IPEの果樹園2015

今週のReview

12/7-12

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日本は増税するしかない ・・・シリア空爆とイギリス労働党 ・・・シリア内戦と国際政治 ・・・気候変動と技術革新 ・・・ヨーロッパは解体する ・・・中国の5か年計画 ・・・グローバル通貨としての人民元 ・・・地政学の復活 ・・・Mark Zuckerbergの慈善事業 ・・・現代の奴隷労働

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, The Guardian, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, そして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]


l  日本は増税するしかない

Bloomberg NOV 26, 2015

Japan's Debt Trap Won't Fix Itself

By Noah Smith

クルーグマンでさえ国債について心配するときがある。それは、ギリシャでもアメリカでもなく、日本だ。

失業率の低い日本に、遊休資源はない。財政刺激策や金融緩和で経済を成長させる余地はほとんどゼロだ。しかし、日本は毎年、莫大な予算赤字を出し続けている。2014年も、GDP7.7%に達する赤字だ。

2014年の消費税引き上げによる税収の増加があり、企業の利益が増えたことと高い法人税率も2015年の財政を潤した。利払いを除くプライマリーな赤字は約3.3%に抑えられた。

しかし、3.3%でもまだ高い。長期的には、名目成長率よりも高い予算赤字は持続不可能だ。現在、日本の名目GDP成長率はおよそゼロだ。長期の潜在的な実質GDP成長率が、人口減少のせいで1%である。日本銀行は、その超人的な努力にもかかわらず、2%のインフレ目標を達成できていない。金利がほとんどゼロでも、毎年、GDP3.3%を政府が借り続けるのは大きすぎる。もし金利が上昇すれば、赤字は爆発する。

もちろん、政府はそれを知っているから、プライマリーな赤字を2018年までに1%に、2020年までにはゼロにする、と約束した。

しかし、その予測は非現実的だ。日本が長期の潜在的成長率を超えてGDPを拡大することを前提している。アメリカと同じように、日本政府も過度の楽観主義に頼る傾向がある。冷めた見方をする財務省の予測では、赤字は2.2%にまでしか減らない。そのためだけにも増税と政府支出の削減を必要とする。

1%の実質潜在成長率と1.5%のインフレ率を達成できると仮定して、漸く、2.2%のプライマリーな予算赤字が持続可能である。日本は破滅を免れるだろうか?

日本政府は、将来、もっと真剣に赤字を削減しなければならない。それは、政府支出を抑え、増税することを意味する。増税は短期的に需要を減らし、また長期的にはゆがみを生じて、経済成長を損なう。政府支出削減の方がよいけれど、それは高齢化し、人口減少する日本にとって、政治的に難しい。ますます多くの支出は年金や老人たちへの給付に向けられているからだ。

このまま赤字を続ければ、ある時点で、日本政府はデフォルトするか、日本銀行による財政赤字の直接金融に頼ることになるだろう。直接金融は最終的にハイパーインフレーションをもたらし、すべての政府と民間の債務をデフォルトにする。

いずれの場合も、日本の金融制度とビジネスは崩壊する。日本の債務はほとんど国内において融資されているから、それでも問題ない、ということかもしれない。結局、債務がなくなって、ビジネスは再生し、新しい金融制度が現れ、労働者たちも何か仕事を見つける。しかし、経済生活の破壊はあまりにも強烈で、日本の政治を過激な運動に占拠させるかもしれない。極左の力がない日本で、それは極右の政治運動となるだろう。そのような体制が採用する政策の失敗で、日本は豊かな先進国という地位を失ってしまう。

こうした悪夢を逃れる道はある。しかし、このままでは難しい。高齢者への給付を削減できれば良いが、おそらく、増税するしかない。


l  シリア空爆とイギリス労働党

The Guardian, Friday 27 November 2015

The Guardian view on the politics of bombing Syria: Labour at war

Editorial

労働党の115年の歴史において、戦争はいつも激しい党内論争を生じた。

1982年のフォークランド紛争から2013年のリビア介入まで、反戦グループは常に反対した。2013年には、反対派に反乱が起き、エド・ミリバンドを含めて戦争支持の集団が指導部に反対し、シリア内戦への介入に賛成するロビーになった。当時は、それがアサド政権を攻撃するものだった。

首相がシリアへの空爆拡大を指示するとき、それは労働党を苦しめた。イラク戦争をめぐる分裂が続いている。コービン党首は対立を回避して自由投票に向かうかもしれない。それはこの問題に対する労働党の解体だ。

多くの賛成派議員は、国連安保理による軍事介入の要請があることを前提に、議論している。

戦争と平和をめぐる選択が、政治の一時的な判断で迷走することがあってはならない。

FT November 27, 2015

Cameron’s case for action on Syria merits support

The Guardian, Sunday 29 November 2015

Should parliament endorse UK air strikes in Syria?

David Davis

The Guardian, Tuesday 1 December 2015

David Cameron has failed to show that bombing Syria would work

Jeremy Corbyn

聖戦主義者から支配領域を取り戻す地上軍が存在する、という首相の説明は、基本的な吟味にも耐えられない。

彼の計画、戦略、地上軍、外交、テロリストの脅威、難民、市民の犠牲者に関して、首相の提案が整理されていないことは、ますます明らかになってきた。

イスラム国家と呼ばれているISILがイラク、シリア、リビアの領域で数百万人を支配し、われわれの国民にとっても脅威になっていることは明らかだ。しかし問題は、イラクからシリアに英軍の空爆を拡大することで、その脅威を減らせるか、あるいは増大させるのか、ということだ。ISILの展開するテロとの戦いを中東で行うべきなのか?

首相は、シリアでの空爆が、すでに行われているアメリカ、フランス、ロシアなどによる空爆に加えることで、どのようにISISLの支配領域拡大に重大な影響を与えるか、説明しなかった。英軍の参加は決定的なバランスを変えるものではない。

先週、首相は、クルド人部隊や、穏健派のFSAISIL支配領域で行動できないことを認めた。空爆する領域で支配的な勢力は、一層強力な聖戦主義者や過激なサラフィストである。それゆえ、空爆の強化は西側の地上軍を必要とするのだ。首相はそのことを何も言わない。

パリ攻撃後の安保理決議2249は、英軍の空爆を正当化するものではない。しかし、加盟諸国にISILの支配領域に資金や石油、武器の供給を断つことを求めたものとして、好ましい枠組みだ。また、軍事的、外交的な国際協力が進展しているとも言えない。

首相は、シリアへの空爆がイギリス国民に対するテロの脅威に影響することを語らなかった。また市民の犠牲者、シリア難民に関して、彼は真剣な評価を何も示さなかった。

最も重要なことは、キャメロンが、イギリスによるシリア空爆で戦争の包括的な交渉による政治解決に向けてどのように役立つか、まったく説明できないことだ。それ(政治解決)がISILを敗退させる唯一の道であることは広く認められている。シリアで広範な基礎に立つ、国民多数が支持する政権を交渉しなければならない。そのような解決策の中で、国際的な支援を受けた地域の軍隊が支配領域をISILから奪還するしかない。

中東における14年間の戦争は、私の党首選を導くテーマであった。議会がいかに迷走したとしても、戦争の教訓から学ぶことが重要だ。西側の軍事介入を思い出せば、英軍のシリア空爆はオバマ大統領が「意図せざる結果」と呼んだ以上のリスクを意味する。

The Guardian, Tuesday 1 December 2015

We need Chilcot’s lessons from Iraq now – before we bomb Syria

Richard Norton-Taylor

FT December 1, 2015

The slow death of the British Labour party

コービンJeremy Corbynが労働党の指導者に選出されて3か月たつが、イギリスに中道左派は内部対立によって崩壊しつつある。多くの労働党議員たちは、左派強硬路線を貫くコービンに反発し、特にイラクとシリアにおけるISISへの空爆を拡大する下院の投票で、それが顕著になった。

生涯にわたって非戦論者のコービンは政府提案に反対し、シリア内戦にイギリスは平和的な解決策をとるべきだと主張した。影の内閣閣僚を含む、少なくとも50人の議員がキャメロン首相を支持するだろう。政府の軍事的強硬策に対して、地上軍の支援が得られない限り、それは成功しない、というコービンの主張にも聞くべき内容がある。

しかし、党内の反対派を抑えられないコービンは、この問題を自由投票にした。それは労働党指導者として、彼のこれまでの対応にも問題があったことを示している。党首を争う党内選挙では、労働党議員の10%しかコービンを支持せず、一般党員に同じ投票権を与える方式で、左派による動員が勝利をもたらした。

コービンは、党内対立にも、草の根的な支持を得ている、と考える。しかし、より穏健な労働党議員たちは、彼らの役割は党内の左派活動家が主張することを繰り返すことではなく、すべての有権者を代表し、国益に従って行動することだ、と政党に主張している。

コービンが党首である限り、容易に出口は見えない。このままでは、主要政党としての労働党を彼が破壊するだろう。

FP DECEMBER 1, 2015

David Cameron’s Damned-if-You-Do Islamic State Strategy

BY ALEX MASSIE

The Guardian, Wednesday 2 December 2015

In Oldham, Jeremy Corbyn is just another face of ‘poncified’ Labour

Rafael Behr

FT December 2, 2015

Britain’s Syria debate is more about symbols than substance

Gideon Rachman

議会がシリアにおける軍事行動を承認するかどうか論争している。それはイギリスがアフガニスタンとイラクで戦争を始めたときとよく似ている。しかし、実際は全く違うものだ。

軍事行動は、地上軍を含まず、非常に限定された結果しかもたらさない。すでにイラクにおいてイギリスは空爆を行っている。アメリカ、フランス、オーストラリアなど、先行する諸国に従うことを求めているだけだ。その内容は、2013年に議会がシリア空爆を拒んだ論争にも及ばない。議会の投票は、新しい宣戦布告に関するものではない。イラク戦争で最初の爆弾を落として以来、イギリスはISISと戦争している。

この論争は、その中身よりシンボルが重要なのだ。労働党のコービン党首は、いくつかの重要な点を指摘した。戦争を終わらせる政治的・軍事的戦略を欠き、アフガニスタンとイラクでは軍事介入が失敗した。しかし、キャメロンはそれをすべて知っている。だから軍事行動を厳しく限定しているのだ。

イギリス政府が空爆に参加するのはシンボリックな理由である。西側の反ISIS同盟に参加すること、フランスとの連帯を示すこと、イギリスがもはやグローバルな安全保障に積極的に参加しない、という印象を否定することだ。

こうした理由は中身のない、疑似薬で効果を試すようなものに聞こえるかもしれない。しかし、空爆に参加しない、という決定は、それと逆の効果を持つことをしっかり理解しなければならない。

空爆に反対するのは、その効果に対する懸念を持つ理性的な者だけではない。元ロンドン市長のKen Livingstoneは、彼の自宅を2005年に爆破したテロリストたちを、イラク戦争に対する抗議のために「命をささげた」と述べた。元下院議員のGeorge Gallowayは、サダム・フセインを卑屈に称賛した。

イギリスが、Livingstone-Corbyn-Gallowayのような見解を支持すれば、きわめて混乱し、弱体化したという強烈なシンボルになるだろう。それこそが、議会が英軍のISIS攻撃参加を承認する上で、重要なのだ。

The Guardian, Thursday 3 December 2015

Some MPs have agonised over Syria. But many are fighting other wars

Polly Toynbee

共通の敵を倒すために、たとえ道義的に受け入れがたい敵とも同盟を組む。すべての独裁者を倒すことはできないが、可能な時には介入する。こうした判断は、間違ったケースにおいて、事態を悪化させた。

この混乱した戦争状態に参加することを、よく知ることだ。


l  シリア内戦と国際政治

The Guardian, Friday 27 November 2015

I know Isis fighters. Western bombs falling on Raqqa will fill them with joy

Jürgen Todenhöfer

パリのテロ攻撃があってから、西側の政治家たちはテロリストが用意した罠にまっすぐはまり込んだ。911後、そうであったように。

2001年、山岳地帯the Hindu Kushに数百人のテロリストがいて国際社会の脅威となっていた。今や、テロとの戦いは推定100万人のイラク人の命を奪い、10万人ものテロリストたちとわれわれは対峙している。ISISはイラク侵攻から半年後に結成された、ブッシュの子供である。

シリアの都市ラッカは、人口わずか10万人だが、フランスのオランド大統領が標的として爆撃している。アメリカ、ヨルダン、ロシア、シリアの戦闘機が空爆しているが、それを強化するものだ。イギリスももうすぐ加わるだろう。軍事キャンプや武器庫に見えるものは何でも、小さな工場、コミュニティの集会所、病院であっても、フランス軍が爆撃している。アラブ世界には、毎日、ラッカで死んだ子供の写真が届いている。ISISは写真を流布し、テロリスト志願者が増える。

国家元首として、オランドはその頭を冷やし、理性を持つべきだ。都市ゲリラを爆撃で敗退させることはできない。ISISの戦闘員が隊列を組んでパレードするのはビデオ撮影のためだけであり、カメラの外では群衆に紛れ、その土地の家族たちが住むアパートに分散している。シリアに西側が地上部隊を送ることも、ISISが願う究極の夢だ。もっぱらイスラム教徒たちを殺害するのではなく、彼らの描く勧善懲悪の世界で、その土地を守ってアメリカ、イギリス、フランスと戦う。

こうした狂信的な戦闘員たちは、軍事訓練に優れ、死ぬことを恐れない。西側の兵士たちは生きることを願う。軍事的手段で西側がISISを圧倒することはできない。

しかし、ISISを敗退させる方法はある。1.アメリカは、湾岸諸国によるシリアやイラクのテロリストに対する武器供給を止める。2.西側は、トルコがイスラム国家との境界線を封鎖し、新しい戦闘員の供給を止めるのを助ける。3.西側は、ISISを支持するシリアとイラクのスンニ派住民が、国民的な和解と政治統合に参加するよう求める。

ISISは、抑圧されたスンニ派住民を水として、そこで泳ぐ魚である。水がなければ、魚は死ぬ。

SPIEGEL ONLINE 11/27/2015

The Answer to Terror

We Need Determination, Not Saber Rattling

An Editorial by Klaus Brinkbäumer

パリのテロ攻撃はヨーロッパに対する脅威を示している。しかし、戦場のレトリックは過剰である。平静さと固い決意こそが、われわれの姿勢である。そして、たとえ好ましくない相手とでも、広範な反IS連合を組むべきだ。

50年前から、世界はグローバリゼーションを考えてきた。経済学、企業、貿易、雇用。そして、一国が風力発電を行っても、他国が大量の石炭を燃やす火力発電所を建てるなら、気候変動は解決しない、という問題があることを知った。また難民危機は、発展した世界と途上諸国とが切り離されないことも学んだ。

現代の情報技術は互いを結びつけて、経済的、政治的、品減的な側面で、世界は一つになっている。今や、テロもそうだ。

ドイツはどうすべきか? イスラム国家のテロは西側だけを狙っているのではない。そのイデオロギーはイスラムのワッハーブ主義による解釈だ。それは西側のパートナーであるサウジアラビアが実践する、野蛮な、中世的思想である。

イスラム国のテロは、エジプトのような専制国家体制や、イラク、シリアのような破たん国家で、経済の壊滅と、多数の若者たちが怒りと無力感に取り残されたところに繁殖した。しかも、こうした無力感は、今やアラブ世界全体に広がっている。

イスラム国のテロは、驚き、不安、衝撃を与えることが目的だ。しかし、シリアやイラクの外で、戦争は起こせない。明らかに、第3次世界大戦ではなく、テロである。イスラム国は諸国の基礎を破壊することなどできないし、気候変動が人類ン位及ぶす長期的に脅威にも及ばない。

健全な民主主義国家は、ドイツのように、自由を信じる市民の勇気に依拠して対抗できる。警察や情報機関を強化しなければならないが、それは市民社会の自由を損なわないように行われる。企業、メディア、個人を監視することは排除する。

ヨーロッパが強固に、戦略を持って、フランスの報復攻撃を支持するには、シリア内戦を終わらせるすべてのことを実行しなければならない。ロシアとイランがアサド政権を維持しようとするなら、イスラム国に対する攻撃でロシアの参加を必要とする以上、当面、アサドの辞任要求は取り下げる。その国王としての威厳を守った退任を受け入れるだろう。戦術的に、エジプトのシシ、トルコのエルドアン、イラク政府とも、われわれは対話しなければならない。

教育と将来への希望だけが、アラブ世界の無力感を打破できる。その感覚こそ、イスラム国やヒズボラ、アルカイダが登場する前の世界を満たしていたのであり、イスラム国後の世界には許されない。必要なものとは、冷静な意思決定、平静で、断固とした外交だ。戦争をたたえる言葉ではない。

国連による仲介が機能することも重要だ。

Project Syndicate NOV 27, 2015

Combating Terrorist Recruitment

GARETH EVANS

Project Syndicate NOV 27, 2015

New Refugee Homelands

ANNE-MARIE SLAUGHTER

テロと難民について、安全保障と人道的視点とをバランスした長期的解決策は、時とともに、見いだされるだろう。

テロリストが難民に紛れてやってくる、というのは正しくない。少なくとも、パリのテロを実行したものの多くが、過激化した国民であった。また、難民は世界に6000万人いると推定される。それは人道的な受け入れを従来のやり方で続けても、決して解消されない規模である。もし難民が集まって国家を形成すれば、フランスに匹敵する。

世界はこの双方について、まったく新しい、21世紀の解決方法を求めている。難民の割り当てや一時的な難民キャンプに暮らして帰還を待つのではなく、彼らが暮らせる新しい都市を建設することだろう。そこで数百万の難民たちが、安全に暮らし、生活を改善できる。教育や企業、母国や世界に広がる友人や家族ネットワークを利用できる。

エジプトの資産家がギリシャの島を借りて、難民を受け入れるためのインフラに投資したように。中国が内陸部に数百万人規模の都市を建設し、経済・社会活動のネットワークを機能させる結び目にしているように。

こうして、みじめな、怒りに満ちた難民たちが、テロリストの勧誘に適した暴力の広がる難民キャンプではなく、よりより生活の再生に向かう。

同時に、西側社会に生じるテロリストの期限が、しばしば限られた交際範囲や親族に集中していることが分かってきた。あたかも伝染病の感染経路をたどるように、過激なイデオロギーによるテロ攻撃の危険性は、こうした感染地図を描くことで効果的に予防できるかもしれない。

Project Syndicate NOV 27, 2015

Putin’s Syrian Roulette

OMAR ASHOUR

Bloomberg NOV 27, 2015

Europe Isn't Doomed to a Clash of Civilizations

By Pankaj Mishra

パリのテロで、ヨーロッパに醜い偏見が急増している。世界が文明の衝突に向かうというSamuel Huntingtonの結論をまぬかれるのはむつかしいと感じるかもしれない。

しかし、ヨーロッパは自分たちを何度も作り変えた歴史を持ち、異なる未来が存在している。

ヨーロッパの諸制度はグローバリゼーションの状況に応じて国益を追求するために作られた。テロ、気候変動、国家の解体、大規模移民、難民、資本移動、デジタル・メディア、超国家機関への忠誠心、など。そして、多数の矛盾が生じているのは当然だ。

イギリスの政治家たちは、移民の経済的な必要性を知っていながら、極右の移民排斥論と、その保守的な政治基盤を恐れ、同調している。しかし、イギリス経済は外国資本に寄生しており、政治と多国籍企業のビジネスとの間で、人が入れ替わることにより、移動性に富むグローバル・エリートの地位を政治家は楽しんでいる。

イスラム教徒の人口がいくら増えても、フランスやイギリスは、現地住民の反乱を軍事的に弾圧した帝国の歴史を、捨て去るわけにもいかない。

イタリアの活発なレンツィMatteo Renzi首相が、パリのテロに対して示した提案は面白い。テロ対策の20億ユーロから半分を、大都市の郊外で孤立する若者たちのために、彼らがイタリア社会と文化に積極的に参加できるように支出する、というのだ。また、ドイツのメルケル首相がシリア難民に示した人道主義的な支援策も、大きな賭けである。

レンツィもメルケルも、エスニック集団に依拠した国民国家というヨーロッパの旧モデルが機能せず、選挙において一層の孤立を支持し、国内、国外の「外国人」を敵視することを知っている。しかし、それは破滅的な対立を煽り、経済的な衰退をもたらす、破局のレシピである。

グローバル化して緊密に統合化する世界は、18世紀、啓蒙主義者たちの世界市民という理想である。過度に中央集権化し、弾力性を失った共和国フランスは、ヴォルテールやルソー。カントを嫌うだろう。

もしヨーロッパがその社会・政治モデルの転換に失敗すれば、ヨーロッパだけでなく、それと緊密に縫い込んだ世界そのものが、慢性的な内戦状態に向かうだろう。

Bloomberg NOV 27, 2015

Memo to Putin: Syria Is Turkey's Ukraine

By Marc Champion

ロシアの指導者たちは、トルコがロシアの戦闘機を撃墜するよう決定したことにショックを受けた。それは、トルコがイスラム国家を支援し、密輸された石油の利益を得るために行ったのだ、とロシアは言う。要するに、ロシアがやっていることと同じだ。

プーチンは、隣国で内戦が起これば、何世紀か前に崩壊した旧帝国の中は国境を無視し、ロシア人がそんな境界線を受け入れることはない、と考える。隣国の軍隊がロシア人を攻撃すれば、プーチンはどうするか?

The Guardian, Friday 27 November 2015

Cameron is right about Syria – but the outcome now depends on Russia

Natalie Nougayrède

NYT NOV. 28, 2015

Spain Yesterday, Syria Today

Ross Douthat

1936年から1939年まで続いたスペイン内戦は,1930年代のドラマを集約したものだった.スターリニズムに関する左派の幻想はスペインで死滅し,ヒトラーの電撃戦が誕生した.それは市民に対する空爆と政治的な動機で行われる「クレンジング」を常套手段とした.それは全体主義的諸大国の代理戦争であり,西側世界から志願兵を集め,ヨーロッパのリベラルな民主主義が機能しないという教訓となった.

同じように,シリア内戦は現代の焦点である.湾岸諸国とイランとのイデオロギー的な代理戦争であり,地域的な,グローバルな大国(ロシア,アメリカ,フランス,トルコ)が介入している.野蛮さはエスカレートしているが,世界中からイデオロギーによって動員された志願兵が集まり,リベラルな勢力は戦争を終結させる力がない.

大きな違いは,スペイン内戦が比較的速やかに終わったが,シリア内戦には終わりが見えないことだ.シリア内戦は,第3次世界大戦の前触れではないとしても,異なる邪悪さの前触れである.制度の崩壊,際限のない無秩序,こうした問題を扱うために設けられたグローバルな枠組みの失敗.いわゆる国民国家が中身のないものであったことを示している.

Project Syndicate NOV 30, 2015

Preserving the Ottoman Mosaic

CARL BILDT

多民族・多文化・多言語で数百年間の平和を維持し、イスタンブールのスルタンが絶対権力を示す中で繁栄し、統合されていたオスマン帝国が崩壊して以来、その地域に安定した秩序は構築できていない。そのモザイク的な構造から、バルカン半島で始まった国民国家形成の動きは、決して完成することなく、破滅的な戦争状態の20年間もたらした。最初は20世紀の初め、第2回目が1990年代であった。

オスマン帝国を解体して、国民国家に分割することで安定化できる、という机上の空論をもてあそぶ専門家たちは、すべて失敗に終わった。

FT December 1, 2015

Success in Syria depends on influence in Moscow

Dennis Ross

FT December 1, 2015

Turkey still sees Kurdish nationalism as bigger threat than Isis

David Gardner in Beirut

FP DECEMBER 1, 2015

Top U.S. Diplomat: Political Solution to Syria Civil War Now in Sight

BY JOHN HUDSON

NYT DEC. 1, 2015

ISIS Promise of Statehood Falling Far Short, Ex-Residents Say

By BEN HUBBARD

ISISが軍隊であることを超えて、事実上の国家統治を実現している、という主張は現実に反している。空爆が続く中で、公共サービスは止まり、兵士たちは逃げ、密輸と略奪、そして、ますます減少する住民への税賦課が増大する。

Project Syndicate DEC 2, 2015

The Syrian Knot

JOSCHKA FISCHER

NYT DEC. 2, 2015

Putin’s Syrian Misadventure

Thomas L. Friedman

要するにプーチンは、シリアで「巧妙な」チェスを演じながら、結果的に、多くのロシア人の犠牲者を出したのだ。今や、トルコやイランとも敵対し、ウクライナを弱体化し、スンニ派イスラム教徒を大量に殺害したアサドの弁護士になっている。ロシア国内には、同じスンニ派が多数いるのに。ISISへの攻撃は何ら成功していない。

われわれは、権力を分け合う政権を求め、ISISを掃討し、再生を阻む軍事力を必要とする。

FP DECEMBER 2, 2015

Russia Pours Hot Oil on Wounded Ties With Turkey

BY KEITH JOHNSON

FP DECEMBER 2, 2015

A Vision for a Moderate, Modern Muslim World

BY YOUSEF AL OTAIBA

FT December 3, 2015

How history echoes Syria’s unholy war

Philip Stephens

中東の戦争状態は,宗教を同期とした「聖戦」が決して「神聖な」戦争ではないことを私たちに思い出させる.ヨーロッパは17世紀に,諸大国が参加する30年戦争でこのことを学んだ.シリア内戦でも,中東の諸大国はウェストファリア条約を結ぶのか?

それがどれほど困難であっても,指導者たちは合意するべきだろう.イラン,サウジ,トルコ,ロシアは,その信仰や他国への不安を,国際条約によって克服できるまで,イスラム国家の膨張と殺戮の世界に住み続けるしかない.

Project Syndicate DEC 3, 2015

Why Putin Makes a Bad Ally

PAUL R. GREGORY

NYT DEC. 3, 2015

Terror From Europe's Future Street

Roger Cohen

FP DECEMBER 3, 2015

For Putin, the War on Terror Makes for Good Politics

BY REID STANDISH

YaleGlobal, 3 December 2015

A War of Priorities in Syria

Chris Miller


l  科学と技術と政治

FT November 27, 2015

Earth’s biggest rivals bid to escape the atmosphere

John Thornhill

FT November 27, 2015

Science: The clone factory

Charles Clover and Clive Cookson

The Guardian, Sunday 29 November 2015

Silicon Valley exploits time and space to extend the frontiers of capitalism

Evgeny Morozov


後半へ続く)