IPEの果樹園2015

今週のReview

9/21-26

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ドイツと難民 ・・・中国経済の改革 ・・・日本経済 ・・・ヨーロッパ難民危機 ・・・イギリス労働党の新党首 ・・・EUの新しい挑戦 ・・・共和党候補者討論

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, The Guardian, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, そして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]


l  ドイツと難民

The Guardian, Friday 11 September 2015

Mama Merkel has consigned the ‘ugly German’ to history

Jonathan Freedland

難民たちがドイツを去るために列車に殺到していた記憶がある。今、難民たちはドイツに入る列車に乗り込む。ある難民は、徒歩でハンガリーを抜けてきた。彼らは究極の避難所、約束の土地であるドイツを目指す。

ブタペストに集まるシリア難民の群衆から、繰り返し、繰り返し、ドイツという言葉が聞こえる。あるいは、ドイツ首相、メルケルの名が聞こえる。ある女性は、彼女の赤ん坊にアンゲラ・メルケルの名をとった。

70年前、ドイツは独裁や暗殺者の代名詞だった。人種の優越主義と果てしない残忍さがあった。しかし今、ミュンヘンは、ヒトラーの演説ではなく、疲れ切ったシリア人の子供たちにおもちゃで迎える制服警察官たちが示している。

メルケルが、ドイツの最悪の過去を忘れることは決してない。ドイツ人が過去に対して過敏であるほど、彼らはアウトサイダーを受け入れるコミュニティーでなければならない、と決意する。

ユーロ危機を通じて、ドイツは大陸の強硬派、ギリシャの人々に緊縮を強いる悪役だった。しかし、Hans Kundnani the German Marshall Fund)によれば、ドイツ人たちはメルケルがギリシャの抗議プラカードでヒトラーに模されたことに驚く。シリア難民を受け入れようとする彼らの行動は、ある意味で、その姿をより親切な、優しいものに変える努力である。

そこにはドイツの国益があり、その動機は純粋なものだけではない。しかし、ドイツ人がナショナリズムの欲望に支配されないことを示すのは良いことだ。この国の過去は否定できないが、決して再現しないという意志を示すから。

SPIEGEL ONLINE 09/11/2015

Welcoming the Refugees

Has Germany Really Changed?

An Essay by Juan Moreno

Project Syndicate SEP 14, 2015

Germany’s Hegemony Trap

WOLFGANG ISCHINGER


l  アメリカ連銀

FT September 11, 2015

Whether they raise or hold, central bankers are due a fall

Sebastian Mallaby

金融政策の短期の効果は予測できるが、連銀はそれを長期にも期待している。しかし、その関係は不安定だ。

金融政策は資産価格に影響する。しかし、資産市場の動きは、特にバブルを規制によって抑えることはむつかしい。

FT September 13, 2015

Will emerging economies cause global “quantitative tightening”?

Gavyn Davies

NYT SEPT. 15, 2015

Central Banks Keep Making the Same Mistake

Neil Irwin


FT September 11, 2015

Since you asked: Un-Scandinavian lessons in balancing Finland’s economy

Martin Sandbu


l  中国経済の改革

Project Syndicate SEP 11, 2015

China’s Forex Follies

BARRY EICHENGREEN

811日の中国による2%の人民元切下げと為替レート制度の改革では、人民元を国際準備通貨にするという目標を達成できない。

中国は為替レートの調整に関する基本がわかっていない。経済の減速を意識した刺激策であったはずだが、小さな切下げは、さらに何度か続くものと予想された。それは投資家たちが損失を恐れて人民元の市場から逃げ出す結果となった。資本流出、金融引き締め、投資減少を招いた。

むしろ、1度の大きな切下げで調整を終わらせることが、リスクを最小化する。大きな切下げで競争力は改善し、景気が回復し、むしろ通貨価値が増価すると期待する。資本が流入し、支出が増える。

意図が説明されない小さな切下げは、中国経済が統計で示されている以上に悪化しているという疑いを、投資家たちに持たせた。

SDRの構成通貨になるという目標は、単に虚栄でしかない。資本規制と中国人民銀行の大規模な為替介入があることで、投資家たちは人民元を利用したがらない。

安定した、流動性の高い、政府介入に妨げられない、金融市場を発展させることこそが、主要な国際準備通貨になる条件だ。

The Guardian, Monday 14 September 2015

It’s not the Chinese economy that’s on life support

Martin Jacques

中国経済に関しては、いつも、強気より弱気が支配的だ。新しい問題が起きると、抑えられてきた危機が爆発し、ハード・ランディング、社会不安、体制の崩壊が議論される。ばかげた話だ。

35年間も驚異的な高成長を続けて、7%の成長率に減速するとしても、西側のどこよりも高い成長を続けている。

中国の指導部は、自分たちが新しい課題に直面していることを知っている。世界金融危機以後、中国政府は自分たちの利益に従い、また、西側経済を救済することにもなる、5860億ドルの刺激策を採用した。さらに、人民元の価値が着実に増価するのを許し、2005年以来、ドルに対して25%も、それ以外の通貨にはさらに大幅に、増価したのだ。もし、人民元が25%切下げられていたらどうなったか、想像してみればよい。2008年以後、アメリカのGDP10%拡大したが、中国のGDP66%も増大した。中国経済が世界経済に果たす役割は急速に増大したのだ。

中国は多面的な問題に直面しているが、それを処理する準備がある。インフラと工業部門への慢性的な過剰投資、過剰債務、不動産市場の売れ残り、地方政府の債務累積。中国政府は、短期的問題として刺激策を求め、長期的問題として構造転換を求められている。

中国経済のリバランシングは驚異的な速さで進んでいる。2014年、サービス部門のGDPシェアは48.2%に達し、42.6%の製造業・建設部門を抜いた。成長率が7%に下がっても、雇用は拡大し続けている。技術革新に比重が移り、Alibabaのような、オンライン・ショッピングが年40%で伸びている。迅速な配送システム、インターネットの金融サービス、スマートフォンなど、先端機械。エネルギー転換。

指導層は、長期的な繁栄のために、構造転換の方向を正しく理解している。しかし、もちろん短期的なリスクは無視できない。新指導部は、要するに、過重負担を引き受けているのだ。1つだけ、彼らが犯した深刻なミスは、上海株式市場で売りを逆転するために介入したことだ。

しかし、その影響が示すのは、世界経済において、今や中国が多くの意味でアメリカよりも重要になったことだ。西側経済の抱える脆弱性についても、皆が再認識した。西側世界は今も、ゼロ金利と中国の成長という、生命維持装置に大きく依存しているのだ。

(China Daily) 2015-09-14

China can easily avoid 'Japan syndrome'

By Yao Yang

輸出に依存した成長、貯蓄過剰と不動産・株式市場のバブル、人口減少と経済停滞、デフレ。日本のこのような歴史を、中国も繰り返す恐れがある。

しかし、中国には日本の10倍以上の人口と、それ以上に大きな面積がある。それは国内で生産性や所得の格差が大きいことを意味しており、収れんによる高成長が続くことを意味する。

中国は日本の失敗を繰り返さない。

FT September 15, 2015

A new Chinese export — recession risk

Martin Wolf

FP SEPTEMBER 15, 2015

Where Did China’s Economy Go Wrong?

BY DAVID DENOON


l  日本経済

NYT SEPT. 11, 2015

Japan’s Economy, Crippled by Caution

Paul Krugman

日本経済は回復したのか? 欧米の訪問者はそう思うだろう。失業は少ない。低成長の原因は、高齢化によって、労働人口が増えないからだ。労働者1人当たりの成長率はアメリカとほぼ同じであり、ヨーロッパよりも優れている。

しかし、デフレの解消は進まない。通貨供給を増やしても、人々はそれを保蔵してしまう。このままでは、もし外部でショックが起きたら、例えば中国経済の異変に対して、日本は政策で対処できない。デフレの悪循環は恐ろしい。

日本の量的緩和がデフレを解消できないのは、財政に関する伝統的な思考方法に問題がある。紙幣を印刷して、政府の支出を増やすべきなのだ。

それが経済を破壊するのは、通常の経済状態においてであって、異常なデフレが続く条件では、そうではない。多くの主要諸国で金利は非常に低く、投資意欲が弱い。量的緩和で、資産価格を引き上げ、投資や消費を促しても、その効果は限られている。

財政均衡を求める政治的要求は先進諸国にあふれている。しかし、それは「慣例の呪い」である。尊敬される行為が、世界経済を破壊するのだ。

Bloomberg SEPT 16, 2015

Oh, No! Japan Gets Downgraded. Oh, Wait.

By Noah Smith

FT September 17, 2015

Made in Japan’ is back in vogue

Kana Inagaki in Tokyo


l  オバマの失策ではない

FP SEPTEMBER 11, 2015

It’s Not Obama’s Fault

BY AARON DAVID MILLER


l  中国経済と米中外交

(CRIENGLISH.com) 2015-09-11

US-China Economic Cooperation Calls for Political Vision

By Zhong Bu

FT September 14, 2015

China migration: Delivering the Jack Ma economy

Charles Clover


l  ヨーロッパ難民危機

NYT SEPT. 12, 2015

Eastern Bloc’s Resistance to Refugees Highlights Europe’s Cultural and Political Divisions

By RICK LYMAN

Project Syndicate SEP 13, 2015

Eastern Europe’s Crisis of Shame

JAN T. GROSS

FT September 14, 2015

The crises that threaten to unravel the EU

Gideon Rachman

ユーロ危機も、難民危機も、その最善の解決策はEUが政治経済ブロックとしての意味を示し、有効性を示すことだ。EU市民が集団的行動を選択し、協力して、悲惨な移民たちの状態を救済するしかない。

しかし、ヨーロッパの歴史には、帝国、王朝、同盟、といった偉大な、しかし崩壊した、多くの政治経済体制があった。EUは国際連盟に似ている、と思う。国際協力と国際法とを掲げた組織であったが、処理できない国際事件が続いて、最終的に、消滅した。

NYT SEPT. 14, 2015

Europe, a Continent of Refugees

By SIMON WINDER

NYT SEPTEMBER 15, 2015

What Can Countries Do to Help Refugees Fleeing to Europe?

NYT SEPT. 15, 2015

Where to Go for Real Immigration Reform

By ROBERTO SURO

FT September 16, 2015

Merkel steers a cautious course through Europe’s migrant crisis

Nikolaus Blome

FP SEPTEMBER 16, 2015

Schengen in Shambles

BY PHILIPPE LEGRAIN

FT September 17, 2015

Angela Merkel looks to past for lessons on integrating migrants

Stefan Wagstyl in Berlin


l  イギリス労働党の新党首

The Guardian, Sunday 13 September 2015

Corbyn victory energises the alienated and alienates the establishment

Gary Younge

The Guardian, Sunday 13 September 2015

Jeremy Corbyn: ‘Britain can’t cut its way to prosperity. We have to build it’

Jeremy Corbyn

The Guardian, Monday 14 September 2015

Jeremy Corbyn’s politics of hope can seize power from the elite

Aditya Chakrabortty

Project Syndicate SEP 14, 2015

Britain’s Populist Fantasies

CHRIS PATTEN

NYT SEPT. 14, 2015

Labour’s Dead Center

Paul Krugman

The Guardian, Wednesday 16 September 2015

Corbyn was right not to sing the national anthem. Authenticity is all he has

Hugh Muir

The Guardian, Wednesday 16 September 2015

The national anthem may stick in Corbyn’s craw, but it is his job to sing it

Anne Perkins

FT September 17, 2015

The orthodoxy has failed: Europe needs a new economic settlement

Jeremy Corbyn

FT September 17, 2015

Corbyn, Sanders and an activist’s guide to the ‘new politics’

Robert Shrimsley


l  アメリカと新興市場

FP SEPTEMBER 14, 2015

A U.S. Foreign Policy for Submerging Markets

BY JEFFREY E. GARTEN

アメリカ外交は、新興市場経済群をどのように扱うべきか? それは雑多な集団である。しかし、それは重要な集団である。

アメリカは、彼らが積極的に世界経済を担うような政策の枠組みを示すべきだ。彼らを取り込み、組織し、アメリカの長期的な利益を実現できるように。オバマ政権は、多くの優れた人材を利用できる。特に、中国をグローバルなリーダーシップの競争相手とみなすとともに、中国がますます世界経済に与える影響に対処しなければならない。

新興市場への積極的な外交に向けて、一層の投資が必要だ。


後半へ続く)