前半から続く)


l  ロボットの未来

FT November 20, 2015

Robots will enrich not replace us

David Willetts

ロボットが我々の仕事を奪いに来る。Martin Fordがその著書The Rise of the Robotsで主張する。イングランド銀行の主任エコノミストAndy Haldaneも、先週、イギリスで1500万人の仕事が機械化されるだろう、と警告した。

技術革新は、いつも、職場にある者にとっての脅威である。自動運転の開発競争がそうだ。電化は第2次産業革命を導いたが、余計なものとなった産業で多くの職場が放棄され、旧来の熟練で生きる労働者たちを置き去りにした。長年の労働によって得られた熟練が、今や、何の価値もない。

それゆえ大学卒業生が、徒弟奉公人よりも、長期的に所得を増やしたのだ。彼らの方が技術変化に対する適応力が高いからだ。

かつて工業都市は炭坑や水の供給地に隣接したが、それは機械を動かすためであった。次第に機械が自立して、工業都市は衰退した。今では産業集積が大学や研究機関の周辺に形成されている。

しかし、ロボットや機械化が特製の職場や産業を苦しめても、経済全体としてはそれに適用できる。工業化は職場を激変させて、旧産業を消滅させるが、他方で、働く人々の数は増大した。その発展経路は今も続いている。技術進歩は消費者に途方もない利益をもたらす。より安価な商品、かつて誰も想像できなかったような新しい商品をもたらすからだ。

ロボットに対する偏った恐怖がアメリカに見られるのは、労働者を犠牲にして、企業が利益の大部分を取得し、しかも、労働市場への参加が減少しているからだ。それはロボットの性ではなく、アメリカの政策の失敗に責任がある。

イギリスでは、技術革新が進むことではなく、それが十分に早く市場に波及しないことが問題である。政府は雇用者の旧来の職場を守るためではなく、機械化やロボットへの投資を支援するべきだ。新技術は既存の大企業にとっての脅威である。

ロボットが職場を奪うことではなく、労働者たちが引退するよりロボットの普及が遅いことの方が問題だ。出生率の低さと移民への反対が、日本をロボット開発の指導的な国にした。高齢者のための支援ロボットも開発している。

産業がロボットを迅速に採用しないのは、それを機械として、既存の工場安全性により制限するからだ。ロボットは人間から遠ざけるのではなく、もっと弾力的に使用するとき、その能力を発揮する。あたかも同僚であるかのように。

公共政策の主要テーマの1つとして、ロボットからの収益を市民の間でどのように分配し、レジャーを増やすか、と議論する未来が来るだろう。われわれには働くもの以上に多くの仕事がある。ロボットは、脅威ではなく、その解答なのだ。


l  金融の未来

Project Syndicate NOV 20, 2015

The Fed’s Dollar Distraction

GITA GOPINATH

Bloomberg NOV 22, 2015

The Future of Finance

By Clive Crook

Adair Turnerの新著"Between Debt and the Devil"や、John Kay’s "Other People's Money," Alan Blinder's "After the Music Stopped"は危機後の金融について考察する。

Kayの姿勢は金融の在り方を問い直す点でユニークだ。金融システムは何のためにあるのか? 現代の金融経済はその理想からどれほど離れてしまったか?

金融は、余剰資金を持つ家計と、投資のための借り入れを必要とする企業や政府とを仲介する。金融仲介サービスの価値は、こうしたエンド・ユーザーの間に存在する。

Kayの視点からは、現在の金融経済はウォール街やシティのためにあり、こうした金融仲介ではなくなっている。その恐るべき複雑さは、仲介を取引することを仲介する商品を取引する仲介業のものである。金融ビジネスが現在のように大規模化する必要はない、と彼は考える。さらに厳格で、複雑な規制をすることにも彼は反対する。たとえば「トービン税」は、意図しない結果を生じるだろう。

正しい対策は、金融業に与えられている補助金を取り除くことだ。そうすれば、市場の力が金融を正しい方向に誘導する。それは単に、自己資本の増強、だけではない。政府による保護がなければ、多くの銀行はリスクの高い金融取引に見合った自己資本を得られない。それゆえ預金に依拠する銀行は、特に安全な資産だけを保有する。つまり、事実上の、ナロー・バンキングだ。

Kayは、グラス=スティーガル法の商業銀行と投資銀行の分離よりも、もっと進んだ改革を支持する。金融ビジネスは、最終のユーザーたちの異なった需要に特化した、小さな専門銀行群になる。零細企業への慎重な融資を成功させるには、精緻な方程式やロケット・サイエンスよりも、かつての銀行家たちが持っていた専門知識を再発見することが重要だ。

企業家たちとの長いランチや、ゴルフ・コースでの対話で得る情報が、Bloombergの金融情報よりも有益だろう。

FT November 24, 2015

QE has clouded market vision on what is normal

John Plender

VOX 25 November 2015

Perils of central banks as policymakers of last resort

Refet S. Gürkaynak, Troy Davig

FT November 26, 2015

Ireland should beware a return to boom and bust


l  ユーロ圏改革

VOX 20 November 2015

Rebooting the Eurozone: Step 1 – Agreeing a Crisis narrative

Rebooting Consensus Authors

CEPRの政策評価を利用して、ユーロ圏EZ改革のための合意形成を図ることができるだろう。なぜEZ危機は起きたのか? 危機の主要な原因とその物語を共有するべきだ。

最後の貸し手がなく、通貨価値の切下げができないために、危機は「突然死」として起きた。それらが‘sudden stop’ crisisとしての条件である。

VOX 20 November 2015

Reinventing financial regulation: A blueprint for overcoming systemic risk

Avinash Persaud

Project Syndicate NOV 26, 2015

Can the Islamic State Unify Europe?

HANS-WERNER SINN


l  中国の貿易と投資

NYT NOV. 20, 2015

Brinkmanship in the South China Sea

By THE EDITORIAL BOARD

FT November 25, 2015

China’s most powerful weapon is trade

David Pilling

オーストラリアは、中国との貿易によって20年も不況を免れた成長を続けてきた。しかし、他方では安全保障に関してアメリカに大きく依存している。この双方の関係を維持することはむつかしい。

南シナ海の領海や軍事衝突を問題にするより、中国がアジア諸国に及ぼす、貿易や投資の増大が持つ影響力を重視しなければならない。また、パキスタンのように、脆弱な、貧しい発展途上国が、中国とアメリカに支援を受けるため、その姿勢を何度も転換して報酬を得てきた。インドネシアは、日本の新幹線導入を何年も交渉した末に、最後の瞬間で、中国からの法外な好条件を選択した。

アメリカのTPPや世界銀行、アジア開発銀行に代えて、中国はOne Belt, One RoadRCEP、そしてAIIBを用意している。イギリスでさえ、中国の旺盛な購入・投資意欲と好条件に、その外交姿勢を転換したのだ。


l  デイトン合意

FP NOVEMBER 21, 2015

The Town Dayton Turned Into a Garbage Dump

BY VALERIE HOPKINS

FP NOVEMBER 22, 2015

The Bosnian War Cables

BY COLUM LYNCH


l  ヨーロッパの自由移動

FT November 22, 2015

Brussels bows deeply to Erdogan to relieve migrant crisis

Alex Barker in Brussels

NYT NOV. 21, 2015

‘The Statue of Liberty Must Be Crying With Shame’

Nicholas Kristof

Bloomberg NOV 25, 2015

Want to Get Richer? Accept Refugees

By Leonid Bershidsky

シリア難民に関する政治論争が来西洋の両岸で荒れ狂っている。しかし、難民流入の効果は、成長にプラスであるだろう。

西側世界で最大のシリア難民流入国となるドイツは、来年、GDP0.2%上昇させ、12.5%の成長に達するだろう。それはもっぱら政府支出の増大によって生じる。ドイツ政府は、難民1人当たり約12000ユーロを支出する。それはブラックホールに吸収されるのではなく、国内需要を増加させる。ドイツは財政緊縮を緩和するべきであったとき、難民たちがメルケルの心を開いたのだ。

なぜ難民に関連して支出するのが効果的なのか? ドイツ人が子供を産むのを増やすとしたら、それは遅く、労働力の減少に間に合わない。政治的に受け入れられる説明としては、難民流入で、現地の官僚、社会サービス、教育で雇用が増える。それは難民ではなく、自国民の雇用だ。そして、労働力が増えることで、彼らを雇用する経営者も増える。

2011年以来、200万人以上の難民を吸収しているトルコで、すでにそれらが起きている。難民の多くは労働許可もなかったが、インフォーマルな、低学歴の、女性のトルコ人労働者と、大規模に入れ替わった。そして、トルコ人労働者は上位の職種に移動し、女性の就学率が上昇した。

しかも、難民たちには資産を持つ者がおり、受け入れ国では投資や起業が増える。

NYT NOV. 26, 2015

Donald Trump, Meet a Syrian Refugee Named Heba

Nicholas Kristof

FP NOVEMBER 25, 2015

How to Save the Schengen Zone

BY KATHLEEN R. MCNAMARA

主権国家間を,パスポートを見せることもなく移動できるのは,EU21世紀のガバナンスとして得た主要な成果である.グローバリゼーションについて多くの人が語るが,労働者も,引退した者も,学生も,ヨーロッパのどこにでも暮らせる.それは,メキシコ人,カナダ人,アメリカ人には想像できない.

シェンゲン協定は,政治的にEUが正当性を維持するカギでもある.EU1992年に「EU市民」という法的概念を創造した.それは国民国家型モデルを根本的に現代化するものである.これらの記録は新しいアイデンティティを生み出した.

しかし,ユーロ圏の危機が示したように,EUは不完全な政治統合により深刻な問題を生じている.ユーロができたことに応じる,政治,財政,銀行制度がなく,通貨危機の源泉となっているのだ.シリア内戦と難民危機は,EUが新しい治安システムを築いていないことを示している.EUの国境警備や諸国間で情報収集の共有化が必要だ.

移動の自由は意図しない結果としてイスラム国家のテロ攻撃に結びついた.歴史において,すべての新しい政治体が生き残れたわけではない.


l  イギリスの財政支出計画

The Guardian, Monday 23 November 2015

Welcome to Austeria – a nation robbing its poor to pay for the next big crash

Aditya Chakrabortty

FT November 25, 2015

Autumn Statement: Osborne takes gentler route to same destination

Martin Wolf

FT November 25, 2015

Autumn Statement: An artful chancellor eyes the long-term target

FT November 25, 2015

Osborne’s skewed Britain is no country for young men

Matt Whittaker

FT November 25, 2015

Autumn Statement: Osborne’s tax credit U-turn is sign of weakness

Janan Ganesh

FT November 26, 2015

The fantasy of Britain as ‘most prosperous economy’

Martin Wolf


l  経済再建と政府の内外の模索

Project Syndicate NOV 23, 2015

A Hard Look at a Soft Global Economy

MICHAEL SPENCE

政府債務を減らす最善の方法が,名目GDPを増やし,財政支出を削ることだ,というのは健全な姿勢ではない.

中央銀行だけでは成長を実現できない.金融政策を補完する改革や伝達経路を政府が改善し,マイナスの副作用を回避するべきだ.

より多くの政府投資や民間投資を効率的に行うことができない現状に対して,その障害を取り除くべきだ.さらに政府は,再分配を行い,基本サービスを供給し,進行中の経済構造の変化に労働者たちが利益を受けられるように,諸手段を採用しなければならない.

Project Syndicate NOV 24, 2015

The Trouble with International Policy Coordination

JEFFREY FRANKEL

30年間の沈黙を破って、マクロ政策の国際政策協調が政策担当者たちの話題に上がっている。ほとんど国で成長の回復は遅く、アメリカでは金利の上昇が控えている。しかし、残念ながら、国際政策協調が無視された理由は今も同じようにある。

国際政策協調の昂揚期は、1978年から1987年まで、G7のボン・サミットで始まり、1985年のプラザ合意を含む。だが国際政策協調の利益は疑われている。例えば、ドイツ人は、ボン・サミットで財政刺激策の協力に合意したことを悔やんでいる。なぜなら、結局、1970年代後半のインフレに病んだ時期に、リフレーションは間違った目標であることがわかったからだ。同様に、日本人は、プラザ合意で過大評価されていたドルの減価に成功した後、円高が進んだことを悔いるようになった。

さらに、新興市場の世界経済や通貨に占める役割がますます重要になるのと並行して、グローバル・ガバナンスの改革は進まなかった。それゆえ、彼らの成功は国際政策協調の障害になったのだ。

2008年の世界金融危機に対して、国際政策協調が、新興市場を多く含むG20で再現した。20094月のロンドン・サミットでは景気拡大政策の協調が、2010年のソウル・サミットでは新興諸国のIMF分担金の増額が合意された。しかし、恥ずかしいことに、アメリカ議会はその承認を拒んでいる。

しかしその後、国際政策協調論者が嘆く「通貨戦争」が起きた。1930年代に起きた為替切下げ競争である。その懸念は、中国など、新興市場で、通貨の増加を妨げる市場介入が行われているという不満や、逆に、アメリカ連銀、日銀、ECBの量的緩和が、ドル、円、ユーロの減価をもたらしたことへの不満となった。最近の国際政策協調論は不安から要求される。インド準備銀行のRajan総裁のように、アメリカ連銀は金利引き上げが新興市場に及ぼす影響を考慮していない、という批判がある。

アメリカは競争的な原価を防ぐため、20132月のG7閣僚会議や、201511月のTPPの付帯合意条項として通貨操作を含め、さらに違反国への貿易制裁を模索している。

国際政策協調はゲーム理論でさまざまに解釈できるが、その前提と違って、各国は異なるゲームを演じているのだ。アメリカは、景気刺激策の国際政策協調、貿易を通じたスピル・オーヴァーを加えた「機関車」ゲームをしていた。そのときドイツは「財政規律」ゲームをしていると考えた。財政赤字は近隣諸国にもモラル・ハザードを生じる。協調的な財政再建は2013年のEU「財政協定」にまとめられた。

金融拡大策は為替レートを減価させ、貿易収支を介して相手国に赤字を輸出する、という批判がある。他方、貿易収支を介したマイナスの影響は、支出の増加によって打ち消される、という意見もある。一方は、競争的切下げか、あるいは、超低金利か、が問題だ、と見るが、他方は、極端な通貨の増価か、あるいは、過度の高金利が問題だ、と考える。

競争的切下げを抑えるには、為替レートに関して、ブレトン・ウッズ体制のような固定レートがよいか、あるいは、アメリカの政治家たちのように、市場に関する一切の介入を禁止する合意が主張される。

定期的な情報交換や、政策の意図を説明し、他国への不意の影響や認識の差を減らすのは良いことだ。しかし、国際政策協調は有益ではないし、それが特に自分たちの政策対立や制約を外国政府の責任に転嫁するときは、むしろ有害である。

他国になにかするように求める前に、自国の政策を改善することだ。

FP NOVEMBER 25, 2015

Is the G20 Still the World’s Crisis Committee?

BY PAOLA SUBACCHI

Project Syndicate NOV 25, 2015

China’s Macro Disconnect

STEPHEN S. ROACH


l  トルコのロシア機撃墜

The Guardian, Tuesday 24 November 2015

Will the downing of a Russian fighter jet wreck Syria peace hopes?

Mary Dejevsky

FT November 24, 2015

Opponents of Isis must influence not isolate Russia

Richard Haass

FP NOVEMBER 24, 2015

Will Putin Use the Energy Weapon Against Turkey?

BY KEITH JOHNSON

Bloomberg NOV 24, 2015

Putin's War on Far Too Many Fronts

By Leonid Bershidsky

Bloomberg NOV 24, 2015

Putin Has Misjudged Turkey's Erdogan

By Marc Champion

Project Syndicate NOV 25, 2015

Turkey’s Diplomatic Dogfight

ANA PALACIO

NYT NOV. 25, 2015

Range of Frustrations Reached Boil as Turkey Shot Down Russian Jet

By KEITH BRADSHER

FP NOVEMBER 25, 2015

Turkish Military to Russian Jet: ‘You Are Approaching Turkish Airspace’

BY SIOBHÁN O'GRADY

FP NOVEMBER 25, 2015

The Czar vs. the Sultan

BY JULIA IOFFE

ロシア人とトルコ人とは,今後2世紀に及んで,何度も衝突するだろう.バルカン半島,コーカサス,黒海,ダーダネルス海峡.プーチンはロシア帝国,エルドアンはオスマン帝国の再現を演出するが,それは衰退の証である.シリア内戦でも,彼らの失われた帝国という痛みが拡大する.

FP NOVEMBER 25, 2015

Now’s the Time for NATO to Rally Around Turkey

BY JAMES STAVRIDIS


l  アメリカの感謝祭

FP NOVEMBER 25, 2015

The Top Ten Things Americans Should (Still) Be Grateful for in 2015

BY STEPHEN M. WALT

深刻な問題が多く存在する世界で,感謝祭に何を祝うべきか? 政治家たちがまき散らす恐怖と不安を,すべて無視せよ.アメリカ人なら,第1に,アメリカに暮らしていることを祝うべきである.

NYT NOV. 26, 2015

World War III

Roger Cohen

3次世界大戦にはならない,と信じて.


l  アルゼンチン選挙

FP NOVEMBER 25, 2015

Latin America’s Leftists Get a Wake-Up Call

BY DANIEL LANSBERG-RODRÍGUEZ


l  アイスランドの経済再生

VOX 26 November 2015

Iceland’s seven meagre years

Thorvaldur Gylfason

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The Economist November 14th 2015

The never-ending story

The world economy: Pulled back in

Rice: Hare-grained

France’s National Front: Phantom menace

Bagehot: Trouble in Labourland

(コメント) 3つの問題に関心を持ちました.1.世界経済は第3の金融危機に向かうのか? サブプライムローンから,ユーロ圏の政府債券,そして,新興市場へ.2.コメの国内生産保護・補助金・補償は,裕福な農民を喜ばせるだけで,都市労働者や貧困層を苦しめ続けるのか? 3.難民危機とパリのテロが重なって,ヨーロッパやアメリカの政治は新しい行動主義政党が,エリート政治と社会民主主義から支持を奪うのか?

もちろん,新興市場にも異なるタイプがあり,コメの農家と都市労働者とが合意できる解決策があると思います.それはしかし,難民危機や債務・通貨危機,テロの脅威について,行動主義的保守派との論争に翻弄される既存政党の分裂状態により,主要国でもなかなか実行されません.

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IPEの想像力 11/30/15

政治経済学が誕生したのは、政治的な対立の背後には、宗教的な対立ではなく、経済的な成果の分配をめぐる対立が、その社会システムと切り離せない形で生じている、と理解したからではないか.もしそうであれば,政治経済学の答えは,常に,政治にある.いや,政治過程の改善にある,と思うのです.

ニュースでCOP21の紹介をしていました。パリの会場には,約190ヵ国からの代表団が作業するために,さまざまな情報通信手段を利用できる部屋が用意され,2国間や多国間,地域内の交渉を促す中小の会議場が用意されています.大国の指導者が直接に対話できる機会が提供され,あるいは,小国の指導者も大国や全体会議において発言する機会が得られます.

こうした会議はどのように進むのか? 議題の提出や合意文書の作成に向けた準備交渉,妥協や表現を調整するための専門家会議,首脳会談が繰り返されるでしょう.会場の外では抗議活動や自分たちの主張を宣伝する諸団体が,世界のメディアと向き合い,あるいは,相互の連携を拡大・再編しているはずです.

国際会議の決議というのは,開幕する前にすべて決まっている,という者もいます.しかし,政治は常に突発的な事態への対応の連続です.政治家たちは自国を代表して,優れた反応やセンスを求められます.その成果を決めるものとしては,国際会議の交渉や意見集約の仕組み,エネルギーと気迫がどこに集まるのか,取引材料は何か,問題の切迫性,認識や痛みの共有,などが指摘できます.シナリオ通りに終わる戦争がないように.

WTOのドーハ・ラウンドが合意形成に失敗したとき、その理由は参加国(そして拒否する力を持つ国)が多すぎる,アメリカと新興市場の主張が異なりすぎる,農業や金融市場,投資,労働など,従来の国内制度を根本的に変える内容を含む,アメリカ政府が国内の支持を得られない,という不安がある,と指摘されました.TTPTTIPの交渉と政治論争は,その合意形成手続きや政治的な意志決定に関する挑戦なのです.

暴力ではなく、信仰でもなく、買収でもなく。

アメリカ議会は,IMFの分担金を変更する国際合意に従いません.京都議定書からも離脱しました.ブレトン・ウッズ協定からも,国際連盟からも,世界経済会議からも離脱しました.強硬派はIMFもアメリカ連銀も廃止しようとしています.IMFは,こうしたアメリカの姿勢に振り回される中で,中国の人民元をSDRの構成通貨として認めることにしました.The Economistが書いたように,それは中国の改革を支持し,同時にIMFやグローバル・ガバナンスを推進するために中国の参加を確保したい,という判断であったように思います.

他方,Roger Cohenの寓話(“World War III,” NYT Nov. 26, 2015)は,好奇心の強い子供と賢く優しい母親の対話として書いています.

「ママ,第1次世界大戦がどうして始まったか,もう一度,話してくれる?

It’s a sad story. The world was organized in one way, and that way collapsed, and in the process millions of people were killed.”

Wow. How was it organized before?”

There were things called empires. They controlled vast territories full of different peoples, and some of these peoples wanted to rule themselves rather than be governed by a faraway emperor.”

ひどい,悲しい話だ,と母親は嘆きます.しかし,もう帝国はないから大丈夫.・・・アメリカ? アメリカは帝国じゃない.

しかし,帝国がないのに,多くの人が死んでいる場所もあるね.と子供は尋ねます.シリアで.

母親は,そのあまりにも複雑な事情を話しますが,子どもは,まるで第3次世界大戦だね,と心配します.母は,今日が感謝祭であることを指摘して,大丈夫,今はすべてが全く違うから,と言います.

Totally?”

Totally. We have life, liberty and the pursuit of happiness. Happy Thanksgiving, my love.”

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