IPEの果樹園2015

今週のReview

11/2-7

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TPPを支持する ・・・シリア和平交渉 ・・・中国,ロシア,アメリカの国際秩序 ・・・バーナンキの回顧 ・・・メルケルの権力崩壊 ・・・カナダ選挙のリベラル ・・・アメリカ金融制度改革 ・・・南シナ海のアメリカ海軍 ・・・黒田日銀総裁の選択

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, The Guardian, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, そして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]


l  TPPを支持する

YaleGlobal, 22 October 2015

Pacific Trade Deal Needs to Harmonize With Sustainable Development Goals

Shuaihua Wallace Cheng

Project Syndicate OCT 29, 2015

The Case for the TPP

MICHAEL J. BOSKIN

なぜTPPを支持するのか? 貿易による利益、より効率的な生産、消費の多様性、その反対に、マイナス面もある。それは解決可能である。逆に、保護主義の破壊的な面を忘れてはならない。ブレトンウッズ会議は、その後の自由化と成長をもたらした。TPPには、ほかにも非関税障壁、政策や制度の調和、国家と投資家との紛争解決メカニズム、がある。

自由化は、保護主義に比べて、国際協調を促すものだ。


l  シリア和平交渉

Bloomberg OCT 22, 2015

Putin's Endgame in Syria

By Marc Champion

プーチンは,アメリカが空爆を組織するのに失敗したことに比べて,イスラム国を撃退させる空爆をロシアが行ったことを自慢した.ロシアは復活した.アメリカよりも優れたグローバル政治の主役である,と.

しかし,ロシアは介入を空爆に限定し,しかも4か月と考えている.アサド政権に反対する武装勢力をすべて「トロリスト」とみなし,空爆の対象にした.実際は,アサドの支配領域に近い西部に,アメリカの支援する反政府勢力がおり,イスラム国家は東部を支配している.ロシアはこれを区別せず,むしろ西部に多くの空爆を行った.

ロシアは空爆によって地上の軍事的均衡を変化させ,和平に向かう状況を生み出せると考えている.しかし,それはチェチェンでやったことかもしれないが,シリアではできない.プーチンが大統領になる前、チェンチェン戦争で、原理主義も穏健派も区別せず、独立運動に対して軍を投入して弾圧した。

ロシアはシリア分割に反対している。そしてアサドをモスクワに呼んで歓迎したことは、プーチンが支持を変えないことを公式に示すものだ。しかしシリアでは、チェチェン問違って、反政府派には外国の支援がある。イランがアサド政権の存続に強く反対しているし、サウジアラビアなど、アメリカやスンニー派の支持を得なければ和平は不可能だ。

ロシアは、迅速な和平による撤退を望んでいる。穏健派とテロリストの区別を明確にして、協力を求めるはずだ。

NYT OCT. 23, 2015

Jimmy Carter: A Five-Nation Plan to End the Syrian Crisis

By JIMMY CARTER

私はアサドを学生のときから知っている。彼は頑なな性格だ。アメリカ政府にはアサドの辞任を要求するのは好ましくないことを伝えていたが、それを無視して要求し、事実上、政治的解決を不可能にした。

2011年に革命が起きるまで、シリアは多人種、多宗教の国家として繁栄していた。しかし、政治改革を求められたアサド父子は、シリアの支配を「正当」と主張して、不必要な軍事的手段で反政府運動を弾圧した。

アサド体制とロシアとの間にある長期のパートナーシップ関係を基礎に、ロシアが抱える人口の14%に及ぶスンニー派のイスラム教徒に影響することを考慮して、解決への圧力をかけることが求められた。私がプーチンにそのことを問うと、ロシアとアメリカに加えて、イラン、トルコ、サウジアラビアが参加して、包括的な和平を交渉することが、唯一、シリアの戦争を終わらせると彼は答えた。

イランは数か月前に4つの過程、停戦、統一政府、憲法改正、選挙、を含む和平案を示している。この4年間の戦争でアサドが譲歩したのは、ロシアとイランが圧力をかけた化学兵器の廃棄だけであった。西側の軍事的な圧力によって、アサドが譲歩することはない。同盟諸国の要求だけが譲歩を可能にする。

FT October 28, 2015

The west should call Moscow’s bluff on Syria

David Gardner

Project Syndicate OCT 28, 2015

America’s Syria Non-Policy

CHRISTOPHER R. HILL

Project Syndicate OCT 28, 2015

The Despotic Temptation

ANA PALACIO

FT October 29, 2015

What to watch for at Syria talks

Geoff Dyer in Washington

FT October 29, 2015

Syria’s external protagonists search for ‘course out of hell’

David Gardner in Beirut

NYT OCT. 29, 2015

Ripples of the Iran Deal

Roger Cohen

イラン核合意は、敵対するアメリカ政府とイラン政府との間で、将来の変化を促す隠者の取引であった。わずか数か月で、イランはシリアの和平を求める国際交渉の席に現れた。

シリアの和平は、すべての関係諸国が参加しなければ達成不可能である。イランは、直接にも間接にも、すなわちヒズボラを介して、この内戦に関係している。

イランの発言は抑制されてきた。イラン政府は、強硬派と改革派との微妙なバランスによって成立しているからだ。オバマ政権は、毎週金曜日の礼拝で、「アメリカに死を」と祈っていることを無視するプラグマティックな姿勢を取る。しかし、ネタニヤフにはそれができない。

イランは長い間、パレスチナ問題から目をそらすための存在であった。パレスチナ自治政府の事実上の首都ラマラはエルサレムにあまりにも近い。イスラエルの弾圧それ自体が、パレスチナの抵抗を正当化する面がある。暴力が、ヨルダン川西岸の占領を含む、ネタニヤフの唱える「現状維持」の一部であるからだ。それはイスラエルの民主主義を後退させる。

パレスチナの暴力や長髪より、イランからの圧力が、何よりもイスラエルに真剣な交渉と外交を求めさせるだろう。イスラエルとパレスチナの紛争には深刻な諦観と冷笑主義が支配している。アッバスとネタニヤフが、人々の犠牲が増える中でもゲームを続け、他方で、オバマとローハニは世界を変える合意に達した。

歴史の流れは変えることができる。確かにイランが参加しても、シリアの和平が直ちに成立することはない。それを阻む要因は存在し続けているから。地域全体に及ぶ宗派争い、聖戦・原理主義者、反動的な王朝支配への反発、クルド問題、シリア国民の改革要求、である。

しかし、パレスチナには交渉のテーブルさえも存在しない。

FP OCTOBER 29, 2015

Why Obama Should Just Let Putin Have the Mess in Syria

BY EMILE SIMPSON


l  中国,ロシア,アメリカの国際秩序

The Guardian, Friday 23 October 2015

The best lesson China could teach Europe: how to play the long game

Natalie Nougayrède

イギリスはEUを離脱して、中華人民共和国の24番目の省になるつもりか? 習近平中国国家主席の公式訪問に際して、中国で働くヨーロッパのビジネスマンたちが冗談として言ったようだ。

中国は、長期的な視点で戦略を立てたゲームをしているが、西側の政治家たちはこれまでより短期の、得点稼ぎに終始している。しかし、成長を続け、安全保障と世界経済にますます影響を増している中国との関係を築くにあたっては、人権と経済的利益とのバランスを考えなければならない。

2010年、中国政府の「重大な結果」をもたらすぞという脅しを受けて、Liu Xiaoboのノーベル文学賞受賞式にヨーロッパ諸国の政府高官は出席するのを躊躇した。2008年、フランスのサルコジ大統領は、チベットに関して北京オリンピックのボイコットを示唆したが、しばらくして、中国政府の「主権」について二度と干渉しないと謝罪した。それは中国の強い反発に驚き、経済的利益を優先させたからだ。2007年、亡命中のダライ・ラマと会見したメルケル首相も、その後、中国との関係悪化を苦慮し、外相が謝罪した。

中国が長期の戦略を展開する。その理由は、中国が非常に長い記憶を持つことや、またある意味で、中国政府が有権者の反応にあまり制約されないことであろう。19世紀に中国が受けた恥辱も彼らは問題にする。アヘン戦争によって門戸開放を強いられたことに対して、175年を経て、その失われた尊厳を取り戻した、と中国人アナリストはイギリス訪問を説明した。

中国が計画するアジアからヨーロッパに及ぶ「新シルクロード」も、遠大な外交的、経済的な攻勢である。それは「西側による秩序の時代が終わる」ことに準備するものだ。その完成は、2049年、中華人民共和国の誕生から100周年である。

中国との関係は、常に、「ウィン・ウィン」の条件で話し合うことだ。AIIBでも、原子力発電所でもそうだ。ヨーロッパ諸国がバラバラに行動すれば、中国による分断と支配の機会とみなされるだけであろう。事前に考え抜いたことを一貫して主張し、パニックを起こしてはならない。EUが世界に占める位置を戦略的に計画しておくべきだ。

中国が、ヨーロッパよりもはるか以前に、4000年前から文明化されたことを理由に、民主主義の原理には従わないだろう。しかし、中国が高度に選別的なやり方で、ヨーロッパ諸国に、特定の場面で「特別な関係」を求めてくる。EUは世界最大の単一市場であるから、中国にとって魅力的な存在だ。一つの声、一つの価値に依拠して、交渉しなければならない。

北京がそうであるように、ヨーロッパも長期のゲームを戦う。

FT October 23, 2015

China and the UK: Pomp and circumstance

Jamil Anderlini and George Parker

FT October 23, 2015

The fading of an ageing world order

Michael Fullilove

ロシアのシリア軍事介入は、第2次世界大戦以来、最も重要な介入である。それは内戦を激化させる懸念もある。

過去15年間、アメリカはブッシュ大統領の無謀な大戦略とイラク介入によってグローバルな秩序に意志を押し付けようとし、それを不安定化した。オバマはブッシュ政権の失敗から学んだだけでなく、アメリカを過度に慎重にした。その不決断がアメリカの抑止力を信用できないものにした。ワシントンはグローバルな覇権を維持できるのか? これでアメリカが穏健な覇権国になる、と願う者は間違っている。

西側諸国は世界秩序の舞台から引退しつつある。ヨーロッパは高齢化するとともに、権力政治や戦争を回避し、より完全な統合を目指している。選挙区に閉じこもった政治だけがますます支配する。イギリスでさえ、これから数年は、スコットランドのUK離脱と、イギリスのEU離脱が論争を支配し、世界の他の部分を考える時間はないだろう。

ロシアは影響圏を拡大し、グローバルなアクターとしての地位を高めている。イランは、核合意によって制裁を解除され、中東における影響力を強めるだろう。中国は、富とパワーがアジアにシフトする中で、グローバルな秩序の転換に最も重要な国として注目されてきた。その外交政策は、ときに建設的であり、ときには衝突をもたらす。

これら3か国に共通するのは力を地域に集中することであり、アメリカの力がグローバルに分散していることと対照的である。西側が自信を失い、挑戦する国が現れる中で、グローバルな機関がグローバルな問題に対応する能力は制限される。

国際協調はますます死活的に重要になるが、ますます希少になるだろう。かつて、ハリー・トルーマン大統領の国務長官であったアチソンDean Achesonは、構築される世界秩序を回想録Present at the Creationで描いたが、70年を経て、解体する世界秩序を我々は見ている。

FT October 23, 2015

China trusts British diplomacy to improve relations with the US

Tessa Keswick

北京では、アメリカを排除した、米日が指導するTPPの成立をめぐる論争が盛んに行われていた。中国人はそれに憤慨した。多くの点で、現在の発展水準から見て、中国にはふさわしくない合意である。しかし、TPPはアメリカが南シナ海で中国の行動を囲い込む新戦略の一部のように見える。中国もTPPに参加するという望みはあるが、ワシントンに対する憤慨や怨嗟の強さから見て、当分は受け入れられないだろう。

これまでにも米中関係に緊張はあったが、これほど問題となったのは、市場化以降、初めてだ。アメリカな中国内部の政治的安定性をかく乱しようとするが、中国はアメリカに対するそのような手段がない、と彼らは感じている。

ソ連崩壊とその後の帝国解体について、民主化に対する執着について、北朝鮮、台湾、香港に関して、中国人はアメリカの姿勢に反発する。北京は、「信頼できる中間者」を強く求めている。キッシンジャーとニクソン以来、現在、彼らに匹敵する仲介者はいないからだ。

ここには文化が関係している。西側は法の支配に依拠して考える。どのような交渉も契約に対する信頼がある。中国にはそのようなぜいたくは存在しない。習近平は法の支配を求めているが、中国には存在しない。それゆえ、信頼と友情、が西側の契約に関する法的な保証に代わるものだ。

中国人にとって忍耐が重要であり、理解されたと感じなければ、信頼は成立しない。ワシントンにはこれが問われている。そして、北京がイギリスに求めているのは、中国人とアメリカ人の間に立つ仲介者となることである。オズボーンの中国訪問、習近平のイギリス訪問が成功したのは、こうした地政学的な背景があったからだ。

イギリスは、法の支配を発明し、国際政治、国際貿易のルールに関する先駆者であった。イギリスはアメリカの最も親しい同盟国であり、中国人が認めるように、プラグマティックで、多元的な考え方、仲介者としての才能にも優れている。イギリスは大きなパワーを持たないが、多くのソフトパワーを持ち、それを巧妙に駆使できる。

われわれは太平洋が新しい冷戦に向かうのを回避する手助けができる。イギリスには機会があり、中国は助けを求めている。それはアメリカを含むすべてのものを助けることになる。

NYT OCT. 23, 2015

The Myth­ of Putin’s Strategic Genius

By MICHAEL A. McFAUL

FP OCTOBER 23, 2015

Lax Americana

BY STEPHEN M. WALT

アメリカ国家が対抗するべきことは、気候変動でも、中国の台頭でも、イスラム国家でも、プーチンやイランでもない。むしろアメリカは、戦略的に重要でない目標を放棄するべきだ。

多くの者が、アメリカの後退や軍事力行使の不決断を重視する。それは敵がアメリカの弱さに漬け込むのを助長している、と考えるからだ。しかし、こうした主張は事実に反する。オバマ政権は多くの軍事的関与を拡大した。

他方、アメリカの軍事力が積極的に行使されることで平和や世界秩序が維持された、という主張も、パックス・アメリカーナの黄金時代を理想化した懐古主義でしかない。アメリカの「グローバル・リーダーシップ」は、朝鮮戦争(300万人の死者)を防げなかった。中東における戦争の続発(1956, 1967, 1969-70, or 1973)を防げなかった。アメリカは約10年に及ぶベトナム戦争で200万人近くを死亡させた。イラン・イラク戦争は100万人が死亡したが、ワシントンは何もしなかった。むしろ化学兵器を使用したと知りながらサダム・フセインを支援した。アメリカの「リーダーシップ」はルワンダの虐殺を止めなかったし、それを一部とする中央アフリカの戦争も放置した。最近の中東の戦争状態を導いた2003年の侵攻はアメリカによるものだった。中米やラテンアメリカにおけるアメリカの軍事介入は言うまでもない。

オバマ政権が撤退を要求し、既存の世界秩序を破壊した、という主張は間違った前提によるものだ。すなわち、オバマが前任者の愚劣な外交政策を継承していたら、アメリカも世界ももっと良い状態であるだろう、と。「撤退」を求める批判派は、アメリカの関心と資源を不要な負担から解放し、本当に重要な目標に絞ることを支持する。

しかし、オバマは撤退を延期しすぎたし、事実は、イラクやアフガニスタンの増派でも失敗を重ねた。敵対する集団間で、政治的な和解を推進できなかったからだ。もっと早期に撤退し、アメリカの外交がどうなるか、アメリカの戦略的な利益を国民に対して明快に説明するべきであった。それを避けて、戦略的に重要でない地域への関与を約束し、その実行を疑われたのだ。

FP OCTOBER 23, 2015

Has Britain Sold Out to Beijing?

BY ISABEL HILTON, JONATHAN FENBY, ROBERT BARNETT

Project Syndicate OCT 26, 2015

One Net, One Future

CARL BILDT

かつてアメリカとソ連は核軍縮に関して首脳会談を開いた。今や、アメリカと中国がサイバー攻撃に関する首脳会談を必要としている。

アメリカが超大国としてルールを決める時代は終わった。中国やロシアのハッカーが欧米の企業や政府のデータを狙っている。インターネット世界でも行動のルールを決め、犯罪やテロを取り締まらなければならない。各国は安全保障の不安から、データの集積センターを管理強化し、移動させ、障壁を設けて、サイバー世界のバルカン化が進むこともありうる。

サプライ・チェーンや国際取引のデータがますますインターネットを不可欠の一部としている以上、その破壊は甚大な損失をもたらす。

FT October 28, 2015

Beijing starts to press its own narrative on the world

David Pilling

中国は、西側の価値を否定し、それに対抗する価値を広める運動を急速に拡大している。政府は国営放送の英語番組を増やし、世界中に孔子学院を建てている。

中国の反体制作家Liu Xiaoboがノーベル平和賞を受賞したことに反発して、香港の団体が設立した孔子賞は、今年、ジンバブエのムガベ大統領に贈られる。ムガベは国家建設とアフリカ統合に大きく貢献した、と評価する。


l  Brexit

NYT OCT. 26, 2015

Britain's ‘Brexit’ Folly

Roger Cohen

The Guardian, Wednesday 28 October 2015

The Guardian view on the UK’s Norway option: No say. Still pay. No way

Editorial


l  バーナンキの回顧

FT October 23, 2015

Lunch with the FT: Ben Bernanke

Martin Wolf

バーナンキはポピュリストたちの憤慨の対象になった。家族も危険を感じたのではないか。

なぜアメリカでは中央銀行に対する反対が強いのか? と尋ねた。彼は、アメリカだけではない、と答えた。金融危機の後は、多くの国で同じことが起きている。アメリカ連銀は、そもそも金融政策のためではなく、パニックに対処するためにできた。

連銀は金持ちのために役立つだけか? 庶民を不幸にしているのか? バーナンキは、アメリカの不平等がもっと長期の趨勢であると答えた。株価が高いのは、それだけ収益が低いことを意味する。彼らの意見は、連銀に、景気回復を促すな、と主張することになる。議会に財政政策を求めるべきだ。

ハイパーインフレーションの危険はない。逆に、大恐慌が技術革新や成長を促した、とは思えない。

危機前の金融政策が悪かった、と批判される。バーナンキも関わっていた。インフレ目標は間違っていた? 200年以降、金利は低すぎたのではないか? 

バーナンキは、金融政策がバブルを起こしたのではない、と答えた。バブルはマニアによる心理的な現象だ。ITブームや住宅ブームは金融政策のせいではない。しかし、連銀は他の金融監督行政と共犯であった。彼らは構造的な脆弱性が増す中で、バブルを助長した。しかし、あらかじめすべての脆弱さを予測できないし、個別の合理的行動が集団的な非合理性をもたらす。それゆえ金融監督は重要だ。他方、リスク・テイクを促す制度には行き過ぎがあった。

「大きすぎて、潰せない」という問題か? 銀行を分割してはどうか? 銀行の規模をコミュニティーの水準まで分割しても、現在の優れた機能が失われるだけで、実際、1930年代の大恐慌は起きた。彼は、自己資本を高めることが正しい、と答えた。その必要な水準はリスクに応じて変わるから、ストレステストを重視するべきだ。自己資本規制は国際的な論議になっている。アメリカは国際規制に配慮したが、むしろアメリカの銀行とアメリカに視点を持つ銀行に対する規制を独自に強化するべきだ。資本市場のバルカン化になる、と反対するのは間違いだ。

「ヘリコプター・ベン」の異名を持ったバーナンキが、銀行や株式市場に対する量的緩和よりも、直接に人々が支出を増やす資金供給を考えないはずがない。彼は、減税と量的緩和の組み合わせを支持した。

2008年のリーマン倒産は避けられたか? 彼の答えは、絶対に避けられなかった、である。買い手がいなかった。債権者がリーマンに対する資産の売却に殺到した。連銀が融資しても、法を破って担保を与えても、破産した会社を所有しただけであろう。

バーナンキは、危機前にミスを犯したかもしれないが、アメリカと世界を恐慌から救った。人類は彼に救われたが、それほど感謝していない。

Bloomberg OCT 26, 2015

Avoiding the Financial Resource Curse

By Noah Smith

Project Syndicate OCT 27, 2015

The Wrong War for Central Banking

STEPHEN S. ROACH

インフレのない世界でインフレ目標に固執することで、中央銀行形は道に迷った。基準となる金利がゼロ近辺にさまよったままで、金融政策は物価の安定性の手段ではなく、金融不安定性のエンジンになった。

The Guardian, Wednesday 28 October 2015

Why don’t we save our steelworkers, when we’ve spent billions on bankers?

Aditya Chakrabortty

銀行家には莫大な資金を投入して救済するのに、キャメロン首相は鉄鋼労働者に対しては何もしない。

Project Syndicate OCT 29, 2015

The Tragedy of Ben Bernanke

J. BRADFORD DELONG

バーナンキの回顧録The Courage to Actを悲劇として読むのは避けられない。彼は連銀議長になる準備がだれよりもできていた。しかし、その職において、彼の行動は遅れたし、ついに追いつけなかった。

大恐慌の再来を防いだのはバーナンキのおかげであるが、その後の景気回復には失敗した。(第1に)彼は2000年に、中央銀行は「常に」、少なくとも中期的に見て、量的緩和で完全な回復を実現できる、と論じた。

バーナンキは、アメリカのマネタリー・ベースを5倍(8000億ドルから4兆ドル)に増やした。その後、それが失敗に終わると、さらに9兆ドルへ倍増させた。最後には、財政支出の拡大を議会に求めて、かなわなかった。

2に、Kenneth Rogoffは、バーナンキが貨幣供給を狭く理解しすぎだ、と考える。政府が、債務の市場均衡に積極的に関与している。

3の論者たちは、QEよりも、インフレ目標を2%に定めるだけでよい、と主張する。

4に、Larry Summers and Paul Krugmanに代表されるケインジアンは、金融政策で景気回復は起きないと考える。それは、金融政策の効果を強調したMilton Friedmanの夢想でしかない。人口と生産性の変化が、それを正しく見せていただけだ。回復には財政刺激策が必要である。

この論争は、1930年代にJ.M.ケインズがマクロ経済学を誕生させたときの論争に匹敵する重要さを持っている。ケインズの答えは明確だ。「完全雇用には、投資を何らかの形で社会化するしかない。」


l  中国の政策転換

FT October 23, 2015

China joins nervous global easing

Gabriel Wildau in Shanghai and Chris Giles in London

NYT OCT. 23, 2015

China Cuts Interest Rates for Sixth Time Since November

By NEIL GOUGH

Bloomberg OCT 23, 2015

What China's Rate Cut Will and Won't Do

By Mohamed A. El-Erian

FT October 26, 2015

A silver lining to China’s one-child policy

Patti Waldmeir – Shanghai

一人っ子政策は、人口構成から老人ホーム、地方財政、年金生活者の心理まで、あらゆるものに影響している。

FT October 27, 2015

China: It’s the five-year plan, man

Patrick McGee in Hong Kong

Project Syndicate OCT 28, 2015

Innovation with Chinese Characteristics

MARTIN NEIL BAILY and JONATHAN WOETZEL

Bloomberg OCT 28, 2015

Apple's Chinese Miracle Is Over

By Leonid Bershidsky


l  メルケルの権力崩壊

SPIEGEL ONLINE 10/23/2015

Populist, Pernicious and Perilous

Germany's Growing Hate Problem

FT October 26, 2015

The end of the Merkel era is within sight

Gideon Rachman

メルケルの政権が継続するかどうかとは別に、ドイツにとって平和で、繁栄した、グローバルな問題から距離を置ける時代が終わった、ということだ。

FT October 27, 2015

Germany: Merkel opens door to opposition

Stefan Wagstyl

Project Syndicate OCT 27, 2015

A Migration Agenda for the Private Sector

KHALID KOSER

FT October 29, 2015

If Angela Merkel is ousted, Europe will unravel

Philip Stephens

考えられないことが、たった一晩で、そうだと思えることになった。メルケルは政権を失うかもしれない。

メルケルは信念を強調しない政治家である。彼女の政権が長期に及ぶのは、ドイツ国民の雰囲気をつかむ中間的な均衡点を見出すのが優れていたからだ。そして、潜在的な敵対勢力を無慈悲に遠ざけた。メルケルはヨーロッパの内外で危険からドイツを守った。

しかし、難民危機では違った。メルケルはバルカン半島を横切って来る難民たちを受け入れると決めた。壁を築いたり、国境に兵士を派遣したり、強制送還の列車を動かすより、それは正しいことだった。しかし、それが反対派を刺激した。難民の数があまりにも多く、各地で受け入れ態勢はパニックを生じ、事態がコントロールできなくなってきたからだ。

ヨーロッパ中で中道の政権政党が、左右のポピュリストに対して、支持を失っている。人々は政権政党が自分たちに安全を提供できないと感じているからだ。メルケルの長期政権と与党内での離反は、マーガレット・サッチャーを思い出させる。しかも、メルケルを失うことは一層の危機を意味する。

ショイブレではメルケルの果たした役割を引き継げない。メルケルはヨーロッパ政治の確実さを示していた。彼女こそ、1989年の再統一を代表する政治家であり、ヨーロッパの和解と統合の保証人であるからだ。

Project Syndicate OCT 29, 2015

Europe’s Politics of Dystopia

NOURIEL ROUBINI

最近のポーランドにおける保守政党の勝利は、ヨーロッパ各地で起きている反リベラルの国家資本主義、ポピュリスト的な右翼がもとめる権威主義体制の傾向を示す1つである。Putinomics in Russia, Órbanomics in Hungary, Erdoğanomics in Turkey, or a decade of Berlusconomics from which Italy is still recovering. そして、Kaczyńskinomics in Poland

慢性的な危機や停滞に対して、不満を受けた彼らが政権を取れば、メディア、特にテレビを支配し、EUに反対する行動を強め、あらゆる超国家的なガバナンスに反対する。自由貿易、グローバリゼーション、移民、外国企業による直接投資、に反対し、自国の企業や労働者、そして国営企業、権力者につながる民間ビジネス、金融グループが優先される。

反市場のイデオロギー、アイデンティティや主権を侵すリベラルな資本主義、グローバリゼーションに反対する傾向は、左派にも共通している。そうした経済コーポラティズムと専制支配は1930年代に見られたものだ。

もし経済的な貧血症が慢性化し、雇用と賃金がすぐに上昇しないなら、ポピュリスト政党はさらに多くのヨーロッパ諸国で権力を得るだろう。もっと悪いことに、ユーロ圏の危機は再発し、ギリシャのユーロ圏離脱がドミノとなって、ユーロ圏は崩壊するかもしれない。あるいは、イギリスのEU離脱がEUの解体を刺激し、イギリス、スペイン、ベルギーといった他のヨーロッパ諸国も内側から分割される。

この反リベラリズムの潮流は、ユーロ圏やEUを維持することを死活的な問題としている。そのためには、マクロの構造的な経済政策を変更し、総需要、雇用、成長を刺激し、所得や資産の格差を是正する必要がある。若者に機会を与え、難民や移民を拒むより、統合化することが重要だ。大胆な政策だけが、長期停滞とナショナリストたちのポピュリズムを阻止できる。

断固として行動することに失敗すれば、平和な、統合化した、グローバル化した超国家、EUは瓦解し、ナショナリズムのディストピアが誕生する。オーウェルの『1984年』、ハクスリーの『素晴らしい新世界』、そしてMichel Houellebecqの最新小説Submissionが、本でしかないことを私は願う。

NYT OCT. 29, 2015

Germany’s Gathering Clouds of Discontent

Jochen Bittner


後半へ続く)