IPEの果樹園2015
今週のReview
8/3-8
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日経新聞によるFT買収 ・・・ギリシャへの救済融資 ・・・ドイツにおける排外主義 ・・・アメリカ外交の成否 ・・・中国の株価下落と他の政策課題 ・・・最低賃金引き上げ ・・・MITギャング ・・・EUの将来 ・・・資本主義の改造 ・・・マンハッタン計画 ・・・中東秩序の変化 ・・・人民元の利用拡大
[長いReview]
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[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]
l 日経新聞によるFT買収
NYT JULY
23, 2015
The
Financial Times Will Be in Good Hands
By FELIX SALMON
一流新聞社のオーナーとして,誰が理想的か? 第一に,編集の独立性を尊重し,何を公表するかはジャーナリストが決めるべきだ.広告主を喜ばせるものであってはならない.
またオーナーは長期の視点を持つべきだ.理想としては,永久に至る.評価は一瞬で失われるが,それを回復するのは非常に難しい.
最後に,新聞は新聞社に所有されるべきだ.ニュースを売るのは他のビジネスと違う.ジャーナリストではない組織が新聞から利益を得るのは難しいだろう.
The Financial Timesは1888年に創刊され,世界でもっとも偉大な新聞の一つであるが,日経新聞が買収した.日経新聞は従業員所有の,1876年から続く新聞社だ.売るためでも,金融的な投資でもなく,日々,優れたニュースを提供するために経営されている.その年間利益は1億ドルを超える.日経新聞は,デジタルも合わせて,310万人の読者を持ち,The
Financial Timesの4倍だ.
現在の所有者である,グローバル教育企業Pearsonより,日経新聞の方が優れている.その利益は目立たず,プライドの対象であり,シナジーは作用しない.むしろ,The
Financial Timesは攻撃的な方針の記事内容を,特に日本へ,輸出することができる.
日経新聞は多額の買収資金,13億ドルを支払った.それは営業利益の35倍にもなる.これにより日経新聞はデジタル時代への移行を進めることができる.
アメリカでは,新聞社が新旧世代で,利潤最大化を基に経営されている.The
New York Times, The Wall Street Journal and USA Todayな,すべての新聞社は証券取引所に上場して売買されている.投資の10倍の利益を求めるヴェンチャー資本家に設立された新興の新聞社もある.しかし,もっと静かな,使命を持つ新聞社は,それに代わる魅力を持っている.日経新聞や,イギリスのThe
Guardianは,非営利の,トラスト型所有である.その方が,株主の利益に向けるより,読者に多くの価値をもたらす.
The
Guardian, Friday 24 July 2015
After the
Financial Times buyout, let’s stop belittling Japan’s success
Eamonn Fingleton
The Financial Timesは,長い間,日本経済に関して厳しい評価を書き続けた.それゆえ,イギリスの所有者the
Pearson groupから,日本の日経新聞に売却されることは,非常に皮肉である.
両者の関係は少なくとも1980年代にまでさかのぼり,当時はFTが日本を見下すような態度を取っていた.だが真実は,日系の方が企業としてFTよりもずっと強い企業である.FTの記者たちが次々に注意し,世界中の英語圏の報道が描いていたより,日本経済は良好だった.
l ギリシャへの救済融資
NYT JULY
24, 2015
Why Greece
Should Leave the Eurozone
By HANS-WERNER SINN
Paul Krugman や
Joseph E. Stiglitz,ギリシャの元財務大臣 Yanis
Varoufakisと,私の意見が一致することは少ない.しかし,ユーロ圏離脱がギリシャにとって望ましいことには同意できる.
残念ながらギリシャとEU諸国は,追加的な緊縮策と交換に860億ユーロの3度目の救済パッケージを始めた.それは,ギリシャの不況を数年引き延ばし,失敗に終わりそうだ.ユーロ圏諸国,ECB,IMFはギリシャの政府と銀行システムに3440億ユーロ,ギリシャGDPの約2倍を融資している.
この2008年以来ギリシャが得た公的融資の内,3分の1は民間債権者に支払われた.また3分の1は,ギリシャの経常収支赤字に融資された.さらに3分の1は,ギリシャ人の資本逃避によって失われた.
公的融資はギリシャのデフォルトを防いだが,その経済を再生することには失敗した.そのためにはギリシャが大幅な切下げ,物価水準の相対的な低下を実現しなければならない.ユーロ圏の他の諸国がインフレを起こすほうが間違いなく好ましい.ECBは量的緩和でこれを行っている.しかし,たとえ2%弱のインフレ率をECBが達成し,ギリシャの物価がこのままであっても,ギリシャの競争力が回復するのは10年後である.しかし,そのようなマイルドな「内的切下げ」も,ギリシャが国民投票で拒否したような厳しい政策を必要とする.
左派が求める解決策はどうか? ギリシャにもっとカネをくれ? 大規模な財政支出でケインズの刺激策を取れば,ある程度は成長するだろう.しかし,その資金が外国の納税者から来ることを別にしても,賃金と物価を下げて競争力を回復する,という必要な改革にとっては逆効果である.
アイルランドを考えてみるべきだ.ギリシャと同様に,ユーロを採用して金利が下がり,物価が上昇した.2006年後半,バブルが破裂し,財政的な救済も行われず,アイルランドは緊縮策による劇的な「内的切下げ」,賃金引き下げを実行した.そして競争力を回復したのだ.
ギリシャの切下げはアイルランドより5年遅れて始まった.今は9%低下したが,Goldman
Sachsの分析では,さらに13%から22%の下落が必要だ.例えば隣接するトルコ,ブルガリア,ルーマニアの賃金水準は,ギリシャの3分の1から5分の1である.
もっと良い方法は,Grexit,ギリシャがユーロ圏を離脱することだ.ギリシャは債務免除と,必要不可欠な輸入を維持する人道援助を得て,ユーロに復帰するオプションを持つ.ギリシャは唯一の法貨としてドラクマを再導入し,物価,賃金,契約,バランス・シートをドラクマに転換する.内外の債務も1対1でドラクマに転換し,即座に,ドラクマは価値を減らす.
切下げで,ギリシャ人は輸入財より国産品を買うだろう.観光業は活気を得て,資本逃避は逆転する.裕福なギリシャ人の資金が戻って,不動産投資や再開発,建設業が活発になる.貿易赤字は黒字に転換し,債権者は資金をギリシャから引き上げるより,戻すだろう.ギリシャは5年,あるいは10年で,通常のユーロ圏加盟の条件を満たすようになる.
ギリシャの離脱はユーロ圏の不可逆性や恒久性を損なう.それは他国にユーロ危機が波及し,ユーロ圏の他国が投機的攻撃を受ける,という.しかし,それは起きないだろう.ギリシャの国民投票でも,資本規制があったから市場の反発は抑えられた.むしろ重要なことは,財政やバブルに対して,他国がもっと慎重な態度になることだ.
ヨーロッパが連邦財政を実現するまで,ユーロはドルのような通貨になれない.それまでは,こうした形で「息継ぎの時間」を加盟国に許すべきである.ユーロ圏の国は財政健全性を守り,秩序のある離脱と参加を認められる.
NYT JULY 25,
2015
How the
Euro Turned Into a Trap
By THE EDITORIAL BOARD
1999年にヨーロッパの指導者たちがユーロを採用したとき,共通通貨は避けられないものであり,より一層の経済的,政治的な統合に向かう,と考えた.それは疑わしくなっている.
ユーロ圏はギリシャの離脱を回避したが,ギリシャに求める条件では債務免除や刺激策を含まず,経済再建が難しくなっている.ドイツのショウイブレ財務大臣は,ギリシャが一時的に共通通貨から離脱することを提案している.実際には,その離脱が永久化するだろう.ポーランドやハンガリーでも,ユーロ圏への参加に疑念が生じている.
ユーロを離脱し,自国通貨を回復すれば,切り下げや財政・金融政策の決定によって,その利益は数年で実現するか? ギリシャは観光とオリーブオイルの輸出で栄え,十分な貨幣を供給して景気が回復するのか? あるいは,ギリシャ政府は信用されず,高金利でなければ債券を発行できず,必要物資の輸入にも困るのか? 金融システムは銀行取り付けや歯止めないインフレにおかされる?
債権諸国やECBも,ギリシャの離脱による債権の損失,急激なユーロ高に苦しむかもしれない.
NYT JULY
25, 2015
Greece,
the Sacrificial Lamb
By JOSEPH E. STIGLITZ
トロイカの示す条件は,ギリシャに終わりのない不況をもたらす,構造化された不安定化a
built-in destabilizerである.そこには各機関の間違ったイデオロギーがあるだけだ.私は世界銀行のチーフ・エコノミストとして,インドネシアのIMF融資と「構造改革」を経験したが,その時も同じ間違いを犯していた.トロイカはまだインドネシアの生活水準低下のスピードが遅いことに不満を示している.
構造改革は必要だが,トロイカが示す条件は説明が無い.間違った条件を押し付けるだけだ.ギリシャの銀行とメディアを支配する富裕層の集団,オリガーク達の支配を終わらせることが必要である.それにもかかわらず前政権が示した透明性の改善や累進的税制に反対した.銀行の自己資本強化もしていない.
ギリシャには包括的な資本主義が必要であるが,この5年間にトロイカがしたことは債務者を非難するばかりだ.
Project
Syndicate JUL 30, 2015
Rule, Germania
HAROLD JAMES
ドイツがユーロ圏の指導者たちに一貫して語ることは,ルールに従うべきだ,ということだ.それは,ドイツ自身が国内で連邦制を維持している政治構造に関係するし,また,ドイツの債務危機の歴史的経験にも依拠している.
ドイツは共通通貨を採用する条件として,経済条件の収斂,を主張していた.財政ルールや救済禁止など,ユーロ圏諸国に厳格に強制するルールを支持している.しかし,政府債務/GDPの比率が58%なら安全で,62%では危険だ,という理由など存在しない.
このドイツのアプローチは,国内の連邦制に由来する.連邦制の下では,州政府は独立性を持ち,財政の責任を上位の機関に移す問題が生じる.これを抑えるために,厳格なルールを守る政治的なスタイルが重視されたのだ.スイスやアメリカもそうだが,20世紀後半から,金融政策に関してもルールが強調されるようになった.
また,債務に関して,アメリカのエコノミストたちは,ドイツが繰り返し債務免除を受けたにもかかわらず,ユーロ危機において,債務国にそれを拒むのは偽善的だ,と批判している.しかし,ドイツの歴史的経験はそれを支持していない.
ドイツはデフォルトを不安定化の徴と見ている.1923年のデフォルトは,ハイパーインフレーションで生じ,ドイツの金融システムを崩壊させ,大恐慌を招いた.1930年代前半のデフォルトはドイツが民間資本市場にアクセスを拒まれたから起きた.ドイツは未来への信頼を失った.持続的な回復ではなく,デフレとデフォルトがナショナリズムの狂気を煽った.
1945年のデフォルトは戦争に敗北した結果であった.それはナチズムの破壊的な恣意主義に反対する,戦後ドイツの経済思想,Ordoliberalismを生じた.
1953年の債務免除だけは,ドイツにおいても積極的なものと見なされている.しかし,元本の返済は実行され,大恐慌から第2次世界大戦までの利払いが免除されたのだ.さらに重要なことは,このとき,連合諸国の勝利によって,ドイツの過去の政策や制度は取り除かれた.それがドイツを新しいコースに乗せたのだ.ドイツの新しい政策担当者たちは財政規律を重視した.
それゆえ,ドイツは債務国の改革,を強く要求する.
l アメリカ外交の成否
FP JULY
27, 2015
The Secret
to America’s Foreign-Policy Success (and Failure)
BY STEPHEN M. WALT
なぜアメリカ外交は,中国やイランに対して成功し,イラクやロシアに対して失敗したのか? リアリズムを軽視している限り,それは理解できない.
アメリカ政府が,現実的な目標を,柔軟に,中立的に進めるとき,最も成功するだろう.逆に,不可能な目標を掲げ,軍事力の優位に頼って,強制的に進めて,他国の利益を無視するとき,最も大きな失敗をする.
l 最低賃金引き上げ
NYT JULY
24, 2015
The
Minimum-Wage Muddle
David Brooks
最低賃金の引き上げは,かつてエコノミストたちが否定した考え方であった.リンゴも市場も,労働の市場も,価格を引き上げれば需要が減る.最低賃金の引き上げは失業を増やすだろう.4
その後,そうではない,という研究が出た.オバマやヒラリー・クリントンが最低賃金の引き上げを主張し,いくつかの州で採用されている.
支持する研究も,反対する研究もあり,エコノミストたちは明確な結論を導けない.それはさまざまな事情に依存している.しかし,政策によって市場の作用を免れることはできない.
l MITギャング
NYT JULY
24, 2015
The M.I.T.
Gang
Paul Krugman
グッバイ,シカゴ・ボーイズ.ハロー,MITギャング!
“Chicago boys”とは,シカゴ大学で学んだラテンアメリカのエコノミストたちで,彼らはラディカルな自由市場イデオロギーを自国に持ち込んだ.彼らの影響が増したのは,1970年代,80年代の,自由放任経済思想とシカゴ学派の興隆した時代の一部であった.
それは古い話だ.今では新しい学派の興隆が起きている.メディアは注目していないが,MITで学んだエコノミストたちが政策決定や論争の支配的地位を占めている.Ben
Bernanke はMITのPh.D.を持っていた.ECB総裁のMario
Draghi,IMFで強い影響力を発揮してきたOlivier
Blanchard,その後任に決まったMaurice
ObstfeldもMITの出身だ.彼は,長くMITで教えたStanley Fischerの生徒であったが,Fischerは現在,アメリカ連銀の副議長である.
彼らの役割は世界中の政府や国際機関で非常に重要だ.私もその一人である.
MIT経済学とは何か? なぜ重要なのか? それは1970年代にさかのぼる.高インフレ率と高失業率の問題が重視されていた.スタグフレーションが起きたことは,Milton
Friedmanの勝利,ケインズ主義の敗北と見なされた.市場が経済状態を改善でき,政府は道を譲るべきだ,と.
しかし,MITはそう考えなかった.ケインズ主義の限界を理解したが,市場の不完全さ,財政政策や金融政策の有効性を議論し続けた.2008年の世界金融危機以後,プラグマチックで,証拠を重視するMITのエコノミストたちはその主張の正しさを示した.金融緩和や財政赤字を,1970年代のスタグフレーションにつながる,と批判したエコノミストたちは間違っていた.
l 資本主義の改造
The
Guardian, Sunday 26 July 2015
‘Quarterly
capitalism’ is short-term, myopic, greedy and dysfunctional
Will Hutton
イギリスの資本主義が機能していないことは明らかだ.1970年,100ポンドの利潤から約10ポンドしか株主の支払わなかった.今では,短期の所有者から強い圧力を受けて,70ポンドを支払っている.そして,投資,技術革新,生産性の上昇は,行き詰まった.
輸出も停滞している.経常収支の赤字は記録的な水準だ.企業は今や,株主の利潤を与え,次の買収劇に利用するための持ち駒でしかない.保守党は,イギリス経済に何も問題が無い,と言う.しかし,最近も,イギリス・ジャーナリズムの真髄を示すFinancial
Timesが日経新聞に買収された.
昨年,イングランド銀行のカーニーMark
Carney総裁は,企業がもっと大きな社会的責任を担うべきだ,と要請した.特に,市場資本主義の長期のダイナミズムは社会契約の基礎である.金曜日のNewsnightで,イングランド銀行の主任エコノミストAndy Haldaneは,利潤からもっと多くを投資に残すべきだ,と主張した.その理由は単純だ.イギリス(そしてアメリカ)の会社法は,株主を中心に置いて,最も重視している.株主たちの短期的な利益が,企業経営の最優先目標になるのだ.それゆえ彼は,株主を,他の利害関係者と公平な立場にするべきだ,と考える.すなわち,労働者や顧客,代理店などだ.
公開有限責任会社の発展を,彼は非難する.このモデルは成長をもたらす点で支持された.しかし,現代の株主は1世代前とまったく違う.平均的保有期間は,戦後すぐ,約6年であったが,今では6カ月以下である.もちろん,1秒も保有しない株主も多い.
同じ頃,ニューヨークでヒラリー・クリントンは「四半期資本主義」と呼ぶものを批判した.四半期毎の業績報告に経営が支配されているからだ.もっと技術革新や投資を行い,明日の繁栄をもたらすべきである,と.企業の価値を数年かけて,あるいは,次の10年で評価するべきだ.次の四半期ではなく.彼女は,それを税制改正によって実現するという.アメリカにおいては,革命に等しい.
アメリカの自由市場論者は反対するだろう.多くの資金が株主に支払われる方が,彼らは技術革新に投資できる,株式市場は効率性を高めている,と.しかし,それは真っ赤な嘘だ.市場は救いがたいほど非効率で,強欲で,近視眼的である.Larry
Page and Sergey BrinがGoogleの株を売却したとき,経営と「四半期資本主義」とを切り離すことに注意した.彼らの投票権は株主たちの10倍を保ったのだ.
Jeremy Corbynが,労働党の使命を,資本主義の改革より,その社会化だ,というとき,労働党の右派は,ビジネス界を脅かすのは狂っている,と非難するだろう.また保守党は,1970年代のコーポラティズムに戻る気か,と責めるはずだ.
しかし,イングランド銀行総裁や主任エコノミストは,資本主義をもっと過激に変更し,主要政党を批判する.
l マンハッタン計画
Project
Syndicate JUL 29, 2015
It’s Time
to Ban the Bomb
HANS BLIX
第1次世界大戦で毒ガスの兵器としての使用を,その後,法律で禁止したように,核兵器も禁止するべきだった.核兵器の禁止は信用されない,という理由で反対され,主要国による漸進的なアプローチが採用されたが,70年経っても,禁止できていない.生物兵器や化学兵器に関しても同様である.
広島,長崎の記憶が使用を抑えることに頼るだけでなく,法律にするべきだ.
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The Economist July 18th 2015
Hiyatollah!
Iran comes
out of the cold: The special Ramadan feast
The euro zone:
Pain without end
Special
report: The Singapore exception
Asian values:
Happy 50th birthday, Singapore
Bello: Transatlantic reflections
(コメント) 今から30年後,100年後に,どうなっているのか? イラン,ギリシャ(ユーロ圏),シンガポールを予想することは興味深いです.
もちろん,正しい答えなど存在しませんが,ユーロ圏がラテンアメリカのようになっているのかもしれません.
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IPEの想像力 8/3/15
NHKで「花は咲く」の歌を聴きました.その歌詞と,多くの人の姿や表情が重なる映像に,感動します.広島,長崎の鐘の音,合唱の歌声も聴きました.
シンガポールの成立50周年を記念する記事がThe Economistにありました.
50年前に建国したシンガポールという国が,当時,繁栄するどころか,生き延びられると信じる人も少なかったようです.リー・クアンユーが亡くなったとき,世界中の政治指導者や重要人物が集まっただけでなく,シンガポールを構成する異なった民族,中国人,マレー人,インド人が,シンガポールへの愛国心を共有して葬列に加わったことが,最も重要な奇跡でした.
そのためにリーが意識したことは,汚職を許さない,優秀な,政府の行政機能と,厳格な支配体制でした.徴兵制による軍隊の訓練と,政府による住宅供給を通じた多民族の混住,政府信託基金と老人たちへの社会福祉(+個人貯蓄)は,シンガポールの政治的正当性を高める社会基盤を固めるものでした.
しかし,それでも人民行動党PAPの一党支配は崩れました.一方で,多くの産業・サービス分野で移民労働者への依存が,他方では,グローバルな富裕層の集積が,シンガポールの性格を変える危機の条件を形成しつつあります.
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ニュースステーションで,御厨貴氏が安倍首相の発言に,動揺がある,と評価しました.日本の政治指導者たちの言動を詳しく知る研究者が,現在の安倍首相をどう見ているのか,興味を感じます.明確な発言で,(現行体制を超えて)自分の信じる方向に法・制度を変えるため,国民の意識を先導する政治手法が,今は,逆効果になっています.
安倍首相の失敗は,第2次大戦後の日本が平和国家であり,アメリカと積極的に協力して日本やアジアの安全を実現する,と言いながら,日本という国家を丸ごと正当化する「愛国主義」を唱え,戦前の日本政府や侵略政策を同様に正当化することです.彼の欠陥があまりにも顕著になったことで,保守派も含めて,国民の広いコンセンサスが,歴史的な反省や政府への批判を高めています.今や安保法案は,右翼団体の街宣カーが共鳴する政治状況を目指します.
他方,御厨氏の東日本大震災に関する報告書とその提言が,ようやく実現しつつある,という感想には異論があります.三陸沿岸の津波被害に関して,高台移転は失敗であった,と私は思うからです.
海とともに生き,文化や歴史を築いた人々が,津波の絶対的な回避を理由に,集団移住させられるのは,深刻な社会関係の解体,隔離ではないでしょうか?
(米軍基地の辺野古移転も,私はまだ,なぜ海上基地にできないのか,と納得いきません.巨大な浮遊構造物を連結して基地にする方が,環境への負担や,事故など,市民への犠牲は大きく抑えられると思うのです.)
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日本の軍国主義時代と東日本大震災・福島原発事故,という時代を超えた重大問題が,ともにアーカイブの重要性を強調する話に重なりました.
戦争も,災害も,金融危機も,詳細で,体系化されたアーカイブによって誰にでも利用でき,時代や国境を越えた経験が共有されることを求めます.
30年後,100年後の日本が,イランなのか,ギリシャ(人民元に囲まれた)なのか,シンガポールなのか,誰も正しい答えを知りません.アーカイブを通じて理解を深めておけば,重要な転換点で,国民は日本の飛躍を支持すると思います.
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