前半から続く)


l  難民危機とヨーロッパの改革

Project Syndicate SEP 18, 2015

Why Border Walls Fail

REECE JONES

Project Syndicate SEP 18, 2015

The Roots of German Openness

DOMINIQUE MOISI

NYT SEPT. 18, 2015

Europe Should See Refugees as a Boon, Not a Burden

By THE EDITORIAL BOARD

SPIEGEL ONLINE 09/21/2015

Mother Angela

Merkel's Refugee Policy Divides Europe

Project Syndicate SEP 21, 2015

Refugees and Reform in Europe

MOHAMED A. EL-ERIAN

難民危機は、ヨーロッパ再生のチャンスである。

輸送、避難所、国境管理、登録センターなど、ヨーロッパのネットワークには大きなストレスが生じている。問題は協力不足によって悪化している。難民に対する扱いは国によって大きく異なっている。また、難民たちは定住地に関して強い選好を示している。

ヨーロッパには、地域によって高い失業率が生じているが、長期的に見れば、高齢者に対する労働力の比率が低下する大陸である。移民を吸収し、積極的に統合化することは、こうした構造問題を緩和するのに役立つ。難民の多くが、教育ある、労働意欲に富んだ、新しい国でよりよい生活を強く願う人々である。

また、難民危機は他の問題も緩和する。ドイツは、ユーロ圏内の不均衡を解決するために、総需要の水準を高める財政刺激策を嫌っていたが、難民の受け入れやギリシャ支援に財政支出を増やした。それは債務諸国や地域の景気回復に役立つだろう。

危機は、ヨーロッパの不完全な政治、制度、金融の構造を改革する決定的な前進に向けた触媒にもなるだろう。難民流入に対応を苦しむギリシャに対して、ヨーロッパの債権諸国は大幅な債務免除を決断するかもしれない。また、ヨーロッパのガバナンスを改善し、加盟諸国の多数が賛成しても、少数の国がその決定を阻むようなことはなくなるだろう。

ギリシャの経済・金融危機を長引かせた経過を見て、難民危機はさらに複雑で、管理不可能だ、と悲観主義者は考える。しかし歴史は、現在の難民危機のような規模と広がりを持つショックが、重大な政策対応をもたらす潜在的圧力になったことを示している。

FT September 22, 2015

A refugee crisis that Europe cannot escape

Martin Wolf

It needs a comprehensive and effective strategy. Yes, this time pigs do have to fly.

ユーロ圏の危機や、ウクライナをめぐるロシアとの抗争、イギリスのEU離脱に向けた国民投票など、ヨーロッパには扱いたくない問題が多いけれど、難民の潮流こそ、最も扱いたくない問題である。

難民危機の扱いを誤れば、現代のヨーロッパが築かれた基礎となる価値観を破壊することになる。まず、難民と移民とを分ける。絶望的な状況を逃れた人々への同情と、より有利な条件を求めて国を移動する人々の受け入れをめぐる計算とは違うものだ。

しかし、中東やアフリカの混乱状態が続けば、その規模は処理できないものになる。短期的には欧米が受け入れを増やすしかない。しかし、その分担案には強い反対がある。

長期的には、難民たちを統合するために支援しなければならない。言語教育や住宅など、その経済的負担を拒む国もある。シリア周辺と、ギリシャとイタリアに顕著な、フロンティア国の過重負担を軽減しなければならない。

中東の不安定化に関与しながら無責任な諸国には、負担を引き受ける道義的責任がある。アメリカやイギリス、フランスだ。シリア、イラク、リビアに対する秩序回復と経済復興のための支援が必要だ。同様に、人身売買を元から断つ。ヨーロッパの外交と強制力とを組み合わせる必要がある。アメリカは秩序の破壊ではなく、もっと秩序の安定化に役割を担う。

ヨーロッパ市民たちは要塞の中で静かに暮らすことを願うのかもしれない。しかし、彼らはカオスの世界に生きている。協力の道を見出すべきだ。包括的で、効果的な戦略を持つこと。そうだ。今度こそ、動きの鈍い政治家たちも、空に向けて飛ぶしかない。

Project Syndicate SEP 22, 2015

Europe’s Bad Example

PETER SUTHERLAND

NYT SEPT. 22, 2015

How the U.S. Can Welcome Refugees

By DAVID MILIBAND

Project Syndicate SEP 23, 2015

The Agony and the Exodus

ROBERT SKIDELSKY

難民の規模と性格は、ヨーロッパの移民や難民に関する合意の前提を無意味なものにしてしまった。

経済移民をめぐる論争とは、自由な労働力の移動を支持するリベラル派と、仕事、文化、政治的結束を守る保守派との論争だった。世界が国民国家によって分割され、オープンスペースが失われるにつれて、第1次世界大戦後に移入民の管理が世界化した。

1951年、国連難民条約は、1950年代のヨーロッパと世界の条件を反映したものだった。しかし、今や各地の独裁政治が崩壊し、帝国後の残忍な支配システムを崩壊させた。2003年の米英によるイラク侵攻、2011年のアラブの春がそうだ。他方、EUは政治体を共有する市民の移動を認めているが、それは不完全な国家でしかない。特に、財政店は自動的に行われず、政策の統一性もない。人口の純移動は少なく、「ゲストワーカー」がモデルとなった、出稼ぎと帰還を前提している。

大量の難民に一時的な居住を認めるしかないが、その長期的な解決策はない。こうした難民の受け入れは破たん国家の解決策にはならない。悲劇は拡大するばかりである。


l  アメリカ共和党の候補者争い

NYT SEPT. 18, 2015

The Marco Rubio-Carly Fiorina Option

David Brooks

共和党の大統領候補者争いは、経済的保守派と社会的保守派との間で分裂していた。しかし、今年はより戦術的な争いである。イラン核合意、同性婚、それらを否定するための連邦政府閉鎖、1100万人のメキシコ非合法移民の国外追放。


l  女性や介護者を拒む市場

NYT SEPT. 18, 2015

A Toxic Work World

By ANNE-MARIE SLAUGHTER

女性は労働市場から排除されている。家族のために、年老いた親を介護するために。

NYT SEPT. 23, 2015

A Toxic Work World: Q. and A. With Anne-Marie Slaughter

By ANNE-MARIE SLAUGHTER

Project Syndicate SEP 24, 2015

The Gendered Politics of Care

ANNE-MARIE SLAUGHTER


l  ギリシャ選挙

NYT SEPT. 18, 2015

Europe’s Dangerous Ambivalence

Nikos Konstandaras

The Guardian, Sunday 20 September 2015

Syriza’s victory shows that Greece wants a permanent break from its past

Nick Malkoutzis


l  中国のグローバルな役割

FP SEPTEMBER 18, 2015

China Has a Plan to Take Over Central Asia — and America Loves It

BY JOHN HUDSON

FP SEPTEMBER 18, 2015

All He Is Saying Is Give War a Chance

BY SHEILA A. SMITH

The Guardian, Saturday 19 September 2015

George Osborne: It’s in Britain’s interest to bond with China now

George Osborne and Jim O'Neill

2030年の世界を想像することだ。子供たちは将来の仕事のために、試験勉強に励んでいる。中国は世界最大の経済になっている。中国語は世界中の国で教えられているだろう。

国際貿易のための新しいシルク・ロードは、道路、高速鉄道、橋梁、ハブ空港などからなり、上海や北京から、新疆を経て、カザフスタン、パキスタン、アフガニスタンを通り、西ヨーロッパやイギリスに至る。

この15年間で、中国経済の規模は、イギリス、フランス、ドイツ、日本を抜いた。その成長は印象的であり、いまでも、2年毎に、オーストラリアの経済規模を追加している。中国の台頭を恐れるべきだという者もいるが、私はそのような思考を拒否する。それはイギリスを時代遅れにするだけだ。

われわれは中国を受け入れる。中国との最善の関係を築くことが、イギリスにとって最善の時代をもたらす。イギリスはこの機会を逃してはならない。中国とイギリスの金融部門が協力すること、素晴らしい美術館や博物館を持つ2つの文化が関係を深めることは、双方にとって利益になる。

イギリス経済は先進諸国の中で最も高い成長率を実現し、財政赤字を半減させた。中国からイギリスへの投資は、ドイツ、フランス、イタリアへの投資を合計したよりも大きい。たとえ中国の成長が減速しても、中国市場の重要性は変わらない。イギリスの製造業、インフラ、小売り、金融サービスは中国市場に大きな機会を見出す。また、中国企業もイギリスのグローバルなR&Dセンターに魅力を感じるだろう。

傍観すること、後退することは間違いだ。中国の提供する機会を、最大限、生かすべきだ。

Project Syndicate SEP 23, 2015

Containing China’s Slowdown

LEE JONG-WHA

FP SEPTEMBER 23, 2015

When China Rules the Sea

BY JAMES HOLMES

中国は、人民解放軍の艦隊を、国際法上の違法ではない形で、ベーリング海やインド洋に派遣している。中国の地対艦ミサイルの精度は、長距離においても正確さを増している。すでに、中国は大陸国家であるだけでなく、太平洋やインド洋、それを超えた領域で、海洋国家である。

FT September 24, 2015

Britain bets the bank on a pivot to China

Philip Stephens

Project Syndicate SEP 24, 2015

China in the Debt-Deflation Trap

ANDREW SHENG and XIAO GENG

債務とデフレとの悪循環から抜け出せるか?


l  Niall Fergusonの『キッシンジャー伝』

FT September 18, 2015

‘Kissinger’, by Niall Ferguson

Chris Patten

1000ページを費やして、このキッシンジャーの伝記は、漸く、彼がニクソン大統領の国家安全保障問題顧問になったところで終わる。

キッシンジャーは、一般にそう信じられているようなプラグマティストやマキャベリストではなく、スピノザやカントに従うアイデアリストである。

近代世界に安定性をもたらした2つの国際システム(1815-1914、ヨーロッパ協調と、第2次世界大戦後のアメリカの支配)には共通する特徴がある。Diplomacy (1994)は、それに従って、彼の戦術と戦略を示した。

キッシンジャーはアメリカに渡って、そこに見た極端な富と貧困の並存、強烈な個人主義に対して対立する感情を持った。彼にとっては、アメリカ政治よりもドイツ政治を深く理解していたことが問題だった。

キッシンジャーは、核戦術に関する著述で悪名をはせた。それは不当なものだ。彼は、比例的な対応、戦術核の配備、相互確証破壊(MAD)、そして今や、核廃絶を唱えた。

人権を侵す国には侵攻すべきだと主張したトニー・ブレアと違って、キッシンジャーはヨーロッパの保守主義の正当性を継承した。それは人倫に関するカントのリアリズムと、歴史的な力に関するバークの敬意によってできている。

ケネディ、ジョンソンのために助言し、ロックフェラーに協力し、その後、ニクソンと働いた。ニクソンとの共通点は、歴史的な指導者を重視したことだ。彼らはこの莫大な国家をまとめた毛沢東の、冷酷さを含めて、偉大な指導力に敬意を示した。

ベトナム戦争がアメリカに大きなダメージとなり、アメリカは分極化する世界でグローバリゼーションが進展することに対応しなければならないと感じていた。それが1968年に成立したこの「奇妙なカップル」にとっての主要課題であった。

次の卷を待って、キッシンジャーを嫌う者たちは著者と対決しなければならない。


The Guardian, Sunday 20 September 2015

So Cameron was young and reckless. Lucky he wasn’t young, reckless and poor

Gary Younge


l  石油価格と一次産品国家

FT September 21, 2015

Sweetness of Mint economies still entices

Gideon Rachman

FT September 21, 2015

Replace Nigeria’s patrimony of oil with the politics of hope

Kingsley Moghalu

FT September 24, 2015

Commodity nations must deal with the demise of a supercycle

Daniel Yergin

石油と国際商品の価格変動に見られるスーパー・サイクルの終わりには、それに財政と輸出を大幅に依存する「石油(コモディティ)国家」の滅亡が待っている。

それは、2003年後半から2004年に、中国の世界経済に占める役割が転換した時に始まった。中国は、安価な製品のタフな競争国で、インフレを抑えるフタであるだけでなく、巨大な市場にもなった。2003年から2013年において、中国は世界石油需要の45%に達した。

しかし、中国の需要は次第に減退し、中国熱が中国風邪に変わった。他方、高価格が多くの新供給を刺激していた。アメリカのシェール・オイルは価格の下落にも予想外に強かった。

石油供給の増加は、他の供給源によって、石油価格の下落につながらなかった。リビアの体制崩壊、イラクにおけるISISの拡大。市場シェアを失わないためにOPECは生産量を減らさなかった。

しかし、石油価格の下落はすべての開発計画を見直すことになる。石油に依存する諸国はその調整に耐えるしかない。緊縮、期待の挫折、予算、債務、社会・政治混乱、不況。


l  日本のコメ文化が終わる

FT September 21, 2015

Japan: End of the rice age

Leo Lewis

日本人のコメ消費は減っている。コメ価格は下落し、農家は高齢化して、日本の保護主義や政治構造も変化するだろう。


l  習近平の訪米

Project Syndicate SEP 21, 2015

When Xi Meets Obama

MINXIN PEI

南シナ海。情報スパイ。特に、人権問題で、米中間の話し合いは容易に関係の改善を意味しない。

FP SEPTEMBER 21, 2015

Rice to GOP Critics: No, We Shouldn’t Cancel China’s State Visit

BY JOHN HUDSON

FP SEPTEMBER 21, 2015

On Economic Fronts, the U.S. and China Are Stronger Together

BY ROBERT D. HORMATS

中国の習近平主席がはじめてアメリカに国賓として訪問するのは、特に重要な時期にあって、重要な意味がある。

それはもちろん、中国の株式市場が示す浮動性と、予想以上の成長の減速、さらに最近の人民元切下げが加わったからだ。しかし、こうした問題で他の重要なテーマを議論しないことは許されない。

より重要な広いテーマとは、中国とアメリカの両方で、その経済政策と経済発展が相互に重要な影響を及ぼし、その他の世界に対して、両国が貿易、投資、通貨、資本市場の問題で緊密の協力する責任がある、ということだ。両国とグローバル経済の生産性を高めるように議論がまとまるためには、重要問題について議題を整理しなければならない。

1.   浮動性の回避 ・・・アメリカは異常な低金利から脱出し、中国は消費・サービスの内需型成長に転換する。それが市場に過度の浮動性を与えないよう、両国はもっと頻繁に協議するべきだ。スムーズに移行を実現することは、それぞれの国内政治的な重要な課題である。双方が『干渉』するような事態を回避するべきだ。良好なコミュニケーションこそ最需要である。

2.   相互投資協定、世界経済秩序、SDR ・・・これらの問題を通じて、中国の経済改革にアメリカが支持を与え、アメリカは中国が国際秩序の責任ある役割を担うことに確信を得なければならない。

3.   G20の改革と活用 ・・・G20は活性化し、もっと効果的に利用できる機関にするべきだ。中国の役割は特に重要だが、同時に、他の諸国、日本、ドイツ、フランス、インド、などが基軸的な役割を担っている。

4.   通貨操作 ・・・中国の通貨操作に関する疑念は今もアメリカ側にある。為替レートを悪用することは、禁じ手、であるべきだ。しかし、競争力を改善し、為替レートを安く設定する様々な方法がある。そのいくつかは市場の力が作用するものとして受け入れられ、他に関しては集団的な不安定化をもたらすために拒否される。北京も、市場型の通貨体制に移行しなければならない。

5.   為替レートのコンセンサス ・・・この問題は中国にとどまらない。為替レートの切下げは全体として利益をもたらさず、保護主義やナショナリズムを刺激する。2008年の金融危機後はG20が有効にそれを抑制できた。米中双方が緊密に協力して、金融危機がさらに深刻な落ち込みに至るのを阻止した。

世界経済は、その意味で、今回の米中サミットに期待している。

FP SEPTEMBER 22, 2015

What Xi Wants From Washington

BY ISAAC STONE FISH

FT September 23, 2015

Xi will have to yield power to the private sector

David Pilling

FP SEPTEMBER 23, 2015

Unpacking Xi Jinping’s Pet Phrase for U.S.-China Ties

BY DAVID WERTIME

Bloomberg SEPT 24, 2015

What Xi Jinping and Pope Francis Have in Common

By Noah Feldman


l  トルコ

FT September 22, 2015

Turkey: The high price of Erdogan’s power grab

David Gardner

SPIEGEL ONLINE 09/24/2015

To Progress and Back

The Rise and Fall of Erdogan's Turkey

By Hasnain Kazim, Maximilian Popp and Samiha Shafy


l  貧困

FT September 23, 2015

Poverty: Vulnerable to change

Shawn Donnan


l  ドイツ人の経済学

VOX 23 September 2015

Dispelling three myths on economics in Germany

Michael Burda


l  フォルクスワーゲンの不正操作

NYT SEPT. 23, 2015

Volkswagen and the Era of Cheating Software

Zeynep Tufekci

NYT SEPT. 23, 2015

What Was Volkswagen Thinking?

By THE EDITORIAL BOARD

Bloomberg SEPT 24, 2015

Is Something Rotten in the State of Corporate Germany?

By Leonid Bershidsky

********************************

The Economist September 12th 2015

Exodus

Europe’s challenge: Strangers in strange lands

The Federal Reserve: False start

Business in China: The China that works

Banyan: Hazing rituals

Charlemagne: Leading from the front

(コメント) 人口移動問題が、アメリカ連銀の金融政策決定と中国の成長モデル転換に合わさって、ヨーロッパ大陸のパニックを誘います。

The Economistの姿勢は明白です。移民を受け入れて、その労働する権利を認めること、です。その方がコストはかからず、受け入れ国の経済を改善する条件となります。あるいは、移民たちはそのような国を目指すでしょう。

アメリカ連銀は、異なる理由の間でむつかしい選択をしますが、デフレの悪循環から逃れるほうが、インフレを抑える心配よりも重視されるべきだ、と主張します。他方、中国の成長減速に関する悲観論は、民間部門の成長と技術革新のダイナミズムに関する強い楽観によって否定されます。

******************************

IPEの想像力 9/28/15

国際政治経済学(IPE)とは何か? IPEは、国家を超える秩序の問題を考えます。それは、「経済成長」の背後にある、権力の問題、影響圏の問題、帝国や国際通貨の問題です。卒業していくゼミ生たちは、明確に理解できたでしょうか?

*****

週末は合同合宿でした。その夕食会で受けた質問です。

・・・「先生の専門は何ですか?」 ・・・「何を研究しているのですか?」

しかし、私の答えは迷走しました。大変、申し訳ないです。

まず、しばし沈黙。・・・適当な答えがない。IPEだ、というのは答えにならない、と思いました。

次に、国際通貨制度、通貨危機を取り上げました。他方で、移民問題、労働力移動も考えてきました。何か、とんでもなく違う問題だ、と思うかもしれない。

そして、漸く、それは、・・・グローバル・ガバナンスや、国際政策協調や、国際システムの不安定化、・・・などと答えたのですが、間に合わなかった。

本当に答えを求めるなら、IPEとは何か? ということに、私自身がスマートな答えを見つけなければなりません。

・・・それは、国家を超えたガバナンスの問題を扱います。成長モデルの転換と波及、各地の制度やシステムの調整、グローバル化する市場が生じる危機やパニック、それによって激化する各地の権力争い、あるいは、政治経済構造、社会紛争、戦争を扱います。

私のゼミ生たちが、「グローバル・ガバナンス」として、どこかの事典の記事(おそらくネットから)を引用していたことが不満でした。合宿直前の勉強会で、私は自分たちのゼミの論文の柱に、ガバナンスという視点を求めて話し合ったからです。

・・・ガバナンス、とは何か? (私はこの言葉が嫌いです。)

ガバナンス論の背後には、国際関係論や国際政治学が前提してきた、アナーキーがある。アナーキー(国家主権のネガ)というだけでは、もはや手に負えないほど、国境を越えて問題が生じている。危機が頻発し、波及している。グローバル・ガバナンスは、ガバナンスの誕生、という問題(協調・協力、規制・強制、規範・法・ルール、など)を、国家を超えて問う姿勢だ。

1つの答えは、覇権安定論、大国だった。圧倒的な大国がある(均衡する)時代には、国家を超えた平和と秩序がある。しかし、それが失われるときはどうするか?

もう1つの答えは、国家以外の秩序の源泉である。かつての宗教や、近代の市場拡大のような。近代国家の権力そのものが、その正当化の根拠を変えてきた。ガバナンス論では、多国籍企業や国際機関・NGOs、メディアやインターネット、など、様々な要因で、ガバナンスの誕生が新しい姿を取ると考える。・・・

私は、大学院でルイス・モデル(労働力移動と成長の加速)を学び、その後も、成長やその政治的限界、空間的な再編、といった視点から、グローバルな成長の波及を実現する政治経済秩序を考えてきました。そのため、合理的・数理的なモデルではなく、戦争や金融パニックといった、大きな歴史的事件(の圧力)によって、ガバナンスの変化を理解するべきだ、と考えています。

国際通貨制度の改革が成功し、国際移民支援システムが誕生して、各地の成長する地域を結んだ、リベラルな社会や文化が繁栄する。それは、たとえば、R.クーパーが、国際通貨制度の評価基準をPPP(平和、繁栄、参加)と述べたことに似ている、と思っています。

****

合宿というのも、学ぶための仕掛けです。ある者は企画に参加し、その準備や調整に忙殺され、苦労ばかりしました。優秀な報告を聞き、他のゼミの姿勢から学ぶ者もあれば、熱心に報告を聞くこともなく、飲み会に参加すれば合宿だ、と思う者もいたはずです。

集団的なパワーを高めるために、規範や制度への不満から、彼らが学ぶ能力を高める機会となってほしいです。

******************************