IPEの果樹園2016

今週のReview

1/11-16

 *****************************

政治指導者たち ・・・2016年の政治危機 ・・・ロボットへの課税 ・・・2016年の世界経済 ・・・サウジアラビアとイランの対立 ・・・ISISのテロに対抗する ・・・中国から世界の株価急落 ・・・中国のランニング熱 ・・・中国が描く世界秩序 ・・・ケルン暴行事件 ・・・過激な大統領候補を求める ・・・移民のための国際システム

 [長いReview]

******************************

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]


l  政治指導者たち

FT January 3, 2016

Obama’s high stakes final year

Edward Luce

オバマが任期最後の年に何かできることはほとんどないだろう。アメリカ政治権力の重要機関、上下両院と州知事の3分の2、最高裁判所判事の多数、を共和党が支配しているから。

トランプの愚かさを批判しても、その支持者たちは憤慨するばかりだ。彼と支持者を分離しなければならない。トランプは、時代に取り残されることを恐れる人々に大げさな話を売り歩く行商人である。彼らの多くは大学を卒業しておらず、経済の不確実さを強く感じている。嘲笑されていると感じている。彼らを蹴り上げても無駄だ。

オバマは論調を変えるべきだ。トランプの支持者たちは歴史の間違った側、敗北する流れの中にいる、と知らせることだ。彼らを宥和して取り込むことは、アメリカ政治の流れを変えるために必要だから。もしそれができなければ、次にアメリカ最初の女性大統領が誕生しても、優れた政策は実行できない。オバマが成し遂げた社会保障制度も侵食され、崩壊するだろう。

アメリカのリベラルが勝利することは、もはや、必然ではないのだ。オバマの任期中に権力機関の多数派を握り、さらに2020年選挙の勝利に向けて、共和党は投票の境界線を書き直した。

トランプの支持者たちが叫ぶ不満の1つは、アメリカには強い指導者が必要だ、ということだ。オバマはあまりにもしばしば傍観者であった。ISISが拡大しても、アメリカ国内でイスラム過激派のテロが起きても、ロシアのプーチンや中国の習近平が挑戦しても、オバマの対応は受け身であった。適切な措置は取られたが、有権者は評価していない。

巧みな形で指導力を示しても、それらは継ぎはぎにしか見えない。世界の舞台で強いアメリカを示す年にするべきだ。同様に、アメリカ議会ではポール・ライアンが下院議長になった。前任者と違い、彼は大局的に考えるプラグマティスとである。アメリカの政治システムが機能することを示すために、税制改革なら、オバマからの呼びかけに応じる余地がある。


l  ロボットへの課税

FT January 3, 2016

Property levies would ease the robot attack on income tax

Neasa MacErlean

古代ローマの支配者たちは所得税を、避けるべき手段、とみなしていた。いずれにしても、賃金に課税することは大きな歳入をもたらさなかった。最も働いたのは人口の15から25%を占める奴隷たちであったから。彼らには賃金も所得もない。

所得ではなく、ローマ人は所有に課税した。市民たちは何に対しても所有に税を支払った。土地、そこに立つ住宅、家畜、金貨、奴隷。「ロボット」は、現代経済において、その最後に追加される。

現代の西側税制は、その多くが1950年代に設計された。当時、人々は、生涯にわたって1つ、フルタイムの仕事に就いた。こうしたルールは、短期契約、パートタイム、低賃金自営業、証券管理、グローバリゼーションには適当でない。

Oxfordの研究者たちは、今後数十年で、仕事の35%が機械工学によって失われるだろう、と予想している。それは労働者たちにとってだけでなく、徴税を行う政府にも心配なことだ。イギリスの納税領収書の半分以上が、所得税と国民保険から生じる。政府は、仕事のパターンが変わっても、伝統的なフルタイム労働者に代わって、自営業者が支払うだろう、と思っている。しかし、金融危機後、自営業者が増えたけれど、その平均所得は減っており、ロンドン外の雇用の23%は生存賃金を下回っている。

もし労働者に課税することが難しいのであれば、ロボットに課税してはどうか? ロボットを数えて、その所有者が毎年、税金を徴収される。しかし、自動化はさまざまな形で起きるから、人間の労働を置き換えたロボットの創った価値を測定するのはむつかしい。むしろ、より広範に所有に対して課税することだ。イギリス労働党の議員は、不平等の対策として、英米、そしてOECD諸国が住宅所有に課税することを提案した。

税金の重要な目的の1つが、所得の再分配である。仕事を失った人々を壁の向こうに追い出すのか、それとも、その生活福祉や再訓練に支払うのか? ローマ時代には、すべての市民がわずかでも給付を受ける資格を認められていた。

所有に対する課税は、技術がもたらす効果に対して、すべての者が利益を共有するような財源を政府に与える。すべての人々が市民であり、ロボットは我々の奴隷である。その逆ではない。


l  2016年の世界経済

Project Syndicate JAN 3, 2016

The Great Malaise Continues

JOSEPH E. STIGLITZ

金融危機後に、私が懸念したような「大いなる沈滞the Great Malaise」が起きているのは、所得分配の不平等化と財政緊縮を強めて、総需要が不足しているからだ。

さらに、世界は構造転換の問題も抱えている。中国は国内需要に依拠した成長に転換しなければならない。また、中国からの需要で国際商品価格が高騰したことを、自国の産業構造多様化に結び付けなかったアフリカやラテンアメリカの資源豊富な諸国は、価格下落に苦しむ。

世界には満たされていないインフラ投資の需要、グローバルな気候変動に備える投資の機会が多くある。しかし、長期の貯蓄と長期の投資とをつなぐことに不適当な既存の金融機関はそれに応えようとしない。市場ではなく、政府が積極的に介入するべきだ。

政治的にも、イデオロギー的にも、豊かな諸国の財政再建論がそれを妨げている。アメリカやドイツでマイナス金利を利用して政府が積極的に借り入れ、公共投資するべきだが、財政赤字執着症がそれを妨げている。

FT January 5, 2016

Why global economic disaster is an unlikely event

Martin Wolf

技術革新によって成長が実現する経済システムは、18世紀後半から19世紀に誕生し、20世紀から21世紀にかけて世界に広まった。しかし、それは一様に世界を豊かにしたわけではないし、すべての人を同様に豊かにしたわけでもない。現実はそれと大きく異なった。

資本主義の拡大が止まるとしたら、それはマルサスがシュンペーターを圧倒するときだ。技術革新よりも資源制約が強くなる。

世界経済は1900年以来、平均年3%で拡大し、その規模は90倍になった。しかし、成長の歴史には大きな不安定さがみられる。その主要な原因は、高インフレ、金融危機、戦争であった。それらは連動することがある。もし世界経済の成長が止まるとしたら、それは大変なことなのだ。


l  サウジアラビアとイランの対立

FT January 4, 2016

The folly of Saudi Arabia’s battle with Iran

サウジアラビアとイランは、スンニ派とシーア派の盟主として、中東地域の政治秩序に大きな影響を及ぼし、シリアやイエメンでは代理戦争を展開している。リヤドがシーア派の著名な聖職者Sheikh Nimr-al-Nimrを処刑したことは、この対立を一気に高め、テヘランのサウジ大使館に群衆が押し寄せて破壊した。両国関係は急激に悪化している。

リヤドがこの処刑を行った意図は明らかでない。Sheikhはテロリストではない。このとき43人のスンニ派テロリストを処刑し、公平さを見せるためかもしれないが、数人のシーア派を処刑した。Sheikhは、サウジアラビアの反体制派で、シーア派への差別やサウジ王室を批判してきた。その処刑は国際的に非難されるべきだ。

他方で、イラン政府が人権を守っているとは言えず、昨年も1000人が処刑された。それはサウジよりもはるかに多い。Sheikhの処刑事件は、イランでますますローハニ大統領の国際開放路線を弱め、強硬派の影響力を強めるだろう。

1年前に権力を得てから、King Salman bin Abdulazizは国際事情について好戦的な方針を採ってきた。リヤドは長い間、シリア、イラク、イエメン、バーレーンで、イランの紛争介入を批判的に見てきた。昨年、アメリカがイランと核合意に達したことが転換点となって、サウジ王室は自国の防衛をアメリカに頼らない方針に転換したのだ。しかし、サウジ経済が石油価格の下落で悪化する中、ISISの脅威を受け、戦略を欠いた行動を次々に迫られた結果、地域紛争が深刻化している。

アメリカのオバマ政権は、不干渉の方針を採っている。地域の大国が安定化に責任を果たすべきだ、と主張する。しかし、リヤドとテヘランが和解しなければ、シリア内戦の終結は不可能だ。アメリカはイランを国際社会に復帰させた。また、サウジアラビアに軍事的・外交的な支援を与えている。アメリカの仲介で両国が対話し、紛争に対して、無思慮ではなく、理性と封じ込めを採用するべきだ。

Bloomberg JAN 4, 2016

U.S. Can Afford to Side With Iran Over Saudis

By Noah Feldman

サウジアラビアとイランとの対立が急速にエスカレートしている。しかし宗派の違い以上に、紛争を激化しているのは、アメリカが湾岸地域において、伝統的なサウジとの同盟関係から、次第にイランの宥和を重視する姿勢に転換する、というサウジの不安である。それは、ある意味で、正しいのだ。アメリカがイランを同盟国として受け入れることはまだないだろうが、両国の間で共有する利益が増えている。

Nimr al-Nimrの処刑は、サウジ国内のシーア派や近隣諸国への警告であった。また、サウジが独自に行動することを示すものでもあった。2流の市民権を受け入れず、自治や独立を要求するal-Nimrの処刑は、イランの強硬な抗議を予測した上で、サウジが決断したことだ。アメリカが不快に思うことも計算したはずだ。

アメリカが何を考えようとも、サウジは自国の安全保障に関して単独に行動することを示した。同時に、この処刑はサウジがどれほど孤立感を深めているか、を示すものだ。

サウジはやりすぎた。これに対するイランの反応は優れたものだ。1.所見を非難し、大衆の気分を乱す。2.憤慨した大衆がサウジ大使館を襲うのを放置する。3.抗議者に発砲し、逮捕者を出して、襲撃の責任を逃れる。

アメリカは、イランとの公式のルートはないが、イラン側に立つ姿勢を示した。それはサウジの不安を証明するものとなった。アメリカの外交担当者は、今回の処刑をだれの責任とみなすか? もしサウジなら、アメリカはイランとの共通の利益を話し合う機会とするだろう。イラクの安定し、イスラム国家の掃討、シリアのアサド政権を追放する。これらはサウジアラビアが望まず、イランが好む方針だ。

次の大統領が、たとえ共和党員でも、あるいはヒラリーでも、イランを欠いたまま重要な目標は達成できないことを知るはずだ。


l  ISISのテロに対抗する

Project Syndicate JAN 6, 2016

Unifying the Struggle Against ISIS

FRANK-WALTER STEINMEIER

1113日のパリで起きたテロ攻撃で、ISISによるテロの脅威は外交の最重要課題になった。われわれの対応は、何よりも政治的なものである。国内の警戒態勢を厚くし、友好諸国との協力を強化する。

西側がなすべきことは、難民たちの社会的な統合化を進めて、彼らを疎外しないことと、ISISの邪悪さを元から断つこと、である。すなわち、イラクとシリアの内戦だ。

ドイツの政治戦略は3つの要素からなる。1ISISと戦う者を支援する。ドイツは、クルド人部隊のペシュメルガに軍備を供給した。それはリスクを伴うが、大きな成果を上げている。2ISISの支配から解放された地域に、住民たちが安心して戻ることを支援する。地域の安定化、警察、学校、電力、水道を整備するために投資する。3.イラクとシリアの住民たちが政治的な見方を共有するように支援する。イラク政府は、少数派のシーア派が政治参加するように、積極的な措置をとった。

5年に及ぶシリア内戦を終結させるために、われわれはウィーン会議に参加する。停戦と政治的な移行過程を交渉するためだ。それが非常に困難であることは、このまま事態を静観し、支援する相手が死滅してしまうのを正当化するものではない。行動することも、行動しないことも、重大な結果を伴い、われわれの責任である。

外交は現実を観なければならない。成功の保証はない。しかし、信念に基づく外交が結果を生む。イランとの核合意や、かつてのベトナム和平は、それを示している。ドイツは、軍事、人道支援、外交における関与を、注意深く統合した戦略を、一貫して追求する必要がある。


l  中国から世界の株価急落

Bloomberg JAN 4, 2016

How to Limit Chinese Markets' Contagion

By Editorial Board

月曜日、市場は大きく動揺し、今年、投資家が最も心配していることを示した。中国のスランプは世界に何をもたらすのか? 成長の減速か? あるいは、金融危機が波及するのか?

2008年のグローバルな金融危機は、アメリカの住宅市場とグローバルな不均衡に関して、それが金融システムに及ぼすリスクを正しく理解し、準備していなかったことで投資家の不安が爆発した。

2つの戦略を進めている。1.あらゆる情報を集めて、どこにリスクがあるか、把握する。2.デフォルトが発生しても、それが金融システムに波及しないように損失を吸収させる。

しかし、各国は情報を共有することについて、どのように実現するのか、整備できていない。そもそも異なった基準で集めた情報を利用できない。また、金融機関を強化し、リスク管理や損失が生じたときに負担できる体制をどうやって作るべきか、国際的な合意はない。

中国の株価が急落すれば、それゆえ、投資家たちの不安が世界に及ぶ。

FT January 7, 2016

China-related worries test global asset prices

Mohamed El-Erian

中国の株価下落について投資家たちが示した不安は,もっと積み重なったグローバルな現象である.

中国の成長モデルの転換を試みている.同時に,中国国内で,株式保有を市民に広めて成長の果実を直接に分配しようとしたことは,株価を過度に上昇させる結果になった.

しかも,中国政府の取る政策は矛盾してしまった.減速する国内成長を刺激し,株式市場に介入し,ブローカーを規制し,中東やアジアの地政学的リスクが生じている.

世界の主要な中央銀行間で政策が乖離し始めている.総需要の不足や慢性的な債務依存を解消する改革が必要だが,各地の政治システムが固まっていない.


l  中国のランニング熱

FT January 4, 2016

China’s middle class runs for its life

Patti Waldmeir in Shanghai

「ランニングは中国の中産階級にとって新しい宗教になった。」 これは5歳の子の母親で、知的所有権の弁護士であるCatherine Sunの言葉である。

30年間、人々を動かしたのは欲望とお金だった。意味のある人生について考えたりしなかったのだ。」 Sun女史は、中国最初の7大陸でフルマラソンを完走した女性である。「しかし、この7年か8年で、中国の中産階級にとって、マラソンが新しい宗教になった。経済的に自立した者は、より精神的な思考を始めるが、中国には宗教がほとんど存在しない。」 彼女の結論は、「舗道を踏みしめて走ることが、空っぽの人生を埋める、中産階級に許された精神的な何ものかなのだ。」


l  中国が描く世界秩序

FP JANUARY 5, 2016

What Type of Great Power Does China Want to Be?

BY ROBERT A. MANNING

中国の外交に変化がみられる。敵対的、攻撃的な姿勢が非生産的であることを理解し、より強力的な、経済的利益を及ぼすことで影響力や国際的地位を高める外交に向かうのか?

東南アジア・南シナ海でも、中東圏でも、中国は積極的に役割を果たしつつある。IMFSDRに人民元が参加し、中国も加わって気候変動に関するCOP21のパリ協定が成立した。アメリカや既存秩序のルールを受け入れて、「責任ある利益共有者」になろうとしているようにも見える。しかし、それは中国を中心とした国際秩序を目指す戦術に過ぎないのか?

まだ10年、20年を観なければ、わからない。

FT January 6, 2016

The US world order is a suit that no longer fits

Fu Ying

今、暴力が暗黒の中から抜け出した。国際テロを観れば、道教の信者なら言うだろう。地政学的な対立もよみがえっている。

アジアでは、このわれわれの大陸で中国を排除する、アメリカの「アジア旋回」戦略が中国と近隣諸国との領土紛争を加熱した。経済面でも、アメリカは支配的な地位を守ろうとしている。主要な経済圏を無視して、アメリカはTPPなどの貿易協定を推進した。世界は排他的な経済ブロックに分解していくのか?

アメリカが支配する西側中心の世界秩序は、人類の進歩と経済成長に大きな貢献をした。しかし、それは過去の話だ。今、その同じ秩序があたかも大人が子供の服を着たようになっている。それは調整に失敗している。

連戦が終わってから、アメリカは次々に重大な戦略的失敗を犯した。2003年、イラクに侵攻し、現在に至るカオスを創り出した。2010年、チュニジアの政治混乱から、いわゆるアラブの春を広めた。アメリカとその同盟者たちが、ある国から他の国へと、パンドラの箱を開けたのだ。

しかし、国際社会はすでに解決策を探し始めている。

金融危機を鎮静化する重要な役割を果たしたのはG20であった. IMFは人民元をSDRに加え、西側に偏るIMFの改革案をアメリカが認めた。中国主導でAIIBが国際メカニズムの不足を補った。中国とアメリカの2国間合意が、先月、気候変動に関する国連会議の成功につながった。

中国に世界を指導する野心はない。われわれは国内に多くの課題を抱えている。中国は、将来、世界が諸国間の協力で治められると信じている。中国はアメリカと、安定した、建設的な関係を維持しながら、中国の重要性が増すに応じて、より大きな国際的責任を果たすだろう。

11月にキッシンジャーが来たとき、私は彼が若い中国人たちと会うようにアレンジした。彼らの多くは、アメリカと旧秩序におけるアメリカの役割に不満であった。キッシンジャーは辛抱強く彼らの話を聴き、そして尋ねた。「若い人たちに訊くが、もしあなたが世界を動かすチャンスを得たとして、どのような秩序を望むのか?

明確な答えはなかった。われわれは不満であり、批判するつもりだった。しかし、新しい秩序を提案することはできなかった。

われわれが思ったよりも早く、国際的責任は中国人の肩に乗ってきたのだ。われわれは,はっきりとした考えを持ち、それを他者に示して、共通の利益を前進させる必要がある。そして、世界との意見交換を改善することだ。


l  ケルン暴行事件

FT January 5, 2016

Sex assaults threaten to inflame Germany’s migration battle

Stefan Wagstyl in Berlin

大みそかにケルンで発生したドイツ人女性に対する多数の暴行事件は,移民受け入れ政策をめぐる論争を新しい局面に移すものだ.

「アラブ,北アフリカ」出身に見える男たちが中央駅の外に集まっている,と警察は報告していた.1人は強姦の容疑があり,約90件の痴漢行為,数人は群衆に打ち込まれた花火でやけどを負った,という.

法務大臣は集団的に攻撃を組織した可能性に言及し,組織犯罪のまったく新しい次元,と呼んだ.

移民・難民受け入れに反対する保守派や極右の政府批判が激しくなると予想される.メルケルの連立政権を支える与党内でも意見が対立している.CSUの内務担当者は,政府がこの事件について沈黙していたことを批判した.ケルンの犯罪被害者支援団体代表であるMarianne Weichは,犯人をステレオタイプにし,イスラム圏出身の外見を責める傾向には注意した.


l  過激な大統領候補を求める

NYT JAN. 6, 2016

Up With Extremism

Thomas L. Friedman

トランプが政治的なイノベーターであるとしたら、それはリベラルを攻撃し、右派と左派の過激な主張を融合させて、アメリカの衰退を逆転すると約束したことだろう。

もしトランプに学んで、私が大統領に立候補するとしたら、リベラルでも保守でもなく、リバタリアンでもセントリストでもなく、真の超党派的な過激派として、次のような政策を2020年までに実現するだろう。

1.国民皆保険制度を実現する。カナダ、オーストラリア、スウェーデンが実行しているのだから。そしてアメリカ企業は医療保険ビジネスから撤退させる。

2.高所得者への税額控除システムを拡大し、国民の最低所得を保障するように、低所得の労働者へマイナスの所得税を実施する。われわれはロボットも低スキル労働者も、ともに必要としている。

3.共通コア教育の水準を通じて国全体で教育を改善する。より高い水準の教育を求めて、すべての教師に新カリキュラムを学び、習熟する時間を与え、必要な教材を購入する。

4.低スキルの移民を制御すると同時に、高スキル・知識の外国人労働者に対するH-1Bビザへのすべての制限を廃止する。基礎研究を推進する自国の研究所・機関に対する予算を倍増する。こうして良い職場や産業が流出するのを防ぐ。

5.税の優遇や規制緩和で、インターネットの次世代環境を整備する。

6.セミオートマチックの銃や軍用兵器の製造と販売を禁止し、買い取る。

7.起業と雇用の促進。法人税や所得税を廃止し、その代わりに、炭素税、付加価値消費税(低所得者控除を付ける)、銃弾や甘味飲料への課税。

8.無思慮な金融取引を取り締まり、リスク・テイキングは妨げない。

9.イギリスのように、選挙資金や選挙期間を数か月に制限する。超資産家が候補者を買収することを難しくする。

10.防衛・情報収集の予算を増やす。次のテロを防がなければ、世界のバランスは「秩序」の側から「無秩序」の側に傾く。

低成長、不平等、安全保障上の脅威に直面するアメリカは、ラディカルな解決策を実現する、極端な右派にも、同時に、極端な左派にもなるような、超党派の過激な候補を必要としている。


l  移民のための国際システム

Project Syndicate JAN 7, 2016

A Better Year for Migrants?

PETER SUTHERLAND

ヨーロッパには,国際的に弱い地位にある移民たちを守るシステムが欠けている.ポピュリストたちが恐怖を煽って,戦後のリベラルな秩序を破壊する.

国際社会はシリア難民を受け入れている周辺諸国にもっと財政支援することを決めた.難民たちに住宅,食糧,教育を提供しなければならない.多くの難民が移動の途中で命を落としている.難民がヨーロッパに至る,安全で合法的な経路を確立する必要がある.どれくらい受け入れ,それを準備するか,もっと制度的に決定するべきだ.それは移民とヨーロッパ双方の利益になる.

人々は移民をどのように理解するのか? もし,反動的な政治家が言うように,経済的負担や,安全保障上の脅威と思えば,新しい移民たちは社会参加を拒まれ,その予言は真実になってしまうだろう.しかし,もし移民を積極的に受け入れ,統合化するなら,すべての者が利益を受ける.移民がのがれた国でさえ,送金を受けるだろう.

移民たちを守るシステムを改善せよ.

********************************

The Economist December 19th 2015

Hitler: What the Fuhrer means for Germans today

The Paris agreement on climate change: Green light

The Gujarati way: Going global

(コメント) クリスマス・新年合併号の後半です.ドイツの話に別に紹介します.パリ合意をエコGATTのように描きます.グジャラートから多くのグローバル商人や経営者が出た背景は,宗教や文化より,一種のギルド制にあった,ということです.

******************************

IPEの想像力 1/11/16

ドイツの、ヨーロッパ近隣諸国やイスラエルとの和解は、日本と比べてどうであったのか? ヒトラーの『我が闘争 “Mein Kampf”』が著作権の切れる時期になり、その扱いに困惑するドイツ人の記事を読みました。

ヒトラーの遺産に関するドイツ人の意識は変化した,と指摘しています.1950年代の西ドイツでは,半数以上がヒトラーは優れた政治家であったと回答しました.ただし、もし戦争を始めていなかったなら.その頃の人々は戦後の経済復興に忙しかったのです.

しかし,1960年代,イスラエルが捕らえたアイヒマンの裁判で,ホロコーストの詳細が明らかになり,ドイツ人の意識が変わりました.1963年,22人の元SSが裁かれたとき,2万人がフランクフルトの裁判所に傍聴に行きました.その後,過去に向き合うことが始まり,家族の中にも分裂が生じます.この時代を経験した世代は,息子や娘に親や教師が責められ,彼らは「悲しむこと」ができなくなった、と心理学者は言います.

東ドイツでは,ファシストと戦った正義のコミュニスト,というフィクションが作られ,西ドイツでは,国家や国旗を示さなくなります.若者たちは,国家より小さな地方や,超国家的なヨーロッパにアイデンティティーを求めたわけです.東西再統一で冷戦が終わり,一層の調査が進み、多くの記念博物館が建ちました.

同時に、ヒトラーやナチスは笑劇やマンガ,人の気を引く商品になります.タブーではなくなり,2006年のワールド・カップで、ドイツの国旗を振って応援する群衆が,同時に相手の国の国旗も振りながら,試合を楽しむようになった,ということです.

日韓関係や従軍慰安婦問題の政府間合意,靖国神社はどうなるのか? と日本人なら考えるはずです.そして、中国がアジアの中心になるときまでに、日本人は過去と対峙し、近隣諸国と和解しなければなりません。

ネオナチが現れ,ユーロ危機,ウクライナ危機,難民危機や,大みそかの女性暴行事件などを経て,ドイツ国家のアイデンティティーを求めるナショナリズムが再々転換し始めます.

****

ときに,想うことがあります.

田舎に暮らしたいな、と。都会の暮らしは、長い通勤時間や、大きな組織内の軋轢によって、見えない疲労を蓄積するばかりです。電車の座席を大きく占拠して,若者たちが顕示的な悪趣味を楽しむのも,都会に住む者の病気ではないか,と.

休日には、自然の中をランニングしたい.長い休暇を取って、何日も山を歩き,キャンプしたり、野鳥や植物を観察し,スケッチしたり,写真を撮ったりする.清流で釣りがしてみたい、と思います。

何年かごとに外国に暮らしてみたい。いくつかの国に何度も住んで、外国語を習得できたら、その土地にも慣れ,もっと不思議な趣味や考え方を持つ親しい友人ができないだろうか。

新しいクラブや同好会にも入り、合唱や大工仕事を楽しみたい。音楽会に集まり、楽器を習って演奏し、読書クラブで新しい作風の文学やSFを知れば,紅茶をいれて本を読む。

ジャーナリストとして、戦場を旅したい.超富裕層の暮らしや,難民キャンプ,辺境地,一人で死ぬまで病室に暮らす人たち,老人ホームの部屋で,人は何を望むのか.また,指導者たちは何を目指しているのか.彼らの声を聴いてみたい。

****

イラクやシリアの内戦状態で暮らす家族は、戦火を逃れて何年もさまよっているのでしょう。ナショナリズムも,田舎暮らしの楽しみも,宗教に代わるランニング熱もない,苦しい旅を続けながら,グローバルな正義が救いに来るのを待っているのかもしれません.

****

先週のReviewでは,ケルンの暴行事件を難民の子どもの誘拐・強姦と誤解していました(ネオナチによる難民センター襲撃や放火事件があったので).間違いです.

******************************