IPEの果樹園2015

今週のReview

10/5-10

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ASEANの苦悩 ・・・EUと難民危機 ・・・アメリカとロシアのシリア内戦 ・・・アメリカの金権政治 ・・・アメリカと中国 ・・・アメリカの金融政策と中国

 [長いReview]

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[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]


l  ASEANの苦悩

NYT OCT. 1, 2015

Southeast Asia’s Hazy Future

By TASH AW

東南アジアに煙害の季節がやってきた.インドネシアのスマトラ島が主な発生源だ.乾季の今,製紙業やパームオイルの需要に応えて,ジャングルを焼き払う者が増えるからだ.煙害は容易に国境を越えて広がり,すでに何年も,シンガポールやマレーシアは不満を強め,対策を求めている.彼らが憤慨するのは,煙害を抑える効果的な機関がないことだ.ASEANは各国の主権を尊重し,他国の政策に干渉しない.


l  EUと難民危機

FT September 27, 2015

Five concurrent crises push Europe into the realm of chaos

Wolfgang Munchau

私がこうした状況の変化に見るのは、ドイツ政府の政策対応力が失われてしまう、という危険だ。同時に、世界経済は減速しつつある。ユーロ危機が再燃するかもしれない。ユーロ圏が不況を回避しているのは、近隣窮乏化的な、純輸出に頼る政策をとっているからだ。

難民危機と輸出の減少は、ドイツに財政的な支出を増やし、その黒字を減らすだろう。ユーロ圏の不均衡や赤字国の苦境を緩和する意味で、ドイツの財政支出は良いことだが、問題はドイツが財政均衡を法によって政府に求めていることだ。難民のために支出し、国民への給付が犠牲になるとか、ギリシャへの債務免除を受け入れない、という形で、ドイツの行動は制約されるだろう。

Project Syndicate SEP 28, 2015

The Fire Forging Europe

CARL BILDT

統計が示すように、ヨーロッパは難民を吸収できる。それは人口の0.2%でしかなく、高齢化によって減少する労働力人口に比べてもはるかに少ない。

しかし、このことは吸収することが容易であるという意味ではない。難民システムは崩壊寸前であり、住宅や雇用は十分に供給されていないからだ。EU指導者たちにとって最大の問題は、国内の政治的反動を抑えることだろう。移民や難民を攻撃する排外主義やナショナリズムを支持する勢力は、この機会を利用する。

EUレベルにおいて、難民の割り当てと受け入れ義務に関するルールは、コンセンサスではなく、多数決で決められるだろう。28か国中、4か国が反対しているだけだ。

多くの反対意見や緊張にもかかわらず、解決はヨーロッパ規模でなければならない、という、ほぼ全会一致の合意が存在することが重要だ。誰もが、新しい世界の無秩序に対して、共同で立ち向かうのが最善であると認めている。共通の分担システムを導入し、かつては国家の重要機能とみなされた領域でも、主権をEUに移譲することが受け入れられている。

ユーロ危機もそうだった。新しい危機が起き、ブラッセルの会合が開かれ、最初は危機を回避する模索が続き、議論と分裂が生じるが、次第に、共通の対応策が一歩一歩前進し、他の選択肢はないという理解が進む。

現在の無同委は、より強力な同盟の起源となる。ヨーロッパ統合のプロジェクトは、もはやユートピアではなく、小国が集団で共通の課題を解決するプラグマティックなメカニズムなのだ。

EUの人々は、この世界がより危険で、分裂し、迷走しているということに目覚めた。それは彼らを分解するより、協力させるだろう。

FT September 29, 2015

The benefits of migration are questionable

Martin Wolf

グローバリゼーションは、商品、サービス、資本についてだけでなく、人々についても起きている。高所得国は、裕福であるだけでなく、汚職が少なく、安定している。人々が西側に移住しようとするのは無理もない。

しかし、移民は極右の政治家たちが好む政治論争だ。

世界において示されている実質賃金の差を、最大の経済的な歪みとして、その障壁の全廃を唱えるエコノミストもいる。人の移動も、貿易と変わらない。富の最大化である。

しかし、そのようなコスモポリタニズムは、分割された領土的な自己統治により組織された我々の世界と矛盾する。誰と生活の利益を享受するか、それを決める市民の権利とも矛盾する。

移民をめぐる利益を市民が判断する基準は、人口の規模と移民の性格である。人口が少ないだけで移民の流入を歓迎することはない。裕福な小国では、大規模な移民が生活環境を悪化させる。それが有利であるというのは、防衛負担を減らす点だけであろう。

移民を支持する主張は、移民たちが若く、低賃金で、労働意欲や企業家精神に富んでいる、といった違いを強調する。実際、EUでは、移入民が唯一の人口増加要因になる日も近い。過去10年間で見れば、移入民による労働力人口の増加は、アメリカで47%、ヨーロッパで70%であった。

高齢化にともない、労働者が支える退職者の割合を下げるために、移入民が重視されている。しかし、その効果はわずかであり、それを満たす実際に必要な移民の規模は莫大である。

また、長期的な財政に与える影響を、OECDは予測している。過去50年間、累積した移民の財政負担は平均でおおむねゼロであった。その影響は、移入民の持つ熟練その他の性格によって変化し、労働市場の弾力性によっても変わる。

移民は現在の労働者を補完するのか、代替するのか? 誰の地益を実現するのか? 経済的には、高齢者の負担、住宅などへの投資、混雑費用、など、自然人口増加と似ている。その利益を受けるのは、常に、移入民である。

他方、移民は経済学だけではなく、人々の変化を意味する。文化をもたらし、多様性やダイナミズムをもたらす。同時に、社会的な隔離や分断をもたらす。

国家は完全に閉じることも、完全に開放することもない。そのバランスはむつかしい。しかし、各国が論争において、市民たちの利益を最優先するのは当然である。


l  アメリカとロシアのシリア内戦

FT September 27, 2015

Deal with Russia is Obama’s least worst option

ED Luce

2人の指導者が会談する.一方は,苦渋に満ちた世界の指導者.他方は,野蛮な機会主義者.そこで話し合われるのはシリア内戦だが,中東の安定化やEUにまで影響している.

4年に及ぶ内戦は,避難民の負担により近隣諸国を押しつぶしつつあり,シリアにおける殺戮は悪化するばかりである.このままではヨーロッパが包囲された不安に侵され,近隣国には統治不能な状態が広まる.

イラクやリビアで体制を破壊した後の混乱を知ったアメリカ政府は,イスラム国家の攻勢が強まる中で,アサド体制を一気に破棄することはできなくなった.アメリカとロシアが共同開催するアサド政権と反政府諸勢力との会合は,アサドが出席しても,しなくても,イスラム過激派を排除するものだ.

オバマも国内の共和党や安全保障専門家からの厳しい批判があり,他方,プーチンも国内のイスラム教徒2000万人を抑圧している.どちらもイスラム国家の打倒に協力の利益を見いだすのである.

NYT SEPT. 30, 2015

Syria, Obama and Putin

Thomas L. Friedman

オバマ大統領のシリア政策は議会で不人気だ.しかし,私は改めてこれを支持しようと思う.

彼は自分の信念においてなすべきことを述べたが,それは機能せず,袋叩きにあっている.彼の表現はその政策を超えてしまい,政策は失敗したのだ.

しかし,共和党員たちのオバマ批判は,われわれの経験を示す思慮を外れたものだ.彼らは平気で,爆撃せよ,シリアに軍隊を派遣せよ,などと言うが,それはイラクやリビアよりもうまくいくという理由は何もない.バルティモアの都市貧困地区を治安回復できない者が,アレッポの事態を収拾できるとは思えない.しかも,上空からの空爆で.

私は,オバマのアンビバレントな有機を,その批判者たちの無思慮よりも高く評価するが,それはアメリカが何もしないことの言い訳にならない.何かしなければならないが,それにはシリアにおけるわれわれの敵と味方を明瞭に理解しておく必要がある.

ロシアのプーチン大統領が,狡猾な狐のように,立ちすくむアメリカ人をしり目に,軍隊や戦車,ミサイルをシリアに送って要塞化している,と言われる.もっとオバマが大胆で,タフで,スマートな大統領だったらよかった,と.

しかし,それは違うだろう.もしアメリカが何もしないと,プーチンは木に登ったまま,降りることができないはずだ.ロシアはアサドに肩入れしすぎて,イランに親しいシーア派に属するアラウィート派,アラブで多数派を示すスンニ派の虐殺を続ける戦争の指導者を護る,主要な庇護者になってしまう.

1か月もたてば,ロシアは世界の大国だと自慢するプーチンも,自分がスンニ派の標的として最上位におかれたことに恐怖を覚えるだろう.それがプーチンの望みなのか?

プーチンが無事に期から降りるには,アメリカの助けを得て,シリア内戦の政治的な解決策を実行することしかない.ロシアとイランがアサドを説得して武装解除し,シリアから亡命するのだ.そして反対派が帰還するのと交換に,アラウィート派のコミュニティーは報復を受けず,安全と利益を保護すると約束される.この取引を保証するため,両派は国際的な軍の駐留を要請する.

シリアへの介入を成功に導くような穏健派の軍事力は存在しない.


l  アメリカの金権政治

The Guardian, Thursday 1 October 2015

The billion-dollar question – when will the US repair its damaged democracy?

Timothy Garton Ash

アメリカの政治を見ると,それは金がものを言う世界である.2016年の大統領選挙は,間違いなく,史上最も金のかかる選挙になるだろう.しかも,Donald Trumpを除いて,彼らは皆,他人の資金で選挙運動をしている.スーパーPACs(政治活動委員会)を通じて,個人や企業の資金が無制限に政治に流れ込んでいる.

選挙資金への規制は,2004年,カナダの最高裁判決にさかのぼる.「諸個人は選挙過程に参加する平等な機会を持つべきだ.」そして,「富は平等な機会に対する重要な障害物である.」「選挙の論争を独占するような資源にアクセスできる者たちがいると,彼らに反対する者は発言し,意見を聞いてもらう,合理的な機会を奪われるからだ.」

しかし,アメリカ最高裁は異なる意見を示した.2010年の「シティズン・ユナイテッド」判決は,資金が発言する権利を,事実上,認めた.特に,「企業の独自支出を禁止することは,・・・発言の禁止である」と確認した.この説明は,自然人と小企業の権利を同一視するものだ.共和党の元大統領候補,ミット・ロムニーはヤジに応えて言った.「企業は人民であり,私の友人たちです.」

New York Timesは,今年の半ばまでで,約130の家族もしくは彼らの企業が,共和党候補者たち,もしくは,スーパーPACsによる資金集めの半分以上を占めていたことを発見した.アメリカ政治史の研究者Doris Kearns Godwinは,「シティズン・ユナイテッド」判決を破棄するように求めている.

ハーヴァード大学の法学者で,インターネット界の指導者であるLarry Lessigは,アメリカ政治の浄化だけを単独の公約にして,大統領に立候補した.政治献金企業の有権者登録,選挙区の変更,投票システムや選挙資金規制の改革,である.こうした目標を達成すれば,彼は大統領を辞任し,副大統領が継承する,と.しかし,クラウド型選挙資金集めは他の候補者に比べて大きく劣っている.

こうした改革がすぐに実現するとは思わない.しかし,やめるべきではない.チャーチルが言ったように,アメリカ人は,他の選択肢がすべて失われたとき,正しいことをするのだから.事態はさらに悪化し続け,代表制民主主義の核心まで政治献金が破壊的な影響を及ぼすようになれば,改革が始めるだろう.

アメリカ民主主義の健全さが重要であるのは,アメリカ人にとってだけではない.


l  アメリカと中国

Project Syndicate SEP 28, 2015

The Sino-American Codependency Trap

STEPHEN S. ROACH

アメリカと中国とは,古典的な共依存の罠に落ちった.

それは1970年代に始まった.アメリカはスタグフレーションに落ち込み,中国経済は文化大革命後の混乱にあった.両国はともに再生と成長のための新しい処方箋を求めていた.中国が安価な製品を供給し,アメリカの消費者は家計のやりくりが楽になった.アメリカは外から需要を供給して,鄧小平の輸出指向型成長戦略を支持することにしたのだ.

数年を経て,この枠組みはさらに深まっていた.成長するための貯蓄を欠いたアメリカは,ますます中国の過剰貯蓄に頼った.中国はその通貨をドルに固定し,大量のアメリカ財務省証券を購入したが,それはアメリカの記録的な財政赤字を賄った.

アメリカは中国に成長と安定性のアンカーを供給し,中国のあかげでアメリカは,低貯蓄,財政破たん,家計所得の低迷,という問題を避けることができた.しかし,共依存は人間と同様,国家間でも不安定なものだ.一方が変化すれば,他方も変化を強いられる.それを侮辱と感じることになる.

現在,中国は変化しつつあり,アメリカはそれを好まない.単に消費型の成長モデルに変わるだけでなく,より強硬な外交姿勢を取るようになった.南シナ海やAIIBなど,国際的な秩序の構築に異議を唱え始めた.アメリカは中国が,IMFや世銀など,既存秩序内で役割を増大させることを認めている.しかし,その改革は進まず,中国は独自に制度を構築し始めた.

アメリカ不安の大部分は,経済の根本問題に対処できないことを示している.すなわち,国内貯蓄の不足だ.中国がその過剰貯蓄を他の用途に吸収すれば,アメリカはこの問題に対する解決策を失う.それは,中国の成長減速に注目して,アメリカ連銀が金利の引き上げを延期したことにも示された.連銀が,アメリカの景気回復はまだ固まっていないと考え,中国向けの輸出に注意したことは明らかだ.

たとえ中国の成長率が6.8%に減速しても,それは先進諸国を合わせたものを少し超えているだろう.世界中の政策担当者がこれに注目するのは当然だ.

しかし米中双方は,さまざまな問題で相手を非難し,摩擦を生じている.人間の病理では,共依存の最後は,苦しい破局となる.


l  アメリカの金融政策と中国

Project Syndicate SEP 29, 2015

The Chinese Economy and Fed Policy

MARTIN FELDSTEIN

イエレン連銀議長は,今回のFOMCにおける短期金利引き上げ延期について,その考えを明確に述べた.これは特に重要だ.

その理由は,世界経済への配慮,特に中国経済に関する懸念である,という.私は反対だ.2008年の金融危機以降,例外的な低金利が続いたせいで,投資家や銀行の行動が変化し,金融不安低下のリスクが高まっている.金融政策を引き締める必要があると,私はこの数か月考えてきた.

国内の経済条件は,すでに失業率が5.1%まで下がっている.これは連銀が完全雇用と考えていた水準だ.しかし,人々はまだフルタイムの仕事を探しており,インフレ率は高まらない,と連銀は言う.しかし,インフレの構図はもっと複雑だ.特に石油価格の下落が止まったとき,連銀はインフレ予測をなぜ変更しないのか.

その説明を,連銀は中国に求める.中国が輸入を減らしているからだ.しかし,中国の構造転換で輸入が減るのは,鉄鉱石などを輸出しているオーストラリアと南米,工業製品に必要な特殊な部品を供給するドイツや日本だ.アメリカは中国の輸入の8%だけであり,アメリカから中国に輸出する額はGDP1%以下である.

中国の株価下落も,その資産や消費に与える影響は不動産価格ほど重要ではなく,人民元の切下げも,円やユーロ,ポンドが2桁も減価したのに比べて,わずか2.5%である.それらはアメリカの金融政策を変える理由にならない.

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The Economist September 19th 2015

The two Mexicos

Development in Mexico: Of cars and carts

Europe’s migrant crisis: Shooting Schengen

Agriculture in Africa: Wake up and sell more coffee

Charlemagne: Still standing, somehow

Risk-weighted capital: Whose model is it anyway?

Free exchange: Part-time palaver

(コメント) NAFTAによってメキシコは急速に成長できた地域もあるが、まったく成長できない地域もあった。その原因や起源は何か? ヨーロッパの移民危機でも包括的な対応能力が問われています。

アフリカは成長できる、という記事に刺激されます。今や新しい通信・輸送手段がある。農民たちはもっと利益を増やせるはずだ、と。他方、ギリシャで再選されたチプラスについては、かなり悲観的な、冷笑した論調です。

すべての労働者がネットのアプリで就労する時代になれば、それまでの被雇用者に認められている法的な権利や社会保障はどうなるのか?

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IPEの想像力 10/5/15

安保法案は成立しました。外交を欠いた軍備増強や自衛隊の海外展開には、大きなリスクがともない、安全保障の不安を中心とした政治経済構造の転換、「強靭国家」化、を加速する権力者の泥酔状態が心配です。

なぜ犯罪のニュースがこれほど多いのか?

5歳の少年が自動車にひかれて死亡した。盲導犬とともに、目の見えない男性がトラックに轢かれて死亡した。アパートの部屋で、劇団に属する若い女性が衣服を身に着けず、玄関先で首を絞められて死亡していた。80歳代の夫婦が、18歳の孫に殺害された。空き家の近くの林に、少女が埋められているのが発見された。・・・

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政治家は嘘をついてもよい? それが立派な話であれば? たとえば,・・・公約はしばしば守らない。重要な問題を意図的に議論しない。憎んでいる相手とも握手し,取引する。それは,嘘かどうか,という評価になじまない,政治的な行為や発言への解釈と評価を必要とします.

安倍首相の元気な国連演説を聞いて、この政治家の本質とは何だろうか? という疑念が残ります。

国連は大きな理想を掲げ,毎年,大きな危機を乗り越えてきた,を称賛します.日本人は国連が大好きです,というように.

難民が持つ母子手帳や、コンゴ民主共和国でJICAが行う警察官の訓練を担当する,日本から派遣された婦人警察官、というのは良い話です。

日本は一層の資金援助とPKOにも参加する、と表明します。

エボラ危機も,ウクライナやシリア内戦も,ヨーロッパ難民危機も,日本政府は何も役割を果たしていないではないか? と,国連に集まった世界各国の記者たちは思うでしょう.日本は難民を受け入れているのか? コンゴ内戦やスーダンにおけるPKOは成功したのか? カンボジアや東南アジアの現状について何を理解しているのか?

新しい「3本の矢」で、GDP600兆円を目指す。・・・「アベノミクス」と「3本の矢」には、自分勝手な政治利用であるとはいえ、根拠がありました。しかし、新しい「3本の矢」は全く異なります。これは,甘すぎるケーキのようで,歯にしみます.

私の目標は、「経済、経済、そして経済だ。」 ・・・トニー・ブレアが「教育、教育、そして教育だ。」と述べたとき、そこには決意と信念がありました。安倍首相はどうでしょうか? ナショナリストでも,極右の歴史書き換え派でもない.高度成長,日本列島改造,国土強靭化,ということ・・・か?

シリア難民受け入れより、移民・難民も人口問題として理解し、女性の活躍や高齢者の雇用問題、出生率を高めることが先だから,と応じます。

ウクライナ侵攻に対して制裁を受けているロシアから,日本のエネルギー輸入は急速に増加している。それを基礎に,指導者同士の決断で北方領土問題を解決し、日露平和条約を締結する。たとえ,プーチンは心の友だ,と言っても,何かプラスになるでしょうか.

あるいは,北朝鮮から拉致家族を取り戻す,と約束する.中国と協力するわけでもなく,韓国と協力するわけでもない.

TPP交渉が合意に至った.何も内容が分からない.しかし,非常に難しい交渉だ,歴史的な合意を達成した,とNHKは報道します.中国が世界貿易のルールを決定するのを許してはならない,という,共和党が多数の議会を意識したオバマの言葉に,日本も便乗すればよいのですか?

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こうした発言は,軽いのか,演技なのか,巧みな外交や有権者へのアピールを計算し,政治的な支持を得ながら交渉を主導する政治家としての責任を果たす正当な行為=嘘をつくことなのか,政治家として困難な局面を生きた人たちに尋ねてみたいです.

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シリア難民問題、ウクライナ紛争、国連安保理改革、中国経済への依存、その他、安倍外交の目指すものが何か、見えません。1.これで自分の理想が実現しつつある、と本気で信じている。2.国内政治の支配を正当化するためなら、どのような嘘でも許される。3.気に入りの仲間や顧問たちと話すだけで、現実を見ていない。4.・・・?

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ニュースの時間に,国際情勢や外交交渉の複雑な中身,エネルギー問題やTPPの及ぼす影響を,長期にわたって、さまざまな視点でもっと取り上げる姿勢があれば,これほど多くの,あるいは,すべての時間を費やして,殺人事件,死亡事故,セレブの結婚,離婚,スポーツ,美容,認知症の防止,さらに,「殺人,殺人,そして殺人」と,連呼しないはずです.

強靭国家というのは,脆弱さを恐れる人々の不安に乗じて育つのです.

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