IPEの果樹園2015

今週のReview

12/28-1/2

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ヨーロッパ政治の溶解 ・・・IT時代の労働者 ・・・中国の政治不安 ・・・移民・難民論争 ・・・従軍慰安婦論争 ・・・中東の秩序を求めて ・・・リアル・ポリティクス ・・・ドーハ・ラウンドの終幕 ・・・危機から再生する ・・・億万長者たちの寄付 ・・・貧困の思想と政策

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, The Guardian, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, そして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]


l  ヨーロッパ政治の溶解

FT December 18, 2015

Why political apathy rules

Simon Kuper

2016年の政治について言えることが1つある。ほとんどの人が政治に関心を持たない、ということだ。これは、イギリスのEU離脱論争、気候温暖化、トランプ人気、すべてにあてはまる。

国政選挙以外では、人々が政治に関心を失っている。2010年、アメリカの有権者に尋ねた。「お金を払えば、あなただけが選挙区の当選者を民主党員か共和党員か決めることができる、とすれば、あなたはそのためにいくら支払うか?」 調査機関YouGovが驚いたことに、回答者の55%が、ゼロ、と答えた。選挙結果を変えることに、彼らは1ドルも支払わない。

現在行われているカーニバルのような大統領選挙運動にも、アメリカ人の多くはうんざりしている。Google Consumer Surveyによれば、回答者の57.4%が、選挙運動に関するニュースを何も覚えていない。1位となったのは、陸軍士官学校の学歴詐称が疑われたBen Carsonのニュースだが、たったの22.4%でしかない。

「真の民衆」は政治家の競争を軽蔑しており、もっと重要な問題に関心がある、ということかもしれない。しかし、真実はその逆だろう。ほとんどの人が楽しむ政治とは、政治家たちの個人的な話である。政治家たちをいつも嫌悪しているのは、彼らが退屈だからだ。食べ物、住宅、そして、病気の心配を別にすれば、人々は政治家に、黙っていろ、危険な考えをもてあそぶな、と求めている。

シリアの難民が聖戦主義テロリズムを広める? パリ協定で気候変動を抑えられる? どちらも、NOだ。人々は政治や気候変動に関心がないから。自分の目の前で何かが起きなければ、彼らは気にしない。そうなってからでは手遅れである。

イギリスはもうすぐEU離脱に関する国民投票を行う。しかし、イギリス人の多くはそれに関心がない。ビジネス界や主要政治家たちは、イギリスをEUに残留させるため、苦労して有権者を説得することはないだろう。うんざりするような理由で不可解な世界に飛び出す気など、人々にはないからだ。同僚のJanan Ganeshが述べたように、最も支持されるイデオロギーがあるとしたら、それは「損することを避けよ」である。

過去から現在まで、あらゆる救世主的な候補者が現れて、人々に独自のファンタシーを約束した。しかし、彼らが世界を短期間で変えることに失敗すれば、その無関心がすぐに再発した。成功する政治家は、この25年間、ビル・クリントンも、トニー・ブレアも、アンゲラ・メルケルも、デイヴィッド・キャメロンも、イデオロギーを吹聴しない。有権者たちは、まともな候補を好む。トランプは支持されないだろう。

かつて共産主義者は民衆の「政治意識を高める」ことをめざしたが、今や政治ビジネスは人々の無関心と闘う。しかし、無関心は統治がうまくいっていることを意味する。政治ニュースが関心を集めるのは、ギリシャのように、物事が崩壊していくときだ。

ただし、無関心は愚劣さではない。カフカは191482日の日記に書いた。「ドイツがロシアに宣戦布告した。午後は、スイミング。」

FT December 18, 2015

We need to remember the brutal history that created EU

Timothy Garton Ash

2045年に出版されたthe Oxford History of Modern Europeには、こう書いてある。

2005年初め、ヨーロッパのプロジェクトと当時は呼ばれていたことが頂点に達した。その前の春に中東欧の10か国がEUに参加し、ヨーロッパ史上最大の自由民主主義による連邦commonwealthとなった。その同盟は憲法条約を提案したが、それは「ヨーロッパ憲章」と呼ばれた。単一の通貨、ユーロは、うまく機能するように見えた。多くのヨーロッパ人にとって、楽観主義が広がった。親ヨーロッパのオレンジ革命がウクライナで起き、見た目はソフトで、ポストモダンなEUが権力を脅かす、とロシアのプーチン大統領は確信した。懐疑的な歴史家であるTony Judtでさえ、2005年には、21世紀もなおヨーロッパのものだろう、と書いた。」

「不幸にして、ヨーロッパの指導者たちは、2015年に数え切れないほどブラッセルで開催された多くのサミットに集まったが、同盟崩壊の危機に及ぶ事態の深刻さを十分に認めなかった。彼らは事態を放置して答えを示さず、それは結局、人々の幻滅を増すことになった。EUはローマ帝国のように、蛮族がブラッセルの官僚機構を占拠することで、一瞬のうちに崩壊したのではなかった。その衰退は神聖ローマ帝国に似ていた。その厳粛な条約、セレモニー、制度は残ったまま、次第に空洞化し、その意味が失われた。だから2043年に、EUが正式に解体を宣言したとき、1806年に神聖ローマ帝国が消滅したときのように、ずっと前から政治的な現実になっていたことを遅れて認めたに過ぎなかった。」

現在の趨勢を観れば、これがヨーロッパの未来としてもっとも起こりそうな筋書きである。しかし、私たちは何としても避けねばならない。われわれが住むヨーロッパは可能な中でも最悪のものだが、それはほかに繰り返し試みられたどのようなヨーロッパとも比べないときだ。すなわち、ヨーロッパの連携、帝国、連邦、共同体は1つとして永久に続かなかった。だからこそ我々はこのプロジェクトを可能な限り続けるべきだ。

多重危機に襲われて、指導者たちはなし崩しの危機回避策に逃げ込んでいる。しかし、中国、インド、その他の新興諸国が形成する世界においては、EUだけがヨーロッパに必要な規模を提供できる。

また我々は、ヨーロッパの20世紀が示した野蛮さを、未来に再現しつつある。ウクライナの戦争、中産階級の専門職労働者がスープの配給所に並ぶアテネ、パリの市街地で起きたテロ。親だ難民の子供たちが地中海の海辺に流れ着く。反ユダヤ主義、人種差別、イスラム教徒たちへのあからさまな偏見の表明。

3世代にわたり、戦争、占領、ホロコースト、ファシストとコミュニストの独裁に関する人々の記憶が、これほど多くの人にヨーロッパの統合を支持させた最も深い動機であった。われわれは新しい世代に、われわれの恐ろしい過去に関するもっと生々しい意識を掻き立てねばならない。

まだthe Oxford History of Modern Europeを書き直す時間はある。

Project Syndicate DEC 21, 2015

Patriotism in the Age of Globalization

BILL EMMOTT

マリー・ル・ペンは、政治の断層線をグローバリストと愛国者との間に引いた。それと同じことはイギリス独立党UKIPも、アメリカのドナルド・トランプも主張している。しかし、そのような主張は間違っているうえに、危険である。

ル・ペンは、国民戦線が地方選挙の再投票で多数を取れなかったことについて、主要政党が共謀して民主主義を否定した、という。しかし、彼らは同盟相手を得られない限り、敗北するだろう。彼女のように、自分たちだけが愛国者だ、フランスを開放するより、閉じることで国益を実現する、という主張は非常に危険である。

開放は反逆であり、閉鎖が愛国的である、という信念は、1945年以降の発展した世界における政治と政策をすべて否定するものだ。貿易を規制し、少数者の利益を追求する。戦後は全く逆の方向で進んだ。諸国の開放と、財、資本、アイデア、人々が自由に移動するのを許した。フランスの生活水準が急速に改善した「黄金の30年」もグローバリゼーションの成果である。

ル・ペンやその仲間のポピュリストたちは、グローバリゼーションを自国の犠牲で世界に奉仕すること、その受益者はエリートだけであり、庶民ではない、と主張する。その前半は間違っているが、後半には応えなければならない。多数を無視し、搾取するような民主主義は維持できないからだ。政権や、あるいは、体制そのものが転覆される。

選挙を経た政府は、高失業率や生活水準の低下に解決策を求められる。明確にしなければならないのは、国境を閉ざすことが答ではない、ということだ

開放が繁栄を保障するものではないだろうが、常に成長の条件である。望ましい開放の程度を議論するより、教育、労働市場、科学研究、社会保障政策が、自分たちの社会を世界の変化に適応するよう、どうすれば改革できるかを生産的に論争することだ。愛国者であるとは、そして、国益を実現するとは、グローバリゼーションを最大限に活用する国内政策を常に目指すということだ。

現代の世界では、開放性を管理することが国益であって、それを投げ出すことではない。

Project Syndicate DEC 22, 2015

European Politics With an Islamic Face?

ROBERT SKIDELSKY

イスラム教徒の入国を拒むトランプの主張が、リベラルな道徳的価値観を拒むイスラム世界に対する反対であるなら、われわれはそれに応えねばならない。

ヨーロッパのキリスト教は、例外的に、世俗化した世界と切り離された。イスラム教、特に中東世界ではそれは起きていない。イスラム教の信仰や家族は、法律や社会規範を支配している。もし移民が流入するのを止められないなら、その出生率の高さもあって、ヨーロッパやイギリスにおけるイスラム教徒の割合は増えるだろう。

よりよい生活を求めて移民することは、リベラルな視点から支持されている。しかし、人々は単に経済活動に参加するだけでなく、信仰や文化を帯びている。経済的な成功が必ず文化的な収れんをもたらす、と前提するのは間違いだ。

移民と受け入れ社会とのギャップを減らすために、対話や教育が重視されるのは正しい。しかし、そのギャップが非常に大きく、その数が社会を変えるほどの規模になれば、それだけで宗教政治への回帰を止められない可能性がある。われわれは知らぬ間に、非常に混乱した将来へ向けてさまよっている。テロではなく、統合の失敗こそ恐れるべきだ。

NYT DEC. 22, 2015

Driving Poland Apart

By PIOTR BURAS


l  アメリカの金利引き上げ

FT December 18, 2015

US central bank policy and the spectre of 1998

Matthew Klein

Project Syndicate DEC 21, 2015

The Fed’s Risk to Emerging Economies

MICHAEL SPENCE

Project Syndicate DEC 23, 2015

The Perils of Fed Gradualism

STEPHEN S. ROACH


l  IT時代の労働者

FT December 18, 2015

Since you asked: Awkward questions on AI

Izabella Kaminska

FT December 20, 2015

An economist’s dreams of a fairer gig economy

Tim Harford

フリーランスの労働者による社会が、芸術家や音楽家だけでなく、情報通信技術によって拡大する。支配されることも、失業や貧困に悩むこともない、the “gig economy”は理想の社会なのか?

しかし、それは労働者個人に大きな不安や負担を強いるかもしれない。これまで企業や労働組合が実現してきた年金、保険、失業手当、などは、最低限の福祉国家がすべての労働者に提供しなければならない。

VOX 20 December 2015

Offshoring effects on workers with different types of contract

Joon H. Lee

グローバリゼーションは国内労働市場に大きな影響を与える。オフショア契約が増えると、歓呼奥の製造業労働者の賃金は上昇したが、一時雇用労働者の賃金は低下した。


l  中国の政治不安

FT December 18, 2015

China Inc: The party vs the elite

Tom Mitchell and Patti Waldmeir

経営者で億万長者のGuo Guangchangが、一時、失踪したことは、中国の共産党政権とビジネス・エリートとの関係が変化する兆しかもしれない。共産党はビジネス界の富の蓄積を彼らの目的にとって利用してきただけであり、決して好ましいものと受け入れていない。政府官僚のカフカ的な構造においては、いつ、だれが敵視されるかわからない。

2003年、中国に10億ドルの資産を持つ者はいない、とthe Hurun Reportは伝えた。しかし、今年、その数は596人に達してアメリカよりも多い。彼らの資産の合計額は21000億ドルであり、インドやロシアのGDPを超える。世界が中国の成長率に注目する一方で、共産党は雇用に注目している。中国の民間企業は、2010年、生産の3分の2、雇用の75%を生み出したと推定されている。

Project Syndicate DEC 18, 2015

Unaccountable China

BRAHMA CHELLANEY

アメリカは、国際的なルールを無視した中国の行動を抑制するために何もしない。中国は南シナ海を軍事化し、島々で埋め立て作業を強行して、すでに1200ヘクタールも土地を拡大した。これに対して、アメリカは人工島の12カイリ内に戦艦を送ったが、それは「政治ショー」でしかない。中国はその行動によって何のコストも負わないままだ。アメリカは紛争に介入せず、むしろ地域に責任転嫁する。それは全く不十分だ。

中国の野心は南シナ海にとどまらない。それは、アフリカの角やインド洋に港を設け、the “One Belt, One Road”でアジアからヨーロッパまでのインフラを整備して、中国が中心となるアジアを築くことだ。

Bloomberg DEC 17, 2015

To Fix China, Look to Korea

By Michael Schuman

中国の国有企業SOEsに支配された経済を転換することは、単に、経営を専門化し、民間投資家を招き入れ、損失を出す分野を統廃合する、というだけではない。それだけでは、世界の市場で競争できる企業は育たない。

もし改革の中身を知りたければ、韓国がこの10年で転換した過程を学ぶべきだ。韓国経済も、政府、銀行と共謀したチェボルが支配していた。1997-98年の金融危機でIMFの融資を受け、その関係を切断したのだ。それは激しい恥辱として、変身の過程を開始する契機になった。

Project Syndicate DEC 22, 2015

China’s Planning Addiction

KOICHI HAMADA

FT December 23, 2015

China stock market outperforms S&P despite wild swings

Gabriel Wildau — Shanghai

NYT DEC. 23, 2015

Shenzhen Landslide Casts Shadow Over China’s Success Story

By NEIL GOUGH

深圳の産業廃棄物でできた埋めた土地が崩れたことは、その急速な成長が持つ弱さを示した。

NYT DEC. 24, 2015

China’s Tantrum on Taiwan Arms Deal

By THE EDITORIAL BOARD


l  移民・難民論争

Project Syndicate DEC 18, 2015

The Global Migration Blowback

DAMBISA MOYO

2015年、海を渡ってヨーロッパに来た移民の数は約75万人であるが、それは世界の土地を追われた人々、6000万人、のごく一部でしかない。しかし、これほど多くの移民を、リビア、シリア、イラク、アフガニスタンなど、ヨーロッパ大陸外から受け入れるのは、歴史上、初めてのことである。

EUの現在の移民政策は、近視眼的であり、経済のゼロサム思考に偏ったものである。それは国内政策が及ぼす長期的な影響を無視している。移民の供給される源泉を無視したアプローチは、問題を長期的に解決する見込みがない。

それどころかEUはむしろ逆効果になる政策を域内でとっている。たとえば、保護貿易は莫大な補助金で農業を保護し、アメリカと競争することで、そうした補助金を得られない南米、アフリカ、アジアの農民たちを貧しくしている。またアメリカなどが行った大幅な金融緩和は、(ドルと固定した)新興市場の通貨を安くした。今、アメリカの金融緩和が逆転することで、そうした諸国から資本が大量に流出している。彼らの経済が低成長に苦しめば、移民の流出が増すだろう。

VOX 18 December 2015

Selective immigration policies and migrant ‘quality’

Simone Bertoli, Vianney Dequiedt, Yves Zenou

Bloomberg DEC 18, 2015

An Immigrant Won't Steal Your Raise

By Noah Smith

移民論争は経済学にも望ましい政策の選択について証拠を求めている。この点で、最もよく引用されるのは、David Card of the University of California-Berkeley1990年の研究だ。Cardは、1980年、フィデル・カストロが突如として大量の移民をマイアミに送り込んだケースthe Mariel boatliftを研究した。

経済学の教科書によれば、大規模な供給の増大はその価格を引き下げる。特に、教育を受けない低賃金労働者は移民と直接に競争して、その影響を受けるはずだった。

しかし、Cardは、そのようなマイナスの効果は生じなかった、と示したのだ。マイアミの労働者の雇用は減らず、賃金も減少しなかった。Cardは、マイアミと同様の都市圏(Atlanta, Houston, Los Angeles, and Tampa-St. Petersburg, Florida)を取り上げて、移民の影響を比べた。それらは人口動態や成長がマイアミと似ていたからだ。

しかし、2015年、George Borjas of Harvard University’s Kennedy Schoolの研究は、Cardの結論と全く逆のことを示した。Borjasは、異なる都市を採用し、より限定した労働者を取り上げた。すると、雇用や賃金に対するマイナスの影響があったのだ。

その後、Borjasの研究は、自分の偏見を証拠によって正当化するために統計を操作したdata miningことが判明した。Cardの研究が正しいと証明された今でも、移民排斥を唱える者たちは、その偏見をBorjasの研究で正当化している。

NYT DEC. 21, 2015

Germany, Refugee Nation

Roger Cohen

アメリカは後退し、ドイツがその灯火を受け継いだ。今年、ドイツが受け入れたシリアからの難民は、およそ100万人に達する。アメリカがこの4年間で受け入れたシリア難民は1900人だ。アメリカの数字は、見間違いではない。

メルケルが難民の国境通過を認めたとき、それは暴力的な衝突から混乱に向かう事態を避ける正しい決断であった。メルケルは東ドイツに育ち、ヨーロッパの統合によって自由を得たと知っている。これは個人的な問題だ。かつて数100万人の難民がヨーロッパにあふれたのは、ドイツの第3帝国が崩壊した1945年であった。それは歴史的な問題だ。ドイツはそれを否定できない。

100万人の難民がドイツを満たす光景を目の当たりにする。スーパーマーケット、病院、学校に、難民がいる。ドイツはその莫大なコストを支払って、彼らを受け入れている。極右は事態を利用するだろう。しかし、ドイツの合意は変わらない。これを成し遂げる、と。

その結果として、次の世代において、ドイツは強くなるだろう。活力に富み、ダイナミックで、より開放的な国になる。アメリカも、イギリスも、その政治を恥じるだろう。

FP DECEMBER 23, 2015

The Ghosts of Refugees Past

BY JEANNE CARSTENSEN

Bloomberg DEC 23, 2015

Low-Skilled Immigrants Don't Drag Down the U.S.

By Noah Smith

かつてGeorge W. Bush のスピーチ・ライターで、今は雑誌the Atlantic のシニア・エディターであるDavid Frumが、この時期に、未熟練の移民に関するマイナス面を扱った長大な記事を載せた。その内容には問題が多い。彼はソマリアからの移民だけを取り上げ、マイナスの効果を強調する。そして、移民全体の経済に及ぼす利益や、特にメキシコ系移民が世代間で社会的な上昇を実現している事実を否定する。


l  従軍慰安婦論争

NYT DEC. 18, 2015

Disputing Korean Narrative on ‘Comfort Women,’ a Professor Draws Fierce Backlash

By CHOE SANG-HUN

2013年に「従軍慰安婦」についての本を出版するとき、Park Yu-haは少し心配だった、という。人々がその本をどう受け取るか。その反発は、彼女の予想を超えたものだった。

従軍慰安婦には様々な側面がある。たとえ政府が直接に彼女たちを徴用し、強制したのではないとしても、日本が強いた植民地体制によってそれが許されたという責任はある。

しかし解放後も、日本の責任を問い続ける韓国の政治運動が彼女たちを利用した。


l  IMF改革

Bloomberg DEC 18, 2015

IMF Reform Is Too Little, Way Too Late

By Leonid Bershidsky

アメリカ議会は、ようやく、IMF改革を受け入れるようだ。分担金のシェアは、産油諸国やヨーロッパが低下し、中国など新興諸国が増加する。しかし、それでも新興市場の要求を半分ほどしか満たせない。世界GDPに占める割合とIMF分担金との不釣り合いは、アメリカにもあるが、中国の差の方がずっと大きい。

Edwin Trumanは、アメリカがもはや交渉の主導権を握れなくなった、と書いた。IMF融資はユーロ危機に大きく利用されて、最後の貸し手として、新興諸国への融資条件は変わらない。Carmen Reinhart and Cristoph Trebeschが指摘するように、新興諸国は開発融資への追加を求めているが、IMFは緊急時の流動性供給にとどまるだろう。

すでに中国はAIIBを設立し、インド、ロシア、ブラジル、南アフリカとともに、IMFに代わる金融機関を計画している。

NYT DEC. 22, 2015

Congress Gets Out of the I.M.F.’s Way

By THE EDITORIAL BOARD


l  中東の秩序を求めて

Project Syndicate DEC 19, 2015

A New Century for the Middle East

JEFFREY D. SACHS

なぜ中東地域のガバナンスは改善できないのか? さまざまな国際機関や欧米の専門家たちは繰り返し問いかける。しかし、その答えとは、欧米が中東に介入し続けたからだ。

Project Syndicate DEC 23, 2015

The Education Antidote to Radicalization

GORDON BROWN

FP DECEMBER 23, 2015

A Skeptic’s Take on Solving Syria

BY AARON DAVID MILLER

シリア内戦に関する和平に向けた国連安保理決議が成立した。その原則は素晴らしいが、細部を欠いたままだ。これが和平交渉の枠組みになるのか?

私が懐疑的であるのは、この戦争が破壊された、西側を憎む、機能しない中東地域で行われているからだ。アメリカの希望や理想は、いつも、残酷な現実と不都合な真実にぶつかって、様々な図式や抗争、体制が失敗を重ねてきた。大国は、小さな部族に自分たちの意思を押し付けるだけだ、と思っていたのだ。シリアもまた、イラクやアフガニスタンと同じ、不十分な西側の構想の墓場になる。

ここに8つの克服できない障害がある。・・・1.戦後処理のコスト。イスラム国に占領されていたコバニがシリアのクルド人部隊によって奪還された。しかし、その戦闘で町は完全に破壊された。無傷のままの建物はない。そして、1000のコバニを想像せよ。推定で、再建費用は3000億ドルに達する。それはアメリカがイラク再建に投資した額の約10倍だ。25万人が死に、100万人が負傷し、なお760万人が国内避難民、400万人が国外に避難した。

・・・2.もっと時間がかかるだろう。・・・3.アラブ諸国の内部に深刻な対立がある。・・・4.イランが国際社会に復帰したことはシリア内戦にマイナスだった。・・・5.プーチンがシリアで何を求めているのか不明である。・・・6.エルドアンの介入でもトルコの国内政治が主要な動機である。・・・7.シリア国内の穏健派は影響を失った。・・・8.パリやアメリカ・カリフォルニアでのテロ攻撃が示したイスラム国の脅威はゲームの性格を変えない。

解決することではなく、行動の結果を考えるべきだ。ハリウッド映画のような結末は用意されていない。つまり、国民的な選挙が行われ、すべての党派が参加して、憲法を制定する。そうではないだろう。確かなことは、オバマが任期を終えるときも、アサド、プーチン、アル・ハメネイは権力を握ったままだ、ということだ。血まみれのシリア内戦が、次のアメリカ大統領を待っている。


FT December 20, 2015

Fighting Brexit with fear will backfire

Wolfgang Munchau


後半へ続く)