前半から続く)


l  中国はTPPに参加するべきか

FP OCTOBER 9, 2015

Why Won’t Anyone Play With Us?’ China’s Internet Erupts With TPP Angst

BY DAVID WERTIME

(China Daily) 2015-10-10

TPP not start of an 'economic Cold War'

By Chu Yin

中国はTPPに参加するべきか,激しい論争が起きている.それは中国国民の中に,中国の台頭と経済構造転換の将来についての不確実性があるからだ.

TPPは,中国の国際的影響力や,アジア太平洋における地域協力の促進にとって脅威である.しかし,そこには中国が利用できる良い面もある.

TPP合意には,中国の影響力に対抗することがその一部に含まれていた.しかし,これを「新しい経済冷戦」の始まりと考えるなら,それは不可能な企てだ.それは確かにアメリカのアジアにおける戦略的利益を表すが,なお,地域経済統合の枠組みでもある.それは中国の経済発展,地位向上の方向と一致する.

高い水準の包括的な自由貿易協定は,中国の遅れた部門にとって厳しい課題であるが,先進的な部門にとっての機会でもある.国有企業,労働基準,政府契約,などは,中国内の地域によって時間を要するが,地元産業にも前進とTPP基準を満たす可能性と余地はある.

TPPはまた,競争力のある中国企業が国際的企業に変身することを促す,大きなプラットフォームと機会を提供する.Lenovo Huaweiは,すでに世界各地で投資を行っている.

さらに,TPPは反中国の単純な発想で集まった集団ではない.20世紀の後半,イデオロギー的な対立が冷戦を生んだ.近年,米中関係は微妙なものもあるが,全体として両国関係は安定し,進歩的である.TPPを価値観の共有による同盟だという意見は,勝手な思い込みだ.

TPP内でも,Singapore, Malaysia, Vietnam, Chile and Mexicoは異なる政治システムの国である.TPP参加はアメリカから利益を得るが,彼らは利益を最大化するためにアメリカと中国を天秤にかけているのだ.重要なことに,参加12か国の中で8か国はすでに中国と自由貿易協定を結んでいる.New Zealand, Australia and Malaysiaと中国の関係は歴史上最も良好である.シンガポールと中国とは相互に最大の投資国である.

中国はもはや低賃金労働力による輸出国ではなく,国内需要に依拠した超大規模な市場に向けて前進する.その過程で生じるアブソープション効果は,TPPによって妨げられることがない.この過程においては,いかなるパワーも中国を封じ込めることができない.唯一,中国自身が冷戦型の閉鎖的思考に囚われることがなければ.

内外に自由貿易圏を築き,新シルクロード,改革と開放の深化を絶えず求めるなら,経済転換も,内外の課題も,中国は解決できる.

FT October 14, 2015

Barack Obama’s late lamented trade deal

Daniel Twining

オバマは共和党の一部から支持を得て,何とかTPPを議会で通すための交渉権限を得た.しかし,民主内の対立を避けて,こうした時期にまで延期したことは,大統領選挙の論争でTPPを候補者たちの餌食にしてしまう.


l  ノーベル平和賞

NYT OCT. 9, 2015

A Nobel Prize for Dialogue in Tunisia

By THE EDITORIAL BOARD

The Guardian, Sunday 11 October 2015

There will be no peace until Israel’s occupation of Palestine ends

Marwan Barghouti


l  難民問題の輸出

NYT OCT. 10, 2015

The Refugees at Our Door

By SONIA NAZARIO

過去15か月間,アメリカのオバマ政権の要請で,メキシコは中米の暴力から逃れた難民たちに過酷な弾圧を行った.移民たちがアメリカ国境に到達し,難民申請しないよう,この9月に終わった財政年度で数千万ドルがメキシコに与えられていた.

ヨーロッパを揺るがせている難民危機と同様の問題を,アメリカはメキシコにアウトソース(外注・外部委託)したのだ.


l  シリア内戦

FT October 11, 2015

We need a Syria strategy, not half-baked reasons to drop bombs

Philippe Sands

Project Syndicate OCT 12, 2015

Russia’s European Game in Syria

BERNARD-HENRI LÉVY

FP OCTOBER 12, 2015

More Chechnya, Less Afghanistan

BY NOAH BONSEY

SPIEGEL ONLINE 10/13/2015

Russia's Superpower Play

Putin Bets Big on Aggressive Syria Policy


l  アメリカの覇権は失われた

FT October 12, 2015

China’s great game: Road to a new empire

By Charles Clover and Lucy Hornby

FT October 12, 2015

A global test of American power

Gideon Rachman

世界人口の5%足らず,世界経済の22%の国が,いつまで世界の支配的な軍事・政治権力を握っていられるのか? この問題は,中東,東欧,太平洋で,急速に深刻さを増している.

冷戦が終結して以来,アメリカの圧倒的な軍事的優位が世界政治の中心的な事実であった.しかし,今,重要な3つの地域で,それが試されている.先週FTが伝えた3つの事件がそれを示す.1.シリアで軍事展開を強めたロシアに対して,アメリカが警告した.2.南シナ海で中国が主張する領海に,アメリカの戦艦が挑戦した.3.イギリスは,アメリカとドイツに協力して,バルト海諸国に軍を駐留させると合意した.

アメリカの軍事力こそが,世界中の境界線を保証している.「ボーダーレス・ワールド」といった流行りの話題に反して,領土の支配が,今でも世界政治の基本である.「世界秩序とは領土的な秩序である」と,イギリスの元外交官Sir Robert Cooperは述べた.ブルッキングス研究所のThomas Wrightは,同様に,国際政治の安定性は,「健全な地域の秩序,特に,ヨーロッパと東アジアにかかっている」と述べた.それは周辺から欠け始めている.

アメリカは外交の焦点を中東からアジアへ「リバランス」する,と言われていたが,中東からの退却がアジアにおけるアメリカの地位を掘り崩しつつある,と議論されるようになった.強いアメリカというイメージを回復するため,オバマ大統領は強力に反撃するべきだ,と求められている.しかしオバマは,なお,イラクトリビアでアメリカの軍事力行使が示した破壊的な効果を意識しており,ロシアや中国と軍事的に対抗するリスクにも正しく慎重さを維持している.

世界政治において何が「歴史を見直す修正主義」なのか,その論争が複雑さを加える.アメリカはロシアや中国の領土要求を世界秩序への挑戦とみなす.しかしロシア人は,アメリカの支援するシリアやウクライナで「体制転換」こそが世界秩序の土台を損なっている,と考える.北京やモスクワは,アメリカの支持する体制転換の犠牲者になるのを恐れている.またアメリカ人も,領土的な修正主義が世界に広まり,無政府的な,危険地帯が広がることを心配している.

こうした不安の混合が,地域紛争のレシピである.

FT October 13, 2015

China’s Great Game: New frontier, old foes

Tom Mitchell

YaleGlobal, 13 October 2015

Narrow Court Ruling May Offer Room for Diplomacy on South China Sea Claims

Ashley Townshend

FT October 14, 2015

China’s Great Game: In Russia’s backyard

Jack Farchy


l  技術革新と政治的関与

Project Syndicate OCT 13, 2015

Governments’ Self-Disruption Challenge

MOHAMED A. EL-ERIAN

西側の政府が直面している、今、最も難しい課題は、技術革新の構造転換力を実現可能にし、個人や企業の変化に導くことである。彼らが創造的破壊に対して開放的で、その手段や手続きだけでなく考え方も含めて、改造し、アップグレードするのを許容しなければならない。この課題を遅らせるほど、現在および将来の世代は多くの機会を失う。

世界中のますます多くの人々、産業部門、活動が、自己実現能力を高める技術革新の影響を受けている。都市輸送から、居住、娯楽、メディアまで、だれもがより広い活動にアクセスし、関与できる。金融や医薬品に関する伝統的な規制や壁も崩壊しつつある。

しかし、歴史的な構造転換は、政府が変化の力を解放しなければ十分に実現しないだろう。すなわち政府は、膨大なプラスの外部性を内部化し、マイナスの衝撃を最小化するのだ。残念ながら、多くの先進諸国ではこれが非常に難しい。その理由の一部は、金融危機と不況からの回復過程がうまくいっておらず、政府の信頼や機能が損なわれていることだ。

反体制の、既存政党ではない勢力や候補者が大西洋の両側で現れ、経済ガバナンスの最も基礎にまで混乱をもたらしている。

実際、西側の政治経済構造は、様々なやり方で、深刻かつ急激な変化を阻むように設定されている。一時的、反復的な変動が、基本的なシステムに不当な影響を及ぼさないようにしているのだ。しかし、現在のように、重大な構造的、長期的な変化が起きれば、先進諸国のこうした制度の在り方は、効果的な行動に対する深刻な障害になる。

政治献金やロビーの政治的影響力は、この課題をさらに難しくする。彼らは、システム全体の長期的な福祉を改善するために行動するより、ミクロな動機を追及し、その一部は伝統的な階層、しばしば、エスタブリッシュメントの富裕層がシステムを支配し続けるのを助ける。そうすることで彼らは、アップグレードや転換に特に重要な、小規模の、新興プレーヤーを阻止するのだ。

たとえ政府が構造転換を促す政策を実施しようとしても、技術科もたらすかつてない移動制と連携効果によって、国民国家の法的なパワーは浸食されている。真に効果的な対応は、破壊的な技術革新の利益を完全に発揮させることだが、それには多国間の協力・協調が欠かせない。ところが、構造転換それ自体が、既存の国際制度や構造の正当性に疑いを生じる。

こうしたことから、迅速かつ包括的な構造転換は明らかに難しい。西側政府にとって最善の選択は、漸進的な変化を追及すること、様々な手段を駆使して、その変化が時間を経て臨界点を越え、社会構造を転換するように導くことだ。たとえば、政府と民間とのパートナーシップ、政府の意思決定過程に外部の助言者を入れる、政策対応を高める諸機関の協力、国境を超える民間部門の連携を駆使した国際協力、など。

経済の機能変化とは、既存の集権的な勢力から、諸個人のパワーがかつてないほど高まることへ、相対的なパワーシフトをともなう。政府は、その自己破壊的な変化に対して社会が開放的であるよう、その利益を最大化しなければならない。

Project Syndicate OCT 15, 2015

Job-Saving Technologies

MICHAEL SPENCE and JAMES MANYIKA

VOX 15 October 2015

Explaining recent declines in labour’s share in US income

Robert Z. Lawrence


l  労働党は正しい

The Guardian, Tuesday 13 October 2015

Living within our means’ makes no economic sense. Labour is right to oppose it

Ha-Joon Chang


l  高齢化経済の優雅さ

FT October 13, 2015

Ageing economies will grow old with grace

Manoj Pradhan


l  QEでよいのか

Bloomberg OCT 13, 2015

QE's Shortcomings Show Up in Global Wealth

By Mark Gilbert


l  3のインティファーダ

FP OCTOBER 14, 2015

Can Anyone Prevent a Third Intifada?

BY GREGG CARLSTROM


l  イギリスのEU離脱

FT October 15, 2015

Britain’s EU choice — realism or emotion

Philip Stephens


l  ドイツの覇権は終わった

Project Syndicate OCT 15, 2015

The End of German Hegemony

DANIEL GROS

ドイツの経済的な頂点は過ぎ去るだろう.ほぼ完全雇用でありながら生産性上昇率は非常に低い.労働力人口は減少している.ドイツの金融的な余力は,その輸出が資本財に偏り,中国とその関連の新興市場で投資ブームが終わるときに,失われる.難民危機では,ドイツが東欧・中欧諸国に受け入れを頼む立場になった.

ドイツの成長率はEUの平均を下回るだろう.その財政規律の要求は無視され,インフレが高まらないなら,ECBもより自由に金融緩和するだろう.それはEUへの支持を高めるかもしれない.しかし,ドイツの統合問題は残る.


Bloonberg OCT 15, 2015

Only India and China Can End Asia's Haze

By Adam Minter


l  習主席の訪英

(chinadaily.com.cn) 2015-10-15

UK hopes for start of golden decade

By Fraser Cameron

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The Economist October 3rd 2015

Dominant and dangerous

Special Report: The sticky superpower

War in the Muslim world: Putin dares, Obama dithers

A slowdown among Asian economies: Running out of puff

Abenomics: Less of the same

(コメント) アメリカ経済は世界GDP23%,商品貿易の12%しか占めていない.しかし,それにもかかわらずドル圏は,(ドルと固定レートもしくは緊密に連動する金融政策を取る)中国などの諸国を含めて,世界GDP,世界人口の,ともにほぼ60%に達する.・・・それはドルの強さを示しているが,同時に崩壊の不安を掻き立てている.

西側世界とイスラム圏はどうか? ロシアの介入にはどういう意味があるか? アジア経済が減速し続けている?

アベノミクスが示す「新3本の矢」には,もちろん,厳しい見方が示されています.600兆円のGDPを唱えたのは,政府債務の対GDP比を隠すため,そして,シリア難民を受け入れない政府の姿勢は人口減少にも無策である.

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IPEの想像力 10/19/15

国際通貨制度IMSの改革について,私は考えてきました.それは,為替レートの変更に関する判断であったり,国際通貨の供給に関する問題であったり,通貨危機や金融危機の構造的な原因と政治の関係,国際規制の可能性であったりしました.

私にとって,IMSのイメージはブレトンウッズ協定が示した基軸通貨制度です.

The Economist Special Report (The sticky superpower) は,アメリカの働きを,ケインズが国際金本位制下のイングランド銀行をたとえた「オーケストラの指揮者」ではなく,アナーキーで超国家的な集団の中で支配的地位にある「ラッパー」,と呼んでいます.

19世紀の金本位制と比べて,現代の国際通貨・金融システムが苦しんでいる問題は,記事によれば,3つあります.1.諸国家間の不均衡を集団行動によって調整すること.2.グローバルな資本移動の規模が膨張し続けていること.3.国際通貨としてのドルとその発行国であるアメリカの役割が乖離していること.

IMSの根本問題とは,調整,融資,信認,と言われます.国際収支(ふつうは経常収支の)不均衡をどのように調整するか,さらに言えば,国家を超えた円滑な調整過程について,どのような政策の採用を諸国間で合意できるか,が重要です.もしこれが確立されているなら,不均衡の融資を抑えられるし,突然のショックに対しても潤沢な流動性(国際通貨)を供給できるでしょう.逆に,調整過程に関する合意がなければ,国際通貨は過剰に(あるいは過少に)供給され,その通貨の価値やシステムへの信認を損なうのです.

記事は,アメリカの世界経済に占める比重が低下し続ける中で,ドル(もしくはドル圏)の地位が高いままであることを,構造的に不安定性が蓄積されている,と考えます.

こうしたドルを管理するはずのアメリカ政治には,パラノイド型の内紛が頻発し,不安がいっぱいです.1.党派的な争いによって政治が機能しない.民主・共和両党で,経済外交に関する不満が高まっている.2.中産階級や労働者がグローバリゼーションを支持しない.所得分配は不平等化し,雇用が失しなわれている.アメリカの影響力が低下する中,中国を信用できるパートナーとはみなせない.3.金融危機とその処理過程において,ウォール街は国民の怒りをかった.かつて財務長官を輩出したゴールドマンサックスやシティグループは,政府の力を補完できない.むしろ彼らを攻撃する「ポピュリスト」が政治を動かす.

では,IMSはどうなるのか?

記事は,中国が新しいIMSを築くことに懐疑的です.中国の支配層が何より優先するのは,国内の政治的安定性だからです.ロンドンを利用して人民元のオフショア取引を広めるとしても,中国は資本自由化(人民元によるIMS)に慎重です.

つまり将来に見るのは,バラバラな諸制度の併存,混住システムです.すでに変動レート制が,そもそもそうなのです.混住と難民(内戦?)の時代は予想外に長期化し,もし理想的なシナリオを描くなら,アメリカや中国などが改革を競争するはずです.

私は未来を,戦争と帝国の時代になる,という予想を裏切って,国際協調の時代,と呼びたいです.その条件を模索するには,今,ここで,あなたの国が始めるしかありません.

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