前半から続く)


l  トランプ問題

FP AUGUST 21, 2015

Le Donald, and Western Democracy’s Populism Problem

BY BENJAMIN HADDAD, NEIL ROGACHEVSKY

アメリカ大統領選におけるDonald Trumpへの支持拡大は、すぐに失われるだろう、と思われていた。そして、もっと尊敬される候補者が真剣な議論を交わすはずだ、と。しかし、そうはならず、William Jennings Bryan から Ross Perotまで、アメリカのポピュリスト的伝統が復活している、と注目されている。

ヨーロッパのポピュリストとして、イギリスのNigel Farage、オランダのGeert Wilders、フランスのMarine Le Penがいる。大西洋の両岸で広がる政治現象は、大衆の政治に対する不信感を反映している。

彼らが最も多く議論するのは移民問題であり、その積極的な排除である。彼らは問題を解決できないのは、政治システムの中枢が腐っているからだ、と主張する。自国民のアイデンティティや治安を破壊する流れが強まっているのに、指導者たちは止めることができない。ポピュリストたちは大衆に、ヨーロッパ文明(アメリカ文明や国際システム)の衰退を提示する。

Le Penのように、ポピュリストの政策は左右の対立を超えて、反移民、保護主義、最低賃金の引き上げ、退職年齢引き下げ、などを掲げる。それはヨーロッパの分裂した政治構造によって刺激される面がある。しかし、憲法と民主主義の伝統を持つアメリカ政治においても、民主的制度への不安、不信感は共通している。

FT August 23, 2015

Never say never with Donald Trump

ED Luce

NYT AUG. 24, 2015

Politics Upended in Britain and America

Roger Cohen

Bloomberg AUG 24, 2015

The Meaning of Donald Trump

By Clive Crook

トランプは,たとえ共和党の大統領候補になれなくても,選挙結果に重大な影響を及ぼすだろう.

支持者たちにとって,トランプはロナルド・レーガンである.かつてリベラルなメディアはレーガンをジョークとみなし,彼がホワイトハウスにいた2期間もそう言い続けた.その侮辱は彼を大いに助けたのだ.

しかし,レーガンは大統領になる前,人気のある,成功した知事であった.やさしく,陽気で,礼儀正しい,チャーミングな人物だった.トランプはレーガンと逆だ.共和党支持者の22%がトランプを支持して第1位であるが,それを引き上げるのは難しいだろう.他の候補者が離脱したとき,その支持者はトランプに移らないからだ.

それでも,トランプは独立候補として残るかもしれないし,保守派を分断して民主党候補者を有利にすることができるだろう.

トランプは,人々が感じている政治への不満を表現している.民主党でも,共和党でも,政治家はそれほど変わらない.彼らは話し続けてばかりで,何もしないのだ.トランプは,ワシントンの際限ない自己満足を攻撃する.

NYT AUG. 26, 2015

Bonfire of the Assets, With Trump Lighting Matches

Thomas L. Friedman

普通なら,地政学的な敵対国が自爆したり,後退したりするのを見るのはうれしいはずだ.しかし,中国が貨幣を燃やすのも,ロシアが食料を燃やすのも,この相互依存を深めた世界では,楽しいことではない

残念なことに,アメリカも焚火に参加した.アメリカが得意な分野であるポピュリズムにおいて,トランプが2大政党に火をつけたからだ.アメリカは水平的な市民の契約を好む.それはより暗敵的で,革新的な秩序であった.

しかし,今やこの秩序のもとで,市民たちが国境線を超えてくる移民を恐れている.トランプは,憲法にとって与えられるアメリカ市民の権利を,移民の子供たちから奪おうとしている.


l  イランとロシア

FP AUGUST 21, 2015

So Wrong for So Long

BY STEPHEN M. WALT

Project Syndicate AUG 26, 2015

Diplomacy at the Top of the World

JAMES F. COLLINS, ROSS A. VIRGINIA and KENNETH S. YALOWITZ

ロシアとの外交で重要な問題を解決する余地はある.イランとの核合意がそうだった.さらに,北極圏の諸問題も関係諸国間で合意が求められる.双方に利益のある合意を交渉することで,建設的な雰囲気が形成される.たとえロシアと西側が容易に和解できなくても,こうした協力を進めることは,紛争よりも好ましい.


l  株価下落の連鎖

Bloomberg AUG 21, 2015

A Brutal Week in Markets, But What Comes Next?

By Mohamed A. El-Erian

Project Syndicate AUG 24, 2015

The Emerging-Market Currency Rout

ANDRÉS VELASCO

NYT AUG. 24, 2015

A Moveable Glut

Paul Krugman

金曜日の株価下落はなぜ起きたか?

株価の変動を合理的に説明することはばかげている.1987年の暴落時にも,多くの人々は株価が下げるから売ったのだ.しかし,なぜ世界経済が動揺するのか? アメリカの住宅バブルが破裂した後,銀行が危機に陥り,その後,ヨーロッパでは2番底の不況に襲われた.それでも終わらず,中国など,新興市場に深刻な問題が生じている.

それらは無関係な事件ではなく,少ない投資機会に,多くの資金が奔流しているのだ.バーナンキはかつてアジアの「過剰貯蓄」を問題視した.

過剰貯蓄の背景はなくならない.人口増加率の低下,技術革新の変質,財政緊縮のイデオロギー,低インフレと低金利,・・・過剰貯蓄と景気回復の弱い世界がニューノーマルである.

そこには,金融規制を嫌い,小さな政府を好むウォール街の特殊利益もある.財政引き締め,金利引き上げ,など,政治家や評論家たちは困難な選択に取り組むことを称賛する.しかし,それは事態を悪化させるだけだろう.

The Guardian, Monday 24 August 2015

The Guardian view on financial markets: Chinese flu, and the west’s empty medicine cabinet

Editorial

FT August 24, 2015

China challenges spark fears, but not panic, for global economy

Chris Giles in London

NYT AUG. 24, 2015

China, Japan and Europe are Flashing Economic Warning Signs

By THE EDITORIAL BOARD

FP AUGUST 24, 2015

Black Monday: Global Panic Sets In as the Dow Drops 1,000 Points at the Opening Bell

BY DAVID FRANCIS

FP AUGUST 24, 2015

Bear Down

BY DANIEL ALTMAN

株価の大きな下落が実物経済に影響する可能性はある.為替レートの短期的な反応と長期的なドル高も考えられる.アメリカ経済の回復は続いても,その影響は不安を生じている.

FP AUGUST 24, 2015

What Caused ‘Black Monday’? The Answer’s Blocked in China

BY BETHANY ALLEN-EBRAHIMIAN

Bloomberg AUG 24, 2015

Asia Should Call Truce on Currency War

By William Pesek

Bloomberg AUG 24, 2015

Anatomy of a Market Selloff

By Mohamed A. El-Erian

今回の株価下落は、世界の成長見通しが訂正されたことを示すものだ。

新興市場の景気は予想外に悪化しており、ヨーロッパや日本の回復も弱い。世界経済の減速がもたらす利回りや利潤の見通しが引き下げられた。

売りが止まらないのは迅速かつ効果的な政策の反応が期待できないからだ。成長と金融不安の源泉であり新興市場が、今回の下落を以前と異なったものにしている。

システムにとって重要な新興市場が抱える経済・政治の課題を考えるなら、成長が力強く回復することや包括的な政策が提示されるには時間がかかるだろう。そこには深い構造転換、需要のバランスの根本的転換、過剰なレバレッジと過剰な債務を減らすこと、などが含まれる。

もう一度、金融的な緩和策を発動するしかないだろう。しかし、それはグローバルな金融システムが求める長期的な解決策ではない。

FP AUGUST 25, 2015

We’d Better Hope This Is the Bubble Bursting

BY DANIEL ALTMAN

The Guardian. Wednesday 26 August 2015

China can ride out this crisis. But we’re on course for another crash

Seumas Milne

FT August 27, 2015

China devaluation stirs deflation fears

Laurence Mutkin

NYT AUGUST 27, 2015

With Markets in Flux, Should We Panic or Have Patience?

FP AUGUST 27, 2015

The Good, the Bad, and the Ugly in the Global Market Turmoil

BY LENA KOMILEVA


l  アメリカの利上げ

FT August 23, 2015

The Fed looks set to make a dangerous mistake

Lawrence Summers

金利引き上げは延期するべきだ。金利引き上げはアメリカ連銀の3つの目標を損なうだろう。

高金利は、投資を妨げ、ドル高をもたらして、雇用を損なう。

超手金利は長く続きすぎた、というのは理由にならない。新しい条件が新しい政策を必要とする。インフレ率が顕著に上昇しない限り、完全雇用と両立する金利水準を維持するべきだ。

FT August 24, 2015

Show steel and raise rates or the financial system will fracture

Avinash Persaud

金利引き上げはいつでも引き下げよりむつかしい、救済者が去るとき、まだ早すぎるという不満が出る。

金利はインフレに反応するだけではない。金融システムの安定性や持続的な成長にも配慮しなければならない。極端に金融緩和して財政赤字を助けていると、世界は繰り返し金融危機の過ちを犯すことになる。

最近、中国の減速もそうだ。それは北京政府の決定できるものではない。むしろ過去5年間の先進諸国が行った量的緩和政策が、間違った融資と投資を促した結果である。それは「近隣窮乏化」政策に似た「近隣劣悪化」政策だ。このようなゼロサム・ゲームで世界経済の回復は実現できない。中国は最新の犠牲者だ。

金融緩和が長期化すると、為替レートも資源配分も成長を損なう。企業や銀行は莫大な現金を生産的に投資せず、住宅バブルや新興市場の企業に融資した。

その意味で、現在の危機は1997年のアジアに似てきた。新興諸国は国際金融システムの機能不全を嫌って莫大な準備を積み上げている。そして先進諸国が量的緩和に頼るだけでは、事態が悪化する。

FT August 24, 2015

China woes increase risk of Fed policy mistake

David Riley

FT August 27, 2015

China’s policy failings challenge the Fed

Gavyn Davies

中国政府の経済政策に対する信頼が薄れ、アメリカ連銀の金融引き締め姿勢が変化しないことへの不安から、市場は大きく動揺した。

中国経済の全般的な評価は決して破滅的ではない。しかし、一次産品市場を介した国際的影響は破壊的である。工業生産の落ち込みと合わさって、中国発のハード・ランディングが議論されている。

中国経済の問題はもっと構造的である。しかし、それは習近平指導部が取り組んできた改革と一致しており、もしその姿勢が維持されるなら、中国は市場の動揺を止める十分な資源を持っている。しかし、その政策はあいまいで、重要目標を後戻りさせている。

市場を鎮静化するには4つの政策を組み合わせることだ。1.デフレを払しょくする金融緩和、2.介入を必要としない為替レート水準への移行、3.投資が減少することを緩和する財政支出、4.地方政府・銀行から、中央政府、銀行への債務の移転。

李克強の政策や習近平の姿勢を非難するだけでは問題を解決しない。そこで、西側投資家は自分たちの守護神であるアメリカ連銀に期待する。しかし、連銀はこうした不安を無視して、既定の金融引き締めを準備している。

これらが世界的な市場の下落に終息した安心感が訪れない理由である。


l  日本

FT August 23, 2015

Japan’s boardrooms must be more foreign, female and inquisitive

Barbara Judge

FP AUGUST 27, 2015

Should We Be Worried About Japan’s Economy, Too?

BY WILLIAM SPOSATO

Bloomberg AUG 27, 2015

Japan's Central Bank Is China's Biggest Cheerleader

By William Pesek


l  朝鮮半島危機

The Guardian, Monday 24 August 2015

We’ve had Korean crises before, but this one is worrying

Aidan Foster-Carter

FP AUGUST 24, 2015

South Korea to Turn Off Propaganda Speakers, But Can It Tone Down Tensions with Pyongyang?

BY SIOBHÁN O'GRADY, PAUL MCLEARY

YaleGlobal, 25 August 2015

Tension Highlights North Korea’s Limitations

Shim Jae Hoon

Project Syndicate AUG 27, 2015

North Korea’s Endgame

CHRISTOPHER R. HILL

金正恩はなぜこの危機を起こしたのか? 危機の終息によって彼は何も利益を得ていない。キムは支配を継承した3代目であり、没落の伝統を背負っている。

キムが核廃棄に全く関心を示さないことは、中国を含めて周辺諸国に北朝鮮の崩壊を準備させるだろう。その時、韓国がこれを継承するしかないが、韓国民はそのコストを嫌っている。朴大統領が中国を訪問したのも、協力を期待しているからだ。

FP AUGUST 26, 2015

Kim Jong Un Versus The Loudspeaker

BY VICTOR CHA

今回の危機は北朝鮮の政治体制が何に対して脆弱であるかを示すものだった。

韓国から放送されたプロパガンダは若い女性を対象に、北朝鮮の体制を批判するものだった。放送は北朝鮮の危機を高める。


FT August 24, 2015

US carmakers wage battle over worker pay

Robert Wright in New York


l  ガザ,シリア,イラク

NYT AUG. 24, 2015

Gaza, Gulag on the Mediterranean

By MOHAMMED OMER

Project Syndicate AUG 25, 2015

A No-Fly Zone for Syria

ANNE-MARIE SLAUGHTER

シリア難民を止めるのは、アサド政権を動かすしかない。今からでも、飛行禁止空域を設けて介入するべきだ。NATO諸国は合意するだろう。その理由は、1.ヨーロッパの難民危機。2.アメリカのイスラム国家対策。3。イランとの合意による協力の可能性。4.難民たちが、パレスチナ難民と同様、将来の世代の過激化につながる懸念。

FP AUGUST 25, 2015

It’s Not Too Late to Save Iraq and Syria

BY MARCO RUBIO


l  アメリカ経済の改革

FP AUGUST 24, 2015

Fix This Economy Now!

BY DANIEL ALTMAN

中国の株価やアメリカの金利引き上げが不安を生じている。他方、アメリカ経済の基礎は健全であるが、いまだに旧式な構造に依拠している。政府は危機に対処するが、将来に向けては行動したがらない。

それは残念なことであり、たとえば、労働力の利用に顕著である。失業や生活水準の悪化を解決するために、政府は行動するべきだ。かつて、アメリカの軍人を雇用するために政府が関与したように、グローバリゼーションで仕事を失う多くの労働者にはa “Globalization Intervention Bill”すなわちa new G.I. Bill が必要だ。

職業訓練や新技術の開発、そして、貧困層の幼児教育にも政府が投資するべきだ。アメリカの労働者は容易に新しい職場に移る。これは労働市場の高い弾力性を示すが、その結果、企業は労働者の訓練に投資を嫌う。政府は企業を超えた熟練や技能に関する基準を設けて、その改善に向けた投資をするべきだ。政府系投資信託を利用している外国がある。

税制は、不安定な法人税ではなく、現在のような所得税でもなく、もっと富裕層への課税を重視するべきだ。所得分配の格差拡大は、富裕層の愚かな子供に、貧困層の賢明な子供から、ますます多くの機会を奪っている。富裕税を法人税に替えるべきだ。

こうした改革を行えば、アメリカ経済はもっと高い生活水準と将来の繁栄を築くだろう。

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The Economist August 15th 2015

Xi’s history lessons

Asia’s second-world-war Ghosts: The unquiet past

The world economy: Stuck in the middle

Temporal politics: Rulers of time

Buttonwood: A new contact for growth

Japan’s economy: In jeopardy

(コメント) 第2次世界大戦、あるいは、太平洋戦争や日中戦争、(第1次)ユーラシア大戦の歴史をどのように記憶するべきか? 安倍談話はその複雑な物語を表したものではなく、一人の政治家が寄せる感想でした。

世界経済、北朝鮮、資本主義システムの改革、を考えるヒントです。

安倍首相が、安保法案とアベノミクスのバランスに苦しむのは、まだ先のようです。

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IPEの想像力 8/31/15

諸田玲子の『お鳥見女房』シリーズに出てくる子供たちが、楽しく、すてきです。子供たちが社会の幸福度を示すとしても、DNA処理によって、幸せな、あるいは、完璧な子供を作るのはやめたほうがよいでしょう。

<歌うトマト>を開発したほうがよい、と私は思いました。

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パッケージを開くと、トマトが歌います。・・・とってもおいしいよ。君のためにやってきた。楽しく食べて、元気に遊びなさい。

野菜が嫌いで、なかなか食べようとしない子供の親たちは、このトマトを買ってきて、小さな子供たちの前に置きます。・・・中には話すトマトもいるんだよ、と言ってトマトを見せる。・・・トマトを残す前に、その声を聴いてみようか。

もちろん、パッケージにメロディを記憶したチップと再生機が付いているのです。チップと再生機は八百屋やコンビニなどで回収すればよいでしょう。3個入りのトマトのパッケージを、20円余分に取って、デポジットは10円です。回収時に10円を返却します。

自然の失われた、妖精の住まない、魔法のない、夢のない、親子の間で会話もない、不幸な社会を変えることができないでしょうか?

<踊るピーマン>もいいですね。

パッケージには、小さな靴のついた爪楊枝が2本付いています。お父さんが子供たちに、このピーマンは踊るんだよ、と言って、パッケージを開け、ほらね、と言って靴のついた爪楊枝をピーマンに差し込むころ、タップダンスの曲が流れて、ピーマンを躍らせます。

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アメリカの陪審員制度が、しばしば黒人の青年たちを有罪にして監獄に暮らすしかない状況と、他方で、裕福な白人男性が容易に投獄されない状況を、TEDでブライアン・スティーブンソンがとても印象的に語っています。

彼の妄想は現実になるかもしれません。

2025年、遺伝子組み換えが判決に応用されています。有罪判決の迫った超富裕層の老人男性が、政治家たちへの数々の買収で告発され、これまでの多くの罪状や悪徳行為を告白し、若返るためには何でもする、と願いました。裁判の判決で、30年の収監とDNA処理との2者択一を求められます。この処理の代価は彼のすべての資産であり、しかも、効果は5年程度で失われ、一気に老衰します。被告は迷わず、若返るDNA処理を受けます。

かれは16歳の若者に変身しました。ただし、住宅も含めて資産はまったくなく、家族も、仕事もなく、ポケットに5ドルだけ持っている黒人女性です。雨や寒さを逃れるために貧困地区の空き家に潜り込み、畑で野菜の収穫を手伝います。季節によっては、毎日、仕事と食べ物を捜して歩き疲れます。ギャングの恐怖、強姦されること、置き引きやスリ、売春・・・を考えます。

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国境を超える難民の子供たちにも、歌うトマト、DNA処理、様々な小説を、与える団体が設立されるでしょう。

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