに1人当たりで見て最も水不足の大陸である。南ベトナムから中欧インドまで、各地に深刻な干ばつ地帯がある。さらに中国のダム建設が下流にある諸国の政治的緊張も刺激している。
深刻化する干ばつは世界の3大コメ生産国、タイ、ベトナム、インドに損害を与え、世界のコメ価格に影響している。干ばつがかつてない規模に達しているのは特異な現象ではなく、アジアの生態系破壊や地下水の枯渇、水源の汚染、エルニーニョ、地球温暖化などが影響して、ますます強まっている。
アジアの無資源諸国は化石燃料や地下資源を輸入に頼っているが、水を輸入することはできない。その輸送費が高すぎるからだ。世界の灌漑面積の72%を占めるアジアは、ジレンマに直面している。人々の食糧需要は増えるが、水の供給は減っている。
水不足の最大の原因は、メコン川上流で行われる中国のダム建設だ。国連の報告書によれば、下流における水位は、最近100年間で最低レベルである。中国は、メコン川の貯水管理を行う、と称している。しかし実際は、14ものダムを建設して、下流の諸国を中国の善意に頼らせるだけである。
競争的な政策は、アジアを危険な経路に向かわせる。一層の環境破壊、経済発展の限界、さらには水戦争にさえ至るだろう。ルールに依拠して協力し、水の分配に合意し、水量に関するデータを自由に公開し、紛争解決メカニズムを機能させるときだ。
中国の協力がなければそれらは実現しない。メコンの水も、南シナ海の領域も、奪取することがルールであると、まだ中国は考えている。
l グローバリゼーションの制御システム
FT APRIL
24, 2016
The
revenge of globalisation’s losers
Wolfgang Münchau
グローバリゼーションは西側先進諸国で普遍的な利益をもたらすことに失敗し、政治的な反発に直面している。エスタブリシュメントたちは、グローバル市場における競争力を実現する改革を各国が怠っているからだ、という。
私はそれに反対だ。西側におけるグローバリゼーションの失敗は、それがもたらす経済的なショックに民主主義が耐えられない、ということを示している。たとえば、20年間も実質賃金が停滞する。グローバルな金融危機に見舞われる。その結果、長期の経済停滞が続く。
ヨーロッパの大部分では、グローバリゼーションと技術革新が旧来の労働者階級を破壊したが、今や熟練労働者の職場、中産階級をも破壊し始めている。有権者たちが反対するのは当然だ。職場を失い、新しい雇用も見いだせないフランスの労働者たちが、そのような「改革」を支持するわけがない。
改革が成功する場合もある、とあなたは言うかもしれない。2003年のドイツで労働市場改革が行われ、ドイツのコストを抑えて競争力を増すことに成功した。しかし、その改革が完全雇用を実現したのは、他の諸国が同じような改革をしなかったからで、他国も労働コストを抑制すればネットの利益は生まれない。
しかも改革には大きなマイナス面があった。ドイツの物価は相対的に低くなり、純輸出が増えて、巨額の国内貯蓄が流出した。それは、ユーロ危機をもたらした国際収支不均衡の原因であった。こうしたドイツの改革が、先進諸国のグローバリゼーション対応策としてモデルになるとは思えない。
現実に、改革を進めた諸国がポピュリストの台頭にうまく対抗できた、という証拠もない。アメリカとイギリスは多くのヨーロッパ諸国よりもリベラルな市場構造を示す。しかし、イギリスはEU離脱を選択するかもしれないし、アメリカでは共和党が過激なポピュリストの大統領候補を立てるかもしれない。フィンランドはすべての分野で高い競争力を示すが、経済は回復せず、強力なポピュリスト政党が現れている。経済改革と既存政党への支持とは、直接、何の関係もないのだ。
グローバリゼーションが西側社会を政治的・技術的に圧倒している。われわれがそれを免れることはできないが、それでもグローバリゼーションのマイナス面を管理する必要がある。もはや、貿易自由化や市場改革を唱えるべきではないのだ。
この週末は、ドイツでTTIPに反対する大きな集会があった。ドイツにおける世界貿易やTTIPに対する支持は、この2年間で、90%から56%へ大きく減少した(反対は、25%から33%)。ドイツの社会民主党SPD党首がTTIPを強く支持するのは理解できない。反移民を掲げるAfDの支持者の多くが、かつてSPDに投票していたことも当然だ。
反TTIP、反EU、反グローバリゼーション。マージナルな経済利益を得る合意は、その政治的な結果によって逆襲される。グローバルな市場自由化やEU統合を提唱する者は、その敗者を意識するべきだ。社会の一部の集団を損なうだけでなく、多くの国民が苦しんでいる。
Bloomberg
APRIL 26, 2016
Swift Hack
Is a Story of Globalization and Poverty
Leonid Bershidsky
バングラデシュの銀行システムを通じて、ハッカーたちは容易にSWIFTを侵略する。それは、ある意味で、ヨーロッパの難民危機と同じである。技術革新やグローバリゼーションによって、貧困と必要性はますます豊かな世界のドアを激しくノックする。人も資金も短時間で移動する21世紀にふさわしい、富のより普遍的な分配に努めるべきだ。
l TPPとTTIP
Project
Syndicate APR 25, 2016
America’s
Trade Deficit Begins at Home
STEPHEN S. ROACH
アメリカ大統領候補たちが不安を煽る中で、貿易論争とアメリカ労働者への影響が政治的党派の両端から歪めて議論されている。右派の中国叩きや左派のTPP反対が言うように、貿易はアメリカにとって最大の脅威なのか?
2015年、アメリカは101か国に対して貿易赤字を出した。これは、中国など、1国や2国を犯人扱いする政治家たちが理解していないことだ。貿易赤字の原因はアメリカ国内にある。すなわち、アメリカの貯蓄不足である。
2015年第4四半期の貯蓄率は2.6%であり、1年前に比べて0.6%減少し、20世紀最後の30年には平均6.3%であった。貯蓄がなければ投資できないから、アメリカは必要な投資をするために外国の貯蓄を輸入している。それは大規模な国際収支の不均衡を生じる。アメリカの貯蓄不足は、1980年以来の平均で、GDPの2.6%となっている経常収支赤字と等しい。
この問題を政治化する者たちは、例えばトランプのように、中国からの輸入に45%の関税を設ける、と言う。低貯蓄率をそのままにして、このような政策を採れば、中国製品が失った市場を他の国からの輸入品が埋めるだろう。中国の賃金は、まだ、アメリカの他の主要輸入宛国より低いから、その結果は高コストとなって、実質的にアメリカ中産階級に増税したことと同じになる。
同様に、サンダースが言うように、アメリカが10年間で14兆5000億ドルの政府支出を行った場合はどうか? アメリカの貯蓄不足の大きな割合が財政赤字であるから、それは一層の経常収支赤字と中産階級への圧力となるだろう。同じ意味で、TPPもアメリカ中産階級を苦しめる。なぜなら、それはTPPに参加していない中国からの輸入を、TPP内の日本、カナダ、オーストラリアからの輸入に転換する効果があるからだ
問題は、家計に貯蓄よりも消費を促すような、アメリカ政府が採ってきた政策である。アメリカはあまりにも長い間、外国の貯蓄に頼ってきた。貯蓄それ自体が目的ではないが、消費を刺激することで政府はアメリカン・ドリームを悪夢に変えてしまった。貿易論争はその危険を示している。
NYT APRIL
26, 2016
The Mirage
of a Return to Manufacturing Greatness
Eduardo Porter
半世紀前には、ケチャップのために2.2トンのトマトがカリフォルニアで耕作され、4万5000人を雇用していた。1960年代、大学の研究開発でトマトの耕作や採取を効率化する機械が発明され、労働者たちは失業した。農業労働者組合は、機械化やそのための公的研究助成を禁止するように求めた。
今や、クリントンは製造業の労働者たちがグローバルな競争に勝つことを、トランプはNAFTAを破壊し、中国に高い関税を課すことを、サンダースは通商条約の成立に反対することを、約束する。しかし、製造業の雇用は世界中で減少している。トランプのようにアメリカを壁で囲んでも、クリントンのようにアメリカから逃げ出す企業を罰しても、国内の製造業雇用が復活することはないだろう。
20世紀を通じてアメリカの農業は生産量を増やしたが、その雇用は労働者全体の41%から2%にまで減少した。製造業も同じである。日本が長期の停滞を経験しているのは、その開発戦略が過度に製造業に頼っていたからだ。
発展途上諸国は「早期脱工業化」に苦しんでいる、とDani Rodrikは言う。製造業には、資源採取と異なって、未熟練労働者を多く雇用するという特徴があった。しかも、国内市場が狭くても輸出することで成長できる。それは労働者たちに所得や技能を高め、高度な教育のための時間を与えた。豊かな国のようにサービス産業への移行が難しい発展途上諸国が、早期に製造業を失った後どうするのか、政治的な答えは見つかっていない。
l 軍事介入より国内改革
FP APRIL
25, 2016
Why Is
America So Bad at Promoting Democracy in Other Countries?
BY STEPHEN M. WALT
私のようなリアリストは政治体制の性格や国内制度、ましてや民主化に関心がない、と思うかもしれない。それは間違いだ。リアリストたちは、体制の違いや国内制度が重要であることを知っている。リアリストたちは、相対的なパワーと安全保障の必要性が通常はより重要であり、国際システムの圧力が異なる体制を驚くほど類似した行動に導く、と考えている。
それでも、民主化にともなう危険を考慮しつつ、民主主義を支持する理由は存在する。安定した民主主義は長期的な成長を実現し、基本的人権を保護する上でも優れている。民主主義国も戦争するが、民主主義国同士は戦争しないという一定の証拠もある。
民主主義体制の増加は、人類にとって望ましいことであると思う。しかし、問題は、どうやってその目標を達成するのか、である。
まずはっきり言えることは、軍事介入ではない、ということだ。軍事力で民主主義を拡大することが失敗するのは、いくつかの理由による。第1に、リベラルな秩序が成功するには、憲法や選挙以上に、多くのことが求められる。効果的な法体系、政治的多元主義、所得や教育の水準、選挙で敗北しても将来の回復は可能であり、システム内にとどまって協力する動機がある、などだ。さまざまな社会的要素は西側で数百年を経て形成されたもので、それはしばしば、非常に苛烈で、暴力的な過程であった
第2に、暴力による民主化にはほとんど常に暴力的な抵抗が起きる。ナショナリズム、その他のローカルなアイデンティティーは現代政界でも強力であり、高度に武装した外国の征服者が命令することに従わない。民主化の過程でパワーや富、社会的地位を失う集団は、不可避的に武器を取って反政府勢力になり、自分たちの利益を損なわれたと感じる近隣諸国は移行を阻止し、逆転させるだろう。
暴力は、民主化に最もふさわしくない者たちを指導者にする。彼らは有効な民主的制度を築かず、分派間の合意を目指さず、忍耐や寛容を促すことなく、安定した生産的経済も実現できない。外国の占領軍は正しい指導者を見いだせず、新政権への援助は汚職や現地政府のゆがみをもたらす。それは何の設計図もなしに、地震多発地帯で、原子力発電所を建設するようなものだ。
要するに、外部から民主化を、迅速、安価、確実に設計する方法はないのだ。軍事力が間違いなら、何か良い方法はないのか?
私は2つのアプローチを支持する。第1に、外交である。東欧やミャンマーのように、その国に自生的な、優れた民主化運動が存在しているとき、強力な外部勢力が、その影響力を駆使して、漸進的な民主化を励ますことは可能である。
第2に、アメリカが民主主義の模範を示すことだ。もしアメリカが、公正で、繁栄し、活気のある、寛容な社会であると広く認められるなら、他国はアメリカの民主的な理想を模倣したいと思うだろう。逆に、不平等が蔓延し、政治家たちは外国人に対する攻撃や侮辱を示し、囚人の数が世界最大で、空港その他の公共施設が目に見えて老朽化しているなら、だれもアメリカのいうことを聴かない。
アメリカが、まず、国内でその理想に従う生活の改善をするなら、他国の民主化を促すことにも成功するだろう。それは、10年以上も費やしてきた、アフガニスタンやイエメンで強固な民主主義を築くことより、少し簡単であろう。
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The Economist April 16th 2016
The French left: Liberty, equality, seniority
Industrial clusters: Bleak times in bra town
Business in Africa: 1.2 billion opportunities
Free exchange: Terms of engagement
(コメント) フランスの若い経済大臣(Emannuel Macron 38歳)が、旧来の中道右派と中道左派のコンセンサスを超えた政策を模索します。特に、移民問題と若者の失業問題を扱う21世紀型の政策です。
中国の沿岸諸都市が特定の商品に関する世界的な生産集積地として発展し、今や、急速に消滅し始めています。他方、アフリカが示す新しい都市や中産階級のもたらす機会に、特集記事は注目します。
グローバリゼーションの利益と狭い地理的な選挙区制度による矛盾を克服する試みは、どこよりも、グローバルな都市において住宅問題に示されます。住民たちはグローバリゼーションの利益を享受しつつ、公共施設による不利益は集団的に拒みます(NIMBY)。さまざまな規制が都市の住宅建設を抑え、価格高騰が都市政治による補償や規制委員会の改変、そして上位の政治権力による相互報酬的なルールの確立に向かいます。
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IPEの想像力 5/2/16
インタビュー達人たち、で語り合う2人、ヴェネチアの陶芸家・画家、土田康彦と、チョコレートのパティシエ、小山進の話に驚きました。
土田氏の表現の正確さ、一つ一つの言葉に込められる思いの強さに、国を超えて放浪する者の高邁な精神と、その造形にかかわった不思議な人々の感動が伝わって来るようです。そして小山氏がチョコレートで実現した職人のユートピアにも、まったく、驚きました。
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グローバル・ステーツマンシップを示す新しい世界の指導者たちが登場するとき、未来に戦争ではなく希望を持つことができます。
The
Economist(April
16th 2016)の記事を読んで思いました。・・・「アフリカ新興市場の諸都市が、群島のように、インフラによって結ばれる。」
アフリカには大きな機会がある。戦争や内戦が続き、暴力にあふれ、狂気の指導者たちが住民を翻弄してきた大陸に、安定した平和が広がり始めている。
膨大な若者の人口が仕事を求めている。彼らは読み書きができて、急速に携帯電話も普及している。太陽光発電も普及する。小さな商店が太陽光発電のパネルを取り付けて、日が暮れてからも商売できるようになった。携帯電話も扱う。電話による情報が利用可能になり、それは支払いや決済、融資にも利用されるようになっている。
もしインフラが整備されて、小さな町や村が都市につながり、アフリカ大陸の各地に点在するいくつかの都市が、群島のように成長を加速し始めたらどうなるか? 彼らのダイナミックな投資や技術革新が、次の世界を形成するパワーの源かもしれない、と感じます。
STEPHEN M. WALTの論説(“Why Is
America So Bad at Promoting Democracy in Other Countries?” FP APRIL 25, 2016)を読んで思いました。・・・「中国が独自の民主化を推進して、その社会的理想により、欧米社会の秩序変容や日本を含む近隣諸国との協力体制に影響を与える。」
アメリカは、民主主義を世界に広めるために軍事力を行使したが、それは多大の犠牲と浪費、そしてアメリカへの非難を生じた。民主化のために軍事力を用いることが失敗する理由を理解しなければならない、とWaltは考えます。民主主義は複雑な社会制度や政治的文化に依拠しなければ機能せず、それらは何百年もかけてヨーロッパに誕生し、容易に移植できない、と。
むしろ、アメリカやその他の民主主義諸国がすべきことは、他国の民主化に向けて内部の改革を支援すること、あるいは、民主化を弾圧する勢力に非軍事的手段で影響力を及ぼすことだろう。さらに、とWaltはアメリカの「リベラルな介入主義外交」を批判します、国内の改革を実現することで民主主義的統治の魅力を高めるべきだ。
未来に向けて想像してみることです。
アフリカの非核宣言と世界の核兵器廃絶に向けた貿易投資協定は、衰退する核保有諸国の軍備拡大競争を時代錯誤にするでしょう。あるいは、朝鮮半島の再統一と、それに先行するモデルとして、中国自身が権力の分散・連邦化を進め、その一部として、台湾の自治権を認めた再統合が成功するかもしれません。
それはアジアの未来を、「ベルリンの壁崩壊」よりずっと好ましい歴史にするはずです。
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The
Economist April 23rd 2016の表紙は、アメリカの形をした、油の垂れる、汚れたエンジンを吊り上げて、さあ修理するぞ、と腕まくりするブルー・カラー姿のヒラリーです。
「先生的には、だれが大統領になってほしいですか?」と学生に訊かれて、少し、答えに詰まりました。・・・ヒラリーだろうか? 私は、彼女がファースト・レディとして夫を支え、また民主党の大統領候補争いでオバマに敗れても、その後の政権に国務長官として加わった後、今でも自分が大統領になってアメリカと世界を治めたい、と願う、その強い意志に驚きと敬意を感じます。
「70歳を過ぎて大統領を務めることは大変だろう。しかし、本選挙までに2回の脱皮を成し遂げるなら、ヒラリー・クリントンに大統領になってほしい。」
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