IPEの果樹園2015

今週のReview

10/26-31

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鉄鋼産業の消滅 ・・・イギリスのEU離脱論争 ・・・習近平のイギリス公式訪問 ・・・日本病に感染する中国 ・・・EU難民危機とドイツ ・・・民主党予備選挙とデンマーク ・・・カナダ総選挙 ・・・アフリカを世界のパン籠に ・・・デフレ怪獣Chinzila ・・・カースト制とレイプに抗する少女 ・・・オバマ外交の迷走 ・・・民主主義の対抗者 ・・・日本の再武装 ・・・TPPは半分でしかない

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, The Guardian, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, そして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]


l  鉄鋼産業の消滅

The Guardian, Friday 16 October 2015

The Guardian view on the steel industry: where’s the entrepreneurial state when it’s needed?

Editorial

イギリスから鉄鋼産業が消滅していく.Redcarは消滅し,今度はScunthorpe1200人の雇用が消える.金曜日,ロッテルダム・サミットでは産業を支援するあいまいな約束が示された.1974年,鉄鋼産業には20万人が働いていたが,昨年は3万人以下であった.10年後にも,イギリスには鉄鋼産業があるのか? 失われてしまうとしたら,それは重要なことか?

世界経済の減速は鉄鋼業の過剰生産を深刻にしている.中国はヨーロッパ向けのダンピング輸出を責められている.他の市場でもヨーロッパの輸出を奪っている.ロッテルダム・サミットで,一層のEUによる介入が求められたのは当然だろう.また環境規制がエネルギーコストを高くしていることも問題視された.ヨーロッパで規制しても,そのせいで中国から,もっと環境を破壊する形で生産された鉄鋼を輸入しているからだ.

大蔵省は鉄鋼業への補償を考えるが,それはまずEUが承認しなければならない.政治家や官僚は,もっと独創的な方法で中国の鉄鋼を排除しようと考えている.しかし,鉄鋼業は斜陽産業であるというイメージが強い.政治は旧産業を避けてしまう.オズボーン蔵相は北部工業地帯を支持する政策で労働党のお株を奪った.新しい企業家国家を目指す,という.


l  イギリスのEU離脱論争

FT October 16, 2015

Britain stumbles into long EU-referendum campaign

Hugo Dixon

Vote Leave Take ControlOut(離脱)を主張する運動の1つである.

Britain Stronger In EuropeIn(残留・帰属)を主張する.

離脱派のほうに勢いがありそうだ.元大蔵大臣のLord Lawsonは,保守党の離脱派を代表し,改革できないEUに残留することの危険を説く.しかし,2017年の国民投票まで,どちらが優位を占めるかわからない.

ユーロ圏の混乱も離脱派に味方する.しかし,ユーロ圏は財政統合・政治統合に進むのか? EUの将来は,せいぜいEZ(ユーロ圏)合衆国であり,EU合衆国ではない.イギリスはEZによる差別的な扱いを阻止する手段を強化しようとしている.

たとえユーロ圏がどうなろうと,単一市場の利益は莫大である.これを無視して離脱を主張することこそ危険である.

FT October 22, 2015

Europe boosts Britain’s strength on the world stage

Michael Rake

FT October 22, 2015

Mark Carney frames British EU debate


l  習近平のイギリス公式訪問

FT October 16, 2015

Crackdown breeds Uighur resentment of China’s deserving Han heroes

Tom Mitchell in Aksu

The Guardian, Sunday 18 October 2015

The howls of China’s prisoners will haunt this royal welcome for Xi Jinping

Ma Jian

18年前,私は,激しい雨の降る夜明けに,中国人民解放軍の戦車とトラックが香港に入るのを,恐れながら見ていた.中国がイギリス植民地に対する主権を回復したのだ.思想と表現の自由を制限するビッグ・ブラザーの監視を避けて,私はロンドンに移住した.

火曜日,私はモールに立って,中国の習近平主席と彼の妻が,偽装馬車に乗ってバッキンガム宮殿に向かうのを見るだろう.そこには戦車もトラックもないだろうが,私の恐怖は疑いなくもっと深い.ビッグ・ブラザーは再びイギリス本土に現れたのだから.しかも今回は,イギリス政府に,冷たい握手ではなく,恥知らずなほどの追従と抱擁によって歓迎されるのだ.

世界最大の専制支配国家の指導者が,王室警護兵の敬礼を受け,正装した3世代の王族によって迎えられる.習はイギリス両院議会で演説し,Belgian Suite宮殿に泊まる.オズボーン蔵相が述べたように,英中関係の「黄金時代」が始まり,中国は「西側における最善のパートナー」を得るのだ.

しかし,人権よりも貿易を重視する,この卑しい友情によって,誰が得をし,誰が損をするのか?

習にとってこの公式訪問は壮大なプロパガンダである.自国では共産党が民主主義を軽蔑しているとしても,習は西側民主主義諸国が彼を承認し,それが彼の専制支配に高い正当性を与えることを望んでいる.

習の公式訪問は中国の国営放送によって全土に伝えられ,豪華な晩餐会や,女王が自ら用意したといわれる花飾りを紹介する.そのメッセージは明白だ.・・・イギリス連邦の女王が,世界最古の民主主義国家が,中国の主席にこうして敬意を示し,歓迎しているというのに,彼を批判するお前たちは何という愚か者だ?

この取引のために,中国政府は大金を注ぎ込んでいる.Hinkley Pointの原子力発電所や,HS2高速鉄道のような,イギリスのエネルギー・輸送インフラへ.西側の他の国では,これほど大きな役割を,自国の基軸インフラ建設に対して,動揺する経済と,全体主義的政府,将来の不確実さ,人権弾圧の歴史を持つ国家に委ねることなどありえないだろう.しかしオズボーンには,反対の声があるプロジェクトを,自分が唱える緊縮策を曲げずに実現するため,中国の金が要る.原則も,イギリスの安全保障も,捨てる気だ.

習の公式訪問と並行して,中国政府は国内の市民運動や反政府活動家をさらに厳しく弾圧している.中国政府を国際秩序に取り込むのは重要だが,名誉を与え,人権弾圧を無視し,不当な要求を聞き入れるのは,恥知らずであり,不要である.安っぽい友情は,中国で自由を求めて戦う人々に共感するイギリス市民たちを侮辱するものだ.

せめて,キャメロン首相が首相官邸へ帰り,習主席が絹のベッドで眠る宮殿から,ちょうど1マイルの王立芸術学院では,独房の政治犯を示す作品が世界に向けて展示されていることを,彼らが思い出すことを望む.

FT October 18, 2015

UK is right to roll out the red carpet to Xi Jinping

The Guardian, Monday 19 October 2015

China is rising as the US declines. Britain can’t ignore this reality

Martin Jacques

イギリス外交政策の大転換は、政府がアジアの朴大なインフラ需要に中国が応じるイニシアティブをとるのに参加したとき始まった。アメリカはIMFや世界銀行の脅威になるAIIBに参加しないよう求めたが、イギリスは参加を決断し、ドイツやフランスも続いた。これまでイギリスはアメリカ外交の代弁者と思われていたが、これは、1944年にJ.M.ケインズとアメリカのD.ホワイトが国際金融システムについて議論して以来、初めて、イギリスが示した独自の決断である。

この決断を促したのはオズボーン蔵相だ。胡錦濤主席が2005年にイギリスを公式訪問したとき、中国経済の規模はイギリスより小さかった。現在、中国のGDPはイギリスの3倍以上ある。世界金融危機以来、ますます世界は中国の成長と投資に大きく依存するようになっている。

習近平の訪問は、多くの新しい投資をイギリスにもたらした。イギリスはインフラへの投資を必要としているが、その財源がない。中国は高速鉄道や原子力発電所への投資意欲を示した。こうした投資がなければ、イングランド北部の活性化は不可能だろう。また人民元の最大のオフショア市場であるシティにとっても、中国は将来の成長を意味している。イギリスの「中国旋回」は当然だ。

もちろん、この転換に、中国を歓迎するイギリスはアメリカから離反していく、という反対の声や不安は生じるだろう。事態は複雑だ。中国は台頭し、アメリカは衰退する。2030年までに、中国経済の規模はアメリカの2倍に達すると推定される。中国の台頭を無視することは誰にもできない。ほとんどの国が中国に向けて旋回するのは、かつて全盛期のアメリカに諸国が集まったのと同じである。これは重力の問題であって、抽象論ではない。

アメリカは我々イギリス人と歴史や多くの価値を共有した。中国はそうではない。われわれは自分たちの価値ではなく、それ自身の条件で、中国を理解することを学ばねばならない。人権について、われわれは不満を感じている。しかし、ここでもより大きく見るなら、過去30年で6億人を貧困から救い出した中国は、人権に対する最大の貢献国であると言える。中国はまた、より自由な社会になった。

インフラを更新し、より多くの雇用をもたらす中国との関係を重視することは、アジアに向かう世界、中国中心の国際秩序において繁栄をもたらすものだ。

The Guardian, Monday 19 October 2015

The Guardian view on the Chinese president’s visit: a big gamble

Editorial

FT October 19, 2015

What China wants from Britain

George Magnus

中国には過剰な生産力があり、その外貨準備を直接にイギリスへ投資することは鉄鋼産業への需要をもたらす。アメリカの主要同盟国であり、EUへの通路として、イギリスは中国にとって有益な国になり、有利に取引できる。何より中国は、AIIBの設立を含めて、アメリカのドルに代わる構想を進めており、ロンドンのシティは人民銀建政府債を発行する最初のオフショア金融センターになるだろう。

しかし、こうしたことはEU離脱をめぐる国民投票が大きなリスクをもたらすことにもなる。EUを離脱したイギリスは、中国から見て好ましい投資先ではなくなるからだ。

The Guardian, Tuesday 20 October 2015

My advice for David Cameron – treat Xi Jinping’s promises with caution

Mark Kitto

習は、イギリス政府を許すためにやってきた。チベットなど、中国の内戦に干渉したことを悔いて、謝罪するなら、許してやる。そして、中国からの投資で、イギリス経済の苦境を救ってやろう。

しかし、中国でビジネスをした外国企業の関係者なら知っていることだが、中国政府の役人は約束を守らない。彼らは何の説明もなく、決定を翻し、私の経歴を断った。習近平の改革など進んでいない。彼は、毛沢東以来、最大の権力を持っている。イギリスを訪問したことに喜ぶ政府やビジネスマンは、間違っているだろう。

The Guardian, Tuesday 20 October 2015

What if the Chinese were to ‘raise human rights’ with us?

Simon Jenkins

FP OCTOBER 20, 2015

Since When Does Xi Rule Britannica?

BY SOPHIE RICHARDSON

The Guardian, Wednesday 21 October 2015

This nuclear power deal with China is one of the maddest ever struck

Polly Toynbee

FP OCTOBER 21, 2015

U.K., China Cement Growing Friendship With Big Nuclear Deal

BY KEITH JOHNSON

その戦略的な転換にはコストがともなう。中国が主要な貿易相手国であるオーストラリアが、アメリカに安全保障を依存していることと、同じジレンマを生じるだろう。アメリカは公式声明では称賛するが、外交官たちはイギリスの変貌を嫌っている。

キャメロンは、Hinkley Point原子力発電所への中国による投資は雇用を生む、と自慢するが、中国企業の不公正な輸出によって奪われたイギリスの雇用の一部を回復するだけである。中国との関係が悪化したときには、中国からの投資が「トロイの木馬」となって、イギリス政府を縛るだろう。

FT October 22, 2015

City’s embrace of China comes with risks

Dan McCrum

FT October 22, 2015

Xi Jinping turns integrity into a tradeable currency

Robert Shrimsley

NYT OCT. 22, 2015

Xi’s Visit to Britain Highlights Broader Shift in Concerns About China

By STEVEN ERLANGER


l  日本病に感染する中国

Project Syndicate OCT 16, 2015

The Japan Syndrome Comes to China

JEFFREY D. SACHS

中国は,今,1世代前に日本人が経験したことを経験しつつある.アメリカがその輸出を抑制するように強く要求した後,経済成長が顕著に減速したのだ.1980年代後半から1990年代初めにかけて,アメリカは日本による製造業の輸出を「不公正」と批判した.日本の輸入製品を制限するために厳しい脅迫を行い,円を大きく増価させることに成功した.それは日本の成長を急停止させるのに役だった.

円は1960年代,70年代に,徐々に増価していたが,その後,アメリカの強い圧力で,1985年にプラザ合意が成立し,多国間の市場介入で為替レートが調整された.円は1984-88年におよそ50%も増価し,日本の輸出増は停止したのだ.

その後しばらくは,国内投資が輸出の減少を相殺したが,もはや増価するしか無いように見える円に対して投機的な資金が流入した.金融バブルが起きたのだ.1990年,バブルが破裂したとき,日本は20年に及ぶ停滞に入った.

中国は同じことを経験するリスクに直面している.2000年代に入ってから,アメリカ政府は中国を貿易制裁で脅し,輸出を抑えて,人民元を増価させ,「消費主導の成長」に転換せよ,と迫った.人民元は2007年に顕著に増価し始め,日本と同様,人民元は増価するしかないと信じて,不安定化する資本流入が急増した.それは金融バブルをともなった.

2007-2014年,中国の人民元は実質実効為替レートが32%増価した.20155月まででは40%の増価である.それはドルに対してだけでなく,円やユーロ,韓国ウォンに対して,実質増価したからだ.8月に35切り下げても,なお人民元は大幅に過大評価されている.

長期の「ジャパン・トラップ」を回避するには,人民元の一層の減価が必要だ.注意すべきは,中国の輸出増の多くはアメリカやヨーロッパではなく,アフリカやアジア,特にインフラや機械,に向かうことだ.

今年の最初に,人民元の減価に反対して,The Economistが西側の常習的な誤解を表明したことがある.1.アジアの通貨戦争を刺激する,2.中国企業のドル建て債務を重荷にする,3.アメリカの人民元に対する通貨操作批判を強める,4.人民元をSDRに組み込む中国の願いに反する,と.

日本のような長期停滞を支持する,そのような説明は間違っている.

FT October 22, 2015

Difficulties in being a China bear

Jennifer Hughes in Hong Kong

Project Syndicate OCT 22, 2015

China’s Economy at the Fifth Plenum

ANDREW SHENG and XIAO GENG


l  EU難民危機とドイツ

Project Syndicate OCT 16, 2015

A Duty to Help the Refugees

ARYEH NEIER

SPIEGEL ONLINE 10/17/2015

'We're Under Water'

Germany Shows Signs of Strain from Mass of Refugees

Project Syndicate OCT 19, 2015

The Disintegration of Europe

PHILIPPE LEGRAIN

恐るべき速さでEUが解体しつつある。ハンガリーは同じEU加盟国であるクロアチアとの国境にレーザーワイヤーのフェンスを築いた。ユーロ圏の危機が金融の流れを妨げ、経済格差をさらに拡大し、政治的支持を失わせたが、今や難民危機が人の流れや貿易も妨げ始めている。

EUは危機を経験することで前進する、とよく言われる。そのような前進には、少なくとも4つの条件が要る。問題に関する正しい理解を共有すること。前進するための効果的な方策が合意されること。主権の一層のEU集中が受け入れられること、政治指導者たちに変化を促す能力があること。現在、すべてを欠いている。

EU指導者たちは弱く、分裂し、EU統合による将来の利益を信頼できるビジョンとして示す能力がないようだ。EUとして共通の対応策を欠いたまま、危機は悪化し、拡大し、国境封鎖のような一方的行動に向かう。

ユーロ危機も、難民危機も、コストが問題であり、価値観が衝突して、ドイツの支配的な役割が重要になった。

2010年のギリシャ債務危機は、フランスとドイツの銀行を救済するために利用された。その時に債務処理をしなかったことは、その後の危機を長引かせ、処理コストを膨張させた。同様に、難民危機を解消する公的な財源があれば、彼らが早期に働くことでその利益をもたらす。高齢化の進むヨーロッパ経済は若い労働者を求めている。

最近まで、ドイツの政策担当者たちは、ナチスの過去を償うために、よりヨーロッパ的なドイツを目指し、EUに資金提供してきた。しかし、債務危機で最大の債権国として強い立場を得たことで、メルケル政権はよりドイツ的なヨーロッパを築こうとした。ドイツの近隣窮乏カ的な政策が債務危機を悪化させていることを認めない。逆に、債務国に服従を求め、システム全体を損なっている。

EUはますます経済危機、政治混乱、難民の源泉とみなされ、イギリス人が2017年末にEUを離脱する可能性を高めている。EU離脱派は、自由市場、外国人からの自由、社会主義的なユートピアを振りまいている。もしイギリスのEU離脱、Brexitが実現すれば、EU解体が一気に加速するだろう。

FP OCTOBER 19, 2015

The Sad Fading Away of the Refugee Crisis Story

BY KIM GHATTAS

FT October 21, 2015

Angela Merkel stands between triumph and failure

Constanze Stelzenmüller

メルケルが成功すれば、彼女はノーベル平和賞を得るだろう。しかし、失敗すればEUが崩壊する。

今年だけで、ベルリンには80万人が流入するという。150万人という推定もある。ここ数週間は、ドイツの暗黒面も浮上した。難民への襲撃が100件を超えた。極右のポピュリスト運動がソーシャル・メディアや街頭を占拠している。

同時に、多数のドイツ人が難民支援のボランティアに参加している。ヘイト・クライムやヘイト・スピーチに反対し、当局の不決断を批判している。学生たちはスープを配り、ドイツ語や技能を教えている。

ドイツ社会は急速に変化しているし、すでにこれまで、大きく変化してきた。白人のキリスト教徒がほとんどであった国は、移民とその子孫を受け入れ、現在、人口の20%以上を占めている。多文化、多宗教、肌の色も異なる、国家になった。大規模な移民は、福祉国家を守り、経済成長を維持する。かつて1945年以後、1300万人のドイツ人が東欧から帰還した。1990年代、300万人がソ連から流入した。1990103日、1600万人の東ドイツ国民が加わった。

歴史は宿命ではないし、アイデンティティは選択できる。移民たちはヨーロッパを選び、ドイツを選んだ。そしてドイツは彼らを受け入れた。

ただ新社会変化には時間と、資金と、良い政策が必要だ。第2次世界大戦の恐怖は50年続き、東ドイツの再統合には2兆ユーロを要し、トルコ系移民の国籍取得を認めるまで、数十年間も差別されたゲットーが続いた。

メルケルは困難な妥協を模索する。国境に壁を再建するのではなく、移民たちの安全な受け入れ地域と帰還を認め、非合法な斡旋業者を取り締まり、中東危機の鎮静化に向けた外交を展開して、レバノンなどの難民受け入れ諸国に財政支援しなければならない。

Project Syndicate OCT 21, 2015

The Great Leader Revival

CHRIS PATTEN

FP OCTOBER 22, 2015

Nothing Can Take Down Angela Merkel — Except 800,000 Refugees

BY PAUL HOCKENOS


l  世界銀行の改革

Project Syndicate OCT 16, 2015

Escape from the World Bank

DEVESH KAPUR

世界銀行は,老朽化した船のように,そのスピードと機能を失いつつある.新しい開発銀行ができても,発展途上国が十分な融資を得ることは難しいだろう.

世界銀行の予算や契約には多くの問題が生じている.それは初期の理事会による運営から,あまりにも多くの機関や部署が生まれたからだ.この官僚主義の膨張は,発展した諸国からの圧力が原因だ.さらに,巨大なNGOsが圧力を強めた.狡猾な世銀総裁たちは,政治的圧力を排するために,多くのベルやホイッスルをつけて,大げさに鳴らすのだ.


l  民主党予備選挙とデンマーク

NYT OCT. 16, 2015

Democrats, Republicans and Wall Street Tycoons

Paul Krugman

金融危機後,金融規制が強化され,ウォール街の資金は民主党を離れ,共和党候補の成功を願っている.

NYT OCT. 16, 2015

Guess Who Else Is a Socialist?

Timothy Egan

政治論争がもたらす副次的な有用さは,時に,忘れられていた重要な何かを気付かせることだ.今回のデンマークのように.

火曜日のTV討論で,ヒラリー・クリントンは,「私はデンマークが好きだ」と言った.ほとんど白人ばかりの,人口570万人しかいない,半社会主義的な国家である.多くのエスニックな国民が集まる32200万人のアメリカの問題を解決する策を見いだす所ではないだろう.

しかし,実際は,多くの者が思う以上に,アメリカもデンマークに似ているのだ.社会主義と言えば,破たんしたソビエト型の国家,マルクス主義者のクラブだと思うから,アメリカ人は嫌う.そのラベルを捨てれば,健康保険や教育,老人への年金を政府が支給することと,創造的な資本主義が併存して,うまく機能している北欧諸国,イギリス,カナダを,アメリカ人の多くは支持するだろう.

彼女は,「アメリカはデンマークではない」とも言った.デンマークは税率が高い.しかし,予算は黒字,国民健康保険,短い労働時間,を実現しており,Forbes誌は世界でビジネスに最も優れた国としてランクした.

NYT OCT. 19, 2015

Something Not Rotten in Denmark

Paul Krugman

民主党の大統領候補者討論会で、サンダースとヒラリー・クリントンはデンマークについて議論した。共和党の候補者たちはヨーロッパの社会福祉国家を「崩壊しつつある」という形容詞なしには語らない。しかし、「USA! USA! USA! 」という歓声だけより、他国の経験から学ぶ姿勢は好ましい。

デンマークは国民健康保険、無料の大学教育、奨学金、大幅に補助されたデイケア、を提供している。それゆえ高負担の税を求めているが、それでも荒廃が広がることはなく、アメリカと同様の生産性と雇用創出を実現している。国際比較で、「生活満足度」は世界最高水準だ。

世界金融危機からの回復は遅く、不完全であるため、アメリカよりも劣っているが、それはユーロ圏として共通の金融・財政政策が失敗したからだ。スウェーデンと比べれば、それは明白だ。アメリカの保守層がデンマークを否定するのとは違った理由である。

NYT OCT. 20, 2015

Enter the Age of the Outsiders

David Brooks

NYT OCT. 21, 2015

Are You Sure You Want the Job?

Thomas L. Friedman

アメリカにはトランプ、フランスにはマリ・ル・ペン、アラブ世界にはISIS、ロシアにはプーチン。

彼らは冷戦の時代やポスト冷戦の時代へ、確実さと繁栄の時代へ、戻ると約束する。こんな時代をもたらした伝統的なエリートを追放し、変化に対する壁を築き、怒れる男たちに超権力を与えることで。彼らの約束はすべて偽物だが、彼らが取り戻すという混乱は本物だ。

VOX 22 October 2015

Union power and inequality

Florence Jaumotte, Carolina Osorio Buitron


l  カナダ総選挙

NYT OCT. 16, 2015

With Anti-Muslim Campaign, Canada Has Its Trump Moment

By MARTIN PATRIQUIN

保守党政権のハーパー首相は,ニジャブ(顔全体を覆うヴェール)禁止を選挙の争点にした.

FT October 20, 2015

Trudeau trounces the politics of enmity

Michael Ignatieff

民主主義は、敵と反対派とを区別する。もし相手が敵なら、どのような手段を使っても滅ぼさなければならない。しかし、相手が反対派なら、手段は公平でなければならず、反対派を説得して、未来の友人にしなければならない。

トルドーの勝利は、「敵の政治学」に「反対派の政治学」が勝利したのだ。

FT October 20, 2015

Canadians hit at politics of austerity

Gary Silverman

NYT OCT. 20, 2015

A New Trudeau Era in Canada

By THE EDITORIAL BOARD

FP OCTOBER 20, 2015

How a Liberal ‘Red Wave’ Swept Canada Last Night

BY REID STANDISH

FP OCTOBER 21, 2015

Justin Trudeau Is Putting the ‘Liberal’ Back in ‘Canadian Foreign Policy’

BY MATTHEW BONDY

NYT OCT. 22, 2015

Camelot Comes to Canada

Roger Cohen

NYT OCT. 22, 2015

Justin Trudeau: Low Expectations, High Relief

By HEATHER MALLICK


l  石油戦争

Bloomberg OCT 16, 2015

Saudi Arabia's Oil War With Russia

By Leonid Bershidsky


後半へ続く)