前半から続く)


l  イラン核合意の後で

FT January 17, 2016

A future without sanctions heralds a brighter outlook for Iran

David Gardner

NYT JAN. 18, 2016

Talk to Tehran, but Talk Tough

By NICHOLAS BURNS

FP JANUARY 18, 2016

After Nuclear Pact, New U.S.-Iran Talks Bring New Deals

BY DAN DE LUCE

NYT JAN. 19, 2016

Can Iran Change?

By ADEL BIN AHMED AL-JUBEIR

YaleGlobal, 19 January 2016

Iran Nuclear Deal Fuels Tension With Saudi Arabia Inflaming New Conflicts

Mohammed Ayoob

FT January 20, 2016

John Kerry and Javad Zarif set an example in the Middle East

Roula Khalaf

(China Daily) 2016-01-21

Nation ready for a more constructive Mideast role

By Ma Xiaolin


l  ドイツの難民政策とEU

FT January 17, 2016

Gloom gathers over the challenges that Germany faces

Wolfgang Münchau

FP JANUARY 18, 2016

Berlin’s Hipster Ghetto

BY RENUKA RAYASAM

FT January 19, 2016

Only Germany can tame east-west tensions in Europe

Tony Barber

ハンガリー、ポーランド、スロヴァキア、東欧、中欧のEU移民・難民政策に反する行動、ロシアへのエネルギー供給に関する政策対立は、民主的な制度を解体するポーランドの動きとともに、戦後ドイツの努力を無にするものだ。

しかし、フランスではなく、ドイツこそ、その戦略的な位置から、ウクライナに対するロシアの介入に対抗してEUの制裁を組織したし、自国の利益として東・中欧に対する統合を維持する力を持っている。

SPIEGEL ONLINE 01/19/2016

Merkel's Last Stand?

Chancellor Running Out of Time on Refugee Issue

By SPIEGEL Staff

FT January 20, 2016

The Holy Roman Empire can help inspire a different European Union

Peter Wilson

現在のドイツと800年から約1000年続いた神聖ローマ帝国とを比べて、何を考えるべきか。

Project Syndicate JAN 20, 2016

Pulling Europe Back from the Brink

MARTIN SCHULZ


l  失業問題

FT January 18, 2016

A missed opportunity to fix France’s jobs market

若者の失業問題を改善すると繰り返し約束したオランド大統領の計画は、これまでの方針を延長したものに過ぎない。特に、二重化している労働市場の不平等について改革が進んでいない。

Project Syndicate JAN 18, 2016

Reshaping the Labor Landscape

JONAS PRISING

高い失業率と、充足されない就労機会との併存。生産性の上昇は賃金に反映されていない。しかし、こうした労働市場の機能不全はグローバルな変化によって解消されつつある。

1.人口変化。2.個人の選択肢が増え、労働市場の弾力性が増す。3.技術変化。旧雇用の消滅と、シェアエコノミーなど、新しい分野の開拓。4.ビッグデーターの利用。人材活用の高度化。


l  イギリス国民投票

Project Syndicate JAN 18, 2016

Neville Cameron?

MARK LEONARD

The Guardian, Thursday 21 January 2016

Whether Brexit or Bremain, fear will triumph over fear

Timothy Garton Ash

EU離脱に関するイギリスの国民投票は、恐怖と恐怖との比較になる。1つは、悪しきヨーロッパ超国家への帰属、主権、民主主義、アイデンティティ、国境管理の放棄に対する恐怖。もう1つは、ノルウェーやスウェーデンのように、寒い外にとどまる恐怖。EUがルールを決めるとき、発言することはない。

しかし、国民投票は賭けである。有権者は紙に書いてあることに答えるとは限らないからだ。

フランス、ドイツ、アメリカの情報を観れば、イギリス国民が離脱を選択すれば、独仏は直ちに関係を強化し、ユーロ圏をEUの中で要塞化するだろう。アメリカはイギリスに関心を失い、ユーロ圏との関係を重視する。

しかし、残留派はこの投票を「恐怖」によって勝利すると考えるだけでは不十分だ。特に若者たちは、EU加盟をプラスとみなしているからだ。それは彼らの「繁栄」、「次世代への機会」、なんであれ「強者」になることを意味する。EU支持派は、恐怖ではなく、希望に訴えるべきだ。

FT January 21, 2016

Hard interests battle potent emotion over Britain and Europe

Philip Stephens

Project Syndicate JAN 21, 2016

Britain’s Watershed Year

CHRIS PATTEN

FP JANUARY 21, 2016

So Putin Killed Litvinenko. Carry On.

BY PETER POMERANTSEV


l  4次産業革命

Project Syndicate JAN 18, 2016

Facing the Fourth Industrial Revolution

ENRIQUE PEÑA NIETO

Project Syndicate JAN 21, 2016

Mastering the Fourth Industrial Revolution

LARRY HATHEWAY


l  ダヴォスに集まる超富裕層

(China Daily) 2016-01-19

Switzerland offers example how to increase soft power

By Fu Jing

The Guardian, Tuesday 19 January 2016

We’ve been conned by the rich predators of Davos

Aditya Chakrabortty

今秋、地球上の最も裕福な人々が、世界最大のタックス・ヘイブンである、雪に覆われた山に集まるだろう。ダヴォスの会議場に参加するには、3日間で10万ポンドくらいの費用がかかる。

彼らはジェンダーの平等を議論し、技術革新を論じるだろう。われわれの経済エリートたちは、世界経済がどれほど動揺しているときでも、こんな風に世界を見下ろしている。大きな思想、よき意図、勤勉さ、など、能力主義の素晴らしさを説く。われわれは苦労している。われわれはその資産に値する働きをしたのだ。

それを却下するには、Oxfamのデータを観るだけでよい。62人の超資産家たちが世界人口の半分よりも多くの富を所有している。35億人の人類と同じ富を支配するのだ。

この超資産家たちにとって、能力主義など、まったくの嘘である。35億人の誰一人も、ウォルマートの所有者Walton家のような、巨大な富の中に生まれたことはない。彼らはたった6人で1490億ドルを所有している。サウジ王室のAlwaleed王子のように、260億ドルを得ることもない。

自分で資産を得た超富裕層の時代、というお世辞は、多くの遺産によって富を得た資産家たちの中に立っている。しかも、富の森林はもっと深刻な姿を示している。10年前、388人の超資産家が世界の富の半分を所有していた。2011年までに、その数は117人に減った。昨年は、わずか80人だ。今はトリクル・アップの時代なのだ。中産階級、労働者たちの所得は、超富裕層によって吸い上げられていく。

イングランド銀行は、3750億ポンドの量的緩和で生じた利益の40%がわずか5%の家族にもたらされた、と認めた。超資産家のファンド・マネージャーStanley DruckenmillerQEを、「中産階級と貧困層から富裕層への、かつてない大規模な所得再分配」と呼んだ。

超富裕層は、そのQEがもたらす狭隘な利益を、世界経済全体のために良いことである、というふりをしている。QEのように不公平な経済政策は、もし平等な社会であれば実現しなかっただろう。公共投資や政府支出によって景気回復を目指したはずだ。この巨大な不平等は、1%の人々が、自分に都合のよい法律や税制を実現し、そのような政治家を買収することで守られている。

彼らは資産市場で何十億ドルもの利益を上げながら、われわれは福祉国家が空洞化し、賃金が凍結され、雇用者たちが投資しないことを観ている。しかし、こうしたことはダヴォスの話題にならない。

The Guardian, Tuesday 19 January 2016

The Guardian view on the global economy: China sends a shiver through Davos

Editorial

FT January 19, 2016

Slowing China needs to support its economy

FT January 19, 2016

Davos 2016: Global economy seen to be hanging in the balance

By Chris Giles in Davos

FT January 20, 2016

The Davos CEO elite misjudges both its fame and its legitimacy

Michael Skapinker

FP JANUARY 20, 2016

Davos Diary: Money is Rushing Out of Emerging Markets. Blame China.

BY DAVID FRANCIS


l  習近平のサプライ・サイド革命

FT January 19, 2016

China’s Xi turns to Reagan and Thatcher for economic inspiration

Tom Mitchell in Beijing

習近平主席は、鄧小平以来の体制転換を実行する指導者になる、と期待された。さらに今、かつてアメリカのレーガン大統領、イギリスのサッチャー首相が実行したような、サプライ・サイドの改革を実行する時期に直面している。すでに膨大な債務で、追加的な需要を刺激することが難しくなっているからだ。過剰生産力を抱える部門は多いが、スプレー式のトイレのように、消費者が求める商品やサービスは生産できない。

しかし、レーガンやサッチャーと違い、中国政府は、鉄道など、重要な国有部門を縮小するつもりはない。英米型の破産処理と債務処理・再編が最初に大きなコストを生じることを好まないが、日本的な長期の処理も望まない。その中間的な改革を目指すだろう。

FT January 19, 2016

China adds G20-sized economy every year

Yuan Yang in London and Tom Mitchell in Beijing

FT January 19, 2016

China’s great economic shift needs to begin

Martin Wolf

四半世紀前の日本と比べて、中国経済には成長の余地がまだ大きいけれど、その不均衡もより大きい。しかも、多くの意見とは違い、中国経済の新しい成長パターンは、まだその移行を始めていないのだ。

Project Syndicate JAN 20, 2016

China’s Slowdown and Asia’s Economy

SHANG-JIN WEI

Bloomberg JAN 20, 2016

A Cheaper Yuan Won't Help China

By Christopher Balding

FT January 21, 2016

China admits communication failings on renminbi

Chris Giles in Davos and Gabriel Wildau in Shanghai

Project Syndicate JAN 21, 2016

China’s Silk Road Vision

JUSTIN YIFU LIN


l  移民・難民の国際システムを改革せよ.

Project Syndicate JAN 19, 2016

Economists on the Refugee Path

ROBERT J. SHILLER

現在のグローバルな難民危機に第2次世界大戦直後を思い出す。当時はヨーロッパだけで4000万人の難民がいた。暴力、強制移住、迫害、所有権やインフラの破壊、それらが人々に居住地からの避難を強いた。

1950年、国連高等難民弁務官UNHCRができた。それは、難民を3年間保護する、という一時的な権限を与えられただけであったが、今も存在している。2015年半ばに発効された報告書によれば、世界には2014年末時点で5950万人の「住居の放棄を強いられた」人々がいる。その中でも1950万人は国際的な避難民だ。50万人以上の難民を出している国は、Afghanistan, Azerbaijan, Colombia, Central African Republic, Democratic Republic of Congo, Iraq, Myanmar, Nigeria, Pakistan, Somalia, South Sudan, Sudan, Syria, and Ukraineである。

残念ながら、難民問題の理解は不十分だ。よその土地に避難した人々は歴史上に多く存在したが、それは研究されてこなかった。歴史家たちは戦争を描くが、難民については書かない。難民危機がどのように解決されたのか、わからない。

もっと長期的に難民を研究する必要がある。UNHCRは、2015年、700億ドルの予算を得たが、難民1人当たりでは100ドルほどでしかなく、必要不可欠な食糧や避難所も足りない。

アメリカ経済学会の会長として、2016年、私は今月初めの年次総会を利用して、深刻な経済問題に注意を向けた。難民危機は、他のさまざまな意味を持つが、経済問題でもある。しかし、集まった論文は少なく、移民の専門家たちを招いたセッションSixty Million Refugeesを開催することにした。私は彼らに、難民危機を経済問題として描き、意味のある政策を提案するように求めた。

Timothy J. Hattonは、世界中の難民が生じている原因を検討した。難民危機は、豊かな国に逃げ込むための口実でしかない、という反対論を彼はよく聞いた。しかし、難民の多くは、政治鉄器迫害、人権蹂躙によって生じており、経済的な理由ではなかった。

Semih Tumenは、220万人のシリア難民がトルコの国境地帯における労働市場に及ぼした影響を示した。彼の研究は、難民の受け入れに反対する人々がしばしば利用するが、雇用を奪い、賃金を低下させただけでなく、難民流入後、地元の人々に対する公的雇用を増やしたこと、地域経済を刺激したことを指摘している。

Susan F. Martinは、移民の原因ではなく、「保護する必要に焦点を当てた法的制度」を求めている。そのルールは、難民たち自身にも、出自国の政府に対しても、インセンティブとなることが考慮されねばならない。たとえば、独裁者がマイノリティを国外追放することを望まない。

Jeffrey D. Sachsは、新しい難民管理システムを詳しく提案した。Sachsは、そのようなシステムが長期的に世界経済をどう変えるか、考察した。彼は、システムのルールに、受入国にとって有益な難民だけでなく、低熟練の絶望的な人々を受け入れるように求めている。またフローの率を規制し、諸国間で負担を公平に分ける方法をエコノミストたちが見つける必要がある。

非効率な、しばしば非人道的な国際システムを、ルールや制度の検証を通じて、エコノミストが改革するべきだ。

The Guardian, Wednesday 20 January 2016

The Guardian view on EU refugee controls: sharing is the only solution

Editorial


l  ラガルド再選

Project Syndicate JAN 19, 2016

The IMF Needs More Lagarde

IAN BREMMER


l  金融政策の模索

VOX 19 January 2016

The ECB and the Fed: A comparative narrative

Dae Woong Kang, Nick Ligthart, Ashoka Mody

The Guardian, Wednesday 20 January 2016

The Bank of England is at risk of sleepwalking into a financial crisis

David Blanchflower

FT January 21, 2016

Carney’s monetary inactivity is right response

Martin Wolf

FP JANUARY 21, 2016

Microsoft vs. the Feds, Cloud Computing Edition

BY ELIAS GROLL


l  原油価格

FT January 20, 2016

Oil prices are at the mercy of geopolitics

Daniel Yergin

原油価格の下落に示された地政学的な対立は続くだろう。


l  重なるショックの背後で

NYT JAN. 20, 2016

What If?

Thomas L. Friedman

最近の国際的な市場の動揺は,単なる震動ではなく,グローバルなシステムの地殻変動を表すものかもしれない.

もし時代を転換する変化が同時に起きているとしたら,その結果は何をもたらすのか?

中国の30年余におよぶ高成長時代が終わったかもしれない.先週のCNBC.comで,Michael Pentoは,中国の債務バブルが逆転し,人民元は価値を失い,上海市場の株価は雪崩となって,鉄道貨物の輸送量も激減し,中国経済は7%どころか,全く成長していない,と書いた.

1バレル100ドルの石油価格の時代が終わったかもしれない.それによって景気を支えてきた諸国は他の財やサービスを売らねばならない.人口が増大する中で,Iran, Saudi Arabia, Nigeria, Indonesia and Venezuelaは,その財源を見いだせない.

冷戦時代には平均的であった諸国が,その地位を失うかもしれない.ロボットの台頭,ソフトウェアと自動化で,膨大な労働力の供給は利用できなくなるかもしれない.さまざまな諸国がグローバリゼーションの嵐に吹き飛ばされる.無秩序な世界からEUの秩序を求めて,大量の人々が地中海を渡っている.

しかし,そのEUが終わるかもしれない.他のヨーロッパ諸国は難民の流入を抑えられず,ドイツだけが彼らの定住を受け入れ続けるなら,ドイツも扉を閉めるだろう,国境にフェンスを築く,とも政治家は言った.それはヨーロッパの終わりである.

イランの孤立は終わり,アラブ諸国のシステムが終わるかもしれない.イスラエルとパレスチナの2国家案も終わる.

アメリカの2大政党制が終わったかもしれない.極左と極右が支持を増やしている.2016年の大統領選挙は,社会主義者とファシストとの戦いになるかもしれない.

金融政策や財政政策で経済を刺激する政府の能力は制限されたかもしれない.マイナス金利に入るか,もはや政府の次の行動にコンセンサスはないだろう.

もしこうした地殻変動が一斉に起きるとしたら,次の大統領は,どうやって成長,雇用,経済の生命力を生み出せばよいのか?


l  日本の構造改革

Bloomberg JAN 20, 2016

Japan Must Let Zombie Companies Die

By Noah Smith

FT January 21, 2016

Japan pins hopes on Pepper the mechanical playmate

Leo Lewis in Tokyo


FT January 21, 2016

The tiny shifts that can signal huge changes

Gillian Tett


l  シリア交渉

Project Syndicate JAN 21, 2016

The Key to a Syrian Accord

KENNETH ROTH


l  スーチー女史

NYT JAN. 21, 2016

Aung San Suu Kyi, the Dragon's Lady

By MIN ZIN


l  ポーランド

Project Syndicate JAN 21, 2016

The Problem With “Illiberal Democracy”

JAN-WERNER MUELLER

FP JANUARY 21, 2016

Obama Is Poland’s Only Hope

BY BRUCE ACKERMAN, MACIEJ KISILOWSKI

********************************

The Economist January 9th 2016

The Saudi blueprint

Saudi Arabia: Young prince in a hurry

North Korea’s nuclear weapons: Another bombshell

China market meddling: The control quagmire

Politics in Taiwan: A Tsai is just as a Tsai

Liberal economists: Three wise men

Puerto Rico defaults: When the salsa stops

Politics in the Middle East: The Arab winter

Nigeria’s federation: A house divided

Buttonwood: Loathe thy neighbour

(コメント) サウジアラビアと台湾の変化に驚きました。もしその指導者たちが、自分たちのガバナンスを変えることに成功するとしたら、それは明らかに、地域の、そして世界の安全保障や経済的繁栄に深く結びついた過程として重大な意味を持ちます。

市場を受け入れることで成長し続けたからこそ、中国の政治権力は迷走します。

******************************

IPEの想像力 1/25/16

戦争のシミュレーション・ゲームに関して、FPの記事が興味深いです。テレビを観ても、池上彰が、宮家邦彦が、NHKの解説が、日本政府の外交・安全保障を議論しています。

「シミュレーションのチームとプレイヤーとしては、日本政府(首相官邸・外務省・防衛省)、米国政府、某国、パラダナオ共和国(南シナ海に位置する架空の国家)、オーストラリア、ASEAN 、フリケニア共和国(アフリカ大陸の架空の国家)、メディア(日本メディア・国際メディア)を設定した。」

(キャノングローバル戦略研究所、20回 PAC政策シミュレーション「新安保法制はシームレスか?」概要報告と評価

このシミュレーションは、新しい安保法制によって、日本は「シームレスな」(切れ目のない)防衛体制・非常事態への対応を実現できるか、という視点で実施されました。南シナ海の紛争、アフリカにおけるPKO活動で、日本政府と議会は法に依拠した適切な対応をとれるか? 南シナ海でアメリカとの協力は遅れ、PKO法でも職員の誘拐という事態に対応できない。

安全保障をめぐる内外のコンセンサス形成は、こうしたシミュレーションの積み重ねと情報交換、他国の考え方や政治の限界を理解する能力に依存します。

****

防衛省の研究員と宮家は、安倍首相のロシア「非公式」訪問について議論していました。国際政治はグローバルな配置を観て動く。プーチンと合意することだけが目標ではない。日本にも国際政治を動かす指導者が漸く現れた、と安倍首相を称賛します。

ロシア経済は落ち込んでおり、財政も、ルーブルの価値も、危険な状態にあります。ウクライナへの介入で、欧米との関係は極めて悪い。「原油価格の下落がもたらしたロシアの経済危機が北方領土を解決するテコにはならない。」・・・ではテコは何か? 「地政学的な危機が生じたとき、領土問題は解決する。それは中国だ。」

プーチンは何を目指すのか? 政権の維持と、強いロシアの実現である。つまり、安倍晋三や金正恩と同じです。(STEPHEN M. WALTの「5分で学ぶ国際関係論」も参照。今週のReview 5/26/2014

****

政治は権力を維持する(あるいは、次の戦争に勝利する)ことがすべてを正当化する、という視点から始めても、最後は、何のための権力なのか、という問いを生じます。

「アラブの冬」というThe Economistの記事は、「アラブの春」で何一つ変わらなかった、という悲観を、逆説的な形で否定します。中東の秩序を変える新しいモデルは、イスラム国家にある、と。それは「唯一、革命の波が巻き起こした新しい当地のモデルである。」

ISの法はグロテスクであるが、カオスの中で秩序を希求する人々にとって、その迅速で厳格な正義は魅力的である。ISは、自分たちの兵士の中でも腐敗を決して許さない。そして、非常に限られたものであるが、医療、教育、社会保障のような公共サービスに焦点を絞っている。ISは、アラブ諸国の高度に中央集権した支配体制ではなく、地方の監督者に大幅に権限を与え、商業を国家管理するより、むしろ規制(促進)し、課税する。

そこに欠けているのは、人権や多様性の尊重、公的な責任のシステム、コーランの警句によって正当化されたカリフではなく、人民の意思と利益を反映する立法過程である。「アラブの春」は、まさにこうした民主主義の要素を求めた。

国際政治をめぐる戦争と革命のシミュレーションに、指導者だけでなく、私たちも参加することです。

******************************