前半から続く)


l  金融政策

Project Syndicate APR 1, 2016

Unconventional Monetary Policy on Stilts

NOURIEL ROUBINI

構造改革も、財政刺激策も、容易に実現しないだろう。金融政策だけの戦いは続き、「非伝統的な」政策から、「非伝統的な、非伝統的な」政策が試みられるかもしれない。すなわち、ヘリコプター・マネー。債務免除。現金保有への課税。

FT April 5, 2016

The high cost of settling for the ‘new mediocre’


l  ベーシック・インカム

Bloomberg APRIL 1, 2016

A Basic Income Is Smarter Than a Minimum Wage

Leonid Bershidsky


l  大統領選挙と貿易論争

NYT APRIL 2, 2016

Jobs and Trade on the Campaign Trail

By THE EDITORIAL BOARD

大統領選挙では、トランプとサンダースが、国際貿易に関する労働者たちの怒りと不安に注意を向けて大きな支持を得ている。政府はグローバリゼーションに苦しむ労働者たちに適切な政策を実施してこなかったのではないか? と問われている。

明らかに、多国の貿易によって、その国全体では利益を得るが、その過程で勝者と敗者が生じる。勝者が敗者に対して補償すれば、すべてのものが利益を得られるはずである。しかし、実際はそうなっていない。

政府には、もっと労働者の再訓練や再雇用を支援すること、コミュニティーや教育に投資することができる。TPPなど、通商協定にも、貿易相手国に労働者の権利を高め、環境規制や為替レートの操作に関して、アメリカに不利にならないような手段が求められる。

FT April 4, 2016

The fury of American voters is in its infancy

Roger Altman

トランプやサンダースが依拠しているアメリカ有権者に広がる不満は経済的なものだ。ますます多くのアメリカ人が収支の赤字に苦しんでいる。金融危機以後に増えた雇用の多くは低賃金のものだ。将来世代の生活が自分たちより良くなる、と思えなくなった。

この経済的な圧力は一時的なものではない。技術変化とグローバリゼーションによるものだ。現在、アメリカの注意の家計の所得は53600ドルであり、それは20年前のピークに比べて7.5%も減っている。金融危機後、中位の時給は4%減った。

現在、アメリカの自動車販売は記録的な高水準であるが、機械化によって雇用は大きく減少している。デジタル処理は、まだ初期段階であるが、ホワイトカラーの職場の多くを消滅させた。

グローバリゼーションの影響も重要だ。わずか1世代前に、アメリカは多くの製品で世界最大の市場だった。もはやそうではない。練り歯磨きでも、自動車でも、コンサルタント業でも、世界の生活水準が上昇して大きな市場となっている。その結果、多くの雇用は、アメリカ国内ではなく、国外の低賃金という条件で増えている。

それゆえ、アメリカ人の所得はこのまま増えないだろう。われわれはもっと効果的な教育システムを必要としている。中所得・低所得の労働者に対する支援がもっと必要だ。減税の拡大、最低賃金の引き上げ、そして、技術進歩が人間の労働力に対する需要を永久に減らすなら、労働年齢の大人たちに所得を保障することも考えねばならない。

労働者の所得低下は、今だけでなく、これからも続くのだ。それを無視すれば、トランプの権威主義も穏健だった、と思うような事態になるだろう。

FT April 6, 2016

US politics is closing the door on free trade

Philip Stephens

アメリカでも貿易自由化は支持を失い、グローバリゼーションが嫌われ、地政学的関心が高まっている。アメリカの支持しないWTOの自由化交渉は、その推進力を失う。

Project Syndicate APR 7, 2016

Anti-Trade America?

KENNETH ROGOFF

2016年の大統領選挙では反貿易のポピュリズムが登場し、アメリカを国際政治から退場させる危険な主張を展開している。

共和党のトランプは、中国からの輸入に対して45%の関税を主張している。しかし、数十年の中国の高成長にもかかわらず、中国は発展途上諸国の1つであり、国民の多数が(西側諸国には想像できないほどの)貧困水準で暮らしている。

民主党のサンダースも、その反貿易の姿勢は同じく危険である。彼の反対するTPPは、ラテンアメリカの製品に対する日本市場の開放など、発展途上諸国を助ける。1992年のNAFTAは、すでに低かったアメリカの関税率より、メキシコ側の関税率を大きく引き下げた。

トランプやサンダースの主張は、不幸にして、すでにクリントンの立場を後退させ、多くの上院・下院の政治家たちにも影響している。これは破滅に向かう道だ。

TPPには欠点もある。特に、知的所有権は過度に保護されている。しかし、TPPがアメリカの雇用を大幅に破壊するとは思えないし、アメリカ企業が発展途上諸国でハイテク製品を売りやすくなる(コピー商品の反乱を抑えるから)。TPPの批准に失敗すれば、世界の数千万人が貧困から抜け出す機会を奪った、と非難されるだろう。

アメリカ国内の不平等を是正する正しい方法は、税制を簡素化し、累進的にすることだ。また、教育改革を進め、技術革新や競争における障害物を取り除くべきだ。

労働者への再訓練は、人口変動や、生産性上昇の低下、年金受給者の増加による政府支出とともに、避けられない。大きな政府を嫌うからと言って、債務の膨張を放置してはならない。また、財政赤字を称賛する進歩派は、将来、債務危機が起きると、中産階級や貧困層がもっぱら苦しむことを理解しなければならない。もっと直接に所得移転し、総需要を増やすべきだ。

現在の世界秩序でアメリカは不当に敗者にされている、と主張する者はよく考えることだ。アメリカの過剰な消費依存や炭素排出に無策であることは、1世紀後に、重大な失策となっているだろう。貿易が不平等をもたらすという考え方は自分たちの選挙区しか見ていないし、不平等を責める保護主義は偽善である。


l  火星と金星

NYT APRIL 2, 2016

A Trans-Atlantic Role Reversal

Ross Douthat


l  ギリシャ

SPIEGEL ONLINE 04/03/2016

Greece

Endgame for the IMF-EU Feud over Greece's Debt

Yanis Varoufakis

FT April 4, 2016

Greece needs to keep the IMF at the table

Bloomberg APRIL 4, 2016

WikiLeaks Controversy Strengthens Case for Greek Debt Forgiveness

Mohamed A. El-Erian


l  パナマ文書の影響

FT April 3, 2016

Panama Papers: new financial rules needed for politicians

John Gapper

The Guardian, Monday 4 April 2016

Tax havens don’t need to be reformed. They should be outlawed

Richard Brooks

パナマ文書The Panama Papersは中央アメリカの国家に関する文書ではない。タックス・ヘイブンが主催した脱税、資金洗浄、略奪政治の、乱交パーティーを垣間見せる鍵穴だ。世界金融危機後のG20がロンドンであったとき、世界の指導者たちはタックス・ヘイブンを終わらせると約束した。その約束はまったく実行できていない。

イギリスが脱税や犯罪者を責めるのはジョークでしかない。パナマ文書が示すもう1つの恥辱は、オフショア金融の網の目における中心的な役割を、長期にわたってイギリスが果たしていることだ。パナマのMossack Fonseca法律事務所が設立した20万社の秘密会社は、その半数以上が英領ヴァージン諸島で登録されている。

2次世界大戦後に半独立状態になった旧英領の経済を維持するために、イギリス政府は世界の富裕層に若干の軽減税率を認め、統治コストを安くしようと考えた。20世紀後半の金融自由化は、この打算的な処置を致命的な誤算にした。世界経済の貪欲なパラダイスとして、貧しい諸国からも富を吸収した。

それでも主要諸国は有効な対策を取らず、年間で1兆ドルと言われる発展途上諸国からの資金流入を、情報がリークされるまで放置してきた。それは世界金融システムの汚職を広げるがん細胞だ。改革するのではなく、そこでの金融取引を違法とし、死滅させるべきだ。

FT April 4, 2016

The Panama papers and the concealed wealth of nations

スイス銀行の秘密口座の情報が公開されたときと同様に、パナマ文書はさまざまな反応を生じるだろう。主要な法律事務所Mossack Fonsecaが作成した内部記録、1150万件が流出し、ジャーナリストたちthe International Consortium of Investigative Journalistsによって精査されている。

政治か、ビジネスマン、スポーツ選手が含まれる。72人の現在もしくは引退した国家指導者も含まれている。アメリカが違法行為に関してブラックリストに載せている人物や組織、少なくとも33が含まれる。それはメキシコの麻薬取引、テロ組織、北朝鮮やイランのような制裁下にある国家である。

諸国の徴税機関は脱税や資金洗浄に関する疑惑を追求するだろう。名前の出た政治家たちは有権者たちに強く説明を求められるに違いない。その職を失う者もいるはずだ。パナマ文書により、タックス・ヘイブンへの情報開示に向けた圧力が強まるだろう。

FP APRIL 4, 2016

Putin Among the World Leaders Linked to the Panama Papers

BY DAVID FRANCIS

FP APRIL 4, 2016

Chinese Censors Rush to Make ‘Panama Papers’ Disappear

BY DAVID WERTIME

FP APRIL 4, 2016

Will the ‘Panama Papers’ Bring Down Ukraine’s Chocolate King?

BY REID STANDISH

FP APRIL 4, 2016

Something’s Rotten in Iceland, and the Panama Papers Prove It

BY SIOBHÁN O'GRADY

アイスランドのSigmundur Gunnlaugsson首相がテレビインタビューの途中で席を立って出て行った。不可解な取引について質問されたが、ナンセンスだ、と不満を述べただけだ。しかし、議会は不信任案を提出した。

Bloomberg APRIL 4, 2016

Iceland Gets the First Jolt From the Panama Papers

Leonid Bershidsky

Bloomberg APRIL 4, 2016

Putin's a Pauper, His Friends Are Rich

Leonid Bershidsky

FT April 4, 2016

Panama is only one head of the tax haven Hydra

Nicholas Shaxson

FP APRIL 4, 2016

Britain’s Empire of Tax Evasion

BY ADAM RAMSAY

The Guardian, Tuesday 5 April 2016

The Panama Papers show why Britain needs to get its house in order

Mary Dejevsky

The Guardian, Tuesday 5 April 2016

Iceland is in crisis mode. It feels like 2009 all over again

Eirikur Bergmann

NYT APRIL 5, 2016

Iceland's Leader Is First Victim of Offshore Holdings Leak

By THE ASSOCIATED PRESS

FP APRIL 5, 2016

Taxpayers of the World, Unite!

BY FREDRIK DEBOER

FP APRIL 5, 2016

Let Me Tell You About the Very Rich

BY PEDRO NICOLACI DA COSTA

パナマ文書は、金融危機後の政策論争を変えるだろう。これまで、財政・金融政策による刺激を追加するか、むしろ構造改革を優先して財政を緊縮するか、論争されてきた。

しかし、経済危機に対して財政赤字の削減を主張することは、財政の健全化が信認を高めて、投資を増やす、という疑わしい考え方によるものだった。社会が犠牲を分かち合う、という主張であった。パナマ文書は、超富裕層が庶民とは全く違うルールで暮らし、税金を支払っていないことを示している。

もはや政府の予算案を議論するより、社会上層部の脱税を取り締まることが求められるだろう。それは金融危機後の不平等に関する関心を再び先鋭化する。

FP APRIL 5, 2016

It Took Only a Day of Protests for Iceland’s Prime Minister to Resign Over Panama Papers

BY SIOBHÁN O'GRADY

Bloomberg APRIL 5, 2016

Politicians Should Keep Their Money at Home

Leonid Bershidsky

The Guardian, Wednesday 6 April 2016

From Snowden to Panama, all hail the power of the press

Simon Jenkins

NYT APRIL 5, 2016

The Panama Papers’ Sprawling Web of Corruption

By THE EDITORIAL BOARD

FP APRIL 6, 2016

New ‘Panama Papers’ Report Hits China’s Red Elite

BY DAVID WERTIME

Bloomberg APRIL 6, 2016

The Panama Papers Actually Reflect Pretty Well on Capitalism

Megan McArdle

これはグローバル資本主義を拒む理由にならない。すべきではない。

略奪政治が支配する、脆弱な諸国では、こうしたタックス・ヘイブンの利用者が多く出る。グローバル資本主義とは関係ない。

FT April 7, 2016

A real-world solution to the tax repatriation ruckus

Gillian Tett

NYT APRIL 7, 2016

Need to Hide Some Income? You Don’t Have to Go to Panama

By PATRICIA COHEN


l  ドイツとトルコ

Project Syndicate APR 4, 2016

Realism for Europe and Turkey

JOSCHKA FISCHER

ヨーロッパ、そしてドイツと、トルコとの関係は、その地理的な関係が帰られない以上、必ず重要な意味を持つ。トルコは近代化を目指し、EU加盟をその過程で選択した。しかし、エルドアンは必ず「オスマン化(帝国復活)」のオプションを持ち続けた。

トルコが人権や民主主義に関するEUの要求を受け入れないとはっきりしたとき、独仏はトルコのEU加盟交渉を事実上ストップした。トルコが第1次世界大戦でアルメニア人虐殺にかかわったことを認めるべきだ、とドイツ議会は決議した。ロシア機の撃墜はNATOがロシアとトルコとの軍事紛争に巻き込まれる危険を強く意識させた。シリア内戦では、トルコがクルド人に対する戦いを優先する姿勢を西側が批判した。

ヨーロッパとトルコとの関係は、これからも複雑で、対立することが多いだろう。しかし、重要であることには変わりない。バランスを取り続けることである。


l  移民・難民と国際協力

Project Syndicate APR 4, 2016

Helping Refugees Together

PETER SUTHERLAND

開放的な、国際協力に基づく社会を目指して、人権、移民の自由、難民の受け入れを求めたヨーロッパの国際システムが、難民危機で崩壊する寸前である。しかも、現実に難民のほとんどは周辺の諸国Jordan, Lebanon, and Turkeyに流入している。一方的な受け入れを求めるだけでは、この危機は解決しない。グローバルなシステムに向けて、3つの条件が重要だ。

1.難民危機による政治圧力を、移民・難民の保護と脆弱さの解消に向けた改革を進めること。流入国への財政支援を行う。再定住プログラムと、その他の合法的枠組み、留学、労働、家族呼び寄せ、を整備する。2.難民たちを保護するために、彼らをコミュニティーの積極的な貢献者とみなし、労働市場や学校を含めて包括的なモデルを採用する。3.国連は、移民や難民がグローバルなレベルで発言するシステムを強化する。

NYT APRIL 7, 2016

So Little to Ask For: A Home

Nicholas Kristof


l  BREXIT

Project Syndicate APR 4, 2016

Will Britain Choose Irrelevance?

DAMBISA MOYO

VOX 04 April 2016

The consequences of Brexit for UK trade and living standards

Swati Dhingra, Hanwei Huang, Gianmarco I.P. Ottaviano, Thomas Sampson, John Van Reenen


l  福島原発型テロリスト

NYT APRIL 4, 2016

Could There Be a Terrorist Fukushima?

By GRAHAM ALLISON and WILLIAM H. TOBEY


l  ポピュリズム

NYT APRIL 4, 2016

The Politics of Backlash

Roger Cohen

NYT APRIL 5, 2016

What Is This Thing Called Populism?

By ARTHUR C. BROOKS and GAIL COLLINS


l  アフリカ産油国の破たん

FP APRIL 4, 2016

Africa’s Petrostates Are Imploding

BY LUKE PATEY


l  ヨーロッパの内政と外交

FP APRIL 4, 2016

How to Save Europe From Itself

BY THOMAS PIKETTY, JEREMY ADELMAN, ANNE-LAURE DELATTE

FT April 5, 2016

Fear and loathing of a world without borders

Ivan Krastev

YaleGlobal, 5 April 2016

China, Russia Seek to Profit as the EU Beacon of Democracy Goes Dim

Humphrey Hawksley


l  4次産業革命

FP APRIL 4, 2016

Is America Ready for the ‘Fourth Industrial Revolution’?

BY DANIEL RUNDE


l  化石燃料

FT April 4, 2016

Why fossil fuel power plants will be left stranded

Martin Wolf


l  ロシアの描く秩序

Bloomberg APRIL 5, 2016

The Soviet Union Is Falling Apart Again

Leonid Bershidsky

プーチンは利用できるから紛争を凍結した。しかし、浅く凍結されただけの戦争は、非常に複雑で、変化し続けている。

FT April 6, 2016

A world order reshaped by Vladimir Putin’s ambition

Eugene Rumer

一方で、ロシアはアメリカの最大の脅威である、という。他方では、ロシア経済は急激に愁傷しており、プーチンのシリア介入は過剰な拡大戦略であった、ともいう。

どちらも正しい。しかし、ロシアは制裁だけで敗北を認めない。それだけのパワーを高めている。NATOとの対決を避け、シリア介入でも効果的な作戦と、撤退による和平を指導した。

FT April 7, 2016

Vladimir Putin and Russia’s balance sheet

Kathrin Hille

NYT APRIL 7, 2016

Solve the Nagorno-Karabakh Conflict Before It Explodes

By THOMAS DE WAAL


l  日本

Project Syndicate APR 6, 2016

The Surrender of Japan’s Peace Constitution

EMILY S. CHEN

Global Times 2016-4-7

Economic figures don’t portray real Japan

日本を見てわかった。低成長は社会的な絶望を意味しない。

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The Economist March 26th 2016

The problem with profits

Business in America: Too much of a good thing

Technology and politics: Bits and ballots

The signal and the noise

South Korea and wartime sex slaves: Kindred spirits

The South China Sea: China v the rest

Charlemagne: A terrible problem is born

Electronics: Taiwan 2.0

Free exchange: No exit

(コメント) アメリカ企業は世界中で拡大しているけれど、その利益の多くを上げているのはアメリカ市場だ、と記事は指摘します。それは最近に起きたことであり、知的財産や特許を守るアメリカの規制や法律が大企業に多くの利益を与え、しかも、それが新規参入ではなく、投資銀行とも共謀した企業の吸収・合併を優先しているからです。

同時に、政治の世界でも技術変化による新しい動きが始まっています。集合行為の可能性、選挙運動や「公共圏」の在り方、民主主義と抗議活動、地方行政、など、活発な議論が起きています。民衆に権力を分散した革命が、逆に、権力者による住民の監視や世論操作、政治の細分化に向かいます。

従軍慰安婦を描く韓国映画、南シナ海の変化、イギリスのEU離脱とアイルランド、中国企業とそのサプライ・チェーンに追い上げられる台湾企業が選んだシャープ買収、最後に、世界の金融市場統合がアメリカの金融政策に制約を加えた話、いずれも考えさせる内容です。

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IPEの想像力 4/11/16

Apple1976年), Amazon1994年), Google1998年), Facebook2004年)、など. 若者たちがその成功物語に魅了されるのは当然です。どうして日本では同じようなハイテク大企業が育たないのか?

学生の論文を指導したとき、彼が起業やハイテク巨大企業を大いに称賛する原稿を出したので、私は2つの問題を示しました。それに説得的な答えを探して、書き直してほしい、と。

1つは、それらの企業はいつまでが新興企業なのか? いつから独占企業になったのか? 他の新興企業やハイテク企業を次々に買収する行動は、起業家精神と無縁です。もう1つは、これから20年後に、こうしたハイテク大企業はどうなっているのか? 世界市場の将来の姿を含めて、予想せよ、というものです。

インターネットが世界市場を統合し、競争が激化する中で、勝者が総取りするゲームになった、と言われます。広告・宣伝のコスト、ブランドの価値、技術開発投資、流通過程の支配、金融市場の利用・資金調達における優位、など。以前から、他国に比べてアメリカ市場の規模が巨大企業を生みました。現在の中国市場、そして、インターネットもそうです。

これまでにも独占が問題になりました。MicroSoft1975年)がWindowsを普及させたとき、ブラウザ企業の買収で独占禁止法が問題になったと思います。ヨーロッパ市場の支配にも、司法が分割を求めたと思います。(かつて、日本ではNEC98シリーズや一太郎を使っていました。)

The EconomistMarch 26th 2016)の巻頭記事は、アメリカの規制や法律が新規参入を困難にし、大企業に市場の独占や寡占を許した、と分析します。そして、企業が豊富な余剰資金を持ちながら、労働者たちの賃金を上げず、失業や不平等が拡大する状況、非競争的な産業構造を固めるだけで、研究開発や国内投資を十分にしない経済を生みました。

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朝、テレビを観ていると、ニューヨーク事情が紹介されていました。

“He Plays For Me” と書いたダンボール紙を持つホームレスの横で、男性歌手が心をこめて歌います。ホームレスと並んでギターを弾き、歌う、クリスさんです。

彼は大学を卒業後、投資銀行に勤めましたが、ミュージシャンになる夢をあきらめきれず、街頭で演奏してきた、と言います。

あるとき、近くにいたホームレスの女性が、自分もギターが弾けたら良いのに、と言いました。それでホームレスのために演奏することを思いついたそうです。普通、1日中かけてホームレスが手にすることのできる額は非常にわずかです。しかし、彼の歌に人々は立ち止まり、コインや1ドル札を置く気持ちになるようです。多くの支援が集まりました。

小銭をめぐんでほしい、というのは、世界中の町に見られる姿です。私たちは彼らがなぜそうしているのか、どんな気持ちなのか、何も知りません。むしろ知りたいと思わないでしょう。彼らに同情することで、何かを背負い込むことを恐れているのかもしれません。

クリスさんは彼らについて、「多くは優しい、欲のない人たちだ」と言います。彼はギターを抱えてホームレスの人に近づくと、道路に座って、彼や彼女と少し話し合います。そして、彼らのためになりたい、と思えば、さらに良い演奏をしようと思うのです。

ホームレスの人たちとの交流を、写真とともにソーシャルメディアで伝えています。新しい曲を試す機会だしね、とクリスさんは明るく話します。

地下鉄の駅や、寒い舗道の傍らで、ホームレスと一緒に熱唱している彼の姿を見ると、急いで歩いていた人も立ち止まり、お母さんや子供たちが曲を聴いて楽しみます。

まるで違う、孤立した存在であったホームレスと街頭演奏家が、路上で小さな協力関係を発見し、互いに感謝する姿は、とても痛快な物語だな、と思いました。

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テレサ・テンの没後20周年というテレビ番組を観ているとき、楊逸(ヤン・イー)の話を聞いて、彼女の『時が滲む朝』を読みたくなりました。テレサの歌を、眠る前、抑えた音量で若者たちが聴き、中国の政治体制に対する疑問や不満が、深い人間性から湧き出る問いかけに変わっていった、その時代の様子を作家は描こうとしたからです。

人々の活力を最大限に引き出す、富や資源を生産的に、すべての人の雇用や福祉の充実に役立てる時代の鍵を、私は探します。そして、同じThe Economistが特集記事で整理した、巨大な情報蓄積やハイテク政治の在り方について、考えていました。

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