IPEの果樹園2015
今週のReview
12/21-26
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戦後の安定した政府 ・・・中国の危険なあいまいさ ・・・反政権・反体制のレトリック ・・・パリ気候変動協定 ・・・フリーランスの労働組合
[長いReview]
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[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
l 戦後の安定した政府
FT
December 11, 2015
What is at
stake in Libya talks?
Heba Saleh in Cairo
リビアの政権分裂によりイスラム国家が支配を広げていることについて、アメリカのジョン・ケリー国務長官らはローマで開かれる統一政権に向けた交渉に参加し、合意を促した。エジプトとの国境に近いトブルクの政府は国際的承認を得たものだが、西部には旧カダフィ体制において軍を支配した人物が独自に政府を組織し、石油大臣を任命して、海外のリビア資産について権利を争っている。中央銀行も存在する。
ISISはすでにリビアの海岸線をおよそ300キロも支配している。西側は正当な政府を再建し、その要請によってISISを掃討する軍事介入を計画している。リビアの統一政府に向けて、国連安保理の常任理事国5か国が会議に参加し、エジプト、トルコ、アラブ首長国連邦も代表を送る。
FP
DECEMBER 12, 2015
Dayton
Ain’t Going Nowhere
BY ANDREW MACDOWALL
デイトン合意が、ボスニアとヘルツェゴヴィナとの間で、エスニック・クレンジングを含む、3年半の血にまみれた戦争を終結させてから、20年が経った。それはこの国の憲法としていまだに機能している。しかし外から見て、デイトン合意が欧米の大西洋社会にふさわしい、正式な、リベラルな民主的国家になるという望みをかなえる見込みはない、というコンセンサスが10年以上も前から成立している。
1995年12月14日、クリントン政権の外交交渉を指導したRichard Holbrookeが内戦終結に成功した。ボスニアはEUとNATOに加盟することを目標としたが、デイトン合意は、成立時に、これほど長期に続くことを考えていなかった。改定することもできないまま、現在のボスニアは、非常に不公正な、国家として全く機能しない姿になっている。
55の国家や国際機関から成る高等代表部がデイトン合意を監督しているが、2006年以降、より自主的な統治を促す方針を取ってきた。しかし、国家議長は8か月ごとに輪番制で代わり、教育に関する13の官庁、400万人の国民に150人も大臣がいる。大臣ばかりで、政治指導者はいない。国内政治家たちがシステムの改革を進めるというより、10年の静止状態とナショナリズムの言動が広まっている。
非セルビア住民から見れば、セルビア共和国がデイトン合意で最大になっている。それはセルビアが行ったエスニック・クレンジングやジェノサイドにデイトン合意が報酬を与えた、ということだ。内戦の間、旧ユーゴスラビア軍隊で多数を占めたボスニア系セルビア人たちが、野蛮な方法で支配領域を拡大したものだ。セルビアの好戦的な大統領Milorad Dodikは、しばしば、自治の拡大や独立を主張している。
Dodikだけでなく、3つのエスニシティにおよぶ、すべての政治家がシステムを悪用して縁故関係やパトロンの利用者となっている。政治家たちはカースト制のように固定され、資金をばら撒いており、政府のスタッフは肥大化し、国営企業が増大する。
イギリスの元サラエボ大使であったCharles Crawfordは、経済的に成功した、自由化され、国家主義を抑えた連邦があれば、セルビア人たちも単一の国家を望むことが減るだろう、という。パトロン関係のネットワークはセルビア人に限ったことではない。旧共産主義諸国、新興市場にも広がっている。デイトン合意だけを責めるのは間違いだ。それでもボスニアは非常に危険である。若者たちの失業率は世界最悪の60%に達する。政治に幻滅した彼らが過激なイスラム主義の土壌になってしまう。
2014年からEUが始めた新しいアプローチは、経済改革を推進し、その成果があればEU加盟を認める。IMFなども改革を支援している。雇用と成長を促し、国営企業のリンクを断って、エスニック・ナショナリストの政治基盤を掘り崩す。エスニックのっ分断線を超えて繁栄し、豊かになるボスニアが憲法改正を支持するだろう、と彼らは期待している。
改革は内側から起こる。それなしには成功しない、と外交官たちは合意している。
l 中国の危険なあいまいさ
NYT DEC.
10, 2015
China’s
Dangerous Ambiguity in the South China Sea
By LISELOTTE ODGAARD
10月、北京でYao Yunzhu少将が、中国と他の諸国との軍事フォーラムthe Xiangshan Forumで講演した。少将は、南シナ海における中国の埋め立てが国際的緊張を高めている、というアメリカの懸念に応じたのだ。
アメリカがアジアの海洋において支配的な軍事力であるのに、なぜ中国を犯人として指名するのか? アメリカは、確かに、アジアの多くの諸国と軍事協力関係を築き、海軍を配置している。
しかし、2つの点で、北京の戦略が地域の緊張をためている。すなわち、北京はオープンな議論をしないまま、南シナ海の全域に主権を要求し、しかも、これらを守るために軍事力を行使すると明示した。
中国の示す「9点線」の地図は、その領域も根拠も明確でない。また、それを防衛するという中身もあいまいだ。しかも、そのいくつかで人工島を建設している。中国は意図的にあいまいさを危険なほどに拡大し、軍事力でこれを確立していることになる。
他国にとって、中国の軍事力行使の主張は軍事衝突の危険を高めることになり、東南アジアの中小国はこのリスクをヘッジしようとするのだ。彼らは中国のとの経済関係を深めることで、中国の影響力を地域として受け入れ、同時に、アメリカとの防衛協力関係も強化する。彼らが最優先しているのは、この地域におけるアメリカと中国との覇権争いに巻き込まれないことだ。
北京のあいまいな政策は、1つの結論へ導く。それは、中国がアメリカのアジアにおける同盟関係に挑戦している、ということだ。それが中国の軍艦や戦闘機の移動を妨げる可能性があるからだ。
他方、アメリカの指導者たちは、中国がアジアの国際海域を、他国の船舶を排除できる、排他的なものに転換しつつあるように見える。ワシントンがこれを座視するわけにはいかない。
もし北京が緊張関係を緩和したいなら、交渉の始点を見直すことだ。アメリカは将来のアジアにも含まれる、と。この保証が現状を打開するだろう。互いに軍艦を送ることではない。
l 反政権・反体制のレトリック
FT
December 13, 2015
Trump is
not America but he could be
ED Luce
バラクは話がうますぎた。アメリカ人の多くはそれを理解できず、大統領がイスラム過激派に対して敗北を認めた、と憤慨する。彼らは任期の終わる大統領の話など聞いていない。衰退する中産階級の宿命を止める言葉を待っている。精緻な分析ではなく、もっと心のこもった話が聞きたい。
アメリカ人はむつかしい時代を生きている。テロもその1つだ。ヨーロッパもそうだ。しかし、アメリカでは、重火器を持った若い夫婦が、隣人たちを殺し続けた。彼らは死後の楽園を夢見るカルトである。
強い中産階級がいた、世界の工業力を率いたアメリカはどうなったのか? もはや多くの工場がアメリカから消えた。今ではぎりぎりの生活を維持するために、昼も夜も、3つの職場で働き続けている。自分の子供たちがもっと豊かになる、と信じることもできなくなった。
白人中産階級の平均寿命が短くなっている。増大する自殺、アルコール中毒、郊外都市におけるヘロイン中毒の蔓延。9・11以来、アメリカで25万人もが中によって殺害された。それは多くの子供たちを含む。しかし、われわれはそれをテロとは呼ばない。
アメリカは、あらかじめ決めたとおり、笑ったり、泣いたり、ブーイングもする操作された民主主義ゲームやショーになった。さあ、トランプを歓呼の声で迎えよう。われわれは民主主義に生きている。彼が勝者だ。そうなればアメリカは負けだ。
世界はまだあきらめていない。アメリカが世界を指導するには、トランプを選挙戦から追放せよ。
FT
December 14, 2015
Marine Le
Pen, climate and the defeat of nationalism
Gideon Rachman
ル・ペンも言うように、政治はますますナショナリストとグローバリストとの競争になっている。
パリのテロがあって数週間後に、気候変動に関する国際会議が開かれたことは、国際社会に占めるフランスの地位と強さを示すものになった。気候変動は、ナショナリストたちが明らかに対処できない、グローバルな行動を求めている。だから多くのナショナリストは温暖化が起こっている事実を、単純に、否定するのだ。
トランプは、自分の交渉力を駆使し、移民たちに国境の壁の建設費用を支払わせる、と主張する様に、中国やインドに炭素排出に支払わせればよい、と主張する。オバマはこうした非難を予想して、気候変動の合意をアメリカの指導力の成果である、と説明した。その言葉はアメリカ以外の人々には自己中心的な見方に思えるだろうが、アメリカ国内でだれからも厳しい非難を浴びている大統領の立場を考えるなら、理解できる。
もし「指導力」を爆撃の回数で測るなら、「弱腰オバマ」論は説得力がある。しかし、気候変動条約は、オバマの任期最後に得られた重要な成果の1つである。同様に、今年、オバマはイラン核合意、TPP合意、キューバとの国交再開、という外交面の前進を示した。
これらの成果をもたらした深い忍耐、妥協の精神、細部への注意、寛容さ、これらはアメリカの右派に顕著な、暴力的で、単純な解決策を求める傾向と、全く対照的である。
自国のナショナリストたちを抑える必要があるのは、アメリカとフランスだけではない。インドや中国の政府も、自国の成長を犠牲にするような西側の決めた制限を受け入れた、と責められる。しかし、北京では市民を窒息させるスモッグが襲い、インドが依存している水源としての氷河が後退しているとき、彼らも気候変動の阻止に利益を共有することを認め、西側が創った問題だという声を抑える。
気候変動条約は成立し、国民先生は敗北した。しかし、グローバリストが得た優位は小さなものだ。経済停滞、テロ攻撃、移民に対する恐怖、ナショナリストたちが栄養とする苦境は続くだろう。
l パリ気候変動協定
FP
DECEMBER 11, 2015
Is There a
Way to Solve the American Fight Over Climate Change?
BY DINA SMELTZ, MICHAEL TIBORIS
現在のアメリカでは、外交をめぐるすべての決定が、すなわち、移民、国際テロ、核の拡散、サイバー攻撃、こういったことのすべてがアメリカ国民の間に党派対立を生じる。ある調査では、気候変動がアメリカの重大な脅威であると考えるのは、民主党支持者の58%に対し、共和党支持者では17%しかなく、41%もの開きがある。これは克服不可能な対立か?
この対立は、無知によるものではなく、イデオロギーから生じている。
ある研究は、保守的な共和党員で、高等教育を受け、気候変動に関する高い知識があると自己認定した者は、地球温暖化に関心が低いか、それは人間が起こしたものではない、と信じている。他方、民主党員で、高等教育を受け、気候変動を理解していると思うものは、より大きな関心を持っている。
この対立は、もっぱら党派争いなのだ。形を変えたいわゆる文化戦争である。そうであれば、気候変動が事実であると、人間によって引き起こされている、という宣伝を繰り返しても、党派的な分断を克服することはできないだろう。
むしろ、民主党員も共和党員も、再生可能エネルギーの利用を増やすことが気候変動を抑制する、と認めている。例えば、ビル・ゲイツが再生可能エネルギーに関する技術革新を促す基金を提案したことは、彼らの支持を得るだろう。こうした実際的なチャレンジや将来のリスクを抑える行動に焦点を当てて、気候変動を非政治化することで合意が達成可能になる。
また、パリの交渉がそうであるように、気候変動への行動を国際的に行う形にすれば、問題を(アメリカ国内で)非政治化する助けになる。ただし、非政治化することで国際合意は成立するかもしれないが、議会や政治エリートが協力することはないだろう。だからオバマ政権は、議会の反対を回避するために、合意内容を相互的な、法的拘束力のない、各国の意思によるものとする。そして、気候変動を阻止する行動は他の源泉に頼ることになる。
その可能性はある。例えば、合わせて900万人以上を雇用する81の大企業が、大統領の呼びかけthe
White House’s American Business Act on Climate Pledgeに応じた。また都市や州政府が、より劇的な排出量削減を主張することも可能である。気候変動に関するアメリカの指導力は、こうしたローカルな合意形成の努力にかかっている。
NYT DEC.
14, 2015
Hope From
Paris
Paul Krugman
パリ条約が気候変動を止めると期待するほどナイーブではないが,破滅をまぬがれる道が見えたと思う.
従来,アメリカが環境問題で積極的な役割を担えなかったのには,主に2つの理由があった.アメリカが排出量を抑えても中国が排出するから意味がない,という主張と,オバマ政権のすることには絶対に反対する共和党が議会沿支配していることだ.
しかし,今や中国の都市は大気汚染によって窒息している.中国自身が化石燃料からの離脱を急いでいるのだ.しかも,経済成長によって中国の都市には中産階級が増え,彼らは生活の質を重視する.特に,呼吸するのに安全な大気は欠かせない.
また,中国が炭素排出量を減らすならアメリカはもっと排出してもいい,という共和党の主張がさらに悪質になるのか,それに対してオバマ政権は行政権限で発電所の排出量を規制するのか,パリ条約はオバマの行動を支持するだろう.
化石燃料には既得権層がいる.対立は,結局,新技術の導入によって克服されるしかないと思う.そして,実際に,すでに再生可能エネルギーの価格は急速に低下しており,特別な促進策が無くても化石燃料と競争できるのだ.再生可能エネルギー産業の雇用は,石炭業をはるかに上回るようになった.
FT
December 15, 2015
The Paris
climate change summit is one small step for humankind
Martin Wolf
パリ協定は画期的な突破口なのか? 破滅に向かう一休みか? それは確かに期待された以上の成果であった.しかし,世界が必要とするものからは程遠い.
破滅を回避できるかどうかは,気候のシステムに依存するが,そこには大きな不確実さがある.しかし,同様に,これから何が起きるか,にも依存している.
パリに集まった諸国は,共通の危険を避けるために行動する,と合意した.その目標は現在の人々にとって遠く,不確かなものであっても.すべての国が参加すること,豊かな国が貧しい国の脱炭素化を助けることを決めた.平均気温の上昇を2度までに抑える、という目標,1.5度という「努力目標」も決めた.
そのためには資金が要る.航空産業や輸送業への制限も要る.そうした内容はないまま,空っぽの合意だ.グローバルな炭素価格を決めるメカニズムもない.諸国は「自分で決めた目標」を約束したに過ぎない.それを守らなくても制裁はない.その各国の削減計画をすべて実現できても,目標の2度上昇には抑えられない.
こうした欠陥があっても,真面目に扱うべきなのか? 単なる紙切れに過ぎない?
1つ,この協定が達成したことは,すべての国をピア・レビューに従わせたことだ.すべての国が5年ごとに計画を見直す必要がある.報告・監視システムがあり,以前よりも透明で,包括的に行われる.特に,新興諸国や途上諸国も,すなわち中国が,このシステムに参加する.
それは約束を守らせるかもしれない.自分で決めた削減計画であり,その目標が重要であることを認めている.約束が守れなくても,どうでもいい,とは言えないだろう.ただし,次のアメリカ大統領が共和党員でないとしてだが.
この協定に懐疑的であるのは当然だ.4半世紀の交渉過程が,炭素の排出を抑える成果は何もなかった.1人当たりの排出量も増えている.もっと大規模に,もっと急いで,排出を削減することが必要になっている.成長を犠牲にしないとしたら(そして,人類はまだそれを犠牲にしないと思うが),産出量1単位当たりの炭素排出量は一層急激に削減されねばならない.
人類には,新しい投資と融資,それを促す誘因の変化が必要だ.
グローバルな炭素価格が必要になる.それは技術革新を促すだろう.科学者やエコノミストが6月に提案した,クリーン・エネルギーの技術革新を目指す「グローバルなアポロ計画」もその基盤になる.そのためにも,資本や人的資源を投入できなければならない.
問題は,それが燃料の価格を下げることだ.既存のエネルギー産業や利用者は強い政治的影響力を持っている.彼らは国家計画の目標をあいまいにしようとするだろう.アメリカのように,それが露骨に行われる国もある.
しかし,万里の道も一歩から,と老子も言ったではないか.人類の歩みは遅く,出遅れたことが心配だ.
Project
Syndicate DEC 17, 2015
A Fair,
Efficient, and Feasible Climate Agreement
JEFFREY FRANKEL
その約束は信用できない,と批判することはできる.しかしパリ協定は,正しい方向への実行可能なステップを進めた点で,良いものであった.
各国は近い将来に排出を制限する約束をそれぞれ示した.それは監視され,将来の評価と見直しが行われる.遠い将来に向けて大げさな目標を示し,彼らがそれを達成するとは思えないような合意よりも,これははるかに望ましい.
合意は4つの点で評価できる.1.包括的な参加を実現した.188ヵ国が計画Intended
Nationally Determined Contributions (INDCs)を示した.過去には,豊かな国だけが参加して削減目標を示した.それは変更が必要だった.発展途上諸国の排出量が最も速く増大していること,炭素排出産業が単に発展途上国に移転されるだけだ,という不安から,アメリカのような諸国が合意に参加しないこと,がその理由だ.
2.合意には,将来の評価と目標の見直しが含まれている.5年ごとに成果と目標を見直し,将来の発展が加味される.
3.監視,報告,計画進展の検証において透明性が増す.2023年から5年ごとに各国が報告する.アメリカとEUが中国とインドを説得した.
4.合意には,国際的なリンケージを促すメカニズムが含まれている.豊かな国の居住者が,貧しい国の排出削減に資金提供することを含む.豊かな国で既存の発電所を閉鎖するより,貧しい国で新しい石炭火力発電所を建設するほうが安い.INDCsの達成コストを下げることは重要だ.
1.5度やゼロの気温上昇に抑えることを望む者は,もっと野心的な目標を求める.しかし,目標と達成とは別問題だ.1.5度という目標を達成する経済コストは大きすぎるだろう.削減目標が35年先であるのは,計画を信用できないものにし,民間ビジネスの参加を阻む.
発展途上諸国の指導者には,1000億ドルという資金提供の数字が法的強制力のない合意であることが不満だろう.豊かな諸国は,例えば,水位の上昇で小さな島国が被る土地の喪失や損失に道義的な責任を感じる.しかし,法的な責任を要求されることは拒んだ.
豊かな国は過去の炭素排出が世界に有害であったことを否定できない.国内的な法システムの中であれば,例えば,洪水によって土地に損害を受けた者は,それを引き起こしたものに補償を要求できる.しかし,主権国家同士は,そのようなシステムの中にない.
1000億ドルの資金提供は論争を呼ぶものだ.発展途上諸国は豊かな諸国が支払わないだろう,少なくともキャッシュでは支払う気がない,と懸念する.豊かな諸国は,そのような「賠償金」が各地のエリートによって私物化されてしまう,と懸念する.どちらも正しい.そんな約束はしないほうがよい.
貧しい国には強い根拠がある.平均的なアメリカ人は,平均的なインド人の10倍も多くの炭素を排出している,ということだ.しかし,公平さを達成する最善の方法は,これを排出量の削減目標に反映させることだ.豊かな国は,貧しい国よりも多くの削減努力を求められる.すなわち,より早期に,基準よりも急激な削減を約束する.削減目標に経済発展を加味し,貧しい国が追加も削減を行ったことに国際リンケージ・メカニズムを通じて資金が提供される.
こうしてパリ協定は,公平さと効率性とを確保する.
l フリーランスの労働組合
NYT DEC.
13, 2015
Seattle
Considers Measure to Let Uber and Lyft Drivers Unionize
By MIKE ISAAC, NICK WINGFIELD and NOAM
SCHEIBER
Don Creeryは新しいオートマチック車に投資し,シアトルでフルタイムの運転手になった.LyftやUberで利用者を求める起業家になったのだ.
しかし,それ以来,LyftやUberは運賃を引き下げ,ドライバーを求める追加の支払いもやめた.今やCreeryは1日に10時間から12時間も働かないと以前の収入を得られない.
月曜日,シアトル市議会は,Creeryのようなフリーランスの,呼び出しで働く運転手たちに,集団交渉の権利を認めるかどうか,投票にかける.もし認められれば,Creeryはアメリカで最初の,オン・デマンド契約労働者たちの組合,the App-Based Drivers Association, or ABDAを結成することになるだろう.
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The Economist November 28th 2015
Clear
thinking needed
Special
Report CLIMATE CHANGE: Hot and Bothered
Shanxi
province: King Coal’s misrule
Refugees in
winter: Icy reception
Charlemagne:
A continent like Belgium
From
dictatorship to democracy: The road less travelled
(コメント) 気候変動に関する考察が興味深いです.これほど市場システムに不向きな問題はない,と思いますが,ある意味では,どんな問題も市場化されてきたのです.気候変動がより困難であるとしても,価格や投資,生産構造の転換,関税など,市場を通じて参加者の反応を変えることができます.
難民,ベルギー,ミャンマーの記事も刺激的です.
The Economist December 5th 2015
Poland: Europe’s new headache
Japan’s criminal-justice system: Extractor,
few fans
Climate change: Raise the green lanterns
Lebanon: 546 days without a president
Bosnia 20 years on: Dating Dayton
Free exchange: The best is the enemy of the
green
(コメント) 日本の犯罪や司法に関して,英語圏あるいは欧米が批判的である,とは思いましたが,この記事は「自白」に基づく捜査・裁判や,囚人たちの抑圧的な生活を,根本的な人権無視として描いています.
気候変動に関する中国社会や指導部の変化,炭素税の導入に反対する勢力を抑える政治の改造手段を議論しています.
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IPEの想像力 12/21/15
クリスマスでも,土地に棲む神様の違いは,その住民を苦しめているようです.
ポーランドの民主化を称賛し、アラブの春に歓喜した者たちは、その後の変化に圧倒され,現状を受け入れることができないと思います.軍事政権が選挙で勝った民主化運動に権力を移譲するはずはない,という指摘を読むとき,ミャンマーの民主化についても強い不安を感じます。
The Economistの記事は,ミャンマーの民主化について助言しています.
l ロシアやタイは,新しく生まれた民主主義が容易に生き残れないことを示す.
l ブラジルやメキシコ(そしてポーランド!)が示したように,どれほど制限された選挙でも,それは民主化に向けた動きを刺激する.
l 南アフリカやスペインと同じように,ミャンマーの軍部も憲法を操作して民主化を成業できると考えた.それは部分的な改革を受け入れる前提であった.
l 改革を阻むことは,下からの蜂起を呼ぶことになる.そして,暴力はさらに大きな暴力を呼ぶ.平和的な運動が市民の参加を可能にする.
l 体制側と批判勢力との対話を可能にする制度が重要だ.ミャンマーのNLDと軍部と,両方から信頼される機関を持っていた.
l 隣国の友好関係や支援があることで,改革が進む.
l 反政府側の示す恩赦・免責が体制に柔軟な姿勢を促す.ただし,それが改革後に「裏の国家」を残存させる恐れもある.
l 東ドイツの秘密警察は徹底的に排除された.しかし,イラクのバース党排除が示すように,旧体制派を過度に排除すれば,政府の機能が失われる.
l 改革の成果を,市民たちに早期に届けることが重要だ.
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世界政治は民主化されるのか? 気候変動サミットに関して、アメリカと中国、インドの動きは興味深い。P.クルーグマンとFPの記事、The
Economistを読みました.
気候変動を抑えるためには,アメリカと中国が行動しなければなりません.アメリカは共和党が多数を占める議会がオバマのあらゆる提案を破壊します.中国やインドも,発展途上国の利益を,気候変動よりも重視します.
しかし,
アメリカの共和党員たちは気候変動を否定するか無視し、たとえ炭素排出量を減らしても中国が増やすだけだ、と主張していました。しかし、中国の政治は、大気汚染で都市の市民たち窒息するまで苦しめています。子供たちを守るため、彼らが政府に反抗することを、指導者たちは恐れているでしょう。
共和党員たちに反対は、オバマ政権を嫌うイデオロギー的なもの、大統領選挙にかかわる「文化戦争」の一部です。そうであれば、オバマ政権は合意内容を議会が認めるような弱い合意に抑え、しかし、合意に関する国際的な監視や中国の参加は成果にできるでしょう。さらに気候変動の抑制に向けた技術革新やクリーン・エネルギーの世界市場創出には、党派を超えて賛成するはずです。
なぜ世界炭素価格や炭素税は実現しないのか? The Economistは、炭素税によって損失を強いられる既存エネルギー産業の組織された少数者と、新しい受益者の分散した、不確定な性格を指摘します。反対派の政治力を嘆くより、技術革新や自由化の政治経済から学ぶべきです。反対派の損失に対する補償メカニズム、新しい投資分野への移行促進、また、外国における規制逃れを防ぎ、配宿削減への転換を促す保護関税の導入、を検討するように求めています。
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パリ講和会議は,かつて第1次世界大戦後にドイツに対する賠償金を求めてヨーロッパ経済と政治秩序の崩壊を導きました.J.M.ケインズはイギリス代表団を離脱し,会議に参加した政治家たちを厳しく批判したことで有名になりました.
2酸化炭素の排出と温暖化によって,世界全体に甚大な被害を与え,貧しい諸国の成長を制限しようとする豊かな諸国に対して,貧しい諸国が「賠償金」を求めたパリ講和会議が出した結論は興味深いものです.M.ウルフとJ.フランケルの前向きの評価はそれをよく示しています.
すべての国は、専門家の国際監視委員会によって、排出目標の達成に向けたプログラムとその成果を定期的に評価されます。グローバルなリスクに対する認識を共有し、それに貢献するガバナンスの競争が意識されるようになりました。そして、フリー・ライドを抑える圧力が、豊かな国も、貧しい国も参加するシステムを守る、諸大国の威信によって強められるのです。
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メリー,クリスマス,・・・ブッダ,ムハマド,孔子,空海,・・・そして,あなたへ.
万物があるべきところにあり,なすべきことがなされたとき,世界のどこでも,子どもたちが楽しみにするような祝日を迎えることができます.敬う聖人たちの中で,誰が特別に輝くこともない,子どもたちの歓声を穏やかに楽しむ、そんな時代が来るように.
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