(前半から続く)
l
中国との相互理解
FP NOVEMBER 6, 2015
‘Beijing Is Hoping to Grow Out of its
Problems’
BY
HOUZE SONG, ARTHUR R. KROEBER
NYT NOV. 6, 2015
China’s Pacific Overtures
By
SIMON WINCHESTER
中国の海軍増強や沿岸警備から防衛ラインの拡大は、アメリカにとっての脅威なのか? 中国はそうではないと主張する。十分に大きな太平洋で、アメリカと同じ存在を知らしめたいだけである。傷ついた尊厳を回復することが北京にとっては重要であって、領土の略奪ではない。
アメリカの司令官は、「航行の自由」作戦を継続する、という。しかし、中国はそれを好戦的な挑発行為であると考える。アメリカにとってより懸命な政策は、何が最も重要かを明確にすることだ。これらの海域を通過する自由、貿易のルートを保障することである。中国人もこれに反対しない。
中国の台頭は止められないことだ。太平洋を平和の海にする慎重さが求められている。
FT November 8, 2015
Grasp the reality of China’s rise
Larry
Summers
中国は今や世界経済に影響を及ぼされるのと同じくらい、世界経済に影響を与える。この数年で、中国の成長が世界の所得、貿易、商品需要に占める割合は、3分の1から半分の間にもなる。
先週、中国訪問から帰って、世界は中国経済の展開、政策の短期・中期目標、協力と緊張を管理するための制度に関する理解を、共有するべきだと確信した。習近平主席は、正当にも、「新しい大国間関係」と呼んだ。しかし、それは新しい国際経済アーキテクチャーに組み込まれねばならない。それから実質的な改革や更新が行われるべきだ。
第1に、アメリカと世界社会global communityは、中国の経済的な成功を、グローバルな繁栄と積極的な社会・政治改革の推進者として歓迎するべきか、あるいは、中国を封じ込め、経済的に弱めて、グローバルな脅威への対応力を奪うべきか?
第2に、中国が長期に持続的な成長を実現するため、短期的には成長を低めるような改革を推進することで、輸入が減り、経常黒字が増大するかもしれない。この時、アメリカは従来のように人民元の切り上げを求めるべきか? あるいは、中国の改革を維持するために人民元の減価を受け入れるべきか?
アメリカは中国を封じ込めるべきだ、という主張が、TPPを中国抜きで推進することや、AIIBへの反対にも示された。しかし、習近平のイギリス訪問が示したように、そのような姿勢はアメリカ自身を孤立させる危険がある。中国の経済は不振になれば、敵対的な戦略やナショナリズムが強まるだろう。われわれの目標は、相互の成長と繁栄であり続ける。
最後に、だから我々は、国際アーキテクチャー、制度面を改革しなければならない。TPPでも、AIIBでも、IMF改革でも、アメリカは改革を後退させている。
『平和の経済的帰結』で、J.M.ケインズは経済学の最優先課題を示した。「未来の災厄は、境界線や主権の問題にではなく、食糧、石炭、輸送にある。」 中国の台頭に応じてなすべきことは多くあり、改革が通商と経済学の世界に求められている。
FT November 9, 2015
China is sailing into a sea of
troubles
Gideon
Rachman
習近平が馬英九との会談に応じたのは,台湾政治が大陸との統合から離れていくだけでなく,北京政府が多くの難問に直面しているからだ.南シナ海,TPP,そのうえ「1つの中国」政策は,香港の若者たちが示した「1国2制度」への不満から,台湾の選挙にも影響する.このまま民進党が勝利すれば,習近平は激しい言葉で非難することになり,南シナ海での紛争も激化する.
中国は,その経済関係が切り札であるが,もしTPPから排除されたままであれば,生産拠点としての中国の魅力は大きく失われる.習近平は,馬英九との会談に応じて「柔軟さ」を示したわけだが,諸問題の中で危機を切り抜けるには,香港と台湾への根本的な方針転換が求められる.
FT November 10, 2015
China’s wagging tail dogs global
markets
John
Plender
YaleGlobal, 10 November 2015
China’s New Economic Plan Tackles
the Rebalancing Puzzle
Stephen
S. Roach
FT November 11, 2015
China’s Singles Day sets spending
record
Charles
Clover in Beijing
Project Syndicate NOV 11, 2015
China’s Unwilling Consumers
KEYU
JIN
l
トウィッター革命の終わり
Bloomberg NOV 6, 2015
Ukraine Is in Danger of Becoming a
Failed State
By
Leonid Bershidsky
NYT NOV. 11, 2015
Why Did the ‘Twitter Revolutions’
Fail?
Ivan
Krastev
1851年のルイ・ナポレオンによるクーデタの直後,5人の偉大な政治思想家がこれを論評した.共産主義者Karl Marx,アナーキストのPierre
Joseph Proudhon,当時,最も人気があったフランスの詩人,ロマン派のVictor Hugo,そして,2人のリベラル派Alexis
de Tocqueville and Walter Bagehotである.
3年の革命の波が終われば,彼らは皆,間違っていた.西側メディアも,同じ間違いを最近犯した.Thomas Friedmanは「広場の人々」による蜂起と呼び,Francis Fukuyamaは「グローバル中産階級の革命」と呼んだ.しかし,ポーランドでも,トルコでも,保守政党が勝利した.抵抗する者たちは脆く,Recep Tayyip Erdogan大統領の敵対戦略が成功したのだ.2012年,モスクワで起きた反政府デモも,プーチンが権力を強化するだけに終わった.アラブの春は,その中でも最悪だ.エジプトでは独裁体制が復活し,シリア,リビア,イエメンでは内戦と国家の崩壊に至っている.
反政府派のグローバルな抗議は,明らかに,社会の分裂状態を示すものだ.しかし分断化によって勝利するのは「安定性の政党」であって,「希望のネットワーク」ではない.抗議がもたらす社会的・政治的混乱は,より民主的,多元的な社会ではなく,国家や国民的指導者の周りに支持を固める.それはアンチ・コスモポリタンに向かう動きである.
なぜ「トウィッター革命」は敗北するのか? ではなく,それが成功すると信じたのはなぜか,を問うべきだ.3つの要因が考えられる.
1.マルクスやユーゴーと同様に,政治評論家たちは明白な現実を認識できなかった.冷戦終結後のナルシシズムが広まっていたからだ.
2.アメリカの政治学は,複雑な社会変化やグローバルな問題を,単純化された命題に還元した.民主主義国同士は戦争しない,民主主義は諸国を豊かで,汚職のない社会にする,すべての国は民主主義に向かっている,といった主張だ.リベラルな神学がマルクス主義に入れ替わった.
3.「シリコンバレー効果」に幻惑された.社会変化の考えや戦略が,歴史的経験ではなく,もっと技術のユートピア的な可能性によって決まる,と信じた.しかし,革命はささやくことで生じるが,政府は生じない.新しい抗議運動の多くが,制度を破壊する情熱を高めた結果,大きな代償を支払った.
組織は過去のもの,ネットワークが未来を決める.国家は重要ではない.自発性こそが正当性の源泉だ.抗議運動は,こうした流行の考え方の犠牲になった.創造的破壊の結末は,安定性への希求である.権力を固める瞬間をじっと待って,プーチンやエルドアンが勝利した.
FP NOVEMBER 11, 2015
Oligarchs on the Airwaves
BY
IRYNA FEDETS
l
プーチンのロシア
FT November 8, 2015
Review: ‘Winter is Coming’, by Garry
Kasparov
Review
by John Thornhill
FT November 10, 2015
Russia fears start of jihadi
blowback as reprisal for Syria push
David
Gardner in Beirut
SPIEGEL ONLINE 11/10/2015
Interview with Garry Kasparov
'Putin Needs Wars To Legitimize His
Position'
l
カタロニア
FT November 9, 2015
How the Catalonia vote will ramp up
tensions with Madrid
Tobias
Buck in Madrid
FT November 11, 2015
The folly of Catalonia’s rush to
independence
FT November 12, 2015
Mariano Rajoy gains convenient
helping hand from Catalans
Tobias
Buck in Madrid
l インフラ投資
FT November 9, 2015
Infrastructure: Bridging the gap
John
Authers
l
ユーロ圏の金融不安
VOX 09 November 2015
External imbalances within the
Eurozone: The Dutch disease explanation
Mouhamadou
Sy
貿易部門と同じく,金融部門でも「オランダ病」が働く.
Project Syndicate NOV 12, 2015
The Eurozone’s Minsky Conundrum
DANIEL
GROS
ECBは頑なにインフレ率の低さを心配している.しかし,その対策は本質的に量的緩和の増加であり,ユーロ圏の不均衡や金融的不安定さを増大させる意味で逆効果となっている.
金融危機以降,ミンスキーの指摘した金融不安定化が注目され,マクロプルーデンシャル政策として,高度に債務を拡大する金融機関への融資を抑制することが求められている.この政策の下では,金融緩和が機能しない.しかし,ユーロ圏には財政安定化を求める合意が存在し,さらに景気回復を弱めている.ECBは量的緩和の限界を知るべきだ.
l イスラム圏の改革
FP NOVEMBER 9, 2015
Islam Is a Religion of Violence
BY
AYAAN HIRSI ALI
イスラム圏において新しい過激化の波(al Qaeda, the Islamic
State, and Boko Haram)を促す条件とは何か? どうすればそれを敗退させることができるか? 暴力の拡大は,イスラム教の信仰と関係があるのか?
9・11から14年を経て,イスラム・テロリズムはアメリカ・西側の主要な懸念対象となっている.当時のブッシュ大統領が始めた「グローバルなテロとの戦い」はイスラム圏における暴力的な緊張を高めたように見える.イラク,シリアから展開するイスラム国家,リビア,ソマリア,イエメンも内戦によって分裂し,アフガニスタンではタリバンが,ナイジェリアではボロハランがテロリズムを広めている.
西側諸国の内部でもますます多くのテロ攻撃が起きている.イギリスの軍施設,アメリカのボストン・マラソン,カナダ議会,フランスの雑誌社シャルリーエブド,ユダヤ人のスーパー,テネシーの軍施設.
イスラム教徒が置かれた条件は世界中で大きく異なっている.しかし,私の考えでは,3つのイスラム教徒に分類できる.それらのどの集団が優位になるかで,イスラムと暴力との関係が変わるだろう.
第1に,教義や経典に書かれていることを実践しなければならない,と主張する原理主義者,第2に,信仰は篤いが,非イスラム教徒への暴力や不寛容を認めない多数派,第3は,イスラム教の教えにある暴力への賛美を改革しようとする改革派.ムハンマドの新興を広める過程で,その歴史的条件を反映して,コーランには暴力や聖戦を支持する言葉が多く含まれている.
FP NOVEMBER 11, 2015
Is Islam to Blame for Its
Extremists?
BY
MANAL OMAR, AYAAN HIRSI ALI
l
移民・難民
Bloomberg NOV 9, 2015
Maine's Somalis Could Be Its Saviors
By
James Gibney
The Guardian, Wednesday 11 November
2015
How I turned into a multicultural
masterchef
Gary
Younge
FT November 12, 2015
Echoes of Europe’s refugee crisis in
north Nigeria
Maggie
Fick
l ヘルムート・シュミットの訃報
The Guardian, Tuesday 10 November
2015
Helmut Schmidt – a German leader
with a global vision
Kristina
Spohr
FT November 10, 2015
Helmut Schmidt, German statesman,
1918-2015
David
Marsh, Haig Simonian and Gordon Cramb
FP NOVEMBER 11, 2015
A Last Cigarette With Helmut Schmidt
BY
CAMERON ABADI
NYT NOV. 11, 2015
Why Germans Loved Helmut Schmidt
Jochen Bittner
SPIEGEL ONLINE 11/12/2015
The Last of His Kind
What Helmut Schmidt Meant to Germany
and the World
By
Hartmut Palmer and Gerhard Spörl
l
中米
Project Syndicate NOV 10, 2015
Central America’s Triangle of
Despair
KEVIN
CASAS-ZAMORA
l
アメリカと戦争
FP NOVEMBER 10, 2015
America Needs Peacekeeping Missions
More Than Ever
BY
CHRISTOPHER HOLSHEK
FP NOVEMBER 11, 2015
Dumb Wars
BY ROSA BROOKS
Bloomberg NOV 11, 2015
The Pentagon's Lonely War Against
Russia and China
By
Josh Rogin
l メルケル・ドクトリン
SPIEGEL ONLINE 11/11/2015
Bye Bye Merkel Doctrine
German Foreign Policy Shifts Focus
to Refugees
l
世界通貨
Project Syndicate NOV 11, 2015
Is It Time for Global Money?
LARRY
HATHEWAY and ALEXANDER FRIEDMAN
世界はますます統合されつつある.現在の国民国家に依拠した国際通貨制度はリスクが高く,非効率である.世界通貨,世界単一通貨制度が望ましい.
もし世界が単一の通貨で動くなら,通貨戦争はなくなり,価格は透明性を増し,外国為替取引の煩雑さやヘッジのコストが消滅する.世界の資本配分はもっと効率的になるだろう.
しかし,ユーロ圏でも,国民国家に依拠する限り,ユーロの超国家的な正当性には疑問が残る.同様の試みが,大西洋や太平洋を越えて,実現する見込みはさらに低い.また,日々の金融政策決定に比べて,最後の貸手として金融機関の救済を行うかどうか,その判断の正当性を問われるとき,中央銀行は国家の法的枠組みに依拠するしかない.
既存のバラバラになったグローバル通貨秩序に依拠して,それでも世界単一通貨への統合を目指すことはできる.アメリカの金融緩和が終わるとき,新興市場における資本流出を緩和するように,IMF融資を求めたインド中央銀行総裁のように,グローバルな機関を強化することだ.関税や非関税障壁を減らすだけでなく,グローバルなインフラ整備に投資する額を増やす.ハーモナイズした,透明な,容易に理解できる規制・監督を目指すことだ.
世界通貨の目標は,国際通貨制度の敵ではない.
l
Brexit
Project Syndicate NOV 11, 2015
The Brexit Balance Sheet
IAN
BURUMA
FT November 12, 2015
The fatal flaw in the case for
Brexit
Philip Stephens
l
ロボット
Bloomberg NOV 11, 2015
Robots Won't Own You. You'll Own the
Robot.
By
Noah Smith
********************************
The Economist October 31st 2015
The trust
machine
Turkey’s
election: Sultan at bay
Ending a war:
Lessons from Colombia
Special
Report COLOMBIA: The promise of peace
Lexington: A
city wants more refugees
(コメント) ビットコインを支持する論説に興味を持ちました.しかし,その要点は,ビットコインではなく,完全な取引履歴を公開することで,コインを含めて,全く未知の相手とも安全な取引ができる,というアイデアにあるようです.
コロンビアの内戦終結に向けた取り組みこそ,世界が最も必要としている,戦争と平和の転換メカニズムかもしれません.前進のための要点は何か?
和平に向けた軍事的圧力,話し合いの条件を明示,信頼できる交渉チームを指名,犠牲者への補償を大規模に制度化,真実委員会と減刑・社会奉仕,非政府組織・反政府軍の武装解除と安全保障,辺境地域の経済活性化(脱麻薬,ハイテク都市,アメリカ市場,インフラ整備と金融,大規模農業),政府機関の汚職追放・能力拡充,選挙を通じた政権参加,司法の独立・マクロ政策・内政の安定化.その他,コロンビアが学んだことを,中東を含めて,各地が学びなおすでしょう.
******************************
IPEの想像力 11/16/15
l 9・11とアフガニスタン・イラクへの英米軍による侵攻
l 中東世界をどうするのか? イスラエルの核や独裁・専制支配国家、構想力
l 移動の自由、難民、ビジネス、観光旅行、ロジスティックス、非合法活動の国際化
l 犯罪組織と警察
l 戦争状態の殺戮行為と、暴力を賛美する過激思想
l 安全保障国家、サミット、内務省による国際管理体制
パリで起きた同時テロによる犠牲者とイスラム国家の犯行声明は、「戦争状態」という言葉に結び付けるしかない生々しい切迫感があります。
直後の報道番組,解説者の話を聴きながら,メモを取りました.
l 戦争状態か? オランド大統領は「フランスは戦争状態にある」として全土に非常事態を宣言した。かつて、9・11の後にブッシュ大統領が「戦争だ」と断言したことを思い出す。
l 空爆、軍事介入への反撃
l テロと民主化
フランスはイスラム国の首都,ラッカへの爆撃を行った.イスラム国家との戦争を続ける意思を示した,というのは,ブッシュのアメリカがアフガニスタンに侵攻したことで,今はどうなったか,と考えた末の反撃でしょうか?
テロによる政治的な主張を,暴力以外の形で実現することが重要だ,と思います.イスラム国家の拡大を阻止して,その地域の安定した政治的秩序を築くための,和平交渉,政治的な発言の保証,がそれではないか?
l 「パリ市民とともにある。」 ベルリン空輸。オバマの唱えた「普遍的価値」
l 穏健派、外交的な解決、国際秩序のもとでの支援
l 穏健派からの積極的な発言・関与、市民的秩序への共闘
l ロシアの国家テロとの共闘
l シリアの和平交渉
l イラクの治安回復
l イラン・シーア派の勢力拡大
軍事衝突に対する他国の反応は,国際秩序の性格を示します.アメリカや,ドイツ,イギリスは,フランスへの連帯を強調しました.日本も同様です.しかし,言葉だけなら,何とでも言えるでしょう.イスラム国家への軍事的な対応,シリア難民,イラク再建,中東紛争に関する姿勢と行動が問われます.各国の主張は異なっています.
ロシアやトルコとの協力を,いわゆる西側諸国はどう考えるのか? シリア内戦を止めるため,オバマはプーチンとしぶしぶ握手しました.
安全保障と普遍的な価値とは,宗教戦争のように,切り離すべき問題かもしれません.
l トルコ政府、イラク政府とクルド人
l 宗派争い、イスラム教に何が起きているのか?
l 西側同盟、キリスト教徒の十字軍か
l 世界宗教者会議と政教分離の否定、30年戦争と国民国家の逆転?
l イスラム過激派の2項対立
宗教的な情熱の世俗化,穏健化は,誰もが経済過程に参加して,勤労により豊かな暮らしや富を得られる,という仕組みを受け入れることで実現するものです.宗教的な穏健派,改革派との協力で,原理主義者による自爆テロの実行を阻むには,信仰の篤い人々が積極的に発言し,説得しなければなりません.
秘密裏の諜報活動ではなく,公開して行われる信者たちの対話において,テロを根絶できるでしょう.
l 日本の安保法制が試されるとき
l アメリカ、フランス、ロシア、イギリス、ドイツ、中国の姿勢
l 政治と犯罪との区別
日本ではどうか? テロ対策が強化される,というとき,国内に外国人やイスラム教徒が少ないことは,有利である,と考えるだけでよいのか? 尖閣諸島から,南シナ海,マラッカ海峡,インド洋,ホルムズ海峡まで,世界のどこにおいても軍事力の行使ができる,と安保法制では議論していたと思います.
政治体制や価値を争うのではなく,戦争と犯罪行為に関する国際合意を積み重ねることでしょう.領土紛争の外交的な解決は,その条件です.
l イスラム国家とは何か? 宗教・革命運動の情熱は消滅に向かうか? S.ウォルトは、イスラム国家が拡大過程から確立過程、暴力の抑制に向かうと予想しました。
l 斬首映像、古代文明の遺跡破壊、女性の奴隷化
l ハイテク戦略・情報・イデオロギー戦争、インターネット経由の兵員募集、諜報戦争
l 内戦とテロ,そして内戦の拡大.
l 「暴力(報復)の連鎖」
l 破たん国家として,「新しい戦争」
国家形成期の問題,国境の確立や内戦・革命の拡大,ハイテク化した紛争をめぐる合意形成の問題は,イスラム国家に限らず,歴史的に,そして将来も,繰り返し現れます.
アメリカの維持してきた第2次世界大戦後の国際秩序が,西側による協調として再生できるのか,新興勢力を取り込むための制度改革に成功するのか,地域紛争やテロが主要国に概念の修正を迫っている,ということか.
l 内戦終結と政治対話
パリのテロが起きる前,The Economistがコロンビアの特集記事を載せました.
左派のイデオロギーが支持されなくなり,ラテンアメリカや中米各国で,選挙によって政権を得た左派のモデルが広まることは内戦終結の重要な条件です.
国内においても,麻薬や誘拐,襲撃による資金調達ではなく,成長する経済への参加を求め,軍や警察を改革して汚職をなくし,犠牲者への国民的な補償メカニズムを立ち上げました.イスラム国家の穏健派が外交的な和平に応じるときも来るでしょう.
l 移民・難民支援と社会統合、各地のイスラム社会
l シャルリーエブド、宗教や政治的権威を嘲笑できるのか?
l 刀狩り、戦場からの違法な重火器・爆発物の流入
l イスラム国戦闘員の帰還
むしろ,フランスや,主要諸国の国内改革が問題です.
イスラム教徒への差別,社会の分断・隔離状態が続くこと,移民・難民を排斥することで治安が維持できると過信すること,など,ダイナミックな社会でありながら,連帯感や相互扶助を高める合意や仕組みがなければなりません.
l 貧富の差、エリートの支配、グローバリゼーション、経済危機
l 住居・雇用・結婚の差別
l 財政赤字と社会保障の削減、高齢化、人口減少
多様な仕方で,働く機会が豊富にあり,経済成長が維持され,ショックは制度的に緩和され,分配の平等さや生活の最低条件が権利として保障されているなら,異教徒のテロを恐れるより,彼らを受け入れることができるでしょう.
テロや内戦を繰り返す社会は,財政破たんや社会の荒廃によって,暴力が支配する破たん国家の領域に呑み込まれます.
l たとえば,鎌田聡やノーム・チョムスキーは事件に接して何を想うのか?
l ヨーロッパ政治や市民意識における、リベラルな穏健派から、極右の自民族優先、ネイティビズム・国粋主義
l 井上ひさしの劇『母と暮らせば』。「戦争を継ぐ 山田洋次・84歳の挑戦」。坂本龍一の音楽、原民喜の「鎮魂歌」に込められた小さな希望で、被爆後の長崎を映しながら終わる。
l パリの気候変動に関する国際会議から関心と政治力が失われ、難民危機について保守系・極右の移民排斥論者が自信を深め、民主主義や国際的な協力、国際機関を軽視する。それは不況を長引かせ,通貨・金融危機を広め、財政破たんを加速し、自由で平等な社会という理想を失わせる。
戦争とテロはその境界線を消して、外交も、国内の市民的な秩序も、大きく損なわれてしまう中で、それによって力を得る者たちの、少なくとも当初は、力強い勝利として現れます。
****
9・11との比較。2001年、9/24-29のReviewに、当時の議論を整理して書きました。
(1) 国際調査団の派遣:アメリカは、イスラム圏の国を含む複数の国からなる調査団をアフガニスタンに派遣し、オサマ・ビン・ラディンの活動内容や関係団体に関する調査・事情聴取などを行う。:イラクや北朝鮮への国際査察は、妨害や非協力に悩まされても、敵対する軍事力を削減できたと思います。報復や華々しい戦果を期待せず、国際監視や経済制裁を議論すべきです。
(2) 対テロ情報収集・諜報活動の整備:テロ活動を防止し、それに関わった者を逮捕・起訴するための情報収集や諜報活動に関するルールを定め、明確な監督の下に行わせる。:日本でも、諜報機関やテロ対策組織を強化する必要があるでしょう。問題は、それが何をしているのか、を明確にチェックすることです。
(3) 第三国への政治亡命:アフガニスタン政府は、今後の政治活動を完全に放棄することを条件に、オサマ・ビン・ラディンを中国などの第三国へ政治亡命させる。:内乱状態の早期終結を求める周辺諸国の圧力によって、多くの独裁者が、アメリカなどの第三国へ亡命しました。そして明確な証拠があれば、彼を国際法廷で裁くべきです。
(4) 新しい国際安全保障体制の合意:国家間の戦争を防ぐのではなく、国際的規模のテロ活動に関する政府間合意を形成し、恒常的な協力機関を設ける。:NHK・BS7で軍事評論家の江畑謙介氏は「全く新しい国際安全保障体制」が必要なことを指摘しました。この体制の目的は、国家間の侵略戦争でも、政府批判の抹殺でもない、テロ行為の防止です。
(5) 犠牲者への同情と生活再建・テロ容認社会への浸透と経済援助:400億ドルの特別軍事予算を、むしろ遺族基金として運営してはどうでしょうか?:ドイツが行った犠牲者のための追悼集会と、日本政府が決めた難民救済のための資金援助は、優れた対応でした。
******************************