IPEの果樹園2016
今週のReview
3/7-12
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G20の不決断 ・・・世界貿易の逆転 ・・・世界不況への再接近 ・・・民主主義と指導者 ・・・トランプの台頭 ・・・中国経済の迷走期 ・・・EU離脱は間違いだ
[長いReview]
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[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
l G20の不決断
FT
February 26, 2016
Clashes
over policy at Shanghai G20 meeting
Robin Harding in Shanghai and Tom Mitchell
in Beijing
財務大臣と中央銀行総裁が金曜日に上海へ集まった。先週、IMFが要請した大胆な刺激策を取る気はないようだ。
「債務に依拠した成長モデルはもはや限界だ。」ドイツのWolfgang
Schäuble蔵相はそう言った。一層の金融緩和にも懐疑的だ。フランスのMichel
Sapin蔵相も、財政政策の国際協調は実現からほど遠いと述べた。フランスには財源がない。ドイツや中国のように、国によっては実行できるから、グローバルな成長を維持するために実行するべきだ、と。
多くの国はG20に失望した。OECDのAngel
Gurría事務局長は、インフラ投資のような財政政策が長期的には求められる。しかし、当面はむつかしいだろう、という。「我々はそれに緊急性を求めている。」
イングランド銀行のMark
Carney総裁は、マイナス金利を採用した日本などの諸国を批判した。マイナス金利は国内需要に影響する他のチャンネルをふさぎ、もっぱら為替レートに影響する。「個々の国には好ましい政策でも、世界全体にとっては、ゼロサム・ゲームである。」
「さらに、より多くの貯蓄がグローバル市場に押し出され、グローバルな短期金利が低下して、流動性の罠に近づくだろう。グローバルなゼロ金利の下限があり、フリーランチはない。」
Bloomberg
FEB 28, 2016
The G-20
Misses Its Sputnik Moment
By Mohamed A. El-Erian
G20は「スプートニク・モーメント」を逃した。グローバルな成長と金融安定性に関する懸念を共有しながら、金融・財政・構造改革の諸政策を組み合わせた、包括的な国際政策協調に合意することはできなかった。世界は、高度な不均衡状態、中央銀行の実験的な金融緩和策に過度に依存する状態が引き延ばされる。
2009年のロンドンG20に比べて、危機管理の緊急性を欠いていることがその理由だ。世界経済の成長維持は今も難しい状態で、各国の不平等(所得、資産、機会)は悪化し、金融的な浮動性が増している。それは政治的な機能不全を強めるだろう。
YaleGlobal,
3 March 2016
The World
Is Stuck With Persistent Stagnation
Stephen Roach
2009年の世界GDPはわずか0.028%しか成長しなかった。それは第2次世界大戦後で最も少ない。グローバルな経済均衡化の動きが成長を制約している。1980年から2008年まで、世界の平均成長率は3.5%であったから、2009年の落ち込みは顕著である。その後の回復も3.5%の半分でしかない。
1990年代初めに日本が停滞を経験した、いわゆる失われた10年に似ている。日本のGDPは1992年から2015年まで、平均で0.8%しかなかった。それ以前の45年間が平均で7.25%であったから、その下落は驚異的なものだ。株価と地価の2重のバブルが崩壊した後、バランスシート不況に苦しんでいた。
しかも、日本株式会社が解体し、政治家たちは企業の再編や構造的改革を拒んだ。過剰債務を抱えて、日本経済は「流動性の罠」に落ち込み、2013年から2015年に、アベノミクスで0.7%の成長を実現するまで、失われた20年を経験した。
この日本の経験は、今やアメリカとヨーロッパに広がりつつある。日本が3度目の失われた10年に入りつつあるように、長期停滞を抜け出す近道はない。経済の均衡回復と構造改革を成し遂げた国だけが、改善された姿で成長を取り戻せる。アメリカは、長期の貯蓄を回復し、ヨーロッパは、銀行部門の改革と財政の協力、中国は、過剰貯蓄を活発な消費につなぐ社会保障の整備、そして日本は、急激な高齢化の中でも生産性を高めることだ。
l 世界不況への再接近
Project
Syndicate MAR 3, 2016
Time for
Helicopter Money?
KEMAL DERVIŞ
先進諸国が経済の持続的な回復を促す政策は、もう尽きたのか?
ゼロ近辺の低金利、中央銀行による財政刺激策への直接融資、いわゆるヘリコプター・マネー、さらに極端な意見として、民間企業の賃金引き上げを促す「リバース・インカム・ポリシー」(逆向きの所得政策)が検討されている。
こうした政策が長期化すれば、資本の効率的配分を妨げ、バブルを生じ、金融危機につながると警告されている。また、金融資産価格の上昇がもたらす分配の不平等化も批判される。
世界経済が、非正統的な政策によって苦しんでいるのであれば、金利を上げるほうが有益かもしれない。しかし、単独で行ってはいけない。小さな金利引上げ政策を、財政や分配の政策の一部として行わねばならない。インフラ整備や熟練技術の刷新のための公共投資、穏健なタイプの所得政策、雇用増への「説得」である。
こうした手法を、さらに主要諸国が協力して行う。なぜなら、もし主要な中央銀行が単独で金利を上げたら、通貨の増価、競争力の低下、輸出の減少によって、その国は罰せられるだろう。総需要や雇用を損なうのだ。
主要諸国の中央銀行が一致して金利を上げれば、その効果は相互に相殺する。為替レートや競争力を変えることなく、金利をプラスの水準に上げることができる。それにより正統的な金融政策の余地を確保するのだ。
財政刺激策も同時に行われる。物的・人的なインフラの整備、特に、クリーン・エネルギーとデジタル時代の熟練形成に役立つものが刺激策の焦点になる。
正統派と独自の行動は経済停滞を解決できない。革新的な国際政策協調の時期が来た。それは欲張った主張というより、不可欠の主張である。
l 民主主義と指導者
NYT FEB.
26, 2016
The
Governing Cancer of Our Time
David Brooks
多様な社会で、秩序を維持し、物事を実現するには、本質的に2つの方法しかない。政治か、独裁である。妥協か、むき出しの強制である。
政治とは、異なる集団、利害、意見が同時に存在していることを認め、それらをバランス、和解、妥協させる何等かの方法を模索する。少なくともその多数に関して。政治のマイナス面は、人々がその求めるものをすべて得られないことだ。政治は混乱し、限定され、真に解決されたという問題は何もない。つまり失望が常態である。
しかし、政治には優れた点がある。果てしない対話の中で、他者について学ぶ。それに代わるものより良い。すなわち、権威的な独裁者がだれでも殴りつけて支配する。バーナード・クリックは『政治の用語』に書いた。「政治とは、分割された社会を不当な暴力を使わずに支配する方法である。」
この1世代で、政治を拒む人々が現れた。ティー・パーティのように、こうした集団は、政治的経験のない者を選挙で代表にしようとする。「アウトサイダー」を求めるのだ。妥協や取引を非正当化する。究極において、彼らは他者を認めない。ある種の政治的ナルシシズムに陥る。抑制がなく、彼らと彼らの原理が全面的に勝利することを求める。
この反政治の傾向がわれわれの民主主義に破滅的な効果を及ぼす。議会には政治のスキルや経験を持たない人々が増え、政府が機能しない。それは政府に対する憤慨を強め、一層のアウトサイダーを求める。
ドナルド・トランプは、伝統的な候補者と違う、通常の政治から切り離されている、と言うが、それは間違いだ。トランプは、こうした反政治化の極致である。
FP MARCH
3, 2016
It’s Time
to Abandon the Pursuit for Great Leaders
BY STEPHEN M. WALT
冷戦が終わってすぐの頃、アメリカの政治と経済のシステムは魅力的なモデルに見えた。リアリズムを信じていた学者たちは歴史のゴミ箱に捨てられ、スマートな人々の多くが、専制君主や独裁者、権威主義者たちは消滅しつつある、と考えた。民の声は神の声、と信じる人々はますます意気盛んで、多くの国が代表制、市場経済を採用し、人権を重視して、世界はカント的な平和の世界に変わる。人々が幸せに暮らす、エデンの園になるだろう、と主張した。
そのような考えはもはや全く見られない。現代世界の政治的趨勢で驚くことは、多くの人々が偉大な指導者が必要だ、と考えていることだ。偉大な指導者は、煩わしい国内の制約に従わず、制度の構築やリベラルな価値を無視する。人々は、暗闇を抜け出し、明るい、栄光の未来に向けて、彼らを導く指導者に従う、と考えられている。
例えば、中国では習近平が、鄧小平や毛沢東に匹敵する権力を固め、経済運営にいくらか失策を犯しても、その個人崇拝が弱まる気配はない。さらに、トルコではエルドアン、エジプトのアブデル・アル・シシ、モスクワのプーチン、ハンガリーのオルバン、ポーランドのカチンスキーが率いる右翼の新政権が、そうした傾向を示す。
自由の国、アメリカの話に戻れば、広報など焼き捨て、粗末なビジネスの経歴しかない低俗な資産家が、共和党の指名獲得に近づいている。大げさな外国人排斥と「アメリカを再び偉大な国にする」という公約しかない。
強い指導者、将来を展望できる指導者に期待する傾向は、なぜ生じるのか?
第1に,強い指導者への願望には長い歴史がある。アテネの民主主義やローマ共和国もそうだった。現代のリベラルな民主主義は人類の歴史で相対的に見て新しい。ほとんどの社会集団はリベラルな価値に制約されなかったし、指導者たちがチェック・アンド・バランスの制度に制約されたり、文書化された憲法によって権力を制限されたりすることなどなかった。
第2に、階層的な秩序を持つ多くの部門が社会には存在する。そこにおいては頂点にいる者の重大な決断が畏怖と尊敬をもって受け入れられる。産業界の巨人たちは,Jeff
Bezos, Bill Gates, Larry Ellison, or the late Steve Jobsのように,軍事指導者に対する畏敬の念と似たものを持っていた.論争好きで悪名高い学者の世界でもそうだ.大学は資金を集め,革新的なプログラムを実行し,大学の全国順位を高め,フットボールチームが勝利し,学生,教授会,職員,同窓会が喜ぶような,ダイナミックな学長や学部長を求めている.
私が言いたいのは,現代の多くの制度が,たとえ高度に民主的な社会でも,非常に権威的に運営されている,ということだ.しかし,組織のトップにふさわしい人物を据える,という発想の問題点を,欧米の既存の民主的諸制度の欠陥,政治家たちの偽善的な経歴,多くの無表情な役人たちが示している.
最後に,偉大な指導者というのは,民主主義が求める大量の情報に対する理解と困難な判断の重荷から私たちを免除してくれる,という安易な姿勢,誘惑である.われわれは自分の願いを偉大な指導者に託するだけで,後はすべて指導者がやってくれる.民主主義が破たんするたびに,独立した,決断力のある,信頼できる誰かを探すことが繰り返されている.
歴史はそれに警告する.偉大な指導者というのは,自分の無謬性を過信するものだ.彼らはしばしば,自分たちの支配に対する脅威や,その権威を損なう障害を取り除くことにたけている.それは緊急に多くのことを実行するという意味で,効率を高める.しかし,それが重要な,正しいことであるとは限らない.偉大な指導者が間違いを犯すとき,誰が彼を止めるのか?
James Scott and Amartya Senが探求したように,独裁は真に甚大な破滅をもたらしがちである.なぜなら彼に説明を求め,途中でコースを変えさせるために情報を提示させる制度がないからだ.Lee
Kwan Yew,Stalin,Mao Zedong,Napoleon,誰であれ,絶大な権力を持つ者は慢心に陥り,破滅の道に向かう.
指導者を選ぶ際には,注意してほしい.
l トランプの台頭
NYT MARCH
1, 2016
Why Trump
Now?
Thomas B. Edsall
アメリカの製造業雇用者数は36%も減少した。すなわち、1979年の1930万人から2015年の1230万人である。他方で、人口は43%増えた。
40年間にわたる変化が有権者たちの怒りを生み出した。中産階級、労働者の生活を悪化させたのは、特に2つの変化だ。1.社会的な上昇の可能性が失われた。2.中国の台頭による貿易や製造業の変化だ。
2016年1月の論文“The
China Shock” で、David
Autor, David Dorn and Gordon Hansonがそれを示した。中国からの輸入の衝撃は、経済学の教科書が示すような、労働者の国内移動によって吸収されなかった。労働者たちは非貿易財部門に移動できず、製造業が衰退すると、その地域が衰退し、失業者が増えた。高賃金の労働者は調整が容易であったが、低賃金労働者は大幅な賃金の低下に苦しんだ。
ポピュリズムの処方箋は明白だ。中国からの輸入増、工場の機械化、マクロ経済の低迷、こうしたものが混じり合って、政治的なシチューができた。そして2008年9月の金融崩壊が、この鍋を沸騰させたのだ。
ブッシュ大統領が署名したTARP(Troubled
Asset Relief Program)は、主要な金融機関の救済に使われた。金融崩壊とその後の経済不況をもたらした、まさにその金融機関と重役たちがTARPで助けられた。この「救済の衝撃」を決して過小評価してはいけない。
アメリカ人にとって最大の、しばしば唯一の資産である住宅の価格が下落し、職を失って、凍てついた、あるいは停滞した経済に直面し、不平等が拡大するのを観た。
2010年1月、最高裁はCitizens
Unitedに関する判決で、裕福な個人や企業、労働組合が無制限に政治献金することへの道を開いた。政治団体を通じて、ウォール街は政治家たちを動員できるようになった。
2010年3月、オバマ大統領は、the
Affordable Care Act通称オバマケアを成立させた。白人中産階級や労働者の多くは、マイノリティーに不当に大きな保証を与えるために、自分たちの保険を減らした、と認識した。
2010年の中間選挙ではティー・パーティが躍進し、民主党候補や、共和党の穏健派候補を破った。有権者たちの憤慨は2つの標的に絞られた。「その価値のない富裕層(救済を受けた)」と「その価値のない貧困層(保険を得た)」である。
共和党指導部の重要テーマは、規制されない金融や、貿易、不平等の拡大ではなく、「他者(よそ者)」であった。移民、マイノリティー、政府による弱者への支援策を攻撃した。しかし、彼らの主張したトリクル・ダウンも、規制緩和も、問題を緩和できなかった。だからコントロールできなくなったのだ。
共和党を支える連合体は崩壊し、トランプが選挙区を動かし始めた。
NYT MARCH
2, 2016
Beware:
Exploding Politics
Thomas L. Friedman
米軍は戦闘機パイロットを、いわゆる、OODAループで訓練する。OODAとは、3万フィート上空で行われる観察、進路、決断、行動(observe,
orient, decide and act)である。もしOODAループが敵より早ければ、その戦闘機を撃墜できる。
われわれの国のOODAループは壊れている。しかも、最悪のときに。
地球上には3つの巨大な力が生じて、それらが同時に、非線形で家族している。気候変動、技術革新、グローバリゼーションだ。これらが加速することで、アメリカン・ドリーム実現に向けた条件は高められる。良い仕事を得るために、人々は生涯にわたって学習し、スキルを高める必要がある。政府への要求水準は高まる。セーフティー・ネットを強化し、良い仕事を生み出す企業家を増やすため、政府はますます迅速に決断し、ハイブリッドな解決策を求めねばならない。指導者たちはこの複雑さの中を進み、その国の生命力を高めねばならない。
3つの力が加速することで、中東やアフリカで観たように、弱い諸国が爆発したのだと思う。そして、強い諸国でもその政治を爆破し始めている。アメリカ、イギリス、ヨーロッパを観ることだ。市民とコミュニティーの生命力を高め、左派でも右派でもない、ハイブリッドは解決策を求めるべきだ。
アメリカの中でも、成功しているコミュニティーや都市はそうしている。実業家、教育機関、地方政府が連携し、競争力と回復力を高めるハイブリッドな解決策を生み出した。他方、共和党は極右のメディアと超資産家との連携に依存している。気候変動を否定し、移民法改革を排除し、議会を閉鎖し、オバマケアを阻止する。
共和党の大統領候補者たちは、まるで「スターウォーズ」だ。「宇宙の果ての果てから来た」異種族であり、ますます奇妙な者たちである。
教条主義ではなく、ハイブリッドの妥協策が必要だ。このことを理解している人物とは、オバマ大統領である。彼は私の好きな企業家精神にあふれる人物で、共和党が描くような過激な左派ではない。自由貿易と移民を支持し、教育を改善し、医療保険を労働者の移動にあった形へ改革し、学生への補助金を増やし、クリーン技術に投資し、所得格差を抑えるように税制を改革した。すべてがアメリカの生命力を高めるものだ。
トランプに顕著なものは、まったく新しいハイブリッドな政治によって共和党を吹き飛ばしていることだ。
l 中国経済の迷走期
Project
Syndicate FEB 28, 2016
China’s
Volatile Growth
MICHAEL SPENCE and FRED HU
中国の経済見通しが不確実で世界経済を動揺させている.政策担当者のシグナルも混乱している.
実体経済では,輸出部門が外国の需要を失って縮小している.他方,国内需要の伸びが中国の成長率を相対的に見て高いものに維持している.国内消費が増え,サービス業がとその雇用が拡大している,健全な経済のリバランスである.
企業部門は,一方で,Alibaba, Tencent, Baidu, Lenovo, Huawei, and Xiaomiのような,情報技術部門のダイナミックな民間企業が成長している.他方で,2009年の融資拡大によって過剰投資し,過剰生産力を持つ,鉄鋼などの基幹産業,そして不動産部門が非常に脆弱になっている.中国の急成長モデルの柱が減速の原因である.
難しい問題を抱えながらも,中国の技術革新や消費が主導する成長モデルへの移行はかなり進んでいる.メルトダウンではなく,衝撃的な減速があったものの,中期の成長は平穏な水準であろう.
不良債権の増大や,資本逃避,外貨準備の減少は,投資を不安にする.場合によっては政府が介入して,資本増強しなければならない.また資本逃避の原因は明らかでないが,起業や銀行から政府が手を引き,投資や政策決定の透明性を高めることだ.資本の配分はゆがみ,リスクの評価は間違っている.融資の拡大に頼る文化によって,企業の整理より金融緩和が容認されてしまう.
改革を進めれば,長期の持続的な成長が可能である.
FP MARCH
1, 2016
China’s Coming
Ideological Wars
BY TAISU ZHANG
ほとんどの中国人にとって,1990年代は強烈な物質的プラグマティズムの時代であった.経済発展が圧倒的な社会的・政治的関心であった.中華人民共和国の初期の数十年において政策を指導した国家の多様なイデオロギーは背景に退いた.熾烈なイデオロギー闘争は,1970年代末,1980年代末に,人々を消耗させて,群生する経済的機会に集中して,イデオロギーは捨てて,熱烈に機会を求めた.
そのような潮流が,今や変わった.中国社会は,明らかに,道義やイデオロギー上の渇望を再発見し,優先し始めている.中国の「脱イデオロギー」化をイメージすることはますます時代遅れになっている.
l EU離脱は間違いだ
Project
Syndicate MAR 1, 2016
Is Europe
Worth the Effort?
JEAN PISANI-FERRY
1973年にイギリスはEECに加盟した.今年の国民投票はEU解体の最前線になるのか?
EUの離脱を政府の閣僚が支持するのはイギリスだけだ.ドイツやフランス,スペインでは,あたかも離婚を話し合うように,政治家たちが離脱を公に議論することはない.
しかし,離脱問題はイギリスに限らない.ほとんどの国にはEUに不満を示す集団がいる.ナショナリスティックな主張が強まっている.政治家たちはそれに表面的に同調する.EUは後退できないが,前進もできない.
エコノミストたちは,地域統合を規模の経済と多様な好みとのトレードオフとして考える.それはアパートの部屋をシェアするようなものだ.加盟諸国は効率性や影響力を得るが,自分たちの政策選択を制約される.コストを下げることができるけれど,同じ部屋に住む者の週間に合わせる必要がある.しかし,ヨーロッパは以前に比べて加盟国間の政策が似てきている.
離脱を主張する者は,地域統合の利益は減少しており,小規模な開放国家シンガポールのように,イギリスも繁栄できる,という.しかし,それは深刻な間違いを犯すものだ.第1に,シャツを売るのとサービスを売るのでは,自由貿易の意味が違う.サービスは詳細な法律とそれを強制する制度がなければ売買できない.特に,金融や医療に関しては包括的な制度が不可欠だ.イギリスが単一市場内でポーランドより強い分野は,財ではなく,サービスだ.
第2に,グローバルな通称制度は深刻な問題を抱えている.1994年にウルグアイ・ラウンドで合意した法的枠組みは,その後,ドーハ開発ラウンドを完成できず,放棄されるだろう.ますます2国間,あるいは,地域的な貿易協定が重要になっている.第2次世界大戦後の多角的な枠組みを支持したアメリカが,今や,その姿勢を変えてしまった.ルールに依拠した経済相互依存を支持する最大の地域こそEUである.イギリがEUを離脱するのはあまりにも危険な賭けである.
EUに対する失望は確かに多くあるが,それは改革を求める主張であって,離脱を支持するべきではない.
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The Economist February 20th 2016
Out of ammo?
Fighting the next recession: Unfamiliar ways
forward
Media freedom in Japan: Anchors away
Lexington: Michael Bloomberg’s moment
Vladimir Putin’s war in Syria: Why would he
stop now?
Free exchange: Slight of hand
(コメント) 中央銀行にはもはや弾丸が尽きたのではないか? 次の危機や不況に,どうやって対抗するのか? むしろ政府にはやるべきことが多くあるし,その財政的な余力がある国は率先して行動しなければなりません.国際協力することができれば,さらに効果的です.
視聴率の高い報道番組で政府に批判的なコメントをするキャスターは消されるのでしょうか? 日本が,安倍政権が,その話の国です.その安倍首相が親しげに駆け寄ったプーチンは,シリアへの空爆によって報酬を得たかもしれません.
面白いのは,中央銀行家が魔法使いになる記事です.ハイパーインフレを止めるのも,デフレを逆転するのも,政策に関する「体制転換」が起きた,と人々が確信するほどのショックを与えることで成功した.現代の日本に,F.D.ルーズベルトはいない.
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IPEの想像力 3/7/16
東日本大震災と福島原発事故から5周年になります。テレビや雑誌には、その特集が並び、逆の意味で、その風化が実感されました。気候変動や世界金融危機、アベノミクスの方が、今も仮設住宅で暮らす多くの被災者や、原発に残る放射性物質、原発から排出され続ける廃棄物処理よりも、政治家たちの意識に大きな場所を占めています。
もし震災時の政治指導者が、当時の論争から私が得たアイデアを共有する者であれば、それらを実現したかもしれません。すなわち・・・
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IPEの想像力 3/4/11
http://www1.doshisha.ac.jp/~yonozuka/Review2011/031411review.htm
苦しくても希望の持てる、復興のイメージを支持することが重要です。被災者たちが住宅と雇用を得る道はある、と示してください。
●救援、物資の補給・支援、医療・衛生が欠かせない。
●遺体の回収・埋葬、破壊された家屋やインフラの回復、それらは遺族や関係者の気持ちを十分に汲むこと。
●治安の維持。社会不安の解消。発電機と交番。水、食料、トイレ。情報がどこで得られるか。
●政治家や政党の紛争を回避する。主要政党が合意し、積極的なアイデアを競い合う。知識と能力のある政治家を与野党から救援・復興のために任命する。
●ボランティアや国際NGOが救援活動に有効に参加できるような枠組みを、政府も加わり組織する。特に、救援活動の詳細をインターネット上で報告する。
●世界中から建設機械・重機を集めて、ボランティアや衛生班が遺体を回収しつつ、大型の障害物を撤去する。
●救済・復興作業に被災者を積極的に短期雇用し、一緒に計画を立ててもらう。
●土地・田畑の整理について、証券化や信託など、革新的手法も含めて、明確なルールを示す。
●公的監督を行い、不正や弱者への詐欺を許さない。
●住民の協力と意思決定メカニズムを組織し、復興を加速する。駅前の整備や街路、商店街の復興に参加してもらう。
●避難所から仮設住宅、集合住宅の建設。高齢者や個人による復興困難なケースに対する対策。複数のメニューを用意し、選択的な参加を促す。
●地区全体の復興計画や政府・民間信託管理のルールを統一する。
●春になって被災者には疲れが蓄積するばかりではないか? 長期の復興を闘う被災地域の精神を励ますために、日本中から吹奏楽団を募って、町や村を巡回してもらう。
●被災を免れた地域で、賛同する個人の住宅に、被災者支援・週末泊を企画する。
●若者や中高年の長期雇用確保。産業の復興と誘致。地域の関係者を代表する復興委員会を組織する。
●企業・個人の移住やディアスポラ(国内外への離散・出稼ぎ)を支援する。
●補助金や低利融資を民間部門の再生に向けて選択的に与える。企業・商店の倒産整理や外国資本の誘致を目標として掲げ、日本における産業立地をアイルランドのように改善する。
●アジア市場と国際競争・協力を意識して、農業、水産業、林業、観光業の長期的な戦略を立てる。
●復興のための財源を国債の増発ではなく、震災復興債券として新しく発行し、国民や企業の貯蓄から追加的に購入してもらう。政府支出と雇用増によるデフレ解消につなげる。
●日本も、ヨーロッパやアジアも、世界大戦で耐乏生活を経験し、相互扶助の精神を示した。政府はその具体的な例を挙げて、国民に話しかけてはどうか?
この大災害によって、日本は変わるのか? 何が、どのように? これは日本が戦争で負けたほどの衝撃だ。
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大きな自然災害は、悲劇と、短期の相互扶助的なユートピアを経て、以前から生じていた構造的な弱さや限界、問題点を、今すぐ解決するよう政治的決断を迫ります。東北地方で暮らすこと、三陸海岸や山里に住む人々が、その生活を豊かに、将来への展望をもって、若い世代に継承していけるものとは、何でしょうか?
・・・国際資本による観光開発、富裕層の退職者向けマンション、長期滞在型の高級医療サービス基地、アジア諸国からの企業団地やハイテクパーク(そして外国人技術者・労働者)、農業投資を目指す大規模農地購入(あるいは長期借地契約)、など。
そこに独自の社会的なつながり(社会契約)が再生しなければなりません。あるいは、ほとんどの人口が流出し、津波の来ない高台で、高齢者だけが年金で暮らせればよいのでしょうか?
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