IPEの果樹園2016
今週のReview
1/18-23
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中国経済から広がる不安 ・・・トランプの政治的ダイナミズム ・・・メルケルにとっての難民危機 ・・・新しい地政学の時代 ・・・北朝鮮の核実験 ・・・金融市場と金融政策 ・・・第4次産業革命 ・・・中国の開発モデル ・・・日本のデフレ世代 ・・・イギリス国歌を新しくする?
[長いReview]
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主要な出典 Bloomberg, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times,
The Guardian, NYT: New York Times, Project Syndicate,
SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, そして、The Economist (London)
[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
l 中国経済から広がる不安
FT January 7, 2016
China should lift demand to restore
market calm
Bloomberg JAN 7, 2016
China Has the Tools to Arrest Stock
Slide
By
Mohamed A. El-Erian
NYT JAN. 8, 2016
When China Stumbles
Paul
Krugman
中国発の世界危機になるのか? 数字はそれを示していないが、グローバルな感染は、しばしば数字を超えた影響を示す。
中国経済は深刻な問題に直面している。しかし、それがどの程度まで深刻かは、統計が信頼でないのでわからない。中国の経済モデルは、高貯蓄と低消費において、その高投資を正当化できるほど高成長が続く限りだけ、持続可能であった。それは中国に膨大な低雇用の労働者が地方にプールされているときだけ実現できたのだが、もはや存在しない。深刻な不況を避けながら、低成長に移行しなければならない。
そのための合理的な戦略は、より大きな購買力を家計が得るまで、信用の供与とインフラ投資によって時間を稼ぐことであっただろう。しかし、残念ながら、中国は信用の膨張とインフラ投資をしただけで、家計の所得を増やさなかった。債務は膨張し、中国版の「シャドー・バンク」がそれを行い、金融崩壊の脅威を生じている。
中国がハードランディングすれば、世界に波及する。ジョージ・ソロスは2008年に似ているという。
しかし、私はそうならないと思う。確かに中国は世界の製造業の4分の1を占めるが、その輸入額は年間2兆ドルを超える程度である。中国を除いた世界のGDPは60兆ドルであり、たとえ中国が大幅に輸入を減らしても、その影響はわずかであろう。
金融の取引を通じた波及も少ない。中国政府は国際的な資本取引を規制しており、アメリカのサブプライム危機がヨーロッパの銀行には大きく影響したのに、中国は影響を受けなかった。中国の株価が下落しても債務危機が起きても、それは国際的に波及しない。
ただし、世界の景気変動は、当然そうである以上に、同時化している。たとえば、欧米の景気は同時に悪化したり回復したりする。それは金融的なリンク以上に、心理的な感染が生じるからだ。経済に影響する主要なニュースが、他国の投資家心理にも影響する。中国の事件にも、それが生じるだろう。
もし中国でショックが生じても、われわれは金融政策や財政政策でそれを吸収できるはずだ。しかし、アメリカ連銀が金利引き上げを控えても、ECBが金融緩和を続けても、すでに効果は限られている。オバマ政権やドイツ政府は、財政刺激策をとらないだろう。
中国の減速が波及しないことを願うばかりだ。
Bloomberg JAN 8, 2016
China Heightens the Contradictions
By
Michael Schuman
1980年代から続く改革開放の方針には、経済の管制高地を政府が支配することも含まれていた。経済が発展するにつれて、この2つは矛盾するようになった。中国の政策担当者たちは市場に対する信頼を確立できるだろう。株価も、為替レートも、国有企業と民間企業との競争も、市場にゆだねるべきだ。ただし、それは成長をもたらすことで正当性を得ている政治体制にとって、生存の危機を意味する。
NYT JAN. 8, 2016
China’s Obsolete Economic Strategy
By
THE EDITORIAL BOARD
Bloomberg
JAN 10, 2016
China
Isn't Headed for a Financial Crisis
By Christopher Balding
次の危機はどこから始まるのか? 中国に注目が集まったが、それは間違いだろう。世界金融危機では、債務の膨張、財政赤字の累積、資産バブルなど、多くのリスク要因があったし、それらが相互に結び付いた。
中国にも、債務の急速な増大、財政赤字のGDP比の高まりがみられる。しかし、1.リスクの水準が高いだけで危機にはならない。日本の債務水準は中国をはるかに超えている。住宅価格の高騰も危機前のアメリカより長く続いている。2.危機には多くの要因が働く。そこに単純な関係がない。中国政府には多くの対策・介入手段がある。即座にドミノを抑えるだろう。3.政府は金融危機が政治的な権威を脅かすことを強く意識している。行動しないことはあり得ない。
むしろ政府が金融危機を回避することで、成長を長期の停滞にしてしまうかどうか、が問題だ。
FT January
12, 2016
Renminbi
fall reflects China’s transition
Henny Sender
NYT JAN.
12, 2016
The Source
of China's Coal Dependency
By HAIYANG XING
FT January 13, 2016
Capital flight is at the core of
China’s dilemma
FT January 15, 2016
Good news from China’s markets
Stephen
Roach
中国経済は、グローバルな株価乱高下について責められている。それは過度の単純化だ。中国の影響は限られている。そこに現れているのは2つの変化である。すなわち、新しい成長モデルへの移行と、それに必要な堅固な金融インフラの構築である。
前者の、製造業からサービスへの移行は、予想以上に成功している。国際商品市場を通じたスーパー・サイクルの終焉は対外的な影響を与えるだろう。原油価格の暴落はその顕著な例だ。
しかし、より重要な問題は金融インフラの構築が遅れていることだ。2015年の株価下落でそれは強まった。政府は株価を買い支え、サーキット・ブレーカーなど、様々な価格の管理を試みている。それは大きな混乱と失望である。
他方、人民元の改革は別だ。人民元の為替レートは長期の増価を経て、今ではほぼ均衡水準になっている。かつての莫大な外貨準備も減少してきた。最近のドルに対する減価にもかかわらず、2005年半ばに比べて、人民元は25%も強くなったままだ。実質実効為替レートは10年で50%も増価した。
中国の人民元は大幅な減価に向かわないだろう。その理由は、1.世界経済が停滞する中で、人民元が安くなっても輸出は増えない。2.人民元安は、輸出から国内消費に向かう成長モデルの転換に反する。3.IMFが人民元をSDR構成通貨に加えたことに反する。
中国のバブル崩壊や人民元安を恐れるのは誇張である。むしろ、中国が大幅な金融緩和に向かうほうが問題かもしれない。
FT January 14, 2016
Beijing’s meddling is shaking the
markets
Zhiwu
Chen
l オバマの銃規制
NYT JAN. 7, 2016
Barack Obama: Guns Are Our Shared
Responsibility
By
BARACK OBAMA
Bloomberg JAN 8, 2016
Obama's Gun Show Misfire
By
Francis Wilkinson
l サウジアラビアと石油の不安
FP JANUARY 7, 2016
Fear and Loathing in Saudi Arabia
BY
KENNETH M. POLLACK
イランと同様に、サウジアラビアで何が起きているか、われわれにはほとんど詳しい知識がない。外部からサウジ王室について高度な情報を得ることは非常に難しい。「知っているものは話さないし、話している者は知らない。」
サウジ王室の政策に劇的な変化が起きている、とわれわれはどうして考えるのか。第1に、その政策は内外の関心を織り合わせてできているが、今やそれらが圧倒的に恐怖心・不安で支配されている。外部の諸問題が国内状況を変化させ、国内に脅威を生じさせる、と恐れているのだ。
より広い意味で、2011年以来、中東地域の不安定性が累積して、危機をサウジ王室がコントロールできなくなってきたことを恐れている。「民衆」はますます支配者たちに抗議し始め、その転覆さえ試みるようになった。内戦がシリア、イラク、イエメン、リビアに広がり、難民、テロリスト、武装集団、強烈な危険思想が近隣諸国に流出している。
サウジから見れば、それは中東地域のシーア派が活性化していることであり、イランが煽動しているのだ。サウジのシーア派もそうだ。サウジの治安部隊が東部で死傷者を出している。アメリカは無視しているが、サウジはその戦いをはるかに重大なことと考えている。
次に、サウジは原油価格の下落を恐れている。アメリカのシェール・オイルを市場から締め出そうとして、サウジが意図的に生産量を削減しないのだ、と皆は考えている。しかし、サウジはもはや原油市場をコントロールできない。多くの供給国があり、リヤドが生産調整を試みているときでも、OPEC諸国はそれを悪用した。サウジは市場シェアを失うだけだった。今度は、市場シェアを維持することが目標だ。その結果、底辺への競争が起きた。原油からの収入が激減している。
原油価格の下落は経済の緊縮を必要とする。ガソリンなどへの補助金を削減している。しかし平均的なサウジ国民はそれを自分たちの権利とみなしている。緊縮は非常に不人気であり、社会不安が広がっている。彼らの不安は、ギリシャを観ればわかる。
他方で、各地の内戦に対してサウジはスンニ派を支援するために財政移転や軍事介入をかつてない規模で増やしている。その費用は莫大だ。シリア。イエメンでは数百億ドル、イラクやリビアでもそれより少ないが介入している。それは政治系投資ファンドから支払っているが、このままでは3年で枯渇する。その前に国内の政治混乱が生じるだろう。
こうしたことの背後にはイランがいる、とサウジは考えている。制裁が解除されたイランは、その資金を介入に使うだろう。サウジはイランの力や外交を過大評価している、とアメリカは考える。しかし、サウジには、すべてがペルシャ帝国の復活を目指すイラン政府の陰謀に見える。
最後に、サウジ王室はアメリカが自分たちを見捨てたと、強い不満を感じている。露骨には言わないが、サウジや湾岸諸国の人々は、オバマ大統領が中東に関して全く無知か、愚か者だと考えている。ワシントンはサウジに何の助けにもならないし、リビアやシリアでは何も効果的なことができないのだ。そうであれば、中東地域を安定化する役割はサウジが担うしかない。そう彼らは考えている。
こうして、ワシントンには、中東の事態がますますカオスに向かっているように見えても、サウジアラビアの視点では正しいことをしているのだ。
FP JANUARY
11, 2016
Sunnis vs.
Shiites, Abadi vs. Maliki, Kurds vs. Everyone
BY DOUGLAS OLLIVANT
The Guardian, Wednesday 13 January
2016
The Guardian view on the geopolitics
of falling oil prices
Editorial
原油価格の記録的な高騰も、急落も、過去数十年間の国際関係と政治的な展開に重大な影響を与えた。
1970年代のオイルショックは、グローバルな地政学を変化させ、中東に新しい重大な意味を与えた。1980年代半ばに原油価格が暴落したとき、原油輸出からの歳入が減ったことがソ連の崩壊を確実にした。また1990年にサダム・フセインがクウェートを占領したことも財政の逼迫が原因であった。アルジェリアの通貨価値は急落し、イスラム主義者が選挙で勝利することになったし、その後のクーデタと内戦につながった。確かにソ連の崩壊は西側に利益となったが、原油価格の下落がアラブ諸国や中東に平和と安定をもたらすものではない以上、それを単純に歓迎するのは間違いだ。
現在の原油価格下落も、新興諸国の成長を助け、不況を緩和すると期待されている。国際秩序の利益保持者たちを強化するだろう。しかし、ブラジルの民主主義を助けても、他方で、アフリカで最大の石油産出国であるナイジェリアでは、聖戦主義者の脅威が強まっている。
原油価格の下落は、西側と敵対する諸国のパワーを抑えるだろう。ロシアはヨーロッパや中東で介入を強めてきたが、今や難しい財政危機に苦しみつつある。ヴェネズエラもそうだ。
しかし、サウジアラビアが、イランと対抗して原油価格の下落を導いたとしても、自国内や湾岸諸国の不安定化も招いてしまう。それは好戦的な傾向を強めて、短期的には国内的緊張から目をそらすために紛争が激化するだろう。
ロシアや中国の反応も予測できない。
Project Syndicate JAN 13, 2016
Toward a New Islamic Golden Age
NIDHAL
GUESSOUM
FT January 14, 2016
The House of Saud’s sectarian venom
spreads across Middle East
David
Gardner
l トランプの政治的ダイナミズム
NYT JAN. 8, 2016
What Donald Trump Owes George
Wallace
By
DAN T. CARTER
トランプDonald J. TrumpとウォレスGeorge
C. Wallaceは似ている。ウォレスは、深南部出身の政治家で、1964年から1976年まで大統領候補になるチャンスがあった。2人は弁舌によって大衆を熱狂させることができた。トランプが去った後も、それが勝者であれ敗者であれ、未来の政治を変えるだろう。
2人には、アメリカ政治に定期的に現れる不安や憤慨に火をつける天賦の才能があった。
市民権運動に対して敵意を示すのはウォレスの弁論活動の一部でしかなかった。彼はある種の「ポピュリスト」であり、勤労に励む、白人のクリスチャンを擁護した。しかし、彼の敵は19世紀の銀行家や独占企業ではなかった。彼はさまざまな敵を創り出したのだ。ドラゴンを創って、ドラゴン退治をした。
彼は群衆と一緒にエネルギーを爆発させて敵を創った。・・・ひげだらけのヒッピー、ポルノ写真家、神を侮辱するインテリ、裏切り者のベトナム反戦運動、福祉に頼るごく潰し、臆病な政治家、視野の狭い大学教授。
テレビ放送でも、ウォレスの支持者が示す暴力沙汰は魅力いっぱいであった。特に、支持者とデモ隊との間で椅子が飛び交ったときからは。その興奮について、まるでジャニス・ジョプリンのコンサートだ、とジャーナリストは語った。
ウォレスもトランプもマイノリティーを標的にした。アイルランド人、カソリック、アジア人、東欧からの移民、ユダヤ人、イスラム教徒、ラテンアメリカ系移民。こうした、実在するか、想像したかに関係なく、敵どもを粉砕することで、決して存在したこともない理想的な過去へ戻れる、と約束した。
彼らは、政治家の婉曲話法を否定した。それが群衆に受けたのだ。「彼は皆のわかる言葉で話している」と、トランプの支持者は言う。「ジョージはそのままのことを言うだけだ。それが官僚や市民運動を攻撃しても、それでどうだというのか。彼は本当のアメリカ人のために立ち上がり、闘っている」と、ウォレスの支持者は語った。
ウォレスは、ニューディールの民主党員として政治のキャリアを始めた。しかし、民主党に投票する人々の持つ、連邦政府への不満を吸収したその姿勢は、のちのロナルド・レーガンが示す温和な反政府のイデオロギーにつながるものだ。
ウォレスもトランプもホワイトハウスには入れない。しかし、アメリカ政治の将来に深い影響を残す。共和党候補者たちの話を聴けば、分かるはずだ。
Project Syndicate JAN 8, 2016
Carpet Bombing History in America
IAN
BURUMA
FT January 10, 2016
America’s election year terror risk
Edward
Luce
アメリカ大統領選挙中に、パリで起きたようなテロ事件が起こるかもしれない。
ある者にとってのテロリストは、他の者にとっての自由の戦士である。15年間、アメリカ人は9・11の再発を恐れてきた。恐怖は心が生み出す亡霊である。大統領選挙まで10か月となって、有権者の意識の中で、テロが経済を圧倒している。社会の暗い本能が強くなる。
オバマ大統領は、銃規制を主張するときだけテロを強調するが、そのたびに銃の売り上げは伸びている。オバマ政権の下で、銃の生産者たちは黄金期を楽しんでいる。彼が政権についたときに比べて、アメリカ人が買う銃器の数は倍増した。
多くの者は自衛を考えている。San BernardinoやParisのテロ事件以降、銃規制への支持は低下している。
オバマは、「ラディカル・イスラミストのテロ」と呼ばない。「暴力的な過激主義者」という呼び方にこだわる。それは「政治的な正しさ」に縛られているという印象を、右派だけでなく、国民に与えている。当たり障りのない言葉を使うほど、それはオーウェル的なレトリックに聞こえる。
対照的に、共和党員たちは意識的に大衆の恐怖を煽っている。トランプも、クルーズも、移民の排除や難民への厳しいチェックを主張する。常識的に考えて、彼らが共和党の大統領候補になることはあり得ない。ヒラリー・クリントンへの支持は高いから、たとえどちらかが候補になっても、彼女には勝てない。
しかし、パリのようなテロ攻撃が起きればどうか?
San Bernardinoのような2人組がいる。彼らは大量殺戮を行うに十分な火器を蓄えている。
政府機関の情報収集に関する左派党派の論争が、ますます市民たちを不安にし、政府への反感を強めている。政府からの疎外感を抱き、テロリストが生まれる。ISISが望んだように。
NYT JAN. 13, 2016
The Age of Protest
Thomas
L. Friedman
l 思想家たち
FT January 8, 2016
Life lessons from original thinkers
Simon
Kuper
l メルケルにとっての難民危機
FT January 8, 2016
Merkel cannot afford to see another
Cologne
メルケルは「多文化主義」に批判的であった。移民たちは少なくともドイツの基本的な価値を受け入れ、民主主義や人権、宗教や性別に関する平等を認めなければならない。
しかし、メルケルの称賛される開放政策は、同時に、社会統合のための集中的な努力を伴うものでなければならない。ドイツは、ケルン事件の再発に耐えられないだろう。
SPIEGEL ONLINE 01/08/2016
Mobs and Counter-Mobs
Pitfalls, Prejudice and the Cologne
Sexual Assaults
A
Commentary by Sascha Lobo
SPIEGEL ONLINE 01/08/2016
An Interview with Cologne's Mayor
'I Have Been Subjected to a Ton of
Ridicule and Criticism'
Interview
Conducted By Frank Hornig and Barbara Schmid
FP JANUARY 8, 2016
Could Cologne Unravel European
Refugee Policies?
BY
SIOBHÁN O'GRADY
NYT JAN. 8, 2016
Germany’s Post-Cologne Hysteria
Anna
Sauerbrey
彼らの文化や世界観を変えることができなければ、統合化は失敗する。
SPIEGEL ONLINE 01/08/2016
Chaos and Violence
How New Year's Eve in Cologne Has
Changed Germany
By
SPIEGEL Staff
NYT JAN. 9, 2016
Germany on
the Brink
Ross Douthat
The Guardian, Sunday 10 January 2016
After Cologne, the uneasy question:
is cultural coexistence still possible?
Will
Hutton
ヨーロッパには、毎日、3000人の難民が到着する。その多くはドイツに向かう。ドイツやヨーロッパの政治が逆転することを不安に思う、そして恐怖を感じるのは避けられない。ヨーロッパの将来はどうなるのか?
FT January 13, 2016
Cologne and the immigration
sex-ratio dilemma
Roula
Khalaf
NYT JAN. 13, 2016
Lessons From the Cologne Assaults
By
THE EDITORIAL BOARD
l 国際通貨・資本市場
NYT JAN. 8, 2016
Currency Devaluations by Asian
Tigers Could Hinder Global Growth
By
LANDON THOMAS Jr.
中国が人民元の為替レートが減価させたことは、世界中の投資家たちに新しい不安をもたらした。アジアの虎と呼ばれる、韓国、シンガポール、台湾の間で、通貨の切り下げ競争が始まるのではないか? そしてドル高が続く中で、世界中の通貨が切下げに巻き込まれる。
VOX 09 January 2016
International currency competition
redux
Cathy
Zhang
FT January
12, 2016
What
market turbulence is telling us
Martin Wolf
FT January 14, 2016
Shipping’s globalisation woes
Gillian
Tett
l イギリスのEU離脱論争
FT January 8, 2016
We Tories are all Eurosceptics now
John
Redwood
The Guardian, Thursday 14 January
2016
Brexit: the golden opportunity that
could become Sturgeon’s nightmare
Colin
Kidd
l 新しい地政学の時代
Project Syndicate JAN 8, 2016
The New Geo-Economics
JOSEPH
E. STIGLITZ
昨年は、グローバルな経済システムに根本的な変化が起きた。気候変動に関するパリ協定、BRICSによる新しい開発銀行、中国主導のAIIB、人民元をSDR構成通貨として承認。
しかし、もっとも重大な変化は、WTOによるドーハ開発ラウンドの挫折であった。国内の補助金を温存したアメリカの偽善的なアプローチが障害となった。アメリカとヨーロッパは、分割と支配という戦略に変わった。
アメリカが秘密交渉で達成したTPPは最悪の貿易体制だ。それは「投資条項」において、様々な国内規制や政策による企業の民事訴訟を認めるものになった。環境や衛生、安全に関する規制、そしてマクロ経済の安定化に必要な規制でさえも、企業は制限できる。
その最恵国待遇を認める条項は、底辺への競争、を強めるものである。オバマ大統領が主張してきたことと、まったく逆の体制だ。アメリカ企業による、アメリカ企業のためのグローバルな貿易と投資のルールができた。
緊密な統合化が進んでも、それがグローバル・ガバナンスを改善するとは限らない。TPPは弱肉強食のルールであり、パリ協定がグローバルな協力に向けた先駆けなのかも知れない。
FP JANUARY 8, 2016
What Would a Realist World Have
Looked Like?
BY
STEPHEN M. WALT
なぜアメリカ外交政策の論争にもっとリアリストの意見が重視されないのか?
リアリズムは、過去25年間、リベラルやネオコンザーバティブに比べて、顕著に優れた予測を行ってきた。しかし、冷戦終結後、大統領たちは繰り返し、リベラルやネオコンザーバティブの政策を採用し、リアリズムの提言を無視した。その結果は、惨憺たるものだった。
もしクリントン、ブッシュ、オバマがリアリズムに従っていたとしたら、アメリカと世界は改善できたのか? その通りだ。
リアリズムは、パワーを政治の中心問題と考える。世界政府は存在せず、自分たちを守るものは誰もいない世界で、諸国は安全保障を最も重視しなければならない。リアリストは軍事力を国家の独立と自立を確保するために不可欠のものと考える。しかし、軍事力は粗雑な手段であって、予想外の結果をもたらすことも知っている。諸国家はナショナリズムやその他のローカルなアイデンティティーを信じている。また、利己的であり、利他的に行動せず、信頼することはむつかしい。強力な国家の行動を規範や制度は制限できない。
こうしたリアリズムに従っていたら、第1に、2003年のイラク侵攻はなかったはずだ。アルカイダの掃討だけに集中し、数千人のアメリカ兵や数十万人のイラク人は死ななくて済んだ。イランの影響は制限され、イスラム国家も存在しない。
第2に、1990年代のNATO拡大は止めただろう。かつてケナンが警告したように、それがロシアとの関係を悪化させるのは明らかだった。グルジアやウクライナを西側に統合することも間違いであった。モスクワはそれを嫌ったし、妨害するだけの力を持っていたからだ。
第3に、ペルシャ湾における2重の封じ込め戦略を採用しなかっただろう。サウジアラビアとイランの対立を利用して、アメリカはもっと有利に行動したはずだ。サウジアラビアに米軍が駐留したのは失敗だった。
第4に、アフガニスタン、第5に、イラン核合意、第6に、イスラエルとの関係、第7に、リビアやシリアの独裁者たち。
しかしアメリカの主要紙、the New York Times, Washington Post,
and Wall Street Journalはリアリストを(ほとんど)排除してしまっている。
NYT JAN.
11, 2016
The Limits
of American Realism
Roger Cohen
Stephen M. Walt (a
professor of international affairs at Harvard University)はリアリズムを強く支持するが、リアリズムが犯した失敗を無視している。ユーゴスラビア内戦だ。約14万人が殺害され、数百万人が難民となった。
当時、元国務長官James
Bakerは、戦争に参加するのを拒んだ。ホワイトハウスは行動しなかった。そこにはアメリカの死活的な利益もなかった。権力政治は薄っぺらなもので、殺戮によってもアメリカは動じなかった。1995年、Srebrenicaでセルビアの殺人者が8000人の住民男性を殺した。アメリカが介入するまで、3年間もサラエボでは女性や子供たちが吹き飛ばされた。クリントン大統領が方針を転換し、NATOが介入し始めて、やっと内戦終結に向けた交渉が進んだのだ。
ベビーブーマー世代にとって、それはヨーロッパの平和をアメリカ軍が血であがなった経験であった。その後、単純なリアリズムを称えることは説得力を失った。冷戦終結後のNATO拡大もそうだ。Waltの非難は、リアリズムの典型的なシニシズムである。
リアリズムは民衆の苦しみを軽視する。リアリズムが外交を考える出発点であるとしても、より多くの時間をかけて、リアリズムの限界について考察するべきだ。
YaleGlobal,
12 January 2016
The US
Faces Rival Powers Waging Hybrid Warfare
Richard Weitz
FT January 14, 2016
Globalisation 2.0 — an optimistic
outlook
Lionel
Barber
西側の支配的なグローバリゼーション1.0から、グローバリゼーション2.0に移行した。中央銀行によって管理された回復を終えて、政治家の改革が前面に現れる。19世紀の初めに似たグローバリゼーション2.0は、より多くの改革派によって担われる。
(後半に続く)