IPEの果樹園2016
今週のReview
1/11-16
*****************************
政治指導者たち ・・・2016年の政治危機 ・・・ドーハ・ラウンドの終わり ・・・ロボットへの課税 ・・・2016年の世界経済 ・・・EUの断層線 ・・・国際政策協調 ・・・サウジアラビアとイランの対立 ・・・ISISのテロに対抗する ・・・中国から世界の株価急落 ・・・中国のランニング熱 ・・・中国が描く世界秩序 ・・・ケルン暴行事件 ・・・北朝鮮の核実験 ・・・過激な大統領候補を求める ・・・グローバルな金融的無秩序 ・・・移民のための国際システム
[長いReview]
******************************
主要な出典 Bloomberg, FP: Foreign
Policy, FT: Financial Times, The Guardian, NYT: New York
Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, そして、The Economist (London)
[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
l 政治指導者たち
The Guardian, Friday 1 January 2016
A generation of failed politicians
has trapped the west in a tawdry nightmare
Pankaj
Mishra
歴史家Tony Judtは、その最後のインタビューで、アングロアメリカンの「破滅的」世代について嘆いた。ジョージ・W・ブッシュやトニー・ブレアを含めて、戦争と憎しみの20世紀が終わった後の、甘やかされた世代は、経済面でも政治面でも困難な選択をすることがなかった。この歴史手身に見て軽量のエリートたちは、彼らがどのような決断をしても、それが破滅的な結果をもたらすとは思わなかったのだ。
2004年に、その傲慢さの極みを観る。ブッシュ政権の1人が、イラク侵攻後にこう言った。「我々が行動するとき、われわれは現実を創るのだ。」 なんと下らない連中だ、とJudtは断定した。
現在のアメリカの指導者は、戦争マシーンを使用したがらない点は少し救われる。先月、オバマの支持率が最低になったが、彼は憤慨して、アメリカの指導力とはだれかを爆撃することではない、と語った。
熱狂は、急速に変化して、世界で最も歴史のあるも民主的諸国家を果てしない戦争へ、民族的・宗教的な憎しみとパラノイアに向かった。くだらない指導者とその取り巻き連中に国を委ねたからだ。将来の世代には、その愚かさが理解できないだろう。
FT January
3, 2016
Obama’s
high stakes final year
Edward Luce
オバマが任期最後の年に何かできることはほとんどないだろう。アメリカ政治権力の重要機関、上下両院と州知事の3分の2、最高裁判所判事の多数、を共和党が支配しているから。
トランプの愚かさを批判しても、その支持者たちは憤慨するばかりだ。彼と支持者を分離しなければならない。トランプは、時代に取り残されることを恐れる人々に大げさな話を売り歩く行商人である。彼らの多くは大学を卒業しておらず、経済の不確実さを強く感じている。嘲笑されていると感じている。彼らを蹴り上げても無駄だ。
オバマは論調を変えるべきだ。トランプの支持者たちは歴史の間違った側、敗北する流れの中にいる、と知らせることだ。彼らを宥和して取り込むことは、アメリカ政治の流れを変えるために必要だから。もしそれができなければ、次にアメリカ最初の女性大統領が誕生しても、優れた政策は実行できない。オバマが成し遂げた社会保障制度も侵食され、崩壊するだろう。
アメリカのリベラルが勝利することは、もはや、必然ではないのだ。オバマの任期中に権力機関の多数派を握り、さらに2020年選挙の勝利に向けて、共和党は投票の境界線を書き直した。
トランプの支持者たちが叫ぶ不満の1つは、アメリカには強い指導者が必要だ、ということだ。オバマはあまりにもしばしば傍観者であった。ISISが拡大しても、アメリカ国内でイスラム過激派のテロが起きても、ロシアのプーチンや中国の習近平が挑戦しても、オバマの対応は受け身であった。適切な措置は取られたが、有権者は評価していない。
巧みな形で指導力を示しても、それらは継ぎはぎにしか見えない。世界の舞台で強いアメリカを示す年にするべきだ。同様に、アメリカ議会ではポール・ライアンが下院議長になった。前任者と違い、彼は大局的に考えるプラグマティスとである。アメリカの政治システムが機能することを示すために、税制改革なら、オバマからの呼びかけに応じる余地がある。
l 2016年の政治危機
FT January
4, 2016
The
political shocks that will define 2016
Gideon Rachman
2015年に、ロシアがクリミアを併合するとか、ISISと呼ばれる聖戦主義集団がモスルを制圧するとか、ドイツに100万人の難民が入国するとか、アメリカでトランプの躍進がみられる、などと予想した者はいないと思う。予測できないことを予想するのは無意味な賭けだ。むしろ、現在の趨勢が途切れる可能性を考えることだろう。
2016年で最初に注目されるのは中国だ。過去25年間、政府は経済的繁栄を宣伝し、政治は退屈なままに維持できた。しかし、2016年は変わるかもしれない。
習近平主席の汚職撲滅キャンペーンは、政治的に最も強力な者、最も裕福な者にまで、その追求を広げている。経済成長が減速し、言論の自由を弾圧し、汚染や産業施設の事故が国民の多くに不安を高める中で、それが行われている。中国政治の外面的な平静さの裏には、大衆の中や、脅かされている集団からの、潜在的な反発が高まっているに違いない。
2016年は、ヒラリー・クリントンがアメリカ大統領選挙に勝利するだろう。彼女はエスタブリッシュメントに好まれており、豊富な選挙資金を持ち、支持率も高い。だれもトランプが勝利するとは思っていない。しかし、トランプ旋風が示すのは、アメリカ政治に生じている深刻な変化である。もしトランプが共和党の大統領候補者になれば、政治の地殻変動が生じるだろう。
ヨーロッパでは、イギリスのEU離脱が起きるかもしれない。今、ヨーロッパを支持する理由を示すことは非常に困難だ。また、中東からの難民流入が減少するとは思えない。彼らを促す事情、中東の戦争状態、よりより生活への願い、人身売買や密輸業者の利益、は変わらないからだ。それはEU内で対立を深め、ドイツのメルケル首相がその地位を失う恐れもある。
悪化してきた趨勢が好転する可能性はないのか? それはISISの拡大が終わり、支配地域を失うことだろう。ただし、それに応じてテロ攻撃を強化するかもしれない。
FP JANUARY
4, 2016
10
Conflicts to Watch in 2016
BY JEAN-MARIE GUÉHENNO
シリアや南シナ海だけでなく、トルコやイエメン、リビア、チャド湖地帯、アフガニスタン、南スーダン、コロンビアなど、紛争地帯が拡大することに注意しなければならない。
FP JANUARY 5, 2016
It’s the Foreign Policy, Stupid
BY
BRUCE STOKES
Project Syndicate JAN 7, 2016
Is Fascism Back?
ROBERT
O. PAXTON
過激な主張は何でも、Donald Trump, the Tea Party, the
National Front in France, and radical Islamist、すべてが「ファシズム」と呼びたくなる。しかし、それは政治に間違いをもたらす。
ファシズムは1920年代に、最初、イタリアで、そのあと、ドイツに、過度の個人主義を排する激しい反動から生まれた。第1次世界大戦で、イタリアは軽蔑され、ドイツは敗北した。それは民主主義と個人主義が彼らから国民的な統一と意志を奪ったからだ、とムッソリーニやヒトラーは主張した。だから指導者は支持者に制服を着せ、その思想や行動を組織したのだ。
ファシストがエリートの一部から支持を得たのは、第1次世界大戦後の世界に現れたもう1つの政治運動、共産主義、に対する唯一の有効な防壁だ、と主張したからだ。国際社会主義運動に対して、ファシストが主張したのは国家社会主義運動だった。彼らは社会主義政党や独立の労働組合を弾圧し、解体したが、同時に、国家が社会福祉をになう義務を疑うことはなかった。
イスラム国家の主張や行動はファシズムに似た面がある。しかし、権力の国家への集中を進めたファシストに比べて、イスラム国家の権力機構は原始的で、むしろ都市レベルに分散している。
ティー・パーティー運動は、アメリカの強烈な個人主義を支持し、連邦政府の権力や義務を強く否定する。それはむしろ、右派のアナーキズムと呼ばれるべきだ。
フランスのナショナル・フロント(国民戦線)は、ヴァシー・フランスに由来する。創立者は共和国の伝統を強く軽蔑していた。他方、ドナルド・トランプは、ナチスの主張や偏見、デマゴギーを積極的に取り上げているが、それは煽動家としての計算でしかない。コミュニケーション技術の高度な利用も、ムッソリーニやヒトラーの模倣である。
われわれは彼らを批判するとき、通常の用語で批判するべきだ。宗教的な狂信主義、反動的な無政府主義、寡占支配の超富裕層を代表する自己中心的な煽動家。そして、ギリシャのゴールデン・ドーンや暴力的な党派が象徴としてナチズムを利用するケースに関して、その言葉を取っておくことだ。
l ドーハ・ラウンドの終わり
NYT JAN. 1, 2016
Global Trade After the Failure of
the Doha Round
By
THE EDITORIAL BOARD
開発諸国のために関税を下げるとしたが、国内の農業関係者から反対が起き、中国やインドからの反対もあり、ドーハ・ラウンドは崩壊した。2国間、地域の通商条約が交渉されている。
むしろ、特定の問題について交渉する方が容易である。地域協定で労働者の権利や国内制度を改革する方がよい。貿易を促進するための関税手続きの簡略・迅速化、環境に関連した太陽パネルや風力発電機の関税障壁を下げる、などは望ましい合意になる。
ドーハ・ラウンドが終わって、国内の労働規制や社会条件を改善し、地域や地球の環境に影響する政策を整備して持続可能な成長・開発をもたらすグローバルな協定の時代に交代する。
VOX 02 January 2016
Evaluating the Trans-Pacific
Partnership
Kazuhito
Yamashita
FP JANUARY 6, 2016
The TPP Train Could Still Get
Derailed
BY
PHIL LEVY
l 富裕層の反社会性
NYT JAN. 1, 2016
Privilege, Pathology and Power
Paul
Krugman
富は魂を劣化させる。裕福な者は他人に同情しなくなる。社会的な規範や法律にも従わない。他者を欺くことが多い。
政治権力がますます一握りの富裕層によって独占されることに、国民は注意するべきだ。2016年の大統領選挙に集められた政治資金の半分は、超富裕な200家族から出たものだ。トランプが何をしても許されるのは、彼が金を握っており、だれも彼に「クビだ」とは言わない。
富裕層は事実を無視し、メディアを買収し、法廷で判事の質問にも答えない。
FT January 1, 2016
The contradiction of Saudi-style
austerity
Roula
Khalaf
The
Guardian, Sunday 3 January 2016
We’ll miss
you if Britain leaves the EU – and you’ll be diminished, too
Ulrich Speck
l ロボットへの課税
FT January
3, 2016
Property
levies would ease the robot attack on income tax
Neasa MacErlean
古代ローマの支配者たちは所得税を、避けるべき手段、とみなしていた。いずれにしても、賃金に課税することは大きな歳入をもたらさなかった。最も働いたのは人口の15から25%を占める奴隷たちであったから。彼らには賃金も所得もない。
所得ではなく、ローマ人は所有に課税した。市民たちは何に対しても所有に税を支払った。土地、そこに立つ住宅、家畜、金貨、奴隷。「ロボット」は、現代経済において、その最後に追加される。
現代の西側税制は、その多くが1950年代に設計された。当時、人々は、生涯にわたって1つ、フルタイムの仕事に就いた。こうしたルールは、短期契約、パートタイム、低賃金自営業、証券管理、グローバリゼーションには適当でない。
Oxfordの研究者たちは、今後数十年で、仕事の35%が機械工学によって失われるだろう、と予想している。それは労働者たちにとってだけでなく、徴税を行う政府にも心配なことだ。イギリスの納税領収書の半分以上が、所得税と国民保険から生じる。政府は、仕事のパターンが変わっても、伝統的なフルタイム労働者に代わって、自営業者が支払うだろう、と思っている。しかし、金融危機後、自営業者が増えたけれど、その平均所得は減っており、ロンドン外の雇用の23%は生存賃金を下回っている。
もし労働者に課税することが難しいのであれば、ロボットに課税してはどうか? ロボットを数えて、その所有者が毎年、税金を徴収される。しかし、自動化はさまざまな形で起きるから、人間の労働を置き換えたロボットの創った価値を測定するのはむつかしい。むしろ、より広範に所有に対して課税することだ。イギリス労働党の議員は、不平等の対策として、英米、そしてOECD諸国が住宅所有に課税することを提案した。
税金の重要な目的の1つが、所得の再分配である。仕事を失った人々を壁の向こうに追い出すのか、それとも、その生活福祉や再訓練に支払うのか? ローマ時代には、すべての市民がわずかでも給付を受ける資格を認められていた。
所有に対する課税は、技術がもたらす効果に対して、すべての者が利益を共有するような財源を政府に与える。すべての人々が市民であり、ロボットは我々の奴隷である。その逆ではない。
l 2016年の世界経済
FT January
3, 2016
World
economy of so-so growth and fat-tailed risk
Project
Syndicate JAN 3, 2016
The Great
Malaise Continues
JOSEPH E. STIGLITZ
金融危機後に、私が懸念したような「大いなる沈滞the
Great Malaise」が起きているのは、所得分配の不平等化と財政緊縮を強めて、総需要が不足しているからだ。
さらに、世界は構造転換の問題も抱えている。中国は国内需要に依拠した成長に転換しなければならない。また、中国からの需要で国際商品価格が高騰したことを、自国の産業構造多様化に結び付けなかったアフリカやラテンアメリカの資源豊富な諸国は、価格下落に苦しむ。
世界には満たされていないインフラ投資の需要、グローバルな気候変動に備える投資の機会が多くある。しかし、長期の貯蓄と長期の投資とをつなぐことに不適当な既存の金融機関はそれに応えようとしない。市場ではなく、政府が積極的に介入するべきだ。
政治的にも、イデオロギー的にも、豊かな諸国の財政再建論がそれを妨げている。アメリカやドイツでマイナス金利を利用して政府が積極的に借り入れ、公共投資するべきだが、財政赤字執着症がそれを妨げている。
Project
Syndicate JAN 4, 2016
Another
Slow Year for the Global Economy
ASHOKA MODY
FT January 5, 2016
Why global economic disaster is an
unlikely event
Martin
Wolf
技術革新によって成長が実現する経済システムは、18世紀後半から19世紀に誕生し、20世紀から21世紀にかけて世界に広まった。しかし、それは一様に世界を豊かにしたわけではないし、すべての人を同様に豊かにしたわけでもない。現実はそれと大きく異なった。
資本主義の拡大が止まるとしたら、それはマルサスがシュンペーターを圧倒するときだ。技術革新よりも資源制約が強くなる。
世界経済は1900年以来、平均年3%で拡大し、その規模は90倍になった。しかし、成長の歴史には大きな不安定さがみられる。その主要な原因は、高インフレ、金融危機、戦争であった。それらは連動することがある。もし世界経済の成長が止まるとしたら、それは大変なことなのだ。
Project Syndicate JAN 5, 2016
The Transitions of 2016
CHRISTINE
LAGARDE
2016年の世界経済は、不均等で、期待できないものだ。その不安は主に複数の移行が起きているからだ。特に、中国の成長モデルと、アメリカの金融政策が重要だ。
国際商品市場を介して新興諸国や資源輸出諸国が影響を受けるだろう。しかし、以前に比べて、彼らには政策的な対応の余地がある。民間部門がレバレッジを拡大していることが問題だ。
移行期に生じる不安は、需要水準を維持し、金融的安定性を保持し、構造調整を実行することで億福可能である。
ユーロ圏は約9000億ユーロの不良債権を処理しなければならない。米日は特に、財政健全化を中期的に実現する計画を守るべきだ。
YaleGlobal, 5 January 2016
The World Wary as US Federal Reserve
Declares End to Debt Crisis
Chris
Miller
Bloomberg JAN 5, 2016
Five Facts About the Market Selloff
By
Mohamed A. El-Erian
月曜日、中国の株式市場が下落して、ヨーロッパ、アメリカにも影響が広がった。5つのことを考える。
1.世界経済の成長のエンジンが、まだ確かではない、という警告によって市場は下落した。特に、中国経済の健全さと、中東情勢の新しい紛争懸念が重要だ。地政学的な脅威に市場は弱く、非国家主体の行動は、制御するどころか、予測もできない。
2.株価の旧来に対する投資家の反応は、これまで「底値買い」戦略が成功したため、大規模な買いである。中国政府も介入する。
3.しかし、中央銀行と企業の余剰資金から、流動性が供給される、という予想は、以前ほど信頼できない。中央銀行の金融政策は分裂し始めている。
4.過去7年の経路には不確実性が増している。さまざまな要因による浮動性が顕著になる。
5.中央銀行は非伝統的な手段で将来の成長を借り入れ続けることができない。より包括的な成長回復策に向かうか、内部矛盾が爆発するしかない。投資家の動きは俊敏さを増し、金融の浮動性を中央銀行が抑え込む時代は終わる。
VOX 07 January 2016
Emerging markets at a crossroads
M
Ayhan Kose, Franziska Ohnsorge, Lei (Sandy) Ye
NYT JAN. 7, 2016
Can U.S. Remain an Island of
Stability in the Global Economy?
Neil
Irwin
l EUの断層線
FT January
3, 2016
Europe’s
multiplicity of crises is not accidental
Wolfgang Münchau
EUには3つの断層線がある。1.繁栄する北と債務に苦しむ南、2.ユーロに懐疑的な辺境とユーロを好む中枢、3.社会的にリベラルな西と専制主義的な東。
さまざまな問題がある中で、全体の仕組みに注目することにしたい。もし共通の経済制度、財政政策、法体系がなければ、通貨同盟は壁に衝突するだろう。海岸線や国境を共通して守るシステムもないまま、パスポートを廃止して移動を自由にすることも同じだ。
ここには機会がある。EUを古いやり方から解放することだ。変化は、政治指導者や外交官の交渉ではなく、有権者の直接投票によって起きる。例えば、イギリスの国民投票だ。ヨーロッパの政治指導者たちはEUを離脱するイギリスの選択に生産的な反応を示すべきだろう。
私が期待するユーロ圏解体とは、ユーロ圏を固定レート制とみなし、為替レートの不整合を調整することだ。完全な固定レートは、大きく収れんした経済を持つ少数の国の間だけで成立する。オーストリアとドイツは1970年代以来、固定レートを続けていた。フランスとドイツも1980年代から続けている。独仏間で政治・経済統合に向かう位置は今も強い。
しかし、単一市場が単一通貨を必要とする、とは言えない。高度な経済的収れんは、各国の独自通貨より、単一通貨による深い統合化を求める。経済の分裂状態の加えて、ヨーロッパの東西には政治的な対立する傾向がある。なぜEUを東部に拡大したのか? それは歴史的な機会ではなく、歴史的な失敗であった。
EU拡大は分裂を意味し、機能を破壊した。2016年にもさらに多くの分裂が生じる。賢明な管理を望む。
Project
Syndicate JAN 4, 2016
The Europe
Question in 2016
NOURIEL ROUBINI
Project Syndicate JAN 6, 2016
The Danger of a Weak Europe
JOSEPH
S. NYE
ヨーロッパのパワーを評価するには、EUに代表されるその機関が真に加盟諸国の声を代表できるのか? その内部の結束はどの程度高いのか? という問題に応えねばならない。それは分野によって大きく異なる。
ヨーロッパの弱さは、大西洋の両側にダメージを与える。
The Guardian, Thursday 7 January
2016
The pillars of Poland’s democracy
are being destroyed
Timothy
Garton Ash
l 国際政策協調
VOX 03
January 2016
International
coordination and precautionary policies
Joshua Aizenman
l サウジアラビアとイランの対立
FT January
4, 2016
The folly
of Saudi Arabia’s battle with Iran
サウジアラビアとイランは、スンニ派とシーア派の盟主として、中東地域の政治秩序に大きな影響を及ぼし、シリアやイエメンでは代理戦争を展開している。リヤドがシーア派の著名な聖職者Sheikh
Nimr-al-Nimrを処刑したことは、この対立を一気に高め、テヘランのサウジ大使館に群衆が押し寄せて破壊した。両国関係は急激に悪化している。
リヤドがこの処刑を行った意図は明らかでない。Sheikhはテロリストではない。このとき43人のスンニ派テロリストを処刑し、公平さを見せるためかもしれないが、数人のシーア派を処刑した。Sheikhは、サウジアラビアの反体制派で、シーア派への差別やサウジ王室を批判してきた。その処刑は国際的に非難されるべきだ。
他方で、イラン政府が人権を守っているとは言えず、昨年も1000人が処刑された。それはサウジよりもはるかに多い。Sheikhの処刑事件は、イランでますますローハニ大統領の国際開放路線を弱め、強硬派の影響力を強めるだろう。
1年前に権力を得てから、King Salman bin Abdulazizは国際事情について好戦的な方針を採ってきた。リヤドは長い間、シリア、イラク、イエメン、バーレーンで、イランの紛争介入を批判的に見てきた。昨年、アメリカがイランと核合意に達したことが転換点となって、サウジ王室は自国の防衛をアメリカに頼らない方針に転換したのだ。しかし、サウジ経済が石油価格の下落で悪化する中、ISISの脅威を受け、戦略を欠いた行動を次々に迫られた結果、地域紛争が深刻化している。
アメリカのオバマ政権は、不干渉の方針を採っている。地域の大国が安定化に責任を果たすべきだ、と主張する。しかし、リヤドとテヘランが和解しなければ、シリア内戦の終結は不可能だ。アメリカはイランを国際社会に復帰させた。また、サウジアラビアに軍事的・外交的な支援を与えている。アメリカの仲介で両国が対話し、紛争に対して、無思慮ではなく、理性と封じ込めを採用するべきだ。
FP JANUARY
4, 2016
Saudi
Arabia and Iran Are at Each Other’s Throats. Why Are Oil Prices Falling?
BY KEITH JOHNSON
FP JANUARY
4, 2016
Saudi
Arabia’s Religious Intolerance and the Execution of Sheikh Nimr al-Nimr
BY WILL INBODEN
FP JANUARY
3, 2016
Saudi-Iran
Rift Threatens Syria Diplomacy
BY DAN DE LUCE
Bloomberg JAN
4, 2016
U.S. Can
Afford to Side With Iran Over Saudis
By Noah Feldman
サウジアラビアとイランとの対立が急速にエスカレートしている。しかし宗派の違い以上に、紛争を激化しているのは、アメリカが湾岸地域において、伝統的なサウジとの同盟関係から、次第にイランの宥和を重視する姿勢に転換する、というサウジの不安である。それは、ある意味で、正しいのだ。アメリカがイランを同盟国として受け入れることはまだないだろうが、両国の間で共有する利益が増えている。
Nimr al-Nimrの処刑は、サウジ国内のシーア派や近隣諸国への警告であった。また、サウジが独自に行動することを示すものでもあった。2流の市民権を受け入れず、自治や独立を要求するal-Nimrの処刑は、イランの強硬な抗議を予測した上で、サウジが決断したことだ。アメリカが不快に思うことも計算したはずだ。
アメリカが何を考えようとも、サウジは自国の安全保障に関して単独に行動することを示した。同時に、この処刑はサウジがどれほど孤立感を深めているか、を示すものだ。
サウジはやりすぎた。これに対するイランの反応は優れたものだ。1.所見を非難し、大衆の気分を乱す。2.憤慨した大衆がサウジ大使館を襲うのを放置する。3.抗議者に発砲し、逮捕者を出して、襲撃の責任を逃れる。
アメリカは、イランとの公式のルートはないが、イラン側に立つ姿勢を示した。それはサウジの不安を証明するものとなった。アメリカの外交担当者は、今回の処刑をだれの責任とみなすか? もしサウジなら、アメリカはイランとの共通の利益を話し合う機会とするだろう。イラクの安定し、イスラム国家の掃討、シリアのアサド政権を追放する。これらはサウジアラビアが望まず、イランが好む方針だ。
次の大統領が、たとえ共和党員でも、あるいはヒラリーでも、イランを欠いたまま重要な目標は達成できないことを知るはずだ。
FT January 5, 2016
Middle East pays the price for a
poorer, weaker House of Saud
Ray
Takeyh
サウジにとって不安な時代が待っている。第1次世界大戦の後、植民地勢力によって描かれたアラブの秩序は砂漠の中に消えた。シリアとイラクは内戦状態にある。シーア派が勃興し、イランの進出が続く。2つの戦争を経て、アメリカは介入しなくなり、サウジの遺産を抹殺したがっている。
FT January 7, 2016
The Saudi-Iran paradox that haunts
the west
Philip
Stephens
FP JANUARY 7, 2016
The Next Front in the Saudi-Iran War
BY
IYAD EL-BAGHDADI
Bloomberg JAN 7, 2016
Saudi Arabia Has Bigger Problems
Than Iran
By
Tobin Harshaw
(後半へ続く)