前半から続く)


l  移民・難民政策の全体像

The Guardian, Monday 2 November 2015

There’s no perfect answer to the migrant crisis – and we must face that

Jeffrey Sachs

ヨーロッパは孤島ではない。難民の流入を阻止することは成功しないだろう。しかし、無制限に受け入れることもできない。解決策としては、その発生源にある問題に対処するしかない。社会を豊かにするのは漸進的な移入民であり、全面的な開放政策は成功せず、維持できない。

19世紀にアメリカへ来た移民たちは、何も持たず、新しい国からの支援も期待しなかった。社会的給付や社会保障、住宅の保証などなかった。彼らが去った国と入る国との間には、大きな所得種準の差がなかった。彼らは貧しかったが、下層階級を形成することなく、新しい国の貧困層に吸収された。

現在、移民たちは、出身国と5倍から10倍の所得水準の差を持つアメリカやヨーロッパの国家を目指している。社会給付を与えなければ、国境を閉鎖しなくても、移民流入は減る、というエコノミストを、反対派は信じない。社会給付なしに、新しい下層階級が国内に形成されることを懸念するからだ。他方、新規の流入者に社会給付を許せば、財政危機を生じてしまう。

関係諸国は協力して、シリアのアサド体制を終わらせ、イスラム国家を排除しなければならない。また、環境破壊がますます多くの難民を生み出すことを重視して、パリの気候変動会議で国際協力するべきだ。

難民たちの受け入れにも、難民たちの帰還にも、彼らの諸国が安定し、経済を再生するためにも、ヨーロッパとアメリカは投資しなければならない。

SPIEGEL ONLINE 11/02/2015

The Lonely Chancellor

Merkel Under Fire as Refugee Crisis Worsens

NYT NOV. 3, 2015

Is Eastern Europe Really More Racist Than the West?

Kenan Malik

NYT NOV. 4, 2015

Let Refugees Settle Italy’s Empty Spaces

Beppe Severgnini

ヨーロッパが多数の難民流入に騒ぐとき,私は古代ローマ人が同じことを議論してm,解決したことを思い出す.ローマ人たちは,軍団に土地を与えたのだ.それは,ローマ帝国の安全保障,経済,人口増加に貢献した.

なぜ私たちも,現代の移民たちに同じことをしないのか? イタリアは,空っぽの土地に彼らを受け入れ,彼らは銃撃されたり,差別されたりすることはなく,生活を再建できる.

そんなことがうまくいくか? 歴史,地理,経済,そして良識は,それが成功すると支持するだろう.しかし,十分ではない.ローマ人たちが生み出したような,長期を見通す政治指導者が必要だ.

NYT NOVEMBER 4, 2015

Houellebecq’s Islam, Houellebecq’s West

By ROSS DOUTHAT

FT November 5, 2015

Migrant crisis threatens to raise ghosts of Balkan wars

Neil Buckley

メルケル首相は,今週,驚くような説明をした.バルカン諸国の指導者たちに難民危機に関するEU特別サミットを開くように求めたのだ.軍事衝突のリスクがあるから,と.

バルカン諸国はヨーロッパで最も貧しい国がいくつもあり,紛争を経験した最近の歴史を持っている.EU加盟諸国間でも国境のフェンスが再建されて,20年前の旧ユーゴスラビア解体から生じた亡霊が目を覚ますかもしれない.小さな衝突が深刻な殺戮を招きかねないのだ.

発言の背景には,選挙の事情がある.2週間前,移民問題が刺激となって,ポーランドで保守政党が勝利した.日曜日にはクロアチアでも議会選挙がある.バルカン諸国は互いの政策で深く影響を及ぼすために,クロアチアの社会民主党政権が敗北した場合,国境の閉鎖や難民割当制への反対が強まると予想される.もしドイツが難民受け入れを拒めば,難民たちはバルカン諸国に取り残され,冬が来ても各国には対応策がない.

メルケル首相の行動は,決定的に重要である.

NYT NOV. 5, 2015

European Union Predicts Economic Gains From Influx of Migrants

By JAMES KANTER


l  共和党の大統領候補

FT November 2, 2015

The Republicans search for a winner

Gideon Rachman

共和党の大統領候補者争いでトランプDonald Trumpがトップにあるのは、共和党支持者の4つの不安を吸収しているからだ。1.白人は50%を切るだろう。2.宗教的保守派は社会変化を嫌う。3.中産階級を含む多くのアメリカ人労働者が実質賃金の低迷に苦しんでいる。4.アメリカのパワーは低下しており、中国の台頭とオバマの「弱さ」が問題である。

こうして共和党の大統領候補者たちは、陰鬱なメッセージと攻撃的な姿勢を強調する。そのような候補が、大統領選挙の勝利につながるのか? 故ロナルド・レーガンが勝利したのは、彼が保守派と楽観論とを結びつけたからだ。その点で、フロリダの上院議員Marco Rubioが注目される。彼はマイノリティーの支持も得るはずだ。


l  トルコの選挙

FT November 2, 2015

Erdogan rules by division — and Turkey pays a price

David Gardner

トルコのエルドアンRecep Tayyip Erdogan大統領は、出直しの総選挙に勝利した。

クルドとの対話を行ったのはエルドアンが権力を固める手段でしかなかったのか? 与党AKPは、この選挙でクルドや反対派との敵対姿勢を強めた。

Project Syndicate NOV 2, 2015

Erdoğan’s Second Chance

SINAN ÜLGEN

NYT NOV. 2, 2015

Erdogan’s Violent Victory

Roger Cohen

FP NOVEMBER 2, 2015

Erdogan’s Big Night

BY ALEXANDER CHRISTIE-MILLER

YaleGlobal, 3 November 2015

Big Win by Turkey’s AKP Signals Vote for Stability

Chris Miller


l  アメリカ連銀の迷い

Project Syndicate NOV 2, 2015

The Fed’s Communication Breakdown

KENNETH ROGOFF

連銀の金融政策委員会は、もっと明確に、金利引き上げの延期を説明しなければならない。市場とのコミュニケーションに失敗している。

FT November 3, 2015

America’s labour market is not working

Martin Wolf

FT November 4, 2015

Time to ask why we are still in the era of ultra-low rates

Chris Giles

VOX 04 November 2015

Restarting the global economy: Three mismatches that need concerted public action

Michael Spence, Danny Leipziger, James Manyika, Ravi Kanbur

FT November 5, 2015

Fed’s Fischer warns against shackles on central bank

Sam Fleming in Washington


l  ヨーロッパの失敗

Project Syndicate NOV 2, 2015

The Return of Geopolitics to Europe

JOSCHKA FISCHER

国際秩序は、法の支配ではなく、大国による領土の支配である。ヨーロッパに地政学的な選択が再現した。ロシアと中国はそれを示した。

両側を海によって守られたアメリカとは異なり、ユーラシア大陸の端にあるヨーロッパにとって、ロシアや中国、中東や北アフリカとは切り離せない。ヨーロッパにとってアメリカとの同盟は欠かせない。冷戦期のように、ロシアを孤立させてはならない。中国がシルクロードを建設することは止められない。ヨーロッパにとって、ギリシャを含むバルカン半島とトルコの重要性は疑いない。

Project Syndicate NOV 4, 2015

Europe Has Lost its Way

ANDERS ÅSLUND

ロシアのウクライナ介入、中東からの難民、北アフリカの無秩序、様々な危機に対して、ヨーロッパの指導者たちは何をするべきかわかっていない。彼らはEU経済の低迷によって、外からの圧力に対する政策の余地を奪われてしまったのだ。

EUの失敗の源は、2008年の世界金融危機に対する2年間の財政刺激策である。それは成長に対する改革が進まないまま、EUを低成長と財政危機に陥れた。7年を経ても、EUの生産水準は危機前の水準を越えていない。ギリシャのように、大きな財政刺激策をとった国が危機に苦しみ、ラトビアなど、早期に財政改革を実行し、経済を自由化した国は強い成長を回復した。

マクロ経済に焦点を当てたことで、EUは経済成長を回復するための手段を無視することになった。市場自由化、財政再建(支出削減と増税)、特に、単一市場である。10年ほど前にAlberto Alesina and Francesco Giavazziが注意して以来、何も変わっていない。「真剣な、深い、包括的改革をしなければ、経済的にも政治的にも、ヨーロッパは容赦なく衰退するだろう。」

世界銀行の報告書も2012年に指摘した。「高齢化するヨーロッパは、革新的なアメリカ人と効率的なアジア人に挟撃されている。」

ヨーロッパ低迷の主要な原因はよく知られている。高税率、多くの、粗悪な規制、重要な市場の欠如、財政支出の過剰。その理由は、過度の社会保護政策である。世界銀行によれば、西欧諸国の政府は、アメリカ、カナダ、日本に比べて、GDP10%も多く財政支出を行っている。その財源は、資本に課税することが難しいため、労働者の高負担となる。増税と規制は高水準の失業になっている。雇用は減り、高等教育への投資は減り、革新は減り、生産性の上昇も低い。

サービス市場やデジタル市場を欠くために、ヨーロッパにはアメリカのようなハイテク企業、Apple, Amazon, and Googleが存在しない。

ヨーロッパの沈滞、過度の社会的移転は改革できる。アイルランドからポーランドまで、真剣に改革に取り組んだ諸国は成功した。危機は根本的な改革を促す。1970年代後半のイギリス、1990年代初めのスウェーデン、フィンランド、1989年の東欧諸国。EU2008年の世界金融危機とその後のユーロ危機で、改革の機会を無駄にした。

Project Syndicate NOV 5, 2015

Europe’s Last Straw?

HAROLD JAMES

ユーロ危機や政府債務危機で大陸が南北に分断され、過激化し、大量の難民流入で西と東(プラス英国)が対立している。ほかにも多くの分断や矛盾が現れている。EU崩壊がこれまでなかったほど迫っているように感じる。

たとえば、EU各国のエネルギー政策を見ればよい。矛盾したエネルギー価格の構造は単一市場の考えに反する。それが各国のエネルギー・ネットワークの統合を非常に難しくしている。フランスは電力の大部分を原子力発電所から得ている、しかしドイツは、2011年の福島における原発のメルトダウン事故の後、一気にすべての原発を閉鎖した。今や再生可能エネルギーに重点を置くが、風や太陽の条件によっては、ますます化石燃料に頼ることになる。

ロシアが押し付けた安全保障の脅威は、2008年から強まり、昨年、クリミア併合、ウクライナ東部への侵攻によって深刻化した。戦闘の継続や領土問題を解決しなければならないが、輸入エネルギーへの依存も問題だ。ロシアはシリア内戦でもヨーロッパの安定性や安全保障を脅かしている。北アフリカや中東におけるヨーロッパ外交の失敗は、難民危機となって表れている。

あたかもそれではまだ不十分であるかのように、EUの民主的な正当性が疑われている。過激派の主張が勢いを得て、分離主義者が増えている。

ヨーロッパは危機に圧倒されている。しかし、EUの創設者であるJean Monnetは、EUが危機の予想によって築かれたことを強調した。「ヨーロッパは危機の中で形成されるだろう。それはさまざまな危機に対して採用された解決策の総和である。」

しかし、そのような危機は小さな、解決できる程度のものである、と主張する者もいる。あまりにも大きな危機は、また、あまりにも多くの危機は、EUの対応能力を超えて、崩壊に向かう、と。

実際は、多くの危機が同時に襲うことで、取引の範囲を拡大し、解決が容易になることもある。対立する利害が効果的な対策を阻んでいるEUは、問題領域のリンケージが前進のカギである。EUは各国の主権を奪うのではなく、相互利益の妥協を交渉する舞台になるのだ。

南欧諸国への債務免除を拒んでいたドイツが、今や、難民危機を緩和するために包括的なEU規模の解決を求めている。各国軍事力の統合化は、財政赤字に苦しむ中で、戦略的な効果を高め、コストを抑制できる。

ヨーロッパは1989年の精神を回復する必要がある。ハンガリー=オーストリア国境を越えた人々が、閉鎖的思考を打ち破り、改革と自由を即座に求めたのだ。2015年には、国民国家が提供できるより多くの、外部の圧力や戦略的ショックに対する保障をヨーロッパ諸国家が必要としている。それを提供できるのは、唯一、EUだけだ。


l  一人っ子政策の廃止

NYT NOV. 2, 2015

Amartya Sen: Women’s Progress Outdid China’s One-Child Policy

By AMARTYA SEN

中国が一人っ子政策を廃止することは、自由の拡大、特に私的な生活の自由に対する制限の緩和として、喜ばしい。しかし、人口抑制のための政府の強制的介入、一人っ子政策の成果を強調するのは間違いだ。

中国の人口増加率は、その政策を導入する前から急激に低下していた。女性一人当たりの平均出生者数は、5.87 人(1968)から 2.98人(1978)に減少した。一人っ子政策は、その傾向を維持し、現在の1.67人まで減少させた。

変化の原因として重要なのは、女性に対する学校教育と就労機会の増大である。それは女性たちの家族内における発言力を高め、出征数を抑制する傾向が強められた。強制的介入よりも、教育や労働市場、社会保障の面で、他国は学ぶべきだ。

しかし、今も伝統的な「男子優先」が続き、男女比が大きく歪められている。この問題を大きく改善した韓国のケースは、中国の参考になるだろう。

FP NOVEMBER 2, 2015

China, Leave those Wombs Alone

BY MICHAEL SZONYI

FT November 4, 2015

Beijing cannot control babies or banks

David Pilling

中国共産党は、一人っ子政策と預金金利の規制を廃止すると発表した。どちらも重要な政策転換だ。

1979年に導入された一人っ子政策は、最も嫌われた政策だった。役人たちは罰金を科し、不妊手術を求め、堕胎を強制した。その社会的な結果は、同様にグロテスクな、男女比のゆがみであった。すでに中国は、世界で最も急速に高齢化する国になっている。労働力を安価に利用して組み立て加工を行える時代は終わり、もっとサービスや技術革新に投資しなければならない。

他方、預金金利の制限も、貯蓄を人為的な低金利で集め、政府が好む重工業への投資を誘導する仕組みだった。しかし、サービスや技術革新は政府が最も管理できない分野であり、低金利政策も時代遅れになった。むしろ、消費者のポケットに多くの資金を供給する方がよい。

株価が急落して以来、中国の政策は矛盾している。銀行システムの真の自由化を恐れ、計画化に戻り、高金利で自由な銀行業を処罰する動きがみられる。

その前に、共産党は海峡の向こう側、台湾を見るべきだ。そこではだれもが自由に子供を産めるが、出生率は1.0である。女性の子宮を国家管理する中国でも、それは1.6だ。市場の力は共産党よりも強い。

Project Syndicate NOV 4, 2015

China’s One-Child Calamity

MINXIN PEI

一人っ子政策は、3600万人を殺した毛沢東の大躍進政策より多くの犠牲者を出し、1000万人を殺した文化大革命より広範な政治的暴力であった。中国の政策実行力を賛美するものは、その権威主義的官僚制度がもたらす破壊的な影響を見ていない。


l  中国製造業の変身

FT November 3, 2015

China manufacturing: Adapt or die

Ben Bland

過剰供給、価格下落で、利益の出ない旧製品を捨てて、中国企業は新しいビジネスを探している。

FT November 5, 2015

China seeks quantum leap to a new economic model

Charles Clover

Project Syndicate NOV 5, 2015

China’s Intervention Lessons

YU YONGDING


l  オンライン雇用

VOX 03 November 2015

Landing the first job: The value of intermediaries in online hiring

Christopher T. Stanton, Catherine Thomas


l  中国・台湾サミット

FT November 4, 2015

It will take more than a meeting to reconcile China and Taiwan

Mure Dickie

FT November 4, 2015

Taiwan and China leaders to hold historic summit

Ben Bland in Hong Kong

FT November 4, 2015

Leaders’ woes point to bigger troubles for Hong Kong

Ben Bland in Hong Kong

FT November 4, 2015

President Xi’s historic gesture to Taiwan

FT November 5, 2015

China-Taiwan meeting: 4 steps to tête-à-tête

Lucy Hornby in Beijing

馬英九と習近平の会談は、様々な工夫によって実現した。しかし、これが国民党の支持を高めるかどうか。

FP NOVEMBER 5, 2015

Xi Jinping’s Taiwan Trap

BY ISAAC STONE FISH


l  もしラビンが生きていたら

FP NOVEMBER 4, 2015

What Would Have Happened if Yitzhak Rabin Had Lived?

BY AARON DAVID MILLER

FP NOVEMBER 5, 2015

Wellington’s Quixotic Mideast Peace Plan

BY COLUM LYNCH


l  チャラビ死去

The Guardian, Thursday 5 November 2015

The Guardian view on Ahmed Chalabi: mission incredible

Editorial

NYT NOV. 5, 2015

Why America Invented Ahmad Chalabi

By GIDEON ROSE

イラクの政治家チャラビAhmad Chalabiの訃報がニュースになった。イラクの核兵器開発に関する情報をもたらし、アメリカを戦争に向けた。亡命政治家として、問題に苦しむイラクをパラダイスに転換しようとした。

真実はそうではない。チャラビはイラク戦争の原因ではないし、もしチャラビがいなければ、アメリカ政治は他の誰かを見つけただろう。イラクの問題ではなく、アメリカの問題を解決するためにチャラビは見いだされた。


l  カザフスタン

FT November 5, 2015

Kazakhstan runs economic risks with its hyperactivity

FP NOVEMBER 5, 2015

U.S. Chases New Role in Central Asia Against Mounting Security Concerns

BY REID STANDISH


l  アルゼンチン選挙

NYT NOV. 5, 2015

A Post-Peronist President at Last?

By UKI GOÑI


l  ミャンマー議会選挙

NYT NOV. 5, 2015

Myanmar Goes to the Polls

By THE EDITORIAL BOARD

ミャンマーの選挙で,スーチー女子の国民民主連合が勝利するには,イスラム教徒,少数民族,何より軍の反対を抑えて,圧倒的な多数を得なければならない.民主化をさらに深めることができるか,問われている.

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The Economist October 24th 2015

Reinventing the company

Nepal and India: Mr Oli’s winter challenge

Civil-military relations: Who will fight the next war?

Haiti’s election: No bums to throw out

Poland’s resurgent right: Voting for a better yesterday

Swiss elections: Head them off at the pass

Charlemagne: Refugee realpolitik

(コメント) 企業の新興種族が示す姿について,期待したような中身はありませんでした.アメリカが外交だけでなく軍事的な役割を担うためにも,国内の兵士を確保できない状況を問題視します.

他は,選挙と政治の関係です.内戦が終わっても憲法の制定や地震と政権樹立に苦しむネパール,地震後の政治が混乱したまま内戦にもなりそうな選挙を控えるハイチ,難民危機で保守派が勢いを得たポーランド,同様に,難民危機を生かして躍進する新興右派勢力の動向が興味深いスイス,ドイツに関して,興味深い考察が読めます.メルケルの難民政策から生じた3つの新要素は,国内のプラグマティズム,ヨーロッパの権力政治,トルコに対するキッシンジャー型外交.

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IPEの想像力 11/9/15

世界各地の選挙は、投票によって、政治が変わることを示しています。ミャンマー、トルコ、ポーランド、ギリシャ、ハイチ、クロアチア,アメリカ大統領候補者の予備選挙。

NHK大阪放送局「かんさい熱視線 熱い夏のあとで」は、20代初めの若者たちが政治に参加した夏を回想します.

ボブ・マレーの歌詞を紹介し,ラップを歌うようにデモの主張を伝える様子.自分の経験から,どうしても政治をこのままにしておけない,と感じた若者たち.引きこもり、自殺、リストラ,派遣社員、など,バブル崩壊後の悲観的な時代を生きてきた.「世の中をよくする」ことが,政治にはできるはずだ,と,声を上げた彼らは信じています.

確かに,安保法案は成立してしまった.それを阻止することはできなかったが,これは前進だ,と彼らは語ります.「この夏はあっという間だった」と思うことが,とてもうらやましい.

彼らを観た歩行者や,大阪の若者たちのほとんど,彼らの友人でさえ,そんな活動に意味なんてないよ,と笑って応えます.政治に何かを求めたり,自分たちが政治に期待したりすることはない.それが当然で,現実の中に固く住みついた「政治」の観念であるから.

 “熱い夏”を経験した者たちは,その感覚を変えることに成功したのです.だからこそ,予想もしないほど自分の時間と労力を注ぎ込んで,たとえ結果的に廃案にできなくても,重要な達成感を得たのではないか,と思います.

福島原発事故の影響で自主避難した女性は,人と話すときに後ろめたい感じがした,と言います.その地域の住民が受けた苦しみから,遠くにいることへの後ろめたさ.安全保障の問題は,誰かの負う問題ではなく,私の,あなたの問題だ,と真剣に感じたからこそ,その経験を語り,街頭に立ち,公衆に訴えることにしたのです.

キャンパスに帰ると,何もしないで,楽しく過ごす学生たちにいらだちを覚える,と同志社大学のキャンパスを背景にした,1人の若者は語ります.

関西の若い芸人たちが応えます.何を望むか? それは,仕事.もっと自分たちを呼んでくれる舞台があること.NHKもどうですか? これは政治的デモなどではなく,何かのイベントみたいなもの? もっと違う理由で人が集まって,騒いでいるだけだろう,と思った.

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しかし,ミャンマーの首都で,スーチーさんの家の前に集まった大群衆の熱気と同じものを,若者たちも分かち合ったのです.早朝から,投票のために並ぶ人々は,政治に参加することの喜びを語っています.

不安や恐怖から政治は生まれます.しかし,国境を閉ざすことが解決策ではない.自分ではなく,他人が苦しむことを容認すれば,次は自分たちが苦しむことになる.難民危機でEUの崩壊を恐れるより、さまざまな問題がリンクして交渉に解決の余地を拡大する過程を重視するべきだ,とHarold Jamesは書いています.2008年の金融危機もそうだった.改革のチャンスをつかみ損ねたヨーロッパは,もう一度,1989年の精神を呼び戻して解決するべきだ,と主張します.

政治的な発言が制度を変えるには,多くの抵抗や矛盾した性格の闘争を経ることが多いでしょう。既存の制度による組織の利害や影響圏の分割争いに,すべての時間と労力を消耗することを,政治,と呼びます.日本の若者たちが理想を持ち、社会を変えることができる、と信じるような「発言」の仕組みをさまざまな場面で用意できれば、彼らを遮断するのではなく,彼らが政治を変えることで,時代を変えるのです.

本棚で眠っている,ジグムント・バウマンの『政治の発見』を読もう,と思いました.彼らのくれた熱気を消さないように.

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