IPEの果樹園2016
今週のReview
4/4-9
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カナダと日本の財政政策 ・・・トランプと外交・経済政策の失敗 ・・・世界金融市場が震撼する ・・・中国の改革と世界金融市場 ・・・EU離脱論争 ・・・国際的な正義 ・・・貿易赤字と大統領選挙 ・・・スイス銀行の秘密主義が終わる ・・・ECBと新しいバブル ・・・インドの改革 ・・・イエメンの和平 ・・・アメリカ外交のジレンマ
[長いReview]
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主要な出典 Bloomberg, FP: Foreign
Policy, FT: Financial Times, The Guardian, NYT: New York
Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, そして、The Economist (London)
[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
l カナダと日本の財政政策
FT March 24, 2016
Lessons for everyone from the rise
of Leicester City
Janan
Ganesh
Leicester
Cityが強くなったのはスポーツ科学を完璧に取り入れて練習したからである。チームはスカウトも重視している。下位のリーグや外国から優れた才能のある選手を見出して契約する。彼らを素晴らしい練習設備で、データによって鍛えるのだ。
それはグローバリゼーションで不確実さの増す世界に生きるサッカー・チームだけでなく、都市や個人にも当てはまる。
FT March 25, 2016
Japan and Canada show some fiscal
good sense
G7は、日本の安倍首相とカナダのトルドー首相が、世界の成長回復のために財政刺激策を実行する、という姿勢をアピールするチャンスでざる。金融政策だけでは経済の回復過程を支えられない。ドイツには財政的な余裕があるけれど財政均衡に執着しており、アメリカもまだ財政支出はマイナスである。
安倍首相は、2017年4月に予定されている消費税の引き上げを延期する姿勢を示している。また、カナダのトルドー政権は、財政刺激策として、インフラ投資など、国内需要をGDPの0.5%から1%は増やす予算を組んだ。
安倍は1997年の政策失敗を繰り返さないことを強く願っている。当時、景気回復が弱い時に消費税を引き上げ、その後の不況につながった。カナダは、トルドーの前の首相であったS.ハーパーが、世界金融危機後の財政刺激策を終えるように声高に主張した。2010年のトロント・サミットを主催し、他国も緊縮策を支持するように訴えたことで、世界経済の回復は遅れたのだ。
しかも、カナダの1990年代の緊縮策は、健全な経済成長を実現しながら財政を均衡させた、という成功モデルとして称賛された。だがカナダのような小国が、世界経済の好調な時期に、国内需要の不足を輸出によって補うことは容易である。それは世界経済が低迷する時期には当てはまらない。
安倍が、5月に日本で開催予定のG7で増税延期を公表する計画があるようだ。近年、G7は存在意義を失いつつあるが、集団的に財政政策のスタンスを変えることができれば、G7の重要さを示せるだろう。
FT March
27, 2016
Japan
loves its geeky passions but forgets the foreign fans
Leo Lewis
FT March
30, 2016
A chance
for Shinzo Abe to scrap a self-defeating tax rise
l トランプと外交・経済政策の失敗
FT March 24, 2016
Donald Trump has torn up the
boundaries of politics
Philip
Stephens
トランプ大統領への準備を始めているのかもしれない。例えば、核兵器の発射ボタンを収めた通称「フットボール」をどうするか? それに、共和党議員たちは、民主党ではなく、共和党から大統領が出たら重要ポストを得ようと待ち構えている。アメリカ憲法は民主主義の弊害を知っていたから、トランプのような人物が政治システムを支配できないように、チェック・アンド・バランスを制度化したのだ。
NYT MARCH
26, 2016
Who Is Ted
Cruz?
Ross Douthat
Ted Cruzとは何者か? イデオロギーへの忠誠、活動家である政治家、真の保守主義を曲げない。そうした単純な、表面的な姿とは違う。
クルーズの共和党内での台頭には謎がある。同僚の共和党議員たちは彼を強く嫌っている。あまりにもあからさまな野心、むき出しの権力欲、上昇志向。彼らの支持を得られないとわかっても、クルーズには新興のティー・パーティーがあった。既存エリートに反対する人々の声を支持基盤にする。彼の話は計算されたものだ。
クルーズが共和党の大統領候補に慣れたとしても、一般投票で勝利することはないだろう。しかし、それで彼が諦めると思うなら、あなたは彼を知らないのだ。
FT March 27,
2016
Hillary
Clinton’s looming presidency
Edward Luce
ヒラリー・クリントン大統領が誕生した、と想像してみよう。非常に荒れた状況で大統領となった彼女に、何か好ましいことはあるだろうか?
クリントン夫人には一貫したメッセージがなく、アメリカ人の多数は彼女を信用していない。彼女を憎む者も多い。トランプはこうした感情をくみ上げた。たとえトランプが敗北しても、その亡霊は長く彼女を苦しめるだろう。魔女はビンから出てしまった。クリントン夫人がようやくその野望を実現しても、市民意識の破壊された時代は始まったばかりである。
NYT MARCH
28, 2016
Trump's
New World Disorder
Roger Cohen
すべてにさようならだ。
Donald Trumpが1945年以後の世界秩序に何をするかがわかった。
「時代錯誤」のNATOは捨てる。日本の防衛をアメリカが負担する「偏った」条約より、日本に核武装させる。サウジアラビアには「アメリカがいなかったら長くはもたないぞ」と言うし、「我々は世界の警察官ではない」ということをはっきりさせる。
パックス・アメリカーナはまずい取引だった。アメリカのパワー、世界中に展開した軍事基地によって、70年も、世界の安全保障を支え、核戦争を回避してきたが、アメリカがこんな「貧しい国」になったのでは続けられない。つまり、こうした戦後の取引は一種の詐欺だった。
アメリカは同じように続けようと思わない。トランプはこれまでの大統領と違うのだ。アメリカは誇りを取り戻すだろう。そして、世界はもっと危険になる。
2人のジャーナリストMaggie Haberman and David Sangerのインタビューにトランプは答えた。「われわれは軽視され、嘲笑され、馬鹿にされているのだ。頭のいい、ずるがしこい、タフな人々が、多年にわたってアメリカを食い物にしてきた。われわれは大きないじめっ子だったが、指導者が愚かだった。」 アメリカはこのシステムにおいて、みんなの食い物にされた。中国も、日本も、韓国も、中東諸国も。
トランプ外交の基本とは、「われわれはもう食い物にされない。なぜなら、われわれにはもう金がないから。」 アメリカは1900年のように、本当に強面になる。
しかし、ウクライナについても、戦後の安定性についても、トランプの理解は間違っている。ロシアへの制裁やミンスク和平プロセスをまとめたのは、アメリカではなく、ドイツである。イランとの合意やアメリカの防衛予算についても、トランプの見解には同意できない。
トランプ大統領は、NATOを時代遅れとして無視している。急速に台頭する中国が東シナ海を支配しつつあるとき、日本を核武装させる危険なゲームを促す。また、財政や軍事でもっと負担しないなら、サウジアラビアが分裂しても受け入れる。そのときは、シリア内戦など、子供の遊技場に見えるだろう。
確かに、2016年の世界は、1945年や1990年ではない。アメリカは相対的に弱くなり、パワー・シフトが起きて、国内優先である。しかしトランプの「アメリカ第1」とは、左派がそのようにアメリカを批判してきたものだが、大変動に向かうものだ。エストニアの戦争も、東シナ海の戦争も、人類からだまし取る取引である。
NYT MARCH
28, 2016
What’s
More American Than Inheriting a Fortune?
By BRYCE COVERT
FP MARCH
28, 2016
Fearing
Trump, U.N. Embraces the Art of the Deal
BY COLUM LYNCH
Bloomberg
MARCH 28, 2016
Trump Is a
Very European Strongman
Pankaj Mishra
経済ナショナリズム、グローバリゼーションへの反対、排外主義、・・・トランプの主張はヨーロッパに以前からあった。近代ドイツの思想家で、国際的に影響力のあったフィヒテは、アングロサクソン的な自由貿易帝国に反対する排外主義的な大陸のイデオロギーを提示した。イギリスの経済学者ケインズも、国民的な自給、という1933年の論文で、金融は特に国民的なものであるべきだ、と説いた。
グローバリゼーションの利益が滴り落ちるという幻想が失われたとき、ヨーロッパ型の階級闘争や、自由貿易に反対し、経済ナショナリズムに向かう左右の非アメリカ的な情念に火が付いた。
Project
Syndicate MAR 29, 2016
Why Trump?
ELIZABETH DREW
FT March 29,
2016
The trick
with populists is to see them in perspective
Janan Ganesh
NYT MARCH
28, 2016
Mr.
Trump’s Dangerous Babble on Foreign Policy
By THE EDITORIAL BOARD
Project
Syndicate MAR 31, 2016
Debunking
America’s Populist Narrative
J. BRADFORD DELONG
アメリカの大統領選挙運動を少し聞くと、メキシコ人と中国人が、ウォール街と協力して、アメリカの労働者からその正当な職を奪うような貿易協定を結ばせた、とか、イスラム教徒は誰でも吹き飛ばしたがっている、とか思うだろう。
何十年も、共和党の年かさの政治家たちや知識人たちは、経済政策の現実をアメリカ国民に教えようとしなかった。そして民主党候補の先頭に立っているヒラリー・クリントンは、サンダースの挑戦を受けて防戦するのに忙しすぎた。
良くある話はこうだ。アメリカの中産階級、労働者たちは、ウォール街が企業にメキシコや中国へ製造業を移転させたせいで、賃金を上げることができなかった。そして民主党も共和党も、NAFTAや中国を優遇した。
これは間違っている。アメリカが貧しい諸国に輸出による工業化と成長加速を促すのは、優れた理由があるからだ。メキシコや中国が成長すれば、アメリカの貿易相手として豊かな国になる。また、成長を支援してくれたアメリカのことを、その後の世代は支持するだろう。
グローバリゼーションが所得を停滞させるのではない。貿易はアメリカの分配に影響する要因の1つでしかなく、決して最も重要なものではない。アメリカの政治家たちがグローバリゼーションの効果について、正しい政策で対応しなかったことが問題だ。1980年以前、マクロ経済政策は、より平等な成長を実現するために、プラグマティックに採用された。
アメリカの工業が低賃金を求めて海外に移転されたことにも理由がある。しかし、技術革新を怠ったり、投資家がリスクの高い金融ビジネスの利益を追求したり、病人や弱者を犠牲にして民間の福祉企業が行政の支援で利益を受け取るのは、ふさわしい理由がない。ゴリゴリの、ダイ・ハード型イデオロギーで富裕層への増税に共和党が反対したことで、自由貿易はすべてのものに有益だ、という理論の前提は破壊された。
アメリカの衰弱に責任があるのは、グローバリゼーションでも、交渉戦術の失敗でも、メキシコの低賃金労働者でも、ずるがしこい中国人でもない。現実を無視してイデオロギーをまき散らす政治家の責任だ。
NYT MARCH
31, 2016
Adventures
in the Trump Twittersphere
Zeynep Tufekci
l 世界金融市場が震撼する
Bloomberg
MARCH 25, 2016
Why Investors Face Roller-Coaster
Markets
Mohamed
A. El-Erian
株式、債券、銀行融資など、リスク資産の市場が浮動的で、ジェットコースターのような乱高下を示すのはなぜか?
1.世界経済の減速と、継続的な流動性の注入とが綱引き状態にある。
2.流動性は市場に均等に存在しているのではない。
3.伝統的な長期の証券投資戦略から、より短期的な取引の利益を追求する。
4.中央銀行の直接・間接の関与が増している。
5.取引レンジが次第に拡大している。政策ミスや市場の事件がますます影響する。
6.レンジを上に外れるか、下に外れるか、システミックに重要なヨーロッパ、アジア、北米の市場の反応に不確実さが増す。
7.建設的な政策対応は、中央銀行への過度の依存から抜け出し、成長のエンジンを起動する政策だ。
8.こうした政策が遅れるほど、政治が党派的に分裂するほど、市場が下に触れがちであるほど、経済のファンダメンタルズを損なうリスクは増し、政治を混乱させるのだ。
FT March
31, 2016
The
inflation enigma needs unorthodox answers
Gillian Tett
Project
Syndicate MAR 31, 2016
When
Things Fall Apart
ANATOLE KALETSKY
世界中に、ある時代が終わるという感覚がある。以前の安定した社会が解体する。詩人W.B.
Yeatsは偉大な詩に書いた。
“Things
fall apart; the center cannot hold
Mere anarchy is loosed upon the world…
それは1919年1月に書かれた。第1次世界大戦が終わってから2か月経ったが、彼は本当的に、この平和がさらに大きな恐怖に向かうことを感じていたのだろう。
約50年後の1967年、アメリカの随筆家Joan Didionは、1960年代後半の社会的な崩壊をめぐる作品集のタイトルを、Slouching Towards Bethlehemとした。その出版から1年間で、Martin Luther King, Jr. と Robert
Kennedyは暗殺され、アメリカの諸都市やパリの学生たちが暴動を起こした。
さらに50年が経った。世界には再び、民主主義の失敗に関する恐怖が広がっている。
1920年代と30年代に、1960年代後半と70年代に、そして今また、政治に対する絶望と、経済システムの失敗による幻滅とが結び付く。グローバルな資本主義はおよそ50年から60年ごとに崩壊に近づいた。しかし、民主的な資本主義は、経済関係と政治制度を根本的に転換することで、さまざまな危機に対応するシステムを発展させた。
世界恐慌からアメリカのニュー・ディールとヨーロッパの再軍備に向かった。1970年代前半の激しいインフレーションを経てMargaret Thatcher と Ronald
Reaganが当選した。規制緩和された金融資本主義の崩壊により、4番目の地殻変動が始まっている。Capitalism 4.0と私は呼んだ。
政治家たちは、市場原理主義に依拠したイデオロギーの上部構造を見直さねばならない。それは金融の規制緩和だけではない。中央銀行の独立性も、金融政策と財政政策の分離も、政府介入のない競争的な市場が、分配、革新、インフラ、公共財を供給できる、という前提も。
ポピュリストによる反抗の意味とは、政治家たちが危機前のルールブックを捨て、経済的な思考に革命を起こさねばならない、ということだ。
Bloomberg
MARCH 31, 2016
A Funny
Thing Happened on the Way to Recession
A. Gary Shilling
l テロ
NYT MARCH
25, 2016
Belgium
Fears Nuclear Plants Are Vulnerable
By ALISSA J. RUBIN and MI LAN SCHREUER
NYT MARCH
27, 2016
Keeping
Nuclear Weapons From Terrorists
By THE EDITORIAL BOARD
ベルギー、その他のテロ攻撃で、もしテロリストたちが核兵器や、あるいは、核物質と従来の爆発物とを組み合わせた「汚れた爆弾」を手に入れたら、それは破滅をもたらしただろう。2010年からオバマ大統領が始めた核セキュリティー・サミットは、核兵器の廃絶を目指したものだ。今回、ワシントンで開催されるサミットに、中国の習近平主席も出席が予定されているが、ロシアのプーチン大統領は欠席する。
冷戦終結後に、アメリカとロシアは核兵器を大幅に削減したが、その傾向がプーチン大統領によって阻まれ、また世界には核兵器開発を進める国がある。こうした傾向を逆転するべきだ。
FP MARCH
29, 2016
Belgium’s
Failed State Is Guarding America’s Nuclear Weapons
BY JEFFREY LEWIS
(China
Daily) 2016-03-30
Advancing
real nuclear security cooperation
By Shen Dingli
FP MARCH
30, 2016
Is the
International Community Out of Ideas to Combat Terrorism?
BY COLUM LYNCH, JOHN HUDSON
FP MARCH
30, 2016
Obama’s
Broken Pledge on Nuclear Weapons
BY R. JEFFREY SMITH
FP MARCH
30, 2016
Is the
International Community Out of Ideas to Combat Terrorism?
BY COLUM LYNCH, JOHN HUDSON
l 中国の改革と世界金融市場
FT March
26, 2016
China’s
one-child rule belies a more complex reality
Review by Patti Waldmeir
FT March
27, 2016
Chinese
investment is welcomed by the west with caution
中国から外国企業の買収に投資が増えている。昨年は1090億ドルであったが、すでに今年は1060億ドルに達している。中国からの資本流入に外国政府や企業は準備ができていない。
中国企業が国政秩序の下で投資を増やすことは歓迎すべきことだ。
しかし、そこにはリスクもある。買収を提案する中国企業は国内で巨額の融資を受けている。その企業の取引が持続可能であるかどうか、疑わしい。また、中国政府は資本流出と戦っている。外国における買収はその一部である。
中国からの投資が増えた多くの国で、それは中国の「トロイの木馬」である、という外国人嫌いの、根拠のない不安が生じている。確かに国有企業の買収は中国の国益を重視して行われている。しかし、透明性を高めて、中国企業の法律や規制が改善されるなら、買収の増大は双方に利益をもたらす。
Project
Syndicate MAR 28, 2016
China’s
Economic Identity Crisis
STEPHEN S. ROACH
第13次5か年計画を前提に、中国が最近開催したChina
Development Forum (CDF)は、政府指導部による外国の専門家たちに対する知的なストレス・テストである。
中国の生産・投資重視の成長モデルは、鄧小平が2007年に正しく指摘したように、均衡、安定、協力、持続可能性、の4つを欠いていた。また、環境破壊や所得分配の不平等化などに関して、「中所得の罠」が関心を集めている。
すでに消費・サービス主導の成長モデルに転換することが求められているが、中国はもう1つの移行を唱えている。すなわち、技術革新や生産性上昇を重視するモデルだ。しかし、前者の移行が終わっていない中で、後者の意向を掲げることは、政府に旧来型の計画経済へ回帰する余地を与える点で、間違っているだろう。
中国経済は、アイデンティティーの危機を迎えている。
Project
Syndicate MAR 29, 2016
China’s
Next Agenda
MARTIN FELDSTEIN
北京でthe
China Development Forum (CDF)に参加した。主要なテーマは、「サプライ・サイドのリストラクチャリング(構造改革)」である。基礎産業の過剰生産力を削減することが、その中心的な目標だ。新しい都市への人口移動、為替レートの新しい制度、研究開発への支援、環境問題の改善、などもある。中国企業には過大な債務があるけれど、これは西側と違って、政府債務に移すことができる。
中国の改革が複雑であるが、その市場型の改革と実質6.5%の成長目標(2020年までに1人当たり所得を倍増する)を実現することに政府は全力を尽くすだろう。
FT March
29, 2016
China’s
future challenge for the world economy
Martin Wolf
中国が成長モデルの移行を試みることは、単に新興国として重要な課題であると言うだけでなく、世界経済にとっても重要な意味がある。短期的には、中国経済の成長減速がもたらす波及効果を、長期的には、金融大国としての中国を世界経済が統合化することを、どのように実現するか、ということだ。しかし、実際、短期の問題が長期の問題に影響する。
インドの最近の調査報告が危機について述べたことは注目される。危機の対外的な影響は、それがシステム的に重要な国であるか、それが財政赤字や民間債務の結果であるか、その国に対して通貨を増価させるか、減価させるか、によって決まる。
中国は、システム的に重要な国であり、企業債務が高度に、しかも急速に増大している。そして投資が急激に減少し、人民元の為替レートが一気に減価する可能性がある。
そのような急激な減速は起きうる。企業の債務は持続不可能なまでに増大し、高度に過剰な投資によって需要が維持されているからだ。成長率を7%以下にするとき、GDPの45%に及ぶ投資は経済的に意味を失う。民間部門が投資の3分の2を占めているから、市場圧力が苦痛の多い調整を強いるだろう。
政府の対応としては、財政赤字を増やす、もっと攻撃的に金融緩和する。そして国内のデフレ圧力を緩和するように、為替レートも減価するのが好ましい。
同時に、中国人民銀行のZhou
Xiaochuan総裁は、外貨準備が、予想外に、大きく減少したことを示した。それは資本規制を強化することなどで抑制できるだろう。危機にならないが、外貨建借り入れの返済、「キャリー・トレード」の逆転、人民元の大幅減化を予想した者がいたことを示す。
世界経済は次の大きなデフレショックに耐えられない。しかし、今後数年に中国からデフレショックが起きる可能性は本当にある。同時に、長期の問題として、中国をグローバルな金融システムに統合することが必要だ。経験によれば、金融自由化と金融市場開放を同時に進める諸国で脆弱な金融システムが深刻な危機に陥ってきた。
中国の金融システムの開放は、その意味で、グローバルな関心事である。中国の年間総貯蓄は、2015年、5兆2000億ドルであった。アメリカのそれは3兆4000億ドルであった。中国は貯蓄においても超大国である。自由化により、分散投資のために中国から巨額の資本投資が行われることは大いに考えられる。3兆2000億ドルの外貨準備も速やかに消滅するだろう。他方で、中国の資産に対する投資需要があるが、国内政策や制度を改革する必要がある。
それゆえ、おそらく、資本取引の自由化は巨額の資本流出による人民元の減価と、大幅な経常収支黒字になるだろう。国内投資の減少はこれを強める。世界経済に及ぼす影響を考える必要がある。IMFのChristine
Lagarde専務理事は、統合化が進むほど、国際通貨システムの機能が重要になる、すべての国が集団的な行動を必要としている、と北京のthe
China Development Forumで語った。
もしどちらかで問題を扱うことに失敗すれば、統合されたグローバルな経済システムが耐え難い圧力にさらされる。前回、金融的な覇権国が登場するとき、世界は大恐慌を経験した。今度は、もっとうまく対処しなければならない。
(China
Daily) 2016-03-30
Czech Republic
a test for Belt and Road
By VILÉM SEMERÁK
Project
Syndicate MAR 30, 2016
Plan B for
the Global Economy
ANDREW SHENG and XIAO GENG
中国政府と中央銀行は、世界経済がデフレと金融不安定性とを回避する上で、重要な役割を担っている。
しかし、中国政府は、エコノミストたちの反対を無視して、為替レートの弾力化によって浮動的な資本移動に対する金融政策の自由を確保せず、構造調整のための潤沢な流動性を供給する余地を失った。人民元の為替レートを安定的に維持する約束と、金融取引の自由化に進む改革とは、外貨準備の減少を懸念する中で、資本規制を強化することや、トービン税のような浮動性の抑制策を検討している。
中国国内のデフレと構造改革を実行するPlan
Aに加えて、現在のような多極化した世界経済においては、世界経済を債務デフレから離脱させるPlan
Bが必要だ。
グローバルな金融・財政政策を決めることはむつかしい。しかし、何が集団的に可能な政策手段であるのか、合意を形成するために新しいブレトンウッズ会議を開催する時期が来ている。
集団行動を促す多くの動機が存在している。先進経済における、高齢化、政府債務の累積、金融政策の異常な緩和、政治的な摩擦、などによって、世界経済の不況回避は新興経済の対応に大きく依存している。しかし、新興経済の潜在力を制約する最も重要な要因は金融だ。世界が債務デフレを脱出するには、国際金融システムの改革を実行しなければならない。
FT March
30, 2016
Hidden
costs of Anbang’s western spending spree
Sebastian Mallaby
(後半へ続く)