IPEの果樹園2015

今週のReview

7/13-18

 

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ギリシャ危機の政治的転換 ・・・中国株式市場の動揺 ・・・イラン核合意 ・・・チャールストン ・・・プエルトリコ

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, The Guardian, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, そして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.]


l  ギリシャ危機の政治的転換

The Guardian, Friday 3 July 2015

Tsipras’s wild promises have worsened the Greek crisis

Hugo Dixon

The Guardian, Friday 3 July 2015

Europe’s leaders must end this reckless standoff with Greece

Guy Verhofstadt

国民投票の後,ギリシャと債権団は冷却期間を持ち,交渉を妥結させるべきだ.しかし,ドイツは約800億ユーロをギリシャに融資している,それは2016年ギリシャ予算の4分の1に近い.

ギリシャは危機から危機へつなぐような時間をこれ以上は我慢できない.国民は危機の原因ではないのに,歴代のギリシャ政府が既得権やエリートたちを守るために国民を犠牲にしてきた.

ギリシャ政府と債権団は,成長のために改革を受け入れ,同時に,債務を免除することを決断してほしい.

The Guardian, Friday 3 July 2015

Throughout history, debt and war have been constant partners

Giles Fraser

FT July 3, 2015

How ‘vision’ messed up Europe

Simon Kuper

FT July 3, 2015

Oxi or Nai: A look at what comes next for Greece

Peter Spiegel in Brussels

国民投票後には,3つのシナリオがある.

ギリシャ政府では,もし結果がYESであれば,ヴァロファキスなど,内閣の閣僚が辞任する,さらにチプラスも辞任し,首相が交代するかもしれない,と言われている.

シリザ内部の穏健派が,他の主要政党と連携して,挙国一致内閣を組織する.これには前例がある.2011年後半,2回目の救済融資を受け入れるために,元中央銀行家のパパデモスが首相となった.これがおそらく救済融資を得る最善のパターンだ.

債権団の融資案を否決させるために,それを「脅迫」と呼んだチプラスに対して,多くのヨーロッパ首脳たちは強く反発した.チプラスとはもはや交渉できない,と彼らは考える.しかし,一部には,まだチプラスとの交渉を続ける姿勢を示すものもいる.フランスのMichel Sapin財務大臣や欧州委員会の経済担当責任者Pierre Moscoviciだ.

ヴァロファキスはすでにYESの場合に辞任すると示唆した.また,右派のナショナリスト政党Independent Greeksを,親EUの正当と入れ替えるのも一つの可能性だ.ドイツのWolfgang Schäuble財務大臣は,内輪の会合で,NOGrexitを意味しない,と語った.

交渉が続くとしても,国民投票後の合意は難しい.NOの場合,チプラスは緊縮策を拒否する権限を得たと考えるし,債務免除を交渉テーマにするだろう.他方,労働市場改革や価格自由化など,難しい問題は,緊急の救済融資から外れてしまう.

NOは,新しい救済融資プログラムに基盤が無いことを意味するだけでなく,ギリシャにはユーロ圏に残る基盤もないのだ,という疑問を生じる,とユーロ圏交渉団の代表であるオランダの財務大臣Dijsselbloemは語った.

FT July 3, 2015

A Greek idyll where two dramas collide

Alex Barker in Kos

FT July 3, 2015

The nasty Greek outcomes that democracy precludes

Niall Ferguson

ギリシャでは経済危機が深まり,ユーロ圏から離脱するかもしれない.しかし,かつてのように,戦争や内乱,テロ,革命,クーデタ,など,政治的混乱が暴力を爆発させることはなさそうだ.

1830年に独立を回復してから1世紀半ほどは,ギリシャの荒れた政治が記録されている.トップ・レベルの暗殺が3度,暴動が2度,王位のはく奪が3度,クーデタが3度,軍事衝突が5度,そして,ナチスによる占領,その後の内戦である.現在のギリシャには,おなじみのデフォルトがあるだけで,その政治的な帰結が抑制されている.

1970年代でさえ,プロレタリア独裁を目指す本物の共産主義的左翼と,戒厳令を考える本物の軍・右翼がいた.しかし,現在のギリシャでは,革命もクーデタもない.私有財産の廃止やハイパーインフレーションも起きない.ヨーロッパの中の政治暴力は,ギリシャでさえ抑制されている.

なぜか? ヨーロッパ統合は,間違った答えである.世界の他の部分でも,政治的な暴力行為は抑えられたからだ.ラテンアメリカ,東アジア,サブサハラ・アフリカでも,それは起きた.1940年代から80年代までは,暗殺,革命,クーデタ,内戦がチリからカンボジアまで多かった.今では,ヴェネズエラやタイのような,ごく少数の非行少年的な国家があるだけだ.タイの政治混乱でも,暴力行為は少なかった.

現在のわれわれは,テクノクラートとポピュリストとの対立を見る.いかなる暴力も言葉によるものであり,テクノクラートがほとんど常に勝利する.テレビニュースでアメリカの恐ろしい話を見るだろうが,それでもアメリカの暴力事件は減少している.1970年代,80年代よりも,アメリカの諸都市はずっと安全になった.同性婚をめぐってアメリカが南北戦争を再現することはないだろう.社会保障改革のせいで大統領が暗殺されることもない,と思う.

心理学者はエリアスの「文明化プロセス」で説明を試みている.しかし,他の説明も可能だ.グローバリゼーションでは,超国家機関や多国籍企業が影響を広げて,政治的暴力のコストを高めた.暴動に加わるのは若者が中心であり,社会の高齢化にも関係がある.インターネットとソーシャル・メディアの時代には,都市間の連絡が難しかった時代に比べて,クーデタにまで至ることは少ない.

真剣に考えるなら,必ずイデオロギーが問題になるだろう.シリザの主張で思い出すのは,西側には自由民主主義に代わるイデオロギーがもはや存在しない,ということだ.1989年にFrancis Fukuyamaは正しかった.

イデオロギーの重要さは,世界で唯一,政治的暴力が広まっている地域では,代案としてのイスラム過激派が存在することで示されている.そこでは,文明化のプロセスも,グローバリゼーションや技術変化も,作用していない.その過激化や聖戦主義の輸出は,若者たちを狙っている.

ギリシャも大人になった.ポピュリストたちは債務免除を求めるが,ユーロ圏からの離脱は望まない.

SPIEGEL ONLINE 07/03/2015

Angela's Ashes

How Merkel Failed Greece and Europe

By Peter Müller and René Pfister

SPIEGEL ONLINE 07/03/2015

Operation 'Ochi'

Zero Hour for Greece

By Julia Amalia Heyer, Katrin Kuntz and Alexander Smoltczyk

Project Syndicate JUL 3, 2015

A Way Out for Greece

JEFFREY D. SACHS

ギリシャはユーロ圏にとどまって,債務免除と改革を行うことが双方にとって正しい選択である.IMFもアメリカ政府も,舞台裏で,ドイツを説得したが,多くの債権者がそうであるように,ドイツはそれを拒んだ.そして,衝撃的な銀行システムの崩壊に向かっている.

ユーロ圏離脱は,おそらくハイパーインフレーションまで含む,政治と社会のカオスを意味するだろう.中産階級が最も憎悪する貯蓄の消滅を意味する,新ドラクマへの転換は,他方で,ユーロ建の対外債務をまったく減らさない.

ドイツは自国の歴史から学んでいない.第1次世界大戦後,債権国であったアメリカ政府の厳しい要求はドイツやその他のヨーロッパ諸国で深刻な金融不安につながり,間接的に,1933年のヒトラーによる政権掌握につながった.第2次世界大戦後は,アメリカ政府の賢明な大幅譲歩により,1953年に債務免除を得た.それはドイツと世界にとって大きな利益をもたらした.

私は4段階の譲歩を提案する.1.ギリシャ国民投票で,NO,を示す.2.大幅な譲歩を含む債務の組み換えが行われるまで,公的債務に対する支払をすべて停止する.3.チプラス首相は,国民が銀行を信用するように説得して,銀行を再開する.4.国民投票後に,ギリシャとドイツは速やかに和解し,経済改革を債務免除に合意する.

VOX 03 July 2015

Greece is solvent but illiquid: Policy implications

Paul De Grauwe

ギリシャの債務はGDP180%もある.それはプライマリーバランスで巨額の黒字を出さなければ支払不能のように見える.

しかし,実際は,さまざまな債務負担免除措置によって,ギリシャの利払い負担はGDP2%でしかない.ギリシャは,名目2%の成長さえあれば,支払可能である.

ギリシャの債務組み換え(リストラクチャリング)は,ギリシャ危機の解決策として,ずっと議論されてきた.第1に,2012年,民間債権者が大幅な債務免除を強いられた.それはギリシャの政府債務を,GDPの約30%も削減した.

2に,政府債務の満期を延長し,実質の利子支払いを減免する,暗黙の債務組み換えが行われてきた.その結果として,政府債務の満期は約16年になり,他のユーロ諸国よりもかなり長い.2011年以来,ギリシャ政府の利子支払いは半減され,GDP2%でしかない.

こうした暗黙の債務組み換えにより,ギリシャの債務負担は,GDP180%という数字で,過大に表現されている.実質的な負担はその半分でしかないだろう.実質的な負担は,他のユーロ圏諸国よりも低く,ベルギーやフランスよりも低いのだ

従って,ギリシャ政府債務は持続可能であり,成長を再開できる.政府は支払可能なのだ.ギリシャの債務負担を維持するには,名目成長率(インフレ+実質成長)がわずか2%であればよい.

もちろん,緊縮策が成長をもたらすものではない.2009年以来,プライマリーバランスを累積でGDP18%も変えたギリシャの緊縮策は他を圧倒する.それはGDPを累積で25%も削った.そこで,第1に,緊縮策を止めるべきだ.

債務のGDP比率を下げるために緊縮策に頼ることは意味が無い.むしろ,プライマリーバジェットを現在の水準(ほぼゼロ)に維持させるべきだ.それはもっと高い名目成長率を実現するだろう.

2に,ギリシャの債務が持続可能であり,そうではないというECBの判断は間違いだった.「最後の貸し手」として流動性を供給していたECBが,ギリシャ政府債をOMTQEから外そうとしたのだ.このECBの間違った判断が,流動性危機を支払不能危機に転換し,ギリシャに不要な銀行システム危機をもたらした.ECBは,事実上,ギリシャにユーロ圏からの離脱を強制しつつある.

ギリシャの問題には,こうしたシンプルな解決策がある.ギリシャの債務は組み換えられ,持続可能である.それゆえ,緊縮プログラムを緩和し,ECBは銀行部門に流動性を供給するべきだ.これに必要な条件は,債権団が現実を認めることだ.彼らの債権は,すでに,その名目額よりはるかに小さな価値しかない.債権諸国政府は市民たちに,それが過去に生じた損失であることを明確に説明しなければならない.

この解決策は政治的な問題を生じる.第1に,政治家たちは,損失の生じていない架空の世界を好む.納税者たちに真実を知らせたくない.第2に,債権者にはギリシャの不正行為を処罰したい,という感情が強い.これを克服しなければならない.

交渉過程で,モラルハザード論が非常に強まった.しかし,ギリシャ人が過去の不正行為に対して大きな代償をすでに支払ったことは明らかだ.今は,こうした懲罰を国民全体に続ける欲望を抑えるときである.

VOX 03 July 2015

The meaning of a referendum: Austerity and sovereignty

Daniel Gros

世界で同じような政府債務危機が起きている.一方は,ほとんど注目されていない,アメリカのプエルトリコ自治区the Commonwealth of Puerto Rico.他方は,世界中が注目する,ヨーロッパのギリシャ債務危機だ.

両者の決定的な違いは,それが主権国家であるか,ないか,という点である.

ギリシャは救済融資の受け入れを国民投票に問うことができるが,プエルトリコにはできない.これ以上の支出削減,もしくは,「緊縮」を拒むなら,プエルトリコはアメリカ破産法に守られるだけだ.破産法廷の判決が何であれ,住民の意向と関係なく,従うしかない.ましてや,自分たちの経済を刺激するために独自通貨を選択することはできない.

プエルトリコ自治区は,法的に,アメリカ合衆国の一部である.このカリブ海の島の住民はアメリカ市民である.ドルを使用し,アメリカの司法と裁判に従う.アメリカの経済政策は,最低賃金も含めて,すべて適用される.他の50州と違うのは,上院に代表を送れないし,下院にも「投票権のない」代表しかいない.

人口規模は違うが(ギリシャ1000万人,プエルトリコ400万人弱),一人当たりで見た両者の経済指標は非常によく似ている.GNPGNI,平均賃金は連合・連邦全体の約半分,失業率,がそうだ.貧困率では,プエルトリコが悪い.これは社会保障システムを通じて大規模な財政移転を得ているにもかかわらず,生じている.

公的債務の比率は,GDPと比べるより,実質の負担で見ると,驚くほどよく似ている.むしろプエルトリコの方が重い負担だ.また,恐るべき類似点として,両者とも汚職・腐敗が多い.世界銀行の指標は,ユーロ圏に比べてギリシャが,アメリカに比べてプエルトリコが,ガバナンスについて劣っていることを示す.

ユーロ圏には「最後の貸し手」が存在しない,と批判されている.これはアメリカの州政府や地方自治体も同じである.2006年の最初の流動性危機では,政府がすべての学校を閉鎖し,95000人の職員を自宅待機させた.政府は投資家の信頼を回復する行動を即座に求められる.

ギリシャと同様に,プエルトリコも債務免除を求めているが,その方法が異なる.ユーロ圏は主権国家の自発的な「同盟」である.他方,プエルトリコでは連峰の決定が最終のものである.連邦行政や司法制度に逆らえない.これが,「ドル圏」とユーロ圏との違いである.もしギリシャがアメリカの一部であれば,国民投票はできないし,すでに連邦破産裁判所で判決を受けている.

ユーロ圏の財政移転が小さいことは,それほど重要ではない.プエルトリコの経済成果は悪い.主権が無いことは,プエルトリコに銀行の取付が起きていない理由である.預金者たちはカリビアン・ドルに転換することを心配していない.

トロイカの緊縮策が厳しいのはそうかもしれないが,公的融資を受けなかったら,その調整はもっと急速に強いられただろう.

重要な政治的違いは,緊縮策ではなく,ギリシャの債権者が今では公的な機関であり,その債務免除要求に強くさらされることだ.プエルトリコには,債権者と合意するか,破産再万所に行くしかない.

NYT JULY 3, 2015

Europe’s Many Economic Disasters

Paul Krugman

ギリシャのことを考えると気が滅入る.では,フィンランドのことを考えよう.南欧の,腐敗や無責任な政府とは全く違う,北欧の国だ.

しかし,フィンランドでも不況が8年目に入り,実質GDP10%も減少して,終わりそうにない.南欧の悪夢が無ければ,フィンランド経済の破滅はもっと関心を集めているはずだ.しかも,デンマークからオランダまで,北欧経済の全体に衰退が広がっている.

ギリシャ以外の南欧で,スペインの回復が称賛されている.しかし,その成功もヨーロッパ風の中身である.失業率はほぼ23%であり,一人当たり実質所得水準は危機前よりもまだ7%も低い.

なぜヨーロッパはこれほど経済的に苦しむのか? 各国の危機はそれぞれが大きく異なっている.ギリシャ政府の債務は大き過ぎた.しかし,スペイン政府はそうではなかった.問題は民間融資と住宅バブルだった.フィンランドには債務が全然関係していない.その輸出産業である木材への需要が減少し,国民的な優良企業であったNokiaを含めて,製造業が瓦解したからだ.

すべてに共通しているのは,ユーロという拘束衣である.フィンランドは1980年代末にも不況に陥って,最初は現在よりもさらに悪かった.しかし,通貨を大幅に切り下げることを中心に,経済運営を巧みに行って,急速に回復したのだ.

ユーロを作ったことが失敗だったのか? そうではあるが,ユーロの解体がその答ではない.むしろ,今は拘束衣を緩めることが重要だ.銀行システムへの保証,政府債務への免除や緩和策,過度の緊縮策を破棄し,インフレ率を少なくとも2%まで高める.多方面で努力しなければならない.

しかし,ヨーロッパの官僚や政治家たちは,こうした努力を拒む.そして規律だけを強調する.もしギリシャが国民投票で,YESを示したら,ヨーロッパの失敗は強化され,債権団やその官僚たちがさらに緊縮策を続ける.大量失業を支持することになる.

他方,NOを示すことは恐ろしい.ギリシャは未知の領域に陥る.短期では,巨大な混乱が生じるだろう.しかし,それは回復のチャンスにつながる.ヨーロッパのエリートたちが示す自己満足に打撃を与える.

NYT JULY 3, 2015

Greece’s Sorry Reckoning

Nikos Konstandaras

NYT JULY 3, 2015

The Gifts of Eternal Greece

By ARMAND MARIE LEROI

NYT JULY 3, 2015

In Greek Referendum Campaign, a Barrage of Doomsday Ads

By SUZANNE DALEY

The Guardian, Friday 3 July 2015

This euro is destroying the European dream

Jonathan Freedland

The Guardian, Saturday 4 July 2015

Greece's mass psychology of revolt will survive the financial carpet-bombing

Paul Mason

これは経済戦争のど真ん中で行われる国民投票である.

1937年,スペインの町,ゲルニカに似ている.金融的なじゅうたん爆撃である.この危機の後も,ヨーロッパは生き残れるのか?

FT SATURDAY, 4 JULY, 2015

Greece and Europe must recognise stakes of Grexit 

Both sides must move past tactical games, writes Jacques Delors

Project Syndicate JUL 4, 2015

Europe and Greece on the Brink

Jacques Delors and MARK ROE

ギリシャがユーロ圏を離脱しても,危機の影響を抑えられる,と過信してはいけない.

2008年の危機も,アメリカで始まった.それは住宅バブルの崩壊による,金融部門の住宅担保債券に関する危機だった.損失は実際に生じたが,わずかな,抑制できるものだった.しかし,金融機関の結び付きが,危機を実物経済の,先進諸国経済に及ぶ危機に拡大した.

FP JULY 4, 2015

Could China Save Greece from Financial Ruin?

BY DEAN CHENG

The Guardian, Sunday 5 July 2015

The Greeks said No – but to what exactly?

Mary Dejevsky

FT SUNDAY, 5 JULY, 2015

Greece’s eurozone future in doubt after decisive No victory

Kerin Hope and Henry Foy in Athens and Stefan Wagstyl in Berlin

FT SUNDAY, 5 JULY, 2015

The US is a helpless bystander on Greece

Edward Luce

左派の悪魔学では,アメリカは過剰な超大国で,力を正義と考えているらしい.しかし,ギリシャほど,それが間違っていることを示す例はない.

オバマとIMFは,ヨーロッパの再建諸国に対して,ギリシャの側に就く用意がある.アメリカは長く,経済再編と交換に,ギリシャ債務の削減をヨーロッパに対して主張してきた.しかし,ヨーロッパでは,アメリカは強くも間違ってもいないが,弱くて正しいのだ.

ドイツなどに比べて,わずかなギリシャ向け債権しかもたぬアメリカが,その債務交渉に大きな発言をする理由は,過去と未来にある.

ヨーロッパの統合計画は,公式には1957年のローマ条約で始まった.しかし,実際は,その10年前,戦争で疲弊したイギリスからアメリカがギリシャ防衛を引き継いだときに始まったのだ.トルーマン・ドクトリンと,マーシャル援助が無ければ,ヨーロッパが生き残ることは難しかった.

過去だけでなく,未来についてもヨーロッパはアメリカの声を聴く.ギリシャに関する妥協をヨーロッパの同僚たちに電話で説くアメリカ財務長官Jack Lewだけでなく,国防長官Ashton Carterもヨーロッパ諸国の首都を訪問している.脱冷戦をめぐるロシアの反発に対する懸念を話し合っている.

NATO加盟諸国はGDP2%を防衛予算に充てるという約束を守っていない.ドイツは独自に孤立化を好む.彼らは最も平和的なシナリオを期待するだけで,アメリカが簡単に無視できる国だと思っている.

FT SUNDAY, 5 JULY, 2015

No vote widens fissures in society knocked senseless by slump

Tony Barber

FT SUNDAY, 5 JULY, 2015

Greeks deserve more than threats of further hardship

Nick Malkoutzis

NYT JULY 5, 2015

Ending Greece’s Bleeding

Paul Krugman

FP JULY 5, 2015

Greece Rejects European Austerity

BY DAVID FRANCIS

Bloomberg JUL 5, 2015

10 Consequences of Greece's 'No'

Mohamed A. El-Erian

Bloomberg JUL 5, 2015

Greece Should Vote Yes and Europe Should Be Ashamed

Clive Crook

FP JULY 5, 2015

Fragile Europe, Exposed and Unmoored

BY PAOLA SUBACCHI

The Guardian, Monday 6 July 2015

Angela Merkel has a red and a yellow button. One ends the crisis. Which does she push?

Yanis Varoufakis

The Guardian, Monday 6 July 2015

As Yanis Varoufakis revs off into the sunset, it’s his substance I’ll remember

Suzanne Moore

The Guardian, Monday 6 July 2015

The Guardian view on Europe after the Greek referendum: Angela Merkel must take the lead

Editorial

FT 6 July, 2015

Berlin says up to Athens to save its place in euro

Peter Spiegel in Brussels, Stefan Wagstyl in Berlin, Kerin Hope in Athens and Katie Martin in London

FT 6 July, 2015

ECB must should not make a deal harder to reach

FT 6 July, 2015

Greece: over to EU

FT 6 July, 2015

A stealthy route to Grexit

Wolfgang Münchau

FT 6 July, 2015

Time for euro creditors to reward their allies over Greece

Bill Emmott

国民投票でNOを得たチプラスは,債権団に債務免除を要求するに違いない.しかし,合意が形成される見込みはない.ユーロ圏諸国がギリシャだけに特別な約束をしないからだ.ギリシャの新しいスローガンは,ドリス・デイの歌で示されている.“Que sera, sera”; whatever will be will be.

悲劇は可能であるどころか,ほとんど避けがたい.しかし,悲劇を避ける方法はある.ユーロ圏の18カ国が,富裕な国も貧しい国も,債権国も債務国も,ドイツの指導によって,ギリシャ政府への連帯を示すことだ.しかし,初期には示されていたイタリアやフランスの共感も,その後の交渉で失われた.ギリシャより貧しい諸国からは強い反対意見がある.

ユーロ圏加盟諸国は,経済パフォーマンスを評価する多くの基準として,財政政策に関するルールにも合意している.しかし,2008年に始まった世界金融危機後,今でもユーロ圏諸国には1770万人の失業者がいる.アメリカには830万人しかいない.人口規模は,ユーロ圏が335億人.アメリカは32億人である.

国民投票におけるチプラスの勝利を祝うのは,反ユーロ・反EUエスタブリシュメントの政治党派だ.2016年,17年,の選挙で彼らに勝つためには,主要諸政党が経済運営の失敗と脆弱さを示すのではなく,希望と新しい指導力を示さねばならない.

それはすでに示されている2つの目標,単一市場と,エネルギーなどへの公共投資,に加えて,ユーロ圏に共同責任を自覚させるユーロ建債券を発行することだ.

FT 6 July, 2015

Free Lunch: ECB, enemy of the euro?

Martin Sandbu

FT 6 July, 2015

Europe should welcome Greece’s vote

Gideon Rachman

NYT JULY 6, 2015

For Europe’s Sake, Keep Greece in the Eurozone

By THE EDITORIAL BOARD

NYT JULY 6, 2015

Soften the Greek Deal

Roger Cohen

NYT JULY 6, 2015

How to Undo the Damage in Greece

By GIKAS HARDOUVELISJULY 6, 2015

FP JULY 6, 2015

Be Bold, Frau Merkel

BY PHILIPPE LEGRAIN

ドイツなど債権諸国は有権者に正直に説明するべきだ.ギリシャは債務をすべて返済できない.問題は,それが一方的に,債務をデフォルトする無秩序な形に終わるのか,あるいは,債権者の利益を反映した,より多くの返済が可能な,秩序ある形で債務を減額するのか,である.

ギリシャと債権団とが政治的に消耗するだけの関係を終わるべきだ.すべての者の利益に即して線を引く.すなわち,ギリシャが債券市場にアクセスできる水準まで債務を減額する.それ以上の資金は与えないし,条件も付けない.ギリシャはこうして自分たちの運命を自分たちで決める.シリザ政府は次の選挙で,自分たちの決定に関する評価を受ける.

チプラスはすでに,債権団との論争に関わった自国のヴァロファキス財務大臣を辞任させた.和解の決断は債権団の手にある.メルケル首相は勇気を示すべきだ.長引いた戦争を終結させ,平和を築くときだ.

Bloomberg JUL 6, 2015

Greece Hits the Self-Destruct Button

Megan McArdle

Bloomberg JUL 6, 2015

Greeks Stand Up to 'Lemon Socialism'

Barry Ritholtz

Bloomberg JUL 6, 2015

Help Greece Leave the Euro

By Eric Beinhocker

The Globalist (chinadaily.com.cn) 2015-07-06

Post-Greece, Germany and EU face reality

By Erwin Grandinger

The Guardian, Tuesday 7 July 2015

Greece is the latest battleground in the financial elite’s war on democracy

George Monbiot

The Guardian, Tuesday 7 July 2015

Is Tsipras really looking for a deal with Europe?

Daniel Howden

The Guardian, Tuesday 7 July 2015

The Guardian view on the Greek crisis: time for the French connection

Editorial

FT 7 JULY, 2015

Grexit will leave the euro fragile

Martin Wolf

FT 7 JULY, 2015

Someone needed to speak truth to Europe

Takatoshi Ito

ある男が書類に身をかぶせて証明しているのを,この書類をワシントンから持ってきたもう一人の男が,腕組みをして見下ろしている.その写真は,誰がここで事態を掌握しているのか,明白に示した.それは30年間,インドネシアを支配した権力者であるスハルト大統領ではなく,そのテクノクラートである.

ギリシャが国際機関に対して敵意を示すとき,多くのアジア人は1997-98年の感覚を思い出すだろう.そのときIMFは,経済危機にあったアジア諸国に緊縮と改革を求めたのだ.そうした要求は,当然,嫌われた.そしてマレーシアが1998年にしたように,緊縮を強いられたくない国は,IMF融資を受け入れなかった.

その後,事態は悪化した.インドネシア経済は不況に向かい,IMFは支払を停止した.ルピアの価値は危機前の6分の1に下落した.暴動が広がり,焦点は略奪され,19985月,スハルトは不名誉な辞任を強いられた.経済はその年,13%縮小した.安定するまで6年かかり,4人の大統領が交代した.

デフォルトが起きると,その責任の一部は貸した側にもある.なぜIMFはギリシャに貸したのか? IMFは政策を助言するが,主な仕事は経常収支の赤字,もしくは,突然に資本流入が逆転したときに,外貨準備が不足した国を助けることだ.ギリシャの問題は政府の債務依存であり,外貨不足ではない.

日本とアジア諸国が1990年代に地域の流動性を支援するシステムを作ろうとしたとき,IMFとアメリカは強く反対した.今や,ヨーロッパは同じようなものを作り,しかも,失敗した.IMFとアメリカは止めるべきだっただろう.またIMFは,ヨーロッパ人が支配する機関として,正直に主張できなかったのか.

アジア諸国は,IMF融資を返済したし,何一つデフォルトしなかった.しかし苦しい経験は,彼らが十分な外貨準備を得て,誰かに命令されるのを避ける,と決意させた.

IMFは,優秀なアジア諸国からの支持だけでなく,大幅にその信用を失ったのだ.

FT 7 JULY, 2015

IMF could play its part to save Greece from the abyss

Shawn Donnan in Washington

FT 7 JULY, 2015

ECB caught in predicament over emergency lending to Greece

Lorenzo Bini Smaghi

FT July 7, 2015

Martin Sandbu

YaleGlobal, 7 July 2015

Greece – A Mess With Consequences

David Dapice

Project Syndicate JUL 7, 2015

Greece’s Vote for Sovereignty

DANI RODRIK

ギリシャの投票結果は,民主主義の勝利,ではない.ギリシャ人が民主主義を要求することは,他の民主主義諸国にとって,無責任なユニラテラリズム(一方的な,単独行動)である.実際,ギリシャの立場に対する共感はほとんどない.圧倒的に多数の国民が,ギリシャに対する緊縮策の継続を支持するだろう.

ギリシャが否定したのは,オリガークや富裕な民間銀行家たちではない.民主的に国民を代表する,他のユーロ圏加盟諸国を否定したのだ.これはギリシャ民主主義と銀行家の戦いではなく,ヨーロッパ民主主義同士の戦いである.ギリシャ人のNOは,他国の民主主義より,自国の民主主義を優先したのだ.すなわち,国家主権の勝利である.

それはヨーロッパにとって不吉である.EU,さらにユーロ圏は,国家主権を克服する試みであったからだ.ヨーロッパのエリートたちは,ギリシャの金融危機について,もっと経済の相互依存を強調できただろう.そして,ギリシャ人の放蕩や気楽さを責めずに,債務者と債権者の分担を促し,敵対的な姿勢を緩和できただろう.さらに,経済統合からヨーロッパ政治空間を拡大し,国民の自律性を奪う代わりに,ヨーロッパの水準で民主主義的な行動の余地を拡大することで補えば,それこそが民主主義の勝利であったはずだ.

国民投票は重要であるが,それは主として政治的なシンボリズムになっている.ギリシャ国民は,NOが意味する経済行動,すなわち,ユーロ圏離脱と,真の経済主権をもたらす国民通貨の再導入を求めているのか? それは示さないままだ.債権者の条件が変化する見込みはない.他国の服従を求めたのであれば,失望に終わるだけだ.

Project Syndicate JUL 7, 2015

Greece’s “No” is No Victory for Democracy

BERNARD-HENRI LÉVY

Project Syndicate JUL 7, 2015

Statesmanship and the Greek Crisis

JEFFREY D. SACHS

NYT JULY 7, 2015

It’s Time for Greece to Leave the Euro

Jochen Bittner

NYT JULY 7, 2015

Germans Forget Postwar History Lesson on Debt Relief in Greece Crisis

Eduardo Porter

Bloomberg JUL 7, 2015

Debt Relief Should Be Greece's Parting Gift

Mark Gilbert

The Guardian, Wednesday 8 July 2015

For Greece, the worst catastrophe now would be to stay in the eurozone

Simon Jenkins

この週末にGrexitを起こすに違いない.それは長いトンネルの先に見えた光明だ.ギリシャの苦しみが終わる.2001年にギリシャがユーロ圏に加わったことは,ギリシャをドイツ経済(その無慈悲な銀行家)に縛るものであり,破滅を待つだけだった.今や,破局とはGrexitを抑えることだ.

ギリシャの破産や離脱について,悪夢,カオス,考えられない無秩序,と描くのは,Grexitを遅らせ,無計画な形で,強制的に行った場合である.ギリシャの破産を「救済」融資で遅らせるべきではないし,管理されたデフォルトは成長を再起動する.それこそ,この週末に議論すべき唯一のテーマだ.

既に緊縮はプライマリーバランスの均衡をほぼ達成した.緊縮経済学は,常に,短期のショック療法であり,包括的な経済政策ではない.GDP25%を削るのは,まさに狂気である.成長できないし,将来の借金も返済できない.過去の債務を払うどころではない.

ギリシャの競争力を,ユーロ圏北部の工業地帯から切り離すべきだ.EU内での変動レートを「アナーキー」と呼ぶのは間違いだ.イギリスのポンドは,過去15年間,ユーロに対して30%も変動したが,それはイギリスだけでなく,ヨーロッパにも有益であっただろう.通貨価値の変動は面倒なこともあるが,各国の社会・政治体制が異なることを示す.民主的な選択と,異なる市場の規律をもたらす.

ギリシャが短期間にドイツと同じ行動パターンを取ることは不可能だった.アテネはハンブルグではない.ギリシャの貯蓄は北へ逃げ,優秀な熟練労働者も連れて行った.破局を脱するには,イギリスのように,ショック・アブソーバーとしての変動レートが必要だ.

ギリシャの雇用をもたらす最大の産業,観光業は,30%の「新ドラクマ」切下げで大きな利益を受けるだろう.ハイパーインフレーションにつながる恐れはあるが,イギリスや他のユーロ圏に属さないヨーロッパ経済ではそれが起きていない.

脅迫と脅迫,最終期限,最後通牒,そうした報道で1914年の戦争勃発に至るヨーロッパを思い出す.現代のヨーロッパ大陸における戦争は流血をともなわないが,同様に狂信的愛国者たちの妥協を求める.Grexitがヨーロッパの安全を脅かすのではなく,Grexitを盲目的に拒む姿勢が問題である.

ギリシャのユーロ圏離脱は経済回復に至る.イタリアやスペインも独自通貨を取り戻そうとするだろう.そして北部は強力なドイツマルク圏に変わる.


(後半へ続く)