IPEの果樹園2016

今週のReview

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ドイツとヨーロッパの移民システム ・・・反エリートとポピュリスト ・・・ヨーロッパのポピュリズム ・・・中国からの資本逃避 ・・・共和党の候補者争い ・・・世界株価の動揺 ・・・将来の経済学 ・・・Googleへの公正な課税 ・・・ギリシャ債務危機と難民危機 ・・・ジンバブエのドル化とデフレ ・・・スリランカの再生 ・・・政府債務の安全な水準

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, The Guardian, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, そして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]


l  ドイツとヨーロッパの移民システム

SPIEGEL ONLINE 01/21/2016

Stretched to the Limit

Has the German State Lost Control?

By SPIEGEL Staff

SPIEGEL ONLINE 01/25/2016

The Isolated Chancellor

What Is Driving Angela Merkel?

By Markus Feldenkirchen and René Pfister

メルケルは,東ドイツで壁の向こうに暮らしたことで,難民たちを有刺鉄線で排除する政策を取らないと決めた.政権を担う連立相手の保守派は,これが人道的な危機に対する一時的政策である,と考えていた.しかし,メルケルは固定化してしまった.

これまでメルケルは大きな政治目標を示さず,プラグマティックに決定して,敵を作らなかった.今度は違う.EUサミットでハンガリーのオルバン首相がメルケルを痛罵した.そのうちドイツも国境を閉ざし,オルバンが正しかったと分かるだろう,と.そのときメルケルは返答しなかった.

後でメルケルはオルバンに向けて答えた.「私はあまりにも長く壁の背後で暮らしたから,そのような時代が戻ってくるのを望まない.」

ショイブレは,こうしたメルケルの態度が,難民にとってドイツを歓迎する国にしてしまった,と批判する.メルケルを政権から降ろす計画がすでに現れ始めた.

メルケルが訪問した救援センターであったシリア難民の1人は,今もメルケルの写真を大切に保存している.しかし,彼が称賛したドイツの制度も,流入し続ける難民の多さに,ついに機能を停止したようだ.

VOX 25 January 2016

How Europe will fail to address the migration crisis in early 2016

Jacob Funk Kirkegaard

Project Syndicate JAN 26, 2016

Immigration into the Welfare State

HANS-WERNER SINN

福祉国家は財政を介して低所得の家計が高所得層から所得移転を受ける.市場経済のもたらす過度の所得格差を是正するために合意された.福祉国家間で人口移動が起きるとどうなるか,1990年代に大いに議論された.政策にはほとんどなかったが.

人口移動があれば,こうした社会的給付は続けられない.EU諸国間では,移民を出した国が移民への給付を財政移転によって続ける.賃金格差だけが移民の配分を決めるはずだった.しかしその場合,給付の水準が高い福祉国家に移民が集まる効果があるから,イギリスのキャメロン首相が示したように,経済移民には一定期間,課税による社会的給付を(一部)行わないのが合理的である.(EUではなく)イギリスに居住し,納税した期間が5年に達する者だけが給付を受ける.

EU外からの移民は財政移転がないので,この期間,給付をまったく受けられない.もし移民を真剣に受け入れるつもりなら,社会的給付の財源を考えなければならない.難民については,さらにそうだ.福祉国家のシステムに何万,何十万もの難民を受け入れることはできない.移民への給付は賃金を補助する形で,あるいは,地域の事業に雇用する形で行うべきだ.

EU市民の流入に対しては,福祉国家を調整するか,あるいは,崩壊するしかない.

FT January 28, 2016

Hard-headed humanity can save Angela Merkel

Philip Stephens


l  日本の政治経済

FT January 22, 2016

Oil contagion extends its reach

John Authers

FT January 26, 2016

Protectionism at play in Sharp takeover drama

Kana Inagaki in Tokyo

FT January 26, 2016

Japan needs to make new governance rules work

アベノミクスとして3本の矢を説くだけでなく,日本企業のガバナンスを改善しなければならない.

YaleGlobal, 26 January 2016

Abe and Blair: Political Apologies, East and West

Joji Sakurai

安倍首相は,第2次世界大戦中の従軍慰安婦に関して謝罪し,ブレア元首相は,イラク進攻と体制転換に至る前に,情報を正しく伝えなかったことについて,より非公式に,部分的な謝罪を行った.

そこには政治的な計算が働いた.安倍は,核実験を行う北朝鮮に対処する上で,韓国との関係を緊密化することに戦略的な意義を満ただろうし,ブレアは,近く発表されるイラク戦争に関する報告書が自分への法的な訴追につながることを避けようとしたのだろう.同時に,彼らの行動の違いは,その対象となる聴衆の差である.

アジアの人々は,タカ派のナショナリストである安倍が,ほんとうの意味で謝罪したとは思わなかっただろう.日本人は謝罪を,集団的な悔悟としてだけでなく,同時に,集団的な恥辱としても認識する.それゆえ謝罪することは難しい.多くの日本人は,今も仏壇を設けて先祖に祈るように,高齢者や祖先は謝罪を恥辱として受け入れられない,と考える.

アジアでは,たとえ本心がどうであれ,謝罪を示すことが外交の転換に必要な姿勢として評価される.しかし,西側では,その個人が心から悔いていることは,将来に向けて同じ過ちを繰り返さないために欠かせない,と考える.

ブレアの謝罪は,「本音」と「建て前」を区別するのが日本だけの文化ではないことを示している.また,日本でも「本音」は重要なのだ.政治においては,謝罪によって将来の関係を改善することが,その目的である.


l  反エリートとポピュリスト

FT January 22, 2016

Shadow of populism hangs over Davos

Gideon Rachman in Davos

ダヴォスでもポピュリズムの台頭に懸念が示された.指導者たちはその原因に関する真剣な探求と取り組みを議論した.しかし,北アフリカへのマーシャル・プランのような,短期的には実現しない話は合っても,難民を阻止することや内戦を終結させることに妙案はない.

ポピュリズムの背景には,職を失うかもしれないという低所得・労働者層の不安がある.

変化は必ずしもポピュリズムへの流れだけではない.アルゼンチンやカナダでは,これまでの指導者たちが支持してきた改革や目標が選挙で政権を得ている.まだダヴォスには冷静さがある.

もし,次の会合で,アメリカにはトランプ大統領が誕生し,イギリスはEUを離れ,ヨーロッパに国境の壁が復活していたら,正真正銘のパニックになるだろう.

FT January 26, 2016

The economic losers are in revolt against the elites

Martin Wolf

敗者も投票する.民主主義とはそういうものだ.もし彼らが騙されたと思い,屈辱を感じているなら,アメリカではトランプに,フランスではル・ペンに,イギリスではファラージ投票するだろう.

彼らは,特に,自国生まれの労働者たちは,自国の国籍を大きな特権として扱う右派と,強力な国家介入を好む左派と,左右両派の権威主義的な体制を唱える政治家たちの唱える,破滅の誘惑に魅せられるだろう.

彼らは特にエリートを嫌う.その国の経済や文化を支配し,先週はダヴォスでワールド・エコノミック・フォーラムに出席したような人々だ.エリートたちはもっと洗練された対策を打つ必要がある.すでに手遅れかもしれないが.

右派の政治プロジェクトは,ずっと,限界税率の引き下げや,移民の自由化,グローバリゼーション,コストのかかる「社会給付」の削減,労働市場の規制緩和,株主利益の最大化であった.左派の政治プロジェクトは,(右派と同じ)移民の自由化,多文化主義,政教分離,多様性,堕胎の自由,人種やジェンダーの平等であった.そしてリバタリアンたちは,左右両派の大義を称賛し,それゆえ少数派である.

エリートたちは国内の忠誠心や問題関心から離れ,グローバルなスーパーエリートを形成し始めた.庶民は,特に,自国で生まれたことを重視する者たちは,こうしたエリートたちから疎外された.自国生まれの人々は,少なくとも相対的に見て,敗者である.金融危機後,経済の回復は遅く,生活水準はなかなか改善しなかった.彼らはエリートを収奪者や無能な支配者と見ている.

元世銀スタッフのBranko Milanovicによれば,グローバルな所得分配の2つの部分,すなわち最下位5%と,75%から90%の間で,1988-2008年の間に所得が増えなかった.この後者には,高所得諸国の人口の大きな部分が含まれる.またワシントンのthe Economic Policy Instituteによれば,普通の労働者の給与は,1970年代半ば以来,生産性の上昇に大きく遅れたままである.その理由としては,技術革新,貿易自由化,企業のガバナンス,金融自由化が指摘されるが,特にアメリカで,そして多くの高所得国でも,成長の果実はトップに集中しているのだ.

さらに,人口に占める移民の割合が急速に増えた.このことは経済,社会,文化面で,多数の国民に利益をもたらした.しかし,トップの人々,ビジネス界が大きな利益を得たのは明らかだ.自国の労働者に十分な社会福祉を求めたとしても,左派はますます支持者を失った.

こうした問題は,人種的,文化的要素の強い,アメリカで顕著である.南部の白人有権者に的を絞ったリチャード・ニクソンの「南部戦略」は成功した.人種,ジェンダー,文化の変化に憤慨する中産階級(特に男性)において,共和党の戦略は失敗した.減税や規制緩和は,共和党支持者たちに喜ばれなかったからだ.

トランプは保守派ではない,と共和党のイデオローグは批判する.トランプはポピュリストだ.実現できない減税策を唱えて,共和党の財政赤字反対論などバカにする.保護貿易や移民排斥を唱える.彼の支持者たちは,その唯一の資産ともいえる,国籍,を特権化し,無数の外国人と共有することを望まない.ル・ペンやファラージもそうだ.

こうした自国民優先主義者を選挙で勝利させてはならない.特にアメリカの場合,それは世界的に深刻な結末をもたらす.アメリカは,グローバルでリベラルな秩序の創設者であり,保証人である.世界は,正しく情報を理解した,アメリカの指導力を必要としている.トランプはそうではない.

エリートたちは警告を受けている.減税,移民流入,規制の弱体化は右派のエリートを憎ませ,文化相対主義や国境管理の甘さは,左派が市民を犠牲にしたとみなされる.多数の人々がエリートの政治プロジェクトを支持しなくなっている.

その危険な怨嗟はいたるところに充満している.

FT January 26, 2016

Tragedy of the millennials is they are not entitled enough

Sarah O'ConnorSarah O’Connor

NYT JAN. 26, 2016

What’s Our Duty to the People Globalization Leaves Behind?

Steven Rattner


l  ロシアと原油価格の下落

FT January 22, 2016

Vladimir Putin asked Bashar al-Assad to step down

Sam Jones in London, Erika Solomon in Beirut and Kathrin Hille in Kazan

Bloomberg JAN 22, 2016

Repression or Reform, Putin Must Decide

By Leonid Bershidsky

石油価格が30ドルにまで下落し,今週,ルーブルは10%減価した.ロシアの経済危機に対処する一貫した対策は示されていない.プーチン大統領は,ソビエト連邦の最後の指導者,ゴルバチョフと同じ選択に直面する.すなわち,経済管理を緩め,対外的な攻勢を抑えて,西側との和解を操縦するか,国内の弾圧に向かうのか?

ゴルバチョフは独立指向のソビエトの各共和国を弾圧するのに失敗してから,前者を選んだが,プーチンは繰り返し自由化の試みに失敗した後で,もはやその選択肢はないだろう.第2の,弾圧という選択肢は,延期されているに過ぎない.

それはチェチェン共和国を自分の封建領土としているRamzan Kadyrovが,プーチンに対して,事態の悪化を放置せず,自分がやったような容赦ない弾圧と行動を迫るものだ.チェチェンには,連邦予算から突出した巨額の支援が行われているが,石油価格下落により削減が進められている.

FP JANUARY 22, 2016

A Perfect Storm in Central Asia

BY NATE SCHENKKAN

The Guardian, Sunday 24 January 2016

Litvinenko’s murder shows why Putin’s Russia will never prosper

Will Hutton

FT January 24, 2016

Reasons for Russia’s rouble rollercoaster ride

Sergie Guriev

ルーブルの変動は、まるでジェットコースターだ。ルーブルの為替レートを決めるのは、石油価格、資本流出、ロシア中央銀行の政策、である。資本流出は予想よりも少なかった。ウクライナに関する制裁で、ロシアへの投資は底に達したからだろう。また、ロシア中央銀行の政策も、為替レートを維持するより、外貨準備を維持するために変動レートを許容する方向に転じた。

しかし、危機は続くだろう。石油の輸出によって財政が維持されている限り、ロシアの経済とルーブルは石油価格の変動に翻弄され続ける。ロシア経済の多様化を政府は目標としてきたが、所有権や法の支配が確立されず、市場による構造改革は進まなかった。

FT January 24, 2016

The end of the cold war proves diplomacy can work today

Wolfgang Ischinger

FT January 24, 2016

Economy drags Putin’s ambitions down to earth

FT January 25, 2016

Russia’s economic ills feed radical Islam in Central Asia

Tony Barber

FP JANUARY 25, 2016

For Putin, For Stalin

BY HANNAH THOBURN


l  ヨーロッパのポピュリズム

FT January 22, 2016

Lessons from the past are key to Europe’s survival

Mark Mazower

FT January 27, 2016

Europe’s new right sounds like the old left

Anne Applebaum

リーマン・ブラザーズが倒産し、国際金融システムが死の苦しみにもだえていたとき、私の友人が電話してきた。世界は終末に向かっている、というのだ。彼は金融市場で働き、信仰に篤いわけではなかったが、「資本主義の危機」は、マルクスが指摘したように、訪れたのだ。

しかし、世界は終わらず、国際的なプロレタリア革命も起きなかった。かつてのようなマルクス主義やそれに近い政治党派が西ヨーロッパにあれば、群衆が街頭を占拠しただろう。しかし、マルクス主義者たちはソ連崩壊で完全に信用を失ってしまった。20年経っても、革命を試みる者はいなかった。経済的にも、政治的にも、左派は支持されなくなっていた。

その後、8年を経て、状況は大きく変化した。Syriza in Greece, Podemos in Spain and Jeremy Corbyn’s British Labour partyなど、多くの旧左派が復活したのだ。産業を国有化し、自由貿易の阻止を唱えている。しかし、より注目すべきは、極右と呼んでいた右派の台頭である。ヨーロッパのナショナリスト政党は、長く政治の片隅で活動したが、今や、信用を失った「左派」のアイデアを採用して、得票を増やしている。

たとえば、フランスの国民戦線だ。反移民だけでなく、Marine Le Pen党首になって、旧左派のシンボルや政策を採用した。2014年のメーデーでは、「厳格な財政緊縮策」を「民衆を犠牲にしてグローバル・エリートを利するものだ」と攻撃した。国民戦線は、「エスタブリッシュメント」を追放して、「強力な国家」が輸入に課税し、外国の企業や銀行を国有化する、と主張した。

すでにハンガリーでは、Viktor Orban首相がそれを実行している。1990年代の民営化で主要な目標となっていた政治的な縁故主義の廃止も、今では復活した。ポーランドではLaw and Justice partyが、外国の企業や銀行の「再ポーランド化」を進めている。最近、選挙で勝利したが、彼らは社会保障支出の増大を公約した。イギリス独立党も国民医療サービスの増額を唱えている。デンマークとスウェーデンのナショナリスト政党は、自国生まれの国民に対してだけ、福祉国家の拡大を主張する。

オーストリアFreedom Partyの指導者Heinz-Christian Stracheは、「ネオリベラル」の合意を攻撃し、グローバリゼーションのもたらす荒廃、国際資本の邪悪さ、大規模な革命の必要性を説き、往年のマルクス主義者そのものだ。

これは時流を利用する日和見主義であろう。しかし、それがどれほど愚かでも、若者には新鮮に思える。特に、反論を許さないインターネット上の宣伝では効果的だ。彼らの政策はすでに何度も試みられ、失敗したものだ。しかし新しいナショナリストの旗の下で、再現するかもしれない。

FP JANUARY 27, 2016

The Problem With Poland’s New Nationalism

BY ADAM ZAMOYSKI

FP JANUARY 27, 2016

The Great Civil Society Choke-out

BY KENNETH ROTH


l  台湾の蔡英文

FT January 22, 2016

Tsai Ing-wen, Taiwan’s next president

Ben Bland

The Guardian, Sunday 24 January 2016

The Guardian view on China and Taiwan: keep calm and carry on

Editorial

FT January 24, 2016

Taiwan poses generational challenge to China

Ben Bland

FT January 27, 2016

US naval history offers clues to China’s intent

Jamil Anderlini

NYT JAN. 27, 2016

How China Lost Taiwan

By NICK FRISCH


l  中国からの資本逃避

SPIEGEL ONLINE 01/22/2016

Chinese Billionaire Zhang Xin

'The Old Model Doesn't Work Anymore'

Interview Conducted by Bernhard Zand

Bloomberg JAN 24, 2016

China's Migrants Go Home -- And Stay There

By Adam Minter

FT January 25, 2016

Capital controls may be China’s only real option

情報交換を改善しても資本逃避は止まらない.日銀の黒田総裁が示唆した資本規制の強化も,長期的には意味がない.長期の金融自由化をどうするか,だ.

FT January 26, 2016

Currency risk matters for China’s property sector

Henny Sender

Project Syndicate JAN 26, 2016

False Alarm on China

STEPHEN S. ROACH

Bloomberg JAN 26, 2016

Free Trade With China Wasn't Such a Great Idea for the U.S.

By Noah Smith

FT January 27, 2016

China’s economic leaders struggle to explain thinking to world

Tom Mitchell in Beijing and Gabriel Wildau in Shanghai

Project Syndicate JAN 27, 2016

China’s Bumpy New Normal

JOSEPH E. STIGLITZ

Project Syndicate JAN 27, 2016

A Floor for the Renminbi

YU YONGDING

VOX 27 January 2016

China’s slowdown and the Chinese stock market

Jeffrey Frankel

Bloomberg JAN 28, 2016

China Trade Shock for U.S. Workers Was Avoidable

By Noah Smith

(China Daily) 2016-01-29

Renminbi strong enough to withstand currency war

By Mei Xinyu


l  アジアの秩序崩壊

Project Syndicate JAN 22, 2016

Upholding the Asian Order

BRAHMA CHELLANEY


l  共和党の候補者争い

NYT JAN. 22, 2016

When Will the Candidates Start Talking About the Economy?

By MOHAMED A. EL-ERIAN

ホワイトハウスを目指す政治家たちのレースでは、安全保障、外交、移民とともに、経済が主要な論点である。

しかし、政治家のキャンペーンが経済政策の最適のフォーラムになることはめったにない。しかし、今年のキャンペーンで取り上げる2つの重要な経済問題とは、アメリカ経済はなぜこれほど不確かなのか? 次の不況になる前に、この不確実さを解消するため何をするべきか?

アメリカの不平等は強まり、技術革新に主導される経済の構造変化に対応する力が労働者にない。議会は、2008年に最初の公的資金を使ってから、経済政策の責任はもっぱら連銀が担ってきた。連銀は非伝統的な金融手段に訴えたのだ。超低金利と国債の大量購入は、資産価格の実質的な高水準と、ファンダメンタルズの悪化とが対照的だ。

中央銀行は、アメリカ連銀のように、ますますこうした役割を進んで引き受けなくなるか、あるいは中国、日本、そしてヨーロッパの中央銀行のように、未来から金融のリターンを借り入れ続けている。その結果、金融の浮動性が増している。

議会が採用するべき手段は次の4つだ。1.構造改革を進める。2.もっと責任ある財政政策を採用する。3.グローバルな金融制度を改革する。

NYT JAN. 22, 2016

Donald Trump and the ‘Rivers of Blood’

By SARFRAZ MANZOOR

The Guardian, Saturday 23 January 2016

Trump and Palin may be funny. But they are no joke

Jonathan Freedland

FT January 23, 2016

What Bloomberg’s entry would do for Trump

Edward Luce

前ニューヨーク市長で大富豪のブルームバーグMichael Bloombergがアメリカ大統領選挙に立候補するかもしれない。アメリカの政治では2大政党の候補者以外から大統領にはなれない。しかし、今回は違う。政治の重力が乱れている。ブルームバーグは計算しているのだ。トランプとヒラリーに対抗して、彼が選挙に勝つことはできるだろうか? サンダースが民主党候補に登場してから、ブルームバーグは関心を強めた。誰が自由貿易、国際主義、グローバルな同盟を支持する有権者のための候補なのか? トランプではない。サンダースでもない。それはブルームバーグだ。彼の友人たちはそう話し合っている。

共和党の長老たちはテッド・クルーズを嫌っている。そのためには、これまで候補となる可能性のなかったトランプも、クルーズを阻止する候補として受け入れるかもしれない。ボブ・ドールがそうだ。クルーズは多くの政治家に嫌われているが、もしアイオワで多くの支持を得れば、その後のバイブル・ベルトで勢いを得るだろう。

しかし、共和党の他のグループは、トランプを最悪の候補者と見ている。トランプは、残念ながら、草の根の支持を得ている。共和党のイデオローグたちはthe National Reviewに「反トランプ」の論説を載せた。しかし、彼らは強い指導者に流れる大衆の気分を変えることができない。

マンハッタンの大物たちは、トランプとの不動産取引を通じて、個人的な知り合いである。もしトランプが大統領になれば、彼らが守る価値はすべて破壊される。自由貿易を否定し、アメリカの最大の貿易相手である中国とメキシコに懲罰的な制裁を求める。ン日本、韓国、ドイツのような、主要同盟国に負担を求め、パックス・アメリカーナを崩壊させるだろう。

共和党の指導者たちにできなくても、ブルームバーグならトランプを阻止できるのか? 380億ドルの彼の資産は、選挙資金に十分だし、トランプをはるかに超えている。ブルームバーグは世界レベルのビジネスマンであり、30年以上前のthe Bloomberg terminalは、現在に至るまで金融情報を塗り替えた。

しかし、独立候補は勝てない。そして、ブルームバーグはトランプよりヒラリーから多くの票を奪うだろう。その結果、トランプ大統領を実現してしまう。ブルームバーグを支持する者が正しくとも、多数を得られない。


(後半に続く)